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【発明の名称】 ポリエステルフィルムおよびその製造方法
【発明者】 【氏名】山形 哲也

【氏名】琴浦 正晃

【氏名】恒川 哲也

【要約】 【課題】長時間連続製膜時に発生するフィッシュアイや口金スジを低減させフィルム破れを少なくして、高品質なフィルム及び、長時間安定して製膜する製造方法を提供する。

【解決手段】非液晶性ポリエステル(A)99.9〜60重量%と主鎖にメソゲン基を有する共重合ポリエステル(B)0.1〜40重量%からなるポリエステル100重量部に対して、酢酸発生抑制剤(C)0.001〜0.5重量部を含有することを特徴とするポリエステルフィルム、およびその製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 非液晶性ポリエステル(A)99.9〜60重量%と主鎖にメソゲン基を有する共重合ポリエステル(B)0.1〜40重量%からなるポリエステル100重量部に対して、酢酸発生抑制剤(C)0.001〜0.5重量部を含有することを特徴とするポリエステルフィルム。
【請求項2】 前記酢酸発生抑制剤(C)が無定形シリカを主成分とすることを特徴とする請求項1に記載のポリエステルフィルム。
【請求項3】 前記酢酸発生抑制剤(C)の平均細孔径が100〜250Åであることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステルフィルム。
【請求項4】 酢酸発生抑制剤(C)の平均粒子径が0.05〜5μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
【請求項5】 酢酸発生量が250ppm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
【請求項6】 前記共重合ポリエステル(B)の主鎖中のメソゲン基の共重合量が5〜95モル%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
【請求項7】 共重合ポリエステル(B)が下記構造単位(I) 、(II)、(III) および(IV)からなる共重合ポリエステルであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載のポリエステルフィルム。
【化1】

(ただし式中のR1 は【化2】

から選ばれた1種以上の基を示し、R2 【化3】

から選ばれた1種以上の基を示す。ただし式中Xは水素原子または塩素原子を示す。)
【請求項8】 前記非液晶性ポリエステル(A)と前記共重合ポリエステル(B)の溶融粘度比(ηA /ηB )が5以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
【請求項9】 直径10μm以上のフィッシュアイが10個/100cm2以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
【請求項10】 非液晶性ポリエステル(A)99.9〜60重量%と主鎖にメソゲン基を有する共重合ポリエステル(B)0.1〜40重量%からなるポリエステル100重量部に対して、酢酸発生抑制剤(C)0.001〜0.5重量部を含有させた樹脂からフィルムを製造することを特徴とするポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項11】 前記酢酸発生抑制剤(C)の平均細孔径が100〜250Åの無定形シリカであることを特徴とする請求項10に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリエステルフィルムおよびその製造方法に関し、特に、従来のポリエステルフィルムの物性、品質を大幅に向上させたフィルム、具体的には、異物やポリマ変質を抑え、押出成形時の口金での口金スジや、フィルム破れを減少させたポリエステルフィルムとその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ポリエステルの品質、物性を高める方法として、ポリマーブレンドの手法について近年頻繁に検討されている。特に、分子鎖の平行な配列を特徴とする光学異方性の液晶ポリエステルが優れた成形性と機械的性質を有する点で注目され、液晶ポリエステルと非液晶性ポリエステルとのブレンドに関する検討が世界的に活発に行われている。しかしながら液晶ポリエステルと非液晶性ポリエステルとをブレンドしたポリマを長時間製膜すると、フィッシュアイなどの表面欠点や、口金スジなどが発生し、フィルム破れも多くなるといった問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、長時間連続製膜時に発生するフィッシュアイや口金スジを低減させてフィルム破れを少なくし、高品質なフィルムおよび、そのフィルムを長時間安定して製膜できる製造方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決するために製膜条件である押出温度、延伸倍率、延伸温度などの変更や、添加剤や純度の高い原料の使用等を鋭意検討した結果、製膜中に発生してくる少量の酢酸等の低沸点ガスが問題であることを見出した。
【0005】すなわち、非液晶性ポリエステル(A)と共重合ポリエステル(B)からなるポリエステルに、酢酸発生抑制剤(C)を含有させることにより、押出工程で酢酸等を含有する低沸点ガスの発生を抑え、口金スジ、表面欠点を減少させた高品質なフィルムを長時間安定して製膜できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】すなわち本発明は、非液晶性ポリエステル(A)99.9〜60重量%と主鎖にメソゲン基を有する共重合ポリエステル(B)0.1〜40重量%からなるポリエステル100重量部に対して、酢酸発生抑制剤(C)0.001〜0.5重量部を含有することを特徴とするポリエステルフィルムとその製造方法を骨子とするものである。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明を、その望ましい実施の形態とともに詳細に説明する。本発明で用いる酢酸発生抑制剤(C)とは、フィルムを構成するポリマから発生する酢酸量を低減する物質であれば、特に限定されない。具体的には、無定形シリカ、ハイドロタルサイト、ゼオライトあるいは、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素等を主成分とする単独もしくは、これらを組み合わせた化合物、例えば水酸化アルミニウム、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸水素カルシウム、水酸化アルミナマグネシウム、アルミニウムグリシネート、合成ヒドロタルサイト、合成ハイドロタルサイト、炭酸マグネシウム等の各種吸着剤を代表とする、無機酸化物あるいは水酸化物である。その中でも特に、ケイ酸ソーダと硫酸を反応させて得られる無定形シリカを主成分とすることが好ましい。
【0008】本発明で用いる酢酸発生抑制剤(C)の含有量は、非液晶性ポリエステル(A)と共重合ポリエステル(B)からなるポリエステル100重量部に対し0.001重量部以上0.5重量部以下であることが必要である。より好ましくは、0.005重量部以上0.2重量部以下で、さらに好ましくは、0.01重量部以上0.1重量部以下である。含有される酢酸発生抑制剤が0.001重量部未満であると、酢酸発生量を抑制する効果が小さくなり、押出工程で異物や変質ポリマが発生し、表面欠点の多い低品質なフィルムしか得られない。また、0.5重量部より多いと非液晶性ポリエステル(A)の熱分解が進行しフィルム品質が悪化したり、長時間安定して製膜できなくなる。
【0009】本発明で用いる共重合ポリエステル(B)の含有量は、非液晶性ポリエステル(A)と共重合ポリエステル(B)からなるポリエステル100重量%に対し0.1重量%以上40重量%以下であることが必要である。好ましくは0.3〜20重量%、さらに好ましくは0.5〜10重量%の範囲である。含有量が0.1重量%未満であるとフィルムの機械特性が低下し、また、40重量%以上であるとフィルム表面が荒れてしまい、低品質なフィルムとなってしまう。
【0010】本発明で用いる酢酸発生抑制剤(C)の平均細孔径は、特に限定されないが100Å以上250Å以下であることが好ましい。より好ましくは、120Å以上220Å以下で、さらに好ましくは140Å以上200Å以下である。平均細孔径が100Å以上250Å以下であると低沸点ガスや、ガスを発生するポリマ末端の吸着性能が高くなるためか、押出工程で発生する泡や異物、及び変質ポリマが減少し、表面欠点の少ない高品質なフィルムが得られ、かつフィルム破れが少なく製膜安定性が向上するために好ましい。
【0011】本発明で用いる酢酸発生抑制剤(C)の平均粒子径は、特に限定されないが0.05μm以上5μm以下であることが好ましい。より好ましくは、0.5μm以上3.5μm以下で、さらに好ましくは1μm以上2.5μm以下である。とくに表面特性の観点から、平均細孔径が0.05μm以上5μm以下であることが好ましい。
【0012】本発明で得られるフィルムの酢酸発生量は、特に限定されないが、押出や製膜の安定性の観点と、フィルム品質の観点からフィルム1gに対して250ppm以下であることが好ましい。さらに好ましくは、220ppm以下、最も好ましくは、200ppm以下である。
【0013】本発明で用いる共重合ポリエステル(B)は、流動性および非液晶性ポリエステルとの相溶性の点から、主鎖にメソゲン基を有するポリエステルとされる。またこのポリエステル(B)は、溶融成形性で、かつ液晶形成性があるポリエステルが好ましい。例えば、芳香族オキシカルボニル単位、芳香族ジオキシ単位、芳香族ジカルボニル単位、アルキレンジオキシ単位などから選ばれた構造単位からなる異方性溶融相を形成するポリエステルなどが好ましい。
【0014】本発明で用いる好ましい主鎖にメソゲン基を有する共重合ポリエステル(B)の例としては、下記(I) 、(II)、(III) および(IV)の構造単位からなる主鎖にメソゲン基を有する共重合ポリエステル、(I) 、(III) および(IV)の構造単位からなる主鎖にメソゲン基を有する共重合ポリエステル、(I) 、(II)および(IV)の構造単位からなる主鎖にメソゲン基を有する共重合ポリエステルから選ばれた一種以上であるものが挙げられる。
【0015】
【化4】

【0016】但し式中のR1 は、下記化5を、R2 は下記化6から選ばれた一種以上の基を示し、R3 は下記化7から選ばれた一種以上の基を示す。また、式中Xは水素原子または塩素原子を示し、構造単位[(II)+(III) ]と構造単位(IV)は実質的に等モルである。
【0017】
【化5】

【0018】
【化6】

【0019】
【化7】

【0020】上記構造単位(I) はp−ヒドロキシ安息香酸および/または6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成したポリエステルの構造単位を、構造単位(II)は、4,4´−ジヒドロキシビフェニル、3,3´,5,5´−テトラメチル−4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、2,6−ジヒドキシナフタレン、2,7−ジヒドキシナフタレン、2,2´−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび4,4´−ジヒドロキシジフェニルエーテルから選ばれた芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位を、構造単位(III) はエチレングリコールから生成した構造単位を、構造単位(IV)は、テレフタル酸、イソフタル酸、4,4´−ジフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4´−ジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4´−ジカルボン酸および4,4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸から選ばれた芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位を各々示す。
【0021】また、上記構造単位(I) 、(II)および(IV)からなる共重合ポリエステルの場合は、R1 が下記化8であり、R2 が下記化9から選ばれた一種以上であり、R3が下記化10から選ばれた一種以上であるものが好ましい。
【0022】
【化8】

【0023】
【化9】

【0024】
【化10】

【0025】また、上記構造単位(I) 、(III) および(IV)からなる主鎖にメソゲン基を有する共重合ポリエステルの場合は、R1 が下記化11であり、R3 が下記化12であるものが特に好ましい。
【0026】
【化11】

【0027】
【化12】

【0028】また、上記構造単位(I) 、(II)、(III) および(IV)からなる主鎖にメソゲン基を有する共重合ポリエステルの場合は、R1 が下記化13であり、R2 が下記化14であり、R3 が下記化15であるものが特に好ましい。
【0029】
【化13】

【0030】
【化14】

【0031】
【化15】

【0032】上記構造単位(I) 、(II)、(III) および(IV)の共重合量は任意であるが、流動性、ポリエチレンテレフタレート(A)との相溶性の点から次の共重合量であることが好ましい。
【0033】上記構造単位(I) 、(II)、(III) および(IV)からなる共重合ポリエステルの場合は、上記構造単位[(I) +(II)+(III) ]に対する[(I) +(II)]のモル分率は5〜95モル%であり、20〜80%がより好ましく、40〜75モル%が最も好ましい。また、構造単位[(I) +(II)+(III) ]に対する(III) のモル分率は95〜5モル%であり、80〜20モル%がより好ましく、60〜25モル%が最も好ましい。また、構造単位(I) /(II)のモル比は流動性の点から、好ましくは75/25〜95/5であり、より好ましくは78/22〜93/7である。また、構造単位(IV)のモル数は構造単位[(II)+(III) ]のトータルモル数と実質的に等しい。
【0034】また、上記構造単位(I) 、(III) および(IV)からなる共重合ポリエステルの場合は、上記構造単位(I) は[(I) +(III) ]の5〜95モル%が好ましく、20〜80モル%がより好ましく、40〜75モル%が最も好ましい。構造単位(IV)は構造単位(III) と実質的に等モルである。
【0035】さらに上記構造単位(I) 、(II)および(IV)からなる共重合ポリエステルの場合は、単独ではなく、構造単位(I) 、(II)、(III) および(IV)からなる共重合ポリエステルまたは/および構造単位(I) 、(III) および(IV)からなる共重合ポリエステルのブレンドポリマーとして用いることが好ましい。このブレンドポリマーの場合においても、前記同様に、構造単位[(I) +(II)+(III) ]に対する[(I) +(II)]のモル分率は5〜95モル%が好ましく、20〜80%がより好ましく、40〜75モル%が最も好ましい。
【0036】以上述べた説明中の「実質的に」とは、必要に応じてポリエステルの末端基をカルボキシル基末端あるいはヒドロキシル末端基のいずれかを多くすることができ、このような場合には構造単位(IV)のモル数は構造単位[(II)+(III) ]のトータルモル数と完全に等しくないからである。
【0037】上記好ましい主鎖にメソゲン基を有する共重合ポリエステル(B)を重縮合する際には、上記構造単位(I) 〜(IV)を構成する成分以外に、3,3´−ジフェニルジカルボン酸、2,2´−ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などの脂環式ジカルボン酸、クロルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4´−ジヒドロキシベンゾフェノンなどの芳香族ジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族、脂環式ジオールおよびm−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ヒドロキシナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸およびp−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸などを本発明の目的を損なわない程度の少割合の範囲で、さらに共重合せしめることができる。
【0038】本発明における主鎖にメソゲン基を有する共重合ポリエステル(B)の製造方法は、特に制限がなく、公知のポリエステルの重縮合法に準じて製造できる。
【0039】例えば、上記の好ましく用いられる主鎖にメソゲン基を有する共重合ポリエステルの製造法において、上記構造単位(III) を含まない場合は下記(1)および(2)、構造単位(III) を含む場合は下記(3)の製造方法が好ましい。
【0040】(1)p−アセトキシ安息香酸および4,4´−ジアセトキシビフェニル、4,4´−ジアセトキシベンゼンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物のジアシル化物とテレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸から脱酢酸重縮合反応によって製造する方法。
【0041】(2)p−ヒドロキシ安息香酸および4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に無水酢酸を反応させて、フェノール性水酸基をアシル化した後、脱酢酸重縮合反応によって製造する方法。
【0042】(3)ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルのポリマー、オリゴマーまたはビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレートなどの芳香族ジカルボン酸のビス(β−ヒドロキシエチル)エステルの存在下で(1)または(2)の方法により製造する方法。
【0043】これらの重縮合反応は無触媒でも進行するが、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸カリウムおよび酢酸ナトリウム、三酸化アンチモン、金属マグネシウムなどの金属化合物を添加した方が好ましい場合もある。
【0044】本発明では、低粘度の共重合ポリエステル、すなわち溶融粘度比(非液晶性ポリエステルの溶融粘度(ηA )/共重合ポリエステルの溶融粘度(ηB ))を大きくする共重合ポリエステルが好ましい。この溶融粘度比は、少なくとも5以上が好ましく、より好ましくは10以上、さらに好ましくは50以上、特に好ましくは500以上である。従って、共重合ポリエステルの溶融粘度は、使用する非液晶性ポリエステルの溶融粘度にもよるが、マトリックスを構成する非液晶性ポリエステルの融点+15℃、剪断速度100秒-1の条件下で、200Pa・s程度以下であることが好ましく、好ましくは50Pa・s以下、さらに好ましくは10Pa・s以下である。このような低い溶融粘度を有し、本発明の目的を達成する上で特に好適に用いることのできる共重合ポリエステルは、上記構造単位(I) 、(II)、(III) および(IV)からなる共重合ポリエステルである。この共重合ポリエステルは、非液晶性ポリエステル中で微分散させて、ポリエステルフィルムの品質、機械特性を高める上で特に有効である。
【0045】本発明で使用する非液晶性ポリエステル(A)の代表的なものとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、およびそれらの共重合体等が挙げられる。もちろん、主鎖にエーテル成分を有したポリエステル、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどを共重合したものでもよい。
【0046】本発明のポリエステルフィルムは、特に限定されないが、フィッシュアイ(FE)数が10個/100cm2 以下が好ましい。より好ましくは7個/100cm2 以下、さらに好ましくは4個/100cm2 以下である。FE数が10個/100cm2 以下であると表面欠点が少ない品質の高いフィルムとなり好ましい。
【0047】次に、本発明のポリエステルフィルムを製造する方法について説明するが、かかる例に限定されるものではない。ここでは非液晶性ポリエステル(A)としてポリエチレンテレフタレートを用いた例を示すが、使用するポリエステルにより製造条件は異なる。常法に従って、テレフタル酸とエチレングリコールからエステル化し、または、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールをエステル交換により、ビス−β−ヒドロキシエチルテレフタレート(BHT)を得る。次にこのBHTを重合槽に移行しながら、真空下で280℃に加熱して重合反応を進める。ここで、固有粘度が0.5(dl/g)程度のポリエステルを得る。得られたポリエステルをペレット状で減圧下において固相重合する。固相重合する場合は、あらかじめ180℃以下の温度で予備結晶化させた後、190〜250℃で1mmHg程度の減圧下、10〜50時間固相重合し、使用する共重合ポリエステル(B)の溶融粘度の5倍以上になるように重合度を上昇させる。
【0048】次に、該高粘度のポリエチレンテレフタレートと共重合ポリエステル(B)および酢酸発生抑制剤(C)をブレンドした原料や、これらを一旦溶融させて均一混合させた原料、さらには本発明フィルムの回収原料を単独、または適度に上記2〜3種類の原料を混合した原料を、180℃で3時間以上真空乾燥したのち、固有粘度が低下しないように窒素気流下、あるいは真空下で280℃に加熱された押出機に供給し、公知の方法により製膜する。しかし、剪断速度を300秒-1以上に大きくすると、剪断発熱によってポリマが熱分解し低沸点ガスが発生し易くなるために好ましくない。また、公知のフィルター、例えば焼結金属、多孔性セラミックス、サンド、金網などを用いて異物を除去する。Tダイによりシート状に押し出すときのドラフト比は好ましくは10〜200、より好ましくは15〜100とすることにより、共重合ポリエステルの分散径を均一に小さくできる。その後、シート状のキャストフィルムを80〜150℃の加熱ロール群で加熱し、縦方向に2〜7倍に1段もしくは2段以上の多段で延伸し、20〜50℃の冷却ロール群で冷却する。続いて、公知のテンターに導いて、該フィルムの両端をクリップで把持しながら、80〜150℃に加熱された熱風雰囲気中で加熱し、横方向に2〜6倍延伸する。続いて、該フィルムに150〜250℃の温度で熱固定を施す。熱固定は緊張下で行ってもよく、また熱寸法安定性をさらに向上させるために、幅方向に弛緩することも好ましく行なわれる。また、必要に応じ、熱固定を行う前に、再縦延伸および/または再横延伸を行うこともできる。
【0049】[物性の測定方法ならびに効果の評価方法]
(1)酢酸発生量試験管に1gフィルムをはかりとり、融点+30℃で真空下30分放置した後、窒素雰囲気下にし、(株)ガステック社製吸引管No.81およびNo.60にてポリマー1gあたりの酢酸発生量を測定した。
【0050】(2)平均細孔径日本ベル社製高精度全自動ガス吸着装置“BELSORP”36を用いて77Kでの圧吸着曲線を求め、Dollimore−HealMethodに基づいて求めた。
前処理条件:350℃、減圧下で2時間乾燥サンプル重量:約0.2g【0051】(3)平均粒子径平均粒子径は、粒子の電子顕微鏡写真によって測定した50体積%の点にあたる粒子の等価球直径により求めた。等価球直径とは、粒子と同じ体積を有する直径である。
【0052】(4)フィッシュアイ(FE)
直交ニコル偏光下に24時間以上連続している製膜機で製膜した100cm2のフィルムをおき、全体像の中で周りの色の異なるキラキラした部分のうち、長軸が10μm以上の大きさのものをカウントした。単位は個/cm2 で示す。
【0053】(5)口金スジ口金先端を銅板で掃除後24時間一定条件でフィルム成形を続けた。24時間後、口金から吐出される溶融樹脂シートを1分間観察し、スジの観察されないものを○、スジ1本以上3本未満を△、3本以上を×とした。
【0054】(6)破れ頻度二軸延伸ポリエステルフィルムの製造工程において、破れ頻度を次の基準で判定した。
◎:フィルム破れが72時間以上ない場合○:フィルム破れが48時間以上72時間未満の間ない場合×:フィルム破れにより製膜が48時間以上連続してできない場合上記基準において、製膜安定性、収率などの理由により、◎、○の判定結果が得られたフィルムを合格とした。
【0055】(7)固有粘度25℃で、オルトクロロフェノール中0.1g/ml濃度で測定した値である。
【0056】(8)溶融粘度高下式フローテスターを用いて、280℃、剪断速度1000秒-1の時の値を測定する。単位は[Pa・s]で表す。
【0057】
【実施例】本発明を実施例、比較例に基づいて説明する。
実施例1(表1、2)
非液晶性ポリエステル(A)として、固有粘度0.8(dl/g)のポリエチレンテレフタレート原料を用いた。共重合ポリエステル(B)としては、下記原料から重縮合した共重合ポリエステル(融点220℃、液晶開始温度195℃、溶融粘度22Pa・s)を用いた。酢酸発生抑制剤としては、表1に示す無定形シリカ(富士シリシア化学株式会社製、“サイリシア”430)を用いた。
[共重合ポリエステル原料1]
共重合モル比 ヒドロキシ安息香酸 42.5 4、4´−ジヒドロキシビフェニル 7.5 エチレングリコール 50.0 テレフタル酸 57.5【0058】該ポリエチレンテレフタレート、共重合ポリエステルおよび酢酸発生抑制剤を乾燥し、該混合体を150mm単軸押出機に供給し、290℃で、剪断速度100秒-1で溶融混合計量させた後、繊維焼結ステンレス金属フィルター(10μmカット)内を剪断速度10秒-1で通過させた後、Tダイ口金からドラフト比50でシート状に押出成形し、25℃に保たれた冷却ドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化した。該キャストフィルムを長手方向ロール式延伸機にて110℃で4倍延伸し、複屈折として0.13と高くしたのち、テンターに導入し、100℃で幅方向に4倍延伸後、一旦60℃に冷却した後、200℃で熱固定して、厚さ8μmの二軸配向フィルムを得た。かくして得られたフィルムの酢酸発生量や、フィッシュアイ、および口金スジ発生や、破れ頻度について測定した結果を表2に示す。非液晶性ポリエステル(A)と共重合ポリエステル(B)と酢酸発生抑制剤(C)からなるフィルムは酢酸発生量、フィッシュアイ、口金スジが減少した高品質なフィルムであり、破れ頻度も減少して製膜安定性にも優れていた。
【0059】実施例2、3(表1、2)
平均細孔径の異なる酢酸発生抑制剤(C)を使用する以外は、実施例1と同様に製膜した。結果を表2に示す。かくして得られたフィルムは、実施例1で得られたフィルムには劣るが、酢酸発生量、フィッシュアイ、口金スジが減少した高品質なフィルムであり、破れ頻度も減少して製膜安定性にも優れていた。
【0060】実施例4〜6(表1、2)
共重合ポリエステル(B)および、酢酸発生抑制剤(C)の含有量と、酢酸発生抑制剤の種類を変更する以外は、実施例1と同様に製膜した。結果を表2に示す。かくして得られたフィルムは、酢酸発生量、フィッシュアイ、口金スジが減少した高品質なフィルムであり、破れ頻度も減少して製膜安定性にも優れていた。
【0061】比較例1(表1、2)
酢酸発生抑制剤を用いないで製膜する以外は、実施例1と同様に製膜した。結果を表2に示す。かくして得られたフィルムは、フィルム中の酢酸発生量が多く、フィッシュアイ、口金スジの多い品質の悪いフィルムで、製膜安定性も悪かった。
【0062】比較例2(表1、2)
酢酸発生抑制剤(C)の含有量を変更する以外は、実施例1と同様に製膜した。結果を表2に示す。かくして得られたフィルムは、実施例1で得られたフィルムに比べ、酢酸発生量、フィッシュアイ、口金スジが多い品質の悪いフィルムで製膜安定性も悪かった。
【0063】比較例3(表1、2)
酢酸発生抑制剤(C)の含有量を変更する以外は、実施例1と同様に製膜したが、フィルム破れが多発し製膜ができなかった。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
【発明の効果】本発明によれば、非液晶性ポリエステルと共重合ポリエステルおよび酢酸発生抑制剤からなるポリエステルフィルムで、押出工程で発生する酢酸を主とする低沸点ガスの発生量を抑制することで、長時間連続製膜時に発生するフィッシュアイや口金スジを低減させフィルム破れを少なくして、高品質なフィルム及び、長時間安定して製膜する製造方法を提供することができ、本発明は、磁気記録用、電気絶縁用、感熱転写リボン用、感熱孔版印刷用など各種フィルム用途に広く活用が可能である。
【出願人】 【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
【出願日】 平成10年(1998)5月8日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】伴 俊光
【公開番号】 特開平11−322972
【公開日】 平成11年(1999)11月26日
【出願番号】 特願平10−140392