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【発明の名称】 航空機のエンジン空気吸込み口のバードストライク防除装置
【発明者】 【氏名】金子 敏雄
【課題】航空機のエンジン吸気口側からエンジン内へ、鳥の吸い込みを防止する航空機のエンジン空気吸込み口のバードストライク防除装置を提供する。

【解決手段】主翼(1)に取り付けられたエンジンを収容するエンジンポッド(5)の吸気口(7)側に、エンジンの吸気口(7)前面全体を覆う網状カバー(10)を、被せるようにして取り付けることにより、エンジンに必要な空気の取り込みにも支障無く、エンジン吸気口からエンジン内への鳥の吸い込みを防ぐことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 航空機のエンジンを収容したエンジンポッドの吸気口側に、エンジンの吸気口前面全体を覆う網状カバーを、被せるようにして取り付けることを特徴とする航空機のエンジン空気吸込み口のバードストライク防除装置。
【請求項2】 前記網状カバーを、前方に向かって尖った概略円錐形状とし、エンジンポッド吸気口側に装着時に、頂点がエンジン吸気口前方に位置するようにしたことを特徴とする航空機のエンジン空気吸込み口のバードストライク防除装置。
【請求項3】 前記網状カバーの、少なくともエンジン吸気口前面に位置する網目状部分を、不要時には、エンジン吸気口前面から取り除け可能としたことを特徴とする請求項1又は2記載のエンジン空気吸込み口のバードストライク防除装置。
【請求項4】 前記網状カバーの、少なくともエンジン吸気口前面に位置する網目状部分を、高度センサーが所定の高度に達したことを検知したとき、自動的にエンジン吸気口前面から取り除け或いは装着可能としたことを特徴とする請求項3に記載のエンジン空気吸込み口のバードストライク防除装置。
【請求項5】 前記網状カバーの、少なくともエンジン吸気口前面に位置する網目状部分を、エンジンの逆噴射時には逆噴射操作に伴い、自動的にエンジン吸気口前面から取り除け可能とし、逆噴射操作の終了後、自動的に装着可能としたことを特徴とする請求項3又は4に記載のエンジン空気吸込み口のバードストライク防除装置。
【請求項6】 前記網状カバーに通電し発熱させることを特徴とする請求項1から5いずれかに記載のエンジン空気吸込み口のバードストライク防除装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、航空機のジェットエンジンの吸気口に鳥が吸い込まれるのを防ぐ、エンジン空気吸込み口のバードストライク防除装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】航空機のジェットエンジンは、構造上、大量の空気を吸い込んで飛行のための推力を得ている。例えば、大型ジェット機では、ターボジェットエンジンの1種であるターボファンエンジンを使用しており、このエンジンは、エンジン機関の先端から空気を吸い込み、圧縮機で高圧とし、燃料と混合して燃焼・噴出させてタービンを回転させ、かつ、その排出ガス流を後方へ噴出して推力を得る純ジェットエンジン部と、同時に前記の圧縮機とタービンとを利用して、エンジン前面のファンを高速で回転させて、大きな推力を得ている。このように構造上、大量の空気を吸い込むにもかかわらず、エンジン吸気口は無防備であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】そのため、エンジン駆動時、特に、比較的低空を飛行する際に、空気とともに付近の鳥を吸い込むことがあり、これがエンジン内に入るときわめて危険であり、最悪の場合、航空機が墜落に至る虞れすらある。このような鳥の吸い込み事故は、従来たびたび見られたことで、例えば、離陸直後に鳥を吸い込んだ様な場合、危険を回避するため、飛行をあきらめて空港に戻るようなこともあり、危険であるだけでなく、非常に不経済であった。
【0004】この発明は、上記のような、エンジン吸気口の欠点を解消するためになされたものであり、エンジン内に必要な空気を取り込みながら、エンジン吸気口からエンジン内への鳥等の吸い込みを防ぐことのできるエンジン空気吸込み口のバードストライク防除装置を提供することを目的としている。また、請求項3〜5の発明では、鳥を吸い込む虞れのない空域を飛行する際、網状のカバーをエンジン吸気口前面から取り除けることができる。加えて、請求項第6の発明では、上記カバー部分に着氷することを防ぐ。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するため、この発明では、航空機のエンジンを収容したエンジンポッドの吸気口側に、エンジンの吸気口前面全体を覆う網状カバーを、被せるようにして取り付けることを特徴とする。
【0006】また、請求項2の発明では、前記網状カバーを、前方に向かって尖った概略円錐形状とし、エンジンポッド吸気口側に装着時、頂点がエンジン吸気口前方に位置するようにされている。
【0007】上記において、前記網状カバーの、少なくともエンジン吸気口前面に位置する網目状部分を、不要時には、エンジン吸気口前面から取り除け可能としたものが考えられる。
【0008】また、前記網状カバーの、少なくともエンジン吸気口前面に位置する網目状部分を、高度センサーが所定の高度に達したことを検知したとき、自動的にエンジン吸気口前面から取り除け、また装着可能としたもの、更には、前記網状カバーの、少なくともエンジン吸気口前面に位置する網目状部分を、エンジンの逆噴射時には逆噴射操作に伴い、自動的にエンジン吸気口前面から取り除け可能とし、逆噴射の終了時に装着可能としたものが考えられる。請求項6の発明では、前記網状カバーに通電し発熱させることを特徴としている。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明の1実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。通常、大型ジェット機は、複数のターボジェットエンジンを搭載している。図1では、本発明になるエンジン空気吸込み口のバードストライク防除装置を装着した状態のこの種ターボジェットエンジンを示している。
【0010】大型ジェット機において、主翼(1)の前縁(2)側に、通常は機体胴体部を挟んで左右に2基乃至は同数ずつのターボジェットエンジン(3)が設けられている。図におけるターボジェットエンジン(3)は、多数の羽根からなり高速で回転するファン(4)を、エンジン機関前面側に設けたターボファンエンジンであって、エンジンポッド(5)に収容され、エンジンマウンティングパイロン(6)で主翼前縁(2)側に搭載されている。このターボファンエンジン(3)においては、大量の空気が吸気口(7)側から吸い込まれ、ジェットエンジン機関部或いはファンを通過した大量の空気は、排気ダクト(8)を経て排気口(9)側へ排出される。
【0011】この実施形態では、エンジンポッド(5)の吸気口(7)側に、エンジン内に必要な空気が取り込まれる妨げにならないように、網目状に形成された吸気口(7)全体を覆うカバー(10)を、エンジンポッド(5)外側に、エンジンの吸気口側前面を覆うように被せて取り付けている。エンジン吸気口前面を完全に覆うのであれば、エンジンポッドの内側に、網状カバーを取り付けてもかまわない。
【0012】この網目状カバーは、チタンやアルミ合金、鋼鉄製等の金属類、或いは合成樹脂やセラミック素材など、充分な強度を有する素材から形成される。強度があり、軽量な素材であれば尚望ましい。カバーの網目部を板バネ等の弾力を付勢したもので構成してもよい。
【0013】図1に示す実施形態では、エンジンポッド吸気口側に取り付けるカバー(10)を、エンジンの通常使用時の吸気口(7)側前方、すなわち航空機の通常飛行の際の進行方向にとがった頂点を向けた円錐形状に形成し、円錐の底面を描く円が、エンジンポッド(5)の吸気口(7)側に被さったような状態で装着されている。
【0014】エンジン吸気口(7)側へ吸い込まれてきた鳥は、円錐形状のカバー(10)の外表面に衝突し、そのまま風圧に押されて円錐面にそってカバーの後方へ飛ばされていく。
【0015】ところで、航空機のエンジンに鳥が吸い込まれる虞れがあるのは、地上からある一定の高度までの間に限られる。一説には地上から150メートル程度迄といわれているが、それ以上の高度では、この種カバーは不要となり、旅客機などの通常の飛行においては、カバーの必要ない時間の方が長い。必要以外のときにカバーを装着していると、網目部が空気の流れを妨げるだけでなく、吸気口からの大量の空気の通路にあたり、また、逆噴射時には高温、高圧の空気が通過することになるため、網状カバーが必要以上に消耗することとなる。このため、網状カバー(10)の少なくとも吸気口を覆っている部分は、不要時には、取り除け可能である方が望ましい。
【0016】図2では、本発明になる網状カバー不要時に、網状カバーを取り外した状態を示している。円錐形状の網状カバー(10)は、エンジンポッド下側に設けられた、網状カバー開閉用の駆動モーター(11)で、カバー(10)を回転させることにより、網状カバー(10)をエンジン吸気口(7)前面から外して取り除ける。このとき、網状カバー(10)の外表面がエンジンポッド(5)外周に当接するまで回転させて網状カバー(5)を安定させる。
【0017】この網状カバー(10)を、エンジン吸気口(7)から取り除ける方法としては、図3のように、カバー(10)円錐面を、円錐の元の頂点をそれぞれの頂点とし、かつ、頂角が鋭角をなす複数の概略扇形の分離片(12)(12)に分離可能とし、それぞれの分離片(12)(12)ごとに、エンジンポッドの吸気口側に位置し、概略扇形をなす各分離片の円弧位置にあたる部分を回転軸として、各片に設けられた駆動モータ(11)によって、ちょうどオレンジの皮をめくるようにして、各分離片(12)(12)を裏返し、エンジンポッド(5)側に反転させ、エンジン吸気口側の網状カバーを取り除ける方法がある。
【0018】あるいは、図示してはいないが、概略扇形の分離片(12)(12)それぞれを、反転させずに、そのまま機体後方、即ちエンジンポッド排気口側にスライドさせて、エンジン吸気口側の網状カバーを取り除ける方法等が考えられる。
【0019】このような、網状カバー(10)のエンジン吸気口側からの取り除け操作を、自動的に行なうこともできる。
【0020】航空機が、地上から一定の高度以上に位置するとき、即ち、鳥が飛ぶ可能性のある高度を越えたときは、この種網状カバーをエンジンに装着する必要はないのであるから、自動的にはずせばよい。同様に、着陸の際、鳥を吸い込む危険性のある高度にまで機体が降下したときに、自動的に、網状カバーを装着すればよい。
【0021】図4は、この制御操作を簡単に示すブロック図である。航空機の高度センサー(13)が機体の高度を検知し、その情報がコントローラー(14)に送られる。コントローラ(14)では、予め設定した高度に航空機が達したことを認識すると、所定の高度で、網状カバーの駆動モーターを開位置或いは閉位置に制御する。開閉モータ(15)がコントローラの制御(14)を受けて、網状カバーを開位置又は閉位置に正確に駆動する。
【0022】エンジンの逆噴射操作が行われたときも、網状カバー(10)は不要であり、むしろ邪魔であることから、逆噴射操作(16)に伴って信号がコントローラ(14)へ送られ、コントローラ(14)が開閉モータ(15)を制御し、逆噴射直前迄に、網状カバーが外され、逆噴射が完了した時点で、同様にコントローラー(14)が信号を判断し、必要に応じて網状カバーが装着される。
【0023】図5においては、逆噴射による自動制御と、高度による自動制御をともに行なう場合のフロチャートが示されている。逆噴射操作時には、鳥防除用網状カバー(10)の必要な高度であっても、防除カバーの取り除けが優先(S17からS20へ)され、逆噴射操作が選択されていないときは、高度により(S18)、網状の鳥防除カバーが着脱(S19又はS20)されるように制御される。
【0024】この網状カバーには、飛行中、着氷の虞れがあり、着氷すると吸気口への空気の流れが妨げられ、エンジン内へ取り込まれる空気量が減る結果となる。また、着氷した氷が、エンジン内に吸い込まれるときわめて危険である。そのため、網状カバーに電気を通し、熱をもたせて、着氷を防ぐようにしている。
【0025】
【発明の効果】以上のように、本発明では、航空機のエンジン吸気口を覆うように網状カバーを被せることから、エンジン吸気口からの空気の取り込みに支障をきたさず、鳥の飛んでいる低空域を飛行する際に、エンジン吸気口から、鳥をエンジン内に吸い込むことを防止でき、航空機の安全な航行を図るものである。
【0026】エンジン吸気口側を網状カバーで覆うことにより、エンジン吸気口から吸い込まれた鳥が、エンジン内に吸い込まれることがなくなり、場合によっては墜落に至る虞れまである、非常に危険な鳥の吸い込み事故を防ぎ、また、離陸直後等の鳥の吸い込み事故のため、飛行をあきらめ、整備のため空港に戻る等の無駄を回避することができる。
【0027】この発明の3〜5の請求項では、鳥の飛行しないような高度を航行中や逆噴射時には、網状カバーを吸気口から外すことができるため、大量の空気を通過させる網状カバーの消耗を減らし、また、逆噴射時に高温高圧の空気が吹き出すことによる網状カバーの消耗も避けることができる。
【0028】更に、請求項6では、この網状カバーに通電し、発熱させていることから、飛行中、網状カバーに着氷することを防止することができ、着氷した氷により、エンジン内への空気の流れを妨げることもなく、また、網状カバーに着氷した氷がエンジン内に吸い込まれ、エンジンを傷つける危険を避けることができるという効果がある。
【出願人】 【識別番号】596003030
【氏名又は名称】金子 敏雄
【出願日】 平成10年(1998)3月26日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】樽本 久幸
【公開番号】 特開平11−278396
【公開日】 平成11年(1999)10月12日
【出願番号】 特願平10−79137