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【発明の名称】 生分解性合成紙
【発明者】 【氏名】坂本 昌央

【要約】 【課題】従来の合成紙と同等の強度、耐水性、耐侯性等を有し、かつ、容易に生分解され、環境を汚染することのない合成紙を提供する。

【解決手段】合成紙の基材としてデンプン−ポリビニルアルコール系ポリマーアロイ、ポリアルキレンアルカノエート、ポリカプロラクトン又はポリ乳酸のいずれか1種を単独で、又はこれらのうちいずれか2種以上を混合して40重量%以上用いる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 デンプン−ポリビニルアルコール系ポリマーアロイ、ポリアルキレンアルカノエートポリカプロラクトン又はポリ乳酸のいずれか1種又は2種以上を40重量%以上含有する生分解性合成紙。
【請求項2】 デンプン−ポリビニルアルコール系ポリマーアロイ、ポリアルキレンアルカノエート、ポリカプロラクトン又はポリ乳酸のいずれか1種又は2種以上を40〜98.5重量%、及び内部充填剤として無機質微粒子、天然多糖類微粒子又はタンパク質微粒子のいずれか1種又は2種以上を1.5〜60重量%含有する生分解性合成紙。
【請求項3】 デンプン−ポリビニルアルコール系ポリマーアロイとして、デンプン比率が30〜80重量%であるものを用いることを特徴とする、請求項1又は2に記載の生分解性合成紙。
【請求項4】 ポリアルキレンアルカノエートとして、ポリブチレンサクシネート及び/又はポリブチレンサクシネートアジペートを用いることを特徴とする、請求項1又は2に記載の生分解性合成紙。
【請求項5】 ポリカプロラクトンとしてポリ−ε−カプロラクトンを用いることを特徴とする、請求項1又は2に記載の生分解性合成紙。
【請求項6】 ポリ乳酸として、D−乳酸、L−乳酸のいずれか、もしくは両成分からなるラクチドを開環重合して得られる重合体、又は、D−乳酸、L−乳酸のいずれか、もしくは両成分を直接脱水重縮合して得られる重合体を用いることを特徴とする、請求項1又は2に記載の生分解性合成紙。
【請求項7】 ポリ乳酸としてD−乳酸、L−乳酸のいずれか又は両成分と、他のヒドロキシカルボン酸とを直接脱水重縮合して得られる共重合体を用いることを特徴とする、請求項1又は2に記載の生分解性合成紙。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、従来の合成紙と同等の物性を有し、かつ、微生物等により容易に生分解される生分解性合成紙に関する。
【0002】
【従来の技術】合成紙は、ファイバー状にしたポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂を、セルロース繊維の代替として用いて製造される他、これらの樹脂をフィルム状とし、その表面を加工したり、あるいは、その内部に無機充填剤を含有させたり、無数の小さな空隙を生じさせたりして紙に近似した性質を与えることにより製造される。
【0003】こうして製造された合成紙は、セルロースを主成分とする通常の紙に比べて軽く、また、強度、耐水性、耐侯性等の面で優れているため、その特徴を生かし、包装紙、包装袋、ポスター、地図等に利用されることが多い。しかし、その反面、これらは自然環境下で容易に分解されないことから、その廃棄にあたっては、焼却等の処理をしない限り、半永久的に環境下に残留するという問題を抱えていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記問題点に鑑み、従来の合成紙と同等の物性を有し、かつ、微生物等により容易に生分解され、焼却等の特別な処理をしなくとも環境中に長時間残留せず、環境を汚染することのない合成紙を提供することを課題としてなされた。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは鋭意研究の結果、合成紙の基材としてデンプン−ポリビニルアルコール系ポリマーアロイ、ポリアルキレンアルカノエート、ポリカプロラクトン又はポリ乳酸のいずれか1種を単独で、又はこれらのうちいずれか2種以上を混合して用いることにより、上記課題が解決されることを見出し本発明を完成した。
【0006】即ち、本発明は、デンプン−ポリビニルアルコール系ポリマーアロイ、ポリアルキレンアルカノエート、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸のいずれか1種もしくは2種以上を40重量%以上含有する生分解性合成紙、又は、デンプン−ポリビニルアルコール系ポリマーアロイ、ポリアルキレンアルカノエート、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸のいずれか1種もしくは2種以上を40〜98.5重量%、及び内部充填剤として無機質微粒子、天然多糖微粒子、タンパク質微粒子のいずれか1種もしくは2種以上を1.5〜60重量%含有する生分解性合成紙を内容とするものである。
【0007】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の内容を詳細に説明する。
【0008】本発明においては、合成紙の基材としてデンプン−ポリビニルアルコール系ポリマーアロイ、ポリアルキレンアルカノエート、ポリカプロラクトン又はポリ乳酸を用いる。これらはいずれか1種を単独で用いても、また、2種以上を混合して用いてもよい。例えば、かかる樹脂の中、一般に入手容易なものとして、デンプン−ポリビニルアルコール系ポリマーアロイではデンプン比率が30〜80重量%のデンプン−ポリビニルアルコール系ポリマーアロイ、ポリアルキレンアルカノエートではポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリカプロラクトンではポリ−ε−カプロラクトン、ポリ乳酸ではD−乳酸、L−乳酸のいずれか、もしくはこれら両成分からなるラクチドを開環重合して得られる重合体、これらの乳酸のいずれか、もしくは両成分を直接脱水重縮合して得られる重合体、又はこれらの乳酸のいずれか、もしくは両成分と他のヒドロキシカルボン酸とを直接脱水重縮合して得られる共重合体等を挙げることができる。
【0009】ただし、これらの樹脂は、本発明の合成紙中40重量%以上含有されていなければならない。この含有率が40重量%未満では、製造された合成紙において、目的とされる生分解性を発揮することができなくなるからである。
【0010】これらの樹脂を基材として、本発明の合成紙を製造する方法に特に制限はなく、熱溶融押出法、延伸成形法等、公知の方法を採用することができる。例えば、熱溶融押出法の1種であるTダイ押出法を用いる場合には、加熱した押出機に、基材となる樹脂40重量%以上を含有する組成物を供給して溶融・混練し、これをTダイよりシート状に押出した後、冷却ロールに接触等させることにより冷却固化させて、本発明の合成紙を得ることができる。このとき、押出機の加熱温度、冷却ロールの表面温度等は、用いる樹脂に応じ適当な温度に設定すればよい。基材となる樹脂としてポリ乳酸を用いた場合を例にとると、押出機のシリンダー平均温度、ダイス温度はそれぞれ180〜205℃、190〜215℃、冷却ロールの表面温度は50〜80℃として製造することができる。
【0011】なお、本発明の合成紙において、筆記性、印刷性を付与するためには、従来の合成紙において公知の技術を適用することができる。例えば、シート状にした上記樹脂の表面をエンボスロールや溶剤やコロナ放電にて処理したり、発泡、異種樹脂の混合による粒界の発生、水溶性塩の溶出等を利用してシート内部に多くの微細孔を生成させることにより、本発明の合成紙に一定の筆記性、印刷性を付与することができる。
【0012】しかし、より簡便かつ効果的に筆記性、印刷性を付与するためには、無機質微粒子、天然多糖類微粒子、タンパク質微粒子の使用が好ましい。即ち、これらの微粒子を、例えば、シート状にした上記樹脂の表面に定法により塗布したり、かかるシートの内部充填剤として使用することにより、通常の紙とほぼ同様の印刷性、筆記性が容易に達成できる。特に、これらの微粒子を内部充填剤として用いる場合には、前述した熱溶融押出法を採用することで、筆記性、印刷性に優れた生分解性合成紙を一工程で製造することができるので有利である。本発明においては、例えば、無機質微粒子としては酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、タルク、シリカ等を、天然多糖類微粒子としてはセルロース、キチン、キトサンの粉状物等、デンプン粒子やそのアセチル化物、メチル化物、カルボキシメチル化物等を、そしてタンパク質微粒子としては大豆タンパク、小麦タンパク、コーンタンパク、カゼイン等の粉状物等を用いることができる。
【0013】なお、本発明の合成紙において、かかる内部充填剤を用いる場合には、その含量は1.5〜60重量%であることを要する。内部充填剤の含量が1.5重量%末満では、十分な筆記性、印刷性を達成することができず、また、60重量%を超える場合には、これを含む樹脂組成物の成形性が悪化するため、合成紙自体の製造が困難となるからである。
【0014】
【作用】本発明においては、その基材としてデンプン−ポリビニルアルコール系ポリマーアロイ、ポリアルキレンアルカノエート、ポリカプロラクトン又はポリ乳酸を用いることにより、合成紙に生分解性を付与することが可能となった。
【0015】一方、これらの樹脂より製造されたシートは、包装材等として一般的な使用条件下で使用した場合であれば、3年程度の期間は、強度、耐水性、耐侯性等の面で、合成紙一般に用いられる他の熱可塑性合成樹脂製シートと同等の性能を十分保持できる。そのため、本発明の合成紙は、従来の合成紙と同様の使用にも何ら問題なく耐えることができるのである。
【0016】
【実施例】以下に、本発明を実施例に基づいて説明する。
【0017】[実施例1]デンプン比率32重量%のデンプン−ポリビニルアルコール系ポリマーアロイ(商品名『マタービー』、日本合成化学工業製)70重量%、無機充填剤としてタルク30重量%からなるペレットを、シリンダー平均温度195℃、ダイス温度205℃に設定した押出機に供給して溶融・混錬した後、Tダイより巾70mmで押出し、次いで表面温度65℃の冷却ロールに接触させて冷却固化することにより、厚さ約40μmの生分解性合成紙を得た。
【0018】得られた生分解性合成紙の耐水性、印刷性、生分解性についてテストした結果を表1に示す。
【0019】
【表1】

【0020】なお、表1において、耐水性、印刷性、生分解性は以下のようにして評価した。
耐水性:50℃の温水に試料を24時間浸漬後、その変形の有無を肉眼にて評価した。○は、変形が生じなかったことを表す。
印刷性:プロセスインキ(ニューチャンピオン藍(大日本インキ化学製))をRIテスターにて試料に印刷後、セットテスターを用いてインキ定着性を評価し、定着に要した時間が半日〜5分の場合は可、5分以内の場合は良で表した。
生分解性:8.6×5.4cmの試料片を、平成9年1月から8月までの8ケ月間土中に埋めて放置後、これを掘り出し、その状態を観察した。
【0021】[実施例2]ポリブチレンサクシネート及びポリブチレンサクシネートアジペートの1:1混合品であるポリアルキレンアルカノエート(商品名『ビオノーレ』、昭和高分子製)55重量%と無機充填剤としてタルク45重量%とからなるペレットを、シリンダー平均温度185℃、ダイス温度195℃に設定した押出機に供給して溶融・混錬した後、Tダイより巾70mmで押出し、次いで表面温度25℃の冷却ロールに接触させて冷却固化することにより、厚さ約40μmの生分解性合成紙を得た。
【0022】得られた生分解性合成紙の耐水性、印刷性、生分解性についてテストした結果を表1に示す。
【0023】[実施例3]ポリ−ε−カプロラクトン(商品名『プラクセル』、ダイセル化学工業製)48重量%、無機充填剤としてタルク52重量%からなるペレットを、シリンダー平均温度235℃、ダイス温度220℃に設定した押出機に供給して溶融・混錬した後、Tダイより巾70mmで押出し、次いで表面温度70℃の冷却ロールに接触させて冷却固化することにより、厚さ約40μmの生分解性合成紙を得た。
【0024】得られた生分解性合成紙の耐水性、印刷性、生分解性についてテストした結果を表1に示す。
【0025】[実施例4]L−乳酸からなるラクチドを開環重合して得られたポリ乳酸(商晶名『エコプラ』、カーギル社製)63重量%と無機充填剤としてタルク37重量%とからなるペレットを、シリンダー平均温度190℃、ダイス温度200℃に設定した押出機に供給して溶融・混錬した後、Tダイより巾70mmで押出し、次いで表面温度60℃の冷却ロールに接触させて冷却固化することにより、厚さ約40μmの生分解性合成紙を得た。
【0026】得られた生分解性合成紙の耐水性、印刷性、生分解性についてテストした結果を表1に示す。
【0027】[実施例5]L−乳酸を直接脱水重縮合して得られたポリ乳酸(商晶名『レイシア』、三井化学製)67重量%と無機充填剤としてタルク33重量%とからなるペレットを、実施例5と同様にして押出し、冷却固化させることにより、厚さ約40μmの生分解性合成紙を得た。
【0028】得られた生分解性合成紙の耐水性、印刷性、生分解性についてテストした結果を表1に示す。
【0029】[比較例1]ポリプロピレン(商品名『ショウアロマー』、昭和電工製)53重量%、無機充填剤としてタルク47重量%からなるペレットを、シリンダー平均温度230℃、ダイス温度240℃に設定した押出機に供給して溶融・混錬した後、Tダイより巾70mmで押出し、次いで表面温度10℃の冷却ロールに接触させて冷却固化することにより、厚さ約40μmの生分解性合成紙を得た。
【0030】得られた生分解性合成紙の耐水性、印刷性、生分解性についてテストした結果を表1に示す。
【0031】[参考例1]参考例として、市販のポリプロピレン製合成紙(商品名『ユポ』、王子油化合成紙製)の耐水性、印刷性、生分解性についてテストした結果を表1に示す。
【0032】
【発明の効果】本発明によれば、実用上十分な期間、強度、耐水性、耐侯性等の面で従来の合成紙と同等の性能を保持し、かつ、生分解性を有する合成紙が提供される。
【0033】かかる合成紙は、従来の合成紙としての使用にも耐え、しかも、その廃棄にあたっては、焼却等の特別な処理をしなくとも、自然界に放置するだけで微生物等により生分解され、環境中に長時間残留することがない。
【0034】従って、本発明によれば、低コストで廃棄処理ができ、その処理にあたって環境を汚染することもない、合成紙が提供される。
【0035】加えて、本発明の合成紙は、コンポスト化が可能であるため、資源の有効利用の面からも有用である。
【出願人】 【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
【出願日】 平成10年(1998)5月19日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】河澄 和夫
【公開番号】 特開平11−322962
【公開日】 平成11年(1999)11月26日
【出願番号】 特願平10−175288