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【発明の名称】 |
耐食性とばね特性にすぐれたばね用ステンレス鋼線 |
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【氏名】渡邊 一弘 【氏名】谷本 好則 【氏名】川畑 直行 【氏名】川上 善紀 【氏名】多田 雅人 |
【課題】耐食性と機械的特性を兼備しばね特性を向上させたばね用ステンレス鋼線。
【解決手段】重量比で、0.07〜0.10%の炭素と、0.45〜0.70%のケイ素、1.3〜1.5%のマンガン、10.00〜10.50%のニッケル、16.00〜18.00%のクロム、2.00〜3.00%のモリブデン、及びチッ素を0.18〜0.30%添加してなるオーステナイト系ステンレス鋼線であって、該鋼線は、温度350〜550℃での低温熱処理を施した時の0.2%引張耐力比を90%以上の特性とする為に、前記炭素とチッ素との合計分量が0.26〜0.35%範囲でかつ次式に示すニッケル当量を25〜30%とするとともに、加工率60%以上での伸線加工を施してなる耐食性とばね特性にすぐれたばね用ステンレス鋼線。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】重量比で、0.07〜0.10%の炭素と、0.45〜0.70%のケイ素、1.3〜1.5%のマンガン、10.00〜10.50%のニッケル、16.00〜18.00%のクロム、2.00〜3.00%のモリブデン、及びチッ素を0.18〜0.30%添加してなるオーステナイト系ステンレス鋼線であって、該鋼線は、温度350〜550℃での低温熱処理を施した時の0.2%引張耐力比を90%以上の特性とする為に、前記炭素とチッ素との合計分量が0.26〜0.35%範囲でかつ次式に示すニッケル当量を25〜30%とするとともに、加工率60%以上での伸線加工を施してなる耐食性とばね特性にすぐれたばね用ステンレス鋼線。 ニッケル当量%=Ni+0.35Si+1.05Mn+0.65Cr+12.6(C+N)+0.98Mo【請求項2】前記ステンレス鋼線は、さらに0.10〜0.30%のニオブを添加するとともに、前記クロムを16.00〜17.00%とした請求項1記載のばね用ステンレス鋼線。 【請求項3】前記炭素とチッ素との合計分量は、0.26〜0.32%とした請求項1又は2に記載の前記ばね用ステンレス鋼線。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、耐食性と機械的特性を兼備しばね特性を向上させたばね用ステンレス鋼線に関する。 【0002】 【従来の技術】ステンレス鋼は、用途や求める特性により成分分量や加工条件の組合わせによって多種多様の製品が開発されており、例えばJIS規格G−4309では一般用途を対象としたステンレス鋼線が規定され、またG−4314では特にばね用を対象として各々鋼種及び特性を規程しており、この中で最も汎用の鋼種としてSUS304及びSUS316を示している。【0003】しかしながら、これら鋼種についてはいずれも一長一短があって、あらゆる用途への適用は困難である。すなわち、鋼種SUS304は最も一般的なものであって、比較的安定した耐食性を備えながらも大きな強度を備えるものとして知られているが、苛酷な腐食環境への使用は好ましくない。 【0004】一方、同SUS316については、成分的にもニッケルを高めかつモリブデンを添加していることから、耐食性には優れる反面、強度や疲労特性においてSUS304にははるかに及ばないという欠点がある。 【0005】したがって、従来の材料選択基準は強度及び耐食性のいずれの特性を重視するかによってなされてきた状況があり、品質保証の上ではメンテナンス期間を短くしたり、出力のより大きい形態での設計とする方策が取られて来た。 【0006】このような状況の中で、一方では新たな特性を持つ新鋼種の開発もなされてはきたが、近年の品質要求基準を満足することには至っていない。その一例として特開昭51−50217号公報では、前記両特性を兼備する材料の提供を目的として、C:0.08以下、Si:0.70〜1.50,Mn:2.00以下,P:0.040以下,S:0.030以下,Ni:8〜10.50,Cr:18〜20.00,Mo:1〜2.00,N:0.1〜0.25を添加したばね用のステンレス鋼線を開示している。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】しかし前記公報が開示する発明は、モリブデンが1〜2%で、しかもニッケルが8%前後と共に低く耐食性が十分とは言えないばかりか、比較的多くのケイ素を含有させることで材料自身のマルテンサイト変態による加工硬化を促進し高強度を図っているものと思われる。 【0008】その為、前記公報によるステンレス鋼線の特性(機械的特性)として、低温焼なまし処理温度に伴う引張強さや0.2%降伏強さ(耐力)をその第2図及び第3図に示しているが、これら結果を見るといずれも特性値が不安定で、しかも引張強さに対して降伏強さが低いことがうかがえる。 【0009】ばね材料においては、成形されたばね製品が長期に亙ってへたりや変形なく安定的に作動させる為には、引張強さとともに降伏強さにもすぐれることが必要であるものの、前記公報で得られた線材の降伏強さは160Kg/mm2 (1570N/mm2 )程度にとどまり、しかも引張り強さとの差が25〜30Kg/mm2 もあることから、ばね用線材としては満足なものとは言えない。 【0010】さらにこの結果によれば、特に低温焼なましの処理温度が450℃を境にして急激な特性の上昇を見ているが、このような変化の激しい材料では得られるばね製品の品質に多大のバラツキを与えることから、ばね設計に大きな負担をもたらすものである。 【0011】本発明は、低温焼なまし処理後の0.2%耐力が苛酷な使用状態にも耐え得るよう引張強さの90%以上を満足するとともに、耐食性にも優れたばね用ステンレス鋼線とする為に、チッ素とモリブデンを添加して、炭素,ケイ素,ニッケル分量を調整しながら、しかも炭素とチッ素の合計分量、さらにニッケル当量を規定することで達成したものである。 【0012】 【課題を解決するための手段】すなわち本発明は、重量比で、0.07〜0.10%の炭素と、0.45〜0.70%のケイ素、1.3〜1.5%のマンガン、10.00〜10.50%のニッケル、16.00〜18.00%のクロム、2.00〜3.00%のモリブデン、及びチッ素を0.18〜0.30%添加してなるオーステナイト系ステンレス鋼線であって、該鋼線は、温度350〜550℃での低温焼なまし処理を施した時の0.2%引張耐力比が90%以上の特性とする為に、前記炭素とチッ素との合計分量が0.26〜0.35%でかつ次式に示すニッケル当量を25〜30%とするとともに、加工率60%以上での伸線加工を施してなるばね用ステンレス鋼線である。 ニッケル当量%=Ni+0.35Si+1.05Mn+0.65Cr+12.6(C+N)+0.98Mo【0013】また請求項2の発明では、前記ステンレス鋼線に0.10〜0.30%のニオブを添加するとともに前記クロムを16.00〜17.00%としており、さらに請求項3では、前記炭素とチッ素との合計分量を0.26〜0.32%とした。 【0014】このように本発明では、加工オーステナイト相の安定化を図る為のニッケル当量が25〜30%と高くし、さらに機械的特性のアップを目的として、ニッケル組成の分量を10.00〜10.50%と高レベルでかつ狭く設定する一方、炭素とチッ素との合計分量を0.26〜0.36%としており、加工率60%以上での伸線加工を施すものであり、それによって該鋼線に前記低温焼なまし処理を施した時の少なくとも0.2%引張耐力比を90%以上を可能とするものである。 【0015】ステンレス鋼線は加工に伴って機械的特性が増加することは公知であり、また加工歪みを除去する為にばね成形後に低温焼なまし処理することも行われているが、この処理によって前記耐力比を90%以上と大きく設定できる特性を備えることは、負荷応力が大きい範囲まで安定的に使用できることを示しており、特に繰返しの荷重が負荷するばね用としての用途では、この範囲に限定する必要がある。 【0016】なおこの場合、ばね特性は材料自身の機械的性質(弾性特性)に起因するが、例えばトーションばねとして用いる場合には主として引張りに対する0.2%耐力比が、またコイルばねとして用いるものの場合には、その伸縮によって線材自身に全体的なねじり応力が負荷されることから、ねじりに対する0.3%耐力比を評価することが望まれるが、両耐力比は相関関係にあることから少なくとも引張りについての耐力比は確認しておくことが必要である。しかし、あらゆるばね用途を対象としかつ厳密な管理を行うものにあっては、前記引張りの場合以外にねじりの耐力比についても確認して、いずれも90%以上となるように設定される。 【0017】また、本発明ではその前提として前記焼なまし処理温度を350〜550℃範囲での評価としているが、これは実験の結果からこの範囲で処理したものが特性的に最も優れるという事実から設定したものであるが、現実に必ずしもその温度範囲で処理されるものだけを権利範囲とするものではない。 【0018】なお、前記ニッケル当量については{Ni+0.35Si+1.05Mn+0.65Cr+12.6(C+N)+0.98Mo}の算式で、さらに0.2%引張耐力比とは、鋼線を引張試験によって引張測定した時の破断応力(σB)に対する0.2%耐力(σ0.2 )との比率、すなわち{σ0.2 /σB ×100}で求めることとした。 【0019】そしてその測定は、引張歪み0.2%における引張応力から求めることとし、その詳細はJIS−Z−2241「金属材料引張試験方法」の「オフセット法」によるものとする。 【0020】さらに0.3%ねじり耐力比についても、前記引張耐力比の算出方法と同様にねじり試験を行った時の測定結果から、〔{0.3%ねじり耐力(τ0.3)/ねじり破断応力(τB)}×100〕の算式で求めることとした。 【0021】なお、ねじり耐力については、被測定材にねじりを加えて、トルク−ねじり角曲線(T−θ曲線)を描き、この曲線から応力換算して求めることとした。すなわち、この曲線の一例を図6に添付しており、前記ねじり破断応力(τB)は同曲線の最大トルク(TB )を用いて次式から算出する。なお、Dは被測定材の線径(mm)である。 τB(N/mm2 )=12TB /πD3【0022】また同様に0.3%ねじり耐力についても、引張試験の場合と同様に永久ひずみγ=0.3%を与えるときのねじり角θを{2・lγ0.3 /D}式より求めることとし、比例域(線OD)と平行に第一平行線(イ線)を引き、曲線との交点(点Y)とその垂線(点B)とを求める。次に点Yを通る接線(線ST)を引き、さらにこの線STと平行にかつトルク0点を通る第二平行線(ロ線)から点Cを求める。 【0023】以上の操作から求めたトルク値Y及び同Cの値を次式に代入してτ0.3%のねじり応力が算出される。 τ1 =4(3Y+θ・dT/dθ)/πD3すなわち、τ0.3(N/mm2 )=4(3Y+C)/πD3 で示される。 【0024】この詳細は『Prandtleの計算式』として「ばね用ステンレス鋼線共同研究」(ばね論文集,1969.第14号.P84〜85:日本ばね工業会発行)に紹介されている。 【0025】また前記ニッケル当量については、特にNi組成が大きな要因を持つものとなるが、該当量が25%より小さい場合にあっては伸線加工によるマルテンサイトの発生量が大きくなって磁性を帯びるという新たな問題を起こすこととなり好ましくない。 【0026】一方、30%を越える程大きくすることは、ばね材料として必要とされる十分な機械的特性を得ることができなくなることから前記範囲を設定しており、このようにニッケル当量を調整することは加工オーステナイト相の安定化を計り耐食性向上をもたらすことにも寄与する。 【0027】本発明では、このように低温焼なまし処理による0.2%引張耐力比が90%以上(さらに好ましくは0.3%ねじり耐力比も90%以上の特性も兼備すること)を有するばね特性と耐食性にもすぐれた特性とする為に、各種組成をきびしく調整することで達成するものであって、特に炭素やケイ素,マンガン,ニッケル,モリブデン,チッ素分量に特徴を付与しつつ、さらに炭素及びチッ素の合計分量(0.26〜0.35%)とニッケル当量(25〜30%)との制御を併合した。 【0028】また本発明において、第三元素として0.10〜0.30%のニオブを添加することは耐粒界腐食性を果たして低Cr分量化(16.00〜17.00%)を図るとともに、Nb炭化物の析出によりさらに強度を高めることができるという作用も有する。 【0029】また一般的なステンレス鋼の場合、これを冷間加工すると加工に伴ってマルテンサイト量が増加し、かつ鋼線の磁性を示す透磁率も上昇することとなるが、本発明の鋼線ではニッケル当量を調整することで、処理によっても例えばμ=1.16と磁性をほとんど有しない特性とすることができ、この為、バネ製品としてこれまで磁性を規制していた用途への拡大を図ることができる。 【0030】さらに、前記炭素とチッ素との合計分量として0.26〜0.35%としているが、その理由は0.26%未満では所定温度での低温焼なまし処理を行っても0.2%引張耐力比が90%を下回ることから高強度の特性を得ることができず、また0.35%を越える程高くした場合には、鋼塊や線材製造時の欠陥発生の危険性が大きくなるなど、新たな問題となる為前記範囲に設定しているが、より好ましくは0.26〜0.32%とする。 【0031】一方、耐食性についても本発明ではクロム以外にモリブデンやチッ素を多く含み、耐食性の評価算式であるP.I=Cr+3.3Mo+16Nから求められるP.I値を例えば27%以上と高くすることで、実施例に説明するような耐食性を備える効果としている。 【0032】また、チッ素と炭素との合計分量を前記ニッケル分量との関係で設定すれば、チッ素と炭素の合計分量の37〜40倍程度であるならば十分な固溶強化させ、ばね材としての機械的特性を向上させることができる。 【0033】次に、個々の組成の限定理由について以下に説明する。炭素は、強力なオーステナイト生成元素であり、強度を増大させる機能があるものの、0.07%未満では本発明の高強度を得るには不十分である。しかし炭素は含有量が多くなりすぎると炭化物を発生させ粒界腐食や孔食発生原因となることから上限を0.10%とした。 【0034】ケイ素は、脱酸剤として添加され、また強力なフェライト生成元素でもある。ケイ素の含有によって引張強さや弾性限,耐食性は向上するが、多量の含有は靭性を減少させることとなることから0.45〜0.70%とした。 【0035】マンガンはオーステナイト生成元素で脱硫や脱酸剤として作用するが、耐食性特に耐酸化性を劣化させることから、1.3〜1.5%とした。 【0036】ニッケルは、オーステナイト系ステンレス鋼の基本成分であって、加工オーステナイト相の安定化を図るニッケル当量に大きく影響し、耐食性を高めるものの多すぎる添加は強度を低下させることとなる。この為10.00〜10.50%としている。 【0037】またクロムについても、ニッケルと同様にステンレス鋼の基本組成であつて、耐酸化性,耐食性を向上させるが、硬度や引張強さを低下させることがあって、16.00〜18.00%としており、ニオブを添加する場合は16.00〜17.00%と低くすることができる。 【0038】モリブデンについても、鋼線の耐食性、特に隙間腐食や孔食防止に有効であって少なくとも2.00%以上を必要とするが、過度に添加しても耐食性への寄与度は飽和するとともに、製品コストを高めることから3.00%を上限とした。 【0039】チッ素は、炭素と同様にオーステナイト生成元素で、固溶によって鋼線の耐力を高め、微細なチッ化物を形成して靭性を改善する作用を持つ。しかしその量が0.18%未満では期待する効果が得られず、また0.30%を越えて添加してもステンレス鋼への溶解度が悪くなることからその上限は0.30%とした。 【0040】ニオブは、結晶粒度を微細化させるとともにNb炭化物として粒内に析出することで、他の炭化物発生を抑えその結果耐粒界腐食性を改善して高温強さを上昇させる利点がある。しかし、多量の添加はδフェライトの析出によって熱間加工性を低下させ一般耐食性を悪くすることから、これを添加する場合には0.10〜0.30%とするのがよい。 【0041】このような組成範囲に加え、さらに本発明では前記ニッケル当量及び炭素+チッ素の値を調整することによって、仮に温度350〜550℃での低温焼なまし処理を行った場合の0.2%引張耐力を例えば線径2mmでは1700〜2200N/mm2 と高い特性を可能とすること、同耐力比も90%以上を有すること、さらに従来のSUS316ステンレス鋼が有する高耐食性を上回る鋼線を可能としており、特にばね用において非常に有効である。 【0042】また耐力についても前記したように、線径2mmでの1700〜2200N/mm2 の特性は、これまで高強度として用いられてきたSUS304を10〜20%も向上させたものであり、前記組成の調整により達成を可能にすることができた。 【0043】 【実施例】以下、実施例によりさらに本発明の作用効果を説明する。表1の化学成分を持つ実施線材(A1〜A4)と、比較線材としてSUS304(B1)及び同316(B3)として選択したステンレス鋼を用い、各線材は各々通常の大気溶解炉で溶解し、熱間圧延を経て細径化したものであって、最終加工は冷間伸線機により共に加工率75%で2mmに仕上げたものである。 【0044】表1に得られた鋼線の機械的特性(引張り試験,ねじり試験)をまとめて示すが、参考として前記先行特許公報中から抜粋したものを(B2)として併記した。 【0045】 【表1】
【0046】この結果によれば、引張り強さ及び耐力値はSUS304より若干高く、ねじり強さ,ねじり降伏強さはほぼ同等であったことが認められる。また縦弾性係数・横弾性係数も共に大きな違いは認められなかった。 【0047】また、この鋼線の磁性特性を表2に示す。この結果からSUS304(B1)は透磁率が高くマルテンサイト量が多く、本発明鋼線(A1)ではSUS316(B3)と同等でマルテンサイト量が少ないことが分かる。 【0048】 【表2】
【0049】 【試験1】 線材の低温熱処理特性次にこの線材(A1,A4,B1)に各々300〜650℃で30分間の低温熱処理(焼きなまし)を50℃間隔で施して各々試料採取した。試験は前記と同様に引張り試験とねじり試験とで行ない、その結果を図1及び図2に示す。 【0050】同図中、符号△は実施線材A1,○は同A4,また□は比較線材B1の各引張強さの変化を示し、一方▲●■は前記に対応する0.2%耐力の変化である。さらに耐力比についても各々同形状の符号を用いて図下方に示している。 【0051】この結果から分かるように、実施線材(A1,A4)は550℃で最大の特性となるよう除々に増加しているのに対し、比較線材(B1:SUS304)では温度によっても特性の変化はほとんど認めることができず、特性値も実施線材には及ばないものであった。 【0052】特に0.2%引張耐力は、比較線材(B1)及び参考とした先行特許のものが13〜15%程度の増加であつたのに比べ、実施線材では26%と倍増するという顕著な効果が確認された。そして同時に、引張およびねじりにおける耐力比は共に90〜96%程度で安定しており、比較線材よりも温度による耐力比の変化が少ないことが分かる。 【0053】このような特性を示すことは、ばね成形処理後の熱処理を行っても、長期にわたりへたりや変形がなく、安定的に作動させることができる。同時にこうした安定化傾向は、ねじり試験での結果からもうかがうことができる。 【0054】 【試験2】 ばねの疲労特性次に、この線材の疲労特性を確認する為、線材をバネ成形機によって外径20.5mmの圧縮コイルばねに成形し、温度500℃×30min で低温熱処理を行った。なお比較線材でなるバネの処理温度は図1,2の結果から400℃とした。 【0055】この2種のばねを、圧縮コイルばね疲労試験機にセットして、平均応力390N/mm2 の条件で疲労試験を行ない、図3のS−N曲線を作成した。実施線材でなるばね製品の5×106 回での疲労限度は、比較線材のばね製品に比べ50N/mm2 も高く、時間強さにおいても大幅に上回る結果を得た。 【0056】 【試験3】 高温へたり特性試験1における低温熱処理特性の結果から、本発明のばね用ステンレス鋼線においては特に高温での耐へたり特性にすぐれることが想定されることから、以下の高温締め付け試験を実施した。試験ばねは、前記疲労試験で用いた線材(A1,B1)の他にニオブ添加のA4線材について、400℃×96時間の締め付け試験からばねの残留剪断歪を求めることとした。その結果は図4に示したが、実施ばね製品は比較ばね製品に比べ残留剪断歪が小さく、しかも締め付け応力が大きくなっても、比較線材ばねと比べて残留剪断歪の増加率が小さいことが認められた。 【0057】また締付け応力が400N/mm2 のときの実施ばね製品(A1線材使用)の残留剪断歪は比較製品(B1)の50%に止まり、さらにニオブ添加のA4線材によるものでは締付応力が増しても剪断歪の発生が小さく優れた高温耐へたり性を備えることが分かった。 【0058】 【試験4】耐食性耐食性の評価として、前記実施線材(A1)と比較線材(B1:SUS304及びB3:SUS316)の3.5%Nacl(30℃)溶液でのアノード分極試験を各々行ない、その結果を図5に示す。 【0059】この結果によれば、10μA/mm2 における実施線材の孔食電位は、比較線材(B3)に比べても約0.4V高くなっており、大幅に耐食性が向上できた。 【0060】また、表3には塩化第二鉄での浸漬試験結果を示しているが、この結果を見ても本発明による実施線材の腐食減量が小さく耐食性にすぐれていることがわかる。 【0061】 【表3】
【0062】 【発明の効果】以上説明したように、本発明のバネ用ステンレス鋼線は、各元素の分量とともに、元素相互の調整を図りかつ所定の伸線加工を施すものであって、高い耐力比によってバネ特性を向上するとともに、耐食性においても従来の鋼種SUS316を上回る特性とすることができ、幅広い用途への拡大に寄与する。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000231556 【氏名又は名称】日本精線株式会社 【識別番号】000003713 【氏名又は名称】大同特殊鋼株式会社
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| 【出願日】 |
平成9年(1997)6月26日 |
| 【代理人】 |
【弁理士】 【氏名又は名称】苗村 正 (外1名)
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| 【公開番号】 |
特開平11−12695 |
| 【公開日】 |
平成11年(1999)1月19日 |
| 【出願番号】 |
特願平9−170578 |
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