トップ :: C 化学 冶金 :: C08 有機高分子化合物;その製造または化学的加工;それに基づく組成物




【発明の名称】 難燃性ポリカーボネート組成物
【発明者】 【氏名】徳田 俊正

【要約】 【課題】9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンから得られるポリカーボネートの好ましい特性即ち優れた耐熱性を保持しつつ、成形時においてかぶれを起さない安全性の改善された難燃性ポリカーボネート組成物を提供する。

【解決手段】全芳香族ジヒドロキシ成分の5〜95モル%が9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、95〜5モル%が別の特定のジヒドロキシ成分からなるポリカーボネート共重合体に、有機スルホン酸塩、有機硫酸エステル塩、リン酸のエステル及びホスホン酸のエステルよりなる群から選択された少くとも1種の化合物を難燃化する量配合してなる難燃性ポリカーボネート組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 全芳香族ジヒドロキシ成分の5〜95モル%が9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、95〜5モル%が下記一般式[1]
【化1】

[式中、R1〜R4は夫々独立して水素原子、炭素原子数1〜9の芳香族基を含んでもよい炭化水素基又はハロゲンであり、Wは単結合、炭素原子数1〜20の芳香族基を含んでもよい炭化水素基、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−又は−COO−である]で表されるジヒドロキシ成分からなるポリカーボネート共重合体に、有機スルホン酸塩、有機硫酸エステル塩、リン酸のエステル及びホスホン酸のエステルよりなる群から選択された少くとも1種の化合物を難燃化する量配合してなる難燃性ポリカーボネート組成物。
【請求項2】 有機スルホン酸塩が、炭素原子数6〜30の芳香族スルホン酸塩又は炭素原子数3〜30の脂肪族スルホン酸塩であり、その配合量がポリカーボネート共重合体に対して0.001〜1重量%である請求項1記載の難燃性ポリカーボネート組成物。
【請求項3】 有機硫酸エステル塩が、炭素原子数8〜30の硫酸エステル塩であり、その配合量がポリカーボネート共重合体に対して0.001〜1重量%である請求項1記載の難燃性ポリカーボネート組成物。
【請求項4】 リン酸のエステルが、下記一般式[2]
【化2】

[式中、R5〜R7は夫々独立して水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜15のアリール基又は炭素原子数7〜18のアラルキル基であり、環を形成しても良い。またR5〜R7の少くとも1個は上記炭化水素基である]で表されるリン酸エステルであり、その配合量がポリカーボネート共重合体に対して0.1〜10重量%である請求項1記載の難燃性ポリカーボネート組成物。
【請求項5】 ホスホン酸のエステルが、下記一般式[3]
【化3】

[式中、R8〜R10は夫々独立して水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜15のアリール基又は炭素原子数7〜18のアラルキル基であり、R8〜R10の少くとも1個は上記炭化水素基である]で表されるホスホン酸エステルであり、その配合量がポリカーボネート共重合体に対して0.1〜10重量%である請求項1記載の難燃性ポリカーボネート組成物。
【請求項6】 一般式[1]で表されるジヒドロキシ成分が、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンである請求項1〜5のいずれか1項記載の難燃性ポリカーボネート組成物。
【請求項7】 ポリカーボネート共重合体が、その0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液の20℃において測定された比粘度が0.17〜0.95の範囲である請求項1〜6のいずれか1項記載の難燃性ポリカーボネート組成物。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は難燃性ポリカーボネート組成物に関する。更に詳しくは、優れた耐熱性や熱安定性を有し、且つ安全性の改善された難燃性ポリカーボネート組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンにカーボネート前駆物質を反応させて得られるポリカーボネートは透明性、耐熱性、機械的特性、寸法安定性が優れているがゆえにエンジニアリングプラスチックとして多くの分野に広く使用されている。特に透明性に優れることから光学材料としての用途も多い。しかしながら、近年成形品の軽薄短小化に伴い、熱源により接近して使用するレンズのように耐熱性に優れ且つ難燃性を有する新しい材料が望まれている。また、より熱安定性に優れ、より安全性の高い樹脂が求められている。
【0003】一方、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンにカーボネート前駆物質を反応させて得られるポリカーボネートは公知であり、高屈折率で耐熱性が良好なことも知られている。しかしながら、上記9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンから得られたポリカーボネートは、特に皮膚の弱い人にとっては、成形時にかぶれを起す場合のあることが明らかになった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンから得られるポリカーボネートの好ましい特性即ち優れた耐熱性を保持しつつ、成形時においてかぶれを起さない安全性の改善された難燃性ポリカーボネート組成物を提供するにある。
【0005】本発明者はこの目的を達成せんとして鋭意研究を重ねた結果、特定位にメチル基を置換した9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンを使用し、更に特定量の他のジヒドロキシ成分を併用して得られるポリカーボネート共重合体に、特定の化合物を配合したポリカーボネート組成物が上記課題を達成し得ることを見出し、本発明に到達した。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、全芳香族ジヒドロキシ成分の5〜95モル%が9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、95〜5モル%が下記一般式[1]
【0007】
【化4】

【0008】[式中、R1〜R4は夫々独立して水素原子、炭素原子数1〜9の芳香族基を含んでもよい炭化水素基又はハロゲンであり、Wは単結合、炭素原子数1〜20の芳香族基を含んでもよい炭化水素基、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−又は−COO−である]で表されるジヒドロキシ成分からなるポリカーボネート共重合体に、有機スルホン酸塩、有機硫酸エステル塩、リン酸のエステル及びホスホン酸のエステルよりなる群から選択された少くとも1種の化合物を難燃化する量配合してなる難燃性ポリカーボネート組成物に係るものである。
【0009】本発明のポリカーボネート共重合体は、それを構成する芳香族ジヒドロキシ成分として9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンが全芳香族ジヒドロキシ成分の少くとも5〜95モル%、好ましくは7〜85モル%、更に好ましくは10〜75モル%であるのが有利である。5モル%未満の場合、本発明の目的である耐熱用材料として不満足な性質となり好ましくない。
【0010】本発明のポリカーボネート共重合体において用いる他のジヒドロキシ成分としては、通常ポリカーボネートのジヒドロキシ成分として使用されているものであればよく、例えばハイドロキノン、レゾルシノール、4,4′−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4′−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4′−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、4−ヒドロキシフェニル安息香酸−4′−ヒドロキシフェニルエステル、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド等が挙げられ、なかでも2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが好ましい。
【0011】ポリカーボネート共重合体はそのポリマー0.7gを100mlの塩化メチレンに溶解し、20℃で測定した比粘度が0.17〜0.95のものが好ましく、0.25〜0.71の範囲のものがより好ましい。比粘度が0.17未満では成形品が脆くなり、0.95より高くなると溶融粘度及び溶液粘度が高くなり、取扱い難くなるので好ましくない。
【0012】本発明のポリカーボネート共重合体は、通常のポリカーボネートを製造するそれ自体公知の反応手段、例えば芳香族ジヒドロキシ成分にホスゲンや炭酸ジエステル等のカーボネート前駆物質を反応させる方法により製造される。次にこれらの製造方法について基本的な手段を簡単に説明する。カーボネート前駆物質として例えばホスゲンを使用する反応では、通常酸結合剤及び溶媒の存在下に反応を行う。酸結合剤としては例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物又はピリジン等のアミン化合物が用いられる。溶媒としては例えば塩化メチレンやクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また、反応促進のために例えば第三級アミンや第四級アンモニウム塩等の触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0〜40℃であり、反応時間は数分〜5時間である。
【0013】カーボネート前駆物質として炭酸ジエステルを用いるエステル交換反応は、不活性ガス雰囲気下所定割合の芳香族ジヒドロキシ成分を炭酸ジエステルと加熱しながら撹拌して、生成するアルコール又はフェノール類を留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコール又はフェノール類の沸点等により異なるが、通常120〜300℃の範囲である。反応はその初期から減圧にして生成するアルコール又はフェノール類を留出させながら反応を完結させる。また、反応を促進するために通常エステル交換反応に使用される触媒を使用することもできる。このエステル交換反応に使用される炭酸ジエステルとしては、例えばジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート等が挙げられる。これらのうち特にジフェニルカーボネートが好ましい。
【0014】本発明のポリカーボネート共重合体は、その重合反応において、末端停止剤として通常使用される単官能フェノール類を使用することができる。殊にカーボネート前駆物質としてホスゲンを使用する反応の場合、単官能フェノール類は末端停止剤として分子量調節のために一般的に使用され、また得られたポリカーボネート共重合体は、末端が単官能フェノール類に基づく基によって封鎖されているので、そうでないものと比べて熱安定性に優れている。かかる単官能フェノール類としては、ポリカーボネートの末端停止剤として使用されるものであればよく、一般にはフェノール又は低級アルキル置換フェノールであって、下記一般式で表される単官能フェノール類を示すことができる。
【0015】
【化5】

【0016】[式中、Aは水素原子又は炭素数1〜9、好ましくは1〜8の脂肪族炭化水素基であり、rは1〜5、好ましくは1〜3の整数である]。かかる単官能フェノール類の具体例としては例えばフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノール及びイソオクチルフェノール等が挙げられる。
【0017】また、他の単官能フェノール類としては、長鎖のアルキル基又は脂肪族ポリエステル基を置換基として有するフェノール類又は安息香酸クロライド類、又は長鎖のアルキルカルボン酸クロライド類を使用することができ、これらを用いてポリカーボネート共重合体の末端を封鎖すると、これらは末端停止剤又は分子量調節剤として機能するのみならず、樹脂の溶融流動性が改良され、成形加工が容易になるばかりでなく、製品としての物性も改良される。特に樹脂の吸水率を低くする効果があり、好ましく使用される。これらは下記一般式[I−a]〜[I−h]で表される。
【0018】
【化6】

【0019】
【化7】

【0020】
【化8】

【0021】
【化9】

【0022】
【化10】

【0023】
【化11】

【0024】
【化12】

【0025】
【化13】

【0026】[各式中、Xは−R−O−、−R−CO−O−又は−R−O−CO−である、ここでRは単結合又は炭素数1〜10、好ましくは1〜5の二価の脂肪族炭化水素基であり、Tは単結合又は上記Xと同様の結合であり、nは10〜50の整数である。Qはハロゲン原子又は炭素数1〜10、好ましくは1〜5の一価の脂肪族炭化水素基であり、pは0〜4の整数であり、Yは炭素数1〜10、好ましくは1〜5の二価の脂肪族炭化水素基であり、W1は水素原子、−CO−R11、−CO−O−R12又はR13であり、ここでR11、R12及びR13は夫々炭素数1〜10、好ましくは1〜5の一価の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜8、好ましくは5〜6の一価の脂環族炭化水素基又は炭素数6〜15、好ましくは6〜12の一価の芳香族炭化水素基である。aは4〜20、好ましくは5〜10の整数であり、mは1〜100、好ましくは3〜60、特に好ましくは4〜50の整数であり、Zは単結合又は炭素数1〜10、好ましくは1〜5の二価の脂肪族炭化水素基であり、W2は水素原子、炭素数1〜10、好ましくは1〜5の一価の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜8、好ましくは5〜6の一価の脂環族炭化水素基又は炭素数6〜15、好ましくは6〜12の一価の芳香族炭化水素基である]
【0027】これらのうち好ましいのは[I−a]及び[I−b]の置換フェノール類である。この[I−a]の置換フェノール類としてはnが10〜30、特に10〜26のものが好ましく、その具体例としては例えばデシルフェノール、ドデシルフェノール、テトデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノール及びトリアコンチルフェノール等を挙げることができる。また、[I−b]の置換フェノール類としてはXが−R−CO−O−であり、Rが単結合である化合物が適当であり、nが10〜30、特に10〜26のものが好適であり、その具体例としてはヒドロキシ安息香酸デシル、ヒドロキシ安息香酸ドデシル、ヒドロキシ安息香酸テトラデシル、ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシル、ヒドロキシ安息香酸エイコシル、ヒドロキシ安息香酸ドコシル及びヒドロキシ安息香酸トリアコンチルが挙げられる。前記一般式[I−a]〜[I−g]で示される置換フェノール類又は置換安息香酸クロライドにおいて置換基の位置は、p位又はo位が一般的に好ましく、その両者の混合物が好ましい。
【0028】前記単官能フェノール類は、得られたポリカーボネート共重合体の全末端に対して少くとも5モル%、好ましくは少くとも10モル%末端に導入されることが望ましく、また単官能フェノール類は単独で又は2種以上混合して使用してもよい。また、本発明のポリカーボネート共重合体において、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンが、全芳香族ヒドロキシ成分の60モル%以上である場合は、樹脂の流動性が低下することがあり、そのため前記一般式[I−a]〜[I−g]で示される置換フェノール類又は置換安息香酸クロライド類を末端停止剤として使用することが好ましい。本発明のポリカーボネート共重合体は、そのガラス転移点が155℃以上が好ましく、160℃以上がより好ましく、165℃以上がさらに好ましい。
【0029】本発明においては、前記ポリカーボネート共重合体に、難燃性を付与する量のスルホン酸塩、有機硫酸エステル塩、リン酸エステル及びホスホン酸エステルよりなる群から選択された少くとも1種の化合物が配合される。
【0030】スルホン酸塩や有機硫酸エステル塩としては、従来公知の芳香族スルホン酸塩、有機硫酸エステル塩が用いられるが、中でもベンゼンスルホン酸カリウム、ジフェニルスルホンのスルホン酸ナトリウム及びカリウム、ラウリル硫酸ナトリウムが特に好ましい。かかるスルホン酸塩や有機硫酸エステル塩の配合量は、ポリカーボネート共重合体に難燃性を付与し得る量であり、目的とする難燃性能によって広い範囲から選択される。通常、ポリカーボネート共重合体に対して0.001〜1.0重量%であり、0.003〜0.1重量%が好ましく、0.005〜0.05重量%が特に好ましい。配合量が0.001重量%未満では難燃効果が得られ難く、1.0重量%を超えると、ポリカーボネート組成物の熱安定性に悪影響を与えるようになるので好ましくない。
【0031】また、リン酸エステル及びホスホン酸エステルよりなる群から選択される少くとも1種のリン化合物は、好ましくは下記一般式[2]及び[3]
【0032】
【化14】

【0033】
【化15】

【0034】よりなる群から選択される少くとも1種のリン化合物である。ここで、R5〜R10は夫々独立して水素原子、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル等の炭素数1〜20のアルキル基、フェニル、トリル、ナフチル等の炭素数6〜15のアリール基又はベンジル、フェネチル等の炭素数7〜18のアラルキル基である。また、1つの化合物中に2つのアルキル基が存在する場合は、その2つのアルキル基は互いに結合して環を形成していてもよい。
【0035】上記一般式[2]で示されるリン化合物としては、例えばトリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、ナトリウムビス(4−tert−ブチルフェニル)ホスフェート、12H−ジベンゾ[d,g][1.3.2]ジオキサホスホシン−2,4,8,10−テトラキス(tert−ブチル)−6−ヒドロキシ−6−オキサイドのナトリウム塩[アデカ・アーガス(株)製NA−11]等が挙げられ、上記一般式[3]で示されるリン化合物としては、例えばベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピルなどが挙げれる。なかでも、トリフェニルホスフェート、ナトリウムビス(4−tert−ブチルフェニル)ホスフェート、NA−11、ベンゼンホスホン酸ジメチルが好ましく使用される。
【0036】かかるリン化合物の配合量は、ポリカーボネート共重合体に難燃性を付与し得る量であり、目的とする難燃性能によって広い範囲から選択される。通常、ポリカーボネート共重合体に対して0.1〜10重量%であり、0.2〜8重量%が好ましく、0.5〜7重量%が特に好ましい。配合量が0.1重量%未満では難燃効果が得られ難く、10重量%を超えると、ポリカーボネート組成物の熱安定性に悪影響を与えるので好ましくない。
【0037】本発明の組成物において、かかる難燃剤が特に好ましい理由は定かでないが、本発明の共重合体は、特にフルオレン骨格のような芳香族成分の多い基を有するがゆえに炭化し易いことに起因するものと思われる。
【0038】本発明のポリカーボネート組成物には、酸化防止の目的で通常知られた酸化防止剤を添加することができる。その例としては亜リン酸エステル系又はフェノール系酸化防止剤を示すことができる。具体的には例えばトリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイトジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等が挙げられる。これら酸化防止剤の好ましい添加量の範囲はポリカーボネート共重合体に対して、0.0001〜0.05重量%である。
【0039】更に本発明のポリカーボネート組成物には、必要に応じて一価又は多価アルコールの高級脂肪酸エステルを加えることもできる。この一価又は多価アルコールの高級脂肪酸エステルを配合することにより、ポリカーボネート組成物の成形時の金型からの離型性が改良され、ディスク基板等の成形においては、離型荷重が少く離型不良によるディスク基板の変形、ピットずれを防止できる。また、ポリカーボネート組成物の溶融流動性が改善される利点もある。かかる高級脂肪酸エステルとしては、炭素原子数1〜20の一価又は多価アルコールと炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸との部分エステル又は全エステルであるのが好ましい。
【0040】また、かかる一価又は多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステル又は全エステルとしてはステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ベヘニン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、プロピレングリコールモノステアレート、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート、2−エチルヘキシルステアレート等が挙げられ、なかでもステアリン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレートが好ましく用いられる。かかるアルコールと高級脂肪酸とのエステルの配合量は、ポリカーボネート共重合体に対して0.01〜2重量%であり、0.015〜0.5重量%が好ましく、0.02〜0.2重量%がより好ましい。配合量が0.01重量%未満では上記効果が得られず、2重量%を越えると金型表面の汚れの原因となるので好ましくない。
【0041】本発明のポリカーボネート組成物には、更に光安定剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤、ガラス繊維、カーボン繊維、金属繊維等の無機充填剤等の添加剤を加えることができる。また、他のポリカーボネート樹脂、熱可塑性樹脂を本発明の目的を損なわない範囲で添加することもできる。また、難燃性を強化するために従来公知のハロゲン系難燃剤、難燃助剤、フッ素化合物系及び/又はシロキサン系ドリップ防止剤を加えることもできる。
【0042】本発明のポリカーボネート組成物を製造するには、任意の方法で行うことができる。例えばタンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等で混合する方法が適宜用いられる。このポリカーボネート組成物は、例えば射出成形法、圧縮成形法、押出成形法、溶液キャスティング法など任意の方法により成形される。
【0043】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を更に説明する。なお、実施例中の部及び%は重量部及び重量%であり、評価は下記の方法によった。
(1)比粘度:ポリマー0.7gを100mlの塩化メチレンに溶解し,20℃で測定した。
(2)ガラス転移点(Tg):デュポン社製910型DSCにより測定した。
【0044】[合成例1]温度計、撹拌機及び還流冷却器付き反応器にイオン交換水24623部、48%水酸化ナトリウム水溶液4153部を仕込み、これに9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(以下“ビスクレゾールフルオレン”と略称することがある)635部、ビスフェノールA3444部及びハイドロサルファイト8部を溶解した後、塩化メチレン18188部を加え、撹拌下15〜25℃でホスゲン1994部を60分を要して吹込んだ。ホスゲン吹込み終了後p−tert−ブチルフェノール100.7部を塩化メチレン1330部に溶解した溶液及び48%水酸化ナトリウム水溶液692.1部を加え、乳化させた後トリエチルアミン5.8部を加え、28〜33℃で1時間撹拌して反応を終了した。反応終了後生成物を塩化メチレンで希釈して水洗した後塩酸酸性にして水洗し、水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになったところで、ニーダーにて塩化メチレンを蒸発して、ビスクレゾールフルオレンとビスフェノールAの比がモル比で10:90である無色のパウダー状のポリマー4284.5部(収率95%)を得た。このポリマーの比粘度は0.339、Tgは165℃であった。このポリマーをポリカーボネートAとする。
【0045】[合成例2]合成例1のビスクレゾールフルオレンの使用量を3171.4部とし、ビスフェノールAの使用量を1913部とする以外は合成例1と同様にしてビスクレゾールフルオレンとビスフェノールAの比がモル比で50:50であるポリマー5300部(収率96%)を得た。このポリマーの比粘度は0.320、Tgは205℃であった。このポリマーをポリカーボネートBとする。
【0046】[実施例1]合成例1で得たポリカーボネートA100部にトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトを0.03部、トリメチルホスフェートを0.01部、ジフェニルスルホンスルホン酸カリウム0.01部、ステアリン酸オクタデシル0.3部をナウタミキサーにて混合し、押出機にて280℃でペレット化した。このもののTgは164℃であった。このペレットを120℃で6時間乾燥した後、住友重機(株)製射出成形機を用いて厚み1/16インチのUL−94燃焼試験片を射出成形した。この時、成形に従事した者の中で皮膚にかぶれを起こす者はいなかった。この試験片を用いてUL−94に従って難燃性を評価したところV−2にランクされた。また、このもののTgは164℃であった。
【0047】[実施例2]実施例1のジフェニルスルホンスルホン酸カリウムに代えてラウリル硫酸ナトリウムを0.01部使用する以外は実施例1と同様にして難燃性能を評価したところV−2にランクされた。また、このもののTgは164℃であった。
【0048】[実施例3]合成例1のポリカーボネートA59.4部とABS樹脂[三井東圧(株)製UT−61)25部の混合物に、トリフェニルホスフェート7部、タルク8部、トリメチルホスフェート0.1部、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート[アデカ・アーガス(株)製AO−18]0.2部及び2(2′−ヒドロキシ−5′−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール[ケミプロ化成(株)製ケミソーブ79]0.3部を混合した後、押出機にてペレット化した。このペレットを実施例1と同様にして燃焼試験片を成形し難燃性能を評価したところV−0にランクされた。また、このもののTgは128℃であった。
【0049】[実施例4]ポリカーボネートAに代えて合成例2で得たポリカーボネートB100部を使用し、ジフェニルスルホンスルホン酸カリウムに代えて12H−ジベンゾ[d,g][1.3.2]ジオキサホスホシン−2,4,8,10−テトラキス(tert−ブチル)−6−ヒドロキシ−6−オキサイドのナトリウム塩[アデカ・アーガス(株)製NA−11]0.01部を用いる以外は実施例1と同様にして燃焼試験片を成形し難燃性能を評価したところV−2にランクされた。また、このもののTgは203℃であった。
【0050】[実施例5]NA−11の代わりに2,2−ビス(3−ブロモ−4−ナトリウムスルホプロポキシフェニル)プロパンを0.02部用い、フィブリル形成性ポリテトラフルオロエチレンを0.3部用いる以外は実施例4と同様にして燃焼試験片を成形し難燃性能を評価したところV−0にランクされた。また、このもののTgは202℃であった。
【0051】[比較例1]実施例1において、ジフェニルスルホンスルホン酸カリウムを使用しない以外は実施例1と同様にして燃焼試験片を成形し、難燃性能を評価したところHBにランクされた。
【0052】[比較例2]合成例1において、ビスクレゾールフルオレンに代えてビスフェノールフルオレンを588部使用する以外は合成例1と同様にしてポリマー4066部(収率91%)を得た。このポリマーの比粘度は0.334、Tgは183℃であった。このものに実施例1と同様の添加剤を同様に添加し、試験片を成形したところ成形従事者の中で皮膚にかぶれを起こす者があった。
【0053】[比較例3]実施例1において、合成例1で得たポリカーボネートAの代わりにビスフェノールAからのポリカーボネート(Tg150℃、比粘度0.450)を用いる以外は、実施例1と同様にして、成形評価したところ難燃性能はUL−94でV−2にランクされた。また、このもののTgは148℃であった。
【0054】[比較例4]実施例3の合成例1のポリカーボネートAパウダーの代わりに比較例3のビスフェノールAからポリカーボネートを用いる以外は、実施例3と同様にして、ペレットを得た。このもののTgは106℃と実施例3に比べて低く耐熱性が劣る。
【0055】
【発明の効果】本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、優れた耐熱性を保持しつつ、成形時においてかぶれを起さない安全性や難燃性が改善されているので種々の成形品として利用することができる。例えば電気電子部品、光学ディスク、光学レンズ、ヘッドランプレンズ、液晶パネル、光カード、シート、フィルム、光ファイバー、コネクター、蒸着プラスチック反射鏡、ディスプレー等の光学部品の構造材料又は機能材料用途に適した光学用成形品として有利に使用することができる。これらのうち、難燃性且つ耐熱性の要求される分野に特に有利に使用することができる。
【出願人】 【識別番号】000215888
【氏名又は名称】帝人化成株式会社
【出願日】 平成9年(1997)9月10日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】前田 純博
【公開番号】 特開平11−80529
【公開日】 平成11年(1999)3月26日
【出願番号】 特願平9−245337