トップ :: F 機械工学 照明 加熱 武器 爆破 :: F04 液体用容積形機械;液体または圧縮性流体用ポンプ




【発明の名称】 ロータリ圧縮機
【発明者】 【氏名】原田 照丸

【氏名】生駒 光博

【氏名】西脇 文俊

【氏名】新宅 秀信

【氏名】長谷川 寛

【氏名】鈴木 悦郎

【要約】 【課題】冷凍冷蔵庫や空調機に使用されるロータリ圧縮機において、塩素を含まない冷媒を使用する時、ローラとベーンの摺動部には厳しい摺動状態が生じ、信頼性確保、長寿命化が難しい。

【解決手段】シリンダ2と、クランクピン部を有するクランク軸と、そのクランク軸を回転可能に支持する軸受と、クランクピン部に従動しながらシリンダ2内を移動(公転)するローラ4と、先端の全部または一部がR形状であるベーン3と、ローラ4の外周面にベーン3先端Rと同様のR形状の凹溝部10とを備え、ベーン3先端がローラ4の凹溝部10に摺動可能に当接配置され、ベーン3先端と凹溝部10の摺動方向にくさび形状の隙間12が設けられており、加工も容易で、他の摺動部に悪影響を及ぼさずに、ベーン3とローラ4の当接部分に油圧発生を積極的に行い、摺動部潤滑を良好にし、より信頼性が高く長寿命化したロータリー圧縮機を実現できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 シリンダと、クランクピン部を有するクランク軸と、そのクランク軸を回転可能に支持する軸受と、前記クランクピン部に従動しながら前記シリンダ内を移動(公転)するローラピストンと、先端の全部または一部がR形状であるベーンとを備え、前記ローラピストンの外周面にR形状の凹溝部が設けられ、前記ベーン先端が前記ローラ凹溝部に摺動可能に当接配置され、前記ベーン先端と前記ローラ凹溝部との間に、その摺動方向にくさび形状の隙間が形成されているロータリ圧縮機。
【請求項2】 前記ローラピストンの外周面に前記ベーン先端Rよりわずかに大きい半径を持つR形状の凹溝部が設けられている請求項1記載のロータリ圧縮機。
【請求項3】 前記ベーン先端Rの半径Rvと前記ローラ凹溝部の半径Rrが、【数1】0<(Rr−Rv)/Rr<0.1の関係で構成された請求項2記載のロータリ圧縮機。
【請求項4】 前記ベーン先端形状内で、前記ベーン側面側に位置するベーン先端部分に、中央部と異なる径のR加工または面取りが施され、そのR加工又は面取り部と、前記R形状の凹溝部とで、前記くさび形状の隙間が形成されている請求項1記載のロータリ圧縮機。
【請求項5】 前記ローラピストン凹溝部のR部と前記ローラピストン外周面の交叉部分に、R加工または面取りが施されている請求項1から4記載のいずれかのロータリ圧縮機。
【請求項6】シリンダと、クランクピン部を有するクランク軸と、そのクランク軸を回転可能に支持する軸受と、前記クランクピン部に従動しながら前記シリンダ内を移動(公転)するローラピストンと、先端の全部または一部がR形状であるベーンとを備え、前記ローラピストンの外周面に前記ベーン先端と実質上同曲率を持つR形状の凹溝部が設けられ、前記ベーン先端が前記ローラピストン凹溝部に当接配置され、前記凹溝部のR部とローラピストン外周面とローラピストン側面の交点部分に、R加工または面取りが施されているロータリ圧縮機。
【請求項7】シリンダと、クランクピン部を有するクランク軸と、そのクランク軸を回転可能に支持する軸受と、前記クランクピン部に従動しながら前記シリンダ内を移動(公転)するローラピストンと、先端の全部または一部がR形状であるベーンとを備え、前記ローラピストンの外周面に前記ベーン先端と実質上同曲率を持つR形状の凹溝部が設けられ、前記ベーン先端部分が前記ローラピストン凹溝部に当接配置され、前記ベーン先端部分の硬さと前記ローラピストンの凹溝部の硬さとの対比において、一方が他方より硬い材料又は表面処理が施されたロータリ圧縮機。
【請求項8】シリンダと、クランクピン部を有するクランク軸と、そのクランク軸を回転可能に支持する軸受と、前記クランクピン部に従動しながら前記シリンダ内を移動(公転)するローラピストンと、先端の全部または一部がR形状であるベーンとを備え、前記ローラピストンの外周面に前記ベーン先端と略同曲率を持つR形状の凹溝部が設けられ、前記ベーン先端部分が前記ローラピストン凹溝部に当接配置され、前記ローラピストンの凹溝部と前記ベーン先端部のうち、硬さが柔らかい方は、なじみ性の良い材料で構成されている請求項7記載のロータリ圧縮機。
【請求項9】シリンダと、クランクピン部を有するクランク軸と、そのクランク軸を回転可能に支持する軸受と、前記クランクピン部に従動しながら前記シリンダ内を移動(公転)するローラピストンと、先端の全部または一部がR形状であるベーンとを備え、前記ローラピストンの外周面に前記ベーン先端と略同曲率を持つR形状の凹溝部が設けられ、前記ベーン先端部分が前記ローラピストン凹溝部に当接配置され、前記ベーン先端部と前記ローラピストンの凹溝部のうち、硬さの硬い方の表面は、他方より滑らかに(表面粗さを小さく)仕上げられている請求項7又は8記載のロータリ圧縮機。
【請求項10】冷媒として、塩素を含まない冷媒を使用した請求項1から9記載のいずれかのロータリ圧縮機。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は冷凍冷蔵庫や空調機等に用いられるロータリー圧縮機に関する。
【0002】
【従来の技術】ロータリー圧縮機はそのコンパクト性や構造が簡単なことから、冷凍冷蔵庫や空調機などに多く使用されている。圧縮機の主要構成部品であるベーンやローラピストンなどの圧縮機構部は、例えば、川平著、密閉形冷凍機(平成5年)第14頁、図6.1に記載されている。
【0003】以下に、図8を用いて、従来のロータリー圧縮機の動作について説明する。密閉容器内(図示せず)に、偏心部を有するクランク軸1とクランク軸1を支える軸受(図示せず)とシリンダ2とベーン3と前記シリンダ2内で偏心回転するローラピストン(以降、ローラと称す)4とからなる圧縮機構部を構成し、先端が円弧状のベーン3はシリンダ2の溝5内を往復動し、かつその先端部は、スプリング6によるばね力およびシリンダ2の内外の圧力差による力によって、ローラ4の外周面に押し付けられて、ローラ4の外周部と接触摺動し、シリンダ2内を吸入室7と圧縮室8に分割している。
【0004】Oはシリンダ2とクランク軸1の中心で、クランク軸1は中心Oからeだけ偏心したOpを中心とする偏心部(以降クランクピンと称す)9を有し、クランクピン9にはローラ4が嵌合されており、電動機(図示せず)によりクランク軸1が回転してローラ4がシリンダ2内を公転することにより、冷媒ガスを吸入室7に吸い込み、吸い込んだ冷媒ガスを圧縮室8で圧縮しながら、吐出口(図示せず)から吐出し、吐出された冷媒は、冷凍サイクル側に送られ、凝縮器、膨張弁、蒸発器を経て、再度圧縮機の吸入室7に吸い込まれる。
【0005】前記構成においては、ローラ4とベーン3先端との当接部では、おもに吸入冷媒中に含まれるオイルと、ベーン3とシリンダ2に設けられたベーン溝5の隙間、あるいは、ローラ4の端面部の隙間を圧力差により通過するオイルにより油膜が形成されていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の従来の構成では、ベーン3の先端部は円弧曲面であり、ローラ4の外周面も円形状曲面(円筒面)であるので、ベーン3とローラ4の接触状態は等価的には小円筒と大円筒の接触となる。したがって、接触状態は線接触状態で、接触面積が小さくなり、単位面積当たりの荷重(接触応力)が大きくなり、ベーン3とローラ4の接触摺動条件は過酷なものとなる。
【0007】また、ローラ4の自転数もローラ4の内周面とクランクピン9との摺動抵抗と、ローラ4の外周面とベーン3の先端との摺動抵抗の差などで決まるものであり、ローラ4の自転数は非常に不安定である(一般にクランク軸1の回転数を3500rpmで運転した時、ローラの自転数は数十〜数百rpm程度)。
【0008】このため、ベーン3の先端とローラ4の摺動面は、すべり速度が条件により変わり、油膜厚さも変わる不安定なすべり摺動となる。
【0009】さらに、オゾン層保護の目的から、塩素を含まない代替冷媒(例えばR−134aなど)が近時使用されてきているが、これらは、塩素を含む冷媒に比べて、さらに摺動状態が悪くなるため、圧縮機の使用条件を厳しく制限したり、耐摩耗性をより向上した摺動材料を開発する必要があるなどの問題点を有していた。
【0010】本発明は上記従来の問題点を解決するもので、ベーンとローラの摺動部負荷を低減し、ベーンとローラの摺動部潤滑を確実にして、より信頼性が高く長寿命化したロータリー圧縮機を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するために、シリンダと、クランクピン部を有するクランク軸と、そのクランク軸を回転可能に支持する軸受と、前記クランクピン部に従動しながら前記シリンダ内を移動(公転)するローラと、先端の全部または一部がR形状であるベーンと、前記ローラの外周面に前記ベーン先端Rと同様のR形状の凹溝部を設け、前記ベーン先端が前記ローラ凹溝部に摺動可能に当接配置され、前記ベーン先端と前記ローラ凹溝部の摺動方向にくさび形状の隙間を形成したロータリ圧縮機である。
【0012】なお、ローラの外周面に前記ベーン先端Rよりわずかに大きい半径を持つR形状の凹溝部を設けた構成としても良い。
【0013】あるいは、ベーン先端Rの半径Rvとローラ凹溝部の半径Rrが、【0014】
【数1】0<(Rr−Rv)/Rr<0.1の関係で構成しても良い。
【0015】あるいは、ベーン先端形状内で、ベーン側面側に位置するベーン先端部分に、中央部と異なる径のR加工または面取りを施し、ローラの外周面に設けたR形状の凹溝部とくさび形状の隙間を形成させても良い。
【0016】加えて、ローラ凹溝部のR部とローラ外周面の交点部分に、R加工または面取りを施した構成でも良い。
【0017】更に、ローラ凹溝部のR部とローラ外周面とローラ側面の交点部分に、R加工または面取りを施しても良い。
【0018】また、ベーン先端部分の硬さとローラの凹溝部の硬さを比較して、一方が他方より硬い材料又は表面処理が施された仕様でも良い。
【0019】あるいは、ローラの凹溝部と前記ベーン先端部の硬さが柔らかい方は、なじみ性の良い材料で構成された仕様でも良い。
【0020】さらに、ベーン先端部と前記ローラの凹溝部の硬さの硬い方の表面は、他方より滑らかに(表面粗さを小さく)仕上げた構成でも良い。
【0021】さらに、上記の構成で、冷媒として、塩素を含まない冷媒を使用しても良い。
【0022】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施例について説明する。
【0023】本発明の一実施例のロータリー圧縮機の構成は、ローラ溝部など一部を除いて従来例と概略同様な構成であ。
【0024】(実施の形態1)以下、本発明の第1の実施例について、図1と、そのA部拡大図である図2、そのB部拡大図である図3を参照しながら説明する。
【0025】図1、図2、図3に示すように、シリンダ2と、クランクピン部9を有するクランク軸1と、そのクランク軸1を回転可能に支持する軸受(図示せず)と、クランクピン部9に従動しながらシリンダ2内を移動(公転)するローラ4と、先端の全部または一部がR形状であるベーン3と、ローラ4の外周面にベーン3の先端R形状と同様のR形状の凹溝部を設け、ベーン3先端がローラ凹溝部10に摺動可能に当接配置されている。
【0026】ローラ凹溝部10の半径は、ベーン3先端Rの半径Rvよりわずかに大きい半径Rrとし、さらに、ベーン3先端Rの半径Rvとローラ凹溝部10の半径Rrが、【0027】
【数1】0<(Rr−Rv)/Rr<0.1の関係で構成されている。
【0028】この様な構成にすることにより、ベーン3先端とローラ凹溝部10の摺動部の受圧面積を大きくでき、摺動部負荷を低減できる。
【0029】また、ベーン3先端とローラ凹溝部10の摺動方向に、くさび形状の隙間11、12を形成し、ベーン3先端とローラ溝部10が、お互いに摺動する際に、圧縮室8や吸入室7の冷媒雰囲気中に存在するオイルが、くさび状の隙間11、12内で、くさび効果による油圧を発生し、さらに、くさび状の隙間11、12が(数1)で示す範囲で(左右に)微少移動するため、呼吸作用(スクーズ効果)による油圧も発生する。このため、ベーン3とローラ4の摺動部潤滑状態がより良くなり、信頼性の高い圧縮機を得ることができる。
【0030】なお、隙間が大き過ぎると、デッドボリューム増加による効率低下や(左右)振動による騒音発生などが無視できなくなるため、(数1)の範囲で規制している。
【0031】(実施の形態2)以下、本発明の第2の実施例について、図4を参照しながら説明する。
【0032】図4では、ベーン3先端形状内で、ベーン側面側に位置するベーン先端部分に、中央部の半径Rvと異なる径RvsのR加工を施し、ローラ4の外周面に設けたR形状の凹溝部10とくさび形状の隙間11、12を形成させた構成となっている。このような構成で、実施例1と同様なくさび効果が期待できる。
【0033】なお、本実施例では、ベーン側面側に位置するベーン先端部分に、中央部の半径Rvと異なる径Rvsの例を示したが、Rvsの代わりに面取りでも良く、左右の径Rvsは異なった径でも良いのは無論である。
【0034】(実施の形態3)以下、本発明の第3の実施例について図5を参照しながら説明する。
【0035】図5に示すように、ローラ凹溝部10のR部とローラ4外周面の交叉部分に、面取りCを施した構成となっている。
【0036】このような、構成にすることにより圧縮空間8や吸入空間7の冷媒雰囲気中にあるオイルがスムーズに、ベーン3先端とローラ凹溝部10の摺動部分に供給され、潤滑状態を良くすることができる。
【0037】なお、図5では、面取りCであるが、R加工を施しても良いし、実施例1や2と組み合わせても良いのは無論である。
【0038】(実施の形態4)以下、本発明の第4の実施例について、図6を参照しながら説明する。
【0039】図6に示すように、ローラ凹溝部10のR部とローラ外周面4aとローラ側面4bの交点である4c部(4ヶ所)に、小さなR加工または面取りを施して、角(エッジ)をなくす。
【0040】このような構成にすることにより、ローラ4がクリアランスの範囲で傾いて摺動しても、ローラ側面4bが摺動する軸受端面(図示省略)を、角4c部は傷つけることはない。
【0041】(実施の形態5)以下、本発明の第5の実施例について、図7を参照しながら説明する。図7には、ベーン3先端部分の硬さがローラ凹溝部10の硬さより硬い材料又は表面処理が施され、ローラ凹溝部10は、なじみ性の良い材料で構成され、ベーン3先端部の表面は、ローラ凹溝部10より滑らかに(表面粗さを小さく)仕上げられた例を示す。
【0042】このような構成にすることにより、運転初期において、ローラ凹溝部10表面は、ベーン3先端部分による、なじみ摩耗(いわゆる初期なじみ)が進行し、加工時に、ローラ凹溝部10の表面精度を、あまり上げる必要がないため、加工工数が少なくできる。
【0043】なお、本実施例では、ベーン3先端側の硬度を上げたが、ローラ凹溝部10表面の硬度を上げても良いことは無論である。要するに、ベーン先端部と凹溝部との関係は、硬さ、なじみ性(fitting characteristics)、なめらか性の全部、あるいは一部において、相対的に逆の関係にあればよい。
【0044】
【発明の効果】以上の説明からも明らかなように本発明は、加工も容易で、他の摺動部に悪影響を及ぼさずに、ベーンとローラの当接部分に油圧発生を積極的に行い、摺動部潤滑を良好にし、より信頼性が高く長寿命化したロータリー圧縮機を実現できるものである。
【出願人】 【識別番号】000005821
【氏名又は名称】松下電器産業株式会社
【識別番号】000004488
【氏名又は名称】松下冷機株式会社
【出願日】 平成9年(1997)6月26日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
【公開番号】 特開平11−13663
【公開日】 平成11年(1999)1月19日
【出願番号】 特願平9−170706