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【発明の名称】 セメント組成物とセメントペーストおよびセメントモルタル
【発明者】 【氏名】野中 正規
【課題】硬化時間の温度依存性が低く、初期強度発現性に優れたセメント組成物とセメントペーストとセメントモルタルを提供する。

【解決手段】セメント100重量部、水溶性高分子0.01〜10重量部、ギ酸のアルカリ金属塩0.1〜5.0重量部を主剤とするセメント組成物であり、これを用いたセメントペーストとセメントモルタルも包含する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 セメント100重量部、水溶性高分子0.01〜10重量部、ギ酸のアルカリ金属塩0.1〜5.0重量部を主剤とするセメント組成物。
【請求項2】 水溶性高分子がセルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸から選んだ1または2以上である、請求項1まに記載されたセメント組成物。
【請求項3】 ギ酸のアルカリ金属塩がギ酸カルシウム、ギ酸マグネシウム、ギ酸アルミニウムから選んだ1または2以上である、請求項1または2に記載されたセメント組成物。
【請求項4】 さらに合成樹脂エマルジョンおよび/または再乳化形粉末樹脂をセメント100重量部に対し不揮発分で1〜30重量部配合した、請求項1ないし3のいずれか1項に記載されたセメント組成物。
【請求項5】 請求項1ないし4のいずれか1項に記載されたセメント組成物に水を加えて混練したセメントペースト。
【請求項6】 請求項1ないし4のいずれか1項に記載されたセメント組成物に細骨材を配合し水を加えて混練したセメントモルタル。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は特別の硬化促進剤を用いたセメント組成物とこれを用いたセメントペーストおよびセメントモルタルに関する。
【0002】
【従来の技術】セメント組成物は、水を加えることにより水和反応が進行し硬化するが、この反応は温度に依存し、冬の温度が低いときには硬化が遅く、夏の温度が高いときには硬化が速すぎるという特性を有する。そのため、硬化促進剤を配合したり、硬化遅延剤を配合したり、使用状況に合わせその処方を細かく設定する必要があった。また、硬化促進剤を配合するとその影響で硬化が速くなるため、可使時間が短くなり施工に過度の注意をはらう必要があった。さらに、従来広く使用されている硬化促進剤である塩化カルシウムは温度依存性が高いという欠点を有している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】かかるセメント組成物のもつ欠点を本発明は解決するものである。具体的には現場での施工に過度の注意をはらう必要がない十分な可使時間を有し、一度硬化が始まると初期の強度発現に優れ、かつ流動性がよく、浸透性やこて塗り等の作業性にも優れ、硬化時間の温度依存性が低く、低温時および高温時でも同様な施工性が得られるセメント組成物と、これを用いたセメントペーストおよびセメントモルタルを提供する。本発明は、「1. セメント100重量部、水溶性高分子0.01〜10重量部、ギ酸のアルカリ金属塩0.1〜5.0重量部を主剤とするセメント組成物。
2. 水溶性高分子がセルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸から選んだ1または2以上である、1項まに記載されたセメント組成物。
3. ギ酸のアルカリ金属塩がギ酸カルシウム、ギ酸マグネシウム、ギ酸アルミニウムから選んだ1または2以上である、1項または2項に記載されたセメント組成物。
4. さらに合成樹脂エマルジョンおよび/または再乳化形粉末樹脂をセメント100重量部に対し不揮発分で1〜30重量部配合した、1項ないし3項のいずれか1項に記載されたセメント組成物。
5. 1項ないし4項のいずれか1項に記載されたセメント組成物に水を加えて混練したセメントペースト。
6. 1項ないし4項のいずれか1項に記載されたセメント組成物に細骨材を配合し水を加えて混練したセメントモルタル。」
に関する。
【0004】
【発明の実施の形態】本発明の組成物は、セメント、水溶性高分子、ギ酸のアルカリ金属塩を主剤とするセメント組成物であり、これを使用するには主剤となる成分を十分空練し、これに水を加え混練してセメントペーストやセメントミルクとして用いたり、主剤となる成分にさらに骨材を配合して水を加え混練してセメントモルタルとして用いられる。本発明で使用するセメントは特に限定されない。普通ポルトランドセメント、アルミナセメント、ジェットセメント、高炉スラグセメント等があげられる。また、セメントと共に石膏、ドロマイト等の無機系の結合剤を併用することもできる。
【0005】水溶性高分子としては、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース等セルロース誘導体、ポリビニルアルコールおよびその誘導体、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリ(メタ)アクリル酸塩等が挙げられる。これ等のうち、セルロース誘導体が好ましい。その使用量はセメント100重量部に対し0.01〜10重量部である。0.01重量部より少ないとギ酸のアルカリ金属塩との配合バランスが悪くなり、可使時間が短くなり、作業性も不良となる。10重量部より多くなると初期強度の発現が遅くなり、また作業性もねばりが強くなるため悪くなり施工しずらくなる。さらには、過剰に空気を連行して圧縮強度が低下する危険性もある。
【0006】ギ酸のアルカリ金属塩は硬化促進剤として配合される。具体的には、ギ酸カルシウム、ギ酸アルミニウム、ギ酸マグネシウム等である。これ等を配合することにより温度依存性を低く抑え硬化を促進することができる。これ等の中ではギ酸カルシウムが好ましい。その使用量は、セメント100重量部に対し0.1〜5.0重量部が適当である。0.1重量部より少ないと硬化促進効果がなく、初期強度の発現が遅くなる。5.0重量部より多いと可使時間が短くなり作業性が悪くなる。
【0007】躯体に対しての接着性や曲げ強度を向上させる場合には合成樹脂エマルジョンが配合される。合成樹脂エマルジョンとしては、エチレン/酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/ベオバ共重合体、アクリル系共重合体等が用いられ、その形態はエマルジョン本来の水分散体や、これを噴霧乾燥した再乳化形粉末樹脂が用いられる。その使用量はセメント100重量部に対し1〜30重量部が適当である。1重量部より少ないと凝結が速すぎて可使時間が短くなる。10重量部より多いと硬化が遅くなってしまう。セメントモルタルとして使用する場合は骨材が配合される。骨材は、けい砂、砕石粉、フライアッシュ、スラグ等の細骨材が用いられる。また、タルク、クレー、炭酸カルシウム、シリカ等のフィラーを併用してもよい。所望により、減水剤、消泡剤、増粘剤、顔料、流動化剤等を配合してもよい。
【0008】
【実施例】
実施例1(セメントペーストとして使用)
普通ポルトランドセメント100重量部、メチルセルロース0.2重量部、ギ酸カルシウム1.0重量部を十分空練してセメント組成物とし、これに水を加えて混練し水/セメント比=0.5のセメントペーストとした。このセメントペーストを温度20℃、湿度80%の条件で硬化させたところ、凝結始発が150分で凝結終結が290分であり良好な作業性であった。
【0009】実施例2(セメントペーストとしての使用)
普通ポルトランドセメント100重量部、メチルセルロース0.2重量部、ギ酸カルシウム1.5重量部を十分空練してセメント組成物とし、これにエチレン/酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョン(不揮発分50%)10重量部および水を加えて混練し水/セメント比=0.5のセメントペーストとした。このセメントペーストを温度20℃、湿度80%の条件で硬化させたところ、凝結始発が143分で凝結終結が312分であり良好な作業性であった。
【0010】実施例3(セメントペーストとしての使用)
普通ポルトランドセメント100重量部、メチルセルロース0.2重量部、ギ酸カルシウム1.5重量部を十分空練してセメント組成物とし、これに酢酸ビニル/ベオバ共重合樹脂エマルジョン粉末10重量部および水を加えて混練し水/セメント比=0.5のセメントペーストとした。このセメントペーストを温度5℃、湿度80%の条件で硬化させたところ、凝結始発が180分で凝結終結が340分であり良好な作業性であった。
【0011】実施例4(セメントモルタルとしての使用)
普通ポルトランドセメント100重量部、メチルセルロース0.2重量部、ギ酸カルシウム1.0重量部、珪砂300重量部を十分空練してセメント組成物とし、これに水を加えて混練し水/セメント比=0.7のセメントモルタルとした。このセメントモルタルを温度20℃、湿度80%の条件で硬化させたところ、凝結始発が205分で凝結終結が323分であり良好な作業性であった。
【0012】実施例5(セメントモルタルとしての使用)
普通ポルトランドセメント100重量部、メチルセルロース0.2重量部、ギ酸カルシウム1.5重量部、珪砂300重量部を十分空練してセメント組成物とし、これにエチレン/酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョン(不揮発分50%)10重量部および水を加えて混練し水/セメント比=0.6のセメントモルタルとした。このセメントモルタルを温度20℃、湿度80%の条件で硬化させたところ、凝結始発が143分で凝結終結が312分であり良好な作業性であった。
【0013】実施例6(セメントモルタルとしての使用)
普通ポルトランドセメント100重量部、メチルセルロース0.2重量部、ギ酸カルシウム1.5重量部、珪砂300重量部を十分空練してセメント組成物とし、これに酢酸ビニル/ベオバ共重合樹脂エマルジョン粉末10重量部および水を加えて混練し水/セメント比=0.65のセメントモルタルとした。このセメントモルタルを温度5℃、湿度80%の条件で硬化させたところ、凝結始発が193分で凝結終結が350分であり良好な作業性であった。
【0014】比較例1メチルセルロースを使用しなかった以外は実施例1と同様にした。このセメントペーストは、凝結始発が103分と短く凝結終結が196分で作業性が不良であった。
【0015】比較例2ギ酸カルシウムを使用しなかった以外は実施例1と同様にした。このセメントペーストは、凝結始発が242分であり、凝結終結が375分と遅く、実際の現場では、次の工程に進むまでの待ち時間が長くなることが予想され工程管理から見た作業性が不良である。
【0016】比較例3ギ酸カルシウムを使用しなかった以外は実施例3と同様にした。このセメントペーストは、凝結始発が264分であり、凝結終結が403分と遅く、実際の現場では、次の工程に進むまでの待ち時間が長くなることが予想され工程管理から見た作業性が不良である。実施例と比較例の組成と性能を表1に示す。
【0017】
【表1】

【0018】評価1. 可使時間凝結始発が120分以上……○凝結始発が120分未満……×2. 強度の発現凝結終結が360分以内……○凝結終結が360分より大……×【0019】
【発明の効果】本発明は硬化時間の温度依存性が低く、低温時でも高温時でも同様な施工性を示す勝れた効果を奏する。
【出願人】 【識別番号】000113148
【氏名又は名称】ヘキスト合成株式会社
【出願日】 平成9年(1997)7月18日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 秀夫
【公開番号】 特開平11−35363
【公開日】 平成11年(1999)2月9日
【出願番号】 特願平9−225465