| 【発明の名称】 |
ポリスルホン溶液の調製方法およびポリスルホンの成形方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】英加 善広
【氏名】島垣 昌明
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| 【要約】 |
【課題】ポリスルホン溶液の製造〜貯蔵・保存の間、白濁を防止もしくは抑制するポリスルホン溶液の調製方法、ポリスルホン溶液の安定性や成形時の生産性を高めることができるポリスルホン溶液の成形機等への供給方法と成形方法を提供する。
【解決手段】この発明のポリスルホン溶液の調製方法は、ポリスルホンをその溶媒に溶解し、溶解〜保存の温度を80℃以上に維持するもので、このように調製されたポリスルホン溶液は成形に供されるが、その際、そのポリスルホン溶液を冷却することなく、もしくは所定の成形温度に冷却して供給成形される。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ポリスルホンをその溶媒に溶解し、それを80℃以上の温度に維持することを特徴とするポリスルホン溶液の調製方法。 【請求項2】 少なくともポリスルホンの溶解、送液および濾過をとおして、該温度を維持することを特徴とする請求項1記載のポリスルホン溶液の調製方法。 【請求項3】 前記温度が90℃以上であることを特徴とする請求項1または2記載のポリスルホン溶液の調製方法。 【請求項4】 前記ポリスルホン溶液が、貧溶媒および/または親水性高分子物質を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリスルホン溶液の調製方法。 【請求項5】 前記親水性高分子物質が、ポリビニルピロリドンであることを特徴とする請求項4記載のポリスルホン溶液の調製方法。 【請求項6】 請求項1〜5のいずれかの方法で調製されたポリスルホン溶液を成形に供することを特徴とするポリスルホンの成形方法。 【請求項7】 前記ポリスルホン溶液を成形に供するに際し、該ポリスルホン溶液を冷却することなく成形機に供給することを特徴とする請求項6記載のポリスルホンの成形方法。 【請求項8】 前記ポリスルホン溶液を成形に供するに際し、該ポリスルホン溶液の温度を所定の成形温度に冷却して成形機に供給することを特徴とする請求項6記載のポリスルホン溶液の成形方法。 【請求項9】 前記成形温度が5〜80℃であることを特徴とする請求項8記載のポリスルホンの成形方法。 【請求項10】 前記ポリスルホン溶液の供給がギアポンプによりなされるものであることを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載のポリスルホン溶液の成形方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、ポリスルホン溶液の白濁を抑制し安定に調製する方法、ポリスルホン溶液の生産性に優れた成形機等への供給とポリスルホンの成形方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】ポリスルホンは耐熱性に優れており、透析膜をはじめとして種々の分離膜やフィルムなどに用いられている。しかしながら、製膜用に調製されたポリスルホン溶液は、時間の経過とともに白濁することが知られている。また、この白濁物がポリスルホンの繰り返し単位数個が環化した環状オリゴマーの結晶物であることもすでに知られている。ポリスルホン溶液中に析出してくるこの環状オリゴマー結晶は、送液配管内等に沈着したり、フィルターの目詰まりを起こしたりして配管内の圧損を引き起こし、ひいては生産性を低下させる原因となっている。 【0003】この環状オリゴマーは、原材料であるポリスルホンチップ中にあらかじめ過飽和に存在しており、ポリスルホン溶液の通過過程におけるギアポンプやフィルターによるせん断応力により、核生成が加速されて白濁が起こる。 【0004】従来、かかる白濁問題を解決するために、特開平8−311202号公報で提案されているように、ポリスルホン溶液中の環状オリゴマーを除去してから成形に供するなどの手段が講じられてきたが、このように環状物を除去する工程が増えてしまうということの他に、環状オリゴマーの析出にも時間がかかるというような課題があった。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、かかる従来技術の欠点を改良し、ポリスルホン溶液の製造〜貯蔵・保存の間、白濁を防止〜抑制するポリスルホン溶液の調製方法を提供することにある。 【0006】本発明の他の目的は、上記ポリスルホン溶液を安定性して成形機等に供給でき、成形時の生産性を高めることができるポリスルホンの成形方法を提供することにある。 【0007】 【課題を解決するための手段】前記課題を解決するために本発明のポリスルホン溶液の調製方法は、ポリスルホンをその溶媒に溶解して溶液とし、それを80℃以上の温度に維持することを特徴とするもので、具体的には、少なくともポリスルホンの溶解、送液および濾過の製造過程をとおして、その温度を維持することを特徴とするもので、前記調製のための温度はなお好ましくは90℃以上である。 【0008】また、本発明の前記ポリスルホン溶液は、好ましくは他の成分として、水等のポリスルホンの貧溶媒および/またはポリビニルピロリドンのような親水性高分子物質等の添加物を含有することができる。 【0009】本発明で調製されたポリスルホン溶液は、成型機や口金等の成形機に送られ成形に供される。前記ポリスルホン溶液を成形に供するに際しては、ポリスルホン溶液を冷却することなく成形機に供給してもよく、またポリスルホン溶液の温度を所定の成形温度に冷却して成形機に供給し成形することもできる。本発明では、ポリスルホン溶液を好適には5〜80℃の成形温度に冷却して供給し成形することができ、ポリスルホン溶液の供給は好ましくはギアポンプによりなされる。 【0010】 【発明の実施の形態】本発明で用いられるポリスルホンは、主鎖に芳香環、スルフォニル基およびエーテル基をもつもので、例えば、次式(1)(2)の化学式で示されるポリスルホンが好適に使用されるが、本発明ではこれらに限定されない。式中のnは、例えば50〜80の如き整数である。 【0011】 【化1】
【化2】
ポリスルホンの具体例としては、ユーデルポリスルホンPー1700、Pー3500(テイジンアモコ社製)、ウルトラソンS3010、S6010(BASF社製)、ビクトレックス(住友化学)、レーデルA(テイジンアモコ社製)、ウルトラソンE(BASF社製)等のポリスルホンが挙げられる。 【0012】本発明のポリスルホン溶液は、ポリスルホンをその溶媒に溶解せしめたものであり、ポリスルホンの溶媒としては、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドンなどの沸点が80℃を超える溶媒が挙げられるが、特にこれらに限定されない。また、溶媒は2種類以上の溶媒を混合して使用することもできる。 【0013】ポリスルホンと溶媒の使用割合および濃度は公知例に従うが、分離膜を形成する場合には、ポリスルホンの濃度は5重量%以上50重量%以下が望ましく、この範囲をはずれる濃度では分離膜を形成しにくい。 【0014】本発明のポリスルホン溶液には、本発明の効果を妨げない範囲で、他の必要な添加物を配合することができる。 【0015】本発明でいうポリスルホン溶液の添加物としては、ポリスルホンの貧溶媒や親水性高分子化合物などが挙げられる。ポリスルホンの貧溶媒は、膜構造を決定するために、ポリスルホン溶液の相分離状態を制御する目的で添加されるもので、具体的には水、アセトンおよびメタノールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。しかしながら、安価で利用しやすいという点で、水が特に好ましい。水としては、重金属イオン等が含まれると、ポリスルホン成形体の機械的劣化が起こりやすいため、RO水、イオン交換水、超純水が好ましく用いられる。 【0016】ポリスルホン溶液中の水の割合は、ポリスルホン自身が溶液中に析出しないという観点から3%以下が好ましい。ただし、ポリスルホンに対する凝固性が低い添加物の場合はさらに多く添加することができる。 【0017】また、親水性高分子化合物は、(1)ポリスルホン溶液のミクロ相分離構造を制御して膜構造を決定する、(2)膜の孔を形成する、(3)膜自体に親水性を付与する、特に人工腎臓のような生体材料の場合は抗血栓性を付与する目的で添加されるもので、具体的にはポリビニルピロリドンおよびポリエチレングリコールなどの親水性高分子などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。しかしながら、膜の親水性付与の効果が高く、製膜原液の増粘効果をもつ点でポリビニルピロリドンが特に好ましい。 【0018】ポリスルホン溶液中の親水性高分子化合物の配合割合は公知例に従うが、ポリビニルピロリドンの場合は30重量%以下が望ましく、ポリエチレングリコールの場合は、75重量%未満が好ましい。 【0019】本発明では、少なくともポリスルホン溶液の製造から貯蔵・保存に至る工程間、さらには保存時において、例えば、ポリスルホンの溶解、送液、濾過、貯蔵・保存において成形等に供されるまでは、その温度を80℃以上、さらに好ましくは90℃以上の温度で管理、コントロールすることが重要である。この温度に維持することによって、ポリスルホン溶液の白濁が抑制され、貯蔵による配管等の冷却部分での白濁開始を遅延させることができる。 【0020】なお、本発明でいう白濁とは、ポリスルホンの溶液中に白色微結晶が浮遊した状態を目視で観察できる状態をいう。 【0021】本発明におけるコントロール温度の上限は、使用する溶媒や添加物の種類によって制限される。本発明の実施においては、かかる温度の上限は、使用される溶媒の沸点以下であることはもちろんであるが、例えば、親水性高分子化合物としてポリビニルピロリドンを添加物として用いる場合、100℃以上ではポリビニルピロリドンが着色しゲル化するため、溶解、送液、濾過および貯蔵・保存におけるそれぞれの温度は、80℃以上100℃以下、さらには90℃以上100℃以下が好ましい。 【0022】本発明におけるポリスルホン溶液は、製膜や紡糸等の成形に供される。すなわち、ポリスルホンはその優れた耐熱性を利用して、透析膜をはじめとして種々の分離膜やフィルム等の成形に用いられる。しかしながら、既述のように製膜等の成形用に準備調製されたポリスルホン溶液は、時間の経過とともに白濁するが、本発明においては、上記温度のコントロールによってこの白濁を回避ないし遅延させることができる。 【0023】また、口金吐出や押し出し時等、成形時のポリスルホン溶液の温度は、中空糸等の得られる成形品の性能に大きく影響を与えるので、吐出等成形の際には、ポリスルホン溶液は所定温度に冷却され、紡糸機等に供給されるのが普通である。ポリスルホン溶液の白濁を起こさないようにするためには、または白濁を遅延させるためには、ポリスルホン溶液の温度を80℃以上、さらに好ましくは90℃以上に維持することが必要であり、冷却すれば通常は白濁が起こる。しかしながら、ポリスルホン溶液を吐出等成形直前まで、すなわち、溶解、送液および濾過、さらには継続して貯蔵時にポリスルホン溶液の温度を上記のような温度に保持することによって、驚くべきことに、吐出等の成形時に成形温度にまで温度を下げても白濁が抑制され、生産性を高めることができることが分かった。 【0024】具体的には、例えば従来のポリスルホン溶液の場合、白濁には1日を要しないが、本発明のポリスルホン溶液の場合は、少なくとも3日、通常7日程度白濁を遅延させることができる。 【0025】このように本発明で調製されたポリスルホン溶液は、成型機や紡糸機等の成形機に送られ成形に供されるが、ポリスルホン溶液を成形に供するに際しては、ポリスルホン溶液を冷却することなく成形機に供給してもよく、またポリスルホン溶液の温度を所定の成形温度に冷却して成形機に供給し成形することもできる。本発明では、ポリスルホン溶液を好適には5〜80℃の所定の成形温度に冷却して供給し成形することができる。 【0026】本発明のポリスルホン溶液はこのようにして、成型機や口金等の成形機に供給・送液されるが、ポリスルホン溶液の送液供給は、粘度の高いポリスルホン溶液の送液供給に適したギアポンプによる方法が好ましく用いられる。ちなみに、本発明におけるポリスルホン溶液の30℃での粘度は、使用する添加剤によっても変化するが、通常5ポイズ〜300ポイズ程度である。 【0027】これまで、ポリスルホン溶液の白濁現象を考察する際に、ポリスルホン溶液の白濁現象を再現性よく観察することができなかった。例えば、同様に調製されたポリスルホン溶液でも白濁が始まるまでの期間が一定でなかったり、また、白濁の状態が不均一であるため、濁度を評価する際に400nmの吸光度を測定しても、目視で白濁の始まっている溶液の吸光度が増大せず、白濁の定量化が難しかった。そこで、ポリスルホン溶液を調製後、所定温度でギアポンプおよびフィルターで送液および濾過した溶液で白濁現象を観察することにより、再現性よく溶液が白濁し、白濁は溶液全体に均一に起こるため、吸光度による定量化も可能となった。このポリスルホン溶液の白濁化の評価系を確立できたことにより、ポリスルホン溶液の白濁を抑制する方法が検討できるようになった。 【0028】本発明のポリスルホン溶液は、透析膜をはじめとして種々の分離膜やフィルムなどの製造に用いられ、特にポリスルホンの中空糸膜の製造に好適である。また人工腎臓、水処理膜、気体分離膜、吸着体などの用途に用いられ、特に血液と接触するような成形体に好適に用いられる。 【0029】 【実施例】 (実施例1)18gのユーデルポリスルホンP−3500(アモコ社製)、6gのポリビニルピロリドンK30(和光純薬社製)および4gのポリビニルピロリドンK90(和光純薬社製)を、水0.5gおよびジメチルアセトアミド72.5gに90℃で溶解しポリスルホン溶液とした。ポリスルホン溶液の90℃における粘度は14ポイズであった。このポリスルホン溶液を90℃に保持したまま、ギアポンプ(1回転で0.15cc送液)を用いて毎分9mlで送液し、5μmのステンレス製メッシュフィルターで濾過した。得られた溶液を90℃で貯蔵したところ、1週間経過後でも白濁は起こらなかった。結果を表1に示す。 【0030】また別に、90℃で3日保管した溶液を、50℃に冷却して紡糸機に供給し、中空糸膜を製造したところ、中空糸膜性能に問題はなかった。50℃におけるポリスルホン溶液の粘度は43ボイズであった。 【0031】(実施例2)実施例1で得られたポリスルホン溶液を80℃に保持したまま、ギアポンプ(1回転で0.15cc送液)毎分9mlで送液し、5μmのステンレス製メッシュフィルターで濾過した。得られた溶液を80℃で貯蔵したところ、白濁開始期間が3日に延長された。結果を表1に示す。 【0032】また別に、80℃で3日保管した溶液を、50℃に冷却して紡糸機に供給し、中空糸膜を製造したところ、中空糸膜性能に問題はなかった。 (実施例3)実施例1で得られたポリスルホン溶液を90℃に保持したまま、ギアポンプ(1回転で0.15cc送液)毎分9mlで送液し、5μmのステンレス製メッシュフィルターで濾過した。得られた溶液を50℃で貯蔵したところ、白濁開始期間が3日に延長された。結果を表1に示す。 【0033】50℃で3日保管後の溶液を、紡糸機に供給し、中空糸膜を製造したところ、中空糸膜性能に問題はなかった。 (実施例4)18gのウルトラソンS6010(BASF社製)、9gのポリビニルピロリドンK30(和光純薬社製)を、水0.5gおよびジメチルアセトアミド72.5gに90℃で溶解しポリスルホン溶液とした。このポリスルホン溶液を90℃に保持したまま、ギアポンプ(1回転で0.15cc送液)を用いて毎分9mlで送液し、5μmのステンレス製メッシュフィルターで濾過した。得られた溶液を90℃で貯蔵したところ、1週間経過後でも白濁は起こらなかった。結果を表1に示す。 【0034】90℃で3日保管後の溶液を、50℃に冷却して紡糸機に供給し、中空糸膜を製造したところ、性能に問題はなかった。 【0035】(比較例)実施例1と同じ組成のポリスルホン溶液を50℃で製造しその温度を保持したまま、ギアポンプ(1回転で0.15cc送液)を用いて毎分9mlで送液し、5μmのステンレス製メッシュフィルターで濾過した。得られた溶液を50℃で貯蔵したところ、翌日に溶液は白濁した。結果を表1に示す。 【0036】 【表1】
【0037】 【発明の効果】本発明のポリスルホン溶液は、溶液貯蔵時においても白濁が起こりにくいため、配管内での結晶の沈着も抑えられ、ポリスルホンの製膜等の成形時に安定で生産性が向上するという点で有用である。すなわち、ポリスルホン溶液の白濁の原因となる環状オリゴマー結晶が、配管内に沈着したり、フィルターの目詰まりを起こしたりして配管内の圧損を誘引し、生産性を低下させる原因となっているが、本発明によれば、この白濁を抑制もしくは遅延させ、ポリスルホン成形品の生産性を向上させることができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003159 【氏名又は名称】東レ株式会社
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| 【出願日】 |
平成9年(1997)8月26日 |
| 【代理人】 |
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| 【公開番号】 |
特開平11−60738 |
| 【公開日】 |
平成11年(1999)3月5日 |
| 【出願番号】 |
特願平9−229843 |
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