トップ :: C 化学 冶金 :: C08 有機高分子化合物;その製造または化学的加工;それに基づく組成物




【発明の名称】 固体電解コンデンサの電解質形成用組成物及び固体電解コンデンサ及びその製造法
【発明者】 【氏名】吉川 徹

【氏名】上原 秀秋

【氏名】厳 虎

【要約】 【課題】低周波数から高周波数まで容量、内部抵抗、誘電損失、インピーダンスが優れ、耐熱性が良好な工程上のストレスに強い優れた固体電解コンデンサを提供する。

【解決手段】(イ)アニリンを含有する溶液と、(ロ)酸化剤を含有する溶液の2液からなり、(イ)及び(ロ)の両方の溶液にプロトン酸を含有せしめた固体電解コンデンサの電解質形成用組成物、上記固体電解コンデンサの電解質形成用組成物で電解質を形成した固体電解コンデンサ及び上記固体電解コンデンサの電解質形成用組成物における(ロ)酸化剤を含む溶液を含浸した後、乾燥した素子に(イ)アニリンを含む溶液を含浸してポリアニリンの重合を行った後に、素子を乾燥させる行程を複数回繰り返した後に、さらに乾燥して電解質層を形成する固体電解コンデンサの製造法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 (イ)アニリンを含有する溶液と、(ロ)酸化剤を含有する溶液の2液からなり、(イ)及び(ロ)の両方の溶液にプロトン酸を含有せしめた固体電解コンデンサの電解質形成用組成物。
【請求項2】 (イ)アニリンを含有する溶液中のアニリンのモル濃度が0.02mol/lから2.5mol/lの範囲であり、(イ)アニリンを含有する溶液中のプロトン酸のモル濃度が(イ)アニリンを含有する溶液中のアニリンのモル濃度の1/20倍から2倍の範囲であり、(ロ)酸化剤を含有する溶液中のプロトン酸の濃度が(イ)アニリンを含有する溶液中のアニリンのモル濃度の1/20倍から2倍の範囲であり、且つ(イ)溶液中のプロトン酸のモル濃度を(ロ)溶液中のプロトン酸のモル濃度で割った値が0.25以上4.0以下である請求項1記載の固体電解コンデンサの電解質形成用組成物。
【請求項3】 プロトン酸がフェノールスルホン酸、フェノールジスルホン酸、2−スルホ安息香酸、スルホコハク酸及び3−ニトロベンゼンスルホン酸から選ばれる少なくとも1種以上の有機プロトン酸と前記有機プロトン酸以外の有機スルホン酸又は硫酸との混合物であって、前記有機プロトン酸のモル分率が0.1以上である固体電解コンデンサの電解質形成用組成物。
【請求項4】 酸化剤が、ペルオキソ二硫酸塩、二クロム酸塩及び鉄(III)塩より選ばれる酸化剤である請求項1記載の固体電解コンデンサの電解質形成用組成物。
【請求項5】 請求項1、2、3又は4記載の固体電解コンデンサの電解質形成用組成物で電解質を形成した固体電解コンデンサ。
【請求項6】 請求項1、2、3又は4記載の固体電解コンデンサの電解質形成用組成物における(ロ)酸化剤を含む溶液を含浸した後、乾燥した、もしくは乾燥しない素子に(イ)アニリンを含む溶液を含浸してポリアニリンの重合を行った後に、素子を乾燥させる行程を複数回繰り返した後に、さらに乾燥して電解質層を形成することを特徴とする固体電解コンデンサの製造法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、固体電解コンデンサの電解質形成用組成物及び固体電解コンデンサに関し、特に、電解質の形成をアニリンの化学酸化重合で行う固体電解コンデンサの電解質形成用組成物及びそれを用いて電解質を形成した固体電解コンデンサに関する。
【0002】
【従来の技術】従来の固体電解コンデンサは、弁金属と呼ばれるタンタルペレットや、アルミニウムの拡面された成形体を陽極体とし、その表面に酸化被膜を形成して誘電体とし、二酸化マンガンや7,7′,8,8′−テトラシアノキノジメタン錯塩(TCNQ)等を電解質層とする構造を有している。しかしながら、二酸化マンガンは導電率が0.1S/cmと不十分であるため、これを電解質層とする固体電解コンデンサは高周波数域でのインピーダンスが大きく、また、高い工程温度を必要とする二酸化マンガン電解質を多数回重ね塗りする必要があるために、本質的に漏れ電流不良が発生しやすいという欠点があった。これを避けるために、MnO2を一層形成するごとに誘電体である酸化膜の補修を行うための再化成処理を行う必要があるので、電解質形成行程が複雑であった。また、TCNQを電解質層とするものは、TCNQがはんだ温度以下の温度で融解するために耐熱性に劣っていた。また、TCNQの導電率は1S/cm程度が限界があるので、より高周波特性の優れたコンデンサへの要求には応えられるものではなかった。そのため、MnO2やTCNQよりも導電率が高く、TCNQよりも耐熱性に優れた導電性高分子を電解質層とする固体電解コンデンサが提案されている。例えば、特開昭60−37114号公報にはドープした複素五員環式化合物重合体からなる導電性高分子を電解質層とするコンデンサが開示されている。また、特開昭63−80517号公報には複素五員環式化合物重合体の揮発性溶剤溶液の塗布による薄膜層が形成され、かつドーピングされたものを電解質層とするコンデンサが開示されている。特開昭64−24410号公報には酸化被膜上にアニリンを液相で導入した後、プロトン酸及び酸化剤の溶液を導入してポリアニリンからなる固体電解質層を形成する電解コンデンサの製造方法が開示されている。
【0003】しかし、特開昭60−37114号公報に記載される導電性高分子からなる電解質形成方法は、電解重合法であるため、工程が複雑であり、特にタンタル固体電解コンデンサのように、コンデンサ素子が小さいものへ形成するのは量産的に困難であった。また、絶縁性であるコンデンサの誘電体表面でこのような電極反応を実施するのは、通常かなりの困難を伴う。また、特開昭63−80517号公報に示されているように、絶縁状態の導電性高分子の揮発性溶剤溶液の塗布による方法では、コンデンサ素子内部に十分な厚みで導電性高分子層を形成することができないのでコンデンサの耐熱性が劣り、また、導電性高分子被膜が緻密すぎるために工程上のストレスによる変化が大きいので、外装をモールドするなどした後の特性が低下する傾向にあった。特開昭64−24410号公報に記載の方法では、十分な厚みで導電性高分子層を形成することができ、工程上のストレスにも強い電解質層を得ることができるが、モノマーと酸化剤の導入量のコントロールが難しいことから、ポリアニリンが十分酸化されず、あるいは過酸化されて固体電解質の最適形成条件のコントロールが困難であり、また均一な電解質層が得られにくい。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、簡便にしかも低周波数から高周波数まで容量、内部抵抗、誘電損失、インピーダンスが優れた固体電解コンデンサを作製できる固体電解コンデンサの電解質形成用組成物を提供することにある。
【0005】本発明の他の目的は、更に低周波数から高周波数まで容量、内部抵抗、誘電損失、インピーダンスが優れ、耐熱性の良好な固体電解コンデンサの電解質形成用組成物を提供することにある。
【0006】本発明の他の目的は、導電性の高い強靭な電解質層が形成できるので、更に低周波数から高周波数まで容量、内部抵抗、誘電損失、インピーダンスが優れ、工程上のストレスに強い優れた固体電解コンデンサの電解質形成用組成物を提供することにある。
【0007】本発明の他の目的は、電解質の形成が簡便で、耐熱性が高く、しかも低周波数から高周波数まで容量、内部抵抗、誘電損失、インピーダンスが優れた固体電解コンデンサを提供することにある。
【0008】本発明の他の目的は、電解質の形成が簡便で、耐熱性が高く、しかも低周波数から高周波数まで容量、内部抵抗、誘電損失、インピーダンスが優れた固体電解コンデンサの製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、(イ)アニリンを含有する溶液と、(ロ)酸化剤を含有する溶液の2液からなり、(イ)及び(ロ)の両方の溶液にプロトン酸を含有せしめた固体電解コンデンサの電解質形成用組成物を提供するものである。
【0010】本発明は、また、上記の固体電解コンデンサの電解質形成用組成物で電解質を形成した固体電解コンデンサを提供するものである。
【0011】本発明は、また、上記の固体電解コンデンサの電解質形成用組成物における(ロ)少なくとも酸化剤を含む溶液を含浸した後、乾燥した、もしくは乾燥しない素子に(イ)少なくともアニリンを含む溶液を含浸してポリアニリンの重合を行った後に、素子を乾燥させる行程を複数回繰り返した後に、さらに乾燥して電解質層を形成することを特徴とする固体電解コンデンサの製造法を提供するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明における(A)成分であるアニリンは、一般式(1)
【0013】
【化1】

(式中、Rは各々独立にアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基又はアルカノイル基を示し、mは1〜5の整数であり、nは0〜4の整数であり、m+nは5である)で表される化合物が挙げられる。好ましくはRは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルケニル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数5〜6のシクロアルキル基、炭素数5〜6のシクロアルケニル基、炭素数7〜10のアルカノイル基が挙げられる。これらは、溶解性等の点で好ましく、なかでも置換基を有さないアニリンモノマーが、化学酸化重合して得たポリアニリンの導電率が高くなる点や、安価等の点で最も好ましい。
【0014】本発明におけるアニリンの配合量は、(イ)アニリンを含有する溶液中のアニリンのモル濃度が0.02mol/lから2.5mol/lとなる量であることが好ましく、更に好ましくは0.075mol/lから1.8mol/lであり、特に好ましくは0.1mol/lから1.2mol/lである。アニリンの配合量が0.02mol/l未満だと電解コンデンサの酸化膜表面に形成されるポリアニリンの被膜の厚みが薄くなる傾向があり、2.5mol/lを超えるとと電解コンデンサの酸化膜表面に形成されるポリアニリンの被膜の導電率が低下する傾向がある。
【0015】本発明における酸化剤は、アニリンを重合可能なものであれば特に限定されないが、具体的にはペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム等のペルオキソ二硫酸塩、二クロム酸アンモニウム、二クロム酸ナトリウム、二クロム酸カリウム等の二クロム酸塩、塩化鉄(III)、硫酸鉄(III)等の鉄(III)塩、過酸化水素、過酸化ナトリウム等の過酸化物、過マンガン酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム等の過マンガン酸塩等が挙げられる。中でも、ペルオキソ二硫酸塩、二クロム酸塩及び鉄(III)塩が得られる電解質層の導電性が高く、また緻密な膜が得られるため好ましい。これらの内、ペルオキソ二硫酸アンモニウムが得られるポリアニリンの電解質層の導電性が特に良好で重金属の残留もないので最も好ましい。
【0016】本発明における酸化剤の配合量は、(ロ)酸化剤を含有する溶液中の酸化剤モル濃度が0.02mol/lから2.5mol/lとなる量であることが好ましく、更に好ましくは0.075mol/lから1.8mol/lであり、特に好ましくは0.1mol/lから1.2mol/lである。酸化剤の配合量が0.02mol/l未満だと電解コンデンサの酸化膜表面に形成されるポリアニリンの被膜の厚みが薄くなる傾向があり、2.5mol/lを超えるとと電解コンデンサの酸化膜表面に形成されるポリアニリンの被膜の導電率が低下する傾向がある。本発明における酸化剤の配合量は、本発明におけるアニリンを含有する溶液中のアニリンのモル濃度の1/2倍から6倍であることが好ましく、更に好ましくは2/3倍から4倍であり、特に好ましくは5/6倍から2倍である。1/2倍未満あるいは6倍を超えると、電解コンデンサの酸化膜表面に形成されるポリアニリンの被膜の導電率が低下する傾向がある。
【0017】本発明におけるプロトン酸には、有機スルホン酸、硫酸、亜硫酸、発煙硫酸、クロロ硫酸、フルオロ硫酸、硝酸、ハロゲン化水素、過塩素酸等の強酸若しくは超強酸が好ましく用いられる。これらの内、有機スルホン酸又は有機スルホン酸と硫酸の混合物が化学酸化重合したポリアニリンの耐熱性や、導電性の点で好ましく、この有機スルホン酸としては以下のものが好ましく用いられる。
【0018】例えば、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、n−ヘキサンスルホン酸、n−オクチルスルホン酸、ドデシルスルホン酸、セチルスルホン酸、4−ドデシルベンゼンスルホン酸、カンファースルホン酸、ポリ(ビニル)スルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、p−クロロベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、フェノールジスルホン酸、トリクロロベンゼンスルホン酸、4−ニトロトルエン−2−スルホン酸、1−オクタンスルホン酸、スルホン化ポリスチレン、スルホン化ポリエチレン、ニトロベンゼンスルホン酸、2−スルホ安息香酸、3−ニトロベンゼンスルホン酸、4−オクチルベンゼンスルホン酸、2−メチル−5−イソプロピルベンゼンスルホン酸、スルホコハク酸が挙げられ、これらの内、化学酸化重合したポリアニリンの耐熱性や導電性の点でフェノールスルホン酸、フェノールジスルホン酸、2−スルホ安息香酸、スルホコハク酸及び3−ニトロベンゼンスルホン酸から選ばれる有機プロトン酸が最も好ましい。使用するプロトン酸は、単種を用いてもよいが、複数主を混合してもよく、特に、フェノールスルホン酸、フェノールジスルホン酸、2−スルホ安息香酸、スルホコハク酸及び3−ニトロベンゼンスルホン酸から選ばれる有機プロトン酸をこの有機プロトン酸以外の有機スルホン酸又は硫酸と混合して用いた場合、化学酸化重合したポリアニリンの耐熱性が良好となるので、このような混合物を用いるのも好ましい。
【0019】本発明におけるプロトン酸の(イ)アニリンを含有する溶液中の配合量は、(イ)アニリンを含有する溶液中のアニリンのモル濃度の1/20倍から2倍の範囲であることが好ましい。より好まし1/10倍から1.5倍の範囲がよく、更に好ましくは1/5倍から1.0倍の範囲がよい。1/20倍未満では、アニリンの溶解性が不十分になったり、電解コンデンサの酸化膜表面に形成される被膜の導電率が低下する傾向があり、2倍を超えると電解コンデンサの酸化膜表面に形成される被膜の導電率が低下する傾向がある。本発明におけるプロトン酸の(ロ)酸化剤を含有する溶液中の配合量は、(イ)アニリンを含有する溶液中のアニリンのモル濃度の1/20倍から2倍の範囲であることが好ましい。より好まし1/10倍から1.5倍の範囲がよく、更に好ましくは1/5倍から1.0倍の範囲がよい。1/20倍未満あるいは2倍を超えると、電解コンデンサの酸化膜表面に形成される被膜の導電率が低下する傾向がある。また、(イ)アニリンを含有する溶液中のプロトン酸のモル濃度を(ロ)酸化剤を含有する溶液中のプロトン酸のモル濃度で割った値が0.25以上4.0以下となるように調整することが好ましい。この値が0.25未満あるいは4.0を超えると、(イ)アニリンを含有する溶液と(ロ)酸化剤を含有する溶液の間で、素子への付着性や含浸性の差が大きくなり、均一な電解質層が得られにくくなる傾向がある。この値はより好ましくは0.5以上2.0以下の範囲に調整するのがよい。
【0020】本発明におけるプロトン酸として、フェノールスルホン酸、フェノールジスルホン酸、2−スルホ安息香酸、スルホコハク酸及び3−ニトロベンゼンスルホン酸から選ばれる少なくとも1種以上の有機プロトン酸と前記有機プロトン酸以外の有機スルホン酸又は硫酸との混合物を用いる場合、前記有機プロトン酸の含有量はモル分率で0.1以上とすることが好ましい。より好ましい含有量はモル分率で0.2以上であり、特に好ましくは0.3以上である。混合物中の前記有機プロトン酸の含有量がモル分率で0.1未満の場合、化学酸化重合したポリアニリンの耐熱性が低くなる傾向がある。
【0021】本発明における(イ)アニリンを含有する溶液と、(ロ)酸化剤を含有する溶液において、溶媒としては水が用いられる。水は、イオン性の不純物や有機物等を含まないことが好ましく、イオン交換と蒸溜の両方がなされていることが好ましい。水にはアニリンとの溶解性やコンデンサ素子への含浸性を高める目的で水溶性の有機溶剤が含まれていてもよい。
【0022】中でもアニリンを溶解可能なアルキルアルコール、グリコール系溶剤、モノエーテル系溶剤、ジエーテル系溶剤、環状エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、カルボン酸エステル系溶剤から選ぶのが好ましい。このような有機溶剤を具合的に例示すればメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブチルアルコール等の低級アルキルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール系溶剤、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のモノエーテル系溶剤、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジグライム、トリグライム、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等のジエーテル系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル系溶剤、アセトン等のケトン系溶剤、乳酸メチル等の酸エステル系溶剤、アセトニトリル、N−メチルピロリドン等の含窒素化合物系溶剤が好ましく用いることができ、これらのうちの複数種を組み合わせて用いることも可能である。中でもエタノール、プロパノール、イソプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジグライム、アセトンが低毒性でかつアニリンの溶解性、乾燥性に優れているので好ましい。
【0023】本発明の固体電解コンデンサに用いる弁金属は、アルミニウム、タンタル、ニオブ、バナジウム、チタン、ジルコニウム等が挙げられるが、誘電率や酸化被膜の形成し易さの点から、拡面化したアルミニウム箔又はタンタル焼結体が好ましい。
【0024】本発明の固体電解コンデンサにおいて弁金属表面に酸化被膜を形成する方法は、通常、電解コンデンサ製造時に使用される方法であれば特に制限なく用いることができ、例えば、エッチングによって拡面したアルミニウム箔をアジピン酸アンモニウム水溶液中で電圧をかけることによって酸化被膜を形成する、タンタル微粉末焼結体ペレットを硝酸水溶液中で電圧をかけることによって酸化被膜を形成する、等の公知方法が用いられる。
【0025】本発明の固体電解コンデンサの好ましい作製方法としては、例えば、弁金属上に酸化膜を形成した素子に、本発明における(ロ)酸化剤を含む溶液を含浸した後、乾燥した、もしくは乾燥しない素子に本発明における(イ)アニリンを含む溶液を含浸してポリアニリンの重合を行った後に、素子を乾燥させる行程を1回から数十回繰り返した後に、さらに乾燥して水分等を揮散させ、電解質層を形成した後、電解質層の上にカーボンペースト層及び銀ペースト層の順で形成し、この素子をリードフレーム等に導電性の接着剤で接着し、さらに必要であれば封止材で封止して外装する方法が挙げられる。
【0026】
【実施例】以下、本発明を実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0027】実施例1アニリン(和光純薬工業(株)、試薬)、イオン交換水、エタノール(和光純薬工業(株)、試薬)及びフェノールスルホン酸(和光純薬工業(株)、試薬)ペルオキソ二硫酸アンモニウム(和光純薬工業(株)、試薬)を用いて、表1に示す組成の実施例1からなる固体電解コンデンサの電解質形成用組成物を得た。次に、以下の方法で実施例1からなる固体電解コンデンサを得た。
【0028】図1はタンタルを弁金属にした本発明の実施例の断面図である。硫酸水溶液中20Vで酸化被膜を形成した長さ1mm、奥行き1mm、高さ1mmの角柱状のタンタル微粉末焼結体ペレット(空隙率60%、設計容量3.3μF)を使用し、次に、作製したタンタル6表面に酸化タンタル被膜5を形成したタンタルペレット2に、表1に示す本発明の固体電解コンデンサの電解質形成用組成物のうち、(ロ)酸化剤を含有する溶液を含浸し、熱風乾燥機で80℃で20分乾燥し、その後表1に示す本発明の固体電解コンデンサの電解質形成用組成物のうち、(イ)アニリンを含有する溶液を含浸し、室温で10分放置した後、熱風乾燥機で80℃で20分乾燥した。この含浸工程を40回繰り返して、ポリアニリンからなる電解質層9を形成した。更にカーボンペースト層7、銀ペースト層8を順次形成して、この銀ペースト層8に、銀ペーストを用いて陰極リード2を接続し、タンタルワイヤ4に陽極3を接続して、封止材1でモールド外装し、タンタルを弁金属にした本発明の固体電解コンデンサを得た。得られた固体電解コンデンサの電気的特性を表2に示す。合わせて電解質層に二酸化マンガンを用いた従来のタンタル固体電解コンデンサの特性も表2に示す。
【0029】実施例2実施例1の固体電解コンデンサの電解質形成用組成物の組成中、エタノールの替わりにイソプロパノール(和光純薬工業(株)、試薬)を用いた点と配合割合を変化させた点、フェノールスルホン酸の替わりにスルホコハク酸(アルドリッチ、試薬)を用いた点以外は実施例1と同様にして、実施例2の固体電解コンデンサ用電解質形成用組成物を得た。また、実施例2の固体電解コンデンサ用電解質形成用組成物を用いた点以外は実施例1と同様にして実施例2からなる固体電解コンデンサを得た。得られた固体電解コンデンサの電解質形成用組成物の組成を表1に、得られた固体電解コンデンサの電気的特性を表2に示す。
【0030】実施例3実施例1の固体電解コンデンサの電解質形成用組成物の組成中、フェノールスルホン酸の替わりに2−スルホ安息香酸(アルドリッチ、試薬)を用いた点と配合割合を変化させた点以外は実施例1と同様にして、実施例3の固体電解コンデンサ用電解質形成用組成物を得た。また、実施例3の固体電解コンデンサ用電解質形成用組成物を用いた点と、含浸回数を変化させた以外は実施例1と同様にして実施例3からなる固体電解コンデンサを得た。得られた固体電解コンデンサの電解質形成用組成物の組成を表1に、得られた固体電解コンデンサの電気的特性を表2に示す。
【0031】実施例4実施例1の固体電解コンデンサの電解質形成用組成物の組成中、配合割合を変化させた点以外は実施例1と同様にして、実施例4の固体電解コンデンサ用電解質形成用組成物を得た。また、実施例4の固体電解コンデンサ用電解質形成用組成物を用いた点と、含浸回数を変化させた以外は実施例1と同様にして実施例4からなる固体電解コンデンサを得た。得られた固体電解コンデンサの電解質形成用組成物の組成を表1に、得られた固体電解コンデンサの電気的特性を表2に示す。
【0032】実施例5実施例1の固体電解コンデンサの電解質形成用組成物の組成中、エタノールの替わりにイソプロパノール(和光純薬工業(株)、試薬)を用いた点と配合割合を変化させた点、フェノールスルホン酸の替わりに3−ニトロベンゼンスルホン酸(東京化成工業(株)、試薬)を用いた点以外は実施例1と同様にして、実施例5の固体電解コンデンサ用電解質形成用組成物を得た。また、実施例5の固体電解コンデンサ用電解質形成用組成物を用いた点と、含浸回数を変化させた以外は実施例1と同様にして実施例5からなる固体電解コンデンサを得た。得られた固体電解コンデンサの電解質形成用組成物の組成を表1に、得られた固体電解コンデンサの電気的特性を表2に示す。
【0033】実施例6実施例1の固体電解コンデンサの電解質形成用組成物の組成中、フェノールスルホン酸の替わりに硫酸(和光純薬工業(株)、試薬)とフェノールスルホン酸の混合物(フェノールスルホン酸のモル分率は0.4)を用いた点と配合割合を変化させた点以外は実施例1と同様にして、実施例6の固体電解コンデンサ用電解質形成用組成物を得た。また、実施例6の固体電解コンデンサ用電解質形成用組成物を用いた点以外は実施例1と同様にして実施例6からなる固体電解コンデンサを得た。得られた固体電解コンデンサの電解質形成用組成物の組成を表1に、得られた固体電解コンデンサの電気的特性を表2に示す。
【0034】実施例7実施例1の固体電解コンデンサの電解質形成用組成物の組成中、ペルオキソ二硫酸アンモニウムの替わりに二クロム酸アンモニウムを用いた点以外は実施例1と同様にして、実施例7の固体電解コンデンサ用電解質形成用組成物を得た。また、実施例7の固体電解コンデンサ用電解質形成用組成物を用いた点以外は実施例1と同様にして実施例7からなる固体電解コンデンサを得た。得られた固体電解コンデンサの電解質形成用組成物の組成を表1に、得られた固体電解コンデンサの電気的特性を表2に示す。
【0035】比較例1実施例1の固体電解コンデンサの電解質形成用組成物の組成中、配合割合を変化させた点、(ロ)酸化剤を含む溶液にフェノールスルホン酸を配合しなかった点以外は実施例1と同様にして、比較例1の固体電解コンデンサ用電解質形成用組成物を得た。また、比較例1の固体電解コンデンサ用電解質形成用組成物を用いた点以外は実施例1と同様にして比較例1からなる固体電解コンデンサを得た。得られた固体電解コンデンサの電解質形成用組成物の組成を表3に、得られた固体電解コンデンサの電気的特性を表4に示す。
【0036】比較例2実施例2の固体電解コンデンサの電解質形成用組成物の組成中、配合割合を変化させた点(イ)アニリンを含む溶液にスルホコハク酸を配合しなかった点以外は実施例2と同様にして、比較例2の固体電解コンデンサ用電解質形成用組成物を得た。また、比較例2の固体電解コンデンサ用電解質形成用組成物を用いた点以外は実施例1と同様にして比較例2からなる固体電解コンデンサを得た。得られた固体電解コンデンサの電解質形成用組成物の組成を表3に、得られた固体電解コンデンサの電気的特性を表4に示す。
【0037】比較例3実施例3の固体電解コンデンサの電解質形成用組成物の組成中、配合割合を変化させた点、(イ)アニリンを含む溶液及び(ロ)酸化剤を含む溶液のいずれにも2−スルホ安息香酸を配合しなかった点以外は実施例3と同様にして、比較例3の固体電解コンデンサ用電解質形成用組成物を得た。また、比較例3の固体電解コンデンサ用電解質形成用組成物を用いた点以外は、実施例1と同様にして比較例3からなる固体電解コンデンサを得た。得られた固体電解コンデンサの電解質形成用組成物の組成を表3に、得られた固体電解コンデンサの電気的特性を表4に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
【表3】

【0041】
【表4】

表2及び表4を比較すると明らかなように、実施例による固体電解コンデンサは低周波特性及び高周波と特性のいずれも、比較例による固体電解コンデンサや従来例による固体電解コンデンサよりも優れていた。
【0042】
【発明の効果】本発明の固体電解コンデンサの電解質形成用組成物は、簡便にしかも低周波数から高周波数まで容量、内部抵抗、誘電損失、インピーダンスが優れた固体電解コンデンサを作製できるので、固体電解コンデンサの電解質形成用組成物として好適である。
【0043】本発明の固体電解コンデンサは、電解質の形成が簡便で、耐熱性が高く、しかも低周波数から高周波数まで容量、内部抵抗、誘電損失、インピーダンスが優れたものである。
【出願人】 【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成工業株式会社
【出願日】 平成9年(1997)9月8日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】穂高 哲夫
【公開番号】 特開平11−80544
【公開日】 平成11年(1999)3月26日
【出願番号】 特願平9−242661