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【発明の名称】 ナイロン6の製造方法および重合装置
【発明者】 【氏名】山本 浩房

【氏名】伊藤 典次

【氏名】野田 稔

【要約】 【課題】異常滞留や、熱劣化物の混入が抑止されたナイロン6の製造方法の提供。

【解決手段】重合の途中の時期において、重合反応系中の重合中間体に含まれるεカプロラクタムを蒸発させる操作を行うことにより重合中間体の温度を低下させてナイロン6を製造する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】εカプロラクタムを重合しナイロン6を製造する方法において、重合の途中の時期において、重合反応系中の重合中間体に含まれるεカプロラクタムを蒸発させる操作を行うことにより重合中間体の温度を低下させることを特徴とするナイロン6の製造方法。
【請求項2】重合中間体から蒸発させるεカプロラクタムの量が、蒸発操作前の重合中間体に含まれるεカプロラクタム量に対して25%以上であることを特徴とする請求項1記載のナイロン6の製造方法。
【請求項3】εカプロラクタムを蒸発させる操作の前後の重合中間体の温度差が10℃以上であることを特徴とする請求項1または2記載のナイロン6の製造方法。
【請求項4】εカプロラクタムの重合開始からεカプロラクタムを蒸発させる操作までの前重合時間が4時間以上11時間以下、εカプロラクタムを蒸発させる操作から重合を終えるまでの後重合時間が2時間以上7時間未満であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のナイロン6の製造方法。
【請求項5】蒸発させたεカプロラクタムを、冷却凝縮し、重合反応系に戻すことにより重合の原料とすることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載のナイロン6の製造方法。
【請求項6】重合が直列に連結された2つ以上の重合反応帯域で行われるものであって、εカプロラクタムを蒸発させる操作が、2番目以降のいずれかの重合反応帯域への導入時またはその前に重合中間体の圧力を低下させるものである請求項1〜5いずれかに記載のナイロン6の製造方法。
【請求項7】重合が直列に連結された2つ以上の重合反応帯域で行われるものであって、2番目以降のいずれかの重合反応帯域と、該重合反応帯域より前の重合反応帯域との間において、重合中間体への保持圧力を急激に低下させることを特徴とする請求項1〜6いずれかのナイロン6の製造方法。
【請求項8】導入ラインを介在させて直列に連結された2つ以上の重合反応器を具備した反応装置であり、2番目以降のいずれかの重合反応器と該重合反応器より前の重合反応器との間に介在する導入ラインに、重合中間体への保持圧力が急激に低下させるのに充分な単位流路あたりの流動抵抗を大きくする手段が具備されていることを特徴とするナイロン6の重合装置。
【請求項9】流動抵抗が大きい部分が具備された導入ラインの後の重合反応器の外部にεカプロラクタムを凝縮させるための冷却器が連結されている請求項8記載のナイロン6の重合装置。
【請求項10】流動抵抗が大きい部分が具備された導入ラインの後の重合反応器の内部に蒸発したεカプロラクタムを凝縮させるための冷却器を有することを特徴とする請求項8記載のナイロン6の重合装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はナイロン6の製造方法および重合装置に関するものであり、なかでもナイロン6の重合過程において重合中間体を冷却する方法、およびそれに用いる重合装置に関する。
【0002】
【従来の技術】ナイロン6はナイロン66とともに繊維、プラスチック等の用途に幅広く用いられており、ナイロン6は、通常εカプロラクタムを原料として重合反応を行うことにより得られる。
【0003】εカプロラクタムの重合を効率的に行うためには、重合前半の段階では重合速度を速めるために高い温度で反応を行い、重合後半においては、重合平衡の関係から重合体が固化しない程度に比較的低温で行うことが重要である。このためには、重合のある段階で重合中間体の温度を低下させることが必要となる。
【0004】このため重合中間体を冷却する方法として、反応器外側に設けたジャケットに冷却媒体を供給することにより反応器内部との熱交換を行うことが従来から行われてきた。しかしながら、設備コスト削減、作業性向上などの点から生産規模の大きな重合反応器を設置する場合には、外部ジャケットのみでは熱交換が充分に行えない。このため、重合反応器の内部に熱交換器を設け、冷却媒体の間接接触方式により重合中間体を冷却する方法が行われている。
【0005】しかしながら本従来技術による方法では、この熱交換器は、重合後半での温度を低下させる目的で、重合反応がある程度進み、重合反応系の粘性が大きい部分に設置されているため、熱交換器表面での重合中間体の更新を効率的に行うことは極めて困難であり、このため伝熱効率が非常に悪く、伝熱面積が大きな熱交換器が必要となる。また、熱交換器による間接冷却方法では重合中間体の粘性が大きいゆえに伝熱むらを生じ、均一な冷却が困難となる。このため得られるナイロン6の重合度にばらつきを生じることがある。さらには、内部熱交換器による流動不良箇所が重合中間体の異常滞留原因となり、得られるナイロン6中に熱劣化物を混入せしめ、製糸、樹脂成形時等の後工程において重要なトラブルの原因となる。また、熱交換器の表面汚れによる伝熱効率が懸念され重合設備の長期安定生産性の点からも本従来技術は十分満足できるものではない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、ナイロン6の重合過程において重合中間体を効率的かつ均一に冷却し、さらには反応器内での異常滞留が無く、このため得られるナイロン6への熱劣化物混入が無く、さらには長期安定生産が可能なナイロン6の製造方法およびそのための重合装置を得ることを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明のナイロン6の製造方法は、かかる課題を解決するため、主として次の構成を有する。すなわち、「εカプロラクタムを重合しナイロン6を製造する方法において、重合の途中の時期において、重合反応系中の重合中間体に含まれるεカプロラクタムを蒸発させる操作を行うことにより重合中間体の温度を低下させることを特徴とするナイロン6の製造方法。」である。
【0008】また、本発明の重合装置は、かかる課題を解決するため、主として次の構成を有する。すなわち、「導入ラインを介在させて直列に連結された2つ以上の重合反応器を具備した反応装置であり、2番目以降のいずれかの重合反応器と該重合反応器より前の重合反応器との間に介在する導入ラインに、重合中間体への保持圧力が急激に低下させるのに充分な単位流路あたりの流動抵抗を大きくする手段が具備されていることを特徴とするナイロン6の重合装置。」である。
【0009】
【発明の実施の形態】以下本発明を詳細に説明する。
【0010】本発明ではεカプロラクタムを重合してナイロン6を得るに際し、重合の途中段階において重合反応系中の重合中間体に含まれるεカプロラクタムを蒸発させることにより、重合中間体すなわち反応系の温度を低下させ重合を行うことが重要である。このことは、重合中間体の保持圧力を低下させ、重合中間体へのεカプロラクタムの溶解度を減少させることにより可能である。εカプロラクタムは蒸発時に重合中間体から蒸発潜熱を奪い、このことにより重合中間体(反応系)が冷却される。
【0011】ここで、εカプロラクタムの蒸発を効率的に行うには、重合中間体の保持圧力を急激に低下させることが好ましい。保持圧力の低下が緩やかである場合は、反応系の温度低下も緩やかとなり、この温度低下に伴う重合中間体へのεカプロラクタム溶解度が増大し、εカプロラクタムの蒸発量が小さくなり、反応系の冷却が充分に行われない傾向がある。
【0012】蒸発させるεカプロラクタムの量は、最終的に所望されるナイロン6の重合度により決定されるが、蒸発させる段階の直前の重合中間体に含まれるεカプロラクタム量に対して25%以上であることが好ましく、また、εカプロラクタムを蒸発させる前後での反応系の温度差は10℃以上であることが好ましい。εカプロラクタム蒸発量およびεカプロラクタム蒸発前後での反応系の温度差が小さいと得られるナイロン6の重合度が小さくなることがある。
【0013】εカプロラクタム蒸発量は蒸発前の重合反応系の温度が高いほど多く、低下させる圧力差が大きいほど多くなる。εカプロラクタム蒸発前後での反応系の温度差は、蒸発させるεカプロラクタム量にほぼ比例する。このため、反応系温度および圧力差を調整することにより、最終的に必要なナイロン6の重合度の制御が極めて容易に可能である。
【0014】上述のように重合の途中段階において重合中間体の保持圧力を低下させるには、εカプロラクタムの重合を直列に連結された2つ以上の重合反応帯域に区分し、ある重合反応帯域(重合反応帯域A)から次の重合反応帯域(重合反応帯域B)へ導入する際に、重合反応帯域Aの出口における重合中間体(反応系)の圧力を重合反応帯域B入り口で解放する方法が容易である。
【0015】これらの方法は、直列に連結された2つ以上の重合反応器から成り、第2番目以降のいずれかの重合反応器への重合中間体の導入ラインに、重合中間体(反応系)の保持圧力が急激に解放できるのに充分に単位流路あたりの流動抵抗が大きい部分が具備されているナイロン6の重合装置により達成可能である。
【0016】ここで2つ以上の重合反応器とは、完全に独立した2つの容器から成る必要はなく1つの容器を上下などに区分したものでも良い。また「重合中間体(反応系)の保持圧力が急激に解放できるのに充分に単位流路あたりの流動抵抗が大きい部分」とは、蒸発するεカプロラクタム量が必要とする温度低下を可能とすれば特に限定されないが例示すれば、配管の狭さく部、バルブ、オリフィスなどである。なお、重合中間体の異常滞留による劣化の点からこの部分は異常滞留の無い構造とすることが好ましい。
【0017】εカプロラクタムの重合は、前半はεカプロラクタムの開環反応、付加反応、重縮合反応を速く進めるため高い温度で行い、最終的には重合平衡の関係から比較的低い温度とすることが重要である。このため重合開始からεカプロラクタムを蒸発させ反応系の温度を低下させるまでの前重合時間は、4時間以上11時間以下が好ましい。前重合時間が4時間未満であると重合が充分進んでいない時点で反応系の温度を低下させることとなり、必要とする重合度のナイロン6が得られないことがある。前重合時間が11時間を超えると重合反応はほぼ平衡に到達し、反応系の温度を低下させない限りそれ以上の反応時間を設けることは設備能力の面で効率的でない。εカプロラクタムを蒸発させ反応系の温度を低下させてから重合を終えるまでの後重合時間は、2時間以上7時間未満であることが好ましい。後重合時間が2時間未満では重合反応が充分完結しないことがあり、また7時間以上では反応系冷却後の温度による重合平衡に到達するためそれ以上の反応時間を設けることは効率的でない。
【0018】ここで、重合中間体から蒸発させたεカプロラクタムは冷却凝縮し、重合中間体すなわち反応系へ戻すか、精製の後、あるいは直接重合初期原料として使用できるが、εカプロラクタムを蒸発させ温度を低下させた反応系に戻しそのまま重合を行うことが効率的であり好ましい。ここで、εカプロラクタムを凝縮させるための冷却器は、流動抵抗が大きい部分が具備された導入ラインの後の重合反応器の外部に連結されていても、該重合反応器の内部に連結されていてもよい。冷却器が外部に連結される場合を図1の凝縮器4として例示した。
【0019】上記方法により重合を終えたナイロン6ポリマは、冷却固化の後、ペレット化され、ペレット中に含まれるモノマ、オリゴマの抽出除去、さらに水分を除去するための乾燥などを行った後、製糸あるいは樹脂成型用ペッレットして使用される。しかしながら冷却固化、モノマ、オリゴマ除去、乾燥などが必要でなければそれに応じて省略が可能である。
【0020】また、本発明のナイロン6とは、必要に応じて耐熱剤、耐光剤、耐候剤、重合反応促進剤、重合度調整剤、末端基量調整剤、顔料などの添加剤を重合前、重合途中の段階あるいは重合後の段階で加えていても構わない。また、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸などのジカルボン酸、ヘキサメチレンジアミン、キシリレンジアミンなどのジアミンなどを共重合していても良い。なお本発明においてεカプロラクタムを蒸発させる段階でこれら添加剤、共重合成分あるいは反応により生成する水分などの一部が同時に蒸発しても必要とする特性のナイロン6が得られれば何ら問題はない。
【0021】
【実施例】以下本発明を実施例によってさらに詳細に説明する。
【0022】実施例1図1に示す本発明の重合装置を準備した。
【0023】TiO2を0.35wt%および水分を1wt%含むεカプロラクタムを30kg/hrの量で連続的に体積0.2m3の第1の重合反応器1に供給し、270℃で加熱を行いながら重合を行った。第1の重合反応器1下部から、供給量に対応する重合中間体を排出し、内部に熱交換器を有しない体積0.08m3である第2の重合反応器2へ供給した。第1の重合反応器での滞留時間は約6.6時間、第1の重合反応器を出る重合中間体の温度は温度計11により測定したところ265℃、圧力計12により測定した圧力は0.2MPa、εカプロラクタム含有率は11%であった。第2の重合反応器への供給ラインに設けた配管狭さく部3の出側圧力は、配管狭さく部の流動抵抗による圧力損失のため0.1MPa(圧力計14により測定)、第2の重合反応器に供給された重合中間体の温度は253℃(温度計13により測定)であり、重合中間体の温度低下は12℃であった。第2の重合反応器上部に設けた凝縮器4でのεカプロラクタム凝縮量は、1.3kg/hrであり第1の重合反応器から排出された重合中間体に含まれるεカプロラクタムに対して40%であった。なおこの凝縮したεカプロラクタムは第2重合反応器へ戻し、第1重合反応器から供給された重合中間体と共に重合を行った。第2の重合反応器で反応を終え得られたナイロン6を冷却固化、ペレタイズ化し、さらにモノマ、オリゴマの抽出除去および乾燥を行い製糸用ナイロン6ペレットを得た。該ペレットの重合度は硫酸相対粘度ηrで2.6であった。ここで硫酸相対粘度ηrは、98wt%の硫酸100cm3にポリマ1gを溶かした溶液粘度の98wt%硫酸粘度に対する比である。
【0024】
【発明の効果】本発明の重合方法および重合装置により重合中間体の効率的かつ均一な冷却、および反応器内での異常滞留抑制、熱劣化物混入防止、さらにはナイロン6の長期安定生産が可能となる。
【出願人】 【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
【出願日】 平成9年(1997)8月20日
【代理人】
【公開番号】 特開平11−60730
【公開日】 平成11年(1999)3月5日
【出願番号】 特願平9−223629