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【発明の名称】 封止用樹脂組成物およびそれを用いた半導体封止物
【発明者】 【氏名】外山 貴志

【氏名】櫛田 孝則

【氏名】原 竜三

【氏名】市川 貴之

【要約】 【課題】カーボンブラックを含有するエポキシ系の封止用樹脂組成物において、レーザーマーク性を損なうことなく耐湿信頼性を改善した封止物が得られるようにする。

【解決手段】エポキシ樹脂と、フェノール硬化剤と、無機質充填材と、硬化促進剤と、平均粒径20nm以下であって且つ水で抽出させたときの抽出液のpH値が7.0以上となるカーボンブラックと、を必須成分として含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 エポキシ樹脂と、フェノール硬化剤と、無機質充填材と、硬化促進剤と、平均粒径20nm以下であって且つ水で抽出させたときの抽出液のpH値が7.0以上となるカーボンブラックと、を必須成分として含むことを特徴とする封止用樹脂組成物。
【請求項2】 上記エポキシ樹脂と上記フェノール硬化剤の当量比が、上記フェノール樹脂のフェノール当量を分母とし且つ上記エポキシ樹脂のエポキシ当量を分子としたときの値として、1.0以上1.35以下であることを特徴とする請求項1記載の封止用樹脂組成物。
【請求項3】 上記エポキシ樹脂は、下記(化1)で示される構造式のエポキシ化合物を成分として含有していることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の封止用樹脂組成物。
【化1】

【請求項4】 上記エポキシ樹脂中に含まれる上記構造式(I)のエポキシ化合物の含有量が、20重量%以上であることを特徴とする請求項3記載の封止用樹脂組成物。
【請求項5】 上記カーボンブラックの含有量が、組成物全体に対して0.3〜5重量%の範囲であることを特徴とする請求項1乃至請求項4いずれか記載の封止用樹脂組成物。
【請求項6】 請求項1乃至5いずれか記載の封止用樹脂組成物を用いて半導体素子が封止されていることを特徴とする半導体封止物。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体等の封止に用いられる封止用樹脂組成物と、それを用いた半導体封止物に関するものである。詳しくは、カーボンブラックを含有する着色系の封止用樹脂組成物による封止物において耐湿信頼性を改善する技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、半導体等の封止に用いられる封止材料として、例えば特開平4−325543号に示されるように、エポキシ樹脂とフェノール硬化剤と無機質充填材とを含む封止用樹脂組成物が使用されている。このような封止用樹脂組成物にて封止される半導体パッケージは、熱による変色防止やレーザーマーク性付与などを目的として着色されるのが一般的であり、その着色手段として、上述の封止用樹脂組成物にカーボンブラックやアゾ系染料などの着色剤を添加するのが通常であった。
【0003】このとき懸念されるのが、着色剤を含有させることに起因して、半導体封止物の耐湿信頼性が低下するという問題である。着色剤としてアゾ系染料を用いたときに、上記のような問題があることは以前より指摘されていた。一方、カーボンブラックを用いる場合には、アゾ系染料の場合ほど大きな耐湿信頼性の低下はないものの、着色剤を含有させない場合に比べると、同様の問題があった。従って、カーボンブラックを含有する着色系の封止用樹脂組成物においては、耐湿信頼性の低下を抑えることが望まれるものであった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、カーボンブラックを含有するエポキシ系の封止用樹脂組成物において、レーザーマーク性を損なうことなく耐湿信頼性を改善した封止物が得られるようにすることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達するために、本発明者らは鋭意検討を行った結果、エポキシ系の封止用樹脂組成物において、添加する着色剤として平均粒径20nm以下であって且つ水で抽出したときの抽出液のpH値が7.0以上となるカーボンブラックを使用することにより、従来に比べて、耐湿信頼性を低下させることなく所望の着色が行えることを見いだし、本発明をするに至った。
【0006】すなわち、本発明は、エポキシ樹脂と、フェノール硬化剤と、無機質充填材と、硬化促進剤とを必須成分として含み、さらに平均粒径20nm以下であって且つ水で抽出したときの抽出液のpH値が7.0以上となるカーボンブラックを必須成分として含む封止用樹脂組成物を提供するものである。
【0007】本発明に係る封止用樹脂組成物においては、上記の如きカーボンブラックを採用したことにより、レーザーマーク性付与に必要な着色機能が確保されるとともに、本発明に規定される以外のカーボンブラック、すなわち、水で抽出したときの抽出液が酸性(pH7.0未満)となるカーボンブラックや平均粒径が20nmよりも大きいカーボンブラックを用いた場合よりも、耐湿信頼性が改善される。つまり、カーボンブラックを含有しないものと比較したときの耐湿信頼性の低下の程度が小さくて済むのである。
【0008】本発明においては、上記エポキシ樹脂と上記フェノール硬化剤との配合比率は特に限定されるものではなく、それらの当量比が、配合した上記フェノール硬化剤全体のフェノール当量を分母とし且つ配合した上記エポキシ樹脂全体のエポキシ当量を分子としたときの値において、0.6〜2.0の範囲となるように配合することができるものであるが、好ましくは1.0〜1.35となる範囲である。当該当量比が1.0未満であると、親水性の強いフェノール性水酸基が過剰となるため耐湿信頼性の観点から好ましくなく、一方1.35を超えると、余剰となるエポキシ基が未反応で多く残存して無駄になるばかりでなく、硬化物の架橋密度の低下が懸念されるからである。
【0009】また、本発明の封止用樹脂組成物では、上記エポキシ樹脂の構成成分として、下記(化2)で示される構造式のエポキシ化合物(I)を成分として含有していると好ましい。このエポキシ化合物(I)をエポキシ樹脂の成分として含有することで吸湿性が低下し耐湿信頼性が向上する。上記エポキシ化合物(I)を用いることによる耐湿信頼性の向上効果を期待するには、上記エポキシ樹脂中におけるその含有量を20重量%以上とすることが好ましい。このとき上記エポキシ樹脂の全てが上記エポキシ化合物(I)であってもよい。
【0010】
【化2】

【0011】また、本発明の封止用樹脂組成物では、上記カーボンブラックの含有量が、組成物全体に対して0.3〜5重量%の範囲であると好ましい。当該含有量が0.3重量%未満であると、十分なレーザーマーク性を付与できる程の着色機能が得られず、5重量%を超えると、相対的には従来よりも耐湿信頼性の低下が改善されるとは言え、耐湿信頼性の低下が絶対値として大きくなるからである。
【0012】本発明では、上記封止用樹脂組成物により半導体素子を封止し、これを硬化させることにより、良好なレーザーマーク性を有するとともに耐湿信頼性が改善された半導体封止物が得られる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下に、本発明を実施するに際して、当該封止用樹脂組成物における各必須成分等の使用形態をより詳細に述べる。
【0014】該封止用樹脂組成物に使用されるエポキシ樹脂としては、特に限定されず、例えばフェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ブロム含有エポキシ樹脂など、従来から公知のものを使用できる。特に、前述した化学構造式(化2)にて示されるエポキシ化合物(I)をエポキシ樹脂の成分中に20重量%以上含まれるように使用すると、耐湿信頼性を向上させるうえで好ましい。
【0015】フェノール硬化剤としては、特に限定されず、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、多官能フェノールノボラック樹脂、パラキシレン変性ノボラック樹脂、その他公知のものを用いることができる。
【0016】上記エポキシ樹脂とフェノール硬化剤との配合比率は、配合したフェノール硬化剤全体のフェノール当量換算値に対する、配合したエポキシ樹脂全体のエポキシ当量換算値の比率で、1.0〜1.35となるような配合比率の範囲内とするのがよい。
【0017】無機質充填材としては、特に限定されず、例えばアルミナ、溶融シリカ、結晶シリカ、窒化珪素、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムなど、封止材用途として従来から使用されている公知のものを使用できる。その配合量としては、樹脂組成物全体に対する含有量として60〜90重量%の範囲が好ましい。
【0018】上記硬化促進剤としては、特に限定されず、トリエチルアミン等の三級アミン、イミダゾール類、DBU(ジアザビシクロウンデセン)、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィンなど、従来からエポキシ樹脂とフェノール硬化剤との反応触媒として公知のものが使用できる。
【0019】本発明に使用される、平均粒径20nm以下であって且つ水に抽出したときの抽出液がpH7.0以上となるのカーボンブラックの配合量は、前述したように、樹脂組成物全体に対して0.3〜5重量%の範囲で配合するのがよい。すなわち、この範囲において十分なレーザーマーク性の付与ができる着色機能が得られるとともに、耐湿信頼性の劣化の程度が比較的小さくて済むからである。ここで、当該カーボンブラックは、水に抽出したときの抽出液がpH7.0以上となることが規定されているが、これは、上記抽出液が酸性ではないことを述べているのであって、抽出溶媒が水であることが重要なのではないことは言うまでもない。使用する当該カーボンブラックのpH値を調べるときには、例えば、当該カーボンブラックを水に分散させて抽出を行った後、その抽出液をpHメーター等で調べるとよいのであるが、このとき、純粋な水に対してカーボンブラックの分散性がよくないときには水とメタノールの混合液を抽出溶媒としてもよい。
【0020】該封止用樹脂組成物には、上記必須成分以外の成分として、必要に応じて、三酸化アンチモン等の難燃剤、天然カルバナ等の離型剤、シランカップリング剤などを願させても構わない。
【0021】該封止用樹脂組成物を得るには、各構成成分を配合し、ミキサー、ブレンダー等で均一に分散した後、ニーダやロールで加熱混練するとよい。必要に応じて、混練後に冷却、粉砕しても構わない。
【0022】以上のようにして得られた封止用樹脂組成物は、例えばトランスファー成形等の従来より公知の手法により、リードフレーム等の基板上に搭載された半導体素子を封止することで、良好なレーザーマーク性を有するとともに耐湿信頼性が改善された半導体パッケージが得られる。
【0023】
【実施例】以下に示すように、実施例1〜6として本発明の封止用樹脂組成物を具体的に調製するとともに、これらと比較するための封止用樹脂組成物を比較例1〜4として調製し、それらを用いてテスト素子(半導体素子)を封止した評価用サンプル(半導体パッケージ)を作製し、そのレーザーマーク性および耐湿信頼性を評価して、本発明の効果を確認した。
【0024】実施例1〜6及び比較例1〜4における封止用樹脂組成物の調製は次のように行った。すなわち、下記(表1)に示される配合のように各成分を計量し、それらをミキサーで分散させた後、さらにミクストルータで混練して、それぞれの封止用樹脂組成物を得た。
【0025】評価用サンプルは、次に示すように、トランスファー成形機を用いて、テスト素子を搭載したリードフレームを上記封止用樹脂組成物により封止することで作製した。すなわち、幅10μm厚み1μmのアルミニウムくし形回路を形成したテスト素子を用いて、これを搭載した16DIP用リードフレームをトランスファー成形機の金型間に挟み、温度175℃、注入時間12秒、加圧時間90秒、注入圧力6.86MPaの条件で上記封止用樹脂組成物を注入し成形した後、さらに175℃で6時間の条件でアフターキュアして、16DIP型評価用サンプルを作製した。
【0026】次いで、上記評価用サンプルを用いて耐湿信頼性およびレーザーマーク性の評価を行った。耐湿信頼性は、10個の評価用サンプルを用いて121℃/100%RHの条件のPCT処理を、200時間施した場合と500時間施した場合における、オープン不良となったサンプル数をカウントすることで評価した。また、レーザーマーク性は、YAGレーザーマーキング装置を用いて、上記評価用サンプルに印字を施し、その印字した文字が目視によりはっきりと認識できるか否かにより評価した。
【0027】ここで、表1の配合成分のうち、次に示す成分の詳細は以下の通り:・エポキシ化合物(I)(大日本インキ(株)社製、HP7200、エポキシ当量265)
・o−クレゾールノボラックエポキシ(住友化学工業(株)社製、ESCN195XL、エポキシ当量200)
・ブロム化エポキシ樹脂(住友化学工業(株)社製、ESB400、エポキシ当量400)
・フェノールノボラック硬化剤(荒川化学(株)社製、タノマール752、フェノール当量105)
・カーボンブラックA(三菱化学(株)社製、#650、平均粒径18nm、pH8.0)
・カーボンブラックB(三菱化学(株)社製、#40、平均粒径24nm、pH8.0)
・カーボンブラックC(三菱化学(株)社製、MA100、平均粒径22nm、pH3.5)
なお、上記カーボンブラックA,B,CのpH値は、当該カーボンブラックの0.1gを水とメタノールの混合液100mlに加えて、95℃で15時間抽出し、その抽出液をpHメーターで測定することにより確認した。
【0028】
【表1】

【0029】表1の結果から、平均粒径20nm以下であって且つ水で抽出したときの抽出液のpH値が7.0以上となるカーボンブラックAを用いた実施例1〜6では、全てレーザーマーク性が良好であって、平均粒径が20nmを超えるカーボンブラックBや水で抽出したときの抽出液のpH値が7.0未満となるカーボンブラックCを用いた比較例1〜3と比較して、耐湿信頼性の低下が相対的に改善されていることがわかる。ここで、比較例4は、実施例1においてカーボンブラックを含まないようにした配合のブランク実験例であって、カーボンブラックを含めたことによる耐湿信頼性の低下の程度はこの比較例4との比較により考察することができる。なお、比較例4にあっては、カーボンブラックを含まないことから、当然ながらレーザーマーク性は得られていない。
【0030】評価結果をより詳細に考察してみる。例えば、実施例1と比較例1および比較例2との対応関係に着目してみると、これらは本発明のカーボンブラックを用いているか否か、という対応関係にあるのであるが、カーボンブラックAを用いた実施例1は、カーボンブラックB、Cを用いた比較例1、2のいずれと比べても耐湿信頼性評価において不良発生数が少なくなっている。このことより、本発明に規定するカーボンブラックAが、耐湿信頼性の低下を改善するのに有効であることがわかる。
【0031】また、実施例1と実施例2、実施例3と実施例4、5、並びに比較例1および比較例3と比較例2の対応関係について着目してみると、これらはいずれもエポキシ樹脂の成分としてエポキシ化合物(I)を含むか否か、という対応関係にあるのであるが、いずれの対応関係においてもエポキシ化合物(I)を含む場合の方が耐湿信頼性評価において不良発生数が少なくなっている。このことより、エポキシ樹脂の成分としてエポキシ化合物(I)を含有させることが、耐湿信頼性の低下を改善するのに有効であることがわかる。
【0032】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の封止用樹脂組成物を用いて封止した封止物では、良好なレーザーマーク性が得られるとともに、耐湿信頼性が改善される。
【出願人】 【識別番号】000005832
【氏名又は名称】松下電工株式会社
【出願日】 平成9年(1997)8月27日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 成示 (外1名)
【公開番号】 特開平11−60913
【公開日】 平成11年(1999)3月5日
【出願番号】 特願平9−231602