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【発明の名称】 起泡性高粘度液体の製造方法
【発明者】 【氏名】吉葉 正美

【氏名】島田 聖

【氏名】赤松 卓

【要約】 【課題】起泡性の高粘度液体を真空乳化装置等で製造する場合において、気泡を効率的に除去することができる起泡性高粘度液体の製造方法を提供する。

【解決手段】界面活性剤を含有する粘度1Pa・s以上の起泡性高粘度液体を製造する際に、該起泡性高粘度液体を構成する各成分の混合・分散後の粘度が1Pa・s以下となる温度において、界面活性剤等の各成分を混合・分散して混合液を大気圧下で調製する工程と、該混合液の粘度が1Pa・s以下となる温度において、撹拌槽を所定真空度まで減圧する減圧操作と、該真空度を大気圧に戻す操作とを複数回繰り返すことにより脱泡する工程とを含むことを特徴とする起泡性高粘度液体の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 界面活性剤を含有する粘度1Pa・s以上の起泡性高粘度液体を製造する際に、該起泡性高粘度液体を構成する各成分の混合・分散後の粘度が1Pa・s以下となる温度において、界面活性剤等の各成分を混合・分散して混合液を大気圧下で調製する工程と、該混合液を粘度が1Pa・s以下となる温度において、撹拌槽を所定真空度まで減圧する減圧操作と、該真空度を大気圧に戻す操作とを複数回繰り返すことにより脱泡する工程とを含むことを特徴とする起泡性高粘度液体の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、起泡性の高粘度液体を真空乳化装置等で製造する場合において、気泡を効率的に除去することができる起泡性高粘度液体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、洗顔剤やシャンプー・ボディソープ等の高粘度液体、あるいは、チクソトロピー性を有した液体は、一旦、気泡を混入させると抜け難く、製品の外観を損ねたり、また、容器充填の際に支障を来たすものであった。従って、上記の高粘度液体を製造する際は、気泡の混入を防止することが必須であり、多くは真空装置を付属した撹拌槽を用いて製造されるものである。
【0003】ところで、真空装置で液体を製造する際は、一般に気泡の混入を少なくするために、真空下で分散・混合等を行うことが多いが、上記の高粘度液体のように起泡性の液体は、生じた泡が極めて安定性を有するために、単に真空下に置いただけでは破泡しにくいものである。また、少しでも真空度合が強すぎると著しく発泡して、真空装置への飛散や撹拌機シール部への浸入等を生じ、品質及び装置のトラブルを引き起こすことが多いという課題がある。
【0004】一方、特開平8−120089号公報には、セルロース誘導体の水溶液のような高粘度溶液を収容してなる密閉空間の圧力を600mmHg以下に、5秒以上減圧した後、少なくとも100mmHg/分の速度で外気を導入して大気圧に戻すことを特徴とする高粘度溶液の脱泡方法等が開示されている。
【0005】しかしながら、特開平4−210217号公報に開示の高粘度溶液の脱泡方法等は、検査用試料としてのセルロース誘導体のような高粘度溶液の脱泡のみを目的とするものであり、また、当該技術は界面活性剤を含有する起泡性高粘度液体の脱泡操作を含む製造を対象とするものではなく、本発明とはその目的及び構成が相違し、技術思想が異なるものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来の課題に鑑み、これを解消しようとするものであり、真空装置等で起泡性の高粘度液体を製造する際に、品質及び装置のトラブルを引き起こさず、且つ、効率的に気泡を除去することができる起泡性高粘度液体の製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、起泡性の高粘度液体を真空乳化装置で製造する際に、主な分散・混合操作を常圧で行うことにより、品質及び装置のトラブルの発生を抑え、その後、比較的粘度の低い高温域において、真空と常圧を繰り返すことによって効率的に脱泡・破泡できることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。すなわち、本発明の起泡性高粘度液体の製造方法は、界面活性剤を含有する粘度1Pa・s以上の起泡性高粘度液体を製造する際に、該起泡性高粘度液体を構成する各成分の混合・分散後の粘度が1Pa・s以下となる温度において、界面活性剤等の各成分を混合・分散して混合液を大気圧下で調製する工程と、該混合液を粘度が1Pa・s以下となる温度において、撹拌槽を所定真空度まで減圧する減圧操作と、該真空度を大気圧に戻す操作とを複数回繰り返すことにより脱泡する工程とを含むことを特徴とするものである。
【0008】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施の形態の一例を図面を参照しながら詳しく説明する。図1は、本発明方法に用いる真空乳化装置の一例である。この真空乳化装置10は、ホモミキサー11、スクレーパ付きパドルミキサー12を有すると共に、ジャケット13を有する乳化撹拌槽14と、該乳化撹拌槽14にパイプライン15で連通される真空装置16とを備え、パイプライン15には真空リーク弁17とバルブ18とが接続された構成となっている。
【0009】本発明では、上記構成の真空乳化装置10を使用して、界面活性剤を含有する粘度1Pa・s以上の起泡性高粘度液体を製造する際に、該起泡性高粘度液体を構成する各成分の混合・分散後の粘度が1Pa・s以下となる温度において、まず、界面活性剤等の各成分を混合・分散して混合液を大気圧下で調製した後、該混合液を粘度が1Pa・s以下となる温度において、乳化撹拌槽14を真空装置16により所定真空度まで減圧する減圧操作と、該真空度を大気圧に戻す操作とを複数回繰り返すことにより脱泡して目的の起泡性高粘度液体を製造するものである。
【0010】本発明で製造される起泡性高粘度液体は、粘度が1Pa・s以上で、且つ、少なくともアニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤の1種又は2種以上を含む液体であり、例えば、洗顔剤、シャンプー、ボディソープ等に有用となるものである。起泡性高粘度液体の原料(各成分)としては、洗顔剤、シャンプー、ボディソープ等の用途に応じて通常用いられる各種原料が適用でき、例えば、上記各種の界面活性剤、セッケン成分、保湿剤、乳濁剤、金属封鎖剤、乳化剤、防腐剤、pH調整剤、アルコール類、無機塩、粘度調整剤、香料、色素等が使用できる。
【0011】本発明においては、まず、起泡性高粘度液体を構成する上記各成分の混合・分散後の粘度が1Pa・s以下となる温度において、上記界面活性剤等の各成分を混合・分散して混合液を大気圧下で調製する。上記各成分の主な分散・混合操作は、混合・分散後の粘度が1Pa・s以下となる比較的粘度の低い高温域、通常50〜85℃で行うが、高温での配合に支障がある成分、例えば、高温で分解しやすい成分や香料は、冷却後に配合することが好ましい。
【0012】次に、上記で調製した混合液を粘度が1Pa・s以下となる温度において、乳化撹拌槽14を真空装置16により所定の真空度、80kPa以下まで減圧する減圧操作と、該真空度を大気圧に戻す操作とを複数回、すなわち、目的の起泡性高粘度液体の用途に応じて少なくとも1回以上、好ましくは、2〜10回、更に好ましくは、4〜6回繰り返すことにより脱泡して目的の起泡性高粘度液体を製造するものである。上記減圧操作と、大気圧に戻す操作とが1回未満であると、目的の起泡性高粘度液体を製造することができなくなり、好ましくない。なお、所定真空度まで減圧する操作は、泡の上面が乳化撹拌槽14の所定位置(上蓋フランジの上面近辺)に達していることを検出する泡検知器(図示せず)により制御することができる。また、図中1のAは、脱泡操作の減圧時に管理する泡の上面位置を示すものである。
【0013】本発明における上記脱泡・破泡操作は、粘度が1Pa・s以下、好ましくは、0.5Pa・s以下となる高温域、通常50〜85℃で行うことが望ましい。粘度が1Pa・sを越える温度では本発明の効果を達成できなくなり、好ましくない。この脱泡・破泡操作は、乳化撹拌槽14の撹拌を停止して行うものである。この操作は、■乳化撹拌槽14と真空装置16とを結ぶバルブ18を徐々に開け、乳化撹拌槽14内を真空にして、液面に生じた泡が真空ノズル又は撹拌機のシール部に達する前にバルブ18を閉じる。■その状態で(真空下で)1分以上、好ましくは3〜10分間静置する。この範囲以外の時間では脱泡・破泡の効果が小さくなり、目的の起泡性高粘度液体を製造することができなくなり、好ましくない。■その後、真空リーク弁17を瞬時に開き、好ましくは、10〜30kPa/秒の速度で外気を導入して泡に衝突させ、破泡させる。常圧において、液面上の泡が50%以下程度になるまで、上記操作を繰り返すことが好ましい。なお、以上の操作は、手動操作でも可能であるが、導電率計などの適当な泡検知器を取り付け、または、バルブ18の開閉のスピードコントロールを行うことにより、自動で行うこともできる。
【0014】本発明の起泡性高粘度液体の製造方法によれば、主な分散・混合を常圧で行うことにより、著しい発泡による品質上、設備上のトラブルを防止でき、且つ、常圧・真空を繰り返すことによって、効率的な気泡の除去ができることとなる。
【0015】
【実施例】本発明を更に詳細に説明するために、以下に実施例、比較例を示す。なお、本発明は、これらの実施例等に限定されるものではない。
【0016】〔実施例1〜4、比較例1〜4〕
<洗顔剤の製造>下記表1等に示される実施例1〜4及び比較例1〜4は、図1に示される真空乳化装置10を使用して洗顔剤を製造した。まず、比較例1においては、原料を仕込む前に、予め乳化撹拌槽14内を8.0kPaまで真空にし、真空装置16とを結ぶバルブ18を閉じて密閉系とした。その他の実施例1〜4及び比較例2〜4は、常圧で製造を開始した。
【0017】下記の各成分を乳化撹拌槽14内に仕込み、約75℃で混合溶解した。
1,3−ブチレングリコール 102部 ピログルタミン酸イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル 30部 イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル 10部 モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン 10部 ミリスチン酸 189部 パルミチン酸 72部 ステアリン酸 24部 ソルビット液 83部 ラウロイルメチル−β−アラニン 100部 合 計 620部【0018】次に、精製水36部、1,3−ブチレングリコール110部、48%水酸化カリウム110部を予備溶解してから、乳化撹拌槽14内に添加し、中和を行った。この時の槽容量に対する液容量は66%であったが、比較例1においては著しい発泡を生じ、撹拌機シール部14aへ浸入しそうになったため、常圧に戻し、試験を中断した(真空ブレイク前の真空度は67kPaであった)。その他の実施例1〜4及び比較例2〜4では、引き続き、ヒドロキシエタンジホスホン酸2部を精製水20部に溶解してから添加した。
【0019】次いで、実施例1〜2、比較例2においては、撹拌を停止し、下記表1に示される各条件下で脱泡処理した。比較例2においては、80kPaの真空下で30分間静置する方法で、また、実施例1〜2においては、前記■〜■のように真空と常圧を繰り返す方法で脱泡処理した。なお、この時の温度は約75℃であった。また、実施例1〜4、比較例3〜4における真空から常圧に戻す操作は、全て20kPa/秒の速度で外気を導入して繰り返したものである。実施例3においては、60℃まで冷却してから、下記表1に示される各条件下で脱泡した。実施例4においては、55℃まで冷却してから、下記表1に示される各条件下で脱泡した。比較例3においては、52℃まで冷却してから、下記表1に示される各条件下で脱泡した。比較例4においては、50℃まで冷却してから、下記表1に示される各条件下で脱泡した。
【0020】次いで、脱泡操作終了後、実施例1〜4及び比較例2〜4で調製した高粘度液体にポリエチレングリコール100部を添加混合してから、30℃まで冷却し、香料2部を添加混合して洗顔剤を製造した。なお、これらの洗顔剤の粘度は、12Pa・sであった。実施例1〜4及び比較例2〜4で得られた洗顔剤について、下記測定方法により気泡混入の評価を行った。これらの結果を下記表1に示す。
【0021】〔気泡混入の評価〕製造直後の見掛比重を化粧品原料基準の一般試験法「比重測定法−第1法A」により測定し、真比重と対比して気泡混入の指標とした。
【0022】
【表1】

【0023】(表1の考察)上記表1の結果から明らかなように、本発明範囲内となる実施例1〜4は、本発明範囲外となる比較例1〜4に較べ、気泡の混入が少ない起泡性の高粘度液体が得られることが判明した。また、粘度が1.0Pa・s以下、好ましくは、0.5Pa・s以下で脱泡を行うことにより、良好な脱泡・破泡ができることが判明した。
【0024】
【発明の効果】本発明によれば、気泡を極めて効率的に除去することができる起泡性高粘度液体の製造方法が提供される。
【出願人】 【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
【出願日】 平成9年(1997)8月26日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 博光 (外1名)
【公開番号】 特開平11−61096
【公開日】 平成11年(1999)3月5日
【出願番号】 特願平9−229788