トップ :: F 機械工学 照明 加熱 武器 爆破 :: F01 機械または機関一般;機関設備一般;蒸気機関

【発明の名称】 サーモスタット
【発明者】 【氏名】小瀧 寛巳
【氏名】松下 信雄
【課題】水圧の高低、変動に関係なく、エンジン運転時に確実に閉弁するジグル弁を備えたサーモスタットの提供。

【解決手段】エア抜き孔4を有するフランジ部3と、エア抜き孔4を開閉可能にエア抜き孔4に設けられたジグル弁10と、を有するサーモスタット14において、ジグル弁10に、エンジン冷却水がサーモスタット14部位に満たされると浮力によりフランジ部3に密着してエア抜き孔4を閉じるフロート2を取り付けたサーモスタット。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 エア抜き孔を有するフランジ部と、該エア抜き孔を開閉可能に前記エア抜き孔に設けられたジグル弁と、を有するサーモスタットにおいて、前記ジグル弁に、エンジン冷却水がサーモスタット部位に満たされると浮力により前記フランジ部に密着して前記エア抜き孔を閉じるフロートを取り付けたことを特徴とするサーモスタット。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エンジン冷却水通路に設けられるサーモスタットに関する。
【0002】
【従来の技術】自動車のエンジン冷却水通路にはサーモスタットが配置される。冷却水温が低い場合、サーモスタットは閉じており、冷却水はバイパス通路を循環して水温上昇を早め、冷却水温が高く(80〜90℃)なると、サーモスタットが開き、ラジエータ側に冷却水を循環させる。これによって、エンジン暖機性とオーバヒート防止の両立をはかっている。また、サーモスタットは、フランジ部のエア抜き孔に設けられたジグル弁を有している。ジグル弁は、冷却水注入時にはエア抜き孔を開いておりエンジンウォータジャケット内の残留空気を外へ出すエア抜き作用を果たし、エンジン運転時にはウォータポンプの水圧によりエア抜き孔を閉じエンジン暖機性悪化を防止する作用を果たす。実開平1−83130号は、エンジン運転時のジグル弁によるエア抜き孔閉弁作用を確実にするために、ジグル弁と対向する加圧流路を形成し、ジグル弁にかかる閉じ方向の水圧を増大させるものを提案している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来のサーモスタットジグル弁にはつぎの問題がある。エンジン運転時にジグル弁が閉弁力が十分でないと洩れが生じ、エンジン暖機性およびヒーター暖房性能を悪化させる。さらに詳しくは、通常、ジグル弁を閉弁させる力はエンジン運転時のウォータポンプの水圧のみである。ウォータポンプは、エンジン回転と同期しているので、アイドル回転では水圧が低く、ジグル弁を閉弁させる力は弱い。また、走行時にはエンジン回転が一定ではないため、水圧が変化し脈動が発生する。そのため、ジグル弁が確実には閉じられず、洩れが生じ、ラジエータ経路に冷却水が循環して不要な放熱をし、エンジン暖機性を悪化させる。また、エンジン暖機性が悪いと、冷却水温上昇も遅くなり、ヒーター暖房性能にも悪影響を与える。また、実開平1−83130号のようにジグル弁と対向する加圧流路を形成する場合にも、水圧が低いと上記と同じ問題が生じるほか、特別な加圧流路を形成するため構造の複雑化、コストアップの問題が生じる。本発明の目的は、水圧の高低、変動に関係なく、エンジン運転時に確実に閉弁するジグル弁を備えたサーモスタットを提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本発明はつぎの通りである。エア抜き孔を有するフランジ部と、該エア抜き孔を開閉可能に前記エア抜き孔に設けられたジグル弁と、を有するサーモスタットにおいて、前記ジグル弁に、エンジン冷却水がサーモスタット部位に満たされると浮力により前記フランジ部に密着して前記エア抜き孔を閉じるフロートを取り付けたことを特徴とするサーモスタット。
【0005】上記本発明のサーモスタットでは、ジグル弁はそれが配置されている部位がエンジン冷却水で満たされたときに浮力で浮上しフランジ部に密着してエア抜き孔を閉じるので、水圧に無関係にエア抜き孔を閉じることができ、水圧の高低、変動に影響されることなく、確実にエア抜き孔を閉じることができる。
【0006】
【発明の実施の形態】図4に示すように、エンジン冷却系は、エンジン11内のウォータジャケット、ラジエーター12、ウォータポンプ13、サーモスタット14、エンジン11内のウォータジャケットとラジエーター12とを接続する冷却水通路15、ラジエーター12をバイパスするバイパス通路16と、からなる。
【0007】図4、図5に示すように、サーモスタット14は冷却水通路15に設けられ、冷却水の循環経路をエンジン冷却水温に対応して選択する。サーモスタット14は、一般にエンジン上部で、ウォータジャケットを通過して高温になった冷却水をラジエーター12に送る冷却水通路部位に配置される。
【0008】図4は、ワックス式タイプのサーモスタット14の一例を示している。サーモスタット14は、弁本体20と、弁本体20に形成された開口21を開閉する弁体17と、弁体17を開口21を閉じる側に付勢するスプリング22と、弁体17内に封入され高温時に膨張してロッド23を押出しスプリング22の付勢に抗して弁体17を押しさげて開口21を開かせるワックス19と、を有する。サーモスタット14は、エンジン冷却水が低温の時には、弁が閉じていて、エンジン冷却水をバイパス通路16のみに流し、ラジエーター12には流さない。それによって、水温が速やかに上昇し、エンジンの暖機性が向上する。また、エンジンが始動してしばらくしてエンジン冷却水の温度が上昇した時には、サーモスタット14の弁が開き、大部分のエンジン冷却水がラジエーター12側に流れて、ラジエーター12により冷却され、エンジンのオーバーヒートが防止される。
【0009】エンジン停止後冷却水を交換する場合には、図4に示したラジエーター12下部のドレンコック25を開いて冷却水を抜く。この時侵入した空気がラジエーター12、エンジン内ウォータジャケット、冷却水通路15、バイパス通路16を満たす。ついで、ドレンコック25を閉め、ラジエーター12のラジエーターキャップ24を開いて新しいエンジン冷却水を注入する。注入されるエンジン冷却水はラジエーター12、エンジン内ウォータジャケット、冷却水通路15、バイパス通路16を下側から順に満たしていく。この時はエンジン冷却水は低温であるから、サーモスタット14は閉じているので、つぎに述べるエア抜き用のジグル弁がないと、ウォータジャケット内上部に溜まっているエアや冷却水通路15、バイパス通路16の上部に溜まっているエアは、サーモスタット14を通過することができず、抜けきらずに残ってしまう。
【0010】これを防止するために、すなわち空気抜き可能とするために、図1〜図3に示すように、サーモスタット14の弁本体20または弁体17に形成された平坦部のフランジ部3に、エア抜き孔4が形成され、このエア抜き孔4を開閉可能にエア抜き孔4にジグル弁10が設けられる。本発明実施例では、ジグル弁10には、エンジン冷却水がサーモスタット部位に満たされると浮力によりフランジ部3に密着してエア抜き孔4を閉じるフロート2が取り付けられている。ジグル弁のフランジ部への密着力は、従来はジグル弁にかかる水圧(または、特別にジグル弁に対向して設けた通路からの水流の圧力)であるが、本発明では本質的にはフロート2の浮力による。
【0011】ジグル弁10は、平坦な頭部1と、それより下方にある外形が平面視で円形のフロート2と、頭部1とフロート2を連結する軸部5と、を有する。頭部1の厚さと直交方向の寸法はエア抜き孔4の径より大で、ジグル弁10部位にエンジン冷却水が満たされていない時にジグル弁10が自重で下がろうとしても頭部1でエア抜き孔4の縁にひっかかるようになっている。軸部5の径はエア抜き孔4の径より小であり、ジグル弁10は軸部5でエア抜き孔4を自由に上下できる。フロート2の径はエア抜き孔4の径より大で、ジグル弁10部位にエンジン冷却水が満たされてフロート2が浮力で上昇した時に、フロート2の上面はフランジ部3のエア抜き孔4まわりの部分の下面に密着し、エア抜き孔4が閉じられる。
【0012】ジグル弁10部位にエンジン冷却水が満たされた時にジグル弁10にエア抜き孔4を閉じさせる浮力をフロート2に生じさせるために、■ジグル弁10の少なくともフロート2の材質を、比重がエンジン冷却水の比重より小で耐熱性のあるものとし、かつフロート2の材質をジグル弁10部位にエンジン冷却水が満たされた時にジグル弁10を浮上させるものとし、たとえばコルク、発泡スチロール、プラスチックなどから選定するか、または、■内部空洞構造の浮きとする、構成をとっている。
【0013】つぎに、本発明実施例の作用を説明する。エンジン冷却水注水時において、ジグル弁10部位にエンジン冷却水が満たされていない時は、ジグル弁10が自重により下がって頭部1がフランジ部3のエア抜き孔4周囲の部分にひっかかってエア抜き孔4を開放するので、エンジンウォータジャケット内および通路15、16内のエアは抜け、エンジン冷却水の注入を円滑にするとともに、エア溜まりによるエンジン焼きつきを防止する。エンジン冷却水注水時において、ジグル弁10部位までエンジン冷却水が満たされてくると、フロート2はエンジン冷却水によって浮力を発生し、ジグル弁10が浮上してフロート2がフランジ部3のエア抜き孔4周囲の部分に密着してエア抜き孔4を閉じる。すなわち、水圧をかけたり特別なばねを用いることなく、ジグル弁10自体が閉弁力をもつ。そして、この浮力による閉弁力だけで、ジグル弁10が確実に閉じるように、フロート2の浮力を決定してある。さらに、エンジン運転時はウォータポンプの水流による力がかかるが、閉弁力を増す方向に作用するので、ジグル弁10の閉弁力は増加するだけで低下することはない。
【0014】図6は、本発明のサーモスタットのジグル弁10の閉弁力が改善されているために、エンジン運転時で水温が低い時にラジエーターに洩れて流れるエンジン冷却水量が減少し、それによってエンジン始動時の暖機性が向上することを、従来サーモスタット(そのジグル弁の弁体がジグル弁全体を浮上させる程の浮力をもっていないもの)をエンジン冷却系に装着した場合の暖機性と比較して示している。図6に示すように、本発明品の方が従来品よりも早くエンジン冷却水温を向上させている。これによって、注水時の開弁によるエア抜きとエンジン運転時の閉弁による暖機性が両立されている。
【0015】
【発明の効果】本発明のサーモスタットによれば、ジグル弁に、エンジン冷却水がサーモスタット部位に満たされると浮力によりサーモスタットフランジ部に密着してエア抜き孔を閉じるフロートを取り付けたので、ジグル弁部位がエンジン冷却水で満たされたときにフロートは浮力で浮上しフランジ部に密着してジグル弁がエア抜き孔を閉じる。これによって、水圧に無関係にエア抜き孔を閉じることができ、水圧の高低、変動に影響されることなく、確実にエア抜き孔を閉じることができ、エンジンの暖機性、ヒーター暖房性能を向上できる。
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【出願日】 平成9年(1997)9月18日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】田渕 経雄
【公開番号】 特開平11−93666
【公開日】 平成11年(1999)4月6日
【出願番号】 特願平9−252936