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【発明の名称】 自動二輪車用エンジンの始動歯車装置
【発明者】 【氏名】高橋 英明

【要約】 【課題】簡単な構造でロック現象の発生を防止可能な自動二輪車用エンジンの始動歯車装置を提供するにある。

【解決手段】駆動ギヤが被駆動ギヤ33に周方向から飛び込んで両方のギヤが噛合う始動歯車装置において、上記被駆動ギヤ33の歯先にセミトッピング加工39を施して尖らせたものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 駆動ギヤが被駆動ギヤに周方向から飛び込んで両方のギヤが噛合う始動歯車装置において、上記被駆動ギヤ33の歯先にセミトッピング加工39を施して尖らせたことを特徴とする自動二輪車用エンジンの始動歯車装置。
【請求項2】 駆動ギヤ32が被駆動ギヤ33に周方向から飛び込んで両方のギヤが噛合う始動歯車装置において、上記被駆動ギヤ33の歯先に略半円形加工40を施したことを特徴とする自動二輪車用エンジンの始動歯車装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動二輪車用エンジンの始動歯車装置に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば自動二輪車に用いられるエンジンの始動歯車装置としてはキック式の始動歯車装置がある。このキック始動歯車装置は、例えばキックレバーを踏みおろすことによりこのキックレバーに一体的に設けられたキックシャフトおよびキックドライブギヤを回動させ、それによりキックドライブギヤがクランクシャフトに設けられたキックドリブンギヤに周方向から飛び込んでキックドリブンギヤと噛み合い、ワンウェイクラッチを介してクランクシャフトを回転させるようになっている。
【0003】ところで、従来上述したような飛び込み式の始動歯車装置の場合ロック現象が発生してそれぞれのギヤを変形させたり破損させる虞があったため、例えば特開平6−257538号公報や図6(a)および(b)に示すように、キックドリブンギヤ1に最初に噛み合うキックドライブギヤ2の第一歯2aの歯丈を第二歯2b以降の歯丈より低くして第二歯2b以降の歯とキックドリブンギヤ1との噛み合いを確実かつ円滑にさせたものがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述した構造のものでもわずかな確立でロック現象が発生する虞がある。これは図6(b)および(c)に示すように、キックドリブンギヤ1の歯先に形成されている平面部3がキックドライブギヤ2の第一歯2aの歯先角部に当接するためで、θ°/(360°/T)、すなわちキックドリブンギヤ1の歯先平面部3の角度対キックドリブンギヤ1の歯と歯との間の角度(T=歯数)の確率でロック現象が発生する。
【0005】本発明は上述した事情を考慮してなされたもので、簡単な構造でロック現象の発生を防止可能な自動二輪車用エンジンの始動歯車装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明に係る自動二輪車用エンジンの始動歯車装置は、上述した課題を解決するために、請求項1に記載したように、駆動ギヤが被駆動ギヤに周方向から飛び込んで両方のギヤが噛合う始動歯車装置において、上記被駆動ギヤの歯先にセミトッピング加工を施して尖らせたものである。
【0007】また、上述した課題を解決するために、請求項2に記載したように、キックドライブギヤが被駆動ギヤに周方向から飛び込んで両方のギヤが噛合う始動歯車装置において、上記被駆動ギヤの歯先に略半円形加工を施したものである。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0009】図1は、この発明を適用したスクータなどの自動二輪車に用いられるユニットスイング型エンジンの平断面図である。このユニットスイング型エンジン11は例えば4サイクル空冷単気筒のエンジン本体12と、このエンジン本体12の一側から後方に延びる伝導ケース13とを一体的に備える。
【0010】エンジン本体12は主にエンジンケース14、シリンダブロック15およびシリンダヘッド16から構成され、シリンダブロック15内のピストン17の往復運動がコンロッド18を介してエンジンケース14内を車幅方向に延びるクランクシャフト19を回転運動させる。
【0011】エンジン本体12の一側、本実施形態においては左側から後方に延びる伝導ケース13はその内部にベルト室20を形成し、このベルト室20にVベルト式自動変速装置21が配置される。
【0012】クランクランクシャフト19の一端にはVベルト式自動変速装置21のドライブプーリ22が取り付けられる。一方、ドリブンプーリ23がVベルト式自動変速装置21の後方部に設けられたミッション機構24の出力軸であるドライブシャフト25によって回転自在に軸支されている。また、これらのドライブプーリ22とドリブンプーリ23との間にはVベルト26が張架され、このVベルト26を介してドリブンプーリ23にエンジンの回転駆動力が伝達される。
【0013】さらに、ドリブンプーリ23に伝達されたエンジンの回転駆動力は遠心クラッチ機構27を介してドライブシャフト25に伝達される。そして、このドライブシャフト25は、減速歯車機構であり、動力伝達装置でもあるミッション機構24を通じて例えば駆動輪28に回転駆動力を伝えるようになっている。
【0014】本実施形態記載のユニットスイング型エンジン11にはキック式の始動歯車装置29が備えられる。この始動歯車装置29は、ドライブプーリ22とドリブンプーリ23との間に配置され、キックシャフト30、キックレバー31、駆動ギヤであるキックドライブギヤ32および被駆動ギヤであるキックドリブンギヤ33を主な構成部材として備える。
【0015】図2は、図1のII矢視図である。図1および図2に示すように、キックシャフト30はドライブプーリ22とドリブンプーリ23との間にクランクシャフト19と平行に配置され、その一端が伝導ケース13に軸支されると共に、その他端は伝導ケース13から外方に突出し、その突出端にキックレバー31が回動一体に軸着される。また、キックシャフト30の伝導ケース13内側には例えば扇型のキックドライブギヤ32が回動一体に固着される。
【0016】一方、クランクシャフト19のドライブプーリ22側端部にはキックドリブンギヤ33が摺動可能かつ回転自在に軸支され、キックドライブギヤ32と噛合い可能に設定される。キックドライブギヤ32とキックドリブンギヤ33とはリターンスプリング34により通常は噛合いが解かれた状態にあり、キックレバー31を踏みおろすとキックドライブギヤ32が図2の矢印が示す方向に回動してキックドリブンギヤ33にその周方向から飛び込んでキックドライブギヤ32とキックドリブンギヤ33とが噛合う。
【0017】キックドリブンギヤ33の端部にはドライブラチェット35が例えば圧入されて一体化されると共に、ドリブンラチェット36がクランクシャフト19にスプラインおよびナット37により結合される。そして、ドライブラチェット35からはドリブンラチェット36の方にのみ駆動力が伝達される様、両ラチェットの対向面には鋸歯状の噛合部(図示せず)が形成されており、スプリング38により噛合いが保たれる。
【0018】図3は、キックドライブギヤ32とキックドリブンギヤ33とが噛合う寸前を示す拡大側面図である。図2および図3に示すように、キックドリブンギヤ33に噛合うキックドライブギヤ32の第一歯32aは、第二歯32b以降の歯よりも歯丈が低くされ、第一歯32aをガイド歯として利用することにより第二歯32b以降の歯のキックドリブンギヤ33との噛合いを確実かつ円滑にする。
【0019】図4は、本発明の第一実施形態を示すキックドリブンギヤ33の歯の拡大図である。図4に示すように、キックドリブンギヤ33の歯先にはセミトッピング加工39が施されて尖らされる。
【0020】図5は、本発明の第二実施形態を示すキックドリブンギヤ33の歯の拡大図である。図5に示すように、キックドリブンギヤ33の歯先には略半円形加工40が施される。
【0021】次に、本実施形態の作用について説明する。
【0022】キックドリブンギヤ33の歯先がキックドライブギヤ32の第一歯32aの歯先角部に当接してロック現象を発生させる確率は、θ°/(360°/T)、すなわちキックドリブンギヤ33の歯先に形成される平面部の角度対キックドリブンギヤ33の歯と歯との間の角度(T=歯数)で求められるが、本発明においてはキックドリブンギヤ33の歯先にセミトッピング加工39を施して尖らせたり(第一実施形態)、キックドリブンギヤ33の歯先に略半円形加工40を施した(第二実施形態)ことにより、例えば図4に示すように、キックドリブンギヤ33の歯先に形成される平面部の角度(θ)が限りなく0(ゼロ)に近くなる。その結果、ロック現象が発生する確率も同様に0(ゼロ)に近くなる。
【0023】ところで、キックドリブンギヤ33の歯先に形成される平面部の角度を小さくする方法としてはキックドリブンギヤ33の転位係数を尖り限界付近まで上げる方法があるが、反面、キックドライブギヤ32の転位係数が下がってしまい歯の強度が低下してしまう。また、クランクシャフト19とキックシャフト30との軸間も変更を要し、大幅な設計変更が必要となってコストの上昇が免れない。
【0024】しかしながら、本発明においては単にキックドリブンギヤ33の歯先を尖らせたり略半円形に形成するだけでよく、しかもこれらの加工はキックドリブンギヤ33の歯切り加工時と同時に行えるため、加工工程数が増えることがなく、しかもキックドリブンギヤ33の転位係数を変更することもないのでキックドライブギヤ32の歯の強度が低下することもない。そして、クランクシャフト19とキックシャフト30との軸間の変更も不要である。
【0025】以上の結果、大幅な設計変更や複雑な加工を施すことなくロック現象の発生を抑制することができる。
【0026】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る自動二輪車用エンジンの始動歯車装置によれば、駆動ギヤが被駆動ギヤに周方向から飛び込んで両方のギヤが噛合う始動歯車装置において、上記被駆動ギヤの歯先にセミトッピング加工を施して尖らせたため、コストを上昇させたり強度を低下させることなく両方のギヤ間のロック現象の発生を防止できる。
【0027】また、駆動ギヤが被駆動ギヤに周方向から飛び込んで両方のギヤが噛合う始動歯車装置において、上記被駆動ギヤの歯先に略半円形加工を施したため、コストを上昇させたり強度を低下させることなく両方のギヤ間のロック現象の発生を防止できる。
【出願人】 【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
【出願日】 平成10年(1998)3月30日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】波多野 久 (外1名)
【公開番号】 特開平11−280622
【公開日】 平成11年(1999)10月15日
【出願番号】 特願平10−84728