| 【発明の名称】 |
塗装された陸上鋼構造物の電気防食装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】若林 元
【氏名】中山 元
【氏名】松田 泰英
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| 【要約】 |
【課題】塗装された陸上鋼構造物の長寿命化を図る。
【解決手段】塗装された陸上鋼構造物7に絶縁体5を介してアノード電極4を固着するとともに、該アノード電極4と離間してアース2aを取り付け、電源装置1のプラス極とマイナス極をそれぞれアノード電極4とアース2aとに接続してなり、降雨などにより水膜10が形成されたときに塗膜8の欠陥部9を通してアノード電極4とアース2aとの間に防食電流6が流れるようにした。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 塗装された陸上鋼構造物に絶縁体を介してアノード電極を固着するとともに、該アノード電極と離間してアースを取り付け、電源装置のプラス極とマイナス極をそれぞれアノード電極とアースとに接続してなり、降雨などにより水膜が形成されたときに塗膜の欠陥部を通してアノード電極とアースとの間に防食電流が流れるようにしたことを特徴とする塗装された陸上鋼構造物の電気防食装置。 【請求項2】 電源装置は、太陽電池と蓄電池を組み合わせたものとする請求項1記載の塗装された陸上鋼構造物の電気防食装置。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、塗装された陸上鋼構造物の電気防食装置に係り、特に橋梁,LNGタンク,クレーンなどの通常は水に接していない塗装された陸上鋼構造物の電気防食装置に関するものである。 【0002】 【従来の技術】金属の防食方法として、電気防食方法が知られている。この電気防食方法は、電流の作用で金属の電位を変化させて腐食を防止しようとするもので、電解質を通じて金属表面に外部から直流電流(防食電流)を流し、分極作用によって表面に形成している電位差(局部電池)を消滅させて防食状態を達成し維持しようとするものである。この電気防食方式には、流電陽極方式と外部電源方式とがある。 【0003】図9は通電方式の模型図で、外部電源方式を示す図である。図に示す外部電源方式は、100Vあるいは200Vの交流を降圧整流して防食電流を供給し続けるもので、電源装置のプラス極に電極を、マイナス極に被防食体を接続し、電極体から電解質を通じて防食電流を被防食体に流す方式である。 【0004】図10は塗膜欠陥による塗装鋼板の腐食過程を示す図で、(A)はピンホールの存在を示す図、(B)は腐食因子の侵入を示す図、(C)は腐食の発生を示す図、(D)腐食の進行状況を示す図である。図において、aは塗装鋼板、bは塗膜、cは塗膜bに発生したピンホール、eは塗装鋼板a上に発生したさびである。 【0005】このように、塗膜bにピンホールcが発生すると、H2 O,O2 ,Na Clなどの腐食因子dが侵入することによって、さびeが発生し、さびeが拡大していくと塗膜bは剥離し、さびeはますます拡大する。 【0006】一般に、鉄鋼が腐食する要因としては、第1に水分の存在、第2に酸素の存在がある。相対湿度が高い値をとるほど環境大気中の水分が大きくなり、さびが発生しやすくなる。 【0007】 【発明が解決しようとする課題および知見】従来の外部電源方式や流電陽極方式の電気防食方式によると、土中や水中の鋼構造物のように電気を通す媒体がある場合には、防食電流を塗装された鋼構造物に流すことができるが、橋梁,LNGタンク,クレーンなどのように通常は水に接していない塗装された陸上鋼構造物の場合には、電気を通す媒体がないので、塗装された鋼構造物に防食電流を流すことができないという問題がある。しかし、欠陥部の腐食は、欠陥部が濡れた状態のときに進行するものなので、降雨時や結露時などに塗膜上に形成された水膜を媒体として陸上鋼構造物の塗膜の欠陥部に微小の防食電流を流すようにすれば、塗装の欠陥部も防食できるはずである。 【0008】本発明は、上記課題および知見に鑑み創案されたもので、外部電源方式の電極を利用して塗装された陸上鋼構造物の電気防食装置を提供することを目的とするものである。 【0009】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明によれば、塗装された陸上鋼構造物に絶縁体を介してアノード電極を固着するとともに、該アノード電極と離間してアースを取り付け、電源装置のプラス極とマイナス極をそれぞれアノード電極とアースとに接続してなり、降雨などにより水膜が形成されたときに塗膜の欠陥部を通してアノード電極とアースとの間に防食電流が流れるようにした塗装された陸上鋼構造物の電気防食装置が提供される。 【0010】本発明の好ましい実施形態によれば、電源装置は、太陽電池と蓄電池を組み合わせたものとするのがよい。 【0011】次に本発明の作用を説明する。本発明によれば、電源装置は外部電源方式とし、電源装置のアノード電極を、塗装された陸上鋼構造物に絶縁体を介して固着するとともに、アースをアノード電極と離間して取り付ける。電源装置のプラス極とマイナス極をそれぞれアノード電極とアースとに接続し、降雨や結露などにより水膜が形成されたときに塗膜の欠陥部を通してアノード電極とアースとの間に微小の防食電流が流れるようにする。このように、塗装された陸上鋼構造物に、降雨や結露などにより水膜が形成されると、水膜を媒体として欠陥部に微小の防食電流が流れることにより、鉄がイオン化する化学反応が阻害されて防食を達成する。したがって、特に塗装された陸上鋼構造物のコーナー部や狭あい部などの塗膜劣化し易い個所の防食には最適となり、陸上鋼構造物の長寿命化を図ることができる。また、電源装置は、太陽電池と蓄電池を組み合わせたものを用いることにより、ランニングコストを低減することができる。 【0012】 【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態について、図面に基づいて説明する。図1ないし図3は本発明の一実施形態を示すもので、図1は本発明による塗装された陸上鋼構造物の電気防食装置の概要図、図2は橋梁の側面図で、本発明の塗装された陸上鋼構造物の電気防食装置の適用個所の一例を示す図である。図3は橋梁の一部拡大図である。 【0013】図1において、1は電源装置である。2は電源装置1のマイナス極と陸上鋼構造物7の一部に取り付けたアース2aとを連結した導線である。3は電源装置1のプラス極とアノード電極4とを連結した導線である。アース2aとアノード電極4とは離間して取り付けられている。5はアノード電極4の下面に装着した絶縁体で、接着シートにより固着されている。6はアノード電極4とアース2aとの間に流れる防食電流である。8は陸上鋼構造物7上に塗られた塗膜である。9は塗膜8に発生したピンホールなどの欠陥部である。10は塗膜8上に降雨や結露などにより形成された水膜である。なお、この防食装置は、既設の陸上鋼構造物7にも、新設の陸上鋼構造物7にも用いることもできる。 【0014】図2において、11は陸上鋼構造物7の一例を示す橋梁で、基礎13上に立設された橋脚14上に架けられている。なお、図2に示す矢印は、湿気のたまりやすい部位を示している。12は橋梁11の橋桁で、図3に示すように、主要部をウエブ材12a、上フランジ材12b、下フランジ材12cで構成している。 【0015】図3は橋梁11の一部を拡大した図であるが、電源装置1は、例えば、図に示すように、橋桁12の下フランジ材12cの上面に固着し、アノード電極4はウエブ材12aの表面に固着している。 【0016】図3に示すA部は、アース2aの取付部を拡大したものである。アース2aは、下フランジ材12cの下面に固着されたボルト12dに取り付けている。なお、ボルト12dは降雨や結露などによる故障を回避するため、内部にグリース等の充填材(図示せず)を充填した塩化ビニール樹脂製のボルトキャップ15により水分の侵入を防止している。なお、図ではボルトキャップ15は、一部切り欠いて示している。 【0017】図3に示すB部は、アノード電極4を拡大した図で、塗膜8上に絶縁体5を介して接着シートにより固着した状態を示している。 【0018】次に実施形態に基づく作用について説明する。本発明によれば、電源装置1は外部電源方式とし、電源装置1のアノード電極4を、塗装された陸上鋼構造物7に絶縁体5を介して固着するとともに、アース2aをアノード電極4と離間して取り付ける。電源装置1のプラス極とマイナス極をそれぞれアノード電極4とアース2aとに接続し、降雨や結露などにより水膜10が形成されたときに塗膜8の欠陥部9を通してアノード電極4とアース2aとの間に微小の防食電流6が流れるようにする。このように、塗装された陸上鋼構造物7に、降雨や結露などにより水膜10が形成されると、水膜10を媒体として欠陥部9に微小の防食電流が流れることにより、鉄がイオン化する化学反応が阻害されて防食を達成する。したがって、特に塗装された陸上鋼構造物7のコーナー部や狭あい部などの塗膜劣化し易い個所の防食には最適となり、陸上鋼構造物7の長寿命化を図ることができる。また、電源装置に太陽電池と蓄電池を組み合わせたものを用いることにより、ランニングコストを低減することができる。なお、塗膜表面の水膜の比抵抗が大きく、アノード電極1個あたりの防食範囲が狭くなるような場合には、塗装された陸上鋼構造物7に導電性塗料を上塗りし、微小防食電流6の到達範囲を大きくすることもできる。 【0019】図7は電源装置の一実施形態を示すもので、(A)は蓄電池等の直流電源と太陽電池を組み合わせた電源装置の例を示し、(B)は交流電源と交流から直流に変換する交流変換器を用いた電源装置の例を示している。 【0020】図8は塗膜上に複数の欠陥部がある場合の、防食電流の流れを示す図である。電源装置1のプラス極とマイナス極をそれぞれアノード電極4とアース2aとに接続し、降雨や結露などにより水膜10が形成されたときに塗膜8の複数の欠陥部9を通してアノード電極4とアース2aとの間に微小の防食電流6が流れるようになている。 【0021】 【実施例】本願発明の発明者らは、本発明の効果を実証するため、次のような実証試験を行った。実施例1では、図4に示すように、陸上鋼構造物を模擬した長さ100cm,幅10cmの塗装鋼板を用い、アノード電極から一番離れた所に1mmのピンホール9aを1個設け、本実験では,このピンホール9aとSCE(飽和カロメル電極)をつないで測定し、データ処理の際にSHE(標準水素電極)に換算したものである。塩水を噴霧して塗装鋼板上に水膜を作り、直流電源を使用し、アノード電極とアースとの間に15Vの電圧をかけた。 【0022】図5は試験結果を示す図である。図は本電気防食装置を使用した場合としなかった場合の電極電位と電流値の時間的変化を示すもので、横軸に時間(Hr.),左縦軸に電極電位( mV Vs.SHE ),右縦軸に電流値(μA)を示している。図において、3点鎖線は防食装置を使用しない場合の電極電位を示し、実線は防食装置を使用した場合の電極電位を示し、点線は防食装置を使用した場合の防食電流を示している。本試験は、塩水噴霧;0.5Hr,湿潤;相対温度95%,温度;30℃で行った。 【0023】この試験の結果、防食装置を使用しない場合には、試験開始時から100Hr.まで、電極電位はほぼ−500 mVと横ばいに推移している。一方、防食装置を使用した場合には、電極電位は試験開始時のほぼ−500 mVから直ちに−1000 mVに移行し、100Hr.まで、−1000 mVから−800 mVの間で変動しており、電流値は8〜15μAで推移しており、防食効果のあることがわかる。 【0024】実施例2では、実施例1と同様に、陸上鋼構造物を模擬した長さ200cm,幅10cmの塗装鋼板を用い、その塗装鋼板を沖縄県の沿岸部に設置して自然環境のもとで試験を行った。 【0025】図6は本電気防食装置による防食効果の電極電位と相対湿度との相関関係を示すもので、横軸に時間(days),左縦軸に電極電位( mV Vs.SHE ),右縦軸に相対湿度(%)を示している。図において、点線は電極電位を示し、実線は相対湿度(%)を示している。 【0026】この試験の結果、相対湿度が50〜70%の間では電極電位が−200〜−600 mVであるのに対し、相対湿度が70〜100%をとる時間で、電極電位は−700〜−1000 mVを示している。これは相対湿度が高いほど厚い水膜が生成し、オームの法則から厚い水膜の方が電流が流れやすいので、電極電位が下がるためと考えられる。したがって、相対湿度が高いほど電気防食装置は高い効果を発揮する。 【0027】本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更し得ることは勿論である。 【0028】 【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、降雨や結露などによって塗装した陸上鋼構造物上に形成された水膜を媒体として塗膜の欠陥部に微小の防食電流を流すようにしたので、特に塗装した陸上鋼構造物のコーナー部や狭あい部などの塗膜劣化し易い個所の防食ができ、陸上鋼構造物の長寿命化を図ることができるなどの優れた効果を奏する。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000000099 【氏名又は名称】石川島播磨重工業株式会社
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| 【出願日】 |
平成9年(1997)10月14日 |
| 【代理人】 |
【弁理士】 【氏名又は名称】島村 芳明
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| 【公開番号】 |
特開平11−117082 |
| 【公開日】 |
平成11年(1999)4月27日 |
| 【出願番号】 |
特願平9−280554 |
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