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【発明の名称】 コークス炉の操業方法
【発明者】 【氏名】上坊 和弥

【要約】 【課題】カーボン付着あるいは炉壁面の損傷の度合いを早期に確認して適切な処置を講じられるコークス炉の操業方法を提供する。

【解決手段】押出抵抗のピーク値における押出ラム位置と押出抵抗のピーク値とに基づき、押出抵抗の上昇がカーボン付着あるいは炉壁損傷に基づくものか、装入炭の性状あるいは乾留状況に起因するものであるかを決定し、炉壁補修の要否を判定すること、および押出抵抗のピーク値における押出ラム位置が予め定めたしきい値となるよう装入炭の性状あるいは乾留状況を調整することによって、炭化室の状況、すなわち、カーボン付着あるいは炉壁損傷の度合いを早期に認識することができ、適切な処置を講じることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 コークス炉炭化室からコークスケーキを押出すに際し、押出機の押出ラムに負荷される押出抵抗と同時に押出ラムの位置を連続検出し、検出した押出抵抗のピーク値における押出ラム位置と押出抵抗のピーク値とに基づいて、押出抵抗の上昇がカーボン付着あるいは炉壁損傷に基づくものか、装入炭の性状あるいは乾留状況に起因するものであるかを決定し、炉壁補修の要否を判定することを特徴とするコークス炉の操業方法。
【請求項2】 コークス炉炭化室からコークスケーキを押出すに際し、押出機の押出ラムに負荷される押出抵抗と同時に押出ラムの位置を検出し、検出した押出抵抗のピーク値における押出ラム位置が予め定めたしきい値となるよう装入炭の性状あるいは乾留状況を調整することを特徴とするコークス炉の操業方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、室炉式コークス炉の炭化室の炉壁面の状況、すなわち、カーボン付着あるいは炉壁損傷度合いを早期に確認し、適切な処置が講じられるコークス炉の操業方法に関する。
【0002】
【従来の技術】室炉式コークス炉によるコークスの製造は、装炭車から炭化室に装入された装入炭を、両側の燃焼室から間接加熱してコークス化したのち、生成したコークスケーキを押出機によりコークガイド車を介してバケットカーあるいは消火車に押出し、乾式消火あるいは湿式消火して製造される。
【0003】室炉式コークス炉では、このように装入炭の装入、コークス化、コークスの押出しの各作業が繰り返されるが、乾留に伴って生成するカーボンの炭化室炉壁への付着、あるいは炉壁面に何らかの原因で発生する損傷あるいは肌荒れ、さらにはコークスケーキそのものが原因で、押出抵抗が大きくなってコークスケーキの押出し作業に問題の生じる場合がある。著しい場合には、押出しの途中で止まったり、詰まって押出すことができなくなる、いわゆる押止まりや押詰まりが発生する。
【0004】押止まりや押詰まりの発生は、コークス炉の炭化室炉壁煉瓦に多大の負荷を加えることとなるため、炉体の損傷の進行、炉壁倒壊等の問題から、コークス炉寿命の低下を招くと共に、窯出し作業を中断し、炭化室内の詰まったコークスを押出し可能となるまで人力により掻き出す必要があるため、窯出しスケジュールの変更を余儀なくされ、炉団としてのコークス生産性が低下するばかりでなく、押出し可能となるまでの置時間延長によって、消費熱量も増大し、コークス製造コストの増加につながる。したがって、このような押止まりや押詰まりの発生は、未然に防止することが必要である。
【0005】従来、押止まりや押詰まりの防止対策としては、押出抵抗を検知して監視管理することによって、未然に防止する方法、例えば、押出抵抗が増加する傾向にある場合は、置時間を延長して十分に乾留したり、押出抵抗の大きな炭化室については、炉壁付着カーボンの除去や、炉壁、炉底の補修を行う等により対応していた。なお、押出し負荷の管理方法としては、押出ラム駆動用モータの電流値あるいはモータトルク値の波形により判断する方法(特開平8−53676号公報)、押出ラム駆動用モータの電力消費量の過去の平均値との差異によって判断する方法(特開平8−134458号公報)が提案されている。
【0006】さらに、炭化室炉壁面へのカーボン付着状態の把握方法としては、コークス押出機の押出電流を検出し、その押出電流のピーク値以降の異常電流ピーク値からカーボン付着状況を検知する方法(特公昭55−5558号公報)、各窯毎のコークス押出機にかかる押出負荷を、電力の時間積算値または電流の時間積算値に変換して検出し、予め各窯の履歴に基づいて各窯毎に設定した基準値と対比し、カーボン付着を検知する方法(特公昭60−4238号公報)、コークス押出機が受ける荷重の経時変化を測定し、測定した荷重のピーク値の窯出し開始からの経過時間までにコークス押出機が移動した距離を求め、この距離に基づいて炭化室炉壁面に付着したカーボン位置を検出する方法(特開昭62−34982号公報)が提案されている。
【0007】さらにまた、コークス炉炭化室の異常状況判定方法としては、押出機の押出ラム位置あるいは押出し開始よりの時間を検出すると共に、押出ラムを移動させる誘導電動機の回転数およびコークス押出し時における二次電流を測定し、これらの値を演算装置に入力して押出トルクを求め、その中のトルクのピーク値およびそれと関連する押出機の位置から炭化室における異常状態を判定するか、または測定した二次電流および/または算出したトルクの波形解析により、前記二次電流および/または算出したトルクの脈動の周期を抽出し、該周期によって炭化室内のラム移動の各位置での炭化室異常を検知する方法(特開平8−225787号公報)が提案されている。
【0008】一方、押出時の押出抵抗は、炭化室への装入炭の性状や炉の乾留状態によっても左右される。したがって、カーボン付着や炉壁の損傷は、炭化室からコークスケーキを押出時の押出抵抗のみによって精度良く判定することはできない。さらに、装入炭は、十から二十銘柄程度を配合したもので、装入炭性状は、配合銘柄毎に測定された性状値を配合率に応じて荷重平均して推算しており、装入炭毎に測定していないため、実際に装入炭の性状が推算した性状値と異なるため、装入炭性状による影響値には誤差が生じてしまう。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】上記特開平8−53676号公報に開示の方法は、1炉団に数十ないし百余の炭化室を有するコークス炉で、毎日全ての窯の電流記録計のチャート紙の波形をチェックするのに多大の労力を必要とする。さらに、特開平8−134458号公報に開示の方法は、押出電力消費量の上昇が炉壁面へのカーボン付着や炉壁面の肌荒れや欠損等の損傷に起因するものであるか、装入炭の性状や炉の乾留状態に起因するものであるか判断できず、炉壁面の目視観察による判断を必要とする。
【0010】また、上記特公昭55−5558号公報に開示の押出電流のピーク値以降の異常電流ピーク値からカーボン付着状況を判断する方法は、1炉団に数十ないし百余の炭化室を有するコークス炉で、毎日全ての窯の電流記録計のチャート紙の波形をチェックするのに多大の労力を必要とし、かつ、炭化室炉壁カーボン付着による異常電流ピーク値は必ずしも出現するものではない。また、特公昭60−4238号公報に開示の電力の時間積算値または電流の時間積算値を予め各窯の履歴に基づいて各窯毎に設定した基準値と対比し、カーボン付着を検知する方法は、押出負荷の上昇が炉壁面へのカーボン付着、炉壁面の肌荒れや欠損等の損傷に起因するものであるか、装入炭の性状や炉の乾留状態に起因するものであるか判断できず、炉壁面を目視観察により判断してその後の対応を決定しており、迅速な対応ができなかった。さらに、特開昭62−34982号公報に開示の測定した荷重のピーク値の窯出し開始からの経過時間までにコークス押出機が移動した距離からカーボン位置を検出する方法は、押出負荷の上昇が炉壁面へのカーボン付着、炉壁面の肌荒れや欠損等の損傷に起因するものであるか、装入炭の性状や炉の乾留状態に起因するものであるか判断できず、炉壁面を目視観察により判断してその後の対応を決定しており、迅速な対応ができなかった。
【0011】さらに、特開平8−225787号公報に開示の方法は、押出トルクのピーク値およびそれと相関する押出機の位置から炭化室における異常状態を判定するとなっているが、押出負荷の上昇が炉壁面へのカーボン付着、炉壁面の肌荒れや欠損等の損傷に起因するものであるか、装入炭の性状や乾留状態に起因するものであるか判断できず、炉壁面を目視観察により判断してその後の対応を決定する必要が有り、迅速な対応ができない。
【0012】本発明の目的は、上記従来技術の欠点を解消し、コークス炉炭化室の状況、すなわち、カーボン付着あるいは炉壁面の損傷の度合いを早期に確認して適切な処置を講じられるコークス炉の操業方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1のコークス炉の操業方法は、コークス炉炭化室からコークスケーキを押出すに際し、押出機の押出ラムに負荷される押出抵抗と同時に押出ラムの位置を検出し、検出した押出抵抗のピーク値における押出ラム位置(以下押出ピーク位置という)と押出抵抗のピーク値とに基づいて、押出抵抗の上昇がカーボン付着あるいは炉壁損傷に基づくものか、装入炭の性状あるいは乾留状況に起因するものであるかを決定し、炉壁補修の要否を判定することとしている。
【0014】このように、押出機の押出ラムに負荷される押出抵抗と同時に押出ラムの位置を検出し、検出した押出ピーク位置と押出抵抗のピーク値とに基づいて、押出抵抗の上昇がカーボン付着あるいは炉壁損傷に基づくものか、装入炭の性状あるいは乾留状況に起因するものであるかを決定し、炉壁補修の要否を判定することによって、炭化室の状況、すなわち、カーボン付着あるいは炉壁損傷の度合いを早期に認識することができ、適切な処置を早期に講じることができ、炉寿命の延長を図ることができる。
【0015】また、本発明の請求項2のコークス炉の操業方法は、コークス炉炭化室からコークスケーキを押出すに際し、押出機の押出ラムに負荷される押出抵抗と同時に押出ラムの位置を検出し、検出した押出ピーク位置が予め定めたしきい値となるよう装入炭の性状あるいは乾留状況を調整することとしている。このように、押出機の押出ラムに負荷される押出抵抗と同時に押出ラムの位置を検出し、検出した押出ピーク位置が予め定めたしきい値となるよう装入炭の性状あるいは乾留状況を調整することによって、コークスケーキに起因する押出抵抗の上昇を早期に解消でき、押止まり、押詰まりを防止することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】炭化室内の装入炭は、炉壁を介して燃焼室から間接加熱され、100℃までは水分蒸発と同時にCH4とその同族体や吸蔵COを放出し、100℃から300℃にかけては、鉱物室中に含まれる結晶水や石炭に吸蔵されている少量のCOとCH4を放出するほかは殆ど変化がない。300℃を過ぎると石炭本質の熱分解が始まって、ガスや化合水やタールが急激に発生すると共に、軟化溶融して膨張現象を示す。500℃〜600℃になると殆どが固化し、多孔質塊状の半成コークスとなる。分解ガスは、その後の昇温によっても発生し、700℃付近では、収縮しながらH2を主体としCH4、COを少量含むガスが発生する。この収縮の際に内部歪が発生し、脆弱な部分から亀裂が発生し、900℃を超えるとガス発生は殆ど終了し、高温乾留コークスが得られる。
【0017】炭化室内からコークスケーキを押出せるのは、コークスが収縮してからであるが、収縮が大きければ押出し易く、収縮が小さければ押出し難く、押止まり、押詰まり等の押出しトラブルを惹起し易くなる。前記コークスの収縮は、炉幅方向、炉長方向、炉高方向共に起こるが、炉高方向は全体に縮むが、炉幅方向、炉長方向は、コークスに亀裂が発生し、収縮の進行に伴って亀裂が増えるか、収縮によってできた空間が増えるのである。
【0018】通常、炭化室からコークスケーキを押出す際には、炉壁面の摩擦抵抗に逆らってコークスを押出すので、コークスの移動開始まではコークス自体が押出し方向に押詰められて圧縮され、押出し方向と直交する方向に膨らみ、炉壁面と接触して拘束された状態となる。この炉壁面と接触して拘束された状態が押出機側からコークガイド車側まで達すると、コークス全体が移動を開始して押出されるのである。
【0019】このため、押出ラムの押出抵抗は、コークスケーキと炉底面ならびに炉壁面との摩擦によって生じるため、図5に示すとおり、コークスの圧縮現象がコークガイド車側に達するまで急激な上昇を続け、コークガイド車側端部に到達すると全体が動きだそうとして作用する静止摩擦によってピーク値となり、その静止摩擦がコークス全体が動き始めると動摩擦へと変化するため、その後下降し、押出し終了までなだらかに下降ないし若干変動するに止まる。
【0020】したがって、押出ラムの押出抵抗がピーク値となる押出ピーク位置を求めれば、コークスケーキの圧縮量をほぼつかめることとなる。この場合のコークスケーキの圧縮量は、コークスの圧縮現象がコークガイド車側に到達し、コークス全体が動き始める直前のコークスケーキにも塊コークス間に隙間があるため、正味の圧縮量ではないが、正味の圧縮量に対応した計測上の圧縮量が得られる。
【0021】押出ピーク位置は、正常操業ではほぼ一定値である。それは、一定操業条件でコークスケーキ押出し時の圧縮量はほぼ一定で、この一定圧縮量のもとで押出力を高めても、圧縮量の変化は少なく、押出力が上がるだけである。
【0022】一方、コークスケーキ押出し時の圧縮量は、装入炭の性状や乾留条件によって変動するが、装入炭の性状や乾留条件が押出抵抗に影響するのは、コークスケーキの圧縮量を介してであり、さらにこれらが炭化室炉壁のカーボン付着を介して影響する。例えば、炉温が高ければ、炉壁面にカーボンが付着し易く、装入炭の揮発分が多くなると同様に炉壁面にカーボンが付着し易くなる。しかし、これら炉壁面のカーボン付着を通しての押出抵抗への影響は、炭化室炉壁の状況として知りたい情報となる。したがって、装入炭性状や乾留条件は、押出抵抗への影響として取り扱うよりも、押出ピーク位置による影響として取り扱うほうが、炉壁の状況を正確に把握することができる。
【0023】本発明においては、押出ピーク位置を検出することによって、押出抵抗が増加した場合、その原因がコークス炉壁の問題なのか、コークスケーキの問題なのかが判断できるため、対策が取り易くなる。すなわち、押出ピーク位置に変化がないのに押出抵抗が増加した場合は、炉壁状況に問題が生じてきたことを示し、カーボン除去や炉壁面の補修等の対策を要すると判定する。押出抵抗が増加し、同時に押出ピーク位置が押出機側に近くなった(コークスケーキの圧縮量減少)場合は、コークスケーキに問題があると判定するのである。
【0024】本発明において押出機の押出ラムに負荷される押出抵抗の検出は、押出ラムを移動させる誘導電動機の回転数およびコークスケーキ押出し時における二次電流を測定し、これらの値を演算装置に入力して押出トルクを押出ラム位置との関係により求める。押出抵抗のピーク値は、押出し開始から押出し完了までの間の押出トルク最大値ではなく、トルク変動推移の中での極大値をピーク値とする。
【0025】本発明において押出機の押出ラム位置の検出は、レーザ距離計やラムビームの移動距離の計測等により直接測定する方法も可能であり、ロータリーエンコーダ等の接触回転式位置検出法、あるいは電動機軸の回転数を計測してラムの移動距離を計算するような間接的に算出する方法も可能である。また、時間、すなわち、押出ラムによる押出し開始からの経過時間によっておよそのラムの炭化室内位置が判断できる。押出し開始からの経過時間の検出は、時間を直接測定する方法も可能であるが、電流記録計または回転記録計等のチャートから読取ることもできる。
【0026】
【実施例】
実施例1以下に本発明のコークス炉の操業方法の詳細を図1に示すブロック図に基づき説明する。押出機に備えられた押出ラム1の上縁には、往復摺動用ラック2が設けられ、これに駆動用ピニオン3が噛み合っている。駆動用ピニオン3は、誘導電動機4により駆動されるようになっている。また、駆動用ピニオン3には、誘導電動機4の回転数を検出するための回転数検出器5が接続されている。さらに、誘導電動機4には、電動機電源側配線6、電動機二次側配線7を介して押出誘導電動機制御盤8が接続されている。押出誘導電動機制御盤8は、電動機二次電流検出器9を介して演算装置10に接続されている。この演算装置10には、上記回転数検出器5および押出ラム位置検出器(例えば、レーザ距離計)11が接続されており、押出ラム1の位置における誘導電動機4の出力軸でのトルク(押出トルクの絶対値)が演算装置10により計測できるように構成されている。
【0027】上記押出ラム位置検出器11は、タイマーに置き換えてもよく、押出し開始からの時間経過を測定することによって、炭化室内の押出ラム位置を計測することができる。電動機二次電流検出器9は、回転子に流れる電流値が測定できる部位であればよく、押出誘導電動機制御盤8前後のいずれに設置してもよく、電流検出器を配線内に組み込むこともできるし、回転子と繋がっている二次回路の配線を外部から挟んで電流値を測定できるクランプ式計器でもよい。
【0028】なお、12はホストコンピュータシステムであって、演算装置10における測定結果およびコークス炉の設備や装入炭性状、操業条件のデータが記憶され、測定された演算結果に対し、比較データを供給できるようになっている。13は演算装置10により得られた結果を出力表示するためのデータ採取用記録計である。
【0029】また、現在および過去の演算装置10における演算結果のデータは、接続しているホストコンピュータシステム12に保持する。さらに、演算装置10は、保存データの連続表示および印字を出力する機能、ならびにホストコンピュータシステム12とのデータ伝送機能を有する。ホストコンピュータシステム12には、演算装置10とのデータ伝送機能や演算結果のうちのデータ保存機能、計測時に予め炭化室の窯番等の操業上必要なデータを演算装置10に伝送する機能を有する。
【0030】上記のとおり構成したことによって、演算装置10は、押出ラム1による押出しが開始されると、回転数検出器5、電動機二次電流検出器9から入力される誘導電動機4の二次電流と回転数、二次回路の抵抗値に基づいて、下記の式(1)により押出ラム1の押出トルクTを求める。
T={(0.95×m)/Ns}×{(I22×R2)/S}……(1)
ただし、Ns:電動機の同期回転数、N:電動機の運転回転数、S:電動機の回転すべり[(電動機の同期回転数Ns−電動機の運転回転数N)/電動機の同期回転数Ns}、I2:二次電流、R2:二次回路の電気抵抗、m:電動機の相数上記式(1)により押出ラム1の押出トルクTを電気的に連続的に測定することができる。
【0031】なお、誘導電動機4の二次電流より求める負荷トルクTには、加速時の加速トルク、減速時のブレーキトルクと正味の押出トルクの和となって表れるため、正味の押出トルクを求めるには加速トルクとブレーキトルクを減じる必要がある。このため、誘導電動機4の回転数を取込み、速度の微分演算を求め、加速トルクとブレーキトルクを求めている。さらに、演算上のトルクより加速トルクとブレーキトルクを減じて正味の押出トルクを演算装置10の中で演算し、データ採取用記録計13に出力する。
【0032】また、演算装置10は、押出ラム位置検出器11から入力される押出ラム1の位置と、前記演算した正味の押出トルクのピーク値とに基づき、押出ピーク位置を演算し、押出トルクのピーク値と押出ピーク位置とに基づいて、当該炭化室の押出抵抗の上昇がカーボン付着あるいは炉壁損傷に基づくものか、装入炭の性状あるいは乾留状況に起因するものであるかを決定し、炉壁補修の要否を判定し、データ採取用記録計13に出力する。
【0033】また、演算装置10は、押出トルクのピーク値における押出ピーク位置が予め定めたしきい値を外れた場合は、予め定めたしきい値となるよう装入炭の性状あるいは乾留状況を調整するようデータ採取用記録計13に出力する。
【0034】したがって、本発明の操業方法においては、押出トルクのピーク値と押出ピーク位置とに基づいて、当該炭化室の押出抵抗の上昇がカーボン付着あるいは炉壁損傷に基づくものか、装入炭の性状あるいは乾留状況に起因するものであるかを決定し、炉壁補修の要否を判定するから、炭化室の状況を的確に判断することができ、的確なカーボン除去あるいは炉壁補修等の処置を実施できる。さらに、押出トルクのピーク値における押出ピーク位置が予め定めたしきい値を外れた場合は、予め定めたしきい値となるよう装入炭の性状あるいは乾留状況を調整することによって、押詰まり、押止まりの押出しトラブルを回避することができる。
【0035】実施例2炉高6000mm、炉幅450mm、炉長15560mm、有効容積37.9m3の窯数106門からなるコークス炉において、押出ラムに負荷される押出抵抗と同時に押出ラム位置を検出し、押出抵抗のピーク値と押出ピーク位置を求めた。押出抵抗としては、押出ラムの誘導電動機の押出トルクを測定した。押出トルクは、誘導電動機の回転数と二次電流を検出し、押出ラムの加速トルクやブレーキトルク等の押出し負荷以外を除去し、正味のコークスケーキの押出トルクに換算した。
【0036】図2は同一窯における押出トルクのピーク値と押出ピーク位置の押出し毎の推移データを示す。図2に示すとおり、日数の経過と共に押出トルクのピーク値は上昇しているが、押出ピーク位置は殆ど変化していない推移データが得られた。この炭化室の状況を目視確認したところ、炉壁面にカーボン付着が見られ、カーボン除去処置を行った。すなわち、押出ピーク位置に変化がなく、押出トルクのピーク値のみ上昇した図2の例では、コークス炉壁に問題ありと判定された。
【0037】また、図3は他の同一窯における押出トルクのピーク値と押出ピーク位置の押出し毎の推移データを示す。図3に示すとおり、日数の経過と共に押出トルクのピーク値が急激に上昇したが、押出ピーク位置は殆ど変化していない推移データが得られた。この炭化室の状況を目視確認したところ、コークガイド車側の窯口煉瓦のせり出しが観察され、補修を行った。すなわち、押出ピーク位置に変化がなく、押出トルクのピーク値のみ急激に上昇した図3の例では、コークス炉壁に問題ありと判定された。
【0038】さらに、図4は他の同一窯における押出トルクのピーク値と押出ピーク位置の押出し毎の推移データを示す。図4に示すとおり、日数の経過と共に押出トルクのピーク値が急激に上昇し、かつ、押出ピーク位置の変化も見られた。この炭化室の状況を目視確認したところ、コークス炉壁に何ら問題がなく、コークスケーキの圧縮量が小さいためであると判断されたので、それ以降の乾留時間を延長し、押出抵抗を小さくする操業を行い、押出しトラブルを回避することができた。すなわち、押出抵抗の急激な上昇は、コークスケーキの圧縮量が小さいことに起因するもので、コークス炉壁に問題なしと判定された。
【0039】また、これら炭化室の状況を判定することの他に、押出ピーク位置のデータと装入炭性状、乾留条件の関係を調査することによって、予め装入炭性状、乾留条件をコークスケーキが十分圧縮できるように調整することが可能となり、押止まり、押詰まりのトラブルなく操業を長期に亘って継続できた。
【0040】
【発明の効果】本発明の請求項1のコークス炉の操業方法は、押出機の押出しラムに負荷される押出抵抗と同時に押出ラムの位置を検出し、検出した押出ピーク位置と押出抵抗のピーク値とに基づいて、押出抵抗の上昇がカーボン付着あるいは炉壁損傷に基づくものか、装入炭の性状あるいは乾留状況に起因するものであるかを決定し、炉壁補修の要否を判定することによって、炭化室の状況、すなわち、カーボン付着あるいは炉壁損傷の度合いを早期に認識することができ、適切な処置を講じることができる。
【0041】また、本発明の請求項2のコークス炉の操業方法は、押出機の押出ラムに負荷される押出抵抗と同時に押出ラムの位置を検出し、検出した押出ピーク位置が予め定めたしきい値となるよう装入炭の性状あるいは乾留状況を調整することによって、コークスケーキに起因する押出抵抗の上昇を早期に解消でき、押止まり、押詰まりを防止することができる。
【出願人】 【識別番号】000002118
【氏名又は名称】住友金属工業株式会社
【出願日】 平成9年(1997)8月14日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】押田 良久
【公開番号】 特開平11−61137
【公開日】 平成11年(1999)3月5日
【出願番号】 特願平9−235432