トップ :: C 化学 冶金 :: C09 染料;ペイント;つや出し剤;天然樹脂;接着剤;他に分類されない組成物;他に分類されない材料の応用




【発明の名称】 水性塗料用ポリウレタン系エマルジョン及びそれを用いた水性塗料
【発明者】 【氏名】森島 剛

【氏名】村上 俊介

【氏名】笹原 俊昭

【氏名】小西 伸

【要約】 【課題】本発明は、水性塗料のビヒクルに用いられるポリウレタン系エマルジョン、及び、耐熱性、耐候性に優れた水性塗料を提供する。

【解決手段】(A)数平均分子量500〜10,000のポリオール、(B)鎖延長剤、(C)カルボキシル基及び活性水素基を含有する化合物、(D)有機ポリイソシアネート、(E)中和剤を反応させて得られるポリウレタン系ポリマーの水性エマルジョンであって、該水性エマルジョンの最低成膜温度が35℃以上であり、該ポリマーの測定温度25℃における乾式フィルムの鉛筆引っかき値、引張試験における破断時の強度、伸びがそれぞれ、B以上、20〜70MPa、50〜400%であることを特徴とする水性塗料用ポリウレタン系エマルジョンにより解決する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 (A)数平均分子量500〜10,000のポリオール、(B)鎖延長剤、(C)カルボキシル基及び活性水素基を含有する化合物、(D)有機ポリイソシアネート、(E)中和剤を反応させて得られるポリウレタン系ポリマーの水性エマルジョンであって、該水性エマルジョンの最低成膜温度が35℃以上であり、該ポリマーの測定温度25℃における乾式フィルムの鉛筆引っかき値、引張試験における破断時の強度、伸びがそれぞれ、B以上、20〜70MPa、50〜400%であることを特徴とする水性塗料用ポリウレタン系エマルジョン。
【請求項2】 請求項1記載のポリウレタン系エマルジョンを用いた水性塗料。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐熱性、耐候性に優れた水性塗料に用いられるポリウレタン系エマルジョン及びそれを用いた水性塗料に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、塗料の分野では、有機溶剤系のものが主流であった。しかし、大気汚染防止、消防法上の規制、労働安全衛生等の観点から、水系のものが検討されている。例えば、特開平9−31413号公報には引張破断時強度が170kg/cm2 以上、破断時伸びが250%以上のポリウレタン樹脂の水性エマルジョンを用いた自動車用の保護膜用可剥性塗料が開示されている。なお、この水性ウレタン樹脂の最低成膜温度(MFT)は−2℃、ガラス転移温度は−20℃以下のものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開平9−31413号公報記載のポリウレタン樹脂は、可剥性塗料であるため、逆に塗料としての基材への密着性が不十分であり、恒久的な塗装に適したものではなかった。
【0004】本発明は、水性塗料のビヒクルに用いられるポリウレタン系エマルジョン、及び、耐熱性、耐候性に優れた水性塗料を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は以下の(1)、(2)に示されるものである。
(1) (A)数平均分子量500〜10,000のポリオール、(B)鎖延長剤、(C)カルボキシル基及び活性水素基を含有する化合物、(D)有機ポリイソシアネート、(E)中和剤を反応させて得られるポリウレタン系ポリマーの水性エマルジョンであって、該水性エマルジョンのMFTが35℃以上であり、該ポリマーの測定温度25℃における乾式フィルムの鉛筆引っかき値、引張試験における破断時の強度、伸びがそれぞれ、B以上、20〜70MPa、50〜400%であることを特徴とする水性塗料用ポリウレタン系エマルジョン。
【0006】(2) 前記(1)のポリウレタン系エマルジョンを用いた水性塗料。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明のポリウレタン系エマルジョンに使用される(A)ポリオールの数平均分子量が500〜10,000であり、好ましくは1,000〜5,000である。また、この(A)ポリオールの平均官能基数は2〜4が好ましく、2〜3が更に好ましい。ポリオールの数平均分子量が下限未満の場合は、塗膜が硬くなり過ぎる傾向にある。また、上限を越えると耐ブロッキング性が不十分となりやすい。本発明に用いられるポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリアミドエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、動植物系ポリオール等が挙げられる。耐候性、密着性を考慮すると、本発明で好ましい(A)ポリオールは、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールである。なお、ポリオールの数平均分子量は、平均官能基数と末端基定量法により求めた末端基量から算出したものである。
【0008】このポリエステルポリオールとしては、公知のフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、クルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸、α−ハイドロムコン酸、β−ハイドロムコン酸、α−ブチル−α−エチルグルタル酸、α,β−ジエチルサクシン酸、マレイン酸、フマル酸等のジカルボン酸又は無水物等の1種類以上と、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β−ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオール類の1種類以上との縮重合反応から得られる。更に、ε−カプロラクトン、アルキル置換ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、アルキル置換δ−バレロラクトン等の環状エステル(いわゆるラクトン)モノマーの開環重合から得られるラクトン系ポリエステルポリオール等がある。更に、低分子ポリオールの一部をヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、モノエタノールアミン等の低分子ポリアミンや低分子アミノアルコールを用いてもよい。この場合は、ポリエステル−アミドポリオールが得られることになる。
【0009】ポリエーテルポリオールとしては、前述のポリエステルポリオールに用いられる低分子ポリオール類、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トルエンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、キシリレンジアミン等の低分子ポリアミン類等のような活性水素基を2個以上、好ましくは2〜3個有する化合物を開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のようなアルキレンオキサイド類、メチルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル類、フェニルグリシジルエーテル等のアリールグリシジルエーテル類、テトラヒドロフラン等の環状エーテルモノマーの単品又は混合物から公知の方法により付加重合することで得られる。
【0010】ポリカーボネートポリオールとしては、前述のポリエステルポリオール源の低分子ジオール、低分子トリオール1種類以上と、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネートとの脱アルコール反応や脱フェノール反応から得られる。なお、前述のポリカーボネートポリオールとポリエステルポリオールとのエステル交換品も好適に使用できる。
【0011】ポリエーテルエステルポリオールとしては、前述のポリエーテルポリオールと前述のジカルボン酸等から得られるコポリオールがある。また、前述のポリエステルやポリカーボネートと、エポキサイドや環状エーテルとの反応で得られるものがある。
【0012】ポリオレフィンポリオールとしては、水酸基を2個以上有するポリブタジエン、水素添加ポリブタジエン、ポリイソプレン、水素添加ポリイソプレン等が挙げられる。
【0013】動植物系ポリオールとしてはヒマシ油系ポリオール、絹フィブロイン等が挙げられる。
【0014】また、数平均分子量が500〜10,000で、かつ、1分子中に活性水素基を平均1個以上有するものであれば、ダイマー酸系ポリオール、水素添加ダイマー酸系ポリオールの他にエポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ロジン樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、クマロン樹脂、ポリビニルアルコール等の活性水素基含有樹脂も使用できる。
【0015】本発明に使用される(B)鎖延長剤としては、前述のポリエステルポリオールやポリエーテルポリオールを得るに際して用いられる低分子ポリオール類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−フェニルジプロパノールアミン等のアミノアルコール類が挙げられる。本発明で好ましい鎖延長剤は、炭素数2〜15で、脂肪族ポリオール、脂環族ポリオール、脂肪族ポリアミン、脂環族ポリアミンである。
【0016】本発明に使用される(C)カルボキシル基及び活性水素基を含有する化合物としては、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ポリアミンと酸無水物との反応物、ジメチロールプロピオン酸やジメチロールブタン酸を開始剤としたラクトン付加物等が挙げられる。本発明で好ましい(C)カルボキシル基及び活性水素基を含有する化合物としては、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸である。
【0017】本発明に使用される(D)有機ポリイソシアネートとしては、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、ジベンジルジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(以後、HDIと略称する)、リジンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサヘチレン−1,6−ジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサヘチレン−1,6−ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(以後、IPDIと略称する)、シクロヘキシルジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート(以後、H6 XDIと略称する)、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート(以後、H12MDIと略称する)、水素添加トリメチルキシリレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネートがある。これらの有機ジイソシアネートは単独でも用いることができるし、混合物にして用いても良い。更には、これらのアダクト変性体、カルボジイミド変性体、アロファネート変性体、ビュレット変性体、ウレトジオン変性体、ウレトイミン変性体、イソシアヌレート変性体等の変性体も使用できる。これらの(D)有機ポリイソシアネートでは、塗料としたときの耐候性、密着性を考慮すると、HDI、IPDI、H6 XDI、H12MDIが好ましい。
【0018】本発明に使用される(E)中和剤としては、アンモニア、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチル アミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、2−アミノ−2−エチル−1−プロパノール等の有機アミン類、リチウム、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムの無機アルカリ類等が挙げられるが、乾燥後の耐候性や耐水性を向上させるためには、熱によって容易に解離する揮発性の高いものが好ましく、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミンが好ましい。また、これら中和剤は、それぞれ単独又は2種以上の混合物でも使用することができる。
【0019】なお、(D)中和剤は、ポリウレタン系ポリマーに導入されたカルボン酸と塩を形成することになる。カルボン酸塩導入量は、ポリウレタン系ポリマー中に0.05〜1.5mmol/gであり、好ましくは、0.1〜1.3mmol/gである。カルボン酸塩導入量が下限未満の場合は、ポリウレタン系ポリマーがうまく水中に分散しない。上限を越える場合は、乾燥後のポリウレタン系ポリマーの耐水性が不足する。なお、エマルジョンのpHは7.5〜10.5が好ましく、8〜10が更に好ましい。pHが7.5を下回る場合、ポリウレタン系ポリマーの水分散性が不十分となる。また、pHが10.5を越える場合は、加水分解反応により、経時でポリマーの分子切断が生じる場合がある。
【0020】なお、本発明におけるポリウレタン系ポリマーは、水分散能を持たせるために、親水基としてカルボン酸塩を分子鎖中に導入しているが、必要に応じて、スルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩等のカルボン酸塩以外のアニオン性極性基、4級アンモニウム塩等のカチオン性極性基、エーテル基等のノニオン性極性基を導入してもよい。
【0021】本発明において、ポリウレタン系ポリマーを合成する際、必要に応じて、ポリエステルポリオール等の他のポリオールや反応停止剤を使用することができる。反応停止剤としてはモノアルコール類、モノアミン類があり、場合によってはアミノアルコール類も反応停止剤となりうる。また、フェニルイソシアネート、ブチルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート等のようなモノイソシアネートも反応停止剤として使用できる。
【0022】具体的なモノアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、2−エチルヘキサノール等がある。モノアミンとしては、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等の1級アミンや、ジエチルアミン、ジブチルアミン等の2級アミンがある。アミノアルコールとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等が挙げられる。
【0023】本発明に用いられるポリウレタン系ポリマーの製造方法としては、活性水素過剰の雰囲気で反応させるワンショット法や、活性水素化合物と有機ジイソシアネートとをイソシアネート基過剰で反応させて、イソシアネート基末端プレポリマーを合成しておき、その後、活性水素化合物、特に鎖延長剤を反応させるプレポリマー法等、公知の方法にて合成できる。また、ポリウレタン系ポリマーを水と相溶する有機溶剤中で反応後、水を添加し、その後、有機溶剤を取り除く方法や、溶剤を使用しないでポリマーを合成し、強制的に水に分散や溶解させる方法でも得られる。なお、ポリウレタン系ポリマーに導入されたカルボン酸と(D)中和剤との塩形成時期はウレタン化反応の前後を問わない。
【0024】ワンショット法の場合、イソシアネート基/活性水素基のモル比は、0.5≦イソシアネート基/活性水素基<1であり、好ましくは、0.8≦イソシアネート基/活性水素基<1である。イソシアネート基/活性水素基のモル比が0.5未満の場合は、ポリウレタンポリマーの分子量が小さすぎるため、耐久性に欠ける。1以上の場合は、ポリマーを合成する際、ゲル化が起こりやすくなる。
【0025】プレポリマー法の場合、プレポリマー合成時のイソシアネート基/活性水素基のモル比は、1.1〜5.0であり、好ましくは1.5〜4.0である。1.1未満の場合は、プレポリマーの分子量が大きくなりすぎて、その後の反応工程に進みにくくなる。5.0を越える場合は、密着性に乏しくなる。
【0026】本発明に用いられるポリウレタン系ポリマーのウレタン基濃度とウレア基濃度の総和は2.0〜5.0mmol/g、好ましくは2.3〜4.7mmol/gである。なお、ウレア基がポリマー中に存在しない場合は、ウレタン基濃度が2.0〜5.0mmol/g、好ましくは2.3〜4.7mmol/gとなる。ウレタン基濃度とウレア基濃度の総和が下限未満の場合は、塗膜の耐ブロッキング性が不十分となりやすい。また、上限を越える場合は、塗膜の密着性が不十分となりやすい。
【0027】本発明のポリウレタン系エマルジョンを製造するに際し、有機溶剤を用いる場合、使用できる有機溶剤としては、トルエン、キシレン、スワゾ−ル(コスモ石油株式会社製の芳香族系炭化水素溶剤)、ソルベッソ(エクソン化学株式会社製の芳香族系炭化水素溶剤)等の芳香族系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル系溶剤、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート等のグリコールエーテルエステル系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤が挙げられる。前記溶剤は1種又は2種以上使用することができる。
【0028】本発明に使用するイソシアネート基末端プレポリマーや、ポリウレタン系ポリマーを合成する際の反応触媒としては、公知のいわゆるウレタン化触媒を用いることができる。具体的には、ジオクチルチンジラウレート等の有機金属化合物や、トリエチレンジアミン等の有機アミンやその塩等が挙げられる。ウレタン化時の反応温度は、10〜100℃、好ましくは30〜80℃である。
【0029】このようにして得られるポリウレタン系ポリマーの数平均分子量は、5,000以上が好ましく、特に10,000以上がが好ましい。ポリウレタン系ポリマーの数平均分子量が5,000未満の場合は、耐久性に乏しくなる。なお、本発明において、ポリマーの数平均分子量は、ポリスチレン検量線によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によって測定されるものである。
【0030】ポリウレタン系エマルジョンの平均粒径は10〜3,000nmであり、好ましくは20〜2,800nmである。平均粒径が上限を越える場合は、エマルジョンとして存在できなくなる。なお、この平均粒径とは、動的光散乱法にて測定した値をキュムラント法にて解析した値である。
【0031】ポリウレタン系エマルジョンの25℃における粘度は10〜30,000mPa・sであり、好ましくは20〜25,000mPa・sである。粘度が上限を越える場合は、塗料化や塗装が困難となりやすい【0032】本発明のポリウレタン系エマルジョンのMFTが35℃以上であり、好ましくは40℃以上である。MFTが35℃未満の場合は、塗膜の耐熱性、耐候性、耐ブロッキング性が不十分となりやすい。なお、MFTとは、エマルジョンのポリマー粒子が毛細管圧で、粒子から膜(フィルム)に変形する温度のことである。MFTより低い温度ので成膜を試みても、粉末になるか、膜になっても割れてしまう。本発明におけるMFTの測定方法は、「室井宗一,高分子ラテックスの化学,高分子刊行会(1970)」に記載されている温度勾配板法である。
【0033】本発明におけるポリウレタン系ポリマーの、測定温度25℃における乾式フィルムの鉛筆引っかき値はB以上であり、好ましくはHB以上である。鉛筆引っかき値が2Bより柔らかい場合は、塗膜の耐熱性、耐候性、耐ブロッキング性等が不足しやすい。なお、鉛筆引っかき値は、JIS K5400(1990)の手かき法に準じた方法で測定した値である。
【0034】本発明におけるポリウレタン系ポリマーの、測定温度25℃における引張試験における破断時強度は、20〜70MPa、好ましくは25〜65MPaである。また、伸びは50〜400%であり、好ましくは60〜350%である。破断時強度が上限を越える場合、及び破断時伸びが下限未満の場合は、塗膜の密着性が不十分となりやすい。また、逆の場合は、塗膜の耐熱性、耐候性、耐ブロッキング性等が不十分となりやすい。また、本発明におけるポリウレタン系ポリマーの、測定温度25℃における引張試験における50%モジュラス(伸びが50%時の強度)は、10〜60MPa、好ましくは15〜55MPaである。なお、引張試験における引張速度は、200mm/分で測定した値である。
【0035】本発明におけるポリウレタン系ポリマーのガラス転移温度は、−50〜0℃が好ましく、更に好ましくは−45〜−5℃である。ガラス転移温度が下限未満の場合は、塗膜の耐熱性、耐候性、耐ブロッキング性等が不十分となりやすい。また、上限を越える場合は、密着性が不十分となりやすい。なお、ガラス転移温度は、動的粘弾性のE″(損失弾性率)が極大となる温度として測定される。なお、ここで測定した動的粘弾性の測定条件は、昇温速度が2℃/分、周波数が35Hzである。
【0036】本発明のポリウレタン系エマルジョンには、必要に応じて水系システムで慣用される添加剤及び助剤を使用できる。例えば、顔料、ブロッキング防止剤、分散安定剤、粘度調節剤、レベリング剤、ゲル化防止剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、無機及び有機充填剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、補強材、触媒等を添加することができる。
【0037】また、本発明のポリウレタン系エマルジョンは、他樹脂系のエマルジョンをブレンドして使用できる。例えば、アクリルエマルジョン、ポリエステルエマルジョン、ポリオレフィンエマルジョン、ラテックス等である。
【0038】本発明の水性塗料は、前述のポリウレタン系エマルジョン、及び、必要に応じて顔料や染料、固形分や粘度調整のための水、表面張力調整のためのイソプロパノールやN−メチルピロリドンのような有機溶剤、ブロッキング防止剤、分散安定剤、揺変剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤、増粘剤、分散剤、界面活性剤、触媒、フィラー、滑剤、帯電防止剤、可塑剤等の添加剤からなり、これらを混合し、ボールミル、サンドグラインドミル等を用いて得られる。なお、必要に応じて、印刷直前に硬化剤を添加して用いても良い。具体的な硬化剤としては、日本ポリウレタン工業製のアクアネート(登録商標)100、200等のようなポリイソシアネート系の硬化剤がある。
【0039】本発明の水性塗料のビヒクルには、前述のポリウレタン系エマルジョン及びアクリルエマルジョンを併用すると、耐候性、耐熱性、耐ブロッキング性に優れた塗膜となるので好ましい。ポリウレタン系エマルジョン及びアクリルエマルジョンの配合比(重量比)は、固形分換算で、ポリウレタン系樹脂/アクリル系樹脂=5/95〜60/40、好ましくは10/90〜55/45である。
【0040】
【発明の効果】本発明により、耐候性、密着性に優れた水性塗料を提供することが可能となった。本発明のエマルジョンを用いた水性塗料は、耐候性が良好であるので外壁等の建材用塗料に適している。
【0041】
【実施例】次に、本発明の実施例及び比較例について詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。特にことわりのない限り、実施例中の「部」及び「%」はそれぞれ「重量部」及び「重量%」を意味する。
【0042】〔ポリウレタン系エマルジョンの合成〕
実施例1攪拌機、温度計、窒素シール管、冷却器のついた反応器に、アセトンを303部、ポリオール(1)を400.0部、NPGを41.7部仕込み、40℃にて均一に混合した。その後、H6 XDIを334.1部、DBTDLを0.089部仕込み、60℃で3時間反応させ、あらかじめアセトンが417部、DMBAが118.9部、TEAが81.0部からなるカルボン酸塩溶液を仕込んで、更に60℃で2時間反応させて、イソシアネート基末端プレポリマー溶液を得た。このイソシアネート基末端プレポリマー溶液に、あらかじめIPAが180部、IPDAが79.7部、MEAが6.4部からなるアミン液を仕込み、1時間アミン延長反応させた。反応終了後、水を2207部仕込んで転相させ、その後、ロータリーエバポレーターにてアセトンとIPAを除去して、ポリウレタン系エマルジョンPU−1を得た。PU−1の固形分は30%、粘度は3,500mPa・s(25℃)、平均粒径は70nm、MFTは61℃、数平均分子量は20,000であった。
【0043】実施例2〜5、比較例1〜4表1に示す配合で、実施例1と同様にしてPU−2〜9を合成した。合成結果を表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】実施例1〜5、比較例1〜4、表1、2においてポリオール(1):1,6−ヘキサンジオールとアジピン酸から得られるポリエステルポリオール数平均分子量=1,000、平均官能基数=2ポリオール(2):1,6−ヘキサンジオールとジエチルカーボネートから得られるポリカーボネートポリオール数平均分子量=1,000、平均官能基数=2ポリオール(3):ポリカプロラクトンポリオール数平均分子量=2,000、平均官能基数=2ポリオール(4):1,6−ヘキサンジオールとジエチルカーボネートから得られるポリカーボネートポリオール数平均分子量=2,000、平均官能基数=2ポリオール(5):ポリ(オキシテトラメチレン)ポリオール平均分子量=2,000、平均官能基数=2ポリオール(6):3−メチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸から得られるポリエステルポリオール数平均分子量=3,000、平均官能基数=2ポリオール(7):酸成分がiPA/AZA=8/2(モル比)、ポリオール成分がEG/NPG=1/9(モル比)のポリエステルポリオール数平均分子量=2,000、平均官能基数=2なお、iPA:イソフタル酸AZA:アゼライン酸EG :エチレングリコールNPG:ネオペンチルグリコールNPG :ネオペンチルグリコールH6 −XDI :水素添加キシリレンジイソシアネートH12−MDI :水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートIPDI :イソホロンジアミンDBTDL :ジブチルチンジラウレートDMBA :ジメチロールブタン酸DMPA :ジメチロールプロピオン酸TEA :トリエチルアミンIPA :イソプロパノールIPDA :イソホロンジアミンH12−MDA :水素添加ジフェニルメタンジアミンMEA :モノエタノールアミン【0046】平均粒径測定装置:大塚電子(株)製 電気泳動光散乱計 ELS−800MFT測定装置:高林理化(株)製 最低成膜温度測定装置冷媒:エチレングリコール35%水溶液雰囲気:乾燥空気中数平均分子量測定装置:東ソー(株)製 HLC−8020カラム:TSKgel G3000H及び4000H【0047】実施例6〜15、比較例5〜12PU−1〜8をキャストして乾燥させ、厚さ約40μmの乾式フィルムを作成し、各種物性を測定した。物性測定結果を表3、4に示す。
【0048】乾燥条件:120℃×1時間物性測定項目:引張試験引張速度=200mm/分JIS K−6301(1995)の4号ダンベルにて打ち抜いてサンプルを作成軟化点測定JIS K−6301(1995)の2号ダンベルにて打ち抜いたサンプルを加熱炉にセットし、昇温速度=10/分、荷重=500gf/cm2 の条件で加熱し、サンプルの形状が急激に変化する温度を軟化点とした。
ガラス転移温度動的粘弾性におけるE″が極大となる温度測定条件:昇温速度=2℃/分、周波数=35Hz鉛筆引っかき値JIS K5400(1990)の手かき法に準じて測定測定手順サンプルを水平な台の上におき、約45度の角度で鉛筆を持ち、芯が折れない程度で、かつ、できるだけ強く押しつけながら試験者の前方に、約1cm/秒の速度で約1cm引っかく。各濃度記号の鉛筆で5回試験し、擦り傷が2回以上つく鉛筆をそのサンプルの鉛筆硬度とする。
【0049】引張物性測定装置:オリエンテック(株)製 テンシロン UTA−500動的粘弾性測定装置:オリエンテック(株)製 レオバイブロン DDV−01FP【0050】
【表2】

【0051】
【表3】

【0052】〔塗膜評価〕
実施例16PU−1に、キョウワノール M(造膜助剤 協和発酵工業製)を固形分に対して15部を配合して、クリアー塗料を調製した。この塗料を用いて、白色軟鋼板にバーコーターで乾燥塗膜30〜40μになるように塗装した後、120℃で1時間乾燥を行い、さらに室温で5時間静置して塗装サンプルを得た。この塗装サンプルの耐候性を評価した。結果を表4に示す。
耐候性評価方法試験条件・サンシャインウエザオメーター(スガ試験機製)を使用・ブラックパネル温度:63±3℃・噴霧時間 :2時間の間に18分間・暴露時間 :500時間光沢測定条件・デジタル変角光沢計(スガ試験機製)を使用・入射角:60°・反射角:60°・光沢保持率計算式光沢保持率(%)=耐候性試験後の光沢/耐候性試験前の光沢×100色差(ΔE* ab)測定・分光測色計CM−508D(ミノルタ製)を使用【0053】実施例17〜20、比較例13〜16実施例16と同様にして評価した。結果を表4に示す。
【0054】
【表4】

【0055】実施例21PU−1/アクロナール YJ−2730D(三菱化学BASF製)=20/80(固形分換算)で配合したものに、キョウワノール M(造膜助剤 協和発酵工業製)を全固形分に対して15部を配合して、クリアー塗料を調製した。この塗料を用いて、白色軟鋼板にバ−コ−タ−で乾燥塗膜30〜40μになるように塗装した後、80℃で20分間乾燥を行い、さらに室温で5時間静置して塗装サンプルを得た。この塗装サンプルの耐候性を評価した。なお、耐候性評価方法は実施例16と同様である。結果を表5に示す。
【0056】実施例22〜25、比較例17〜20実施例21と同様にして評価した。結果を表5に示す。
【0057】
【表5】

【0058】表1〜5に示されるように、本発明の水性塗料は、MFTが低すぎるエマルジョンを用いた塗料より、耐候性が良好なものであった。また、本発明のエマルジョンの乾式フィルムは、軟化点が高く、鉛筆硬度があるので、これを用いた塗料は耐熱性も良好であり、耐擦傷性も良好であることが期待できる。
【出願人】 【識別番号】000230135
【氏名又は名称】日本ポリウレタン工業株式会社
【出願日】 平成10年(1998)5月13日
【代理人】
【公開番号】 特開平11−323252
【公開日】 平成11年(1999)11月26日
【出願番号】 特願平10−148367