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【発明の名称】 多孔質プラスチックの製造方法
【発明者】 【氏名】宮川 秀明

【要約】 【課題】広範な用途を持つ多孔質プラスチックを簡易に製造できる製造方法を確立する。

【解決手段】オレフィン系の樹脂の粒体4と水溶性の微細な添加材5を混合し加熱溶融した後に得られる固体の混合物6から当初添加した添加材5を水19により溶出させて除去して多孔質プラスチックを得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 オレフィン系の樹脂の粒体と水溶性の微細な添加材を混合し加熱溶融した後に得られる固体の混合物から当初添加した前記添加材を水により溶出させて除去する多孔質プラスチックの製造方法。
【請求項2】 オレフィン系の樹脂の粒体と水溶性の微細な添加材を混合し加熱溶融した混合物を射出成形し、その成形物から当初添加した前記添加材を水により溶出させて除去する多孔質プラスチックの製造方法。
【請求項3】 オレフィン系の樹脂の粒体と水溶性の微細な添加材との色を互いに異なる色にする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の多孔質プラスチックの製造方法。
【請求項4】 オレフィン系の樹脂の粒体と水溶性の微細な添加材との混合割合を1対9から2対8とする請求項1〜請求項3までのいずれかに記載の多孔質プラスチックの製造方法。
【請求項5】 オレフィン系の樹脂の粒体が、ポリエチレン又はポリプロピレンであり、水溶性の微細な添加材が塩化ナトリウム又は硫酸ナトリウムである請求項1〜請求項4までのいずれかに記載の多孔質プラスチックの製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、メタル軸受の油回収部材や吸音材やフィルタ等に用いられる多孔質プラスチックの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】広範な用途がある多孔質プラスチックは、従来においては100〜350μm程度の粉体に加工された樹脂を、その粉体状態を保持したまま熱により粉体相互を結合させることで連通した多孔質組成を得る方法や、特開昭61―85450号公報に示されているような方法で製造されている。前者は、図3に示すように、100〜350μm程度の粉体に加工されたポリエチレン又はポリプロピレンの粉状樹脂40を、圧縮成形機の金型41の成形空間に振動を加えながら自重によって定量を充填し、金型41を閉じて成形した後、加熱炉42で約220〜250℃の熱を10分〜15分加えて粉状樹脂40の粉状態を保持したまま熱により相互を結合させ連通した多孔質組成を得る仕方である。後者は、プラスチックフィルムやシートの片面に水溶性樹脂よりなる連続する線状の皮膜を形成し、これを積層し熱溶融させて一体化させた後、水溶液中で皮膜を溶出させて取り除き、連続的な通気孔を得る仕方である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記のような従来の多孔質プラスチックの製造方法において、粉状樹脂40を使うものでは、粉状のままの粉状樹脂40が取扱い難く、複雑な加熱制御を備えた加熱炉42も必要であり、自動化が困難である。即ち、ポリエチレンの粉状樹脂40は、静電気により金型41に付着するため、成形空間への自重により落下させての充填は随分面倒な作業となるうえ、付着した粉状樹脂40を金型41から除去する清掃にも手間がかかる。また、加熱し過ぎると表面が面状化し多孔質性を失うことになるため、加熱時の温度管理は難しく、複雑な加熱制御を備えた加熱炉42が必要となる。さらには、多孔組成の粗密を用途に応じて任意に変えることが困難であり、しかも表面を加熱溶融するためどうしても表面部の多孔質機能が損なわれ勝ちになるといった問題点もある。
【0004】一方、水溶性樹脂の皮膜を形成したプラスチックフィルム又はシートの積層体によるものは、多孔質といっても一連の通気孔による組成しか得られず、全体が多孔組成とはならないため、得られる多孔質プラスチックの用途は限定されたものとなる。
【0005】本発明は、上記した従来の問題点を解消するためになされたもので、本発明の課題とするところは、広範な用途を持つ多孔質プラスチックを簡易に製造できる製造方法を確立することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記課題を達成するために請求項1の発明は、オレフィン系の樹脂の粒体と水溶性の微細な添加材を混合し加熱溶融した後に得られる固体の混合物から当初添加した添加材を水により溶出させて除去する手段を採用する。
【0007】前記課題を達成するために請求項2の発明は、オレフィン系の樹脂の粒体と水溶性の微細な添加材を混合し加熱溶融した混合物を射出成形し、その成形物から当初添加した添加材を水により溶出させて除去する手段を採用する。
【0008】前記課題を達成するために請求項3の発明は、請求項1又は請求項2のいずれかに係る前記手段におけるオレフィン系の樹脂の粒体と水溶性の微細な添加材との色を互いに異なる色にする手段を採用する。
【0009】前記課題を達成するために請求項4の発明は、請求項1〜請求項3までのいずれかに係る前記手段におけるオレフィン系の樹脂の粒体と水溶性の微細な添加材との混合割合を1対9から2対8とする手段を採用する。
【0010】前記課題を達成するために請求項5の発明は、請求項1〜請求項4までのいずれかに係る前記手段におけるオレフィン系の樹脂の粒体を、ポリエチレン又はポリプロピレンとし、水溶性の微細な添加材を塩化ナトリウム又は硫酸ナトリウムとする手段を採用する。
【0011】
【発明の実施の形態】次に本発明の実施の形態を図1,2に基づいて説明する。この実施の形態で示す製造方法は、図2に示すようなオレフィン系の樹脂が粒状態で絡み合うように接合し、粒状部分1間に微細な連続した空隙2が不規則に表面及び内部の全体にわたり、ほぼ一様に多数分布する多孔質組成をした多孔質プラスチック3の製造方法である。この多孔質プラスチック3は、軽量で高い吸水性(吸油性)や吸音性を具備し、広範な用途を持つプラスチック材料となる。
【0012】多孔質プラスチック3の原材料は、ポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系樹脂の粒体4と、塩化ナトリウム又は硫酸ナトリウム等の水溶性の添加材5である。粒体4は市販されているプラスチック材料のペレットでもよいが、100〜350μm程度の粒径のものが添加材5との馴染みもよく混合がし易い。添加材5は微細な粉末又は粒状のものを使い、例えば重量比で90パーセントの添加材5に対し10パーセントの粒体4を混合した混合物6を作る。具体的には図1に示すように二軸押出機7の一軸のホッパ8から添加材5を、他の一軸のホッパ9から粒体4を投入し、自動計測手段により所定の割合になるように計量して、まず粒体4を二軸押出機7の混合部10に送り込む。混合部10には約170℃に加熱された二本のスクリュー11が回転しており、送り込まれた粒体4を加熱溶融させ流動化させる。
【0013】続いて混合部10に添加材5が送り込まれ、流動化した樹脂に添加材5が混ぜられ撹拌されて、流動性のある混合物6が混合部10において作られる。この混合物6は二軸押出機7の出口から麺状の形態で押出され、切断機12のカッタ13によって例えば2.5mm径で長さ3mm程に切断され、多数のペレット14にされる。以上は混合の工程であり、この後は成形工程に移行する。
【0014】成形工程は、射出成形機15を使って行なわれる。射出成形機15のホッパに多数のペレット14を投入し、射出成形機15の外周に巻かれたヒーターの熱と、射出成形機15のスクリュー16によりペレット14がせん断されるときの発熱とによりペレット14を溶融させ、流動化させ、これを予め定められた量ずつスクリュー16の回転により射出圧力をかけてノズルから金型17に流し込み、金型17の成形空間に充填する。金型17内で固化した混合物6を金型17を開放して取り出せば、混合物6の成形物18ができる。この成形物18は、多孔質組成でなく緻密な組成をしており、次の添加材除去工程で多孔組成に変化する。
【0015】添加材除去工程は、成形物18から添加材5を除去する工程であり、成形物18を水19に浸漬することにより行なわれる。浸漬する水19は停滞しているより流水の方が添加材の濃度も上がらず除去の進行が早く、確実性も高いので、流水槽を使って行なう方がよい。流水槽に成形物18を約24時間浸漬しておけば、成形物18に含有されていた水溶性の添加材5は水に溶出し、成形物18から除去される。添加材5の除去された成形物18は、添加材5の抜け跡による空隙2が表面及び内部の全体にでき、多孔質組成となる。これを自然乾燥又は強制乾燥させて空隙2から水19を除去すれば多孔質プラスチック3が得られる。
【0016】添加材除去工程で塩化ナトリウム等の添加材5が完全に除去されず、残留している多孔質プラスチック3を機械部品等に使うと、錆を誘発したりする不具合が生じるので添加材5の除去は確実に行なうことが重要である。粒体4と添加材5とを予め異なる色に着色しておくことにより、添加材5の除去が確実に行なわれたかどうかを簡単に識別することが可能になる。即ち、添加材5の除去前の混合物6は、粒体4の色と添加材5の色の混ざった色調をしているが、添加材5の除去が進行するにつれ添加材5の色調は消えていき、除去が完全に済めば成形物18は粒体4の色になるので、視認により添加材5の除去を確認することができ、添加材除去工程の工程管理が容易になるうえ、品質も高く保持することができる。
【0017】盤状やブロックの多孔質プラスチック3を製造する場合には、オレフィン系の樹脂の粒体4と添加材5を混合し加熱溶融した後に、盤状やブロックの固体の混合物6とし、この混合物6から当初添加した添加材5を添加材除去工程により除去すればよい。また、粒体4と添加材5を混合し、一旦この混合物6をペレット14にする方が扱い易く射出成形には向いているが、加熱溶融した混合物6をそのまま射出成形機15に送り込んで射出成形し、その成形物18から添加材除去工程で添加材5を除去しても前述と同様の多孔質プラスチック3を製造することができる。樹脂の粒体4と添加材5との混合割合は多孔質組成の多孔状態を決定するものであり、その割合を調節することにより用途に応じた空隙2を持つ多孔質プラスチック3を得ることができる。毛細管現象による吸水性の高い多孔質プラスチック3の場合には前述のように粒体4と添加材5とを重量比で1対9とすると例えば油回収率は90パーセントと高く、この割合による多孔質プラスチック3は吸音性も高く、吸音材にも適している。混合比は2対8程度までは60パーセントの油回収率が得られるが3対7になると多孔質による機能は喪失する。
【0018】添加材5は水溶性の形状保持の可能な微細なものであればよいが、塩化ナトリウム又は硫酸ナトリウムが安価でもあり最も利用しやすく、効果的に多孔質組成を得ることができる。いずれにしろ、粉状の樹脂を直接自重を利用して金型に充填することはなく、複雑な加熱制御を備えた加熱炉等の設備も不要であり、簡易に低コストで多孔質プラスチック3を製造することが可能である。前述の各工程は容易に自動化が可能であり多孔質プラスチック3を容易に量産することができる。
【0019】
【発明の効果】以上説明したとおり請求項1の発明によれば、広範な用途を持つ多孔質プラスチックを簡易に製造することができる。
【0020】請求項2の発明によれば、広範な用途を持つ多孔質プラスチックを成形物として簡易に製造することができる。
【0021】請求項3の発明によれば、請求項1又は請求項2のいずれかに係る前記効果とともに添加材の除去の進行確認が容易になり、品質を高く保持することができる。
【0022】請求項4の発明によれば、請求項1〜請求項3までのいずれかに係る前記効果とともに吸水性及び吸音性の優れた多孔質プラスチックが得られる。
【0023】請求項5の発明によれば、請求項1〜請求項4までのいずれかに係る前記効果とともに安価で利用し易い材料で、多孔質プラスチックを製造することができる。
【出願人】 【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
【出願日】 平成9年(1997)8月25日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 金雄 (外2名)
【公開番号】 特開平11−60787
【公開日】 平成11年(1999)3月5日
【出願番号】 特願平9−227864