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【発明の名称】 ロータリ圧縮機
【発明者】 【氏名】中西 博志

【氏名】江住 元隆

【要約】 【課題】R22冷媒,R134a冷媒及びR410A代替冷媒用のロータリ圧縮機において耐摩耗性に優れた摺動材を提供する。

【解決手段】シリンダ30と前記シリンダ30内をクランクシャフト8によって偏心回転するローラ31と、前記シリンダ30内壁面に形成された圧縮機に収容されて前記シリンダ30内壁面に対して進退するとともに、その一端が前記ローラ31外周面33に摺接するベーン32が、粉末ハイス50%以上の焼結材で、前記ローラ31が普通鋳鉄に合金添加した連鋳鉄で、前記シリンダ30がパーライト量10%以上の共晶黒鉛鋳鉄または金型共晶黒鉛鋳鉄からなる部材で構成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 シリンダとクランクシャフトにより前記シリンダ内で偏心して回転するローラと、前記シリンダに半径方向に形成した溝に出没可能に挿入された前記ローラと摺接するベーンとを備えたロータリ圧縮機において、前記ベーンが高速度鋼の焼結材で焼入れ焼戻しされ、前記ローラが普通鋳鉄にクロム(Cr)が0.07%以上0.20%以下、モリブデン(Mo)が0.20%以上0.40%以下、銅(Cu)が0.40%以上0.80%以下、ボロン(B)が0.10%以下で、硬さがHRC45以上55以下の連鋳棒とし、前記シリンダが、金型共晶黒鉛鋳鉄または砂型共晶黒鉛鋳鉄でパーライト量10%以上からなる部品で構成されたことを特徴とするロータリ圧縮機。
【請求項2】 前記ベーンが、SKH51の粉末ハイス50%以上の焼結材で焼入れ焼戻しされた材料からなる部品で構成されたことを特徴とする請求項1に記載のロータリ圧縮機。
【請求項3】 前記シリンダが、FC200〜FC300相当の金型共晶黒鉛鋳鉄で、黒鉛形状がASTM分類法による“D”型で、黒鉛サイズがASTM分類法によるNo.6〜8で、チタン(Ti)量0.10%以上0.13%以下で、基地中のパーライト量が10%以上からなる材料で構成されたことを特徴とする請求項1に記載のロータリ圧縮機。
【請求項4】 前記シリンダが、FC200〜FC300相当の砂型共晶黒鉛鋳鉄で、黒鉛形状がASTM分類法による“D”型で、黒鉛サイズがASTM分類法によるNo.6〜8で、チタン(Ti)量0.15%以上0.19%以下で、球状化剤(Fe−Si−Mg合金)による球状化処理を行い、マグネシウム(Mg)量0.01%以上0.08%以下で、基地中のパーライト量が10%以上からなる材料で構成されたことを特徴とする請求項1に記載のロータリ圧縮機。
【請求項5】 前記シリンダが、FC200〜FC300相当の砂型共晶黒鉛鋳鉄で、黒鉛形状がASTM分類法による“D”型で、黒鉛サイズがASTM分類法によるNo.6〜8で、炭素(C)量2.0%以上3.0%以下で、シリコン(Si)量3.2%以上4.0%以下で、基地中のパーライト量が10%以上からなる材料で構成されたことを特徴とする請求項1に記載のロータリ圧縮機。
【請求項6】 冷媒がHFCで、冷凍機油がエステル油であることを特徴とする請求項1から請求項5いずれかに記載のロータリ圧縮機。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ロータリ圧縮機に係わり、特にR22冷媒、R134a冷媒及びR410A代替冷媒用としてHFC冷媒に好適な圧縮機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図3及び図4は、従来知られたロータリ圧縮機で、シリンダ110と、クランクシャフト108により前記シリンダ110内で偏心して回転するローラ113と、前記シリンダ110に半径方向に形成した貫通溝124に出没可能に挿入された前記ローラ113と摺接するベーン114とを備えたロータリ圧縮機である。前記ベーン114は従来一般に耐摩耗性に優れた特殊鉄系材料に熱処理をして使用しており、また前記ローラ113は特殊合金鋳鉄、鉄系焼結材を使用している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし近年は、ベーン,ローラ,シリンダの摺動条件が厳しくなり、またR22代替冷媒に変わる中で、より耐摩耗性のよい材料組合せが要求されるようになってきた。従来のベーンのような特殊鋼(SKH51も含む),特殊鋳物,鉄系焼結材のような単独では耐摩耗性が不十分である。また、従来のローラのような特殊鋳物,鉄系焼結材のような単独でも耐摩耗性は不十分である。また、従来のシリンダのような共晶黒鉛鋳鉄、またはねずみ鋳鉄、または焼結鉄での単独でも耐摩耗性は不十分である。本発明は、このような従来技術の問題点を解消することにあり、構成部品のうち特にローラ,ベーン,シリンダ等の摩擦摺動部品の全般にわたり、それ自身が優れた耐摩耗性を有し、かつ厳しい境界潤滑条件に耐えるような材料が組み合わされたロータリ圧縮機を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記問題を解決するために、シリンダとクランクシャフトにより前記シリンダ内で偏心して回転するローラと、前記シリンダに半径方向に形成した溝に出没可能に挿入され前記ローラと摺接するベーンとを備えたロータリ圧縮機において前記ベーンが焼結ハイス材で焼入れ焼戻しを行い、かつ前記ローラが連鋳棒とし、かつ前記シリンダが金型共晶黒鉛鋳鉄または砂型共晶黒鉛鋳鉄でパーライト率10%以上なる部品で組み合わせることで、前記ベーン,ローラ,シリンダの耐摩耗性を向上させたことを特徴とするものである。
【0005】
【発明の実施の形態】請求項1に記載の発明は、ローラを普通鋳鉄にクロム(Cr),モリブデン(Mo),銅(Cu),ボロン(B)を添加した連鋳棒とした材料である。
【0006】請求項2に記載の発明は、ベーンを前記SKH51の粉末ハイス50%以上の材料とし、ローラを前記連鋳棒とした材料である。
【0007】請求項3に記載の発明は、シリンダをチタン(Ti)量0.10%以上0.13%以下とし、パーライト量10%以上とした金型共晶黒鉛鋳鉄で、ベーンを前記SKH51の粉末ハイス50%以上の材料とし、ローラを前記連鋳棒とした材料である。
【0008】請求項4に記載の発明は、シリンダをチタン(Ti)量0.15%以上0.19%以下で、球状化処理にてマグネシウム(Mg)量を0.01%以上0.08%以下とし、パーライト量10%以上とした砂型共晶黒鉛鋳鉄で、ベーンを前記SKH51の粉末ハイス50%以上の材料とし、ローラを前記連鋳棒とした材料である。
【0009】請求項5に記載の発明は、シリンダを炭素(C)量2.0%以上3.0%以下でシリコン(Si)量3.2%以上4.0%以下で、パーライト量10%以上の砂型共晶黒鉛鋳鉄で、ベーンを前記SKH51の粉末ハイス50%以上の材料とし、ローラを前記連鋳棒とした材料である。
【0010】請求項6に記載の発明は、冷媒がHFCで、冷凍機油がエステル油であることを特徴とする請求項1から請求項5に記載のロータリ圧縮機である。
【0011】特に代替冷媒R410Aにおける圧縮機では、現行冷媒より高負荷条件になるため、上記優れた耐摩耗性を有する材料を組み合わせることにより信頼性の高い圧縮機が実現できる。
【0012】
【実施例】以下本発明のいくつかの実施例について説明する。
【0013】図1は本発明の圧縮機の1実施例の縦断面図であり、図2はその横断面図である。密閉容器1内部に電動機部2と圧縮機構部3が配され、電動機部2に直結されたクランクシャフト8は上軸受け9と下軸受け11に支持されている。シリンダ30内にローラ31が配され、クランクシャフト8と偏心部に貫入され、遊星運動を行う。
【0014】シリンダ30の貫通溝24に挿入されたベーン32はスプリング15及び背圧(吐出圧)によりローラ31に押しつけられたシリンダ30を吸入室16と圧縮室17に分割する。シリンダ30には吸入孔5があけられ、吸入管4を介してアキュムレータ(図示せず)とつながっている。
【0015】この構成による作用を説明する。電動機部2によりクランクシャフト8駆動され、ローラ31の遊星運動(図2で左回転)により吸入管4より吸入孔5を経て、吸入室16へHFCなどの冷媒ガスが吸入され、圧縮機17で圧力が上げられ吐出切り欠き19を経て、吐出孔6より密閉容器1内へ吐出される。この時、吸入室16と圧縮機17を仕切るベーン32はスプリング15とベーン背部にかかる圧力でローラ31の外周に押しつけられた接点で摺動しながら運動する。この摺動点の潤滑油は主として、吸入ガスに混合してきたオイルにより潤滑される。吸入管4に入ってくる吸入ガスには冷媒ガスとともに、冷凍サイクルを循環する。冷凍機油23はわずかながら含まれているが、このレベルの量では金属接触に近い境界潤滑条件となり、特に冷媒に摺動性が望めないHFCでは厳しい摺動条件となる。
【0016】ベーン32の材質として粉末ハイスの焼結材で焼入れ焼戻しされたものを使用し、貫通部24内で往復運動を行う。往復運動であるため、前記シリンダ30の貫通溝24とベーンのサイドは油膜が生じにくく、厳しい摺動条件となる。また前記ベーン32の先端と前記ローラ31の外周面33は前述したように油の少ない境界潤滑状態となっている。こういった状況の中で、前記ローラ31が普通鋳鉄にクロム(Cr),モリブデン(Mo),銅(Cu),ボロン(B)を添加した合金鋳鉄の連鋳棒であり、焼入れ焼戻し材でありマルテンサイト基地の中にステダイト(リンの化合物)及びボロンの炭化物が分散しているため非常に耐摩耗性に優れ、前記シリンダ30の基地中にパーライトを10%以上含ませることにより、ベーンとシリンダ、ベーンとローラの間の耐摩耗性が向上し信頼性の高い圧縮機が実現できる。
【0017】前記ベーン32が、SKH51の焼結材で粉末ハイス50%以上からなる材料で、前記ローラ31が合金鋳鉄の連鋳棒で、かつ前記シリンダが砂型黒鉛鋳鉄で、球状化剤(Fe−Si−Mg合金)にて球状化処理を行い、過冷黒鉛(ASTM黒鉛分類D型)が晶出しやすくし、さらにチタン(Ti)を添加することによってパーライトを20%程度含んだものは、耐摩耗性は非常によくなる。以上のことから、信頼性の高い圧縮機が実現できる。
【0018】前記ベーン32が、SKH51の焼結材で粉末ハイス50%以上からなる材料で、前記ローラ31が合金鋳鉄の連鋳棒で、かつ前記シリンダが金型共晶黒鉛鋳鉄でチタンを添加することによってパーライトを20%程度含んだものは、共晶セルの大きさも大きく、かつ前記共晶セルの境界上に網目状にパーライトを分布させ、パーライトの部分で前記ベーン32の側面を受けるため、耐摩耗性は非常によくなる。以上のことから、信頼性の高い圧縮機が実現できる。
【0019】前記ベーン32が、SKH51の焼結材で粉末ハイス50%以上からなる材料で、ローラ31が前記合金鋳鉄の連鋳棒で、かつ前記シリンダが低炭素(C量2.0%〜3.0%)高シリコン(Si量3.2%〜4.0%)砂型共晶黒鉛鋳鉄でパーライトを20%程度含んだものは、基地中のシリコフェライトの影響で硬度も高く、耐摩耗性に対し非常に優れた材料となる。
【0020】
【発明の効果】前記ベーン32が、高速度鋼の焼結材とし、前記ローラ31が焼き入れ焼き戻し材の合金鋳鉄連鋳棒とし、前記シリンダ30が、金型共晶黒鉛鋳鉄または砂型共晶黒鉛鋳鉄でパーライト量10%以上からなる部品で構成されたことを特徴とするロータリ圧縮機を運転すると、前記ローラに耐摩耗性の優れたステダイト及び炭化物が存在することによって、非常に耐磨耗性の優れたベーンとローラの組み合わせとなり、信頼性の高いロータリ圧縮機となる。
【0021】また、パーライト量が10%以上の金型共晶黒鉛鋳鉄又は砂型共晶黒鉛鋳鉄のシリンダとベーンの組み合わせでも、共晶黒鉛鋳鉄のパーライトの網目状の分布もしくは基地中の硬質なシリコフェライトによって耐磨耗性が非常に良くなる。以上のような理由により、R22代替冷媒HFCにおいても耐摩耗性の優れた、信頼性の高いロータリ圧縮機となる。
【出願人】 【識別番号】000005821
【氏名又は名称】松下電器産業株式会社
【出願日】 平成9年(1997)6月30日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】滝本 智之 (外1名)
【公開番号】 特開平11−13666
【公開日】 平成11年(1999)1月19日
【出願番号】 特願平9−173417