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【発明の名称】 ウレタンフォームとその製造方法
【発明者】 【氏名】橋本 聡

【氏名】遊部 邦男

【要約】 【課題】従来のコールドキュアポリウレタンフォームと比較して、荷重たわみ曲線におけるたわみ差を大きくとれ、しかも共振振動数を下げることが可能なウレタンフォームを提供することにある。

【解決手段】ポリオールとイソシアネート成分を主体とするコールドキュアウレタンフォームの原料に、整泡剤として、パーフルオロアルキル基構造をもちかつ0.1%添加時の水溶液の表面張力が13〜40(dyne/cm25℃)、0.1%添加時のトルエン溶液の表面張力が25(dyne/cm25℃)以下のフッ素系界面活性剤を添加し、発泡させることにより得たセルが粗大でかつ不規則なウレタンフォームである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】ポリオールとイソシアネート成分を主体とするコールドキュアウレタンフォームの原料に、整泡剤として、パーフルオロアルキル基構造をもちかつ0.1%添加時の水溶液の表面張力が13〜40(dyne/cm25℃)、0.1%添加時のトルエン溶液の表面張力が25(dyne/cm25℃)以下のフッ素系界面活性剤を添加したことを特徴とするウレタンフォーム。
【請求項2】ポリオールとイソシアネート成分を主体とするコールドキュアウレタンフォームの原料に、整泡剤として、パーフルオロアルキル基構造をもちかつ0.1%添加時の水溶液の表面張力が13〜40(dyne/cm25℃)、0.1%添加時のトルエン溶液の表面張力が25(dyne/cm25℃)以下のフッ素系界面活性剤を添加し、撹拌し、発泡させることを特徴とするウレタンフォームの製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、例えば車両用シートクッション等のパッド材に好適なウレタンフォームとその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、シートクッションは金属ばねとポリウレタンフォームからなるパッド材を組合わせたものが多用されてきた。金属ばねとポリウレタンフォームを併用したシートは、金属ばねのもつ線形荷重たわみ特性のためにたわみ差が比較的大きく、底付き感が無くストロークのあるシートであった。
【0003】しかし近時は、コストダウンや軽量化等の要請から、ポリウレタンフォーム自体にばね性をもたせることによって金属ばねを廃止したいわゆるフルフォームタイプと呼ばれる自動車用シートが採用される傾向にある。モールド発泡によって成形されるコールドキュアポリウレタンフォームは、軟質でありかつ高反発弾性(High Resiliency )を有するためHRフォームとも呼ばれ、自動車用シートクッション等のパッド材として広く使用されてきた。
【0004】前記フルフォームタイプのパッド材に使用されるコールドキュアポリウレタンフォームは、従来の金属ばねと併用するポリウレタンフォームと比較して厚みが大であるため、ポリウレタンフォーム自体の性能がシートクッションの性能を大きく左右することになる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ウレタンフォームは、そのセル構造により、荷重たわみ曲線が非線形となる。ウレタンフォームのパッド材を備えたシートに実際に人が座ると、ウレタンフォームが圧縮されてたわみ、臀部等の位置が特定の高さまで沈み込む。その沈み込みを表す代用数値として、図2に示すようなJISE7104に準拠する加圧板Pによって、500N荷重(N:ニュートン)を与えたときのたわみ値が使用されることがある。この加圧板Pは、長径A:300mm,短径B:250mm、厚さC:35mm以上の長円形であり、いわゆる鉄研板と称されている。
【0006】前述のフルフォーム構造のシートでは、荷重たわみ特性はポリウレタンフォーム自体の影響を大きく受け、前記加圧板Pによって上方から加圧したときの荷重たわみ量を測定すると、加圧側500N〜900Nたわみ差の比較的少ないシートとなる。
【0007】たわみ差が少ないシートは底付き感があるため、乗り心地の評価は悪い。そのためフルフォームタイプのシートでは、たわみ差を大きくするためにフォーム厚さを厚くせざるをえなかった。また、コールドキュアウレタンフォームにおいて同じ硬さでたわみ差を大きくするには、密度を上げる必要があり、その場合、コストアップおよびシート重量の増加などの問題が生じてしまう。
【0008】したがって本発明の目的は、従来のコールドキュアウレタンフォームと比較して密度を高めなくても底付き感がなく、荷重たわみ曲線におけるたわみ差を大きくとれ、しかも共振振動数を下げることが可能なウレタンフォームを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】前記目的を果たすための本発明は、モールド発泡におけるコールドキュアポリウレタンフォームであって、荷重たわみ曲線におけるたわみ差を大きくとるために、請求項1に記載したウレタンフォームを提供する。すなわち本発明の軟質・高弾性ウレタンフォームは、ポリオールとイソシアネート成分を主体とする原料に、整泡剤として、パーフルオロアルキル基構造をもちかつ0.1%添加時の水溶液の表面張力が13〜40(dyne/cm25℃)、0.1%添加時のトルエン溶液の表面張力が25(dyne/cm25℃)以下のフッ素系界面活性剤を添加したことを特徴とする。この表面張力範囲を逸脱する整泡剤では、本発明の所期の目的を果たすことができない。
【0010】また本発明の製造方法は、ポリオールとイソシアネートを主体とするコールドキュアウレタンフォームの原料に、整泡剤として前記フッ素系界面活性剤を添加し、撹拌し、発泡させることにより、セルが粗大でかつセル形状や大きさが不規則で多くのセル膜が残るようなウレタンフォームを得ることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明のコールドキュアウレタンフォーム(HRフォーム)の原料となるポリオールは、通常のポリウレタンフォームの製造に使用されているあらゆるタイプのものでよい。例えば、ポリマーポリオールやポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールなどが使用され、それらを混合してもよい。ポリオールのヒドロキシル価は20〜150(mgKOH/g)、好ましくは20〜60(mgKOH/g)の範囲のものが推奨される。
【0012】この発明で使用されるポリイソシアネート成分としては、少なくとも2官能以上のポリイソシアネートであれば全て用いることができるが、特に芳香族ポリイソシアネートが好適で、例えば2,4−および2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等を、単独使用または併用することができる。
【0013】架橋剤は、これまで一般的に用いられていたもの(官能基数2〜6、ヒドロキシル価が500〜2000(mgKOH/g))を添加することができる。触媒は一般的なアミン触媒や、場合によっては金属触媒を用いればよく、水も通常添加される範囲(1〜6部)で使用できる。
【0014】本発明は、整泡剤として、パーフルオロアルキル基構造をもつフッ素系界面活性剤を、0.0001〜5部使用することに特徴がある。この整泡剤は、水溶液(0.1%添加時)の表面張力が13〜40(dyne/cm25℃)で、かつトルエン溶液(0.1%添加時)の表面張力が25(dyne/cm25℃)以下の範囲のものに特定される。
【0015】なお、通常使用されるコールドキュアウレタンフォーム用の整泡剤も併用してもよい。また、必要に応じて通常使用されるコールドキュアウレタンフォーム用のセルオープナーを使用してもよい。
【0016】本発明では、前述のフッ素系界面活性剤(パーフルオロアルキル基をもつ界面活性剤)をコールドキュアウレタンフォームの原料に添加することにより、従来の一般的なコールドキュアウレタンフォームに比較して、セルが粗大でかつセル形状やセルの大きさが不規則で、しかも多くのセル膜が残るウレタンフォームを製造することができた。
【0017】図1において、実線で示す荷重たわみ曲線は本発明によって得たコールドキュアウレタンフォームの特性、破線で示す荷重たわみ曲線は従来の一般的なコールドキュアウレタンフォームの特性を示している。本発明品は荷重たわみ曲線の中央部が従来品に比較して少し水平方向に倒れるような特性となり、たわみ差を大きくすることができた。
【0018】自動車用シートにおいて走行中路面から衝撃を受けると、パッド材としてのウレタンフォームは、着座によってある程度圧縮された位置から上下に振動する。その場合に、本発明品のように500N時のばね定数(荷重たわみ曲線の傾き)が小さいウレタンフォームを用いたパッド材は、底付き感がなくストロークの大きいシートとなる。言い換えると、従来のパッド材と同等のクッション性能を維持しつつパッド材の薄肉化を図ることが可能である。
【0019】また、振動を与えた場合の動的なばね定数を小さくすることは、共振振動数の低減につながる。自動車用シートの共振振動数は通常3〜4.5Hzに存在し、共振振動数を下げることは人体の内蔵の共振点である4〜8Hzの振動を小さくできることにつながり、乗り心地が改善される。次表1に、本発明の実施例1,2と比較例1,2(従来の汎用コールドキュアウレタンフォーム)の処方を示す。
【0020】
【表1】

【0021】実施例1,2と比較例1,2の発泡条件は下記の通りである。
ミキシング方法:ハンドミキシング撹拌羽回転数:5800回転/分液温:25±1℃金型:500×500×100mmのアルミ製テストピースBox型、型温:60±2℃キュア時間:6分発泡方法は、イソシアネート以外の成分をプレミックスしたのち、イソシアネートを入れて5秒間撹拌し、金型に注入した。
【0022】なお、実施例1,2で使用したポリオール(XOP-2849,XNP-4297)と、比較例1,2で使用したポリオール(EP-3033 ,POP-31/28 )は互いに商品名が異なるが実質的にほぼ同等のポリオールである。アミン触媒(A-107 ,A-1 )は商品番号が異なるが実質的に同等である。添加剤(EP-505s ,D.O.A ,SF-2969 )は実施例1,2の成形性や通気性を改善するために使用したが、本発明の目的に沿う物性(たわみ差の大きいフォーム)を得る上では必須のものではない。比較例1,2に添加した整泡剤(L-5309)は実施例1,2に添加しても差し支えない。
【0023】前述の特定の整泡剤(N-98)を添加した実施例1,2は、この整泡剤を添加しなかった比較例1,2と比較して、後述するように荷重たわみ曲線におけるたわみ差を大きくとる上で顕著な作用を有し、また、振動特性を向上させる上でも顕著な作用が認められた。
【0024】実施例1,2と比較例1,2の前記処方と発泡方法によって実際に発泡させ、フォームの物性、静荷重、減衰性、振動特性を測定し、評価した結果を表2に示す。
【0025】
【表2】

【0026】表2の測定結果において、厚さ100mmのフォーム(実施例1と比較例1)で比較すると、実施例1の加圧側500〜900N時たわみ量が28.2mmであったのに対し、比較例1では22.9mmと、実施例1の方が約25%大きかった。密度に関しては、実施例1の方が比較例1よりも僅かに小さかった。振動特性面については、実施例1の6Hz時伝達率が0.57、比較例1の6Hz時伝達率が0.77と、実施例1の方が人体の内蔵の共振点付近である6Hz伝達率が小さくなり、乗り心地が改善できることがわかった。
【0027】厚さ80mmのフォーム(実施例2と比較例2)で比較しても、実施例2の加圧側500〜900N時たわみ量が21.1mmであったのに対し、比較例2では17.2mmと、実施例2の方が約25%大きかった。密度に関しては、実施例2の方が比較例2よりも僅かに小さかった。振動特性面については、実施例2の6Hz時伝達率が0.70、比較例2の6Hz時伝達率が1.02と、実施例2の方が内蔵の共振点付近である6Hz伝達率が小さくなっている。
【0028】また、実施例2と比較例1とを比較してみると、500N時の加圧側たわみ量に関して実施例2は比較例1に比べて少し低いが、500N時加圧側ばね定数は両者ともほぼ同じであった。密度に関し両者はほぼ同等であった。加圧側500〜900Nたわみ差に関し、実施例2は比較例1に対して僅かに劣っているが、振動特性面では、むしろ実施例2は比較例1よりも良くなっている。つまり本発明品は、従来の汎用フォーム(厚さ100mm)と比較してフォーム厚さを20mm減らして80mmにしても、従来品とほぼ同等の性能を維持することができた。
【0029】
【発明の効果】本発明によれば、従来の汎用コールドキュアウレタンフォーム(軟質高弾性フォーム)に比較して薄肉化した場合に密度を大きくしなくても底付き感が無く、荷重たわみ線図におけるたわみ差を大きくとることができ、ストロークが大きいものにすることができる。したがって、従来の汎用ウレタンフォームと同等のクッション性能を維持しつつ厚みを減らすことが可能となる。しかも振動に対する動的なばね定数が小さくなり共振振動数が下がるため、例えば車両用シートに適用した場合に人体の内蔵の共振点である4〜8Hzの振動を小さくすることができ、乗り心地を改善できる。
【出願人】 【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発条株式会社
【出願日】 平成10年(1998)5月15日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 武彦 (外5名)
【公開番号】 特開平11−322875
【公開日】 平成11年(1999)11月26日
【出願番号】 特願平10−133184