トップ :: F 機械工学 照明 加熱 武器 爆破 :: F04 液体用容積形機械;液体または圧縮性流体用ポンプ




【発明の名称】 ルーツ式流体機械
【発明者】 【氏名】増山 昭浩

【要約】 【課題】シール性を向上すると共に閉じ込み空間の発生を防止可能なルーツ式流体機械の提供を目的とする。

【解決手段】所定のサイクロイド曲線歯形の歯部3と歯底部7とを有し、互いに噛み合いながら回転する一対のロータ1,21と、これらのロータ1,21を回転可能に収容するロータ室11aおよび吸込口,吐出口を有するハウジング11とを備えたルーツ式流体機械において、ロータ1,21の歯部3は歯先に両回転方向へ同径で含む角度θ2 度に拡張された円弧状の頂部5bを有し、頂部5bと噛合う歯底部7は、噛合うために基本歯形曲線がえぐられて形成された第1の凹部9a,9aを有し、その歯先部5側の端部9cからそれぞれ歯部側へ拡張された第2の凹部9b,9bが相手側軸心に対して含む角度θ1 度に形成され、θ2 +1度≦θ1 ≦θ2 +3度の関係を有するすることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 所定の歯形曲線をもつ複数の葉状歯部と各葉状歯部の間に形成された谷状歯底部とを有し、互いに噛み合いながら回転する一対のロータと、これらのロータを回転可能に収容するロータ室および流体の吸込口と吐出口を有するハウジングとを備えたルーツ式流体機械において、前記ロータの歯部は歯先に両回転方向へ同径で所定量拡張された円弧状の頂部を有し、前記ロータの歯底部は、相手ロータの頂部と同期噛合いするために所定の基本歯形曲線の歯底部がえぐられて形成された第1の凹部を有すると共に、該凹部の歯部側の各端部からそれぞれ歯先側へ拡張された各第2の凹部を有することを特徴とするルーツ式流体機械。
【請求項2】 請求項1に記載のルーツ式流体機械であって、前記ロータの歯部および歯底部の基本歯形が、所定のサイクロイド曲線歯形であることを特徴とするルーツ式流体機械。
【請求項3】 請求項1または2に記載のルーツ式流体機械であって、前記ロータの頂部の両端部と該ロータの軸心とを結ぶ直線が含む角度をθ2 度とし、前記ロータの歯底部の第2の凹部の歯先側の各端部と相手ロータの軸心とを結ぶ直線が含む角度をθ1 度としたとき、θ2 +1度≦θ1 ≦θ2 +3度の関係を有することを特徴とするルーツ式流体機械。
【請求項4】 請求項2または3に記載のルーツ式流体機械であって、前記円弧状の頂部は、基本歯形を所定のサイクロイド曲線歯形として該歯形の歯先における最外周の点とロータの回転軸心との距離を半径として形成されることを特徴とするルーツ式流体機械。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、車両のス−パチャ−ジャなどに用いられるルーツ式流体機械に関する。
【0002】
【従来の技術】特開昭61−182483号公報に図9のようなル−ツ型のコンプレッサ201が記載されている。
【0003】このコンプレッサ201では、各インボリュート形ロータ203,205の細くなる歯先部をその先端部と同径で周方向両側に拡張し、大きな円弧状歯先部203a,205aを形成し、コンプレッサケーシング207の内周207aとの間のシール部長さを大きく確保して吐出側209と吸込側211間のシール効果を高めることにより体積効率の向上を図っている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、図9示のようにロータ203の円弧状歯先部203aと噛み合う相手側ロータ205の歯底部205bとの間に斜線で示すような閉じ込み空間Cが生じるため、閉じ込み空間C内のエアの圧縮、膨張による騒音の発生と共に、コンプレッサ201の駆動力の損失によりエンジン燃費の悪化を招く。
【0005】そこで、シール性を向上すると共に閉じ込み空間の発生を防止可能なルーツ式流体機械の提供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、所定の歯形曲線をもつ複数の葉状歯部と各葉状歯部の間に形成された谷状歯底部とを有し、互いに噛み合いながら回転する一対のロータと、これらのロータを回転可能に収容するロータ室および流体の吸込口と吐出口を有するハウジングとを備えたルーツ式流体機械において、前記ロータの歯部は歯先に両回転方向へ同径で所定量拡張された円弧状の頂部を有し、前記ロータの歯底部は、相手ロータの頂部と同期噛合いするために所定の基本歯形曲線の歯底部がえぐられて形成された第1の凹部を有すると共に、該凹部の歯部側の各端部からそれぞれ歯先側へ拡張された各第2の凹部を有することを特徴とする。
【0007】したがって、円弧状の頂部の形成により、ロータ室内周との間のシール部長さが大きくなるので吐出側から吸込側への洩れ止め性能が向上し、流体機械の体積効率が向上する。
【0008】また、歯底部に形成された各第2の凹部により、両ロータ間に閉じ込み空間が生じないので、騒音の発生が防止されると共にロータ駆動トルクが低減され、エンジン燃費の悪化が防止される。
【0009】請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のルーツ式流体機械であって、前記ロータの歯部および歯底部の基本歯形が、所定のサイクロイド曲線歯形であることを特徴とする。
【0010】したがって、基本のサイクロイド曲線歯形の歯部の歯先と歯底部とを修正することにより請求項1の発明と同等の作用・効果が得られる。
【0011】請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のルーツ式流体機械であって、前記ロータの頂部の両端部と該ロータの軸心とを結ぶ直線が含む角度をθ2度とし、前記ロータの歯底部の第2の凹部の歯先側の各端部と相手ロータの軸心とを結ぶ直線が含む角度をθ1 度としたとき、θ2 +1度≦θ1 ≦θ2 +3度の関係を有することを特徴とする。
【0012】したがって、請求項1または2の発明と同等の作用・効果が得られると共に、ロータの歯底部と相手ロータの歯先部間の洩れ量の増加を抑制することができる。
【0013】請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載のルーツ式流体機械であって、前記円弧状の頂部は、基本歯形を所定のサイクロイド曲線歯形として該歯形の歯先における最外周の点とロータの回転軸心との距離を半径として形成されることを特徴とする。
【0014】したがって、請求項2または3の発明と同等の作用・効果が得られると共に、前記従来例の構造と異なり、ロータの歯底部がえぐられるれる量が小さいので、ロータの回転時に遠心力が作用してもロータの強度が十分に確保される。
【0015】
【発明の実施の形態】[第1実施形態]本発明の第1実施形態を図1〜図7により説明する。
【0016】図1はエンジンの過給に用いられるルーツ式スーパチャージャの一対の同形状のロータの一方の形状を示し、図2はロータの歯先部の拡大図である。
【0017】一対のロータ1,21(ロータ21は図3に示す)は同一形状で、基本的にサイクロイド曲線からなる歯形を有し、歯部3の歯先部5と歯底部7とに修正を施して形成され、ハウジング11のロータ室11aに収容されて互いに噛合っている。
【0018】歯先部5は、図2の一点鎖線(ピッチ円)よりも外方の、基本のエピサイクロイド曲線歯形の最大径部5a(最外周の点)と同径で周方向両側に所定長さ範囲(後述)に円弧状頂部5bが形成されて修正されている。いいかえれば、円弧状頂部5bはロータ1の回転軸心1aと最大径部5aとを結ぶ距離を半径とした円弧と一致して形成される。頂部5bの両端部5c,5cとロータ1の軸心1aとを結ぶ直線が含む角度は、図3に示すようにθ2 度である。
【0019】図2に示すように、頂部5bの端部5cと基本のエピサイクロイド曲線部との接続部5dは所定の曲率の曲線もしくは直線で接続されている。なお、円弧状頂部5bの内方側に描かれた破線部3aは修正前の基本のエピサイクロイド曲線を示す。
【0020】このように修正された円弧状頂部5bとロータ室11aとの間には所定の微小すきまが設定され、吐出側と吸込側との間のシール部を構成している。
【0021】一方、ロータ1の、図2の一点鎖線よりも内方側の歯底部7の歯形は、ハイポサイクロイド曲線を基本とし、これにつぎの2段階の修正が施されている。
【0022】すなわち、まず第1段階の修正は、上記修正された相手側ロータ21の円弧状頂部5bと同期噛み合いするために基本曲線歯形の歯底部がえぐられて第1の凹部9a,9aが形成されている(図3の2か所の斜線部)。
【0023】この第1段階の修正状態では、図3に示す互いに90度位相がずれて同期噛み合いしている状態で、ロータ1,21間に閉じ込み空間が生じるので、それを避けるために、第1の凹部9a,9aの歯先部5側の各端部9c,9c(図3の噛合状態においては頂部5の端部5cと一致)から歯先部5側へさらに所定量(後述)、凹部9a,9aが拡張されて第2の凹部9b,9bが形成されている。この第2の凹部9b,9bの各歯先部5側の端部9d,9dにて基本のハイポサイクロイド曲線部に接続して歯底部7の形状が設定されている。
【0024】ロータ21の歯底部7に示した上記第2の凹部9bの各端部9d,9dと相手ロータ1の軸心1aとをそれぞれ結ぶ直線が含む角度は、図3に示すようにθ1度である。歯底部7の2段階の修正による角度θ1 度は、歯先部5の修正による角度θ2 度に対してθ2 +1度≦θ1 ≦θ2 +3度の関係を満たすように設定されている。なお、望ましくはθ2 +1度≦θ1 ≦θ2 +2度とするのがよい。
【0025】上記2段階の修正は基本のハイポサイクロイド曲線歯形を削り込む方向の修正であるが、修正による歯底部7のえぐれは小さく、また歯底部7の中央部には図3示のような凸部7aが形成され、この凸部7aと相手ロータ1の円弧状頂部5bとの間に所定の微小すきまを設定する。
【0026】なお、第2の凹部9bを形成したことにより、図4a,b、図5a,bにそれぞれ示すように、微小すきまの最小すきま点Cを1点のみ有するようにロータ1とロータ21との回転噛み合いが移行し、閉じ込み空間が生じない。さらに、図5b以降は一対のロータ1,21はサイクロイド曲線歯形同士が接することになる、つぎに、一対のロータ1,21の作用を説明する。
【0027】図4aは、両ロータ1,21が互いに90度位相がずれて同期噛み合いしている状態を示す。この状態を回転角0度とする。右のロータ1がA方向に、左のロータ21がB方向に回転すると、図の下側が吐出側となり、図の上側が吸込側となる。この直交噛合状態において、ロータ1の円弧状頂部5bと噛合う相手側ロータ21の歯底部7の凹部9a,9bには、上記修正によりそれぞれ吐出側と吸込側に連通している。
【0028】図4bは、上記直交噛合状態からそれぞれ5度回転が進んだ場合の噛合状態を示す。吐出側の凹部9a,9bは接近するものの閉じ込みは生じず、図5a,図5bに示すように、回転角が10度、15度と進むに伴いこの凹部9a,9bのスペースは拡大するので、駆動力の損失を招く恐れはない。
【0029】図6は、一対のロータ1,21に上記円弧状頂部5bを設けた場合(曲線C)の圧力比1.6(吐出圧力/吸込圧力=1.6)としたときの体積効率を、基本のエピサイクロイド曲線歯形のままの歯先部5の場合(曲線D)のそれと対比して示す。円弧状頂部5bを設け、シール部長さを大きくしたことにより体積効率が特に低回転域において大幅に向上する。なお、この場合、ロータ1,21同士およびロータ1,21とハウジング11とのすきまは同一すきまにしている。
【0030】また、図7は、一対のロータ1,21に上記2次修正を施し、閉じ込みの発生を防止した場合(曲線E)の一例の駆動トルクを閉じ込み有りの場合(曲線F)のそれと対比して示す。吐出側流路を絞らない圧力比1.0の場合である。上記2次修正により、図示のように駆動トルクは大幅に低減される。
【0031】こうして、本実施形態によれば、エピサイクロイド曲線歯形の歯先部5に同径の円弧状頂部5bが設けられ、シール部が拡張されているので体積効率が特にロータ1,21の低回転域において大幅に向上する。
【0032】また、歯底部7の2次修正により、歯底部7と円弧状頂部5bとの噛合い時に閉じ込み空間が生じないので、ロータ1,21の駆動トルクが大幅に低減される。
【0033】また、歯底部7の基本のハイポサイクロイド曲線歯形のえぐりが小さいので、ロータ1,21の歯底部7の強度が低下することはない。したがって、回転により遠心力が作用した場合に円弧状頂部5bのすきまが小さくなるようなことはない。
【0034】[第2実施形態]本発明の第2実施形態を図8により説明する。図8aは一対の同形状のロータが互いに90度位相がずれて同期噛み合いしている状態を示し、図8bはそのときの噛合部の拡大図である。
【0035】本実施形態はロータの歯先部の円弧状頂部にラビリンス溝が形成されている点が上記第1実施形態と相違し、その他の構成は第1実施形態と同じである。したがって、この相違点を説明し、重複する説明は省略する。
【0036】図8a.bに示すように、ロータ101,121の所定長さに形成された円弧状頂部105bには、ほぼV字形状の複数のラビリンス溝106が所定の間隔をおいてロータ101,121の軸方向全長に亘り形成されている。
【0037】また、点Cは第1実施形態と同様に最小すきまの点を示している。
【0038】このような構成により、本実施形態によれば、上記第1実施形態と同等の作用・効果が得られると共に、溝106によるラビリンス効果が付加されるので吐出側と吸込側間のシール性が一層向上し、体積効率が一層向上する。
【0039】なお、上記の各実施形態では、2葉のロータについて説明したが、これに限定されるものではなく、例えば3葉のロータや、2葉、3葉であって、かつ軸方向にロータ歯部が捩じれているものでもよい。
【0040】また、ロータの基本の歯形曲線がサイクロイド曲線の場合について説明したが、インボリュート形などの他の歯形曲線のロータに適用することもできる。
【0041】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、請求項1に記載の発明によれば、ロータの歯先に形成された円弧状の頂部により、ロータ室内周との間のシール部長さが大きくなるので吐出側から吸込側への洩れ止め性能が向上し、流体機械の体積効率が向上する。
【0042】また、歯底部に形成された各第2の凹部により、両ロータ間に閉じ込み空間が生じないので、閉じ込みによる騒音の発生が防止されると共に、ロータ駆動トルクが低減され、エンジン燃費の悪化が防止される。
【0043】請求項2に記載の発明によれば、基本のサイクロイド曲線歯形を持つロータのの歯先と歯底部とを修正することにより請求項1の発明と同等の効果が得られる。
【0044】請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2の発明と同等の効果が得られると共に、ロータの歯底部と相手ロータの歯先部間の洩れ量の増加を抑制することができる。
【0045】請求項4に記載の発明によれば、請求項2または3の発明と同等の効果が得られると共に、ロータの歯底部がえぐられるれる量が小さいので、ロータの回転時に遠心力が作用してもロータの強度が十分に確保される。
【出願人】 【識別番号】000225050
【氏名又は名称】栃木富士産業株式会社
【出願日】 平成10年(1998)2月17日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和 (外8名)
【公開番号】 特開平11−230066
【公開日】 平成11年(1999)8月24日
【出願番号】 特願平10−35134