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【発明の名称】 内燃機関の燃料供給装置
【発明者】 【氏名】成迫 秀喜

【氏名】海老原 嘉男

【要約】 【課題】燃料タンクからフューエルポンプまでの燃料通路が長いエンジンにおいて、ベーパーロックによる始動不能や息つきのような不整回転を防止する。

【解決手段】2つのフューエルポンプ1,2を直列に接続し、接続部分のセパレータ6から気体成分を還流ポート14から燃料タンクへ戻す。2つのフューエルポンプ1,2による強力な吸引作用と、気体成分の還流通路を設けているために、エンジンの燃料噴射弁へ供給される燃料には気体成分が含まれない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 揮発性の燃料を収容している燃料タンクと、前記燃料タンクから燃料通路によって燃料を導いて加圧する第1のフューエルポンプと、前記第1のフューエルポンプの下流側に直列に接続されて前記第1のフューエルポンプが吐出する燃料を加圧して内燃機関本体へ供給する第2のフューエルポンプと、前記第1のフューエルポンプと前記第2のフューエルポンプとの接続部分に設けられて気体成分を前記燃料タンクへ還流させる還流通路とから構成されていることを特徴とする内燃機関の燃料供給装置。
【請求項2】 前記還流通路に絞り部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載された燃料供給装置。
【請求項3】 前記第1のフューエルポンプと、前記第2のフューエルポンプと、前記気液分離手段とからなる部分が、前記燃料タンク側よりも前記内燃機関本体側に近い位置に設けられているとともに、前記内燃機関が、マリンエンジンであることを特徴とする請求項1又は2に記載された燃料供給装置。
【請求項4】 前記第1のフューエルポンプと、前記第2のフューエルポンプが、実質的に同じ性能を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載された燃料供給装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は内燃機関(エンジン)の燃料供給装置に係り、特に小型船舶の船外機として使用される所謂マリンエンジンにおいて、燃料タンクからエンジンへ燃料を供給するシステムの改良に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、自動車用エンジンと同様に、マリンエンジンにも排ガス規制が行われるようになったこともあって、燃料供給装置として従来は気化器を使用するのが普通であったマリンエンジンにおいてもEFI(電子制御式燃料噴射装置)を使用することが多くなって来た。気化器に設置される燃料ポンプは燃料を圧縮する必要がないので、燃料タンクから気化器までの燃料通路が長くても、燃料ポンプによる体積移動が容易であって、通常は問題なく燃料を吸い上げてエンジンへ供給することができるため、従来はあまり問題にならなかったし、自動車用エンジンにおけるEFIの場合は、燃料タンクにある大気圧の燃料を吸引して所定の圧力まで加圧し、燃料噴射弁(インジェクタ)へ送るために設けられるフューエルポンプが、通常はエンジン側ではなく燃料タンク側に設けられるので問題が生じないが、マリンエンジンにEFIを使用する場合には、燃料通路が長かったり、デッドソーク(高負荷運転直後のエンジン停止)時等において、燃料通路内のガソリンのような揮発性の燃料が加熱されて気泡によるベーパーロックを生じていると、フューエルポンプが燃料をタンクから吸引することができなくなって、エンジンの始動(又は再始動)ができないとか、運転中にエンジンが一時的に停止して所謂「息つき」を起こすことがある。
【0003】米国の沿岸警備隊規則においては、ガソリンのような燃料をタンクから吸い上げてエンジンへ供給するフューエルポンプを、エンジンから12インチ(30.5cm)以内の位置に設置しなければならないと規定されており、フューエルポンプはできるだけエンジンに近づけて設置することが求められている。また、マリンエンジンにおいては、通常、エンジンを単体の商品として取り扱うことが多いために、フューエルポンプはエンジンに付属する部品として、燃料タンク側ではなくエンジン本体側に取り付けられるので、燃料タンクとフューエルポンプの間の燃料通路が長くなることが多い。更に、その燃料通路には燃料に含まれているゴミや水分を除去するための低圧フィルタが設けられるが、その低圧フィルタが燃料通路内の流れの抵抗を大きくする。従って、これらがいずれもマリンエンジンにおいてフューエルポンプによる燃料の吸い上げを妨げて、エンジンの始動不能や運転中の息つきというような不整回転の問題を起こす原因になり得る。
【0004】この問題に対処する従来技術の一つとして、特開平6−280709号公報に記載された水冷式エンジンは、エンジンの冷却水の一部を分流させてフューエルポンプの周囲へ供給し、フューエルポンプを強制冷却することによって、その内部に生じる燃料の気泡によるベーパーロックを防止しようとするものである。しかし、このような対策によってフューエルポンプ内における燃料の加熱が防止されても、燃料タンクからフューエルポンプまでの燃料通路が長い場合には、フューエルポンプそのものを除く燃料通路におけるベーパーロックを防止することはできないので、やはり前述の問題を完全に解消することはできない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来技術における前述のような問題に対処して、マリンエンジンのように、燃料タンクからフューエルポンプまでの燃料通路が長くなる場合でも、燃料通路における燃料のベーパーロックを確実に防止して、エンジンの始動性を向上させると共に、運転中にエンジンが息つきのような不整回転をするのをなくすことができるような、改良された内燃機関の燃料供給装置を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、前記の課題を解決するための手段として、特許請求の範囲の各請求項に記載された内燃機関の燃料供給装置を提供する。
【0007】請求項1に記載された燃料供給装置においては、直列に接続された2つのフューエルポンプと、フューエルポンプと燃料タンク間の燃料通路内の気体成分のための還流通路とを備えているので、2段のフューエルポンプによって強力な吸引力を発揮して、燃料通路に気泡が多くても燃料を吸引して加圧することができる。しかも、第1のフューエルポンプから吐出された気泡のような気体成分を燃料タンクへ還流させるので、内燃機関へ供給される燃料には気体成分が含まれていない。従って、機関が始動不能や不整回転のような問題を起こす恐れがない。
【0008】更に、請求項2に記載された燃料供給装置においては、還流通路に絞り部が設けられるので、気体成分は容易に絞り部を通過して燃料タンクへ戻ることができるが、液状の燃料は絞り部を通過し難いので専ら第2のフューエルポンプの方へ流れる結果、内燃機関へ気体成分が供給される可能性が一層低くなる。
【0009】請求項3に記載された燃料供給装置においては、第1のフューエルポンプと、第2のフューエルポンプと、気液分離手段とからなる部分が、燃料タンク側よりも内燃機関本体側に近い位置に設けられているので、フューエルポンプ等を機関本体の一部として構成することができる結果、その機関が小型船舶用の船外機のようなマリンエンジンとして構成するのに適した安全性の高いものとなる。この場合は、燃料タンクから第1のフューエルポンプまでの燃料通路が長くなり、その燃料通路における気泡の発生によるベーパーロックが問題になるが、本発明によってその弊害が防止される。
【0010】請求項4に記載された燃料供給装置においては、2つのフューエルポンプとして吐出容量等において実質的に同じ性能を有するものを使用する。同じフューエルポンプを2個用いるとコスト面でも有利であり、それらの直列接続によって総合の吸引力が大きくなるので、それぞれのフューエルポンプを小型化することが可能になる。
【0011】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の一実施形態としてエンジンの燃料供給装置の構成を例示するもので、本発明の特徴に対応して、図示しないマリンエンジンの燃料通路には、燃料タンク側ではなく、エンジン本体側に第1のフューエルポンプ1と、第2のフューエルポンプ2という2つのフューエルポンプ1,2が、基本的には直列に接続されて設けられている。フューエルポンプ1,2は吐出容量等において概ね同程度の性能を有するものであって、ポンプ形式は容積式のものであればどのようなものであってもよいが、図示例の場合は直流モーターと一体化されたベーンタイプポンプが用いられている。第1のフューエルポンプ1の吸入ポート3は長い燃料パイプによって燃料タンクに接続されている。その途中には低圧フィルタが設けられていてもよい。また、第2のフューエルポンプ2の吐出ポート4はプレッシャーレギュレータ等を経て図示しないマリンエンジンの燃料噴射弁へ接続されている。
【0012】第1のフューエルポンプ1の吐出ポート5には、図2に拡大して示すような構造の中空のセパレータ6が螺着されている。セパレータ6の右端開口は短管状のニップル7を有する環状の蓋8によって塞がれていると共に、雌螺子孔9を有する内壁10の右端面とニップル7の左端部との間には隙間11が形成されていて、その外周を取り囲むように、隙間11を介して雌螺子孔9内に通じる環状の空間12がセパレータ6の内部に形成されている。環状の空間12は、セパレータ6の一部に穿孔された小径の絞り孔13を介して、図1に示す還流ポート14と連通しており、還流ポート14は図示しない還流パイプを介して燃料タンクの上部の気相部分に接続されている。
【0013】セパレータ6のニップル7には、U字形に屈曲した接続パイプ15の一端が、可撓性のゴム管16等を介して接続されており、U字形の接続パイプ15の他端は、別のゴム管17等を介して、第2のフューエルポンプ2の吸入ポート18に接続されている。
【0014】なお、図1において、19はフューエルポンプ1,2を図示しないエンジン本体の一部となっている基板に取り付けるための帯状の部分を有するブラケット、20はそれを固定するボルト取付孔、21はゴム管16及び18を接続パイプ15等に取り付けた状態で固定するための金属バンド、22は金属バンドの両端を接続するためのボルト、23及び24はフューエルポンプ1,2へ駆動電力を供給するための電線を示している。
【0015】本発明の実施形態はこのように構成されているので、2つのフューエルポンプ1,2に電力を供給して同時に駆動すると、2つのフューエルポンプ1,2が直列に接続されているとともに、第1のフューエルポンプ1が部品6,14を介して燃料タンクへ接続されているので、フューエルポンプ1の上流側から下流側へ容易に体積移動を起こして燃料を吸引する。フューエルポンプが1基の場合は、フューエルポンプの上流側の燃料タンクまでの燃料通路内にある燃料が気化したガスや空気を圧縮して下流側へ送らないと燃料タンク内の燃料を吸引することができないので、吸入側の燃料通路が長くて、低圧フィルタが設置されているために、気化したガスや空気の体積がフューエルポンプの空気圧縮能力を超えているときは、上流側の気化したガスや空気を圧縮して下流側へ送ることができないから、フューエルポンプが燃料をエンジンへ送ることができなくなるので、エンジンは正常に作動しない。
【0016】また、第1のフューエルポンプ1から吐出される気化したガスや空気が、部品6,15を通過して第2のフューエルポンプ2へ吸入されると、ポンプ2の空気圧縮能力を超えて、ポンプ2では下流側へ体積移動が起こらず、上流側の気化したガスや空気を吸入できなくなるが、本発明の実施形態においては、第1のフューエルポンプ1から吐出された気化したガスや空気が部品6の絞り孔13を通過して、還流ポート14とそれに接続する図示しない還流パイプを通って燃料タンクの上部空間へ戻る。
【0017】これに対して、液状の燃料には気化した燃料のガスや空気の気泡に比べて大きい流れの慣性力が作用するので、液状の燃料がセパレータ6の内部において急に流れの方向を変えて環状の空間12へ流入することが難しいのと、液状の燃料が絞り孔13を通過する場合は大きな粘性抵抗が作用するので、気泡を分離された液状の燃料の大部分はセパレータ6内を矢印Fによって示すように直進してニップル7の方へ進み、接続パイプ15を経て第2のフューエルポンプ2へ吸入される。従って、第2のフューエルポンプ2によって圧送される燃料には実質的に気泡が含まれていないので、気泡のない燃料を供給されるエンジンは始動不能とか不整回転のようなトラブルを起こすことがない。
【0018】なお、第1のフューエルポンプ1の下流側において、セパレータ6は図示実施形態のような方式のものに限られず、例えばサイクロン形式のように、他の方式をとるものを利用することも可能である。
【0019】図3は本発明の効果を示す線図であって、図3の(a)は、燃料タンクまでの燃料通路がデッドソークによって高温となっている条件において、本発明のエンジンの燃料供給装置を使用した場合の、第2のフューエルポンプ2の吐出圧の時間的な変化を計測した結果を示している。2つのフューエルポンプ1,2が直列に設けられているために、吐出圧の立ち上がりが若干遅くなるのと、最初は第1のフューエルポンプ1に吸入される燃料の中に多くの気泡が含まれているから、その気泡がセパレータ6において燃料タンクへ還流されることによって、第2のフューエルポンプ2の吸入ポート18に到達する液状の燃料の流量が変動するので、起動当初は吐出圧にかなり大きな変動が見られるが、燃料通路にあった気泡を含んだ燃料が全部通過し終わると、第2のフューエルポンプ2の吐出圧は高い状態で安定する。定常化した後に僅かに見られる吐出圧の変動は、第2のフューエルポンプ2の下流側に設けられるプレッシャーレギュレータにおいて燃料の圧力を設定圧に合わせようとする作用が働くためである。
【0020】これに対して、図3(b)は、従来の単段のフューエルポンプを使用した場合において、前述の場合と同様に燃料タンクまでの燃料通路が高温となっている条件で、そのフューエルポンプの吐出圧の時間的な変化を計測した結果を示す線図である。エンジンが停止しているときでもフューエルポンプ内には少量の燃料が残っているのが普通であって、フューエルポンプの起動と同時にその残留燃料が吐出されるので、図3(b)の場合は起動と同時に吐出圧が一時的に立ち上がってはいるが、フューエルポンプの上流側の燃料通路に気泡が多い場合には、フューエルポンプ内に残っていた燃料が吐出されると、後は気泡のようなガス体が吸入されるばかりで、1段のフューエルポンプの弱い吸引力だけでは液体の燃料を吸入することができない。その結果、吐出圧は気泡のようなガス体を圧縮することによる比較的低い値で概ね一定となり、実質的に液体の燃料を吐出することができない。従って、このような条件ではエンジンは始動不能となる。
【出願人】 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【出願日】 平成10年(1998)3月31日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬 (外3名)
【公開番号】 特開平11−280584
【公開日】 平成11年(1999)10月12日
【出願番号】 特願平10−86010