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【発明の名称】 金属−セラミックス複合材料及びその製造方法
【発明者】 【氏名】内藤 一成
【氏名】下嶋 浩正
【氏名】木村 光良
【氏名】林 睦夫
【氏名】高橋 平四郎
【氏名】樋口 毅
【氏名】小山 富和
【課題】従来の金属−セラミックス複合材料は、メタルベインが発生し易く、機械的特性に劣っていた。

【解決手段】セラミックス粉末に金属を浸透させた金属−セラミックス複合材料において、該セラミックス粉末が、Al23粉末にSi34粉末を5〜40重量%混合した粉末であることとした金属−セラミックス複合材料。セラミックス粉末を強化材としてプリフォームを形成し、そのプリフォームに金属を浸透させる金属−セラミックス複合材料の製造方法において、該プリフォームの形成方法が、Al23粉末にSi34粉末を5〜40重量%あらかじめ混合し、その混合した粉末に、無機バインダーを加えて沈降成形法で成形した成形体を焼成する方法であり、その形成したプリフォームにアルミニウムを主成分とする合金を浸透させることとした金属−セラミックス複合材料の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 セラミックス繊維または粉末に金属を浸透させた金属−セラミックス複合材料において、該セラミックス粉末が、Al23粉末にSi34粉末を混合した粉末であり、そのSi34粉末の混合割合が、5〜40重量%であることを特徴とする金属−セラミックス複合材料。
【請求項2】 セラミックス繊維または粉末を強化材としてプリフォームを形成し、そのプリフォームに基材である金属を浸透させる金属−セラミックス複合材料の製造方法において、該プリフォームの形成方法が、Al23粉末にSi34粉末を5〜40重量%あらかじめ混合し、その混合した粉末に無機バインダーを加えて沈降成形法で成形し、その成形した成形体を焼成する方法であり、その形成したプリフォームにアルミニウムを主成分とする合金を700〜1000℃の温度で浸透させることを特徴とする金属−セラミックス複合材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属に強化材を複合させた金属−セラミックス複合材料及びその製造方法に関し、特に機械的特性に優れた金属−セラミックス複合材料及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】セラミックス繊維または粒子で強化された金属−セラミックス複合材料は、金属とセラミックスの両方の特性を兼ね備えており、例えばこの複合材料は、高剛性、低熱膨張性、耐摩耗性等のセラミックスの優れた特性と、延性、高靱性、高熱伝導性等の金属の優れた特性を備えている。このように、従来から難しいとされていたセラミックスと金属の両方の特性を備えているため、機械装置メーカ等の業界から次世代の材料として注目されている。
【0003】この複合材料、特に金属としてアルミニウムをマトリックスとする複合材料の製造方法は、粉末冶金法、高圧鋳造法、真空鋳造法等の方法が従来から知られている。しかし、これらの方法は、強化材であるセラミックスの含有量を多くできない、あるいは大型の加圧装置が必要である、もしくはニアネット成形が困難であるなどの理由により、いずれも満足できるものではなかった。
【0004】そこで最近では、上記問題を解決する製造方法として、米国ランクサイド社が開発した非加圧金属浸透法が特に注目されている。この方法は、SiCやAl23などのセラミックス粉末で形成されたプリフォームに、アルミニウムインゴットを接触させ、これをN2雰囲気中で700〜900℃に加熱して溶融したアルミニウム合金をプリフォームに含浸させる方法である。これは、化学反応を利用してセラミックス粉末への溶融金属の濡れ性を改善することにより、加圧しなくても金属をプリフォームに含浸できるようにした優れた方法である。
【0005】また、この方法では、セラミックスの含有率を30〜85vol%と広く、かつ高い範囲まで変えることができ、例えば熱膨張率で6.2×10-6/℃、ヤング率で265GPa、破壊靱性で10MN/m3/2、熱伝導度で170w/m℃の特性を有するSiCを70vol%含む金属−セラミックス複合材料も容易に作製することができる。さらに、この方法で作製されたプリフォームは、その形状の自由度が高いので、かなり複雑な形状をニアネットで作ることも可能である。このようにこの方法は、加圧装置が不要であり、セラミックスの含有率を高くすることができ、ニアネット成形も可能となる方法であるので、前記した問題が解決される優れた方法である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、強化材にAl23粉末を用いた複合材料は、他のセラミックス粉末を用いたものに比べ、強さや破壊靱性などの機械的特性に優れており、極めて破損し難いため、搬送用部材等荷重や衝撃が掛かる用途を中心とした適用範囲の広い優れた材料であるが、この複合材料は、以下の理由でメタルベインが発生し易いという問題があった。
【0007】ここでメタルベインについて簡単に説明する。セラミックス粉末で形成したプリフォームには亀裂が生じることがあり、この生じた亀裂に金属が浸透した部分をメタルベインと言う。このメタルベインには強化材がほとんど無いため、メタルベインと他の部分とでは熱膨張係数が大きく異なる。そのため、メタルベインと他の部分との界面に残留熱応力が残存し、その結果、複合材料の強さがメタルベインがない場合に比べ2割程度低下することとなる。
【0008】このメタルベインの発生する理由として、1つはプリフォーム自体の強さが低いため、ハンドリング時に亀裂が入り、その亀裂に金属が浸透して発生することが挙げられる。この場合は直線的なメタルベインが発生する。もう1つはプリフォームを水系スラリーを用いて沈降成形法で成形する際、凍結する工程があるが、その工程でプリフォームの温度分布が不均一であると、氷の生成が不均一となり、その不均一によりプリフォームに亀裂が入り、その亀裂に金属が浸透して発生することである。特に大きな氷が生じたところがメタルベインになり易い。この場合は亀裂が放射状になるのでメタルベインも放射状になる。
【0009】特にAl23粉末の場合にこのメタルベインが発生し易いのは、プリフォーム自体の強さが他のセラミックス粉末より低いことも一因であるが、それ以上にAl23はSiCやAlN等に比べ熱伝導性がよくないために前記した凍結工程でプリフォーム全体の温度分布が均一になり難く、その結果、プリフォームに亀裂がより発生し易くなるものであり、前記した後者の理由によるメタルベインが極めて多く発生し問題となっていた。
【0010】本発明は、上述した強化材にAl23粉末を用いた金属−セラミックス複合材料が有する課題に鑑みなされたものであって、その目的は、メタルベインの発生を少なくして機械的特性を改善した金属−セラミックス複合材料とその製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記目的を達成するため鋭意研究した結果、Al23粉末の一部をSi34粉末に置換した粉末でプリフォームを形成すれば、メタルベインの発生が少ない機械的特性が改善された複合材料が得られるとの知見を得て本発明を完成するに至った。
【0012】即ち本発明は、(1)セラミックス繊維または粉末に金属を浸透させた金属−セラミックス複合材料において、該セラミックス粉末が、Al23粉末にSi34粉末を混合した粉末であり、そのSi34粉末の混合割合が、5〜40重量%であることを特徴とする金属−セラミックス複合材料(請求項1)とし、また、(2)セラミックス繊維または粉末を強化材としてプリフォームを形成し、そのプリフォームに基材である金属を浸透させる金属−セラミックス複合材料の製造方法において、該プリフォームの形成方法が、Al23粉末にSi34粉末を5〜40重量%あらかじめ混合し、その混合した粉末に無機バインダーを加えて沈降成形法で成形し、その成形した成形体を焼成する方法であり、その形成したプリフォームにアルミニウムを主成分とする合金を700〜1000℃の温度で浸透させることを特徴とする金属−セラミックス複合材料の製造方法(請求項2)とすることを要旨とする。以下さらに詳細に説明する。
【0013】上記複合材料としては、セラミックス粉末として、Al23粉末にSi34粉末を混合した粉末とし、そのSi34粉末の混合割合を、5〜40重量%とする金属−セラミックス複合材料とした(請求項1)。Al23粉末の一部をSi34粉末に置換することにより、セラミックス粉末の熱伝導性が向上し、その結果、凍結工程時のプリフォームの温度分布が均一となり、メタルベインの発生が抑えられ、機械的特性が改善されることとなる。
【0014】一般にSi34焼結体の熱伝導率を測定すると、Al23と同程度ないしはやや悪いぐらいである。しかし、これは焼結体を測定した場合で、難焼結性であるSi34にはかなりの量の焼結助剤が添加されており、これが粒界に存在してSi34の熱伝導性を悪化させているものと思われる。単結晶に近い粗大粒子では、Al23の5〜6倍の熱伝導率を有していると報告されている。本発明では、焼結助剤を添加する必要がないため、Si34自体の良好な熱伝導性が発揮され、プリフォーム全体の温度分布を均一に近づけているものと思われる。
【0015】加えて、Si34の熱膨張率が小さいこともメタルベインの発生を抑える無視できない要因と思われる。Si34の熱膨張率は、Al23の4割程度であるので、Al23粉末にSi34粉末を添加することにより、急激な温度変化によるプリフォームの体積変化が緩和され、それに伴う亀裂発生をも抑制しているものと思われる。
【0016】そのSi34粉末の混合割合は、5〜40重量%が好ましく、この範囲内であれば、メタルベインの発生が抑えられる。Si34の混合割合が5重量%より少ないと、メタルベインの発生を抑える効果が少なく、40重量%を超えると、機械的特性が低下する。
【0017】その複合材料の製造方法としては、プリフォームの形成方法を、Al23粉末にSi34粉末を5〜40重量%添加してあらかじめ混合し、その混合した粉末に、無機バインダーを加えて沈降成形法で成形し、その成形した成形体を焼成する方法とし、その形成したプリフォームにアルミニウムを主成分とする合金を700〜1000℃の温度で浸透させることとする金属−セラミックス複合材料の製造方法とした(請求項2)。Al23粉末にSi34粉末を添加してあらかじめ混合することにより、Al23粉末中にSi34粉末が均一に分布し、凍結工程での温度分布が均一となる。添加する量は、5〜40重量%が好ましく、この範囲内であれば、メタルベインの発生が抑えられるばかりでなく、理由は不明であるが金属の浸透速度が早くなる。Si34の混合割合が5重量%より少ないと、メタルベインの発生を抑える効果が少なく、40重量%を超えると、機械的特性が低下するばかりでなく浸透速度が遅くなる。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明の製造方法をさらに詳しく述べると、先ず強化材としてAl23粉末とSi34粉末を用意する。これら粉末をSi34粉末の混合割合が5〜40重量%となるように配合し、それに無機バインダーを、必要があれば有機バインダーを加えて湿式混合する。混合方法は均一な混合が要求されるため、ポットミルなどを用いて10時間以上混合するのが望ましい。
【0019】得られた混合物を沈降成形法で成形する。その一例を述べると、例えば、Al23粉末にSi34粉末を加えたものにアンモニウムシリケートなどのバインダーを3〜20重量%、イオン交換水を20〜40重量%、その他必要に応じて消泡剤などを若干加え、ポットミルで10時間以上湿式混合する。混合したスラリーは、振動しながら鋳込んで沈降成形する。鋳型は通常はシリコーンゴム型を使用するが、プラスチック、アルミニウム等の型であってもよく、特に限定はない。鋳込んだ後粒子が沈降する間はなるべく振動を加え充填をよくする。それを冷凍して脱型し、成形体を得る。
【0020】得られた成形体は、900〜1100℃の温度で焼成してプリフォームを形成する。形成したプリフォームの上部あるいは下部にアルミニウムを主成分とする合金を置き、窒素気流中で非加圧で700〜1000℃の温度で合金を浸透させ、冷却する。用いるアルミニウム合金はAl−Mg、Al−Mg−Si系などのMgを含んだものを使用した方が浸透は容易であるが、これに限定されるものではなく、最終製品に要求される物性を劣化させる元素が含まれていないアルミニウム合金であれば何でも構わない。
【0021】以上の方法で金属−セラミックス複合材料を作製すれば、メタルベインの少ない機械的特性に優れた金属−セラミックス複合材料とすることができる。
【0022】
【実施例】以下、本発明の実施例を比較例と共に具体的に挙げ、本発明をより詳細に説明する。
【0023】(実施例1〜4)
(1)プリフォームの形成強化材として#320(平均粒径が40μm)の市販Al23粉末、#600(平均粒径が20μm)の市販Al23粉末及び平均粒径が10μmのSi34粉末をそれぞれ表1に示す割合で配合し、その粉末に対し、バインダーとしてコロイダルシリカ液を10重量部(シリカ分が2重量部となる量)添加し、それにイオン交換水を24重量部加え、媒体を入れてないポットミルで20時間混合した。得られたスラリーを図1に示す成形体ができるシリコーンゴム型に流し込んで沈降成形し、余分な水分をスクレープにより除去した後、−30℃で12時間凍結し冷凍品を得た。得られた冷凍品を脱型し、1050℃で3時間焼成してプリフォームを形成した。
【0024】(2)金属−セラミックス複合材料の作製得られたプリフォームの上にAl−7Mg組成のアルミニウム合金を置き、窒素雰囲気中で825℃の温度で24時間非加圧浸透させ冷却して金属−セラミックス複合材料を作製した。
【0025】(3)評価得られた複合材料の表面を目視観察しメタルベインの有無を調査し、メタルベインが認められないものを○とし、僅かに認められるものを△とし、はっきり認められるものを×とした。また、金属の浸透速度を浸透した部分の体積でもって調べた。さらに、得られた複合材料から試験片を切り出し、アルキメデス法で比重と気孔率を測定し、JIS R 1602(ファインセラミックスの弾性率試験方法)の超音波パルス法でヤング率を、JIS R 1601(ファインセラミックスの曲げ強さ試験方法)で4点曲げ強さを測定した。また、破壊靱性を、シェブロン・ノッチを入れた試験片についてJIS R 1607(ファインセラミックスの破壊靱性試験方法)に準じて測定した。それらの結果を表1に示す。
【0026】(比較例1〜6)セラミックス粉末(SiC粉末については、平均粒径が65μmと14μmの2種類を使用)とその混合割合を表1の様にした他は比較例1〜5では実施例と同様にプリフォームを形成し、複合材料を作製し、評価した。また、比較例6では、比較例5の浸透金属をAl−7Mgに代えてAC8Aを用いた他は同様に複合材料を作製し、評価した。それらの結果を表1に示す。
【0027】表1から明らかなように、実施例ではいずれもメタルベインの部分が認められず、物性値もAl23粉末単味のメタルベインのない部分の物性値(比較例1の上段値)に比べて遜色なかった。
【0028】これに対して、比較例1では、プリフォームに亀裂が入ったためはっきりしたメタルベインが認められ(図2)、その部分の物性値(下段値)は、曲げ強度において上段値より2割近い低下が認められた。また、金属の浸透速度が実施例に比べかなり遅かった。比較例2では、Si34の含有量が多いため物性値が低下した。比較例3では、物性値が比較例2よりさらに低下したうえ金属の浸透速度が遅く、メタルベインも若干認められた。比較例4に至っては、浸透速度が遅すぎて評価用試験片が作製できず評価できなかった。比較例5では、アルミニウム合金中にSiが含まれていないため、SiCとAlが反応してAl43が生成し、そのAl43がさらに空気中の水分と反応して腐食されてしまい、経時的に特性が低下するという欠点が見られた。これを防ぐために比較例6では、Siを含むAC8A合金を用いたが、物性値はそれほど高くならず、しかも浸透速度が遅くなった。このことは、Al23にSi34を加えれば、Al23単味に比べてメタルベインが抑えられ、金属の浸透速度も向上すること、またSiCを含む複合材料に比べAl−Mg系の合金が使える有利さを有することを示している。
【0029】
【発明の効果】以上の通り、本発明の金属−セラミックス複合材料であれば、メタルベインの発生の少ない金属−セラミックス複合材料とすることができるようになった。これにより、機械的特性に優れた複合材料とすることができ、工業的利用の範囲が非常に広がった。
【出願人】 【識別番号】000004190
【氏名又は名称】日本セメント株式会社
【識別番号】596134840
【氏名又は名称】セランクス株式会社
【出願日】 平成9年(1997)9月5日
【代理人】
【公開番号】 特開平11−80859
【公開日】 平成11年(1999)3月26日
【出願番号】 特願平9−256192