トップ :: C 化学 冶金 :: C08 有機高分子化合物;その製造または化学的加工;それに基づく組成物




【発明の名称】 光カチオン重合性エポキシ樹脂系固形組成物及び物品
【発明者】 【氏名】梅山 智江

【氏名】小林 巧

【氏名】川田 義浩

【氏名】今泉 雅裕

【氏名】浅野 豊文

【氏名】新本 昭樹

【要約】 【課題】貯蔵安定性に優れ、平滑な塗膜を与えるエポキシ樹脂系固形組成物の開発。

【解決手段】式(1)
【特許請求の範囲】
【請求項1】式(1)
【化1】

(式中、R1はC3〜C6のiso−アルキル基またはC4〜C6のtert−アルキル基を表し、R2は水素原子、ハロゲン原子またはC1〜C6のアルキル基を表し、mは0〜3の整数を表す。)で示されるエポキシ樹脂及び光カチオン重合開始剤を含有することを特徴とする光カチオン重合性エポキシ樹脂系固形組成物。
【請求項2】R1がtert−ブチル基、R2がメチル基、mが1である請求項1記載の光カチオン重合性エポキシ樹脂系固形組成物。
【請求項3】式(1)で示されるエポキシ樹脂を全エポキシ樹脂中5%〜100%含有することを特徴とする請求項1または2記載の光カチオン重合性エポキシ樹脂系固形組成物。
【請求項4】光カチオン重合開始剤が下記一般式(2)
【化2】

(式中、R3、R4はそれぞれ水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシアルキルオキシ基またはアルコキシ基を表し、R5、R6はそれぞれ水素原子、ハロゲン原子またはアルキル基を表し、XはSbF6、PF6、AsF6、BF4またはB(C6F5)4を表す。)で示される化合物または一般式(3)
【化3】

(式中、R7、R8はそれぞれ水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシアルキルオキシ基またはアルコキシ基を表し、R9は水素原子、ハロゲン原子またはアルキル基を表し、XはSbF6、PF6、AsF6、BF4またはB(C6F5)4をあらわす。)で示される化合物である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の光カチオン重合性エポキシ樹脂系固形組成物。
【請求項5】請求項1ないし4のいずれか1項に記載の組成物の硬化被膜を有する物品。
【請求項6】プリント配線基板である請求項5の物品。
【請求項7】請求項1ないし5のいずれか1項に記載の組成物の粉末からなる粉体塗料。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は紫外線照射により硬化するエポキシ樹脂系固形組成物に関し、更に詳しくは、貯蔵安定性、含浸性に優れ平滑な塗膜を与えるエポキシ樹脂系固形組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】粉体塗料に代表されるエポキシ樹脂系固形組成物は、通常熱により硬化し、その硬化温度は150℃以上と高く、耐熱温度が低い基材にエポキシ樹脂系固形組成物を塗布したりする場合には使用できない。
【0003】低温硬化や、短時間硬化を行なうためには、硬化促進剤を多量に配合したり、多官能エポキシ樹脂を用いる必要がある。しかしこの様な場合には、貯蔵中ゲル化が進み、塗膜の荒れを起こしたり、物性が低下したりするため保存安定性に問題を生じる。また、エポキシ樹脂系粉体塗料の低温速硬化を計る方法として、アミン系硬化剤を使用する方法が知られているが、アミン系硬化剤もまた塗料の保存安定性を低下させるという問題を有している。保存安定性を上げる方法として、硬化促進剤をマイクロカプセル化する方法が知られているが、混練中にカプセルが破壊されて促進剤が溶出し、保存安定性が損なわれたり、逆に硬化中にカプセルが破壊せず、反応性を低下させてしまうという問題がある。
【0004】また、低温硬化時に平滑な塗膜を形成させるためには、溶融粘度の低い樹脂の使用を必要とするが、そのようなエポキシ樹脂は軟化点が低く、貯蔵中にブロッキングを起こすため使用に耐えない。
【0005】これらの熱硬化に起因する問題を解決するために紫外線による光カチオン重合法が提案されている。光カチオン重合法により硬化可能な組成物であれば暗所に貯蔵する限り保存安定性は問題なく、また、塗布する基材も、組成物が溶融し塗膜を形成出来る温度での耐熱性があれば充分である。従って、溶剤系塗料に頼らざるを得なかったものへも塗布できるようになり、有機溶剤による環境汚染もなく、作業性も改善される。また高温焼付の必要がないため、エネルギーコストの低減を計ることが出来、更に、数秒〜数分レベルで硬化するため生産性にも優れる。
【0006】光カチオン重合によって硬化するエポキシ樹脂系組成物としては、脂環型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、オニウム塩、感光性芳香族ジアゾニウム塩等の光重合開始剤、その他の添加剤を配合したものが良く知られている。
【0007】エポキシ樹脂組成物が固形であるものとしては、例えば特開平7−252344では、ガラス転移温度(Tg)が35℃以上のエポキシ樹脂混合物と、多官能求核性連鎖移動剤、スルホニウム塩を配合したものが提案されている。しかしながら、この場合ビスフェノールA型エポキシ樹脂を主成分としているため、貯蔵安定性と塗膜平滑性を同時に満足できるものではない。すなわち、良好な塗膜平滑性を持たせるためには、出来るだけ溶融粘度の低いエポキシ樹脂を選択する必要があるが、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の場合、溶融粘度が低いほど、エポキシ当量もしくは軟化点が低いため、ブロッキングを起こし易く、貯蔵安定性の面で問題がある。そのため作業時に低温を維持する必要があり、また、サンプルを長時間室温に放置できない等取り扱い面でも問題を残している。良好な貯蔵安定性を得るためには、高分子量のエポキシ樹脂を用いなければならないがこの場合、塗膜平滑性の点で問題がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】貯蔵安定性、塗膜平滑性に優れ、臭気のない反応性に優れた光カチオン重合性エポキシ樹脂系固形組成物が望まれている。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前述したような課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、上記性能を同時に満足する組成物を得られることを見いだしたものである。即ち、本発明は、(1)式(1)
【0010】
【化4】

【0011】(式中、R1はC3〜C6のiso−アルキル基またはC4〜C6のtert−アルキル基を表し、R2は水素原子、ハロゲン原子またはC1〜C6のアルキル基を表し、mは0〜3の整数を表す。)で示されるエポキシ樹脂及び光カチオン重合開始剤を含有することを特徴とする光カチオン重合性エポキシ樹脂系固形組成物、(2)R1がtert−ブチル基、R2がメチル基、mが1である(1)の光カチオン重合性エポキシ樹脂系固形組成物、(3)式(1)で示されるエポキシ樹脂を全エポキシ樹脂中5%〜100%含有することを特徴とする(1)または(2)記載の光カチオン重合性エポキシ樹脂系固形組成物、(4)光カチオン重合開始剤が下記一般式(2)
【0012】
【化5】

【0013】(式中、R3、R4はそれぞれ水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシアルキルオキシ基またはアルコキシ基を表し、R5、R6はそれぞれ水素原子、ハロゲン原子またはアルキル基を表し、XはSbF6、PF6、AsF6、BF4またはB(C6F5)4をあらわす。)で示される化合物または一般式(3)
【0014】
【化6】

【0015】(式中、R7、R8はそれぞれ水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシアルキルオキシ基またはアルコキシ基を表し、R9は水素原子、ハロゲン原子またはアルキル基を表し、XはSbF6、PF6、AsF6、BF4またはB(C6F5)4をあらわす。)で示される化合物である(1)ないし(3)のいずれか1項に記載の光カチオン重合性エポキシ樹脂系固形組成物、(5)(1)ないし(4)のいずれか1項に記載の組成物の硬化被膜を有する物品、(6)プリント配線基板である(5)の物品、(7)(1)ないし(5)のいずれか1項に記載の組成物の粉末からなる粉体塗料、に関する。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明の組成物に於いて用いられるエポキシ樹脂は、式(1)の構造式を有する4,4’−ジヒドロキシフェニルスルフィド誘導体から成るエポキシ樹脂であり、R1はiso−プロピル基、iso−ブチル基、iso−アミル基、iso−ヘキシル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、tert−ヘキシル基等のC3〜C6のiso−アルキル基や、C4〜C6のtert−アルキル基を表し、R2は、水素原子、Cl、Br等のハロゲン原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等のC1〜C6のアルキル基を表し、好ましくは、R1がtert−ブチル基、R2がメチル基で、R2が5、5’の位置にあるエポキシ樹脂である。
【0017】上記一般式(1)のエポキシ樹脂は、結晶性を示し、同レベルの融点のビスフェノールA型エポキシ樹脂と比較し、溶融時の粘度が著しく低いという特徴を有しているため、貯蔵安定性を阻害することなく組成物の低溶融粘度化が計られ、平滑な塗膜を形成することができる。その配合量としては、組成物中の全エポキシ樹脂に対し、5〜100%であり、好ましくは10〜100%であり、更に好ましくは、20〜100%である。5%より少ない場合は効果が小さい。
【0018】一般式(1)で示されるエポキシ樹脂は、他のエポキシ樹脂を組み合わせて用いても良い。併用しても良いエポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4’−ビフェニルフェノール、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリレン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェノール)、トリスヒドロキシフェニルメタン、ピロガロール、ジイソプロピリデン骨格を有するフェノール類、1,1−ジ−4−ヒドロキシフェニルフルオレン等のフルオレン骨格を有するフェノール類、フェノール化ポリブタジエン等のポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂、フェノール、クレゾール類、エチルフェノール類、ブチルフェノール類、オクチルフェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等の各種フェノールを原料とするノボラック樹脂、キシリレン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有フェノールノボラック樹脂、フルオレン骨格含有フェノールノボラック樹脂等の各種ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物、シクロヘキサン等の脂肪族骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、イソシアヌル環、ヒダントイン環等の複素環を有する複素環式エポキシ樹脂、ブロム化ビスフェノールA、ブロム化ビスフェノールF、ブロム化ビスフェノールS、ブロム化フェノールノボラック、ブロム化クレゾールノボラック、クロル化ビスフェノールS、クロル化ビスフェノールA等のハロゲン化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂が挙げられる。
【0019】本発明で使用する光カチオン重合開始剤は、特に制限ないが、反応性、特に顔料を含有した場合反応性、開始剤特有の臭気等を考慮すると、チオキサントン構造を有するスルホニウム塩やベンゾフェノン構造を有するスルホニウム塩が好ましく、特に常温で固体状のものが好ましい。また、通常照明に使用される蛍光灯による紫外線程度では解離せず、開始剤としての貯蔵安定性にも優れているものが好ましく、例えば上記一般式(2)で示されるチオキサントン構造を有するスルホニウム塩や上記一般式(3)で示されるベンゾフェノン構造を有するスルホニウム塩が例示される。上記一般式(2)で示されるチオキサントン構造を有するスルホニウム塩は特開平8−165290号公報に、又上記一般式(3)で示されるベンゾフェノン構造を有するスルホニウム塩は特開平7−82244公報に記載されている方法に準じて製造することが出来る。
【0020】一般式(2)において、R7、R8はそれぞれ水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシアルキルオキシ基、アルコキシ基を表し、R9、R10は水素原子、ハロゲン原子またはアルキル基を表し、XはSbF6、PF6、AsF6、BF4、またはB(C6F5)4をあらわす。アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等のC1〜C5のアルキル基が挙げられ、ハロゲン原子としては例えばF、Cl、Br、I等が挙げられ、アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基等のC1〜C5のアルコキシ基が挙げられ、ヒドロキシアルキルオキシ基としては、例えばヒドロキシメチルオキシ基、ヒドロキシエチルオキシ基等のC1〜C5のヒドロキシアルキルオキシ基が挙げられる。次に式(2)の化合物の具体例を表1に示す。
【0021】
【表1】
表1 化合物No.R3 R4 R5 R6 X1 メチル基 メチル基 i−プロピル基 H SbF62 メチル基 メチル基 i−プロピル基 H PF63 メチル基 メチル基 Cl H PF64 メトキシ基 メトキシ基 i−プロピル基 H PF6【0022】一般式(3)において、R11、R12はそれぞれ水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシアルキルオキシ基、アルコキシ基を表し、R13は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基を表し、XはSbF6、PF6、AsF6、BF4、またはB(C6F5)4をあらわす。アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等のC1〜C5のアルキル基が挙げられ、ハロゲン原子としては例えばF、Cl、Br、I等が挙げられ、アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基等のC1〜C5のアルコキシ基が挙げられ、ヒドロキシアルキルオキシ基としては、例えばヒドロキシメチルオキシ基、ヒドロキシエチルオキシ基等のC1〜C5のヒドロキシアルキルオキシ基が挙げられる。次に式(3)の化合物の具体例を表2に示す。
【0023】
【表2】
表2 化合物No.R7 R8 R9 X5 メチル基 メチル基 t−ブチル基 PF66 F F H PF67 Br Br Cl SbF6【0024】これらのスルホニウム塩は、エポキシ樹脂100重量部に対して1〜5重量部使用することが好ましい。又、他の従来知られている光重合開始剤と併用することができる。
【0025】本発明の組成物は、連鎖移動剤、増感剤、着色剤、ワキ防止剤、レベリング剤、カップリング剤、難燃剤、無機充填剤等配合することが出来る。また必要に応じ、硬化剤を適宜組み合わせてもよい。
【0026】連鎖移動剤としては、例えばカルボン酸類、アルデヒド類、フェノール類、アルコール類等が挙げられる。カルボン酸類としては、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、二量化リノレン酸、三量化リノレン酸のような脂肪族ポリカルボン酸、酒石酸、乳酸、クエン酸のような脂肪族ヒドロキシカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、4−メチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、4−メチルヘキサヒドロフタル酸のような脂環式ポリカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ベンゾフェニルテトラカルボン酸のような芳香族ポリカルボン酸等の多価カルボン酸等が挙げられる。
【0027】アルデヒド類としては、例えばマロンジアルデヒド、スクシニルアルデヒド、グルタルアルデヒド、イソフタルジアルデヒド、テレフタルアルデヒド、サリチルアルデヒドのような脂肪族、アルアリファチック、芳香族アルデヒド等が挙げられる。
【0028】更に、フェノール類としては、例えばレゾルシノール、ヒドロキノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4−ジヒドロキシビフェニルスルフォン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンのような多価、単核、多核フェノール等が挙げられる。
【0029】アルコール類としては、例えばエチレングリコール、ポリエチレングリコール(2ないし100未満の重合程度)、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド−ポリエチレンオキシドブロックコポリマー、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2’−プロピル−1,3−プロパンジオール、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレート、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3(4),8(9)−ビス(ヒドロキシメチル)−トリシクロ[5.2.1.0(2,6(上付1/4角))]デカン、1,1,1−トリヒドロキシメチルプロパン、ビス(2−ヒドロキシエチルヒドロキノン)エーテル、酸価が110mgKOH/gより少ないヒドロキシ基数を有するヒドロキシル末端ポリエステル、β−ヒドロキシエーテル、ε−カプロラクタンによりグラフト化されている第二級ヒドロキシ基、あるいは多価アルコールとε−カプロラクトンとの反応生成物のような分子中に少なくとも1つ好ましくは2つの脂肪族第一級ヒドロキシ基を含む化合物の全てが挙げられる。使用量としては、通常グリシジル基1当量につき連鎖移動剤の官能基が0〜1当量であり、好ましくは0.05〜0.8当量である。これら連鎖移動剤は、反応性希釈剤、例えば4−ブチロールラクトン、1,2−プロピレンカーボネート、またはジオキソランのような環状アセタールに溶解して使用しても良い。
【0030】増感剤としては、アントラセン、アントラセン誘導体、ペリレンもしくは他の多核芳香族化合物が挙げられる。
【0031】硬化剤としては、例えば、トリスヒドロキシフェニルメタン、ジイソプロピリデン骨格を有するフェノール類、1,1−ジ−4−ヒドロキシフェニルフルオレン等のフルオレン骨格を有するフェノール類、フェノール化ポリブタジエン、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリレン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェノール)、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールC、ビスフェノールO(4,4’−ジヒドロキシビフェニルエーテル)、4,4’−ビフェニルフェノール等のビスフェノール類が挙げられる。これらフェノール系硬化剤はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基等のC1〜12のアルキル基、フッ素、塩素、臭素のハロゲン基、ニトロ基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のC1〜4のアルコキシ基、アミノ基及びジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基に代表される各種アルキル置換アミノ基を一種、又は二種以上単独でまたは複数個有しても良い。
【0032】また、別の硬化剤として、例えばフタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコール無水トリメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸無水物、グリセロールトリス無水トリメリット酸等の芳香族カルボン酸無水物、ドデセニル無水コハク酸、ポリアゼライン酸無水物、ポリセバシン酸無水物、ポリドデカン二酸無水物等の脂肪族カルボン酸の無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ナジック酸無水物、メチルナジック酸無水物、ヘット酸無水物、ハイミック酸無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸−無水マレイン酸付加物、クロレンド酸のような脂環式カルボン酸無水物等が挙げられる。
【0033】無機充填材としては、例えば溶融シリカ、結晶シリカ、シリコンカーバイド、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸リチウムアルミニウム、珪酸ジルコニウム、チタン酸バリウム、硝子繊維、炭素繊維、二硫化モリブデン、アスベスト等が挙げられ、好ましくは溶融シリカ、結晶シリカ、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、マイカ、タルク、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸リチウムアルミニウムであり、更に好ましくは炭酸カルシウム、溶融シリカ、結晶シリカ、酸化アルミニウム、マイカ等である。
【0034】カップリング剤としては、例えばチタネート系カップリング剤とシランカップリング剤があげられる。チタネート系カップリング剤としては、例えばイソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート等のモノアルコキシルタイプ、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート等のキレートタイプ、第4級化タイプ、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート等のコーディネートタイプがあげられる。
【0035】シランカップリング剤としては、例えば3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基を有するシランカップリング剤、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基を有するシランカップリング剤、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基を有するシランカップリング剤、ビニルトリメトキシシラン等のビニル基を有するシランカップリング剤、N−(2−(ビニルベンジルアミノ)エチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩等のカチオン基を有するシランカップリング剤、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の不飽和基を有するシランカップリング剤、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のハロゲン基を有するシランカップリング剤が挙げられる。
【0036】難燃剤としては3酸化アンチモン、5酸化アンチモン、酸化錫、水酸化錫、酸化モリブデン、硼酸亜鉛、メタ硼酸バリュウム、赤燐、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、アルミン酸カルシウム等の無機難燃剤、テトラブロモ無水フタル酸、ヘキサブロモベンゼン、デカブロモビフェニルエーテル等の臭素系難燃剤、トリス(トリブロモフェニル)フォスフェート等の燐酸系難燃剤が挙げられる。又、着色剤としては特に制限はなく、フタロシアニン、アゾ、ジスアゾ、キナクリドン、アントラキノン、フラバントロン、ペリノン、ペリレン、ジオキサジン、縮合アゾ、アゾメチン又はメチン系の各種有機系色素、酸化チタン、硫酸鉛、酸化亜鉛、クロムエロー、ジンクエロー、クロムバーミリオン、弁柄、コバルト紫、紺青、群青、カーボンブラック、クロムグリーン、酸化クロム、コバルトグリーン等の無機顔料が挙げられる。レベリング剤としてはエチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアクリレート類からなる分子量4000〜12000のオリゴマー類、エポキシ化大豆脂肪酸、エポキシ化アビエチルアルコール、水添ひまし油、ベンゾイン等が挙げられる。
【0037】本発明の光カチオン重合型エポキシ樹脂系固形組成物を調製するには、例えば式(1)のエポキシ樹脂、光カチオン重合開始剤、必要に応じ他のエポキシ樹脂、他の開始剤、連鎖移動剤、増感剤、硬化剤、充填剤、カップリング剤、難燃剤、着色剤、レベリング剤等の配合成分を、ヘンシェルミキサー等を用いて乾式混合後、ニーダー、エクストルーダー等により110℃以下で溶融混合処理を施した後、混合物を冷却固化し、微粉砕後分級すれば良い。得られた粉体組成物の粒度は通常10〜180μmで、好ましくは10〜150μm、更に好ましくは、10〜106μmである。
【0038】本発明の組成物を粉体塗料として使用する場合、塗膜の厚さが1〜200μ、より好ましくは2〜100μ、更に好ましくは2〜50μ程度となるように基材上に塗布される。塗膜の厚さが200μより厚くなると、照射エネルギーが層全体に行き渡らず硬化に時間がかかるか、或いは硬化不良となってしまう。基材としては、例えば金属、木材、紙、ゴム、プラスチック、ガラス、セラミック製品等が挙げられる。本発明の組成物の塗布方法としては、通常粉体塗装に用いられる方法、例えばトリボ法、静電スプレー法、流動浸漬法、静電流動浸漬法、振りかけ法、転がし法、スプレー法、溶射法、霧箱法等により塗布される。塗膜は、エネルギー線を照射する前に加熱空気循環炉中、もしくは赤外線のような輻射熱により加熱溶融した後、あるいはエネルギー線照射時にUVランプによる熱で溶融形成される。硬化は、溶融塗膜をエネルギー線照射することにより行われる。適当なエネルギー線としては、高圧水銀灯、低圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、殺菌灯、レーザー光等から得られる200nm〜500nmの波長を有するエネルギー線を使用するのが好ましい。エネルギー線への暴露は、エネルギー線の強度によるが、通常0.1秒〜10秒程度で充分であるが、比較的厚膜の塗装物や、二重結合を多く含む化合物を配合している系、高充填の系等については、それ以上時間をかけるのが好ましい。また、エネルギー線照射後0.1秒〜数分後には重合により硬化するが、重合反応を促進するために、エネルギー線照射時またはエネルギー線照射後加熱するのが好ましい。
【0039】本発明の組成物の硬化被膜を有する物品としては特に制限はなく、例えばプリント配線基板の絶縁層、コイル固着含浸、フィルムコンデンサ、タンタルコンデンサ等の電子部品の下塗り剤、外装材、モーター鉄芯絶縁、各種印刷インキ、缶塗料、一般塗料、レジストインキ、接着剤等挙げられるが、特にプリント配線基板、電子部品モーター鉄芯絶縁、缶塗料、そして、本発明の組成物の溶融粘度が著しく低く含浸性に極めて優れていることより、モーターコイル等の固着含浸用途に適している。これまでにも結晶性エポキシ樹脂を用いてモーターコイル等の固着含浸を行うことは提案されているが、硬化時に溶融樹脂が垂れたり、また、その問題を回避するためゲルタイムを短くすると、含浸性が低下したり、経時安定性、コスト等の新たな問題が派生してくるという欠点がある。しかしながら本発明の組成物は、前述のとおり瞬時に硬化するため、硬化中の垂れの問題がない。コイルの奥に含浸した樹脂で、エネルギー線が照射されない部分は未硬化となるが、この場合、熱硬化促進剤を配合し、表面のみを光カチオン重合により硬化させた後加熱硬化を行えば品質的に問題のない硬化物を得ることが出来る。
【0040】また、本発明の組成物の硬化被膜の膜厚は好ましくは1〜200μ、より好ましくは2〜100μ、更に好ましくは2〜50μ程度である。
【0041】
【実施例】次に実施例によって、本発明を更に具体的に説明するが、本発明がこれらの実施例のみに限定されるものではない。尚、「部」は重量部を意味する。
【0042】実施例1GK−4292(新日鐵化学製、エポキシ当量244、(1)式で、R1がt−ブチル基、R2がメチル基で5,5’に位置、mは1)60.7部、化合物No.2の光カチオン重合開始剤1.82部、H−1(明和化成製、フェノールノボラック樹脂)36.8部、レベリング剤(モンサントケミカル製、モダフローパウダー)0.3部、ベンゾイン(試薬)0.3部をミキサーで粉砕、混合した後、2軸ニーダーを用いて溶融混合した。得られた混練物を冷却、固化した後、粉砕し106μm篩を通して本発明のエポキシ樹脂系固形組成物を得た。次いで、この組成物を用いて、トリボガン(ノードソン社製)により、リン酸亜鉛で表面処理された鉄板に約20μmの膜厚に塗装した後、高圧水銀灯(120w/cm2)で3.5cmの距離から紫外線を520mJ/cm2照射し硬化させた。
【0043】実施例2GK−4292(新日鐵化学製、エポキシ当量244)60.7部、化合物No.2の光カチオン重合開始剤1.82部、H−1(明和化成製、フェノールノボラック樹脂)36.8部、レベリング剤(モンサントケミカル製、モダフローパウダー)0.3部、ベンゾイン(試薬)0.3部をミキサーで粉砕、混合した後、2軸ニーダーを用いて溶融混合した。得られた混練物を冷却、固化した後、粉砕し106μm篩を通して本発明のエポキシ樹脂系固形組成物を得た。次いで、この組成物を用いて、トリボガン(ノードソン社製)により、リン酸亜鉛で表面処理された鉄板に約20μmの膜厚に塗装した後、高圧水銀灯(120w/cm2)で3.5cmの距離から紫外線を520mJ/cm2照射し硬化させた。
【0044】実施例3GK−4292(新日鐵化学製、エポキシ当量244)66.7部、化合物No.3の光カチオン重合開始剤2.0部、H−1(明和化成製、フェノールノボラック樹脂)28.7部、レベリング剤(モンサントケミカル製、モダフローパウダー)0.3部、ベンゾイン(試薬)0.3部をミキサーで粉砕、混合した後、2軸ニーダーを用いて溶融混合した。得られた混練物を冷却、固化した後、粉砕し106μm篩を通して本発明のエポキシ樹脂系固形組成物を得た。次いで、この組成物を用いて、トリボガン(ノードソン社製)により、リン酸亜鉛で表面処理された鉄板に約20μmの膜厚に塗装した後、高圧水銀灯(120w/cm2)で3.5cmの距離から紫外線を520mJ/cm2照射し硬化させた。
【0045】実施例4GK−4292(新日鐵化学製、エポキシ当量244)66.4部、化合物No.5の光カチオン重合開始剤2.0部、H−1(明和化成製、フェノールノボラック樹脂)28.6部、トリフェニルフォスフィン(試薬)0.3部、レベリング剤(モンサントケミカル製、モダフローパウダー)0.3部、ベンゾイン(試薬)0.3部をミキサーで粉砕、混合した後、2軸ニーダーを用いて溶融混合した。得られた混練物を冷却、固化した後、粉砕し106μm篩を通して本発明のエポキシ樹脂系固形組成物を得た。次いで、この組成物を用いて、トリボガン(ノードソン社製)により、リン酸亜鉛で表面処理された鉄板に約20μmの膜厚に塗装した後、高圧水銀灯(120w/cm2)で3.5cmの距離から紫外線を1040mJ/cm2照射し硬化させた。
【0046】実施例1〜4で得られた塗膜サンプルの外観を観察した。また、150℃熱板上に塗膜サンプルを放置し、先の細い工具で引っかき、塗膜の破れを観察した。貯蔵安定性は、得られた粉末を40℃雰囲気下に1週間放置し、ブロッキングの有無を確認した。結果を表3に示した。なお、外観の評価基準は次の通りである。
◎:平滑で、光沢あり○:若干のユズ肌が認められるが、光沢あり×:しわが多く、光沢無し【0047】
【表3】
表3 外観 臭気 高温放置 貯蔵安定性 実施例1 ◎ なし 破れ無し 良好(ブロッキング無し)
実施例2 ◎ なし 破れ無し 良好(ブロッキング無し)
実施例3 ◎ なし 破れ無し 良好(ブロッキング無し)
実施例4 ◎ なし 破れ無し 良好(ブロッキング無し)
【0048】この結果から明らかなように、本発明の組成物は臭気もなく、貯蔵安定性も良好で、紫外線照射により短時間で硬化し、塗膜面も平滑で光沢があり、高温放置しても塗膜に傷が付きにくく、良好な物性の被膜が得られる。
【0049】
【発明の効果】本発明の光カチオン重合性エポキシ樹脂系固形組成物は、非常に優れた貯蔵安定性を有し、かつ塗膜平滑性にも優れている。また作業性にも優れ、有機溶剤を含まないこと、短時間硬化が可能であることより、経済性、生産性、環境性の面からも有用なものである。
【出願人】 【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
【出願日】 平成10年(1998)5月20日
【代理人】
【公開番号】 特開平11−322897
【公開日】 平成11年(1999)11月26日
【出願番号】 特願平10−138137