| 【発明の名称】 |
カーボンブラックとその製造法およびゴム組成物 |
| 【発明者】 |
【氏名】飯島 孝
【氏名】河野 太郎
【氏名】佐々木 健了
【氏名】向井 幸一郎
【氏名】澤 泰久
【氏名】金井 孝陽
【氏名】栗原 正樹
【氏名】太田 裕治
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| 【要約】 |
【課題】タイヤトレッド用に好適な、耐磨耗性の改善と燃費特性の改善を同時に満たすカーボンブラックとその製造方法、並びに、それを用いたゴム組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】CTABが80(m2/g)以上、圧縮DBPが80(mL/100g)以上のハード系領域に属し、且つ、(1)酸素含有量(O;重量%);0.5×10-3 ≦O/CTAB≦1.0×10-2(2)Na2CO3で測定した強酸性基濃度(SA;meq/g);SA/CTAB ≦1.0×10-4(3)塩基性官能基濃度(B;meq/g);2.5×10-4≦B/CTAB≦1.5×10-3(4)物理吸着ゴム量(A);1.6×10-4≦A≦1.0×10-3の選択的特性を有するカーボンブラック、及び、カーボンブラックを酸化処理した後に非酸化性雰囲気中で600℃以上の温度で熱処理するカーボンブラックの製造方法、並びにゴム100重量部に対し上記カーボンブラックを20〜100重量部配合してなるゴム組成物。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 CTABが80(m2/g)以上、圧縮DBPが80(mL/100g)以上のハード系領域に属し、且つ、(1)酸素含有量(O;重量%);1.0×10-3≦O/CTAB≦1.0×10-2(2)Na2CO3で測定した強酸性基濃度(SA;meq/g);SA/CTAB≦1.0×10-4(3)塩基性官能基濃度(B;meq/g);2.5×10-4≦B/CTAB≦1.5×10-3(4)物理吸着ゴム量(A);1.6×10-4≦A≦1.0×10-3の選択的特性を有するカーボンブラック。 【請求項2】 酸化処理することにより酸素含有量を1.8×10-2≦O/CTABに高めたカーボンブラックを、非酸化性雰囲気中で1000℃以上1500℃以下の温度で熱処理することを特徴とする請求項1に記載したカーボンブラックの製造方法。 【請求項3】 酸化処理した後に非酸化性雰囲気中で熱処理することによる酸素減少量(ΔO)が、1.0×10-2≦ΔO/CTABであることを特徴とする請求項2記載のカーボンブラックの製造方法。 【請求項4】 ゴム100重量部に対し、請求項1記載のカーボンブラックを20〜100重量部配合してなることを特徴とするゴム組成物。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、カーボンブラックとゴム組成物に関し、特に優れたグリップ力と低燃費特性とを兼ね備えたタイヤトレッド用として好適なカーボンブラックとその製造法およびゴム組成物に関する。 【0002】 【従来の技術】近年の自動車における走行性能の高性能化と省資源・低燃費化の進展に伴い、タイヤの性能においても種々の特性の高度なバランスが要求されている。その中でも特に、路面とのグリップ力の向上、タイヤ摩耗の低減、そして、走行時の燃費特性(タイヤの転がり抵抗)改善といった複数の特性を同時に兼ね備えたタイヤトレッドの研究開発が盛んに進められている。これらの特性に対し、タイヤトレッドの構成要素の中で、カーボンブラックの果たす役割は大きく、上記の特性を改善する新規カーボンブラックの開発が急務の課題となっている。 【0003】カーボンブラックを配合したゴムは飛躍的にその機械的強度を増すことは既によく知られたことであるが、このカーボンブラックのゴム補強性に対する支配的要因は、形態と表面活性の2種に大別される。具体的には以下のような因子が一般的に知られている(Carbon Black, 2nd Edition(1993), Edited by J. B.Donnet, R.C. Bansal, M.J. Wang, MARCEL DEKKER, INC.、カーボンブラック便覧第4章、カーボンブラック協会編、発行1961年(株)図書出版)。 【0004】(1)形態一次粒子径とその統計的分布、一次粒子の集合体であるアグリゲートに関する枝発達の程度、アグリゲートの形、遠心沈降を利用したアグリゲート径とその分布、粒子径に相当する各種吸着種を用いた比表面積値など。 (2)表面活性カーボンブラック表面におけるゴム分子の物理吸着や、カーボンブラック表面に存在する化学的反応性を有した官能基とゴム分子、ゴム分子ラジカルとの化学的結合など、表面におけるゴム分子の物理化学的吸着が本質的に重要と考えられている。その指標として、活性水素と、カルボン酸、キノン型酸素、水酸基、ラクトンなどの含酸素官能基が報告されている。 【0005】表面活性に関しては、永年様々な手法を用いてカーボンブラックとゴムとの相互作用の定量的指標が探索されてきたが、未だ、決着が付いていないのが現状である。従来、前者の形態要因とゴム物性との関係を中心に研究開発が進められ、耐摩耗性などにおいて顕著な改善がなされてきた(第33回ゴム技術シンポジウムテキスト、44〜61頁、1994年、社団法人 日本ゴム協会 研究部会)。即ち、耐摩耗性の改善には、カーボンブラックの配合量を多くする、一次粒子径を小さくする(比表面積を大きくする)、ストラクチャーを発達させる(DBP吸油量、圧縮DBP吸油量を多くする)、アグリゲート径分布をシャープにするなどの技術が開発された。 【0006】他方、タイヤのグリップ性能の向上(一般に10〜100Hzにおける0℃〜20℃における損失係数tanδが増加するとグリップ性能が向上することが知られている)や走行時のタイヤ燃費特性の改善(60℃における損失係数tanδが低下すると走行時のタイヤの燃費特性が改善することが知られている)にもカーボンブラックの改善効果が大きく寄与している。即ち、グリップ力を向上させるためには、カーボンブラックの配合量を多くする、一次粒子径を小さくする、ストラクチャーの発達の程度を抑制することなどが有効と知られている。また、タイヤの燃費特性を改善するには、カーボンブラックの配合量を少なくする、一次粒子径を大きくする、ストラクチャーを発達させることなどが効果的であることが知られている。 【0007】上述のように、各ゴム特性を独立に改善することは可能であるが、耐摩耗性とグリップ力と燃費特性とを同時に改善することは、カーボンブラックの形態の最適化のみでは原理的に限界がある。更に、一次粒子の微粒子化に関しては、カーボンブラックの混練性、分散性の低下というゴム加工上の問題もあり、現状では、各種ゴム特性の重要度配分、加工性の両側面からカーボンブラックの形態に関して最適設計がなされている。さて、このような形態によるゴム物性の改善は、形態制御のための製造条件変更により僅かに変動するとしても、ほぼ一定の表面活性を持ったカーボンブラックを対象としてその構造を最適化しているものである。 【0008】それに対して、積極的に表面活性を制御したカーボンブラックを用いてゴム物性を改善しようという研究開発が、近年精力的に進められている。表面活性の制御手段として表面に存在する含酸素官能基に着目し、従来の形態制御と表面活性の組み合わせによるゴム物性の改善が報告されている。例えば、特開平7−330958号公報ではオゾンによる酸化処理により表面のカルボキシル基量を通常よりも増加させた後、非酸化性雰囲気下の熱処理によりカルボキシル基量を制御したカーボンブラックを調整し、油展スチレンブタジエンゴム(SBR1712)配合系において、耐摩耗性改善とtanδ(60℃)の増加を達成している。 【0009】また、本発明者等も、カーボンブラックに含まれる酸素量と水素量とに着目した表面活性の改善を検討した結果、形態の最適化との相乗効果により、H/Oを大きくすることにより表面活性を高めることに成功し、高水準の耐摩耗性を維持しながら、非常に優れた低燃費性(60℃における損失係数tanδを低減)を達成した(特願平8-192509号)。 【0010】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述のような含酸素官能基に着目した先行技術においては、表面特性による燃費特性の改善の程度が十分な水準ではなく、また、表面特性の改質が耐摩耗性改善に寄与することは殆どなかった。したがって、かかる現状から本発明の課題は、タイヤトレッド用途に好適な、耐摩耗性の改善と燃費特性の改善を同時に満たす新規なカーボンブラックとその製造方法、並びに、それを用いたゴム組成物を提供することを目的とするものである。 【0011】 【課題を解決するための手段】本発明者等は、この課題を解決するためにカーボンブラックの表面構造によるゴムの結合状態の制御を鋭意検討した結果、カーボンブラックに含まれる酸素成分と強酸性官能基濃度がゴムとの結合において重要な役割を担うこと、カーボンブラック表面に存在する塩基性官能基濃度と、カーボンブラック表面におけるゴムの物理的吸着能に相当する指標の2種の新規指標がゴム物性に対して良好な相関を示すことを見出し、それらの最適化により耐摩耗性改善と燃費特性改善を同時に満たすことに成功し、本発明の完成に至ったものである。 【0012】即ち、本発明のカーボンブラックは、CTABが80(m2/g)以上、圧縮DBPが80(mL/100g)以上のハード系領域に属し、且つ、(1)酸素含有量(O;重量%);1.0×10-3 ≦O/CTAB≦1.0×10-2(2)Na2CO3で測定した強酸性基濃度(SA;meq/g);SA/CTAB ≦1.0×10-4(3)塩基性官能基濃度(B;meq/g);2.5×10-4 ≦B/CTAB≦1.5×10-3(4)物理吸着ゴム量(A);1.6×10-4≦A≦1.0×10-3の選択的特性を有することを特徴とするものである。 【0013】また、本発明は、酸化処理することにより酸素含有量を1.8×10-2≦O/CTABに高めたカーボンブラックを、非酸化性雰囲気中で1000℃以上1500℃以下の温度で熱処理することを特徴とする上記に記載したカーボンブラックの製造方法を提供するものである。さらに、本発明は、酸化処理した後に非酸化性雰囲気中で熱処理することによる酸素減少量(ΔO)が、1.0×10-2≦ΔO/CTABであることを特徴とする上記カーボンブラックの製造方法を提供するものである。 【0014】上記した本発明のカーボンブラックは、CTAB、圧縮DBPを最適化したハード系カーボンブラックであって、酸性の含酸素官能基を減少させ、従って、酸素含有量も一定水準値より少なくし、特に強酸性官能基量を減少させることにより、ゴムに対するカーボンブラックの表面活性の制御範囲を拡大し得ることを見出し、表面活性を定量的に表す具体的指標として塩基性官能基濃度と物理吸着ゴム量という新規指標を構築し、酸素量、強酸性官能基量、塩基性官能基量と物理吸着ゴム量とを同時に制御することにより、耐摩耗性を改善し同時に燃費特性を改善することに成功し本発明の完成に至った。 【0015】以下本発明の内容を詳細に説明する。本発明において第一に重要なポイントは、カーボンブラック中に含まれる酸素量と強酸性官能基の制御により表面活性の強さを制御することが可能であることを見出し、更に、表面活性の強さを定量的に表す指標として、カーボンブラック表面の塩基性官能基濃度が重要な指標であることを新規に見出し、その最適化を達成したことである。以下に、カーボンブラック表面の酸素によるゴムとの相互作用制御の推定機構を述べる。本発明のゴム物性改善において本質的に重要な役割を担うカーボンブラック中の酸素は、ゴム分子と直接接触し界面を構成するようなカーボンブラック表面に存在する酸素であって、ゴム分子が到達し得ないようなカーボンブラック表面に存在するミクロポアの内側やカーボンブラック内部の酸素は物性改善には寄与しない。従って本発明の効果をより顕著に発現させるためには、酸素を表面に濃縮させることが好ましい。 【0016】カーボンブラック表面に存在する酸素は、酸性官能基、キノン型酸素、エーテル酸素などの結合状態で存在すると考えられている(前出Carbon Black, Chapter 4、或いは、カーボンブラック便覧第4章、カーボンブラック協会編、発行1961年(株)図書出版)。カルボキシル基やヒドロキシル基などの酸性官能基は、ジエン系ゴムとの化学的結合に関与するとの報告もあるが、本発明者が検討した結果では、酸性官能基の持つプロトン供与性が加硫遅延をもたらすために、酸性官能基によるゴム物性改善は認められず、加硫遅延からむしろ実際的応用には好ましくないとい結論を得ている。特に加硫遅延に顕著な効果をもたらすのがカルボキシル基などの強酸性官能基で、鋭意検討した結果、Na2CO3で測定した強酸性基濃度が加硫遅延などの効果とよい相関関係を持つことが判明し、カーボンブラックに含まれる酸素量とNa2CO3で測定した強酸性基濃度とを併せてその上限を規定することで、本発明において酸性官能基濃度に関して、主に官能基量の上限についてその分布を規定している。 【0017】更に、カルボキシル基やヒドロキシル基酸性官能基は電子分布に偏りを生じ、永久双極子モーメントを発生する。そうするといわゆるVan der Waals力は低下するため、酸素の存在がカーボンブラック表面でのゴムの物理的吸着エネルギーの低下を招くことになる。即ち、酸性官能基の減少は加硫遅延の防止ばかりでなく、ゴムの物理的吸着能の増加というゴム補強性において重要な表面活性の増加をもたらすことが推察される。上記した酸性官能基量を減少させるという観点から、Na2CO3で計量される強酸性官能基濃度と酸素含有量を最適化した結果が、本発明の規定である、(1)酸素含有量(O;重量%);1.0×10-3≦O/CTAB≦1.0×10-2(2)Na2CO3で測定した強酸性基濃度(SA;meq/g);SA/CTAB ≦1.0×10-4である。 【0018】他方、キノン型酸素とエーテル型酸素は、縮合多環芳香族中に共存し電子共役構造を取り得る場合に、キノン型酸素がプロトンの吸着能を示し、いわゆるブレンステッド酸の意味での弱い塩基性を発現することが知られている。この酸素含有構造による塩基性発現の機構は、”pyron-like構造”に由来するとして一般に認められてい(Boehm H.P., and Voll M., Carbon, vol.8, page 227, 1970)。従って、カーボンブラック表面に電子共役構造を取るキノン型酸素とエーテル型酸素とが多く存在することにより、水素を介したゴム分子の吸着を生じ易くなり、その結果、カーボンブラック表面とゴムとの相互作用は強くなると推定される。 【0019】ゴムの吸着増加の本質が”pyron-like構造”によるプロトン吸着能、即ち、塩基性にあることから、ゴム物性改善に直接寄与する指標として、カーボンブラックの塩基性官能基量が重要な指標であることが示唆される。本発明において鋭意検討した結果、”pyron-like構造”のキノン型酸素が塩酸と反応し塩酸塩を形成することを利用した塩基性官能基量の定量値が、ゴムの補強性改善と良好な相関関係にあることを見出した。 【0020】ここで本発明のカーボンブラックの規定に用いた各種の特性指標は、下記の方法により測定されるものとする; (1)CTAB(セチルテトラアンモニウムブロマイド);ASTM D3765の方法に準拠する。 (2)圧縮DBP(24M4DBP);ASTM D3493の方法に準拠する。 (3)カーボンブラック中の酸素の含有量;測定には、FISONS Instruments社製 EA 1108 Elemental Analyzer を使用した。酸素は”Unterzaucher Modified”法に基づき測定した。カーボンブラック中の酸素は、触媒下での高温熱分解により完全にCOへ変換され、COガス濃度として熱伝導度検出器により検出される。元素分析測定に用いるサンプルは、カーボンブラック表面に吸着した水分の影響を除去する目的で、予め100℃で2時間以上真空乾燥したものを試験に供した。 【0021】(4)塩基性官能基濃度予め110℃で30分以上真空乾燥したカーボンブラック約2gを精秤し100mLの三角フラスコへ入れる。そこへ1/100規定HCl溶液を50mL注入し、カーボンブラックを充分に分散させ、密栓状態で2時間振とうする。振とう後の溶液を加圧濾過し、カーボンブラックと反応後のHCl溶液とに分離する。反応後のHCl溶液を10mLとり、1/100規定のNaOH溶液で中和滴定し、滴下したNaOH溶液量からカーボンブラック1g当たりのHCl吸着量を算出し、これを塩基性官能基濃度とする。 【0022】この塩基性官能基濃度を用いることにより、従来不明確であったカーボンブラック表面の表面活性、特に、ゴムに対する吸着能を定量化することが可能になった。鋭意検討した結果、塩基性官能基濃度B(meq/g)が、2.5×10-4≦B/CTAB≦1.5×10-3 が最適な規定範囲であることを見出した。 2.5×10-4≧B/CTABでは塩基性官能基濃度が少なくゴム物性改善に必要なゴムの吸着能が得られないので不適当である。反対に、B/CTAB≧1.5×10-3では、塩基性官能基濃度が高すぎるためにゴムの吸着が強くなり過ぎ、その結果、カーボンブラックの混練性が著しく低下し、実機での混練で十分な分散が得られなくなり、ゴム物性の低下を招くので不適当である。また、酸素含有量(O;重量%)が、1.0×10-3 ≧O/CTABの場合には、塩基性を発現するために必要なエーテル型酸素、キノン型酸素量の存在量が少なすぎるために、ゴムの吸着能力が低下し、充分なゴム補強性を発現できないので、好ましくない。 【0023】さて、本発明において第二に重要なポイントは、酸素含有量、強酸性官能基濃度、塩基性官能基濃度だけの制御では必ずしもゴム物性は改善せず、酸素含有量、強酸性官能基濃度、塩基性官能基濃度の制御はゴム物性改善のための必要条件であることを見抜き、鋭意検討を重ねた結果、カーボンブラックのゴムに対する表面活性を規定するための重要な指標である物理吸着ゴム量(A)を新規に導入し、酸素含有量、強酸性官能基濃度、塩基性官能基濃度の規定と併せて、物理吸着ゴム量を規定することにより初めてゴム物性改善に対して必要十分な条件を見出すことに成功したことである。 【0024】酸素含有量、強酸性官能基濃度、塩基性官能基濃度以外にも、例えば、表面のミクロな凹凸など物理吸着能を支配する様々な因子が多数存在し、単に酸素含有量、強酸性官能基濃度、塩基性官能基濃度を制御しても、他の因子により物理吸着能は変化する。これら全ての因子のゴム物性に対する効果を解明し各々を規定することは実際上不可能であるから、そこで、物理吸着能自体を直接定量的に評価する指標を導入し、この指標により、最適な表面状態を規定しようとするものである。本発明で使用する物理吸着ゴム量の測定方法は以下の通りである。 【0025】(5)物理吸着ゴム量(A)の測定方法;スチレンブタジエンゴム(日本合成ゴム(株)社製SBR1500)1gをシクロヘキサン100mLに溶解させゴム溶液を調整する。100℃で30分以上真空乾燥したカーボンブラックを1g精秤し、すばやく、上記ゴム溶液に入れ十分にカーボンブラックが分散するように撹拌する。容器には、100mLのPyrexガラス製サンプル瓶(ネジ栓タイプ)を用いた。撹拌後、15時間経過した後、カーボンブラック分散ゴム溶液を遠心分離器を用いて分離すると、表面にゴムが付着したカーボンブラックを溶液から分離抽出することができる。 【0026】さらに、分離抽出したカーボンブラックをオルソジクロロベンゼン100mL中に投入し、170℃で20時間処理する。この過程により、ゴムに対して溶解力の強いオルソジクロロベンゼンを用いても抽出することができないような、カーボンブラック表面にしっかりと吸着(物理的に吸着)されたゴムが付着したカーボンブラックを分離することができる。予め精秤したガラス繊維製の濾紙(重量w1/g)で分離したカーボンブラックを濾過する。ガラス繊維濾紙と濾過したカーボンブラックとを120℃で5時間以上真空乾燥し、その重量(w2/g)を精秤する。物理吸着ゴム量(A)は、次式により求められる; A=(w2-w1-1)/CTAB【0027】物理吸着ゴム量は、オルソジクロロベンゼンによる溶解力を尺度に用い、カーボンブラック表面におけるゴムの物理吸着能を定量化したものである。形態の効果を勘案するために、CTABで除し単位面積当たりに換算ししている。物理吸着ゴム量が多ければ、それだけカーボンブラック表面のゴムに対する物理吸着能が高いことを表す。 【0028】本発明における耐摩耗性改善と燃費特性改善の本質的機構は、カーボンブラックの表面におけるゴムの吸着エネルギーの最適化にあると推定している。カーボンブラック表面におけるゴムの吸着は、Van der Waals力による物理吸着と、化学結合による化学吸着の2種類に大別される。物理吸着と化学吸着の違いは、その吸着機構から明らかなように吸着エネルギーの違いであり、物理吸着の方が、化学吸着に比較してその吸着エネルギーは弱い。この特性を活用し、化学吸着に対して物理吸着能を高めることにより、吸着エネルギーを適度に低下させる。すると、60℃におけるゴム組成物の微小変形の場合には、マトリックスゴムが軟化しているために変形により発生する応力が比較的弱く、変形に対してゴム分子はカーボンブラック表面を滑らず、従って界面における熱の発生が小さくtanδを小さくできる。 【0029】他方、大変形時には吸着エネルギーが適度に小さいためにゴムがカーボンブラック表面を容易に滑って応力集中を防ぐ。そのため亀裂伝播がカーボンブラック表面で停止し、従って、摩耗特性、特に、高スリップ率摩耗のような過酷な条件での摩耗特性を改善することができる。従って、酸素含有量が多くO/CTAB>1.0×10-2の場合、強酸性基濃度が高くSA/CTAB >1.0×10-4の場合、塩基性官能基濃度が小さく B/CTAB<2.5×10-4の場合、物理吸着ゴム量が少なくA<1.6×10-4の場合には、何れも、物理吸着能が弱いために、耐摩耗性改善の効果が現れず、また、燃費特性の改善効果も認められない。 【0030】本発明において第三に重要なポイントは、このような表面の吸着状態の制御によるtanδの改善は、カーボンブラックの形態に関する最適化と相乗してはじめて、その特性が発揮される。即ち、基本的に高い水準の耐摩耗性を発現するには、微粒子化と高ストラクチャー化が必須であり、このような形態に関する制限に、上記の表面活性が重畳されてはじめて耐摩耗性とグリップ力と燃費特性の向上が達成される。即ち、CTABが80m2/g以上、圧縮DBPが80mL/100g以上の双方を同時に満たさなければ、基本的に高水準の耐摩耗性は発現されない。 【0031】本発明において第4に重要なポイントは、製造方法の提供にある。不活性雰囲気、水素雰囲気など非酸化性雰囲気において市販のカーボンブラックを熱処理することにより、酸素含有量、強酸性官能基濃度を本発明における規定量に制御可能である。しかしながら、必ずしもその表面改質によりゴム物性の改善は認められない。なぜならば、塩基性官能基濃度と物理吸着能とが単なる非酸化性雰囲気中での熱処理では増加しないからである。本発明において重要な点は、塩基性官能基濃度と物理吸着能を増加させる方法として、酸化処理を施してカーボンブラック表面の酸素含有官能基量を増加させ、酸素含有量を1.8×10-2≦O/CTABに高めたカーボンブラックを非酸化性雰囲気中で1000℃以上1500℃以下の温度で熱処理する方法であって、且つ、非酸化性雰囲気中で熱処理する行程において、カーボンブラックの酸素含有量の減少量(ΔO)がΔO/CTAB≧1.0×10-2を満たすことを見出したことである。 【0032】酸化処理によりカーボンブラック表面にカルボキシル基、ヒドロキシル基などの酸性官能基、キノン型酸素、エーテル型酸素など含酸素官能基が付与される。これらの酸素は熱安定性が各々異なり、非酸化性雰囲気中1000℃までに酸性官能基は殆どが二酸化炭素、一酸化炭素の形で熱分解除去される。1000℃以上で比較的安定なのがキノン型酸素とエーテル型酸素であり、従って、1000℃以上での熱処理により、主にゴム物性に悪影響を及ぼす酸性の強い官能基が除去され、塩基性を発現するpyron-like構造だけが選択的に残されることになり、本発明に規定される酸素含有量、強酸性官能基濃度、塩基性官能基濃度に関する条件が満たされる。1500℃を越える温度の熱処理では、炭化反応が進行するためにカーボンブラックの表面活性の基本的因子の一つである水素量が減少し、ゴム補強性が低下するという問題を生じる。 【0033】更に、この製造方法の特徴は、単に酸素含有量、強酸性官能基濃度、塩基性官能基濃度に関する条件を満たしただけでは必ずしも達成されない物理吸着ゴム量を高めることにある。酸素含有量、強酸性官能基濃度、塩基性官能基濃度に関する条件に加えて物理吸着ゴム量に関する条件を満たしてはじめて本願発明の効果が発揮される。物理吸着ゴムの増加は、酸性官能基の除去して塩基性官能基のみを表面に残し表面活性を高めると同時に、官能基除去に伴い発生するカーボンブラック表面のラジカル、表面の微細な凹凸が、物理吸着ゴム量を増加させるものと推察される。そして、非酸化性雰囲気中での熱処理により除去される酸素量が一定水準以上でなければ、物理吸着能の増加効果が不十分となる。この一定水準値が、酸素含有量の減少量(ΔO)がΔO/CTAB≧1.0×10-2で規定されるものである。O/CTAB<1.0×10-2ではゴム物性の改善効果が不十分である。また、1000℃未満の熱処理では、ゴム物性に悪影響を及ぼす酸性の強い官能基が除去されないために、ゴム物性が十分に改善されない。 【0034】本発明において酸化処理の方法は特に限定されるものではない。本質的に重要なことは酸化処理により含酸素官能基をカーボンブラック表面に付加することであり、酸化処理後の酸素含有量が、O/CTAB≧1.8×10-2であれば酸化処理の方法は特に限定されないが、例えば、以下の方法を適用することができる。 (1)硝酸、過酸化水素などの酸化剤による湿式の酸化、(2)オゾンによる酸化など乾式の酸化(3)ファーネス法においてカーボンブラックを製造する際に、反応炉中へ水、或いは、水蒸気を吹き込んで、水性ガス化反応によりカーボンブラック表面を酸化し酸素官能基を付与することができる。 (1)、(2)の場合、処理前のカーボンブラックに関しては特に制限はないが、例示するならば、ファーネスブラック(オイルファーネスブラック、及び、ガスファーネスブラックを含む)、或いは、チャンネルブラックなどを使用することができる。非酸化性雰囲気は、例えば、窒素、アルゴンなどの不活性ガス、水素などの還元性ガス、両者の混合ガスなどの雰囲気を例示することができる。 【0035】本願発明において規定されるカーボンブラックは、常法に従って、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、スチレンブタジエン共重合体等のジエン系ゴム、天然ゴムの中の少なくとも一種以上のゴムに配合される。また、本発明のゴム組成物には、タイヤ製造の際、通常用いられている配合剤、例示するならば、硫黄、加硫促進剤、加硫促進助剤、老化防止材等を適宜配合することができる。カーボンブラックの配合比率はゴム100重量部に対して20〜100重量部とする。20重量部未満の配合量だと、十分な耐摩耗性を得ることができず、一方、100重量部を越えると組成物の粘度が増加し過ぎるために、十分な混練をすることができず、その結果、ゴム特性が低下してしまう。 【0036】 【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態として、本発明において規定されるカーボンブラック、及びゴム組成物のゴム物性の改善例を比較例と対比させながら具体的に説明するが、本発明がこの例に制限されるものではない。 【0037】 【実施例】下記実施例で使用したゴム物性評価方法は下記により行った。 (1)300%弾性率の評価JIS K6251「加硫ゴムの引張試験方法」に準拠して行った。尚、得られた結果は標準サンプルの結果を100とした場合の指数(index)として表示した。即ち、(試験ゴムの弾性率/標準サンプルの弾性率)×100である。指数が100よりも大きい方が弾性率が大きいことを示す。 【0038】(2)tanδ60℃の評価グリップ力評価のための0℃におけるtanδ、燃費特性評価のための60℃におけるtanδは、東洋精機社製粘弾性スペクトロメーターを用いて測定した。 1)装置;東洋精機社製 粘弾性スペクトロメーター2)サンプル;長さ20mm、幅5mm、厚さ2mm3)測定温度;60℃4)周波数;10Hz5)初期伸張;10%6)歪み振幅;2%尚、得られた結果は標準サンプルの結果を100とした場合の指数(index)として表示した。即ち、(試験ゴムのtanδ/標準サンプルのtanδ)×100である。指数が100よりも大きい方がtanδの値が大きいことを示す。 【0039】(3)摩耗特性の評価摩耗特性の評価は、岩本製作所社製ランボーン摩耗試験機を用いてスリップ率60%の条件で下記の通りで行った。 1)装置;岩本製作所社製 単連ランボーン摩耗試験機2)外径305mm、粒GC、粒度80、結合度K3)サンプル;外径49mm、内径23mm、幅5mm4)砂;カーボランダム90メッシュ5)条件;サンプル速度50.8m/分(330rpm)、落砂量 15g/分尚、得られた結果は標準サンプルの結果を100とした場合の指数(index)として表示した。即ち、(標準サンプルの摩耗量/試験ゴムの摩耗量)×100である。指数が100よりも大きい方が耐摩耗性に優れることを示す。 【0040】実施例1〜3、比較例1〜3オイルファーネス法により製造したカーボンブラック(表2中の標準サンプル)を、硝酸を用いて以下の要領で酸化処理した。標準サンプルを150〜200g計量し100mLの三角フラスコに入れ、約1000gの50%の硝酸水を注ぎ入れ、70℃に調整したウォーターバス中で撹拌しながら約2時間反応させる。反応終了後、過剰の蒸留水で洗浄水のpHが6程度になるまで洗浄し、110℃の温風乾燥機で20時間以上乾燥させて酸化処理を終了とした。酸化処理後のカーボンブラックは、更に、炭化炉を用いて、窒素雰囲気下で800℃〜1400℃の各温度で約20分間処理し、室温へ冷却後取り出し、カーボンブラックの各種物性値を評価した。次いで、各カーボンブラックを表1に示すゴム配合に従って、東洋精機社製のバンバリー型ラボプラストミル(B75)と西本工機(株)社製二軸ロール(E90)を用いて、ゴム組成物を混練した。 【0041】 【表1】
【0042】その後、各種ゴム特性評価に応じて、金型にて加硫成型後試験に供した。このときの標準サンプル、並びに、硝酸で酸化処理後のカーボンブラックのコロイダル、元素分析値と、試験に供した熱処理温度の異なる各試作品のコロイダル、元素分析、並びにゴム物性値等の測定結果を表2にまとめて示す。 【0043】 【表2】
【0044】実施例4〜6、比較例4〜5実施例1〜3に使用した標準サンプルを用い、以下の要領で過酸化水素で酸化処理した。標準サンプルを150〜200g計量し100mLの三角フラスコに入れ、約1000gの30%の過酸化水素水を注ぎ入れ、室温に調整したウォーターバス中で撹拌しながら約2時間反応させる。反応終了後、過剰の蒸留水で洗浄水のpHが6程度になるまで洗浄し、110℃の温風乾燥機で20時間以上乾燥させて酸化処理を終了とした。実施例1〜5と同様の方法でその後の熱処理を実施し、実施例1〜3と同一条件でカーボンブラック特性値評価とゴム試験に供した。このときの標準サンプル、並びに、過酸化水素で酸化処理後のカーボンブラックのコロイダル、元素分析値と、試験に供した熱処理温度の異なる各試作品のコロイダル、元素分析、並びにゴム物性値等の測定結果を表3にまとめて示す。 【0045】 【表3】
【0046】表2、表3の結果から、本発明における酸素含有量、強酸性官能基濃度、塩基性官能基濃度、物理吸着ゴム量の規定を満たすカーボンブラックであれば、酸化剤の種類によらず、耐摩耗性、燃費特性共に良好な特性を示すことが分かる。また、本発明において規定される製造方法により製造されたカーボンブラックと、単に、窒素雰囲気で熱処理したカーボンブラック(比較例3)とを比較すると、比較例3では、酸素含有量、強酸性官能基濃度に関しては本発明の規定を満たすが、塩基性官能基濃度と物理吸着ゴム量が本発明の規定値よりも少なく、ゴム特性は殆ど改善されていないことが判る。 【0047】 【発明の効果】以上、説明したことから明らかなように、本発明で規定される特性を有するカーボンブラックを用いたゴム組成物をタイヤトレッドに適用することにより、タイヤトレッドにおいて重要な特性である耐摩耗性と燃費特性を同時に大幅に改善することができる。更に、本発明において規定される方法で製造したカーボンブラックは物理吸着能が大幅に増加し、ゴム特性を大幅に改善する。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000006644 【氏名又は名称】新日鐵化学株式会社 【識別番号】000006655 【氏名又は名称】新日本製鐵株式会社 【識別番号】597114915 【氏名又は名称】新日化カーボン株式会社
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| 【出願日】 |
平成9年(1997)8月12日 |
| 【代理人】 |
【弁理士】 【氏名又は名称】藤本 博光 (外1名)
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| 【公開番号】 |
特開平11−60800 |
| 【公開日】 |
平成11年(1999)3月5日 |
| 【出願番号】 |
特願平9−217775 |
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