トップ :: C 化学 冶金 :: C04 セメント;コンクリ−ト;人造石;セラミツクス;耐火物




【発明の名称】 カオリナイトの可塑性向上方法
【発明者】 【氏名】芝崎 靖雄

【氏名】小田 喜一

【氏名】佐野 三郎

【氏名】伴野 巧

【氏名】小栗 賢太

【氏名】川合 秀治

【氏名】野村 祐二

【氏名】小野 晃

【要約】 【課題】天然のカオリナイト及び人工カオリナイトの可塑性を向上させる方法を提供することを目的とする。

【解決手段】カオリナイトをNH4+を含む水溶液と接触させることにより、カオリナイト粒子表面にNH4+を吸着し、該カオリナイトを2価陽イオンを含む水溶液と接触させることにより表面に吸着したNH4+を2価陽イオンに置換する方法を提供する。NH4+を含む水溶液はCH3COONH4水溶液又はNH4Cl水溶液であり、2価陽イオンはMg2+又はCa2+を用いる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 カオリナイトをNH4+を含む水溶液と接触させることにより、カオリナイト粒子表面にNH4+を吸着し、該カオリナイトを2価陽イオンを含む水溶液と接触させることにより表面に吸着したNH4+を2価陽イオンに置換することを特徴とするカオリナイトの可塑性向上方法。
【請求項2】 NH4+を含む水溶液中にカオリナイト粉末を投入し、カオリナイト粒子表面にNH4+を吸着した後に固液分離し、該カオリナイトを2価陽イオンを含む水溶液と接触させることによって粒子表面に吸着したNH4+を2価陽イオンに置換し、固液分離してからカオリナイト粒子を水洗して過剰な陽イオンを除去し、乾燥することによってカオリナイトを得ることを特徴とするカオリナイトの可塑性向上方法。
【請求項3】 NH4+を含む水溶液がCH3COONH4水溶液又はNH4Cl水溶液である請求項1又は2項に記載のカオリナイトの可塑性向上方法。
【請求項4】 2価陽イオンがMg2+又はCa2+である請求項1又は2項に記載のカオリナイトの可塑性向上方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は陶磁器やセラミックスの原料として使用することができる可塑性を有するカオリナイトの可塑性向上方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から陶磁器やセラミックスの原料として、カオリナイトを主成分とする天然粘土が用いられている。このカオリナイトは粘土鉱物の中のカオリン類の主要な鉱物であって、白色,灰色又は黄色の珪酸アルミニウム水和物であり、良質の天然粘土には上記のカオリナイトと粘性を高めるための亜炭等の有機物が混合されている。しかし近時は良質の天然粘土の産出量が減少しており、天然粘土に代わる材料として人工粘土の開発研究が推進されている。
【0003】上記人工カオリナイトの生成手段としては、通常水熱合成法が用いられる。この水熱合成手段とは、原材料を水分の存在下でオートクレーブ内に密閉して一定時間高温高圧状態に保持することによって所望の鉱物を得る方法であり、各種人工鉱物の合成手段として多用されている。
【0004】本出願人は、先に特願平1−118400号(特公平5−15646号公報)により、非晶質珪酸カルシウム水和物とアルミニウムの強酸塩を用いて、水とともに水熱合成処理を実施することによって低結晶度のカオリナイトを製造する方法を提案した。上記非晶質珪酸カルシウム水和物として、カルシウムと珪酸の原子比Ca/Si=0.1〜2.0の組成であることを特徴としている。
【0005】具体的手段として、珪藻土粉末と水酸化カルシウムのスラリーを所定の原子比で混合し、常圧のもとで加熱して得た非晶質珪酸カルシウム水和物にアルミニウムの強酸塩及び水を加え、圧力容器中に所定時間密封して反応させた後、冷却、開封し、濾過、乾燥してカオリナイト粉末を製造する方法を提供している。
【0006】このようなカオリナイトの製造方法によれば、天然の可塑性粘土中に認められる薄板状で結晶度の低いカオリナイトが高い効率で生成され、特に単に珪酸原料とアルミニウム原料とを直接反応させてカオリナイトを合成した場合に水熱合成処理時間の経過に伴って原料の珪素イオン,アルミニウムイオンの溶解・反応性が高くなり、個々のカオリナイトの結晶の厚さ及び結晶度を均一に保つことが困難であるという問題点が解消されて、陶磁器及びセラミックスの原材料として用いて有用な低結晶度の人工カオリナイトを得ることができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】前記天然のカオリナイト及び人工カオリナイトは、ともにカオリナイト自体の可塑性は乏しく、しかも成形性があまり良好でないため、成形時に有機系バインダーや可塑性の優れた粘土等を添加する手段が通常採用されている。
【0008】上記に対処して、例えば特開平6−263430号公報には、カオリナイト粒子を2価陽イオンを含む水溶液と接触させることによってイオン交換を行わせ、カオリナイト粒子の表面に2価陽イオンを吸着させてカオリナイト自体の可塑性を向上させる方法が開示されている。この方法はカオリナイトに吸着している様々なイオンをイオン交換反応によって2価陽イオンに置換し、カオリナイトの可塑性を向上させることを主眼としている。
【0009】しかしながら、イオン交換反応においては交換するイオン間においてイオン選択性があり、カオリナイトに元々吸着しているイオン種によっては2価陽イオンとイオン交換が起こらないか、もしくはイオン交換が起こってもその交換量が少なく、飛躍的な可塑性向上をはかることができない。
【0010】そこで本発明は上記に鑑みてなされたものであり、カオリナイト自体の可塑性と成形性を向上させる方法を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成するために、請求項1により、カオリナイトをNH4+を含む水溶液と接触させることにより、カオリナイト粒子表面にNH4+を吸着し、該カオリナイトを2価陽イオンを含む水溶液と接触させることにより表面に吸着したNH4+を2価陽イオンに置換することが基本手段となっている。
【0012】更に請求項2により、NH4+を含む水溶液中にカオリナイト粉末を投入し、カオリナイト粒子表面にNH4+を吸着した後に固液分離し、該カオリナイトを2価陽イオンを含む水溶液と接触させることによって粒子表面に吸着したNH4+を2価陽イオンに置換し、固液分離してからカオリナイト粒子を水洗して過剰な陽イオンを除去し、乾燥することによってカオリナイトを得る可塑性向上方法を提供する。
【0013】NH4+を含む水溶液はCH3COONH4水溶液又はNH4Cl水溶液であり、2価陽イオンはMg2+又はCa2+を用いる。
【0014】かかるカオリナイトの可塑性向上方法によれば、カオリナイト粒子表面の吸着イオンが速やかにNH4+に置換され、更に該カオリナイト粒子を2価陽イオンを含む水溶液と接触させることにより、表面に吸着したNH4+が2価陽イオンに置換され、これによってカオリナイト表面のイオンが2価陽イオンとなり、可塑性を評価する指標である保水性(WR)及び可塑特性値(CV)の値が増大して可塑性を向上させることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下本発明にかかるカオリナイトの可塑性向上方法の具体的な実施形態例を説明する。本発明はカオリナイトに吸着している様々なイオンを2価陽イオンに置換することによってカオリナイトの可塑性を向上させることを主眼としているが、直接カオリナイトを2価陽イオンを含む水溶液と接触させても、イオン交換が生じないか、もしくはイオン交換が生じても交換量が少ないという知見を得た。
【0016】その理由は、交換するイオン間においてイオン選択性が存在することにあり、特に2価陽イオンと交換しやすいイオンは速やかにイオン交換されるが、その他のイオンにはイオン交換が生じにくいという現象に原因がある。
【0017】本発明者らは上記イオン選択性の問題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、NH4+がほとんどのイオンに対してイオン選択性を示さず、速やかにイオン交換されることを見出した。そこでカオリナイトをNH4+を含む水溶液と接触させることにより、カオリナイト粒子表面に吸着しているイオンがNH4+に置換され、次にこのカオリナイト粒子を2価陽イオンを含む水溶液と接触させることにより、粒子表面に吸着しているNH4+が2価陽イオンに置換される。
【0018】これによってカオリナイト表面のイオンは、ほぼ完全に2価陽イオンとなり、未処理のカオリナイトと比較すると、詳細は後述するように可塑性を評価する指標である保水性(WR)及び可塑特性値(CV)の値が増大して飛躍的に可塑性を向上させることができる。
【0019】本実施形態例では、先ずカオリナイトをNH4+を含む水溶液と接触させることにより、カオリナイト粒子表面にNH4+を吸着させる。この工程において用いるNH4+を含む水溶液の種類は特に限定されるものではないが、NH4+以外の他の陽イオンを多量に含む水溶液は好ましくない。NH4+以外の他の陽イオンを多量に含む水溶液を用いると、NH4+以外の他の陽イオンがカオリナイトに吸着する惧れが生じるためである。
【0020】カオリナイトとNH4+を含む水溶液との接触方法についても種々の方法が考えられるが、本実施形態例では接触方法は特に限定されるものではなく、作業性及び均一に両者を接触させることを勘案すると、NH4+を含む多量の水溶液中にカオリナイト粉末を投入する手法が最適である。
【0021】このようにカオリナイトをNH4+を含む水溶液と接触させて粒子表面にNH4+を吸着させた後に固液分離し、次にカオリナイトの粒子を2価陽イオンを含む水溶液と接触させる。すると粒子表面に吸着したNH4+は2価陽イオンに置換される。
【0022】この工程において用いる2価陽イオンを含む水溶液についても、2価陽イオン以外の他の陽イオンを多量に含む水溶液は好ましくない。その理由はNH4+を吸着させる場合と同様に2価陽イオン以外の他の陽イオンがカオリナイトに吸着する惧れが生じるためである。
【0023】次に粒子表面のNH4+が2価陽イオンに置換された水溶液を固液分離し、水洗を行って過剰な陽イオンを除去してから乾燥することによって目的とするカオリナイトが得られる。
【0024】以下に本発明の具体的な各種実施例を比較例とともに説明する。
【0025】
【実施例】〔実施例1〕濃度1N(規定)のCH3COONH4水溶液1リットル中にカオリナイト粉末100gを投入し、撹拌しながら24時間放置した後、固液分離した。次に上記工程で得られたカオリナイト全量を濃度1NのMgCl2水溶液1リットル中に投入して撹拌しながら24時間放置した後、固液分離した。更に過剰な陽イオンを除去するため水洗を行った後に乾燥を行い、可塑性の評価を行った。
【0026】可塑性の評価はペッファーコルン法に従って、一定変形比3.3における成形体の室温から100℃の含水率を可塑含水率(PI)、40℃から100℃の含水率を保水性(WR)とし、WR/PIを可塑特性値(CV)と表現して可塑性の指標とした。(尚、ペッファーコルン法については「耐火物No.9,P44−51,1986」に詳しく記載されている)
【0027】窯業協会誌,92,77(1984)によれば、芝崎らはペッファーコルン法に準じて、室温及び乾燥温度(40℃と100℃)での試料重量WRT,W40,W100を計量し、変形比(H0/H1)3.3を得るのに必要な100℃乾燥で逃げる水分率を可塑含水率(PI)、更に40℃から100℃の乾燥で逃げる水分率を保水率(WR),両者の比を可塑特性値(CV)と定義した。
【0028】
PI={(WRT−W100)/WRT}×100WR={(W40−W100)/WRT}×100CV=WR/PI={(W40−W100)/(WRT−W100)}×100【0029】また、陶磁器用の粘土20種のPI,WR,CVと比表面積(S)を測定した結果、CVがSに対して無関係であること、及び陶磁器用粘土が4種類に区分できることが判明した。これらのことからCVは粘土鉱物種表面の水分特性を表現しているものといえる。
【0030】前記可塑性評価の結果、上記の一連の処理を行ったカオリナイトでは、可塑含水率(PI)=33.36%、保水性(WR)=1.53%、可塑特性値(CV)=4.59%であり、全く処理を行っていないカオリナイトでは、PI=34.92%、WR=0.39%、CV=1.12%であった。以上の結果より、上記の処理によって得られたカオリナイトは、保水性(WR)、可塑特性値(CV)ともに増大しており、大幅に可塑性が向上していることが確認された。
【0031】〔実施例2〕濃度1NのNH4Cl水溶液1リットル中にカオリナイト粉末100gを投入し、撹拌しながら24時間放置した後固液分離した。次に上記工程で得られたカオリナイト全量を濃度1NのCaCl2水溶液1リットル中に投入して撹拌しながら24時間放置した後固液分離した。更に過剰な陽イオンを除去するため水洗を行った後乾燥を行い、前記と同様な可塑性の評価を行った。
【0032】その結果、得られたカオリナイトは、可塑含水率(PI)=32.13%、保水性(WR)=1.44%,可塑特性値(CV)=4.48%であり、未処理のカオリナイトに比べWR、CVともに増大しており、大幅に可塑性が向上していることが確認された。
【0033】〔比較例1〕濃度1NのMgCl2水溶液1リットル中にカオリナイト粉末100gを投入し、撹拌しながら24時間放置した後固液分離した。更に過剰な陽イオンを除去するため水洗を行った後乾燥を行い、前記と同様な可塑性の評価を行った。
【0034】その結果、得られたカオリナイトは、可塑含水率(PI)=32.15%、保水性(WR)=0.42%、可塑特性値(CV)=1.31%であり、未処理のカオリナイトに比べWR、CVともに増加しているものの、大幅な可塑性向上には至らなかった。
【0035】〔比較例2〕濃度1NのCaCl2水溶液1リットル中にカオリナイト粉末100gを投入し、撹拌しながら24時間放置した後固液分離した。更に過剰な陽イオンを除去するため水洗を行った後乾燥させ、前記と同様な可塑性の評価を行った。
【0036】その結果、得られたカオリナイトは、可塑含水率(PI)=32.30%、保水性(WR)=0.42%、可塑特性値(CV)=1.30%であり、未処理のカオリナイトに比べWR、CVともに増加しているものの、大幅な可塑性向上には至らなかった。
【0037】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明にかかるカオリナイトの可塑性向上方法によれば、カオリナイトをNH4+を含む水溶液と接触させることによってカオリナイト粒子表面にNH4+を吸着し、該カオリナイトを2価陽イオンを含む水溶液と接触させることにより表面に吸着したNH4+を2価陽イオンに置換することができて、天然のカオリナイト及び人工カオリナイトを問わずカオリナイト自体の可塑性と成形性を高めることができるので、従来のように成形時に有機系バインダーや可塑性の優れた粘土を添加する手段は不要となる効果がある。
【0038】特にカオリナイトをNH4+を含む水溶液と接触させることにより、イオン選択性に起因してカオリナイトに吸着しているイオンの2価陽イオンとのイオン交換が生じにくいという問題は解消され、カオリナイト表面のイオンが2価陽イオンとなって可塑性を評価する指標である保水性及び可塑特性値の値が増大し、カオリナイト自体の可塑性を飛躍的に向上させることができる。
【出願人】 【識別番号】000001144
【氏名又は名称】工業技術院長
【出願日】 平成10年(1998)2月13日
【代理人】
【公開番号】 特開平11−228210
【公開日】 平成11年(1999)8月24日
【出願番号】 特願平10−48780