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【発明の名称】 油圧作業機械の振動抑制方法および同装置
【発明者】 【氏名】今西 悦二郎

【要約】 【課題】装置コストが安くてすみ、しかもアクチュエータ停止時の振動を確実に抑制することができる。

【解決手段】油圧ショベルにおけるブームシリンダ5の両側管路6,7間に、可変絞り11を備えたバイパス管路10を設け、リモコン弁12の操作によるパイロット圧力Ppを圧力センサ15で検出し、このパイロット圧力Ppを用いて、コントローラ16の圧力変動速度演算部17で操作速度に対応するパイロット圧力変動速度を演算し、この圧力変動速度に基づき開度指令値演算部18で開度指令値を求め、開度指令部19から可変絞り11に開度指令信号を出力して絞り開度を制御することにより、急停止または急起動時にシリンダ両側管路6,7の圧力を速やかに平衡させて振動を抑制する方法および装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 油圧アクチュエータと、この油圧アクチュエータに対する圧油の給排を制御するコントロールバルブと、このコントロールバルブを操作する操作手段とを備えた油圧作業機械において、上記油圧アクチュエータとコントロールバルブを結ぶ両側管路間に開度可変のバイパス管路を設け、油圧アクチュエータの操作時に上記操作手段の操作速度に応じてバイパス管路の開度を高速度側で大きくなるように制御することを特徴とする油圧作業機械の振動抑制方法。
【請求項2】(i) 油圧アクチュエータと、(ii) この油圧アクチュエータに対する圧油の給排を制御するコントロールバルブと、(iii) このコントロールバルブを操作する操作手段と、(iv) 上記油圧アクチュエータとコントロールバルブを結ぶ両側管路間に設けられたバイパス管路と、(v) このバイパス管路に設けられた可変絞りと、(vi) 上記操作手段の操作速度を検出し、この操作速度に応じて上記可変絞りの開度を高速度側で大きくなるように制御する開度制御手段を具備することを特徴とする油圧作業機械の振動抑制装置。
【請求項3】 請求項2記載の油圧作業機械の振動抑制装置において、コントロールバルブとして油圧パイロット切換式の弁、操作手段としてこのコントロールバルブにパイロットラインを通じてパイロット圧力を供給するリモコン弁がそれぞれ用いられ、開度制御手段は、■ 上記パイロット圧力を検出するパイロット圧力検出手段と、■ 検出されたパイロット圧力の変動速度を操作速度として演算する圧力変動速度演算手段と、■ 上記圧力変動速度演算手段によって求められた圧力変動速度に応じて上記可変絞りに対する開度指令値を演算し、指令信号として出力する開度指令手段によって構成されたことを特徴とする油圧作業機械の振動抑制装置。
【請求項4】 請求項2または3記載の油圧作業機械の振動抑制装置において、開度制御手段が、(a)操作手段の操作加速度を求め、(b)この操作加速度が一定値以下のときに一次遅れをもって可変絞りに指令信号を出力するように構成されたことを特徴とする油圧作業機械の振動抑制装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は油圧ショベルや油圧クレーン等の油圧作業機械において、油圧アクチュエータの停止時および起動時における振動の発生を抑制する振動抑制方法および同装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】たとえば油圧ショベルのブームのように大質量で慣性の大きい可動部を急停止または急起動させると、この可動部を駆動する油圧アクチュエータに大きな圧力変動が生じる。
【0003】上記ブームを起伏作動させるブームシリンダを例にとると、たとえばブームを倒す(ブームシリンダを縮小させる)方向の動作を急停止させた場合、ブームの慣性によってブームシリンダのヘッド側圧力が急激に上昇する。
【0004】そして、その反力によりシリンダのロッド側圧力が上昇し、さらにその反力がヘッド側に加わる。
【0005】この繰り返しによりピストンロッドが振動し、この振動が機械本体に伝えられて同本体が振動する。
【0006】この振動は、シリンダ両側の圧力が平衡するまで続くため、操作性が悪くなるとともに、振動が止まるまで次の操作に移れない等、作業性も悪くなる。
【0007】そこで、このようなアクチュエータ急停止・急起動時の振動を抑制する方法として、次の二つが提案された。上記ブームシリンダの場合で説明する。
【0008】(A)特開平6−185501号公報に示されているように、ブームシリンダとコントロールバルブとを結ぶ管路にアキュムレータを接続し、シリンダ圧力が高くなればシリンダ側からアキュムレータ側に、シリンダ圧力が低くなれば逆にアキュムレータ側からシリンダ側に圧油を逃がして圧力の変動を減少させる。
【0009】また、アキュムレータ回路に可変絞りを設け、圧力センサで検出したシリンダ圧力の変動に応じて可変絞りの開度を、変動成分が大きいほど開度を大きくするように制御する。
【0010】(B)特開平6−17448号公報に示されているように、シリンダ回路の両側管路をバイパス管路で接続してこのバイパス管路に電磁開閉弁を設け、操作レバーが中立で、かつ、シリンダ圧力が一定値以上になると電磁開閉弁を開いて両側管路を連通させる。
【0011】これにより、両側管路の圧力を速やかに平衡させて、両側管路の圧力差によるブームシリンダの振動を抑制する。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】ところが、前者のアキュムレータ方式では高価なアキュムレータ、後者のバイパス方式では操作レバーの操作を検出するセンサとシリンダ圧力を検出するセンサの二種類のセンサがそれぞれ必要であるため、装置コストが高くなる。
【0013】本発明は上記の点に鑑み、装置コストが安くてすみ、しかもアクチュエータ停止時の振動を確実に抑制することができる油圧作業機械の振動抑制方法および同装置を提供するものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明(振動抑制方法)は、油圧アクチュエータと、この油圧アクチュエータに対する圧油の給排を制御するコントロールバルブと、このコントロールバルブを操作する操作手段とを備えた油圧作業機械において、上記油圧アクチュエータとコントロールバルブを結ぶ両側管路間に開度可変のバイパス管路を設け、油圧アクチュエータの操作時に上記操作手段の操作速度に応じてバイパス管路の開度を高速度側で大きくなるように制御するものである。
【0015】請求項2の発明(振動抑制装置)は、(i) 油圧アクチュエータと、(ii) この油圧アクチュエータに対する圧油の給排を制御するコントロールバルブと、(iii) このコントロールバルブを操作する操作手段と、(iv) 上記油圧アクチュエータとコントロールバルブを結ぶ両側管路間に設けられたバイパス管路と、(v) このバイパス管路に設けられた可変絞りと、(vi) 上記操作手段の操作速度を検出し、この操作速度に応じて上記可変絞りの開度を高速度側で大きくなるように制御するものである。
【0016】請求項3の発明は、請求項2の構成において、コントロールバルブとして油圧パイロット切換式の弁、操作手段としてこのコントロールバルブにパイロットラインを通じてパイロット圧力を供給するリモコン弁がそれぞれ用いられ、開度制御手段は、■ 上記パイロット圧力を検出するパイロット圧力検出手段と、■ 検出されたパイロット圧力の変動速度を操作速度として演算する圧力変動速度演算手段と、■ 上記圧力変動速度演算手段によって求められた圧力変動速度に応じて上記可変絞りに対する開度指令値を演算し、指令信号として出力する開度指令手段によって構成されたものである。
【0017】請求項4の発明は、請求項2または3の構成において、開度制御手段が、(a)操作手段の操作加速度を求め、(b)この操作加速度が一定値以下のときに一次遅れをもって可変絞りに指令信号を出力するように構成されたものである。
【0018】上記方法および装置によると、操作手段の操作速度が速いときにはバイパス管路の可変絞りの開度が大きくなって両側管路間での圧油の流出入量が多くなるため、急停止または急起動操作されたときでも両側管路の圧力が速やかに平衡して振動が減衰する。
【0019】また、操作手段が緩やかに操作されたときには可変絞りは小開度に制御されるため、常に大開度とする場合のように通常操作時の応答性が悪くなるという弊害が生じない。
【0020】しかも、アキュムレータが不要で、かつ、センサとしても操作速度を検出するための最小限(請求項3ではパイロット圧力検出手段)ですむため、装置コストが安くてすむ。
【0021】また、請求項4の構成によると、操作手段の操作加速度が求められ、この操作加速度が一定値以下のときに一次遅れをもって絞り開度の指令信号が出力されるるため、次のような作用が得られる。
【0022】油圧回路においては、通常、油圧系の応答遅れがあるため、急操作が終了しても(操作速度が低くなっても)、アクチュエータ両側管路の圧力は一定時間は操作中のレベルのままとなる。
【0023】従って、操作速度のみに基づいて絞り開度を制御する構成をとると、急操作の終了時点で直ちに絞り開度が小開度に切換わるため、上記した応答遅れの間で振動減衰作用が働かなくなる。
【0024】そこで、上記のように操作加速度が一定値以下になったとき、すなわち、操作が緩やかになったときに一次遅れを持たせることにより、応答遅れの間、絞り開度が大開度に保たれて振動減衰作用が維持されるため、この過渡期での振動を抑制することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】本発明の実施形態を図によって説明する。
【0026】この実施形態では、従来説明に合せて油圧ショベルのブームシリンダ回路を適用対象として例にとっている。
【0027】図1において、1は油圧ショベルの本体で、このショベル本体1に、ブーム2とアーム3とバケット4を備えた掘削アタッチメントが取付けられている。
【0028】また、ブーム2とショベル本体1との間にブームシリンダ5が取付けられ、このブームシリンダ5の伸縮作動によってブーム2が起伏作動する。
【0029】ブームシリンダ5のヘッド側油室5aに接続されたヘッド側管路6、およびロッド側油室5bに接続されたロッド側管路7は、油圧パイロット切換式のコントロールバルブ8を介して油圧ポンプ9およびタンクTに接続され、このコントロールバルブ8によりブームシリンダ5の作動方向と速度が制御される。
【0030】また、ヘッド側およびロッド側量管路6,7間にはバイパス管路10が設けられ、このバイパス管路10に電磁比例式の可変絞り11が設けられている。
【0031】12はレバー12aによって操作される操作手段としてのリモコン弁で、このリモコン弁12が操作されることにより、パイロットライン13aまたは13bを通じコントロールバルブ8の両側パイロットポート8a,8bのうち操作された側にパイロット圧力が供給されてコントロールバルブ8が切換わり作動する。
【0032】14はリモコン弁12の油圧源である。
【0033】両側パイロットライン13a,13bにはそれぞれ圧力センサ15,15が接続され、リモコン弁12の操作量に対応するパイロット圧力Ppがこの圧力センサ15,15によって検出され、このパイロット圧力信号がコントローラ16に入力される。
【0034】コントローラ16は、パイロット圧力信号からパイロット圧力Ppの変動速度を算出する圧力変動速度演算部17と、求められたパイロット圧力変動速度から可変絞り11に対する開度指令値を演算する開度指令値演算部18と、この指令値に対応する制御信号を可変絞り11に対して出力する開度指令部19とを具備している。
【0035】また、圧力センサ15,15からのパイロット圧力信号、および圧力変動速度演算部17からの速度信号にはノイズが含まれているため、圧力変動速度演算部17および開度指令値演算部18の各入口側にこのノイズを除去するためのフィルタ(たとえばカット周波数が10Hzのローパスフィルタ)20,21が設けられている。
【0036】このコントローラ16の各部の作用を含む本装置の作用を図2のフローチャートを併用して説明する。
【0037】ブームシリンダ5を縮小作動させた後、停止させる場合を例にとって説明すると、リモコン弁12が停止操作されると、それまで操作されていた側のパイロットライン13bの圧力Ppが低下し、コントロールバルブ8が中立復帰してブームシリンダ5の縮小作動が停止する。
【0038】このとき、上記パイロット圧力Ppが圧力センサ15により検出されてコントローラ16に読み込まれる(ステップS1)。
【0039】コントローラ16では、フィルタ20によって圧力信号中のノイズが除去された後、圧力変動速度演算部17でパイロット圧力Ppの変動速度Vが、【0040】
【数1】V=dPp/dtによって算出される(ステップS2)。
【0041】この算出されたパイロット圧力変動速度Vは、フィルタ21経由で開度指令値演算部18に入力され、ここで可変絞り11に対する開度指令値Gが次のようにして演算される。
【0042】まず、次の数2のように上記圧力変動速度Vの絶対値|V|をとり、これにゲインαを掛けて基本指令値Fを求める(ステップS3)。
【0043】
【数2】F=α・|V|また、ステップS4で圧力変動速度Vを微分して加速度A=(dV/dt)を求めた後、この加速度Aと、予め設定した値A0とを比較し(ステップS5)
■ A≧A0(ステップS5でYES)のときには、急操作中であるとして、基本指令値Fをそのまま開度指令値Gとして決定し(ステップS6)、■ A<A0のとき(ステップS5でNO)のときには、操作が緩やかであるとして、【0044】
【数3】G=(1/1+Ts)・Fのように基本指令値Fに時定数Tなる一次遅れを持たせた値を開度指令値Gとする(ステップS7)。
【0045】そして、この開度指令値Gが開度指令部12から可変絞り11に開度指令信号として出力され(ステップS8)、同弁6が指令信号に応じた開度に設定される。
【0046】こうして、パイロット圧力Ppの変動速度Vに応じて可変絞り11の開度が制御され、操作速度が高いほど絞り開度が大きくなってシリンダ両側管路6,7間での圧油の流出入量が多くなる。
【0047】従って、急停止操作時に、圧油の流出入作用によって両側管路6,7の圧力が速やかに平衡して振動が減衰される。
【0048】しかも、リモコン弁12が緩やかに操作されたときには、可変絞り11は小開度に制御されるため、同弁11を常に大開度とする場合のように通常操作時の応答性が悪くなるという弊害が生じない。
【0049】また、この装置では、上記のようにパイロット圧力Ppの変動加速度Aを求め、この加速度Aが一定値A0よりも小さいときには時定数Tなる一次遅れをもって開度指令信号を出力することにより、急操作終了後も一定時間は急操作中の絞り開度制御を維持するようにしたから、操作に対する油圧系の応答遅れによる振動をも抑制することができる。
【0050】なお、こうすると、通常の緩操作時にも一次遅れ制御が行われるが、元々緩操作時には絞り開度を制御する必要がないため、何ら差し支えない。
【0051】図3〜図5にこの装置による振動抑制結果を示している。
【0052】ここでは、図3に示すようにブーム停止状態からリモコン弁12を比較的緩やかに操作して図1のブーム2を起立または倒伏方向に作動させ、リモコン弁12を最大操作量(100%)で保持した後、時刻t1〜t2間で急にニュートラル位置まで戻した場合を示している。
【0053】図4はこのリモコン弁12の操作に応じて可変絞り11に出力された開度指令値、図5はこの開度制御の結果としてのシリンダメータイン圧力の変化状況をそれぞれ示し、図5の実線で示すように、同図一点鎖線で示す従来技術(可変絞り11付きのバイパス管路10を設けない場合)と比較して、急操作時でもメータイン圧力の変動を速やかに減衰させることができる(圧力変動による振動の発生を抑制することができる)。
【0054】ところで、上記実施形態ではパイロット圧力を用いて操作速度を算出したが、リモコン弁12の操作量をセンサで検出し、この操作量から操作速度を算出してもよい。あるいは、リモコン弁12の操作速度を直接、速度センサによって検出してもよい。
【0055】また、本発明は上記実施形態で例示した油圧ショベルのブームシリンダ回路に限らず、とくに慣性の大きい可動部を駆動するアクチュエータ回路に広く適用することができる。
【0056】
【発明の効果】上記のように本発明によるときは、操作手段の操作速度を検出し、操作手段が急停止または急起動操作されたときに、アクチュエータ両側管路間のバイパス管路に設けた可変絞りの開度を大きくしてアクチュエータ両側管路間での圧油の流出入量を多くするようにしたから、両側管路の圧力を速やかに平衡させて振動を確実に抑制することができる。
【0057】また、操作手段が緩やかに操作されたときには可変絞りは小開度に制御されるため、常に大開度とする場合のように通常操作時の応答性が悪くなるという弊害が生じない。
【0058】しかも、アキュムレータが不要で、かつ、センサとしても操作速度を検出するための最小限(請求項3ではパイロット圧力検出手段)ですむため、装置コストが安くてすむ。
【0059】また、請求項4の構成によると、操作手段の操作加速度を求め、この操作加速度が一定値以下のときに一次遅れをもって絞り開度の指令信号を出力するようにしたから、操作に対する油圧系の応答送れによる急操作終了直後の振動の発生をも抑制することができる。
【出願人】 【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
【出願日】 平成9年(1997)6月23日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司 (外2名)
【公開番号】 特開平11−13703
【公開日】 平成11年(1999)1月22日
【出願番号】 特願平9−165931