| 【発明の名称】 |
多孔質フィルム並びにその製造と用途 |
| 【発明者】 |
【氏名】山村 隆
【氏名】山本 一成
【氏名】市川 智昭
【氏名】能見 俊祐
【氏名】藤田 茂
【氏名】岸井 豊
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| 【要約】 |
【課題】高強度、高比表面積、高細孔容積を有すると共に、大きい曲路率を有し、しかも、イオン透過性にすぐれ、更に、高速充放電特性にすぐれており、種々の電池、特に、電気自動車用バッテリーのセパレータとして好適に用いることができる多孔質フィルムとその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明による多孔質フィルムは、重量平均分子量が5×105 以上の超高分子量ポリオレフィン樹脂か、又はこの超高分子量ポリオレフィン樹脂を少なくとも15重量%と重量平均分子量が5×105 未満のポリオレフィン樹脂とからなる超高分子量ポリオレフィン樹脂組成物からなり、比表面積が100m2 /g以上、細孔容積が0.5cm3 /g以上、貫通孔の平均径が0.03μm以下、最大径が0.1μm以下であり、三次元網状構造を構成するフィブリル繊維の平均径が0.01〜0.1μm、最大径が0.2μm以下、平均曲路率が2.5倍を越えて、10倍以下であることを特徴とする。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】重量平均分子量が5×105 以上の超高分子量ポリオレフィン樹脂か、又はこの超高分子量ポリオレフィン樹脂を少なくとも15重量%と重量平均分子量が5×105 未満のポリオレフィン樹脂とからなる超高分子量ポリオレフィン樹脂組成物からなり、比表面積が100m2 /g以上、細孔容積が0.5cm3 /g以上、貫通孔の平均孔径が0.03μm以下、最大孔径が0.1μm以下であり、三次元網状構造を構成するフィブリルの平均径が0.01〜0.1μm、最大径が0.2μm以下、平均曲路率が2.5倍を越えて、10倍以下であることを特徴とする多孔質フイルム。 【請求項2】超高分子量ポリオレフィン樹脂が重量平均分子量1×106 〜15×106 の超高分子量ポリエチレン樹脂である請求項1に記載の多孔質フィルム。 【請求項3】重量平均分子量が5×105 未満のポリオレフィン樹脂が重量平均分子量が3×105 以下の高密度ポリエチレン樹脂である請求項1に記載の多孔質フィルム。 【請求項4】フィブリルの平均径が0.01〜0.05μm、最大径が0.1μm以下である請求項1に記載の多孔質フィルム。 【請求項5】平均曲路率が3.5〜6.0倍である請求項1に記載の多孔質フイルム。 【請求項6】請求項1から5のいずれかに記載の多孔質フイルムからなる電池用セパレータ。 【請求項7】重量平均分子量が5×105 以上の超高分子量ポリオレフィン樹脂か、又はこの超高分子量ポリオレフィン樹脂を少なくとも15重量%と重量平均分子量が3×105 以下のポリオレフィン樹脂とからなる超高分子量ポリオレフィン樹脂組成物5〜30重量%と凝固点が−10℃以下である溶媒95〜70重量%とからなる混合物を加熱し、上記超高分子量ポリオレフィン樹脂又はその組成物を上記溶媒中に溶解させ、この混合物を115〜185℃の範囲の温度に混練りし、次いで、得られた混練り物を用いた溶媒の凝固点以下の温度まで冷却しながら、ゲル状シートに成形して、上記超高分子量ポリオレフィン樹脂を結晶化させ、次いで、上記超高分子量ポリオレフィン樹脂の融点をMとするとき、上記ゲル状シートを(M+5)℃から(M−30)℃の範囲の温度にて二軸延伸し、次いで、得られた延伸フィルムを脱溶媒処理することを特徴とする請求項1記載の多孔質フイルムの製造方法。 【請求項8】超高分子量ポリオレフィン樹脂が重量平均分子量1×106 〜15×106 の超高分子量ポリエチレン樹脂である請求項7に記載の多孔質フィルムの製造方法。 【請求項9】重量平均分子量が3×105 以下のポリオレフィン樹脂が高密度ポリエチレン樹脂である請求項7に記載の多孔質フィルムの製造方法。 【請求項10】溶媒が流動パラフィンである請求項7に記載の多孔質フィルムの製造方法。 【請求項11】ゲル状シートをM℃から(M−25)℃の範囲の温度で延伸する請求項7に記載の多孔質フィルムの製造方法。 【請求項12】ゲル状シートから延伸フィルムへの延伸倍率が面積倍率にて9〜1024倍の範囲である請求項7又は11に記載の多孔質フィルムの製造方法。 【請求項13】延伸フィルムを脱溶媒処理した後、ヒートセツトする請求項7、11又は12記載の多孔質フイルムの製造方法。 【請求項14】溶媒が−10℃から−45℃の範囲の凝固点を有する請求項7に記載の多孔質フイルムの製造方法。 【請求項15】混練り物を−10℃から−45℃の範囲の温度に冷却する請求項7に記載の多孔質フイルムの製造方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、超高分子量ポリオレフィン樹脂からなる多孔質フィルムに関し、詳しくは、高強度、高比表面積及び高細孔容積を有し、更に、膜を貫通する孔の経路、即ち、貫通経路が長いにもかかわらず、イオン透過性にすぐれ、しかも、高速充放電特性にすぐれ、従って、種々の電池、特に、電気自動車用バッテリーにおいて、安定性と耐久性にすぐれる高性能セパレータとして好適に用いることができる多孔質フィルムとその製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、種々の電池が実用に供されているが、最近、電子機器のコードレス化等に対応するために、軽量で、高起電力、高エネルギーを得ることができ、しかも、自己放電が少ないリチウム電池が注目を集めている。例えば、円筒形リチウムイオン二次電池は、携帯電話やノートブックパソコン用として、多量に用いられており、更に、今後、電気自動車用バッテリーとして期待されている。 【0003】このようなリチウム電池の負極材料としては、金属リチウムをはじめ、リチウム合金やリチウムイオンを吸蔵放出できる炭素材料のような層間化合物を挙げることができる。他方、正極材料としては、コバルト、ニッケル、マンガン、鉄等の遷移金属の酸化物やこれら遷移金属とリチウムとの複合酸化物を挙げることができる。 【0004】一般に、このようなリチウム電池においては、上述したような正極と負極との間に、それら電極間の短絡を防止するためにセパレータが設けられている。このようなセパレータとしては、通常、正極負極間のイオンの透過性を確保するために、多数の微細孔を有する多孔質フイルムが用いられている。 【0005】このような電池用セパレータとして、従来、超高分子量ポリオレフィン樹脂を、必要に応じてその他のポリオレフィン樹脂と共に、適宜の溶媒中、加熱して溶解し、これをゲル状のシートに成形し、このシートを延伸処理し、この延伸処理の前後に脱溶媒処理を行なって、シート中に残存する溶媒を除去することによって、多孔質フィルムを製造する方法が種々提案されている。 【0006】例えば、特開平7−228718号公報には、重量平均分子量1×106 以上の超高分子量ポリオレフィン樹脂を少なくとも10重量%有するポリオレフィン樹脂組成物からなり、フィブリルの平均径が0.01〜0.2μm、貫通孔の平均径が0.01〜0.1μm、空隙率が35〜95%、比表面積が20〜400m2 /g、膜厚に対する貫通経路の比率である曲路率が膜厚の1.5〜2.5倍である多孔質フィルムが記載されている。 【0007】しかし、超高分子量ポリオレフィン樹脂からの多孔質フィルムを電気自動車用バッテリーのセパレータとして実用的に用いるには、フィルムが一層の高強度、高比表面積、高細孔容積を有すると共に、電解液保液性にすぐれ、更に、イオン透過性と高速充放電特性に一層すぐれることが強く要望されている。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、超高分子量ポリオレフィン樹脂からなる多孔質フィルムにおけるこのような要望に応えるべく鋭意研究した結果、多孔質フィルムの三次元網状構造を構成するフィブリル径が小さく、且つ、分布が均一であると共に、貫通孔も、その最大孔径が0.1μm以下であり、且つ、貫通孔の孔径の分布も狭い多孔質フィルムを得ることができ、このような多孔質フィルムが上記特性をすべて備え、特に、非常に大きい平均曲路率を有するにもかかわらず、イオン透過性にすぐれることを見出して、本発明に至ったものである。 【0009】従って、本発明は、高強度、高比表面積、高細孔容積を有すると共に、大きい平均曲路率を有し、しかも、イオン透過性にすぐれ、更に、高速充放電特性にすぐれており、種々の電池、特に、電気自動車用バッテリーのセパレータとして好適に用いることができる多孔質フィルムとその製造方法を提供することを目的とする。 【0010】 【問題を解決するための手段】本発明による多孔質フィルムは、重量平均分子量が5×105 以上の超高分子量ポリオレフィン樹脂か、又はこの超高分子量ポリオレフィン樹脂を少なくとも15重量%と重量平均分子量が5×105 未満のポリオレフィン樹脂とからなる超高分子量ポリオレフィン樹脂組成物からなり、比表面積が100m2 /g以上、細孔容積が0.5cm3 /g以上、貫通孔の平均孔径が0.03μm以下、最大孔径が0.1μm以下であり、三次元網状構造を構成するフィブリルの平均径が0.01〜0.1μm、最大径が0.2μm以下、平均曲路率が2.5倍を越えて、10倍以下であることを特徴とする。 【0011】本発明によるこのような多孔質フィルムの製造方法は、重量平均分子量が5×105 以上の超高分子量ポリオレフィン樹脂か、又はこの超高分子量ポリオレフィン樹脂を少なくとも15重量%と重量平均分子量が3×105 以下のポリオレフィン樹脂とからなる超高分子量ポリオレフィン樹脂組成物5〜30重量%と凝固点が−10℃以下である溶媒95〜70重量%とからなる混合物を加熱し、上記超高分子量ポリオレフィン樹脂又はその組成物を上記溶媒中に溶解させ、この混合物を115〜185℃の範囲の温度に混練りし、次いで、得られた混練り物を用いた溶媒の凝固点以下の温度まで冷却しながら、ゲル状シートに成形して、上記超高分子量ポリオレフィン樹脂を結晶化させ、次いで、上記超高分子量ポリオレフィン樹脂の融点をMとするとき、上記ゲル状シートを(M+5)℃から(M−30)℃の範囲の温度にて二軸延伸し、次いで、得られた延伸フィルムを脱溶媒処理することを特徴とする。 【0012】 【発明の実施の形態】先ず、本発明による多孔質フィルムの製造について説明する。本発明において用いる多孔質フィルムのための素材は、重量平均分子量が5×105 以上の超高分子量ポリオレフィン樹脂か、又はこの超高分子量ポリオレフィン樹脂を少なくとも15重量%と重量平均分子量が5×105 未満のポリオレフィン樹脂とからなる超高分子量ポリオレフィン樹脂組成物である。 【0013】本発明において、簡単のため、上記超高分子量ポリオレフィン樹脂とこれを含む組成物を超高分子量ポリオレフィン樹脂(組成物)と総称することとする。 【0014】本発明において、超高分子量ポリオレフィン樹脂は、重量平均分子量が5×105 〜20×106 の範囲にあり、好ましくは、1×106 〜15×106 の範囲にある。このような超高分子量ポリオレフィン樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン等の単独重合体、共重合体又はこれらの混合物を挙げることができる。しかし、なかでも、本発明においては、超高分子量ポリエチレン樹脂が好ましく用いられる。 【0015】上記超高分子量ポリオレフィン樹脂組成物は、上記超高分子量ポリオレフィン樹脂と共に、それ以外のポリオレフィン樹脂を含んでいてもよい。この超高分子量ポリオレフィン樹脂以外のポリオレフィン樹脂は、重量平均分子量が1×104 以上、5×105 未満の範囲にあり、好ましくは、1×104 〜3×105 の範囲にある。このようなポリオレフィン樹脂としても、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン等の単独重合体、共重合体又はこれらの混合物を挙げることができる。しかし、なかでも、本発明においては、高密度ポリエチレン樹脂が好ましく用いられる。 【0016】本発明において、超高分子量ポリオレフィン樹脂組成物を用いるとき、この組成物は、超高分子量ポリオレフィン樹脂を少なくとも15重量%含むことが必要である。 【0017】本発明による多孔質フィルムの製造には、先ず、上記超高分子量ポリオレフィン樹脂(組成物)5〜30重量%、好ましくは、8〜20重量%と、凝固点が−10℃以下である溶媒95〜70重量%、好ましくは、92〜80重量%とを均一なスラリー状に混合し、これを加熱攪拌して、上記超高分子量ポリオレフィン樹脂(組成物)を上記溶媒中に溶解させ、得られた溶液状混合物を115〜185℃の範囲の温度に混練りして、混練り物を調製する。 【0018】上記溶媒としては、上記超高分子量ポリオレフィン樹脂(組成物)をよく溶解すると共に、凝固点が−10℃以下のものであれば、特に、限定されるものではないが、特に、本発明においては、凝固点が−10℃から−45℃の範囲のものが好ましく用いられる。そのような溶媒の好ましい具体例として、例えば、デカン、デカリン、流動パラフィン等の脂肪族又は環式炭化水素や、凝固点がこれらに対応する鉱油留分を挙げることができる。しかし、なかでも、流動パラフィンのような不揮発性溶媒が好ましく、特に、凝固点が−15℃以下であり、40℃における動粘度が65cst以下の不揮発性溶媒が好ましく用いられる。 【0019】超高分子量ポリオレフィン樹脂(組成物)と上記溶媒との溶液状混合物において、上記超高分子量ポリオレフィン樹脂(組成物)が30重量%を越えるときは、特に、超高分子量ポリオレフィン樹脂の溶媒に対する溶解性が不十分であって、混練り時に超高分子量ポリオレフィン樹脂が延び切り状態近くに解されず、ポリマー鎖の十分な絡み合いを得ることが困難である。更に、後述するように、混練り物を冷却しながら、シートに成形して、樹脂を結晶化させた後、延伸処理して、延伸フィルムとする際に、延伸倍率が比較的低いとき、本発明によるフィブリル径、貫通孔径及び平均曲路率に関する特性を備えた多孔質フィルムを得ることが困難であり、他方、上記超高分子量ポリオレフィン樹脂(組成物)が5重量%を下回るときは、得られる多孔質フィルムが強度に劣る。 【0020】本発明においては、上記超高分子量ポリオレフィン樹脂(組成物)を溶媒に溶解させてなる溶液を混練りするに際して、185℃を越える温度で混練りするときは、溶液の粘度が低すぎて、混練り物に十分なせん断力を作用させることができず、他方、混練温度が115℃よりも低いときは、上記混合物を効果的に混練することができず、かくして、上記混合物の混練りにおいて、上述したような超高分子量ポリオレフィン樹脂のポリマー鎖の十分な絡み合いを得ることが困難である。 【0021】本発明においては、このような超高分子量ポリオレフィン樹脂のポリマー鎖の十分な絡み合いを得るために、上記超高分子量ポリオレフィン樹脂(組成物)と溶媒との溶液状混合物に高いせん断力を作用させつつ、混練りすることが好ましい。混練り時に、十分なせん断力を作用させることができないときは、超高分子量ポリオレフィン樹脂のポリマー鎖の十分な絡み合いを得ることができないことがある。従って、本発明によれば、超高分子量ポリオレフィン樹脂(組成物)と溶媒との溶液状混合物の混練りには、通常、混合物に強いせん断力を与えることができるニーダや二軸押出機等が好ましく用いられる。 【0022】次いで、本発明によれば、このようにして得られた超高分子量ポリオレフィン樹脂(組成物)と溶媒との溶液状の混練り物を用いた溶媒の凝固点以下の温度、好ましくは、−10℃から−45℃の範囲の温度、好ましくは、−15℃〜−40℃の範囲の温度に冷却しながら、ゲル状シートに成形して、超高分子量ポリオレフィン樹脂(と高密度ポリエチレン樹脂)を結晶化させる。ゲル状シートの厚みは、通常、0.1〜5.0mmの範囲が適当である。 【0023】このように、超高分子量ポリオレフィン樹脂(組成物)と溶媒との溶液状の混練り物を用いた溶媒の凝固点以下の温度に冷却するには、特に、限定されるものではないが、例えば、予め2枚の金属板をドライアイスにて冷却しておき、これら金属板の間に上記混練り物を挟み、混練り物を加圧して、シートに成形すればよい。 【0024】本発明によれば、混練り物を冷却しながら、シートに成形する際、得られるシートの表面層のみならず、シートの中心部まで、樹脂を微細に結晶化させるために、混練り物を急冷することが好ましく、従って、その冷却速度は平均で50℃/分以上が好ましい。溶液状態、即ち、混練り物からシートへの成形時の冷却速度が遅いときは、混練りによって、引き伸ばされ、絡み合っているフィブリルが毛毬状に戻って、太い繊維を形成するので、細く、且つ、均一なフィブリルからなる曲路率の大きい多孔質膜構造が形成され難く、大きな貫通孔を有する多孔質膜構造が部分的に形成される。 【0025】即ち、一般に、結晶性高分子量樹脂を結晶化させると、ラメラ結晶が生成し、このラメラ結晶の厚みは、結晶化温度に大きく依存し、融点と結晶化温度との差が大きいほど、ラメラ結晶の厚みは小さくなる。本発明によれば、超高分子量ポリオレフィン樹脂(組成物)と溶媒との混練り物を115〜185℃の高い温度から、用いた溶媒の凝固点以下の温度、即ち、−10℃以下の温度に冷却しながら、好ましくは、急冷しながら、ゲル状シートに成形するので、ラメラ結晶の厚みは非常に小さく、従って、ゲル状シートを延伸して、延伸フィルムを得る際に、ラメラ結晶が微結晶に分割される結果、繊維径が小さく、且つ、均一であるフィブリルからなり、膜厚に対する貫通経路の比率である曲路率が非常に大きいミクロフィブリル構造を有する多孔質フィルムを得ることができるとみられる。 【0026】本発明に従って、混練り物を溶液状態から急冷しながら、ゲル状シートに成形して、樹脂を結晶化させても、このようなゲル状シートにおける樹脂の結晶構造は、用いた溶媒の凝固点以上の温度でこのゲル状シートを保存するときは、上記冷却速度が遅いときと同様、混練りによって、引き伸ばされ、絡み合っているフィブリルが毛毬状に戻って、太い繊維を形成して、微細で均一な多孔構造が形成され難く、大きな貫通孔が部分的に形成される。従って、超高分子量ポリオレフィン樹脂組成物と溶媒との混練り物を急冷しながら、ゲル状シートに成形し、かくして、結晶構造を有せしめたゲル状シートを直ちに延伸するか、又は保存するとすれば、得られたゲル状シートを溶媒の凝固点以下の温度に保存することが望ましい。 【0027】このように、混練り物のシートへの成形時の冷却速度が遅い場合や、得られたシートを用いた溶媒の凝固点以上の温度で保存した場合には、上述したような現象を生じ、得られる多孔質フィルムは、孔構造の微細性と均一性に欠けるものとなって、比較的大きい空孔ができるので、強度、特に、突刺し強度において劣るようになる。 【0028】本発明によれば、次いで、上記超高分子量ポリオレフィン樹脂の融点をMとするとき、上記ゲル状シートを(M+5)℃から(M−30)℃の範囲の温度、好ましくは、M℃から(M−25)℃の範囲の温度にて、二軸延伸する。この二軸延伸は、逐次又は同時二軸延伸のいずれによってもよいが、好ましくは、同時二軸延伸する。本発明において、ゲル状シートの延伸倍率は、一方向に3〜32倍であり、面積延伸倍率は9〜1024倍の範囲が適当であり、好ましくは、一方向に3〜20倍であり、面積延伸倍率は9〜400倍の範囲である。 【0029】次いで、このように得られた二軸延伸フィルムを適宜の溶剤で洗浄して、フィルム中に残留する溶媒を除去して、多孔質フィルムとし、好ましくは、この後、このフィルムの熱収縮を防止するために、加熱して、ヒートセット(熱固定)する。上記脱溶媒処理に用いる溶剤としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素、塩化メチレン、四塩化炭素等の塩素化炭化水素、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類等の易揮発性のものが好ましく用いられる。これらの溶剤は、超高分子量ポリオレフィン樹脂(組成物)の溶液の調製に用いた溶媒に応じて適宜に選ばれる。シート中に残留する溶媒を除去するには、例えば、シートを溶剤に浸漬すればよい。 【0030】このようにして得られる本発明による多孔質フィルムは、厚みが1〜60μm、好ましくは、5〜45μmの範囲にあり、BET比表面積が100m2 /g以上、好ましくは、100〜300m2 /gの範囲であり、BJH法で測定した細孔容積が0.5cm3 /g以上、好ましくは、1〜1.5cm3 /gの範囲であり、更に、BJH法で測定した貫通孔の平均孔径が0.03μm以下、好ましくは、0.01〜0.03μmの範囲であり、最大孔径が0.1μm以下、好ましくは、0.1〜0.03μmの範囲であり、三次元網状構造を構成するフィブリルの平均径が0.01〜0.1μm、好ましくは、0.01〜0.05μm、最大径が0.2μm以下、好ましくは、0.02〜0.1μm、平均曲路率が2.5倍を越えて、10倍以下、好ましくは、3.0〜6.0倍の範囲である。 【0031】更に、本発明による多孔質フィルムは、空孔率が35〜75%、好ましくは、50〜70%、通気度が100〜800秒/100cc、好ましくは、100〜500秒/100ccである。 【0032】このような本発明による多孔質フィルムは、高強度、高比表面積及び高細孔容積を有し、更に、貫通経路が長いにもかかわらず、イオン透過性にすぐれ、しかも、高速充放電特性にすぐれる。また、グローブボックス中でガラスの中に正極にコバルト酸リチウム電極、負極にカーボン電極を用い、その間に電解液を含浸させた上記多孔質フイルムをクッション材となる不織布(電解液含浸品)と共に挟み込み、充放電特性を調べたところ、高電流密度で高放電効率を示し、短時間での大出力が可能である。 【0033】更に、本発明による多孔質フイルムは、通気性は良好なものの、比表面積が高く、細いフィブリルが高密度に配置して、平均孔径も小さいことから、過充電試験におけるデンドライトによる短絡も発生し難く、かくして、電池用セパレータとして安定性と耐久性にすぐれる。 【0034】 【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。以下において、用いた樹脂の融点や、得られた多孔質フィルムの特性は、次のようにして評価した。 【0035】(融点)DSC(示差走査熱量計)測定において、オンセット温度を融点とした。 (重量平均分子量)ゲル浸透クロマトグラフ(ウォーターズ社製、GPC−150C)を用い、溶媒にo−ジクロロベンゼンを、また、カラムとしてShodex−80M(昭和電工(株)製)を用いて温度135℃で測定した。データ処理は、TRC社製データ処理システムを用いて行なった。分子量はポリスチレンを基準として算出した。 (フィルムの厚み)1/10000mmシックネスゲージ及び多孔質フイルムの断面の1万倍走査電子顕微鏡写真から測定した。 【0036】(BET比表面積)(株)島津製作所製の窒素の吸脱着方式による比表面積・細孔分布測定器ASAP2010を用いて、BET比表面積を測定した。 (細孔容積)(株)島津製作所製の窒素の吸脱着方式による比表面積・細孔分布測定器ASAP2010を用いて、BJH法にて細孔容積を測定した。 (通気度)JIS P8117に準拠して測定した。 【0037】(貫通孔の平均孔径及び最大孔径)(株)島津製作所製の窒素の吸脱着方式による比表面積・細孔分布測定器ASAP2010を用いて、BJH法にて孔径の分布を測定し、これより平均孔径と最大孔径とを求めた。 (フィブリルの平均径及び最大径)多孔質フィルムの表面及び断面の5万倍走査顕微鏡写真から読み取った。 【0038】(5C放電効率比)放電速度5CmAの放電時における放電容量を求め、市販品の平均放電容量を1とする相対比率として求めた。 (イオン透過係数比)供給側に1.4モル/L濃度のLiPF6 (EC/EMC)、透過側にEC/EMCの溶液を多孔質フィルム(セパレータ)を介してガラスセルに入れ、LiPF6 の透過速度を測定して、透過係数を求め、市販品の透過係数を1とする相対比率として求めた。 【0039】(曲路率)曲路率は、多孔質体における流体の透過速度と空孔率や比表面積との関係に関する次のような Kozeny-Carman 式k≒〔45ε/(3π2δ02・Sp2)〕×(L0/L) において、L0/Lで与えられる。ここに、εは空孔率、δ0 はフィブリル径、Sp は多孔質体の固体のみの単位体積当りの表面積(比表面積)、Lは見掛けの透過距離(即ち、膜厚)、L0 は真の透過距離(即ち、貫通経路の長さ)であり、Kozeny 定数kは、通常、5.0とされている。 【0040】実施例1重量平均分子量200万の超高分子量ポリエチレン樹脂(融点134℃)15重量%と流動パラフィン(凝固点−15℃、40℃における動粘度59cst)85重量%とをスラリー状に均一に混合し、これを小型ニーダに仕込み、160℃の温度で約50分間、加熱し、溶解させ、混練りして、超高分子量ポリエチレン樹脂と溶媒との混練り物を得た。この後、この混練り物を−15℃まで急冷しながら、厚み0.5mmのシートに成形して、超高分子量ポリエチレン樹脂を結晶化させた。 【0041】次いで、このシートを約115℃の温度で縦横4×4倍に同時二軸延伸した後、塩化メチレンに浸漬して脱溶媒した。このようにして得られた多孔質フイルムを更に120℃で10秒間ヒートセットして、厚み25μm、空孔率52%の多孔質フイルムを得た。 【0042】実施例2重量平均分子量200万の超高分子量ポリエチレン樹脂(融点134℃)5重量%と重量平均分子量20万の高密度ポリエチレン樹脂10重量%と流動パラフィン(凝固点−15℃、40℃における動粘度59cst)85重量%とをスラリー状に均一に混合し、これを小型ニーダーに仕込み、160℃の温度で約50分間、加熱し、溶解させ、混練りして、超高分子量ポリエチレン樹脂と高密度ポリエチレン樹脂と溶媒との混練り物を得た。この後、この混練り物を−15℃まで急冷しながら、厚み0.5mmのシートに成形して、超高分子量ポリエチレン樹脂と高密度ポリエチレン樹脂とを結晶化させた。 【0043】次いで、このシートを約115℃の温度で縦横4×4倍に同時二軸延伸した後、塩化メチレンに浸漬して脱溶媒した。このようにして得られた多孔質フイルムを更に120℃で10秒間ヒートセットして、厚さ30.6μm、空孔率53%の多孔質フイルムを得た。 【0044】実施例3重量平均分子量200万の超高分子量ポリエチレン樹脂(融点134℃)20重量%と流動パラフィン(凝固点−15℃、40℃における動粘度59cst)80重量%とをスラリー状に均一に混合し、これをL/D=42の二軸押出機に仕込み、160℃の温度で約5分間、加熱し、溶解させ、混練りして、超高分子量ポリエチレン樹脂と溶媒との混練り物を得た。この後、この混練り物を−15℃まで急冷しながら、厚み0.5mmのシートに成形して、超高分子量ポリエチレン樹脂を結晶化させた。 【0045】次いで、このシートを約115℃の温度で縦横4×4倍に同時二軸延伸した後、塩化メチレンに浸漬して脱溶媒した。このようにして得られた多孔質フイルムを更に120℃で10秒間ヒートセットして、厚さ20μm、空孔率43%の多孔質フイルムを得た。 【0046】実施例4重量平均分子量200万の超高分子量ポリエチレン樹脂(融点134℃)15重量%と流動パラフィン(凝固点−15℃、40℃における動粘度59cst)85重量%とをスラリー状に均一に混合し、これを小型ニーダーに仕込み、160℃の温度で約50分間、加熱し、溶解させ、混練りして、超高分子量ポリエチレン樹脂と溶媒との混練り物を得た。この後、この混練り物を−15℃まで急冷しながら、厚み0.5mmのシートに成形して、超高分子ポリエチレン量樹脂を結晶化させた。 【0047】次いで、このシートを約115℃の温度で縦横4×4倍に同時二軸延伸した後、塩化メチレンに浸漬して脱溶媒した。このようにして得られた多孔質フイルムを更に120℃で10秒間ヒートセットして、厚さ23.8μm、空孔率54%の多孔質フイルムを得た。 【0048】比較例1重量平均分子量20万の高密度ポリエチレン樹脂15重量%と流動パラフィン(凝固点−15℃、40℃における動粘度59cst)85重量%とをスラリー状に均一に混合し、これを小型ニーダーに仕込み、160℃の温度で約50分間、加熱し、溶解させ、混練りして、上記高密度ポリエチレン樹脂と溶媒との混練り物を得た。この後、この混練り物を−15℃まで急冷しながら、厚み0.5mmのシートに成形して、高密度ポリエチレン樹脂を結晶化させた。 【0049】次いで、このシートを約115℃の温度で縦横4×4倍に同時二軸延伸した後、塩化メチレンに浸漬して脱溶媒した。このようにして得られた多孔質フイルムを更に120℃で10秒間ヒートセットして、厚さ16.2μm、空孔率50%の多孔質フイルムを得た。 【0050】比較例2重量平均分子量200万の超高分子量ポリエチレン樹脂(融点134℃)5重量%と重量平均分子量20万の高密度ポリエチレン樹脂10重量%と流動パラフィン(凝固点−15℃、40℃における動粘度59cst)85重量%とをスラリー状に均一に混合し、これをフラスコ中、200〜230℃の温度で加熱攪拌し、溶解させ、約90分間、へらを用いて混練りして、超高分子量ポリオレフィン樹脂と高密度ポリエチレン樹脂と溶媒との混練り物を得た。この後、この混練り物を−15℃まで急冷しながら、厚み0.5mmのシートに成形して、超高分子ポリエチレン樹脂と高密度ポリエチレン樹脂を結晶化させた。 【0051】次いで、このシートを約115℃の温度で縦横4×4倍に同時二軸延伸した後、塩化メチレンに浸漬して脱溶媒した。このようにして得られた多孔質フイルムを更に120℃で10秒間ヒートセットして、厚さ19μm、空孔率28%の多孔質フイルムを得た。 【0052】比較例3重量平均分子量200万の超高分子量ポリエチレン樹脂(融点134℃)15重量%と流動パラフィン(凝固点−15℃、40℃における動粘度59cst)85重量%とをスラリー状に均一に混合し、これを小型ニーダーに仕込み、160℃の温度で約50分間、加熱し、溶解させ、混練りして、上記超高分子ポリエチレン樹脂と溶媒との混練り物を得た。この後、この混練り物を10℃に水冷保持した2枚の金属板の間に挟み、加圧して、厚み0.5mmのシートに成形して、上記超高分子ポリエチレン樹脂を結晶化させた。 【0053】次いで、このシートを約115℃の温度で縦横4×4倍に同時二軸延伸した後、塩化メチレンに浸漬して脱溶媒した。このようにして得られた多孔質フイルムを更に120℃で10秒間ヒートセットして、厚さ25μm、空孔率52%の多孔質フイルムを得た。 【0054】上記実施例1〜4と比較例1〜3で得られた多孔質フィルムと市販品の多孔質フィルムの特性を表1及び表2に示す。 【0055】 【表1】
【0056】 【表2】
【0057】 【発明の効果】以上のように、本発明による多孔質フィルムは、高強度を有すると共に、BET比表面積が100m2 /g以上、BJH法で測定した細孔容積が0.5cm3 /g以上、更に、BJH法で測定した平均孔径が0.03μm以下、最大孔径が0.1μm以下である貫通孔を有し、三次元網状構造を構成するフィブリルの平均径が0.01〜0.1μm、最大径が0.2μm以下、平均曲路率が2.5倍を越えて、10倍以下である。 【0058】このように、本発明による多孔質フィルムは、三次元網状構造を形成するフィブリルが微細均一であり、従って、貫通孔が微細均一であるので、平均曲路率が大きいにもかかわらず、イオン透過性にすぐれ、更に、高速充放電特性にすぐれるので、例えば、電気自動車用バッテリーのセパレータとして好適に用いることができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003964 【氏名又は名称】日東電工株式会社
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| 【出願日】 |
平成10年(1998)5月18日 |
| 【代理人】 |
【弁理士】 【氏名又は名称】牧野 逸郎
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| 【公開番号】 |
特開平11−322988 |
| 【公開日】 |
平成11年(1999)11月26日 |
| 【出願番号】 |
特願平10−135748 |
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