トップ :: C 化学 冶金 :: C01 無機化学

【発明の名称】 混合アルカリ水熱法による層状岩塩型リチウムマンガン酸化物の製造方法
【発明者】 【氏名】田渕 光春
【氏名】阿度 和明
【氏名】小林 弘典
【氏名】蔭山 博之
【課題】低コストのリチウム二次電池用正極材料としての層状岩塩型LiMnO2を大量生産しうるに適した直接製造方法を提供することを主な目的とする。

【解決手段】1.マンガン源原料の少なくとも1種を水溶性リチウム塩とアルカリ金属水酸化物とを含む水溶液中で130〜300℃で水熱処理することを特徴とする層状岩塩型構造を有するリチウムマンガン酸化物(LiMnO2)の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】マンガン源原料の少なくとも1種を水溶性リチウム塩とアルカリ金属水酸化物とを含む水溶液中で130〜300℃で水熱処理することを特徴とする層状岩塩型構造を有するリチウムマンガン酸化物(LiMnO2)の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、層状岩塩型(α-NaMnO2)の構造を有するリチウムマンガン酸化物(LiMnO2)系粉末の製造方法に関する。この様なリチウムマンガン酸化物系粉末は、リチウム二次電池の正極用材料などとして有用である。
【0002】
【従来の技術】現在、ポータブルタイプの電子・電気機器の可充電電源として使用されているリチウム二次電池用の正極材料として、層状岩塩型(α-NaFeO2型)構造を有するリチウムコバルトおよびニッケル酸化物(LiCoO2、LiNiO2およびその固溶体)が研究開発され、実用化されている。しかしながら、これらの正極材料は、高作動電圧かつ高容量である反面、希少金属であるCo或いはNiを含んでいて高価であるため、これらを用いるリチウム二次電池(電池中で正極材料のコストは、約1/3を占める)の市場拡大の障害となっている。
【0003】また、次世代の低コスト4V級の正極材料として、LiMn2O4、LiMnO2などのリチウムマンガン酸化物が注目され、その研究開発が行われつつある。特に、LiMnO2中ではマンガンが3価であるため、3.5価であるLiMn2O4に比して、高い充放電容量が期待でき、次世代の低コスト正極材料として最も期待されている。このLiMnO2組成の化合物としては、2つの結晶相{斜方晶相(β-NaMnO2型構造;以下「斜方晶LiMnO2」という)と層状岩塩型構造の単斜晶相(α-NaMnO2型構造;以下「層状岩塩型LiMnO2」という)}が知られている。
【0004】しかしながら、従来から行われている種々のリチウム化合物と3価のマンガン化合物との混合物を500〜900℃で固相反応させる方法{R.J.Gummow and M.M.Thackeray,J.Electrochem.Soc.,141[5](1994)1178}或いは同様の混合物を150〜300℃で水熱反応させる方法{M.Tabuchi,K.Ado,C.Masquelier,H.Sakaebe,H.Kobayashi,R.Kanno and O.Nakamura,Solid State Ionics,89,(1996)53}では、斜方晶LiMnO2しか得られない。この相は、電気化学的なリチウムの脱離/挿入は可能であるが、充放電の繰り返しにより徐々に別の結晶相(スピネル相)に転移していくため、充放電サイクルに対する充放電曲線の安定性に乏しい。
【0005】従って、LiNiO2或いはLiCoO2と同様の結晶構造を有する層状岩塩型LiMnO2の製造方法の確立が急務とされている。現在のところ、この化合物の合成は、通常の固相反応法で合成したα-NaMnO2をLiイオンを含む非水溶媒中で300℃以下の温度でイオン交換に供することにより行われている{A.R.Armstrong and P.G.Bruce,NATURE,381,[6],(1996)499;F.Capitain,P.Gravereau and C.Delmas,Solid State Ionics,89,(1996)53:以下この2つの文献を「参考文献」という}。しかしながら、これらの方法は、工業的プロセスとしては、α-NaMnO2の製造およびそのイオン交換という2段階を必要とすることから、大量生産が困難であるなどの問題があり、これに代わる新たな実用的プロセスの開発が望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明は、低コストのリチウム二次電池用正極材料としての層状岩塩型LiMnO2を大量生産しうるに適したその直接製造方法を提供することを主な目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記の様な従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、次世代のリチウム二次電池正極材料用として有望視されているリチウム含有遷移金属酸化物の1種である層状岩塩型LiMnO2を特定の原料を使用する水熱処理法により、α-NaMnO2を経ることなく、製造する技術を確立することに成功した。
【0008】すなわち、本発明は、下記の水熱法による層状岩塩型LiMnO2の製造方法を提供するものである:1.マンガン源原料の少なくとも1種を水溶性リチウム塩とアルカリ金属水酸化物とを含む水溶液中で130〜300℃で水熱処理することを特徴とする層状岩塩型構造を有するリチウムマンガン酸化物(LiMnO2)の製造方法。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明において使用するマンガン源原料としては、酸化物(Mn2O3、MnO、MnO2など)、これら酸化物の水和物、酸化水酸化物などが挙げられる。マンガン源原料としては、3価の化合物がより好ましい。これらのマンガン源原料は、単独で使用してもよく、2種以上を併用しても良い。
【0010】本発明においては、蒸留水に水溶性リチウム塩(通常無水物換算で0.02〜10mol/kg・H2O程度、より好ましくは0.05〜5mol/kg・H2O程度)とアルカリ金属水酸化物の少なくとも1種(通常無水物換算で3〜40mol/kg・H2O程度、より好ましくは8〜20mol/kg・H2O程度)とを加え、混合し、混合アルカリ水溶液を調製する。水溶性リチウム塩(水酸化リチウム、塩化リチウム、硝酸リチウム、フッ化リチウム、臭化リチウムなど)およびアルカリ金属水酸化物(水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなど)は、無水物であっても或いは水和物であっても良い。リチウム源としての水溶性リチウム塩は、単独で使用しても良く、2種以上を併用しても良い。同様に、アルカリ金属水酸化物も、単独で使用しても良く、2種以上を併用しても良い。
【0011】次いで、上記で得られた混合アルカリ水溶液にマンガン源原料を加え、混合した後、得られた混合物を水熱反応炉(例えば、オートクレーブ)に静置して、水熱反応に供する。水熱反応条件は特に限定されるものではないが、通常130〜300℃程度の温度で0.5時間〜14日間程度であり、より好ましくは200〜250℃程度の温度で1時間〜48時間程度である。混合アルカリ水溶液(100cc)に対するマンガン源原料の配合割合は、通常0.1〜10g程度であり、より好ましくは0.5〜3g程度である。
【0012】反応終了後、残存する未反応原料を除去するため、反応生成物をメタノールで洗浄し、濾過し、乾燥することにより、所望の層状岩塩型LiMnO2を得る。
【0013】
【発明の効果】本発明によれば、これまで低コストで工業的に製造することが困難であった層状岩塩型LiMnO2を単一の工程で大量生産することが可能となったので、LiMnO2を正極材料とするリチウム二次電池の開発が一層促進される。
【0014】
【実施例】以下に実施例を示し、本発明の特徴とするところをより一層明確にする。なお、実施例で得られた試料の結晶相は、X線回折分析により評価した。
【0015】実施例1ポリテトラフルオロエチレン製ビーカー中に水酸化リチウム一水和物1.1gと水酸化カリウム70gとを収容し、蒸留水100ccを加え、良く撹拌し、完全に溶解させた後、酸化マンガン(Mn2O3)1gを加え、良く撹拌した。
【0016】次いで、ビーカーを水熱反応炉(オートクレーブ)内に静置し、220℃で8時間水熱処理した。水熱処理終了後、ビーカー内容物の温度が60℃程度に下がった時点で、ビーカーをオートクレーブ外に取り出し、生成している粉末をメタノールで洗浄して、過剰に存在する水酸化リチウムおよび水酸化カリウムを除去し、濾過し、乾燥することにより、粉末状生成物を得た。
【0017】最終生成物のX線回折パターンを図1(a)に示す。2θ=15°付近のピーク(斜方晶LiMnO2に帰属される)以外の全ての回折ピークは、前記「参照文献」に報告されている単斜晶系の層状岩塩型LiMnO2の単位胞で指数付けすることができた。
【0018】実施例2ポリテトラフルオロエチレン製ビーカー中に無水塩化リチウム1.0gと水酸化カリウム70gとを収容し、蒸留水100ccを加え、良く撹拌し、完全に溶解させた後、酸化マンガン(Mn2O3)1gを加え、良く撹拌した。
【0019】次いで、ビーカーを水熱反応炉(オートクレーブ)内に静置し、220℃で8時間水熱処理した。水熱処理終了後、ビーカー内容物の温度が60℃程度に下がった時点で、ビーカーをオートクレーブ外に取り出し、生成している粉末をメタノールで洗浄して、過剰に存在する塩化リチウムおよび水酸化カリウムを除去し、濾過し、乾燥することにより、粉末状生成物を得た。
【0020】最終生成物のX線回折パターンを図1(b)に示す。2θ=15°付近のピーク(斜方晶LiMnO2に帰属される)以外の全ての回折ピークは、前記「参照文献」に報告されている単斜晶系の層状岩塩型LiMnO2の単位胞(区間群C2/m、a=5.4387Å、b=2.80857Å、c=5.3878Å、β=116.006°)で指数付けすることができた。
【出願人】 【識別番号】000001144
【氏名又は名称】工業技術院長
【出願日】 平成9年(1997)7月3日
【代理人】
【公開番号】 特開平11−21128
【公開日】 平成11年(1999)1月26日
【出願番号】 特願平9−195056