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【発明の名称】 鋳造用すず合金
【発明者】 【氏名】佐藤 健二

【氏名】中村 勝行

【要約】 【課題】Pbを一切含まず、そして食品衛生法上のSbの規制値(5%未満)を満たし、しかも鋳造性と転写性に優れ、且つ鋳造した製品の鋳肌の色調が銀材に近いものが得られる鋳造用すず合金を提供すること。

【解決手段】重量比で、Biを0.5%〜10%,Sbを1.0%〜4.9%,Cuを0.3%〜2.5%を含み残部がSn及び不可避的不純物からなると共に、前記BiとSbを合わせた組成量を重量比で4%以上とした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 重量比で、Biを0.5%〜10%,Sbを1.0%〜4.9%,Cuを0.3%〜2.5%を含み残部がSn及び不可避的不純物からなる事を特徴とする鋳造用すず合金。
【請求項2】 前記BiとSbを合わせた組成量を、重量比で4%以上とした請求項1記載の鋳造用すず合金。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、装飾品や玩具,各種の食器類等を鋳造するのに適した鋳造用すず合金に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から装飾品や食器類等を鋳造するのに一般的に用いられている鋳造用すず合金としては、ローマンピューター(70%Sn-30%Pb)とチュダーピューター(89%Sn-9%Sb-2%Cu)がある。両者共に鋳造性及び転写性に優れてはいるが、ローマンピューターは環境上その使用が厳しく制限されているPb(鉛)を比較的多く含んでいる問題がある。しかも、ローマンピューターはPb(鉛)を含むため、鋳造した製品の鋳肌の色調がやや黒ずみ、水などと接触すると腐食によりその部分が黒くなり、そのままでは装飾品や食器類として使用できず、必ずメッキ等を施さなければならない不具合があった。また、チュダーピューターも、食品衛生法上の規制値以上のSb(アンチモン)を含んでいる問題があるため、食器類に使用する場合にはメッキ等を施こす必要があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこのような従来の不具合に鑑みてなされたものであり、Pb(鉛)を一切含まず、そして食品衛生法上のSb(アンチモン)の規制値(5%未満)を満たし、しかも鋳造性と転写性に優れ、且つ鋳造した製品の鋳肌の色調が銀材に近いものが得られる鋳造用すず合金を提供せんとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】斯かる目的を達成する本発明の鋳造用すず合金は、重量比で、Biを0.5%〜10%,Sbを1.0%〜4.9%,Cuを0.3%〜2.5%を含み残部がSn及び不可避的不純物からなる事を特徴としたものである。この際、前記BiとSbを合わせた組成量を、重量比で4%以上とすることが好ましい。
【0005】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。本発明に係る新規鋳造用すず合金は、重量比で、Bi(ビスマス)を0.5%〜10%,Sb(アンチモン)を1.0%〜4.9%,Cu(銅)を0.3%〜2.5%を含み残部がSn(すず)及び不可避的不純物からなり、且つ上記BiとSbを合わせた組成量が、重量比で4%以上となるような成分構成としたものである。
【0006】本発明における各合金成分の添加量(組成量)は、各合金成分の特性に応じて以下の理由によって定められた。Bi(ビスマス)は、Sn合金に対して凝固開始温度を低下させる作用があるので、Sn合金の溶解温度を低くでき、また凝固時に膨張する特性がある。従って、鋳造性(湯流れ性)を向上させて鋳造製品の凝固収縮率を小さいものとし、その結果、転写性(金型のキャビティ形状を忠実に再現する性質)に優れた効果を発揮する。更に、Biの添加は鋳造製品に対して伸びの増加をもたらすと共に、鋳肌の色調を白くする作用がある。本発明においては、このBiを重量比で0.5%〜10%の範囲で添加する。Biの添加量が0.5%未満では、鋳造製品として十分な強度及び硬さが得られなくなり、10%以上にすると鋳造製品の鋳肌が悪くなると共に、鋳造割れが生じ易くなる。
【0007】Sb(アンチモン)は、Sn合金に対してBiとほぼ同様な作用をもたらし、鋳造性(湯流れ性)を向上させ鋳造製品の凝固収縮率を小さいものとし、転写性に優れた効果を発揮する。本発明では、このSbを重量比で1.0%〜4.9%の範囲で添加する。Sbの添加量が1.0%未満では、鋳造製品として十分な強度及び硬さが得られなくなる。また、日本の食品衛生法では、合金製品中のSbの含有量を5重量%未満に規制しているので、本発明においてはSbの添加量を4.9%以下とした。
【0008】尚、BiとSbを合わせた組成量は、重量比で4%以上となるような成分構成とする。BiとSbを合わせた組成量が4%以下では、鋳造製品としての必要な強度並びに硬さが得られない。
【0009】また、Cu(銅)は、Sn合金鋳物の結晶を微細化して強度並びに伸びの向上に効果があり、重量比で0.3%〜2.5%の範囲で添加する。Cuの添加量が0.3%未満ではその効果が少なく、2.5%以上では鋳造製品の伸びが低下してしまい、鋳造割れが生じ易くなる。尚、Cuの添加量が0.7%時にSn合金の凝固開始温度が最低となり、0.7%以上になると添加量の増加に伴って凝固開始温度が上昇するため溶解温度も上昇して、湯流れ性が悪くなる傾向がある。
【0010】而して、上述した成分構成を有する本発明の鋳造用すず合金は、これまでアンチモニー合金(Pb-9〜13%Sb)を用いて鋳造していた鋳型を使用して、アンチモニー合金の場合と同様の手法でもって鋳造することができる。そして、得られた鋳造製品は、そのまま各種の用途に使用することが可能である。
【0011】
【実施例】下記の表1に示した成分構成を有する鋳造用すず合金を用いて、鋳造性(湯流れ性),強度,硬さ及び色調についてそれぞれ検証した。比較例として、ローマンピューター(70%Sn-30%Pb)とチュダーピューター(89%Sn-9%Sb-2%Cu)及び通常のアンチモニー合金(Pb−12%Sb)を用いた。
【0012】
【表1】

【0013】先ず、鋳造性(湯流れ性)について、ラゴンヌ流動長を測定することにより検証した。ラゴンヌ流動長の測定結果を、図1に示す。図1を観ると、鋳造性(湯流れ性)に関して、本発明に係るすず合金(試料■,■)は、従来のすず合金である比較例■(ローマンピューター)及び比較例■(チュダーピューター)よりも多少劣っているが、通常のアンチモニー合金(Pb−12%Sb)よりは優れていることが理解される。
【0014】次に、本すず合金における機械的性質を調べた。その結果を、図2及び図3に示す。図2は、Cuの添加量の増減が及ぼす引張り強さと伸びを表したものである。この図2よれば、Cuの添加量の増加に伴って引張り強さが高くなる傾向にあるが、伸びに関してはCuの添加量の増減に伴う一定の傾向がまったく見られない。これは、Cuの添加量の増減によりすず合金の凝固形態が変化し、引け巣が発生しやすくなるためと推察される。更に図2を観ると、Biの添加量を増加させると機械的特性(引張り強さ及び伸び)に優れる傾向にあることが解る。
【0015】また図3は、本すず合金における硬さ(ブリネル硬さ)を表したものである。この図3を観ると、試料■(Sn−1Bi−1Sb−0.5Cu)のすず合金は硬さが通常のアンチモニー合金(ブリネル硬さ:18HB(5/25))よりも多少低いが、試料■(Sn−3Bi−2Sb−0.5Cu)と試料■(Sn−6Bi−4Sb−2Cu)及び試料■(Sn−10Bi−4Sb−0.5Cu)の各すず合金は必要な硬さ(ブリネル硬さ:21HB(5/25)以上)を有し、試料■(Sn−6Bi−4Sb−2Cu)及び試料■(Sn−10Bi−4Sb−0.5Cu)に至っては比較例■(チュダーピューター(Sn-9Sb-2Cu))よりも硬いことが解る。更にこの図3から、BiとSbを合わせた組成量が4%未満では、十分な強度並びに硬さが得られないことが理解される。
【0016】次に、本すず合金における色調を調べた。その結果を、図4に示す。図4は、簡易色差計を用いて各すず合金の色調をL***表色系により示したものである。図4において、L*は上から下へ縦軸に明るさを示し、a*は左から右へ横軸に緑〜赤の色調変化を示し、b*は下から上に縦軸に青〜黄の色調変化を示したものである。ちなみに、Ag(銀)の色調が、本発明すず合金の目標とする基準である。この図4によれば、試料■(Sn−1Bi−1Sb−0.5Cu)のすず合金は純Snや比較例■(Sn-9Sb-2Cu)のチュダーピューターとほぼ同じ色調を有するが、試料■(Sn−3Bi−2Sb−0.5Cu)と試料■(Sn−6Bi−4Sb−2Cu)及び試料■(Sn−10Bi−4Sb−0.5Cu)の各すず合金は、よりAg(銀)に近い色調を有することが理解される。
【0017】
【発明の効果】斯様に、本発明に係る鋳造用すず合金によれば、Pb(鉛)を一切含まず、そして食品衛生法上その含有範囲が規制されているSb(アンチモン)の規制値(5%未満)を満たし、しかも鋳造性と転写性に優れると共に鋳造製品として必要な強度を備え、且つ鋳造した製品の鋳肌の色調が銀材に近いものが得られる。しかも、従来から良く知られているアンチモニー合金の鋳造法と同様の手法でもって鋳造することができることから、Pb(鉛)を一切含まないすず合金としてアンチモニー合金に代わる鋳造用すず合金として使用することが可能となる。
【0018】特に、本発明に係る鋳造用すず合金で鋳造した製品の鋳肌が、銀材とほぼ同様の色調・質感を持っていることは特筆すべき点であり、鋳造後にメッキ等を施さずとも使用することが可能となる。
【出願人】 【識別番号】598041751
【氏名又は名称】輸出アンチモニー工業協同組合
【識別番号】591043581
【氏名又は名称】東京都
【出願日】 平成10年(1998)3月30日
【代理人】
【公開番号】 特開平11−279672
【公開日】 平成11年(1999)10月12日
【出願番号】 特願平10−84250