トップ :: C 化学 冶金 :: C08 有機高分子化合物;その製造または化学的加工;それに基づく組成物




【発明の名称】 低い線膨張係数を有するポリアミド樹脂組成物
【発明者】 【氏名】荒川 誠一

【氏名】植野 英司

【要約】 【課題】

【解決手段】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)半芳香族ポリアミド樹脂 100重量部、 (2)ガラス繊維 5〜150重量部、 (3)繊維状ゾノトライト 5〜 90重量部 からなる低い線膨張係数を有し、線膨張係数の異方性が小さいポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】繊維状ゾノトライトが、平均繊維径0.01〜2μm,アスペクト比5〜1000である請求項1記載のポリアミド樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、機械的特性をはじめ、ポリアミド樹脂が本来持つ各種特性を損なうことなく、低い線膨張係数を有し、かつ線膨張係数の異方性が小さいポリアミド樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリアミド樹脂は、機械的特性、電気的特性、その他物理的特性および化学的特性にすぐれたエンジニアリングプラスチックであり、自動車、電気・電子機器等の部品材料として広く使用されている。
【0003】特に、自動車分野において使用される各種センサー類の封止材としては、ガラス繊維を添加して強化したポリアミド樹脂組成物が良く使われている。しかし、この組成物は、ガラス繊維の配向状態によって異方性が顕著になる。例えば、添加したガラス繊維は、封止成形品を製造する際に押出方向(流れ方向ともいう)とこれに直交する方向(直角方向ともいう)にも配向するが、配向割合が異なるために、流れ方向と直角方向の線膨張係数に大きな差ができる。この差は、熱による封止材の歪みを増大させ、封止したセンサーの細いコイル銅線を断線させるという問題が生じていた。
【0004】近年、各種センサー類やモジュール化されたユニット類の性能は著しく向上し、軽くしかも形状は複雑になっている。このため、これら封止材としても、更に低い線膨張係数を有し、更に線膨張係数の異方性が小さいポリアミド樹脂組成物が求めらるようになった。ここで本明細書の線膨張係数の異方性とは、流れ方向の線膨張係数に対する直角方向の線膨張係数の比率をいう。よって、1に近いほど異方性が小さいことになる。
【0005】上記問題に対し、特公平1−57143号公報には、ポリアミド樹脂にケイ酸カルシウムおよび/またはケイ酸マグネシウムからなる無機充填剤と長さ1000μm以下のガラス短繊維を均一に配合したポリアミド樹脂組成物が開示されている。しかし、この公報で得られるポリアミド樹脂組成物は、従来のポリアミド樹脂−ガラス繊維系の樹脂組成物に比べ線膨張係数は小さくなるが、各種センサー類に使用するには不十分であり、また線膨張係数の異方性については記載はなく、問題提起もされていなかった。さらに、特開平8−165376号公報には、繊維状ゾノトライト、熱可塑性樹脂および強化繊維とからなる熱可塑性樹脂組成物が開示されている。そして、繊維状ゾノトライト、ポリアミド樹脂としてナイロン6あるいはナイロン66およびガラス繊維からなるポリアミド樹脂組成物が実施され、その効果として強度、剛性の機械的特性及び耐熱性に優れ、成形時の異方性も小さい熱可塑性樹脂組成物が記載されている。しかし、線膨張係数の値やその異方性についての記載はない。本発明者は、熱可塑性樹脂のなかでも特に、ポリアミド樹脂の種類について詳細に検討したところ半芳香族ポリアミド樹脂を用いれば、この問題を解決できることを見出し本発明を完成した。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ポリアミド樹脂本来の特性を維持しつつ低い線膨張係数を有し、かつ線膨張係数の異方性が小さいポリアミド樹脂組成物を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、 (1)半芳香族ポリアミド樹脂 100重量部、 (2)ガラス繊維 5〜150重量部、 (3)繊維状ゾノトライト 5〜 90重量部からなる低い線膨張係数を有し、線膨張係数の異方性が小さいポリアミド樹脂組成物である。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。本発明における成分(1)の半芳香族ポリアミド樹脂とは、脂肪族ポリアミドと芳香族ポリアミドの共重合体をいう。脂肪族ポリアミドの具体例としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12等が挙げられ、芳香族ポリアミドの具体例としては、テトラメチレンテレフタラミド、ヘキサメチレンテレフタラミド、テトラメチレンイソフタラミド、ヘキサメチレンイソフタラミド等が挙げられる。よって、本願発明の半芳香族ポリアミド樹脂は、これらの組合わせで得られたものであるが、単独でも2種類以上でも使用できる。これらのうち、ヘキサメチレンアジパミド/ヘキサメチレンテレフタラミドの共重合体(以下66/6Tとする)、ヘキサメチレンアジパミド/ヘキサメチレンイソフタラミドの共重合体(以下66/6Iとする)が好ましく、特に66/6Tが好ましい。
【0009】本発明における成分(2)のガラス繊維とは、平均直径が1〜20μm,好ましくは、6〜13μm,平均長さが100〜3、000μmのものであり、ポリアミド樹脂に配合して射出成形法などで成形体を形成しうる樹脂組成物とすることができれば、公知のどのような種類のガラス繊維であってもよい。
【0010】ガラス繊維の使用量は、ポリアミド樹脂100重量部に対し、5〜150重量部、好ましくは、10〜100重量部、特に好ましくは、20〜70重量部である。ガラス繊維が5重量部より少ないと機械的強度が充分でなく、150重量部より多いと表面性が悪くなる。
【0011】本発明において使用される成分(3)の繊維状ゾノトライトとは、ゾノトライト(示性式:Ca6 Si6 17(OH),化学式:6CaO・6SiO2 ・H2O)の針状結晶物質をさし、平均繊維径が0.01〜2μm,平均長さが0.05〜10μm、アスペクト比が5〜1、000の範囲のものであり、好ましくは、平均繊維径が0.1〜1μm,平均長さが0.5〜5μm、アスペクト比が5〜20の範囲のものである。
【0012】平均繊維径が0.01μmより小さいと、線膨張係数の異方性解消の効果が小さく、成形品の製造時のフィード安定性にも欠ける。2μmより大きいと、ガラス繊維と同様の配向になりやすく、線膨張係数の異方性が大きくなる傾向が認められる。平均長さが0.05より小さいと、一般にその製造に経費がかかり、樹脂組成物のコストアップの要因となり、10μmより大きいと線膨張係数の異方性が大きくなる傾向が認められる。アスペクト比が5より小さいと、直角方向の低い線膨張係数が得られず、1、000より大きくなると、線膨張係数の異方性が大きくなる傾向が認められる。更に、繊維状ゾノトライトは、ポリアミド樹脂との相溶性及びポリアミド樹脂への分散性を高めるために、界面活性剤及び/またはカップリング剤で表面処理されていることが好ましい。
【0013】繊維状ゾノトライトの使用量は、ポリアミド樹脂100重量部に対し、5〜90重量部、好ましくは、5〜50重量部、特に好ましくは10〜40重量部である。5重量部より少ないと、直角方向の低い線膨張係数が得られず、90重量部より多くなると線膨張係数の異方性が大きくなる傾向があらわれると同時に、成形品の外観も悪くなる。
【0014】これら(1)、(2)及び(3)成分からなるポリアミド樹脂組成物は、低い線膨張係数ならびに線膨張係数の異方性が小さい物性を有している。ここで、低い線膨張係数を有するとは、流れ方向の線膨張係数と直角方向の線膨張係数が、それぞれ3.0×10-5/℃以下、7.0×10-5/℃以下、好ましくは、2.5×10-5/℃以下、6.0×10-5/℃以下、さらに好ましくは、2.0×10-5/℃以下、5.0×10-5/℃以下である。さらに、線膨張係数の異方性については、流れ方向の線膨張係数に対する直角方向の線膨張係数の比率で示すと、3.5〜0.5、好ましくは3.0〜0.5,さらに好ましくは2.7〜0.5である。好ましいポリアミド樹脂組成物は、流れ方向の線膨張係数と直角方向の線膨張係数が、それぞれ3.0×10-5/℃以下、6.0×10-5/℃以下で、異方性が3.0〜0.5のものである。特に好ましいポリアミド樹脂組成物は、流れ方向の線膨張係数と直角方向の線膨張係数が、それぞれ2.0×10-5/℃以下、5.0×10-5/℃以下で、異方性が2.7〜0.5のものである。
【0015】本発明の組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で通常使用される様々の添加剤を添加することもできる。使用できるものとしては、紫外線吸収剤、滑材、離型剤、熱安定剤、帯電防止剤、酸化防止剤、染料及び顔料を含む着色剤等が挙げられる。
【0016】本発明におけるポリアミド樹脂組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の強化樹脂、充填剤含有樹脂等の樹脂製造方法によって容易に製造される。例えば、混練機により、ポリアミド樹脂、ガラス繊維およびミネラル系繊維とを溶融混練することにより製造できる。
【0017】本発明で得られたポリアミド樹脂組成物は、自動車部品、電気・電子部品をはじめとして広い分野で使用できる。特に、自動車部品のソレノイドバルブ材料やアンチロックブレーキシステム用のセンサー類及び関連部品の封止材として使用できる。
【0018】これらの部品は、従来からある押出成形機あるいは射出成形機を用いて容易に製造できる。例えば、本発明のポリアミド樹脂組成物からなるペレットを、目的部品の金型を装備した射出成形機を用いて成形することにより得ることができる。
【0019】
【実施例】以下、実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。なお、実施例及び比較例の物性は以下の方法で測定した。
線膨張係数;ASTM D−696に基づき、流れ方向及び直角方向の2方向について60℃から120℃までの温度範囲で線膨張係数を測定した。
測定機器 ;セイコ−電子工業(株)製 TMA/SS100【0020】本実施例及び比較例は以下に示す原材料を用いた。
(a)ナイロン66 ;宇部興産社製 2020B (b)ナイロン6 ;宇部興産社製 1015B (c)半芳香族ナイロン;宇部興産社製 8023X(ナイロン66とヘキサ メチレンテレフタラミドの共重合品) (d)66/6共重合 ;宇部興産社製 2123B(ナイロン66とナイロ ン6の共重合品) (e)ガラス繊維 ;日本電気硝子社製 ECS−03T−289H (f)ゾノトライト ;宇部化学工業社製 ゾノハイジ 平均繊維径=0.5μm アスペクト比=10 【0021】実施例1半芳香族ナイロン樹脂(66/6T)100重量部、ガラス繊維50重量部及びゾノトライト17重量部を混合し、得られた混合物を東芝機械(株)製二軸押出式混練機TEM35及びペレタイザーを用いて、シリンダー温度300〜320℃で成形用ペレットを作成した。このペレットを、110℃にて一昼夜真空乾燥し、射出成形機(住友重工(株)製SYCAP2)を用い、シリンダー温度300〜320℃、金型温度80℃で射出成形することにより試験片を成形した。この試験片を用いて性能テストを行った。その結果を表1に示す。
【0022】実施例2半芳香族ナイロン樹脂(66/6T)100重量部、ガラス繊維30重量部及びゾノトライト35重量部を混合し、以下実施例1に準じてペレットの作成及び試験片の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0023】比較例1ナイロン66樹脂100重量部に対し、ガラス繊維50重量部及びゾノトライト17重量部を混合し、以下実施例1に準じてペレットの作成及び試験片の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0024】比較例2ナイロン6樹脂100重量部、ガラス繊維50重量部及びゾノトライト17重量部を混合し、以下実施例1に準じてペレットの作成及び試験片の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0025】比較例3ナイロン66とナイロン6の共重合体(66/6共重合)100重量部に対し、ガラス繊維50重量部及びゾノトライト17重量部を混合し、以下実施例1に準じてペレットの作成及び試験片の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0026】比較例4半芳香族ナイロン樹脂(66/6T)100重量部及びガラス繊維50重量部を混合し、以下実施例1に準じてペレットの作成及び試験片の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0027】比較例5半芳香族ナイロン樹脂(66/6T)100重量部、ガラス繊維50重量部及びゾノトライト2重量部を混合し、以下実施例1に準じてペレットの作成及び試験片の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
【図1】
【0030】
【発明の効果】この組成物は、ポリアミド樹脂が本来持つ各種特性を損なうことなく、低い線膨張係数および線膨張係数の異方性が小さい物性を有しており、自動車部品、電気・電子部品をはじめ広い用途に使用できる。特に、ソレノイドバルブ材料やアンチロックブレーキシステム用のセンサー類及び関連部品の封止材として使用できる。
【0031】
【出願人】 【識別番号】000000206
【氏名又は名称】宇部興産株式会社
【出願日】 平成9年(1997)8月8日
【代理人】
【公開番号】 特開平11−60943
【公開日】 平成11年(1999)3月5日
【出願番号】 特願平9−214527