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【発明の名称】 油冷式回転形圧縮機及びそれに用いる油分離器
【発明者】 【氏名】青木 優和

【要約】 【課題】廃棄時にも公害を発生せず、潤滑油にも悪影響を与えない油冷式回転形圧縮機およびそれに用いる油分離器を提供する。

【解決手段】油冷式圧縮機の油分離機内に保持される分離エレメント4を、金属製ネットで形成された凝集層保護膜10、この保護膜より目の細かいグラスウールを積層した凝集層11、金属製ネットで形成された凝集層保護膜12を順に重ねて多数の孔を有する円筒13の上に巻きつけ形成する。凝集層11は1μm前後の繊維径を有するガラス繊維である。円筒13の内側には、凝集層より繊維径の太いグラスウールや、金網、不織布などからなる分離層14、この分離層14のさらに内側には円筒状のエクスパンドメタル15が取り付けられ、分離エレメント4の下部には底カバー16が形成されている。分離エレメント4の各層にはポリ塩化ビニールを使用せず、ガラス繊維、ポリプロピレン、ポリエチレン等を用いる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】圧縮機本体内に回動可能に支持されたロータを有し、このロータの回動により作動ガスを圧縮する際に発生する熱を潤滑油により放熱する油冷式回転型圧縮機において、前記圧縮機本体の下流側に作動ガスに含まれる油分を分離する油分離器を設け、この油分離器は円筒状の複数の層を有する油分離エレメントを有し、前記複数の層の全ての層が露出した金属、ガラス繊維、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロンおよび不織布のいずれかから構成されていることを特徴とする油冷式回転型圧縮機。
【請求項2】前記複数の層は、濾材と、この濾材に隣り合いこの濾材より目の粗い金属製の金網の層とを有することを特徴とする請求項1に記載の油冷式回転型圧縮機。
【請求項3】前記濾材は、ガラス繊維、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロンおよび不織布のいずれかから構成されていることを特徴とする請求項2に記載の油冷式回転型圧縮機。
【請求項4】前記複数の層は、濾材と、この濾材に隣り合いこの濾材より目の粗いガラス繊維、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロンおよび不織布のいずれかから構成された層を備えていることを特徴とする請求項1に記載の油冷式回転型圧縮機。
【請求項5】前記複数の層は、ポリ塩化ビニールを含まない層であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の油冷式回転型圧縮機。
【請求項6】油冷式回転型圧縮機の油分離器であって、露出した金属、ガラス繊維、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロンおよび不織布のいずれかの層からなる複数の層を有する油分離エレメントを有することを特徴とする油分離器。
【請求項7】前記エレメントの各層は、ポリ塩化ビニールを含まないことを特徴とする請求項6に記載の油分離器。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、油冷式回転型圧縮機及びそれに用いられる油分離器に係り、特にスクリュー型の圧縮機において好適な油冷式圧縮機及びそれに用いられる油分離器に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の油冷式回転形圧縮機については、特開平8−319980号公報に記載されている。この公報においては、油分離用エレメントの濾材については詳述されていないが、圧縮機の圧縮行程に噴射された潤滑油はサブミクロンの微細オイルミストとなっている。したがって、油分離エレメントを下記した2層で構成する必要がある。◆(1)オイルミストをコアレッシング補集するための、微細な繊維径を有するグラスウール等の凝集層。◆(2)その下流側で粒径の肥大化した油滴を落下捕捉するための分離層。
【0003】圧縮機を運転すると、圧縮空気が油分離器の凝集層を通過する。圧縮機の負荷と無負荷の切替により流速の変動が生じるが、この流速の変動によりグラスウール等の繊維が飛散するおそれがある。この繊維の飛散を防止するために、油分離器の凝集層の内側および外側に保持材を設けている。この保持材は、ネット状に編んだガラス繊維にポリ塩化ビニールをコーティングしたものである。
【0004】油分離器の油分離エレメントは、運転中に100℃前後の高温となるため、保持材としては耐熱性の高いガラス繊維製のネットが適している。しかし、ガラス繊維を用いると端末処理が必要となる。そこで、ガラス繊維の上にポリ塩化ビニールをコーティングし、熱溶着により端末処理を施している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記従来技術の項に記載のものにおいては、ポリ塩化ビニールのコーティングを施したガラス繊維のネットを用いており入手が容易という利点を有している。しかしながら、以下に記載する不具合がある。
【0006】(3)油分離エレメントは消耗品であり、約1年間の使用の後に交換を必要とするが、廃棄物として焼却を行うとポリ塩化ビニールをふくんでいるため、毒性のあるダイオキシンを発生するおそれがある。
【0007】(4)コーティング材として使用されるポリ塩化ビニールは、熱、紫外線、酸素などにより脱化水素反応を主体とする分解劣化を生じ易い。そこで、この劣化を軽減するため、安定剤として有機スズ系化合物やアンチモン化合物、エポキシ系化合物などが添加される。これらの添加物は微量であるとはいえ重金属を含んでおり、重金属系廃棄物は好ましくない。またエポキシ系化合物を長期間にわたり高温で使用すると潤滑油中に溶出し、潤滑油中に含まれる酸化防止剤等と反応してスラッジ等を生成するおそれがある。
【0008】本発明はこれら従来技術の不具合に鑑みなされたものであり、油冷式圧縮機に用いられる油分離器にポリ塩化ビニールを用いないことにより、ダイオキシン等の有害物質の発生を防止することを目的とする。また、地球環境を保護する油冷式圧縮機を提供することを目的とする。さらに、油冷式圧縮機における潤滑油の劣化を低減することをも目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、圧縮機本体内に回動可能に支持されたロータを有し、このロータの回動により作動ガスを圧縮する際に発生する熱を潤滑油により放熱する油冷式回転型圧縮機において、圧縮機本体の下流側に作動ガスに含まれる油分を分離する油分離器を設け、この油分離器は円筒状の複数の層を有する油分離エレメントを有し、複数の層の全ての層を露出した金属、ガラス繊維、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロンおよび不織布のいずれかから構成したものである。
【0010】そして好ましくは、複数の層を、濾材と、この濾材に隣り合いこの濾材より目の粗い金属製の金網の層とした;濾材と、この濾材に隣り合いこの濾材より目の粗いガラス繊維、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロンおよび不織布のいずれかから構成された層とした;ポリ塩化ビニールを含まない層としたものである。
【0011】より好ましくは、前記濾材は、ガラス繊維、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロンおよび不織布のいずれかから構成されているものである。
【0012】上記目的を達成するための本発明の他の特徴は、油冷式回転型圧縮機の油分離器であって、露出した金属、ガラス繊維、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロンおよび不織布のいずれかの層からなる複数の層を有する油分離エレメントを有するものである。そして好ましくは、エレメントの各層は、ポリ塩化ビニールを含まないものである。
【0013】上記のように構成することにより、微細繊維で構成された凝縮層の繊維は圧縮空気の流速の変化に対しても飛散せず安定して保持される。そして、廃棄時にも公害を引き起こすおそれが無く、また、潤滑油にも悪影響を及ぼさない。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を図面を用いて説明する。図1ないし図3は本発明の一実施例を示す図であり、図1は油冷式回転圧縮機の系統図、図2は図1に示した油冷式回転圧縮機が備える油分離器に用いられるエレメント部の縦断面図、図3は図2に示したエレメントを搭載した油分離器の縦断面図である。
【0015】スクリュー型の圧縮機等を備える油冷式回転圧縮機においては、圧縮機本体1の圧縮室内にロータが回転自在に保持されている。圧縮機本体1は、ロータの回転により吸い込み側から空気等の作動ガスを吸い込み、圧縮室内でロータの回転によりその容積を変化させる。これにより作動ガスは圧縮され、高温の圧縮ガスとなり吐出側から需要側へと送られる。この圧縮作用により、作動ガスは大量の熱を発生する。そこで、圧縮室を冷却するために、大量の油が噴射される。一方、圧縮室内に保持されたロータが高速回転できるように、ロータは圧縮室で図示しない軸受により保持されるが、この軸受の潤滑用にも潤滑油が噴射される。さらに、スクリュー圧縮機の雄雌両ロータ間に形成される隙間をシールするためにも油が噴射される。これらの各油には油系統を簡単化するため同一の潤滑油を用いている。この同一の潤滑油が、圧縮機1から吐出される作動ガスaに含まれている。そこで、作動ガスから潤滑油分を分離して、作動ガス成分のみを需要先へ供給する必要がある。
【0016】潤滑油成分を作動ガスから分離するために、圧縮機吐出口から出た多量の油を含む圧縮ガスaは、第1の容器内2に導かれ、衝突作用や旋回作用により油分の一次分離が行われる。この後、圧縮ガスaは配管を経て、第2の容器3の上に取り付けられたヘッド5へと流入する。ヘッド5内でガスは流通方向を変えられ、薄い金属板をプレス成形して製作された第2の容器3と、円筒状の分離エレメント4により形成された空間へと導かれる。
【0017】分離エレメント4に流入した高温の圧縮空気とオイルミストは、金属製ネットで形成された凝集層保護膜10を通過するが、この膜は次の凝集層11よりはるかに目が粗いため、オイルミストの分離には関与しない。次に、圧縮空気とオイルミストは、グラスウールを積層した凝集層11を通過する。この凝集層11は1μm前後の繊維径を有するガラス繊維で構成されており、ガラス繊維との衝突を繰り返す間に、オイルミストの径は次第に成長していく。
【0018】その後、オイルミストを含む圧縮空気は、再度金属製ネットで形成された凝集層保護膜12を通過する。ところで、凝集層保護膜12、凝集層11、凝集層保護膜10はこの順で円筒13の上に巻きつけて整形されている。円筒13は多数の穴を有する金属板を円筒状に成形したものである。
【0019】圧縮空気とオイルミストが成長して形成された油滴は、凝集層より目の粗い(繊維径の太い)グラスウールや、金網、不織布など成長した油滴を落下させるのに適した材料で構成した分離層14に流入する。次いで、分離層14を保持する円筒状に形成したエクスパンドメタル15を通過した後、油滴は分離エレメント4の内面を伝わって自重により落下する。落下した油滴は、分離エレメント4の底部の底カバー16部に溜まる。油滴が溜まる底カバー16部には、ヘッド5を貫通して回収管7が差し込まれており、溜まった油は回収管7によって吸い上げられて、圧縮機本体1へと戻される。
【0020】油分を分離した圧縮空気は、ヘッド5に取り付けられた逆止弁6a、保圧弁6bを通過して、ヘッド5外へと流出する。これらの部材は底カバー16と上カバー17の間に接着剤18で固定されている。なお、一次分離のための第1の容器2の下部には油タンクが形成されており、一次分離された油はオイルクーラ9で適度に冷却された後に、タンク内から再び圧縮機本体1の雄雌両ロータ間や軸受へと噴射され、繰り返し循環して使用される。
【0021】使用空気量が変動するので、吸込み絞り弁20等を用いて圧縮機の容量を調整するが、このとき圧縮機の容量のみならず油分離エレメント4の通過流速も変化する。また圧縮機の起動時や停止時には、圧縮機内部の圧力を大気に放出する必要があるが、この際にも流速が大きく変化する。このような流速変化は圧縮機の運転中に繰り返し発生するので、微細な繊維で形成されている油分離エレメント4の凝集層11はこれらの流速変動があっても飛散しないで油分離器に保持されていることが必要である。本実施例においては、凝集層11の保持材10,12に金網を用いているので、上述した繊維が飛散するおそれはない。さらに、ポリ塩化ビニールを使用していないので、消耗品である油分離エレメント4を廃棄するときにも公害等の問題を引き起こすことが無く、また、潤滑油に対する悪影響も発生しない。なお、保持材の材料を金網以外の、例えばガラス繊維をネット状に形成しても同様の効果が得られる。
【0022】なお、上記実施例では保持材に金網を使用しているが、この金網の代わりにポリ塩化ビニールを含まない樹脂材料、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル樹脂、ナイロン等の材料であって、金属系安定剤またはエポキシ系化合物を含んでいない材料を用いてもよい。この場合においても、前述の実施例と同様にポリ塩化ビニールを使用していないので、廃棄時の公害発生の問題や、潤滑油に対する悪影響を発生しない。さらに油分離エレメント4を製作するときに、材料を円筒状のエクスパンドメタル15や金属円筒13に内層から巻き付けていく工程がある。前述の実施例の場合には、この工程においては、溶接や接着あるいは縫い込みなどの端部処理が必要であるが、この実施例では熱溶着が可能であり、ポリ塩化ビニールと同様に製造が簡便にできる。
【0023】
【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、油冷式回転圧縮機において用いられる油分離器のエレメント素材にポリ塩化ビニールを使用しないので、使用後の廃棄コストを低減できるとともに、ダイオキシン等の公害を物質を発生しないので環境汚染を防止できる。また、潤滑油の劣化を防止できるので、油冷式回転圧縮機の寿命と信頼性を向上できる。
【出願人】 【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
【出願日】 平成10年(1998)2月16日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】小川 勝男
【公開番号】 特開平11−230074
【公開日】 平成11年(1999)8月24日
【出願番号】 特願平10−32544