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【発明の名称】 電磁式燃料噴射弁
【発明者】 【氏名】伊藤 嘉彦

【要約】 【課題】燃料噴霧の微粒化を促進し、燃料の均質噴霧が可能な電磁式燃料噴射弁を提供する。

【解決手段】燃料通路31aは、ガイド部31の径方向外側から内側にガイド部31の中心軸を避けてシート面33aと略同一角度で重力方向斜めに延びるように形成されているので、弁部材29がシート面33aから離座したとき、噴孔33cから噴射される直前の加圧燃料は燃料通路31aからオリフィス33bに至る空間内で渦流が形成され、燃料流速が高められる。さらに、オリフィス33bはガイド部31の中心軸上に噴孔33cよりも大径に形成されているので、オリフィス33bに近づくにつれて加圧燃料の旋回は強められ、オリフィス33bと噴孔33cとの間でさらに旋回速度は速まる。したがって、噴孔33cから噴射される燃料は、噴霧の広がり角度が増大され、噴孔33cの直下の吸気に高速で衝突し、燃料噴霧は均質に微粒化される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 噴孔、この噴孔に連通するオリフィス、前記噴孔に連通する燃料通路、およびこの燃料通路と前記噴孔との間に形成される弁座を有する弁ハウジングと、前記弁座に着座および離座可能に前記弁ハウジング内に収容され、着座時、前記燃料通路と前記噴孔との連通を遮断する弁部材と、前記弁部材を着座方向に付勢する付勢手段と、前記弁部材の反噴孔側に位置し、通電時、前記弁部材を離座方向に吸引可能なソレノイド部とを備え、前記燃料通路を形成する前記弁ハウジングの内壁面、前記弁座、および前記オリフィスの全域は漏斗状に形成されていることを特徴とする電磁式燃料噴射弁。
【請求項2】 前記弁ハウジングの径方向外側から内側に前記弁ハウジングの中心軸を避けて前記弁座と略同一角度で重力方向斜めに延びる旋回流発生手段を備え、前記オリフィスは、前記弁ハウジングの中心軸上に前記噴孔よりも大径に形成されていることを特徴とする請求項1記載の電磁式燃料噴射弁。
【請求項3】 前記旋回流発生手段は、前記弁座よりも反噴孔側の前記弁ハウジング内に設けられていることを特徴とする請求項2記載の電磁式燃料噴射弁。
【請求項4】 前記旋回流発生手段は、前記弁ハウジング外空間と連通していることを特徴とする請求項2または3記載の電磁式燃料噴射弁。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電磁式燃料噴射弁に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、燃料供給ポンプで汲上げられた加圧燃料を内燃機関(以下、「内燃機関」をエンジンという)の燃料レールに供給し、その燃料レールに気筒数毎に取付けられた筒形状の燃料噴射弁によって燃料を各気筒毎に分配し噴射する燃料供給システムが知られている。この種の燃料供給システムに使用される燃料噴射弁では、製品コストを低減するため球形状の弁部材を用いたものが知られており、例えば特公昭61−9513号公報に開示される電磁式燃料噴射弁が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、球形状の弁部材を用いた電磁式燃料噴射弁においては、例えばニードル形状の弁部材を用いた電磁式燃料噴射弁と較べて弁部材の重さを軽量にすることができる。これにより、弁部材をリフト、すなわち吸引させる電磁吸引力を小さくできることから、ソレノイド部を小型化することができるという効果がある。しかし、弁部材に噴霧の広がり角度を増大させる手段を設けることが困難であり、霧化が悪いという欠点があった。
【0004】そこで、特公昭61−9513号公報に開示される電磁式燃料噴射弁では、旋回発生素子としての略円柱状のらせん部材をバルブシート下流に配置し、燃料噴霧の広がり角度を増大させて噴霧の質を改善している。しかしながら、上記の従来の技術では、シートを通過した燃料流れは、らせん部材に形成された燃料溝を通過して噴孔に到達する。このため、旋回流は形成されるものの、上記の燃料溝が流体抵抗となって噴孔へ流れ込む燃料流速を充分に高めることができない。したがって、噴孔から噴射される燃料は、微粒化が促進されず、噴霧が均質でないという問題があった。
【0005】本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、燃料噴霧の微粒化を促進し、燃料の均質噴霧が可能な電磁式燃料噴射弁を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1記載の電磁式燃料噴射弁によると、燃料通路を形成する弁ハウジングの内壁面、弁座、およびオリフィスの全域は漏斗状に形成されているので、噴孔から噴射される直前の燃料は燃料通路からオリフィスに至る空間内で渦流が形成され、燃料流速が高められる。このため、噴孔から噴射された燃料は噴霧の広がり角度が増大され、噴孔直下の空気に衝突して燃料噴霧が微粒化される。したがって、簡単な構成で燃料噴霧の微粒化を促進し、燃料の均質噴霧が可能となる。
【0007】本発明の請求項2記載の電磁式燃料噴射弁によると、弁ハウジングの径方向外側から内側に弁ハウジングの中心軸を避けて弁座と略同一角度で重力方向斜めに延びる旋回流発生手段を備えているので、噴孔から噴射される直前の燃料は旋回流発生手段で渦流が形成され、燃料流速が高められる。このため、噴孔から噴射された燃料は噴霧の広がり角度が増大され、噴孔直下の空気に衝突して燃料噴霧が微粒化される。
【0008】さらに、オリフィスは、弁ハウジングの中心軸上に噴孔よりも大径に形成されているので、旋回流発生手段で形成された燃料の渦流は、オリフィスに近づくにつれて旋回を強め、オリフィスと噴孔との間でさらに旋回速度が速まる。このため、噴孔から噴射される燃料は、噴孔直下の空気に高速で衝突し、燃料噴霧はさらに均質に微粒化される。
【0009】したがって、簡単な構成で燃料噴霧の微粒化をさらに促進し、燃料のさらなる均質噴霧が可能となる。本発明の請求項3記載の電磁式燃料噴射弁によると、旋回流発生手段は弁座よりも反噴孔側の弁ハウジング内に設けられているので、旋回流発生手段で形成される燃料の渦流は、噴孔から噴射される直前まで断続的に旋回して充分に燃料流速を高める。このため、噴孔から噴射される燃料は、噴孔直下の空気にさらに高速で衝突し、燃料噴霧のさらなる微粒化と均質化が可能となる。
【0010】本発明の請求項4記載の電磁式燃料噴射弁によると、旋回流発生手段は弁ハウジング外空間と連通しているので、旋回流発生手段内に流入する燃料中に含まれるベーパを速やかに弁ハウジング外空間に排出することができる。これにより、例えばデッドソーク等により発生するベーパを燃料噴射弁外に排出することができるため、燃料噴射不良を抑制することが可能となる。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。本発明の電磁式燃料噴射弁をエンジン用燃料供給装置に適用した一実施例を図1〜図4に示す。図3および図4に示すように、燃料供給装置1は、樹脂からなる燃料レール10と、この燃料レール10内に収容される複数の燃料噴射弁20と、この燃料噴射弁20に印加される電圧を受電するコネクタ部14等から構成されている。ここで、燃料噴射弁20の個数は、燃料供給装置1が組付けられるエンジンの気筒数に対応しており、本実施例の場合、4気筒エンジンに燃料を供給するため燃料噴射弁20の個数を4に設定している。
【0012】図1に示すように、燃料噴射弁20は、電磁吸引力を発生させるソレノイド部と燃料通路を開閉するバルブ部とから構成されている。ソレノイド部は、縦断面T字状の回転体形状からなる磁性体部材22、この磁性体部材22の小径部の周囲を覆うボビン23、このボビン23の周囲に巻回されるコイル25、このコイル25の両端部にそれぞれ接続される2本のターミナル26、磁性体部材22の中心軸位置に形成される貫通孔内に収容される圧縮コイルスプリング27、この圧縮コイルスプリング27の付勢力を調整するパイプ28等から構成されている。磁性体部材22の小径部側端部には、圧縮コイルスプリング27が収容される貫通孔の開口をえぐるようにして形成されるすり鉢状のテーパ部22aが設けられている。そして、このテーパ部22aの表面は、テーパ部22aの表面と後述する弁部材29の球面29aとの対向面積が広く確保できるように形成されている。つまり、互いに対向する磁性体部材22のテーパ部22aと球形状の弁部材29との間に形成される空間が環状に形成されるようにテーパ部22aが形成されている。これにより、磁路有効面積を広くとることができる。
【0013】一方、バルブ部は、断面逆凸字状の回転体形状からなるガイド部31、このガイド部31の孔部31c内に収容されるシート部材33、このシート部材33の弁座であるシート面33aに着座可能な球形状の弁部材29、およびガイド部31の小径部32bの周囲に位置するOリング37から構成されている。ここで、ガイド部31は、弁ハウジングであるハウジング21の図1で下方にハウジング21と一体成形されている。
【0014】磁性体材料からなるハウジング21のガイド部31の中心軸位置には、弁部材29の直径より僅かに大径の孔部31bが大径部32aに形成され、この孔部31bに連通し弁部材29より大径の孔部31cがガイド部31の小径部32bに形成されている。つまり、ガイド部31には、孔部31b、31cが形成されることにより大径部32aから小径部32bに向かって貫通している。
【0015】また、ガイド部31の大径部32aには、後述する環状通路34と連通可能な燃料通路31aが4箇所形成されており、この燃料通路31aはガイド部31の外空間と連通している。図1および図2に示すように、燃料通路31aは、ガイド部31の軸に対して平行に形成されるのではなく、ガイド部31の径方向外側から内側にガイド部31の中心軸を避けてシート面33aと略同一角度で重力方向斜めに延びるように形成されている。これにより、燃料通路31aを形成するガイド部31の内壁面、シート面33a、および後述するオリフィス33bを形成するシート部材33の内壁面の全域は漏斗状の円錐面が形成される。このため、弁部材29がシート面33aから離座したとき、後述する噴孔33cから噴射される直前の加圧燃料は燃料通路31aからオリフィス33bに至る空間内で渦流が形成され、燃料流速が高められる。ここで、燃料通路31aは、旋回流発生手段を構成している。
【0016】さらに、燃料通路31aを上記のように形成することによって、孔部31b内に位置する弁部材29の全周、すなわち燃料噴射弁20に軸に対する弁部材29の垂直断面形状の全周に渡って弁部材29から離れることなく僅かなクリアランスを保つ程度にガイド部31を環状に位置させることができる。これにより、弁部材29の球面29aと孔部31bの内壁面とを円環状に対向させることができ、その対向面積を広く確保することができる。
【0017】球形状に形成される弁部材29は、磁性体材料からなり、磁性体部材22のテーパ部22aとシート部材33のシート面33aとの間を往復動可能にガイド部31の孔部31b内に位置している。ここで、弁部材29が磁性体材料からなるのは、ソレノイド部のコイル25に通電されたときに生ずる磁路の一部を構成し、弁部材29がいわゆる可動鉄心の役割を担うためである。
【0018】弁ハウジングとしてのシート部材33は、底部が厚肉に形成される有底の筒形状に形成されており、その底部外側には球形状の弁部材29が着座可能なテーパ状にシート面33aが形成されている。そして、このシート面33aの中心軸位置にあたる肉厚の最も薄い位置には、シート部材33の内外を連通させるオリフィス33bが形成されている。このオリフィス33bは弁部材29がシート面33aに着座したとき閉塞され、シート面33aから離座したとき底部の内外を連通させることができる。またオリフィス33bは、シート部材33の中心軸上に位置しており、噴孔33cよりも大径に形成されている。シート部材33の底部中心にはオリフィス33bと連通可能な噴孔33cが形成されている。弁部材29がシート面33aから離座し、加圧燃料がオリフィス33bを通過するとこの噴孔33cから燃料噴射される。噴孔33cは、シート部材33の中心軸上に位置しており、オリフィス33bよりも小径に形成されている。このため、弁部材29がシート面33aから離座したとき、オリフィス33bを通過した加圧燃料はオリフィス33bと噴孔33cとの間で流速が高められる。また、ガイド部31の孔部31cの内壁面と弁部材29の球面29aとシート面33aとにより燃料通路31aから加圧燃料が流入可能な環状通路34を区画形成している。
【0019】ゴム等の弾性部材からなるOリング37は、前述したガイド部31の小径部32b外径より小径に形成されている。図4に示すように、燃料噴射弁20が燃料レール10内に組付けられたとき、燃料レール10の燃料通路13内の燃料が貫通孔12cから漏れ出ないようにガイド部31の小径部32bの外壁面と下側部材12の内壁面と隙間を液密にシールしている。
【0020】磁性体材料からなるハウジング21は、図1で下方、つまり反ソレノイド部側にガイド部31を形成している。そして、前述したソレノイド部とバルブ部とが一体に組付けられるようにソレノイド部の周囲にも位置している。またソレノイド部のボビン23とバルブ部のガイド部31との間に燃料供給溝30が形成されるようにソレノイド部とバルブ部との位置関係を調整している。さらにハウジング21は磁性体材料から構成されていることから、ソレノイド部のコイル25に通電されたときに生ずる磁路の一部を構成する役割も担っている。
【0021】上述した構成により、球形状の弁部材29の周囲には3つの部材が弁部材29を取囲むように位置しいる。つまり、図1で弁部材29の上方には磁性体部材22が弁部材29の球面29aの上側を覆うように位置しており、図1で弁部材29の下方にはシート部材33が球面29aの下側を覆うように位置している。そして、磁性体部材22とシート部材33との間に位置するガイド部31が弁部材29の図1でほぼ中央の全囲を覆っている。つまり、弁部材29の上側および中央には弁部材29の球面29aに沿うように全周に渡って磁路構成部材である磁性体部材22およびガイド部31が位置している。これにより、弁部材29の球面29aに対向する磁性体部材22およびガイド部31のそれぞれの表面積を広く確保することができるため、磁路有効面積を効果的に得ることができる。したがって、磁性体部材22側に弁部材29を吸引する電磁吸引力を増大させるため、シート部材33のシート面33aから弁部材29が離座する速度を速めることができ開閉弁の応答性を向上する効果がある。
【0022】次に、燃料噴射弁20を組付ける燃料レール10の構成を図3および図4に基づいて説明する。図4に示すように、燃料レール10は上側部材11と下側部材12とから構成されており、燃料レール10内に燃料通路13を区画形成するため、長溝を形成する下側部材12の開口を覆うように上側部材11が位置している。そして、上側部材11と下側部材12とにフランジ部11a、12bをそれぞれ設け、互いに当接する面を溶着または接着することにより固定している。
【0023】燃料レール10の燃料噴射弁20が組付けられる所定位置は、燃料噴射弁20の上端および下端の各形状に適合可能に形成されている。つまり、燃料レール10の図4で上側を構成する上側部材11には、燃料噴射弁20の組付位置に燃料噴射弁20のターミナル側上端部の形状に合わせて押え部11bが形成されており、また燃料レール10の図4で上側を構成する下側部材12bには、燃料噴射弁20の組付位置に燃料噴射弁20の噴孔側端部の形状に合わせて断面逆凸字形状の凸部12bが形成されている。このように上側部材11に押え部11aを形成し下側部材12に凸部12bを形成することにより、燃料噴射弁20の両端を挟込むようにして燃料レール10内に燃料噴射弁20を固定している。
【0024】また、燃料噴射弁20の上端部と押え部11bとの間には、ゴム等の弾性部材からなるシート部材18が位置しており、このシート部材18によって、図示しないインテークマニホールドに燃料レール10を組付けるときに生ずる外力を軽減して燃料噴射弁20に伝えるようにしている。下側部材12の燃料流入側上流には筒部12dが設けられており、図示しない燃料供給ポンプから供給される燃料を導入する燃料流入路がこの筒部12d内に形成されている。そして、この筒部12dの燃料下流側開口端には図示しない燃料フィルタが設けら、燃料流入路に流入する燃料に含まれる異物等を取除いている。このように燃料レール10の燃料通路13内に流入する燃料に含まれる異物等を燃料導入側に設けられる1つの燃料フィルタによって除去することで、従来、燃料噴射弁ごとに燃料フィルタを設けていた場合に較べ、燃料フィルタの使用個数を減少させることができる。したがって、製品コストを低減する効果がある。
【0025】また、燃料レール10の反燃料導入側には各燃料噴射弁20に印加電圧を受電するためコネクタ部14が設けられている。このコネクタ部14は、下側部材12の反筒部12d側に形成されており、その内部にはターミナル15が複数本収容されている。このターミナル15と燃料噴射弁20のターミナル26とはワイヤハーネス16により電気的に接続されている。
【0026】ここで、燃料レール10が図示しないインテークマニホールドに取付けられる場合、燃料レール11の下側部材12に形成される凸部12bがインテークマニホールドの取付孔に挿入するようにインテークマニホールドに燃料レール10が組付けられる。すると、燃料レール10内に収容されている燃料噴射弁20の噴孔側端部がインテークマニホールドに向かって位置することになり、例えばデッドソークにおいてはインテークマニホールドを介して燃料噴射弁20の噴孔側端部が加熱されることになる。そのため、燃料噴射弁20の噴孔側端部、すなわちシート部材33よりガイド部31が加熱されることから、これらの部材により形成されている環状通路34内に充満する加圧燃料も加熱されることになる。すると、この環状通路34内の燃温が上昇し燃料中にはベーパが発生し易い状態になるため、ベーパを含んだ加圧燃料を噴孔33cから噴射すると燃料噴射量および噴霧化状態に悪影響を与え噴射特性の劣化を招くことになる。
【0027】ところが、本実施例による燃料噴射弁20によると、加圧された燃料が溜まり易い環状通路34と燃料噴射弁20の周囲に満たされる加圧燃料が流通可能な燃料供給溝30とを燃料通路31aによって連通している。そして、この燃料通路31aは、ガイド部31の径方向外側から内側にガイド部31の中心軸を避けてシート面33aと略同一角度で重力方向斜めに延びるように形成されている。このため、ガイド部31の軸と平行に形成した場合と較べると、環状通路34と燃料供給溝30とを短い距離で連通させることができる。また比較的温度の低い燃料が満たされる燃料供給溝30は、球形状の弁部材29の周囲に環状に位置していることから、例えば環状通路34内に充満する燃料にベーパが発生したとしても燃料通路31aおよび燃料供給溝30を介して燃料噴射弁20の外部にベーパを速やかに排出することができる。これにより、デッドソーク等においても燃料噴射弁20内で発生するベーパは燃料噴射弁20外に排出されるため、エンジンの高温再始動時などにおいて、燃料噴射特性に悪影響を与えることはなく、燃料噴射不良を抑制する効果がある。
【0028】次に、燃料噴射弁20の作動を図1および図4に基づいて説明する。図4に示すように、燃料レール10に内蔵される燃料噴射弁20の周囲には、筒部12dにより形成される燃料流入路から図示しない燃料フィルタを経由して燃料通路13に流入した加圧燃料が満たされている。そのため、燃料通路13と常に連通する燃料噴射弁20の燃料供給溝30、燃料通路31aおよび環状通路34には、加圧燃料が流入している。
【0029】この状態において、図1に示すコイル25を励磁可能な電圧がターミナル26を介して印加されると、コイル25の周囲に磁路が形成される。この磁路は、磁性体部材22、ハウジング21、ガイド部31、弁部材29および磁性体部材22からなる経路によって構成される。ここで、コイル25の径方向外側にはハウジング21の図示しない一部が位置していることから、前述した磁路の形成が可能となる。この磁路が形成されると、弁部材29が付勢手段である圧縮コイルスプリング27の付勢力に抗して磁化した磁性体部材22側に吸引される。この電磁吸引力により、シート部材33のシート面33aから弁部材29が離座するため、環状通路34に流入していた加圧燃料がオリフィス33bを通過し噴孔33cから噴射される。このとき、噴孔33cから噴射される直前の加圧燃料は燃料通路31aからオリフィス33bに至る空間内で渦流が形成され、燃料流速が高められる。さらに、加圧燃料の渦流は、オリフィス33bに近づくにつれて旋回を強め、オリフィス33bと噴孔33cとの間でさらに旋回速度が速まる。このため、噴孔33cから噴射される燃料は、噴霧の広がり角度が増大され、噴孔33cの直下の吸気に高速で衝突し、燃料噴霧は均質に微粒化される。
【0030】また、このとき前述したように、弁部材29の球面29aに対向する磁路構成部材22のテーパ部22aとガイド部31の孔部31bの内周壁とがそれぞれ面積を広く確保していることから、コイル25による電磁吸引力が増大し、コイル25に印加される電圧信号に対し高い応答性で開閉弁することができる。コイル25を励磁可能な電圧の印加を終了すると、コイル25の周囲の磁路が消滅するため電磁吸引力が消滅する。これにより、弁部材29は圧縮コイルスプリング27によってシート部材33方向に付勢されるため、弁部材29がシート面33aに着座する。すると、弁部材29の離座により導通していた環状通路34とオリフィス33bとの連通が弁部材29により遮断されるため、オリフィス33bには加圧燃料が到達せず噴孔33cからの燃料噴射を終了する。
【0031】以上説明したように、本実施例によると、燃料通路31aは、ガイド部31の径方向外側から内側にガイド部31の中心軸を避けてシート面33aと略同一角度で重力方向斜めに延びるように形成されているので、弁部材29がシート面33aから離座したとき、噴孔33cから噴射される直前の加圧燃料は燃料通路31aからオリフィス33bに至る空間内で渦流が形成され、燃料流速が高められる。さらに、オリフィス33bはシート部材33の中心軸上に噴孔33cよりも大径に形成されているので、オリフィス33bに近づくにつれて加圧燃料の旋回は強められ、オリフィス33bと噴孔33cとの間でさらに旋回速度は速まる。したがって、簡単な構成で燃料噴霧の微粒化をさらに促進し、燃料のさらなる均質噴霧が可能となる。
【0032】さらに、加圧された燃料が溜まり易い環状通路34と燃料噴射弁20の外部に満たされる加圧燃料が流通可能な燃料供給溝30とを燃料通路31cにより連通させている。これにより、環状通路34内の燃料にベーパが発生しても燃料噴射弁20の外部にベーパを速やかに排出することができる。したがって、デッドソーク等により発生するベーパを燃料噴射弁20外に排出するため、燃料噴射不良を抑制し高温再始動時でも燃料噴射精度を確保できる効果がある。
【0033】さらにまた、燃料レール10の燃料通路13内に流入する燃料に含まれる異物等を燃料導入側に設けられる1つの燃料フィルタによって除去することから、製品コストを低減する効果がある。これに加え、燃料噴射弁ごとに燃料フィルタを設けないことから、環状通路34内の燃料に発生したベーパが燃料噴射弁20外に逃げる途中で障害となる燃料フィルタがない。したがって、より速やかにベーパを排出する効果がある。
【0034】さらにまた、燃料噴射弁20を構成するバルブ部の弁部材29の上側および中央には弁部材29の球面29aに沿うように全周に渡って磁性体部材22およびガイド部31が位置していることから、弁部材29の球面29aに対向する磁性体部材22およびガイド部31のそれぞれの表面積を広く確保することができる。これにより、弁部材29に対する磁路有効面積を効果的に得ることができ、磁性体部材22側に弁部材29を吸引する電磁吸引力が増大する。したがって、開閉弁の応答性が向上するため、エンジン回転数の広範囲に渡って燃料噴射精度を向上する効果がある。
【出願人】 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【出願日】 平成10年(1998)3月30日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】服部 雅紀
【公開番号】 特開平11−280591
【公開日】 平成11年(1999)10月12日
【出願番号】 特願平10−83783