| 【発明の名称】 |
ハイブリッド車両および動力出力装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】金森 彰彦
【氏名】川端 康己
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| 【要約】 |
【課題】4輪駆動可能なハイブリッド車両において前後輪にトルクの偏りが生じていた。また、後進時の前後輪のトルク配分の制御について十分検討されていなかった。
【解決手段】エンジンの出力軸と前車軸とを対ロータモータで結合する。後車軸には第1のモータを結合する。さらに第2のモータをクラッチによりエンジンの出力軸および駆動軸に選択的に結合可能とする。後進時には第2のモータを出力軸または駆動軸に結合する。対ロータモータ、第1および第2のモータを逆転させれば後進することができる。前後輪のトルクは自由に制御可能である。また、前後輪の一方がスリップしている場合にはトルク配分を変更する。これらの制御により、後進時に前後輪のトルク配分を適切に制御することができる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 第1および第2の駆動軸に動力を出力して4輪駆動することができるハイブリッド車両であって、出力軸を有する原動機と、該出力軸と前記第1の駆動軸とに結合され、該出力軸および第1の駆動軸の一方から入力された機械的な動力を、電力のやりとりによって増減して、他方に伝達可能な動力調整装置と、前記第2の駆動軸に結合された第1の電動機と、前記出力軸、第1の駆動軸および第2の駆動軸のいずれとも異なる回転軸を有する第2の電動機と、該回転軸と前記出力軸との結合および切り離しを行う第1の接続装置と、該回転軸と前記第1の駆動軸との結合および切り離しを行う第2の接続装置と、前記第1の駆動軸および第2の駆動軸から前記ハイブリッド車両を後進させるために出力すべき動力の総和を要求動力として設定する動力設定手段と、前記原動機、動力調整装置、第1の電動機および第2の電動機の運転を制御して、前記第1の駆動軸および第2の駆動軸から前記要求動力を出力する駆動制御手段と、該ハイブリッド車両について、進行方向も含む走行状態を特定する特定手段と、該特定されたハイブリッド車両の走行状態が後進である場合には、前記第1の接続装置および前記第2の接続装置を制御して、前記第2の電動機の回転軸を前記出力軸および前記第1の駆動軸のいずれか一方に選択的に結合する接続制御手段とを備えるハイブリッド車両。 【請求項2】 請求項1記載のハイブリッド車両であって、前記動力調整装置は、前記出力軸に結合された第1のロータと、前記第1の駆動軸に結合され前記第1のロータと同軸上で相対的に回転可能な第2のロータとを有する対ロータ電動機であるハイブリッド車両。 【請求項3】 請求項1記載のハイブリッド車両であって、前記動力調整装置は、前記出力軸に結合された第1の軸と、前記第1の駆動軸に結合された第2の軸と、該第1の軸および第2の軸とは異なる第3の軸を有し、これらの3つの軸のうち2つの軸の動力状態が決定されると残余の一つの軸の動力状態が決まる3軸式動力伝達装置を有し、前記第1の電動機および第2の電動機とは異なる第3の電動機を前記第3の軸に結合した装置であるハイブリッド車両。 【請求項4】 請求項1記載のハイブリッド車両であって、前記動力設定手段は、前記要求動力を所定のトルク配分で前記第1の駆動軸から出力すべき動力と前記第2の駆動軸から出力すべき動力に配分する動力配分手段を有しており、前記特定手段は、車両の走行状態として前記第1の駆動軸から出力すべきトルクと前記出力軸のトルクの関係を特定する手段であり、前記接続制御手段は、前記第1の駆動軸の要求トルクが前記動力調整装置から出力可能な最大トルクよりも有意に大きいと判定された場合には、前記第2の電動機の回転軸を前記第1の駆動軸に結合する手段であるハイブリッド車両。 【請求項5】 請求項1記載のハイブリッド車両であって、前記接続制御手段は、車両の走行状態に応じて、前記第1の接続装置および前記第2の接続装置を制御して、前記第2の電動機の回転軸を前記第1の駆動軸に結合する手段であり、前記駆動制御手段は、少なくとも前記第2の電動機を力行して、前記第1の駆動軸および第2の駆動軸から前記要求動力を出力する手段であるハイブリッド車両。 【請求項6】 請求項1記載のハイブリッド車両であって、前記接続制御手段は、車両の走行状態に応じて、前記第1の接続装置および前記第2の接続装置を制御して、前記第2の電動機の回転軸を前記出力軸に結合する手段であり、前記駆動制御手段は、電力を供給して少なくとも前記動力調整装置から動力を出力することにより、前記第1の駆動軸および第2の駆動軸から前記要求動力を出力する手段であるハイブリッド車両。 【請求項7】 請求項6記載のハイブリッド車両であって、前記駆動制御手段は、さらに、前記第2の電動機を制御して、前記動力調整装置からの動力の出力に伴う前記出力軸の回転を抑制するためのトルクを出力する手段であるハイブリッド車両。 【請求項8】 請求項1記載のハイブリッド車両であって、前記接続制御手段は、車両の走行状態に応じて、前記第1の接続装置および前記第2の接続装置を制御して、前記第2の電動機の回転軸を前記第1の駆動軸に結合する手段であり、前記駆動制御手段は、前記原動機から出力された動力の一部を前記動力調整装置により電力として回生し、該回生された電力を前記第1の電動機および前記第2の電動機の少なくとも一方に供給することにより、前記第1の駆動軸および第2の駆動軸から前記要求動力を出力する手段であるハイブリッド車両。 【請求項9】 請求項1記載のハイブリッド車両であって、前記接続制御手段は、車両の走行状態に応じて、前記第1の接続装置および前記第2の接続装置を制御して、前記第2の電動機の回転軸を前記出力軸に結合する手段であり、前記駆動制御手段は、前記原動機から出力された動力の一部を前記第2の電動機により電力として回生し、該回生された電力を前記第1の電動機および前記動力調整装置の少なくとも一方に供給することにより、前記第1の駆動軸および第2の駆動軸から前記要求動力を出力する手段であるハイブリッド車両。 【請求項10】 請求項1記載のハイブリッド車両であって、前記動力設定手段は、前記要求動力を所定のトルク配分で前記第1の駆動軸から出力すべき動力と前記第2の駆動軸から出力すべき動力に配分する動力配分手段を有する手段であり、さらに、前記第1の駆動軸に結合された第1の駆動輪および前記第2の駆動軸に結合された第2の駆動輪の路面に対する滑り量を検出する検出する検出手段と、前記第1の駆動輪および第2の駆動輪の少なくとも一方の滑り量が所定の値以上である場合には、前記動力配分手段により配分された結果に関わらず、少なくとも滑り量が該所定の値を超える駆動輪が結合された駆動軸から出力すべきトルクを変更して前記要求動力を補正する動力補正手段とを備えるハイブリッド車両。 【請求項11】 請求項10記載のハイブリッド車両であって、前記検出手段は、前記第1の駆動軸の回転数と前記第2の駆動軸の回転数の差に基づいて前記滑り量を検出する手段であるハイブリッド車両。 【請求項12】 請求項10記載のハイブリッド車両であって、前記動力補正手段は、前記滑り量が該所定の値を超える駆動輪が結合された駆動軸から出力すべきトルクの絶対値を減少させる手段であるハイブリッド車両。 【請求項13】 請求項10記載のハイブリッド車両であって、前記動力補正手段は、前記第1の駆動軸および第2の駆動軸から出力されるトルクの総和を一定に保持したまま前記第1の駆動軸から出力すべきトルクおよび前記第2の駆動軸から出力すべきトルクを変更する手段であるハイブリッド車両。 【請求項14】 請求項10記載のハイブリッド車両であって、前記動力補正手段は、前記動力調整装置を制御して、前記第1の駆動軸から出力すべきトルクを変更する手段であるハイブリッド車両。 【請求項15】 請求項10記載のハイブリッド車両であって、前記動力補正手段は、前記第2の電動機を制御して、前記第1の駆動軸から出力すべきトルクを変更する手段であるハイブリッド車両。 【請求項16】 請求項10記載のハイブリッド車両であって、前記動力補正手段は、前記滑り量が該所定の値を超える駆動輪が結合された駆動軸から出力すべきトルクの変更量を、前記滑り量に応じた関係として記憶する記憶手段と、前記滑り量に基づいて前記記憶手段に記憶された関係を参照して、前記出力すべきトルクを変更する変更手段とを備えるハイブリッド車両。 【請求項17】 請求項10記載のハイブリッド車両であって、前記動力補正手段は、前記滑り量が所定範囲内になるまで、前記滑り量が該所定の値を超える駆動輪が結合された駆動軸から出力すべきトルクを、段階的に変更する手段であるハイブリッド車両。 【請求項18】 第1および第2の駆動軸に動力を出力することができる動力出力装置であって、出力軸を有する原動機と、該出力軸と前記第1の駆動軸とに結合され、該出力軸および第1の駆動軸の一方から入力された機械的な動力を、電力のやりとりによって増減して、他方に伝達可能な動力調整装置と、前記第2の駆動軸に結合された第1の電動機と、前記出力軸、第1の駆動軸および第2の駆動軸のいずれとも異なる回転軸を有する第2の電動機と、該回転軸と前記出力軸との結合および切り離しを行う第1の接続装置と、該回転軸と前記第1の駆動軸との結合および切り離しを行う第2の接続装置と、前記第1の駆動軸および第2の駆動軸から前記原動機の回転方向と逆転方向に回転する状態で出力すべき動力の総和を要求動力として設定する動力設定手段と、前記原動機、動力調整装置、第1の電動機および第2の電動機の運転を制御して、前記第1の駆動軸および第2の駆動軸から前記要求動力を出力する駆動制御手段と、該動力出力装置について、第1の駆動軸および第2の駆動軸の回転方向を含む運転状態を特定する特定手段と、該特定された運転状態が前記逆転方向に回転する状態である場合には、前記第1の接続装置および前記第2の接続装置を制御して、前記第2の電動機の回転軸を前記出力軸および前記第1の駆動軸のいずれか一方に選択的に結合する接続制御手段とを備える動力出力装置。 【請求項19】 原動機の出力軸および第1の駆動軸に結合された動力調整装置により該原動機の動力を増減して前記第1の駆動軸から出力可能な第1の駆動系統と、第1の電動機の動力を該第1の電動機に結合された第2の駆動軸から出力可能な第2の駆動系統と、接続装置により前記第1の駆動軸および前記出力軸の少なくとも一方に選択的に結合することができる第2の電動機とを備え、第1の駆動軸および第2の駆動軸から動力を出力して走行可能なハイブリッド車両を制御する制御方法であって、(a) 前記第1の駆動軸および第2の駆動軸から、ハイブリッド車両を後進させるために出力すべき動力の総和を要求動力として設定する工程と、(b) 該ハイブリッド車両について、進行方向も含む走行状態を特定する工程と、(c) 前記特定されたハイブリッド車両の走行状態が後進である場合には、前記第1の接続装置および前記第2の接続装置を制御して、前記第2の電動機の回転軸を前記出力軸および前記第1の駆動軸のいずれか一方に選択的に結合する工程と、(d) 前記原動機、動力調整装置、第1の電動機および第2の電動機の運転を制御して、前記第1の駆動軸および第2の駆動軸から総和が前記要求動力となる動力を出力する工程とを備えるハイブリッド車両の制御方法。 【請求項20】 請求項19記載のハイブリッド車両の制御方法であって、前記工程(a)は、前記要求動力を所定のトルク配分で前記第1の駆動軸から出力すべき動力と前記第2の駆動軸から出力すべき動力に配分する工程を有する工程であり、さらに、(e) 前記第1の駆動軸に結合された第1の駆動輪および前記第2の駆動軸に結合された第2の駆動輪の路面に対する滑り量を検出する検出する検出する工程と、(f) 前記第1の駆動輪および第2の駆動輪の少なくとも一方の滑り量が所定の値以上である場合には、前記動力配分手段により配分された結果に関わらず、少なくとも滑り量が該所定の値を超える駆動輪が結合された駆動軸から出力すべきトルクを変更して前記要求動力を補正する工程とを備えるハイブリッド車両の制御方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、第1の駆動軸と第2の駆動軸から動力を出力して4輪駆動可能なハイブリッド車両および前記2つの駆動軸から動力を出力可能なハイブリッド式の動力出力装置に関する。 【0002】 【従来の技術】近年、エンジンと電動機とを動力源とするハイブリッド車両が提案されている(例えば特開平9−47094に記載の技術等)。ハイブリッド車両の一種としていわゆるパラレルハイブリッド車両がある。パラレルハイブリッド車両は、エンジンから出力された動力を動力調整装置により分配する。分配された動力の一部は出力軸に伝達され、残りは発電機により電力に変換される。この電力はバッテリに蓄電されたり、出力軸に結合された電動機を駆動するのに用いられる。かかる構成により、パラレルハイブリッド車両はエンジンから出力された動力を任意の回転数およびトルクで出力軸に出力することができる。エンジンは運転効率の高い運転ポイントを選択して運転することができるため、ハイブリッド車両はエンジンのみを駆動源とする従来の車両に比べて省資源性および排気浄化性に優れている。 【0003】上述のパラレルハイブリッド車両の技術を利用して、4輪駆動可能なハイブリッド車両も提案されている(例えば特開平9−175203記載の技術等)。4輪駆動可能なハイブリッド車両の構成例を図25に示す。かかるハイブリッド車両では、クラッチモータ30のインナロータ34を原動機50の出力軸に結合するとともに、アウタロータ32を駆動軸22に結合する。駆動軸22は変速ギヤ23およびディファレンシャルギヤ24を介して前輪26,28に結合されている。後輪27,29には電動機40が結合されており、該電動機40はインバータ92を介してバッテリ94に接続されている。クラッチモータ30もまたインバータ91を介してバッテリ94に電気的に接続されている。従って、電動機40とクラッチモータ30はバッテリ94を介して電気的に接続されている。 【0004】クラッチモータ30はインナロータ34とアウタロータ32との間の電磁的な結合により動力を伝達するとともに、両者間の相対的な滑りに応じて電力を回生し、動力を電力に変換する動力調整装置としての役割を果たすものである。原動機50から出力された動力は上述したクラッチモータ30の作用により、一部が駆動軸22に伝達され前輪26,28を駆動し、残りの動力が電力に変換される。この電力は電動機40を駆動することにより、後輪27,29の駆動に用いられる。かかる作用により上述のハイブリッド車両では、前輪26,28および後輪27,29の双方から動力を出力することができ、いわゆる4輪駆動が可能である。かかる構成を有するハイブリッド車両では、前進方向の走行のみならず、クラッチモータ30およびアシストモータ40を逆転方向に力行することにより、後進することも可能である。 【0005】4輪駆動可能なハイブリッド車両としては、上述の構成において駆動軸22に第2の電動機を結合したものも提案されている。かかる構成を図26に示す。図26に示したハイブリッド車両は、駆動軸22に第2の電動機45が結合されている。その他の点については、図25に示したハイブリッド車両の構成と同じである。図26に示す構成を有するハイブリッド車両でも図25に示したハイブリッド車両と同様、原動機50から出力された動力を動力調整装置としてのクラッチモータ30により一部を電力に変換しつつ、残余の動力をアウタロータ34側に伝達する。ここで回生された電力を用いて第1の電動機40および第2の電動機45を力行する。両電動機から出力されるトルクは任意に設定可能である。従って、図26に示したハイブリッド車両では、前輪および後輪から出力されるトルクの配分を適切な値にすることが可能となる。かかる構成を有するハイブリッド車両においても、クラッチモータ30,アシストモータ40および第2の電動機45を逆転方向に力行することにより、後進することができる。 【0006】エンジンのみを動力源とする従来の車両で4輪駆動を実現するためには、エンジンの動力を前輪および後輪の両者に伝達するために、プロペラシャフトを用いていた。これは重量および車両の室内スペースへの影響等の面でデメリットが多い。上述のハイブリッド車両では、プロペラシャフトを用いることなく4輪駆動を実現できる点でも大きな利点を有している。4輪駆動可能なハイブリッド車両は、その他省資源性および排気浄化性に優れているというハイブリッド車両の特性を4輪駆動車両においても活かすことができる点でも優れている。なお、以下の説明では、4輪駆動可能なハイブリッド車両について、図25に示すように動力調整装置として機能する電動機と、後輪に結合された電動機との2つの電動機を備えるタイプのハイブリッド車両を2モータ式のハイブリッド車両と呼び、図26に示すように前輪にさらに電動機が結合されたハイブリッド車両を3モータ式のハイブリッド車両と呼ぶものとする。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の4輪駆動可能なハイブリッド車両では、運転状態によっては動力の循環という現象が生じ、運転効率が低下することがあった。動力の循環について図27〜図30を用いて説明する。 【0008】図27は、図25に示した2モータ式のハイブリッド車両における動力の出力の様子を示す説明図である。原動機からは要求された大きさの動力P1が出力される。原動機50から出力された動力P1はクラッチモータ30で一部電力E1に変換され、残余の動力PFが前輪に伝達される。一方、この電力E1は後輪に結合された電動機40に供給され、電動機40を力行することにより後輪から動力PRを出力する。ただし、クラッチモータ30で電力を回生するためには、アウタロータ34にトルクが加えられる方向と、アウタロータ34がインナロータ32に対して相対的に回転する方向とが逆となっている必要がある。つまり、アウタロータ43はインナロータ32よりも遅い回転数で回転している必要がある。言い換えれば「駆動軸22の回転数<原動機50の回転数」(以下、アンダードライブと呼ぶ)である必要がある。 【0009】アウタロータ34の回転数がインナロータ32よりも高い場合、即ち「駆動軸22の回転数>原動機50の回転数」である場合(以下、オーバードライブと呼ぶ)の動力の出力の様子を図28に示した。原動機50からは要求された大きさの動力P1が出力される。駆動軸22の回転数は原動機50の回転数よりも高いから、動力が回転数とトルクの積に等しいことを考えれば、前輪および後輪からは原動機50から出力されるトルクよりも低いトルクの動力が出力されることになる。この運転状態においては、クラッチモータ30に電力を供給して力行し、回転数を増大して前輪から出力する。図28で前輪への動力を示す矢印PFが原動機50の出力動力を示す矢印P1よりも太くなっているのは、クラッチモータ30を力行することによる動力が増加することを意味している。ところが、作用反作用の原理により、クラッチモータ30のインナロータ32に加えられるトルクとアウタロータ34に加えられるトルクは等しい。従って、前輪からは要求トルクに対して余剰のトルクが出力されていることになる。上記運転状態では、この余剰トルクに相当する負荷トルクを後輪で加えることによって全体として要求トルクが出力されるようにする。後輪は前輪と同じ回転数で回転しているから、後輪の回転動力PRを電動機40で電力E2として回生する。この電力はクラッチモータ30に供給される。これは、図28に示す通り、前輪から出力された動力の一部PTが地面を介して後輪に伝達され、電動機40により電力として回生された状態としても捉えられる。 【0010】オーバードライブ時には、図28に示した通り、クラッチモータ30から出力された動力PFの一部PTは地面を介して後輪に伝達され、電動機40により回生され、電力E2として再びクラッチモータ30に供給される。この結果、動力は図28に示す循環Γ1を生じる。一般に動力の伝達、および電力と機械的な動力の変換には何らかの損失が伴う。従って、図28に示したような動力の循環が生じると、その分ハイブリッド車両の運転効率は低下してしまう。 【0011】同様の問題は、図26に示した3モータ式のハイブリッド車両でも生じていた。図29は、3モータ式のハイブリッド車両において、アンダードライブ時の動力の出力の様子を示す説明図である。2モータ式のハイブリッド車両の場合(図27)において、後輪に結合された電動機40を、前輪に結合された電動機45に置換した状態に相当する。原動機50から出力された動力P1はクラッチモータ30で一部が電力E1に変換され、残余の動力PF1が前輪に伝達される。一方、電力E1は電動機45に供給され、電動機45を力行する。電動機45から出力された動力PF2は同じく前輪から出力される。図29では、図示を省略したが、電力E1の一部を後輪に結合された電動機40に供給して後輪から動力を出力することもできる。このときは、図29から明らかな通り、動力の循環は生じない。 【0012】図30は、3モータ式のハイブリッド車両において、オーバードライブ時の動力の出力の様子を示す説明図である。2モータ式のハイブリッド車両の場合(図28)において、後輪に結合された電動機40を、前輪に結合された電動機45に置換した状態に相当する。クラッチモータ30を力行することにより、原動機50から出力された動力P1の回転数を増す。この結果、前輪から出力される動力PF1は要求動力よりも大きくなる。従って、余剰の動力PF2を電動機45により電力として回生する。こうして回生された電力E2はクラッチモータ30の力行に用いられる。このときは、2モータ式のハイブリッド車両の場合と同様、クラッチモータ30から出力された動力の一部が電力として再びクラッチモータ30に供給されるという動力の循環(図30のΓ2)を生じる。こうした動力の循環はハイブリッド車両の運転効率を低下させることになる。 【0013】後進が可能であることは車両として重要な要素の一つである。上述した動力の循環を低減し、運転効率を向上することができても、後進することができない車両はその有用性が大きく低減してしまう。従来、運転効率の向上を図りつつ、後進も可能とするハイブリッド車両については十分検討がなされていなかった。 【0014】また、従来の2モータ式のハイブリッド車両では、後進時に4輪駆動としての特性を十分活かすことができないという課題もあった。図25に示したハイブリッド車両が後進する場合を考える。後輪27,29については、アシストモータ40を逆転方向に力行することにより後進トルクを出力することができる。前輪26,28については、クラッチモータ30を逆転方向に力行することにより後進トルクを出力することができる。しかし、クラッチモータ30を逆転方向に力行した場合には、その反作用としてのトルクが原動機50にかけられる。反作用によるトルクが、原動機50の摩擦力により生じる静止トルクよりも大きくなると原動機50が回転する。従って、クラッチモータ30から出力可能な後進トルクは原動機50が摩擦力によって静止していられる範囲のトルクに限られる。これは、後進するのに必要なトルクよりも小さい範囲である。 【0015】従来の2モータ式のハイブリッド車両では、このように後進時にクラッチモータ30から出力可能なトルクが制限されるため、後進時は主に後輪に結合されたアシストモータ40から出力されるトルクのみによって走行する。結局、後進時には車両全体として出力可能なトルクが前進時に比較して小さくならざるを得ない。また主に後輪27,29からトルクを出力するため、4輪駆動車両としての特長を活かすことができない。例えば、後輪27,29がスリップした場合には、車両は路面に十分なトルクを伝えることができなくなってしまう。 【0016】3モータ式のハイブリッド車両では、前後輪のトルク配分に対する自由度が高いため、上述の課題を幾分か解消することができる。しかしながら、従来の3モータ式のハイブリッド車両においては、後進時の運転について、前後輪のトルク配分の制御については何ら提案されていなかった。 【0017】本発明は上記課題の少なくとも一部を解決するためになされ、2つの車軸から動力を出力して走行可能なハイブリッド車両において、動力の循環を低減し得る構成を有しつつ、後進可能なハイブリッド車両を提供することを第1の目的とする。また、こうしたハイブリッド車両において前後輪のトルク配分を適切に制御する技術を提供することを第2の目的とする。同様に、2つの出力軸から動力を出力する動力出力装置において、動力の循環を低減し得る構成を有しつつ、出力軸を逆転可能な動力装置を提供することを第3の目的とする。 【0018】 【課題を解決するための手段およびその作用・効果】上記課題の少なくとも一部を解決するために、本発明では以下の構成を採った。本発明のハイブリッド車両は、第1および第2の駆動軸に動力を出力して4輪駆動することができるハイブリッド車両であって、出力軸を有する原動機と、該出力軸と前記第1の駆動軸とに結合され、該出力軸および第1の駆動軸の一方から入力された機械的な動力を、電力のやりとりによって増減して、他方に伝達可能な動力調整装置と、前記第2の駆動軸に結合された第1の電動機と、前記出力軸、第1の駆動軸および第2の駆動軸のいずれとも異なる回転軸を有する第2の電動機と、該回転軸と前記出力軸との結合および切り離しを行う第1の接続装置と、該回転軸と前記第1の駆動軸との結合および切り離しを行う第2の接続装置と、前記第1の駆動軸および第2の駆動軸から前記ハイブリッド車両を後進させるために出力すべき動力の総和を要求動力として設定する動力設定手段と、前記原動機、動力調整装置、第1の電動機および第2の電動機の運転を制御して、前記第1の駆動軸および第2の駆動軸から前記要求動力を出力する駆動制御手段と、該ハイブリッド車両について、進行方向も含む走行状態を特定する特定手段と、該特定されたハイブリッド車両の走行状態が後進である場合には、前記第1の接続装置および前記第2の接続装置を制御して、前記第2の電動機の回転軸を前記出力軸および前記第1の駆動軸のいずれか一方に選択的に結合する接続制御手段とを備えることを要旨とする。 【0019】かかるハイブリッド車両は、前進時は第1の接続装置および第2の接続装置を制御することにより、第2の電動機の回転軸を原動機の出力軸側に結合した状態、第1の駆動軸側に結合した状態、双方に結合した状態、および双方から切り離された状態の4つの結合状態をとることができる。この結果、通常走行時にハイブリッド車両の走行状態に応じて、これらの4つの結合状態の中から前述した動力の循環が生じないような結合状態、または動力の循環の程度が低い結合状態を選択しつつ、ハイブリッド車両を走行することが可能となる。従って、本発明のハイブリッド車両は、運転効率の高いハイブリッド車両を実現し得る構成を有している。 【0020】そして、本発明のハイブリッド車両によれば、このように運転効率を向上するための構成を有しつつ、後進することが可能である。後進時には、第1の接続手段および第2の接続手段を制御することにより、第2の電動機が原動機の出力軸および第1の駆動軸のいずれか一方に結合することができる。第2の電動機は固定されているから、原動機の出力軸に不要なトルクを与えることなく後進のためのトルクを出力することができる。従って、本発明のハイブリッド車両によれば、原動機の出力軸が不要に回転することを防止しつつ、第1の駆動軸から出力されるトルクを制御することが可能である。この結果、本発明のハイブリッド車両によれば、第1の駆動軸および第2の駆動軸の双方から後進に必要なトルクを出力することができる。 【0021】しかも、上記発明のハイブリッド車両では、第1の駆動軸および第2の駆動軸から出力すべき動力の総和を車両を後進するための要求動力に一致させることができ、運転者の意図に従ってハイブリッド車両を走行させることができる。なお、第1の駆動軸および第2の駆動軸から出力すべき動力の総和が要求動力に一致していればよく、両軸から出力する動力の配分は種々の値に設定可能である。配分を予め定めた一定値としてもよいし、車両の走行状態に応じて変化するものとしてもよい。また、いずれか一方の駆動軸からのみ要求動力を出力するものとしても構わない。さらに、一方の駆動軸から要求動力よりも大きな動力を出力し、他方の駆動軸で負荷を与えることによって両者の総和が要求動力に一致するようにしてもよい。上記ハイブリッド車両によれば、後進時に第1の駆動軸から出力可能なトルクを幅広く制御可能であるため、後進時における第1の駆動軸および第2の駆動軸のトルク配分の自由度を向上させることができる。 【0022】なお、本発明のハイブリッド車両では、後進時には第2の電動機を前記出力軸および第1の駆動軸のいずれか一方に選択的に結合するものとしている。こうすることにより、上述した種々の効果を得ることができる。但し、前記第1の接続装置および第2の接続装置の双方を解放状態としたり、双方を結合状態とすることが可能なハイブリッド車両を排除するものではない。かかる状態は上述した効果を得るためには寄与しないが、その他の条件に応じて双方を結合状態としたり、双方を解放状態としたりすることは可能である。 【0023】上記ハイブリッド車両において、動力調整装置としては、種々の構成が可能である。例えば、前記動力調整装置は、前記出力軸に結合された第1のロータと、前記第1の駆動軸に結合され前記第1のロータと同軸上で相対的に回転可能な第2のロータとを有する対ロータ電動機であるものとすることができる。 【0024】かかる構成を有する動力調整装置によれば、前記第1のロータと、第2のロータとの間の磁気的な結合の程度を電力のやりとりによって調整することにより、一方のロータから他方のロータへ動力の大きさを増減しつつ、動力を伝達することができる。 【0025】また、前記動力調整装置は、前記出力軸に結合された第1の軸と、前記第1の駆動軸に結合された第2の軸と、該第1の軸および第2の軸とは異なる第3の軸を有し、これらの3つの軸のうち2つの軸の動力状態が決定されると残余の一つの軸の動力状態が決まる3軸式動力伝達装置を有し、前記第1の電動機および第2の電動機とは異なる第3の電動機を前記第3の軸に結合した装置であるものとすることができる。 【0026】かかる構成を有する動力調整装置によれば、第3の電動機との電力のやりとりによって第3の軸の動力状態を調整することにより、第1の軸および第2の軸のうちの一方から他方に伝達される動力の大きさを増減しつつ、動力を伝達することができる。なお、本明細書では、回転数およびトルクの組み合わせで表される軸の回転状態を動力状態と呼ぶものとする。一般に「動力」は軸の回転数とトルクの積で表されるスカラー量を意味している。従って、動力の大きさをある値に特定しても回転軸の回転状態は一義的には定まらず、回転数およびトルクの組み合わせは無数に存在する。このように無数に存在する回転数およびトルクの組み合わせを意味する「動力」という用語に対し、ある回転数およびトルクの組み合わせにより一義的に特定された回転状態を意味する用語として「動力状態」を用いる。 【0027】本発明のハイブリッド車両において、前記動力設定手段は、前記要求動力を所定のトルク配分で前記第1の駆動軸から出力すべき動力と前記第2の駆動軸から出力すべき動力に配分する動力配分手段を有しており、前記特定手段は、車両の走行状態として前記第1の駆動軸から出力すべきトルクと前記出力軸のトルクの関係を特定する手段であり、前記接続制御手段は、前記第1の駆動軸の要求トルクが前記動力調整装置から出力可能な最大トルクよりも有意に大きいと判定された場合には、前記第2の電動機の回転軸を前記第1の駆動軸に結合する手段であるものとすることもできる。 【0028】第2の電動機を原動機の出力軸に結合した場合、第2の電動機から出力されたトルクは動力調整装置を経て、第1の駆動軸に伝達される。従って、第1の駆動軸に伝達可能なトルクは動力調整装置から第1の駆動軸に出力可能な最大トルクにより制限される。これに対し、上記構成を有するハイブリッド車両によれば、接続装置の制御により第2の電動機が第1の駆動軸に結合することができるから、該第2の電動機を力行することにより、動力調整装置の定格、即ち動力調整装置から出力可能なトルク以上の動力を第1の駆動軸から出力可能となる。この結果、ハイブリッド車両の第1の駆動軸および第2の駆動軸の動力の配分の自由度が増し、より適切な配分で動力を出力することが可能となる。 【0029】本発明のハイブリッド車両において、原動機、動力調整装置、第1の電動機および第2の電動機の運転状態を制御する駆動制御手段と、前記接続制御手段とを種々の態様で組み合わせて適用したハイブリッド車両が可能である。第1の態様として、前記接続制御手段は、車両の走行状態に応じて、前記第1の接続装置および前記第2の接続装置を制御して、前記第2の電動機の回転軸を前記第1の駆動軸に結合する手段であり、前記駆動制御手段は、少なくとも前記第2の電動機を力行して、前記第1の駆動軸および第2の駆動軸から前記要求動力を出力する手段であるものとすることができる。 【0030】第2の態様として、前記接続制御手段は、車両の走行状態に応じて、前記第1の接続装置および前記第2の接続装置を制御して、前記第2の電動機の回転軸を前記出力軸に結合する手段であり、前記駆動制御手段は、電力を供給して少なくとも前記動力調整装置から動力を出力することにより、前記第1の駆動軸および第2の駆動軸から前記要求動力を出力する手段であるものとすることができる。 【0031】第2の態様においては、前記駆動制御手段は、さらに、前記第2の電動機を制御して、前記動力調整装置からの動力の出力に伴う前記出力軸の回転を抑制するためのトルクを出力する手段であるものとすることが望ましい。 【0032】これらの構成を有するハイブリッド車両によれば、それぞれ原動機からの動力を要することなく走行することができる。前者では第2の電動機が第1の駆動軸に結合されているから、第2の電動機から動力をそのまま第1の駆動軸に出力することができる。後者では、動力調整装置が第1の駆動軸に結合されているから、動力調整装置から動力を第1の駆動軸に出力することができる。後者の場合は、原動機の出力軸側に第2の電動機が結合されている。従って、動力調整装置から動力を出力するのに伴って、その反作用により原動機の出力軸が回転しないように保持するためのトルクを第2の電動機で出力するものとすることもできる。こうすれば、動力調整装置からより大きなトルクを出力することが可能となる。これらの作用に基づき、本発明のハイブリッド車両は、運転効率の向上を実現する構成を有しつつ、後進をすることができる。当然、これらの走行に伴って第2の駆動軸に結合された第1の電動機を力行して動力を第2の駆動軸から動力を出力することもできる。従って、2つの駆動軸から動力を出力可能な車両としての利点を後進時においても十分に活かすことができる。 【0033】第3の態様として、前記接続制御手段は、車両の走行状態に応じて、前記第1の接続装置および前記第2の接続装置を制御して、前記第2の電動機の回転軸を前記第1の駆動軸に結合する手段であり、前記駆動制御手段は、前記原動機から出力された動力の一部を前記動力調整装置により電力として回生し、該回生された電力を前記第1の電動機および前記第2の電動機の少なくとも一方に供給することにより、前記第1の駆動軸および第2の駆動軸から前記要求動力を出力する手段であるものとすることができる。 【0034】第4の態様として、前記接続制御手段は、車両の走行状態に応じて、前記第1の接続装置および前記第2の接続装置を制御して、前記第2の電動機の回転軸を前記出力軸に結合する手段であり、前記駆動制御手段は、前記原動機から出力された動力の一部を前記第2の電動機により電力として回生し、該回生された電力を前記第1の電動機および前記動力調整装置の少なくとも一方に供給することにより、前記第1の駆動軸および第2の駆動軸から前記要求動力を出力する手段であるものとすることができる。 【0035】これらの構成を有するハイブリッド車両は、運転効率の向上を実現する構成を有しつつ、原動機から出力された動力を利用して後進することができる。前者では原動機から出力された動力を動力調整装置により電力として回生し、該電力を用いて第1および第2の電動機を力行することができる。後者では、第2の電動機が原動機の出力軸に結合されているから、原動機から出力された動力を第2の電動機により電力として回生し、動力調整装置および第1の電動機を力行することができる。原動機の出力軸がいかなる方向に回転していようとも、出力軸の動力を電力として回生することに支障はない。従って、原動機の出力軸の回転方向がハイブリッド車両が前進するときと同じ方向であっても本発明のハイブリッド車両は上記効果を奏することができる。 【0036】さらに、本発明のハイブリッド車両においては、以下に示す通り第1の駆動軸および第2の駆動軸から出力される動力の配分を適切に制御するものが可能である。例えば、前記動力設定手段は、前記要求動力を所定のトルク配分で前記第1の駆動軸から出力すべき動力と前記第2の駆動軸から出力すべき動力に配分する動力配分手段を有する手段であり、さらに、前記第1の駆動軸に結合された第1の駆動輪および前記第2の駆動軸に結合された第2の駆動輪の路面に対する滑り量を検出する検出する検出手段と、前記第1の駆動輪および第2の駆動輪の少なくとも一方の滑り量が所定の値以上である場合には、前記動力配分手段により配分された結果に関わらず、少なくとも滑り量が該所定の値を超える駆動輪が結合された駆動軸から出力すべきトルクを変更して前記要求動力を補正する動力補正手段とを備えるものとすることができる。 【0037】かかる構成を有するハイブリッド車両によれば、前記第1の駆動軸に結合された第1の駆動輪および前記第2の駆動軸に結合された第2の駆動輪の路面に対する滑り量を検出し、該滑り量に応じて両駆動軸から出力すべきトルクを変更することができる。一般に駆動輪に滑りが生じている場合には、路面に十分な動力を伝達することができない。上記発明のハイブリッド車両によれば、かかる場合に各駆動軸から出力されるトルクを適切に制御することができ、動力を効率的に路面に伝達することができる。この結果、2つの駆動軸から動力を出力可能なハイブリッド車両の特性を活かしつつ、車両を効率的に走行させることができる。なお、トルクの変更は、第1および第2の駆動軸の双方について行うものとしてもよいし、いずれか一方の駆動軸についてのみ行うものとしてもよい。また、第1および第2の駆動軸から出力される動力が動力設定手段により設定された要求動力に満たない場合も含まれる。 【0038】上記ハイブリッド車両において、前記検出手段は、前記第1の駆動軸の回転数と前記第2の駆動軸の回転数の差に基づいて前記滑り量を検出する手段であるものとすることができる。 【0039】第1および第2の駆動軸に結合されたいずれの駆動輪にも滑りが生じていない場合には、第1および第2の駆動軸の回転数は略同一となる。両者の一方に滑りが生じている場合に、両者の回転数に差が生じるから、この回転数差に基づいて滑り量を検出することができる。 【0040】滑り量の検出は上記方法のみならず種々の方法を採ることができる。例えば、駆動輪の回転数以外の方法で車速を検出することが可能な場合には、該検出された車速から算出される駆動軸の回転数と現実の回転数との差分に応じて滑り量を検出するものとしても構わない。また、駆動軸の回転数の時間的な変化を検出し、急激な変化が生じた場合や所定の程度以上の不規則な変化が現れた場合に滑りが生じているものと判断しても構わない。なお、こうした駆動輪の滑りは、車両がいわゆるぬかるみにはまったような場合に生じる他、走行中にカーブを曲がる際にも生じる。 【0041】上記ハイブリッド車両において、前記動力補正手段は、前記滑り量が該所定の値を超える駆動輪が結合された駆動軸から出力すべきトルクの絶対値を減少させる手段であるものとすることが望ましい。 【0042】一般に駆動輪に滑りが生じるのは、該駆動輪から出力されるトルクが路面の摩擦力よりも大きいことが原因である。従って、上記構成を有するハイブリッド車両によれば、滑りを生じている側のトルクの絶対値を減少させることにより、滑りを低減することができる。なお、絶対値を減少させるのであるから、駆動軸から負のトルクが出力されている制動時においても同様の効果を得ることができる。 【0043】上記ハイブリッド車両において、前記動力補正手段は、前記第1の駆動軸および第2の駆動軸から出力されるトルクの総和を一定に保持したまま前記第1の駆動軸から出力すべきトルクおよび前記第2の駆動軸から出力すべきトルクを変更する手段であるものとすることもできる。 【0044】こうすれば、要求トルクの総和を一定に保持することにより、車両の走行に必要な動力を出力しつつ、滑りを低減することができる。 【0045】第1の駆動軸から出力すべきトルクを変更するための手段としては、例えば、次に挙げる2通りがある。一つは、前記動力補正手段は、前記動力調整装置を制御して、前記第1の駆動軸から出力すべきトルクを変更する手段であるものとするものであり、もう一つは、前記動力補正手段は、前記第2の電動機を制御して、前記第1の駆動軸から出力すべきトルクを変更する手段であるものとするものである。 【0046】これらのいずれの手段によっても、第1の駆動軸から出力するトルクを変更することができる。これらの手段は、第2の電動機が第1の駆動軸側に結合されている場合、原動機の出力軸側に結合されている場合のいずれにおいてもそれぞれ適用することができる。また、原動機が運転しているか否かに関わらず適用することができる。 【0047】駆動軸から出力すべきトルクの変更をすることができるハイブリッド車両において、前記動力補正手段は、前記滑り量が該所定の値を超える駆動輪が結合された駆動軸から出力すべきトルクの変更量を、前記滑り量に応じた関係として記憶する記憶手段と、前記滑り量に基づいて前記記憶手段に記憶された関係を参照して、前記出力すべきトルクを変更する変更手段とを備えるものとすることもできる。 【0048】かかる構成によれば、上記記憶手段に記憶された関係を参照することにより、駆動軸の滑り量に応じてトルクを適切に変更し、滑りを抑制することができる。また、かかる構成によれば、滑りを抑制するためのトルクを短時間で設定することができるという利点も有している。なお、滑り量とトルクの変更量との関係は、予め実験その他の手段により決定することができる。 【0049】また、トルクを変更するための別の手段として、前記動力補正手段は、前記滑り量が所定範囲内になるまで、前記滑り量が該所定の値を超える駆動輪が結合された駆動軸から出力すべきトルクを、段階的に変更する手段とすることもできる。 【0050】かかる構成によれば、滑りが生じている側の駆動軸から出力されるトルクを段階的に減少させることにより、滑りを抑制することができる。また、かかる構成では、滑りを抑制するための制御を非常に容易に実現することができるという利点もある。 【0051】なお、本発明のハイブリッド車両に搭載される動力出力装置は、単独で以下の発明として構成されている。本発明の動力出力装置は、第1および第2の駆動軸に動力を出力することができる動力出力装置であって、出力軸を有する原動機と、該出力軸と前記第1の駆動軸とに結合され、該出力軸および第1の駆動軸の一方から入力された機械的な動力を、電力のやりとりによって増減して、他方に伝達可能な動力調整装置と、前記第2の駆動軸に結合された第1の電動機と、前記出力軸、第1の駆動軸および第2の駆動軸のいずれとも異なる回転軸を有する第2の電動機と、該回転軸と前記出力軸との結合および切り離しを行う第1の接続装置と、該回転軸と前記第1の駆動軸との結合および切り離しを行う第2の接続装置と、前記第1の駆動軸および第2の駆動軸から前記原動機の回転方向と逆転方向に回転する状態で出力すべき動力の総和を要求動力として設定する動力設定手段と、前記原動機、動力調整装置、第1の電動機および第2の電動機の運転を制御して、前記第1の駆動軸および第2の駆動軸から前記要求動力を出力する駆動制御手段と、該動力出力装置について、第1の駆動軸および第2の駆動軸の回転方向を含む運転状態を特定する特定手段と、該特定された運転状態が前記逆転方向に回転する状態である場合には、前記第1の接続装置および前記第2の接続装置を制御して、前記第2の電動機の回転軸を前記出力軸および前記第1の駆動軸のいずれか一方に選択的に結合する接続制御手段とを備えることを要旨とする。 【0052】かかる動力出力装置は、先にハイブリッド車両の発明について説明したのと同様、動力の循環を抑制することができるため、動力出力装置の運転効率を向上することができる構成を有している。そして、ハイブリッド車両の発明について説明したのと同様、2つの駆動軸から逆転方向の回転方向に動力を出力することができる。なお、逆転方向とは原動機の回転方向と逆の方向を意味する。より厳密に言えば、前記第1および第2の接続装置を共に結合状態とし、第2の電動機を原動機の出力軸と第1の駆動軸の双方に結合させた上で、原動機を一方向に回転させた場合の回転方向とは逆の方向に第1の駆動軸が回転する状態をいう。 【0053】また、本発明は以下に示す制御方法としても成立する。本発明のハイブリッド車両の制御方法は、原動機の出力軸および第1の駆動軸に結合された動力調整装置により該原動機の動力を増減して前記第1の駆動軸から出力可能な第1の駆動系統と、第1の電動機の動力を該第1の電動機に結合された第2の駆動軸から出力可能な第2の駆動系統と、接続装置により前記第1の駆動軸および前記出力軸の少なくとも一方に選択的に結合することができる第2の電動機とを備え、第1の駆動軸および第2の駆動軸から動力を出力して走行可能なハイブリッド車両を制御する制御方法であって、(a) 前記第1の駆動軸および第2の駆動軸から、ハイブリッド車両を後進させるために出力すべき動力の総和を要求動力として設定する工程と、(b) 該ハイブリッド車両について、進行方向も含む走行状態を特定する工程と、(c) 前記特定されたハイブリッド車両の走行状態が後進である場合には、前記第1の接続装置および前記第2の接続装置を制御して、前記第2の電動機の回転軸を前記出力軸および前記第1の駆動軸のいずれか一方に選択的に結合する工程と、(d) 前記原動機、動力調整装置、第1の電動機および第2の電動機の運転を制御して、前記第1の駆動軸および第2の駆動軸から総和が前記要求動力となる動力を出力する工程とを備えることを要旨とする。 【0054】かかる制御方法において、前記工程(a)は、前記要求動力を所定のトルク配分で前記第1の駆動軸から出力すべき動力と前記第2の駆動軸から出力すべき動力に配分する工程を有する工程であり、さらに、(e) 前記第1の駆動軸に結合された第1の駆動輪および前記第2の駆動軸に結合された第2の駆動輪の路面に対する滑り量を検出する検出する検出する工程と、(f) 前記第1の駆動輪および第2の駆動輪の少なくとも一方の滑り量が所定の値以上である場合には、前記動力配分手段により配分された結果に関わらず、少なくとも滑り量が該所定の値を超える駆動輪が結合された駆動軸から出力すべきトルクを変更して前記要求動力を補正する工程とを備えるものとすることもできる。 【0055】これらの制御方法によれば、先にハイブリッド車両の発明において説明したと同様の作用により、ハイブリッド車両の後進させることができ、また、第1および第2の駆動軸に滑りが生じた場合にトルクを変更することによって、その滑りを低減することができる。 【0056】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。 (1)実施例の構成:はじめに、実施例の構成について図1を用いて説明する。図1は本実施例の動力出力装置を搭載した4輪駆動可能なハイブリッド車両の概略構成を示す説明図である。 【0057】このハイブリッド車両に搭載された動力出力装置は、原動機としてのエンジン150から出力された動力を、動力調整装置としてのクラッチモータ130およびディファレンシャルギヤ114を介して第1の駆動軸に相当する前車軸116に伝達し、前車軸116に結合された前輪116R,116Lから出力する前輪動力系統と、同じくエンジン150から出力された動力を電力の形を経て第2の駆動軸に相当する後車軸118に伝達し後輪118R,118Lから出力する後輪動力系統とから成っている。 【0058】まず、前輪動力系統の構成について説明する。前輪動力系統に備えられた動力源としてのエンジン150は通常のガソリンエンジンであり、クランクシャフト156を回転させる。エンジン150の運転はEFIECU170により制御されている。EFIECU170は内部にCPU、ROM、RAM等を有するワンチップ・マイクロコンピュータであり、CPUがROMに記録されたプログラムに従い、エンジン150の燃料噴射料その他の制御を実行する。これらの制御を可能とするために、EFIECU170にはエンジン150の運転状態を示す種々のセンサが接続されている。その一つとしてクランクシャフト156の回転数を検出する回転数センサ152がある。その他のセンサおよびスイッチなどの図示は省略した。 【0059】エンジン150のクランクシャフト156は、クラッチモータ130に結合されている。クラッチモータ130は、後述する通りインナロータ軸133に結合されたインナロータ132とアウタロータ軸135に結合されたアウタロータ134を備え、両者が相対的に回転可能な対ロータ電動機である。クラッチモータ130のインナロータ軸133は第1クラッチ111を介してクランクシャフト156に結合されている。アウタロータ軸135は第2クラッチ112およびディファレンシャルギヤ114を介して、前輪116R,116Lを備えた前車軸116に結合されている。 【0060】前輪動力系統において、第1クラッチ111および第2クラッチ112には、それぞれ前輪アシストモータ140のロータ142が結合されている。前輪アシストモータ140はステータ144はケースに固定されている。第1クラッチ111および第2クラッチ112は油圧により結合または切り離しを行うことができ、その作動は制御ユニット190により制御される。第1クラッチ111および第2クラッチ112の結合状態に応じて、本実施例のハイブリッド車両の前輪動力系統は、4つの構成を選択的に採ることができる。これらの構成について説明する。 【0061】図2は第1クラッチ111を解放状態とし、第2クラッチ112を結合状態とした場合の前輪動力系統の構成を示す説明図である(以下、「アンダードライブ結合」と呼ぶ)。図2に示すように、かかる結合状態では、前輪アシストモータ140のロータ142はアウタロータ軸135に結合された状態となる。この結果、エンジン150から出力された動力は、クラッチモータ130、前輪アシストモータ140をこの順に経て前車軸116に出力されることになる。 【0062】図3は第1クラッチ111を結合状態とし、第2クラッチ112を解放状態とした場合の前輪動力系統の構成を示す説明図である(以下、「オーバードライブ結合」と呼ぶ)。図3に示すように、かかる結合状態では、前輪アシストモータ140のロータ142はクランクシャフト156に結合された状態となる。この結果、エンジン150から出力された動力は、前輪アシストモータ140、クラッチモータ130をこの順に経て前車軸116に出力されることになる。 【0063】図4は第1クラッチ111および第2クラッチ112の双方を解放状態とした場合の前輪動力系統の構成を示す説明図である。図4に示すように、かかる結合状態では、前輪アシストモータ140のロータ142はアウタロータ軸135およびクランクシャフト156の双方から解放された状態となる。この結果、エンジン150から出力された動力は、クラッチモータ130を経て前車軸116に出力されることになる。 【0064】図5は第1クラッチ111および第2クラッチ112の双方を結合状態とした場合の前輪動力系統の構成を示す説明図である。図5に示すように、かかる結合状態では、前輪アシストモータ140のロータ142はアウタロータ軸135およびクランクシャフト156の双方に結合された状態となり、クラッチモータ130は機能しない状態となる。この結果、エンジン150から出力された動力は、前輪アシストモータ140を経て前車軸116に出力されることになる。 【0065】本実施例のハイブリッド車両では、前進時には以上の4つの結合状態を用い、後進時には上述した4つの結合状態のうち、アンダードライブ結合(図2)と、オーバードライブ結合(図3)とを用いるものとしている。もちろん、走行状態に応じて、その他の結合状態(図4または図5)を併用するものとしても構わないが、アンダードライブ結合(図2)またはオーバードライブ結合(図3)を用いる場合には、4輪駆動可能なハイブリッド車両としての特長を活かしつつ後進することができる点で望ましい。 【0066】次に後輪動力系統について説明する。後輪動力系統では図1に示す通り、後車軸118に後輪アシストモータ160のロータ162が結合されている。後輪アシストモータ160のステータ164は回転不能にケースに固定されている。後車軸118には後輪118R,118Lが結合されている。 【0067】次に、クラッチモータ130、前輪アシストモータ140,後輪アシストモータ160の構成について説明する。クラッチモータ130は、対ロータの同期電動発電機として構成され、外周面に複数個の永久磁石を有するインナロータ132と、回転磁界を形成する三相コイルが巻回されたアウタロータ134とを備える。アウタロータ134とインナロータ132とは、共に相対的に回転可能に軸支されている。クラッチモータ130はインナロータ132に備えられた永久磁石による磁界とアウタロータ134に備えられた三相コイルによって形成される磁界との相互作用により両者が相対的に回転駆動する電動機として動作し、場合によってはこれらの相互作用によりアウタロータ134に巻回された三相コイルの両端に起電力を生じさせる発電機としても動作する。 【0068】クラッチモータ130はインナロータ132とアウタロータ134の双方が回転可能であるため、インナロータ軸133およびアウタロータ軸135の一方から入力された動力を他方に伝達することができる。クラッチモータ130を電動機として力行運転すれば他方の軸にはトルクが付加された動力が伝達されることになるし、発電機として回生運転すれば動力の一部を電力の形で取り出しつつ残余の動力を伝達することができる。また、力行運転も回生運転も行わなければ、動力が伝達されない状態となる。この状態は機械的なクラッチを解放にした状態に相当する。 【0069】クラッチモータ130のアウタロータ134はスリップリングおよびインバータ191を介してバッテリ194に電気的に接続されている。インバータ191は内部にスイッチング素子であるトランジスタを複数備えており、制御ユニット190と電気的に接続されている。制御ユニット190がインバータ191のトランジスタのオン・オフの時間をPWM制御するとバッテリ194を電源とする三相交流がスリップリング138を介してクラッチモータ130のアウタロータ134に流れる。この三相交流によりアウタロータ134には回転磁界が形成されクラッチモータ130は回転する。 【0070】前輪アシストモータ140および後輪アシストモータ160も、クラッチモータ130と同様に同期電動発電機として構成され、外周面に複数個の永久磁石を有するロータ142、162と、回転磁界を形成する三相コイルが巻回されたステータ144、164とを備える。ステータ144,164がケースに固定されている点で、クラッチモータ130とは異なっている。前輪アシストモータ140はインバータ192を介してバッテリ194に接続されており、後輪アシストモータ160はインバータ193を介してバッテリ194に接続されている。これらのインバータ192,193もトランジスタインバータにより構成されており、制御ユニット190に電気的に接続されている。制御ユニット190の制御信号によりインバータ192、193のトランジスタをスイッチングすると、ステータ144、164に三相交流が流れて回転磁界を生じ、前輪アシストモータ140および後輪アシストモータ160は回転する。 【0071】なお、各回転軸の回転方向について便宜上、ハイブリッド車両が前進する際に通常回転する方向を順方向と呼ぶものとする。順方向とは逆の回転方向を逆転方向と呼ぶ。周知の通り、エンジン150のクランクシャフト156が回転可能な方向は順方向のみである。これに対し、各モータの回転軸および前車軸116,後車軸118はそれぞれ正方向、逆転方向の回転が可能である。 【0072】本実施例のハイブリッド車両の運転状態は制御ユニット190により制御されている。制御ユニット190もEFIECU170と同様、内部にCPU、ROM、RAM等を有するワンチップ・マイクロコンピュータであり、CPUがROMに記録されたプログラムに従い、後述する種々の制御処理を行うよう構成されている。これらの制御を可能とするために、制御ユニット190には、各種のセンサおよびスイッチが電気的に接続されている。制御ユニット190に接続されているセンサおよびスイッチとしては、アクセルペダルおよびブレーキペダルの操作量を検出するためのアクセルペダルポジションセンサ165、ブレーキペダルポジションセンサ166、シフトレバーの位置を検出するためのシフトポジションセンサ167、前車軸116の回転数を検出する回転数センサ117および後車軸118の回転数を検出する回転数センサ119等が挙げられる。制御ユニット190は、EFIECU170とも電気的に接続されており、EFIECU170との間で種々の情報を、通信によってやりとりしている。制御ユニット190からエンジン150の制御に必要な情報をEFIECU170に出力することにより、エンジン150を間接的に制御することができる。逆にエンジン150の回転数などの情報をEFIECU170から入力することもできる。この制御ユニット190は、本発明における接続制御手段、駆動制御手段、動力設定手段、動力補正手段等として機能する。 【0073】(2)運転制御処理:次に、本実施例のハイブリッド車両の運転制御処理について説明する。前述した構成を有するハイブリッド車両は種々の運転モードにより走行することができる。本実施例のハイブリッド車両の運転が開始されると、制御ユニット190内のCPU(以下、単に「CPU」という)は車両の走行状態に応じて運転モードを判定し、それぞれのモードについてエンジン150、クラッチモータ130、前輪アシストモータ140,後輪アシストモータ160および第1、第2のクラッチ111,112等の制御を実行する。これらの制御は種々の制御処理ルーチンを周期的に実行することにより行われる。以下では、それぞれの制御処理ルーチンの内容について説明する。 【0074】運転モードは、まずシフトポジションにより判定される。シフトポジションセンサ167により、シフトポジションが前進位置にあると検出された場合には、CPUは前進モードと判定する。そして、アクセルペダルポジションセンサ165により検出されるアクセルペダルポジションや、ブレーキポジションセンサ166により検出されるブレーキポジション等に基づいて、前進時に採りうる種々の運転モードを判定する。そして、第1クラッチ111,第2クラッチ112を制御して、前輪アシストモータ140の結合状態を変更しつつ要求された動力を出力する。本実施例のハイブリッド車両では、第1クラッチ111,第2クラッチ112の結合状態により図2〜図5に示した4つの構成を採ることができる。従って、ハイブリッド車両の走行状態に応じてこれらの4つの構成から最も動力の伝達効率の高い構成を選択して用いることができる。この結果、本実施例のハイブリッド車両は前進時において運転効率を向上することができる。 【0075】シフトポジションセンサ167により、シフトポジションが後進位置にあると検出された場合には、CPUは後進モードと判定する。そして、以下に示す後進時の運転制御処理を実行する。後進時の運転制御処理としては、エンジン150を運転せずに後進する「EV走行モード」と、エンジン150を運転しつつ後進する「通常後進モード」とがある。両者は、ハイブリッド車両が後進する際の車速、トルクおよび後進の継続時間等によって使い分けることができる。本実施例では、バッテリ194の残容量が予め定めた所定の値以上である場合には「EV走行モード」による後進を行い、その他の場合には「通常後進モード」による後進を行うものとしている。以下、それぞれの場合に分けて制御内容を説明する。 【0076】(3)EV走行制御処理:図6にEV走行モードにおける制御処理のフローチャートを示す。このフローチャートは制御ユニット190内のCPUにより周期的に実行される処理である。この処理が開始されると、CPUは要求動力Pd*を設定する(ステップS202)。要求動力Pd*は、アクセルペダルの踏み込み量および車速に基づいて、車両を走行するために必要な動力として設定される。要求動力Pd*は、要求トルクTd*および回転数Nd*の組み合わせにより設定される。後進時は、要求トルクTd*および回転数Nd*は共に負の値となる。要求動力は、両者の積で表されるから正の値となる。なお、アクセルペダルの踏み込み量は、アクセルペダルポジションセンサ165により検出される。また、車速は前車軸116の回転数センサ117または後車軸118の回転数センサ119により検出される回転数に基づいて算出することができる。 【0077】こうして設定された要求動力Pd*を前車軸116から出力すべき要求トルクTdf*と、後車軸118から出力すべき要求トルクTdr*とに分けて設定する(ステップS204)。要求トルクの配分は、予め定めた一定の割合で行われる。本実施例では、前車軸116から出力すべき要求トルクTdf*と後車軸118から出力すべき要求トルクTdr*とを等しく設定している。もちろん、両車軸にかかる重量の配分を考慮してそれぞれのトルクを設定するものとすることもできるし、前車軸116または後車軸118のいずれか一方の車軸からのみ動力を出力する場合が存在するように設定しても構わない。また、トルク配分は予め定めた一定値ではなく、車両の走行状態に応じて変化させるものとしてもよい。 【0078】次に、CPUは前車軸116の回転数Nfおよび後車軸118の回転数Nrを検出する(ステップS206)。それぞれの回転数は、回転数センサ117,119により検出される。こうして検出された両車軸の回転数の差の絶対値(|Nf−Nr|)が所定の値αよりも大きいか否かを判定する(ステップS208)。所定の値αよりも大きい場合、即ち両車軸の回転数に差がある場合には、いずれかの前輪116R、116Lまたは後輪118R、118Lのいずれかがスリップしていると判断されるため、要求トルクの補正処理を実行する(ステップS210)。両車軸の回転数に差がない場合には、この処理をスキップする。所定の値αは、このようにスリップが生じているか否かを判断するための基準となる値であり、予め実験等により定められた値である。この値は全車速において一定の値としてもよいし、車速に応じて変化するものとしても構わない。 【0079】ここで、要求トルク補正処理(ステップS210)の内容について説明する。図7は要求トルク補正処理ルーチンのフローチャートである。この処理では、最初に前車軸116の回転数Nfと後車軸118の回転数Nrとの大小関係をそれぞれの絶対値で判定する(ステップS212)。これは、前車軸116と後車軸118のいずれの車軸の側がスリップしているか判断するためである。 【0080】前車軸116の回転数Nfの絶対値が大きい場合には、前車軸116の要求トルクTdf*を補正する。具体的には、トルク補正量△Tだけ前車軸116の要求トルクTdf*の絶対値を減少させる(ステップS214)。つまり、「−(|Tdf*|−△T)」を補正後の要求トルクTdf*とするのである。負号をつけたのは、後進時は要求トルクTdf*は負の値を採るからである。トルク補正量△Tは前車軸116の回転数Nfと後車軸118の回転数Nrとの差の絶対値に応じたマップとして予め設定されている。このマップの例を図8に示した。両回転軸の差の絶対値が大きくなるほど、トルクの補正量△Tが大きくなるマップとなっている(図8中の曲線CT参照)。このマップを制御ユニット190内のROMに予め記憶し、そのマップを読み出すことにより、図7のステップS214における補正を行っている。 【0081】なお、図8では横軸に両車軸の回転数の絶対値を採ることにより、前車軸116および後車軸118のいずれの軸側がスリップしている場合でも同じトルク補正量△Tを用いるものとしている。これに対し、前車軸116側がスリップしている場合と、後車軸118側がスリップしている場合とで、用いるマップを異なるものとすることもできる。両車軸にかかる荷重が異なる場合など、それぞれに対応したマップを用意することにより、トルクの補正をより適切に行うことができる場合もある。 【0082】上述したマップにより前車軸116の要求トルクTdf*を変更した後、CPUは後車軸118の要求トルクTdr*の設定を行う(ステップS216)。要求トルクTdr*は、車両全体の要求トルクTd*から補正後の前車軸116の要求トルクTdf*を引くことによって設定する。後車軸118の要求トルクTdr*の絶対値をトルク補正量△Tだけ増すものとしても同じである。このように設定することにより、車両全体としての出力トルクは維持したまま、前車軸116と後車軸118のトルク配分を変更することができる。 【0083】一方、後車軸118の回転数Nrの絶対値が大きい場合には、後車軸118の要求トルクTdr*を補正する。具体的には、トルク補正量△Tだけ後車軸118の要求トルクTdr*の絶対値を減少させる(ステップS218)。つまり、「−(|Tdr*|−△T)」を補正後の要求トルクTdr*とするのである。トルク補正量△Tは先に説明したマップ(図8)により設定される。 【0084】後車軸118の要求トルクTdr*を変更した後、CPUは前車軸116の要求トルクTdf*の設定を行う(ステップS220)。要求トルクTdf*は、車両全体の要求トルクTd*から補正後の後車軸118の要求トルクTdr*を引くことによって設定する。前車軸116の要求トルクTdf*の絶対値をトルク補正量△Tだけ増すものとしても同じである。このように設定することにより、車両全体としての出力トルクは維持したまま、前車軸116と後車軸118のトルク配分を変更することができる。 【0085】なお、上述した要求トルクの補正処理では、トルクの補正量△Tをマップにより設定するものとしているが、補正量△Tを予め定めた一定量とすることもできる。この場合、要求トルク補正処理を1回実行しただけでスリップが解消されるとは限らないが、EV走行制御処理ルーチン(図6)のステップS208およびS210を周期的に実行するにつれ、段階的に要求トルクが減少し、徐々にスリップが解消する。こうすれば、スリップが解消するまでに若干の時間を要するものの、処理自体を簡単に実現することができる。 【0086】また、上述した要求トルク補正処理では、前車軸116および後車軸118から出力されるトルクの和が要求トルクTd*に一致するように双方の要求トルクTdf*、Tdr*を変更するものとしている。これに対し、スリップしていると判断される側の要求トルクを減少させる処理のみを行うものとすることもできる。かかる場合には、車両全体として出力するトルクは要求トルクTd*に満たない可能性があるが、少なくとも車輪のスリップを抑制することは可能である。 【0087】以上の処理により要求トルクの補正を行った後、CPUはクラッチ111,112の結合状態を検出する(ステップS230)。クラッチ111,112の結合は制御ユニット190のCPU自体が制御しているため、ここではクラッチ111,112の結合状態を示すフラグを確認することによって結合状態を判定している。クラッチ111,112の結合状態を検出するのは、この後の処理、つまり、クラッチモータ130、前輪アシストモータ140および後輪アシストモータ160の目標トルク、回転数を設定する処理(ステップS240)がクラッチ111,112の結合状態に応じて変わるからである。 【0088】なお、本実施例では、後進時にはアンダードライブ結合かオーバードライブ結合のいずれかの結合状態を採るものとしている。従って、図6のステップS230において、クラッチの結合状態を検出した結果、第1クラッチ111,第2クラチ112の双方が結合状態、又は双方が解放状態にある場合には、いずれか一方のクラッチを結合する制御を行う。 【0089】モータの目標トルク、回転数を設定する処理(ステップS240)の内容について、クラッチ111,112の結合状態に応じて場合を分けて説明する。図9は、クラッチ111,112がアンダードライブ結合(図2に示した状態)である場合のモータ目標トルク、回転数設定処理のフローチャートである。 【0090】アンダードライブ結合の場合は、前輪アシストモータ140が前車軸116に結合した状態となっているから、前輪アシストモータ140を逆転方向の回転方向に力行することにより要求動力を前車軸116から出力する事ができる。従って、モータ目標トルク、回転数の設定処理では、CPUはクラッチモータ130の要求トルクTc*を値0に設定する(ステップS242)。また、前輪アシストモータ140の目標回転数N1*として前車軸116の要求回転数Nd*を設定する。目標回転数N1*は負の値となる。また、目標トルクT1*として前車軸116の要求トルクTdf*を設定する(ステップS244)。目標トルクT1*も負の値である。従って、前輪アシストモータ140は逆転方向に力行される。 【0091】後輪アシストモータ160については、目標回転数N2*として駆動軸の回転数Nd*を設定し、目標トルクT2*として後車軸118の要求トルクTdr*を設定する(ステップS246)。目標トルクN2*および目標トルクT2*も共に負の値である。従って、後輪アシストモータ160も逆転方向に力行される。 【0092】オーバードライブ結合の場合におけるモータ目標トルク、回転数設定処理のフローチャートを図10に示す。オーバードライブ結合の場合には、クラッチモータ130を逆転方向の回転方向に力行することによって要求動力を前車軸116から出力することができる。従って、モータ目標トルク、回転数の設定処理では、CPUはクラッチモータ130の目標回転数Nc*として前車軸116の要求回転数Nd*を設定し、目標トルクTc*として前車軸116の要求トルクTdf*を設定する(ステップS252)。これらの値は共に負の値である。 【0093】クラッチモータ130からトルクを出力すると、その反作用によりインナロータ133およびクランクシャフト156が回転する。従って、前輪アシストモータ140でこの回転を抑制するための保持トルクを出力する必要がある。このために、CPUは前輪アシストモータ140の目標回転数N1*として値0を設定し、目標トルクT1*としてクラッチモータ130の目標トルクTc*を設定する(ステップS254)。こうすることにより、前輪アシストモータ140でクラッチモータ130の反作用を打ち消すことができる。もちろん、前輪アシストモータ140の目標トルクT1*の絶対値を|Tc*|以上の値とし、前輪アシストモータ140をいわゆるロックアップするものとしてもよい。後輪アシストモータ160については、目標回転数N2*として駆動軸の回転数Nd*を設定し、目標トルクT2*として後車軸118の要求トルクTdr*を設定する(ステップS256)。これらの値も負の値である。 【0094】こうして各モータの目標トルクおよび回転数が設定されると、CPUはそれぞれのモータの運転を制御する(ステップS260)。本実施例で用いられているクラッチモータ130、前輪アシストモータ140、後輪アシストモータ160はいずれも同期電動機として構成されているため、その制御処理の内容は共通している。本実施例では、トルクの目標値に応じてd軸、q軸の2成分で各モータに流すべき電流を設定し、既に流れている電流との差分に基づく比例積分制御によってd軸方向、q軸方向に印加すべき電圧値を設定する。こうして設定された電圧をいわゆる2相/3相変換してコイルの各相に印加する電圧値に置換し、PWM制御によって、電圧を印加している。同期電動機を要求された回転数およびトルクで運転するための制御処理としては周知の種々の制御方法を適用可能であるため、ここではこれ以上の詳細な説明は省略する。各モータは目標回転数および目標トルクが共に負の値に設定されているから、逆転方向に力行されることになる。力行のための電力はバッテリ194から供給される。 【0095】なお、EV走行制御処理ルーチンは、エンジン150から出力される動力を用いることなく車両を走行するため、エンジン150は運転が停止されている。もちろん、エンジン150をアイドル状態で運転するものとしても構わない。 【0096】以上で説明したEV走行制御処理ルーチンでは、第1クラッチ111および第2クラッチ112の結合状態の切り替えは行っていない。EV走行制御処理ルーチンにおいて、以下に示す通り、両クラッチ111,112の切り替え処理を含めるものとすることもできる。本実施例のハイブリッド車両においては、クラッチモータ130と前輪アシストモータ140の定格が異なっている。クラッチモータ130よりも前輪アシストモータ140の方が定格が大きいため、大きなトルクを出力することができる。 【0097】車両がオーバードライブ結合(図3の状態)である場合には、図3に示す構成から明らかな通り、クラッチモータ130の出力トルク以上のトルクを前車軸116に出力することができない。例えば、前輪アシストモータ140によりトルクを出力したとしても、作用・反作用の原理に従い、クラッチモータ130で伝達可能なトルク以上のトルクが前車軸116に伝達されることはあり得ないのである。一方、アンダードライブ結合(図2の状態)とすれば、前輪アシストモータ140を力行することにより、クラッチモータ130の定格以上のトルクを前車軸116に出力することができる。かかる点に鑑み、EV走行制御処理ルーチンにおいて、前車軸116の要求トルクTdf*の絶対値がクラッチモータ130の最大トルクよりも小さい場合には、オーバードライブ結合(図3の状態)とし、絶対値でそれ以上のトルクが要求される場合には、アンダードライブ結合(図2の状態)とするクラッチの切り替え制御処理を伴うものとすることもできる。その他、クラッチモータ130や前輪アシストモータ140の運転効率を考慮してオーバードライブ結合とアンダードライブ結合とを切り替える等、種々の条件に応じたクラッチ111,112の切り替え処理を伴うものとすることができる。 【0098】(5)通常走行制御処理:次に、通常走行制御処理の内容について説明する。図11は、通常走行制御処理の内容を示すフローチャートである。この処理が開始されるとCPUは要求動力Pd*を設定する(ステップS402)。要求動力Pd*の設定内容は、EV走行制御処理(図6)の場合と同様である。また、前車軸116の要求トルクTdf*および後車軸118の要求トルクTdr*を設定する(ステップS404)。これらのトルクTdf*,Tdr*は共に負の値である。 【0099】次に、こうして設定された要求動力Pd*に基づいてエンジン150の運転ポイントを設定する(ステップS406)。エンジン150の運転ポイントは、予め定めたマップに従って、基本的にはエンジン150の運転効率を優先して設定する。 【0100】図12はかかるマップの例である。図12はエンジンの回転数Neを横軸に、トルクTeを縦軸にとりエンジン150の運転状態を示している。図12中の曲線Bはエンジン150の運転が可能な限界範囲を示している。曲線α1からα6まではエンジン150の運転効率が一定となる運転ポイントを示している。α1からα6の順に運転効率は低くなっていく。また、曲線C1からC3はそれぞれエンジン150から出力される動力(回転数×トルク)が一定となるラインを示している。 【0101】エンジン150は図12に示す通り、回転数およびトルクに応じて、運転効率が大きく相違する。図12中の曲線C1〜C3に相当する動力を出力する場合のエンジン150の回転数Neと効率αの関係を図13に示す。エンジン150から曲線C1に相当する動力を出力する場合には、図12および図13中のA1点に相当する運転ポイント(回転数およびトルク)でエンジン150を運転するときが最も運転効率が高くなる。同様に曲線C2およびC3に相当する動力を出力する場合には図12および図13中のA2およびA3点で運転する場合が最も効率が高くなる。出力すべき動力ごとに最も運転効率が高くなる運転ポイントを選択すると、図12中の曲線Aが得られる。これを動作曲線と呼ぶ。 【0102】図11のステップS406における運転ポイントの設定では、予め実験的に求められた動作曲線を制御ユニット190内のROMにマップとして記憶しておき、かかるマップから要求動力Pe*に応じた運転ポイントを読み込んで、エンジン150の回転数Ne*およびトルクTe*を設定するのである。こうすることにより、最も運転効率の高い運転ポイントを設定することができる。 【0103】なお、エンジン150の要求動力Pe*はステップS402で設定された要求動力Pd*と等しい値に設定することもできるし、その他以下の要因を考慮した値に設定することもできる。例えば、ステップS402で設定された要求動力Pd*に加えて、バッテリ194の充放電に要する動力を考慮することもできる。つまり、バッテリ194の残容量が少ない場合には、エンジン150から要求動力Pd*以上の動力を出力し、余剰の動力を用いてバッテリ194の充電を行うのである。逆にバッテリ194が充電過多である場合には、エンジン150から要求動力Pd*よりも小さい動力を出力し、バッテリ194からの電力を用いて不足分の動力を補うものとするのである。バッテリ194の充放電に要する動力の他に、エアコンなどの補機を運転するための動力を考慮することもできる。 【0104】次に、CPUは前車軸116の回転数Nfと後車軸118の回転数Nrを検出し(ステップS430)、両者の差の絶対値と所定の値αを比較する(ステップS432)。回転数の差の絶対値が所定の値αよりも大きい場合には、要求トルク補正処理を実行する(ステップS434)。この処理内容は、EV走行制御処理において説明した内容と同じである(図7参照)。この後、CPUはクラッチ111,112の結合状態を検出する(ステップS449)。クラッチ111,112の双方が結合、または双方が解放状態にあるときは、いずれか一方のクラッチを結合する。 【0105】設定された前車軸116、後車軸118の要求動力およびクラッチ111,112の結合状態に基づいて、CPUはモータ目標トルク、回転数設定処理を実行する(ステップS450)。この処理内容については、クラッチ111,112の結合状態に応じて場合を分けて後述する。こうして各モータの目標トルクおよび回転数が設定されると、CPUは各モータの運転制御およびエンジン150の運転制御処理を実行する(ステップS490)。モータの運転制御処理については既に説明した通りである。エンジン150の運転は現実にはEFIECU170が実施する処理である。従って、制御ユニット190のCPUはEFIECU170に対してエンジン150の運転ポイントの情報を出力することで、間接的にエンジン150の運転を制御する。 【0106】以下、各モータの目標トルクおよび回転数設定処理について、クラッチ111,112の結合状態に応じて場合を分けて説明する。図14はアンダードライブ結合(図2の状態)におけるモータ目標トルク、回転数設定処理のフローチャートである。図2の構成から明らかな通り、クラッチモータ130のアウタロータ134は前車軸116の回転数と同じ回転数Nd*で逆転方向に回転することになる。一方、クラッチモータ130のインナロータ132はクランクシャフト156の回転数と同じ回転数Ne*で順方向に回転する。従って、CPUはクラッチモータ130の目標回転数Nd*として両者の差分である「Nd*−Ne*」を設定する。この値は負の値となる。また、図2の構成および作用・反作用の原理から明らかな通り、クラッチモータ130のトルクはエンジン150に与えられる負荷トルクに等しい。従って、CPUはクラッチモータ130の目標トルクTc*としてエンジン150の目標トルクTe*を設定する(ステップS452)。この値は正の値である。クラッチモータ130は目標回転数が負の値であり、目標トルクが正の値として設定される結果、回生状態で運転されることになる。 【0107】アンダードライブ結合では、前輪アシストモータ140が前車軸116に結合された状態である。従って、前輪アシストモータ140の目標回転数N1*としてNd*を設定する。また、目標トルクT1*は、前車軸116から要求トルクTdf*が出力可能な値が設定される。このトルクは負の値である。前車軸116にはクラッチモータ130の目標トルクTc*の反作用としてのトルクが出力される。従って、前輪アシストモータ140の目標トルクとしては、この反作用を相殺した上で要求トルクTdf*を出力することができるように「Tdf*−Tc*」が設定される(ステップS454)。先に説明した通り、クラッチモータ130の目標トルクTc*は正の値である。従って、前輪アシストモータ140の目標トルクT1*は、前車軸116の要求トルクTdf*よりも絶対値の大きいトルクが設定されることになる。 【0108】後輪アシストモータ160の目標回転数N2*には要求動力として設定された回転数Nd*が設定され、目標トルクT2*には後車軸118の要求トルクTdr*が設定される(ステップS456)。これらは共に負の値である。従って、後輪アシストモータ160は逆転方向に力行される。 【0109】以上の処理により目標トルクおよび回転数を設定した場合の動力の流れを説明する。先に説明した通り、クラッチモータ130は回生状態で運転される。回生される電力は、この滑り量|Nd*−Ne*|とトルクTe*との積に等しい。 【0110】前輪アシストモータ140および後輪アシストモータ160はそれぞれ電力の供給を受けて逆転方向に力行する。前輪アシストモータ140に供給される電力は、トルクT1*と回転数Nd*との積に等しい。また、後輪アシストモータ160に供給される電力は、トルクT2*と回転数Nd*との積に等しい。エンジン150から要求動力Pd*に等しい動力が出力されている場合、100%の効率で動力が伝達されるものとすれば、クラッチモータ130で回生される電力と、前輪アシストモータ140および後輪アシストモータ160に供給される電力とは等しくなる。この結果、図14の処理で設定された目標トルクおよび回転数でクラッチモータ130、前輪アシストモータ140、後輪アシストモータ160の運転を行えば、エンジン150から出力された動力状態を後進可能な回転数およびトルクからなる動力状態に変換して前車軸116および後車軸118から出力することができる。 【0111】図15はオーバードライブ結合(図3の状態)におけるモータ目標トルク、回転数設定処理のフローチャートである。図3の構成から明らかな通り、クラッチモータ130のアウタロータ134は前車軸116の回転数と同じ回転数Nd*で逆転方向に回転する。一方、クラッチモータ130のインナロータ132はクランクシャフト156の回転数と同じ回転数Ne*で順方向に回転する。従って、CPUはクラッチモータ130の目標回転数Nd*として両者の差分である「Nd*−Ne*」を設定する。この値は負の値である。また、図3の構成から明らかな通り、クラッチモータ130のトルクは前車軸116の要求トルクTdf*に等しい。従って、CPUはクラッチモータ130の目標トルクTc*として前車軸116の要求トルクTdf*を設定する(ステップS458)。このトルクも負の値である。従って、クラッチモータ130は逆転方向に力行される。 【0112】オーバードライブ結合では、前輪アシストモータ140がクランクシャフト156に結合された状態である。従って、CPUは前輪アシストモータ140の目標回転数N1*としてエンジン150の回転数Ne*を設定する。この回転数は正の値である。また、目標トルクT1*は、エンジン150に負荷Te*を与えるように設定される。このときクランクシャフト156には、クラッチモータ130の目標トルクTc*の反作用としてのトルクが出力される。従って、前輪アシストモータ140の目標トルクとしては、この反作用を相殺した上でエンジン150に負荷トルクTe*をかけることができるように「Tdf*−Te*」が設定される(ステップS460)。このトルクは負の値である。前輪アシストモータ140は順方向に回転しつつ、負のトルクを出力するから、回生運転される。 【0113】後輪アシストモータ160の目標回転数N2*には要求動力として設定された回転数Nd*が設定され、目標トルクT2*には後車軸118の要求トルクTdr*が設定される(ステップS462)。目標回転数N2*、目標トルクT2*はともに負の値である。従って、後輪アシストモータ160も逆転方向に力行される。 【0114】以上の処理により目標トルクおよび回転数を設定した場合の動力の流れを説明する。先に説明した通り、クラッチモータ130は力行状態で運転される。力行に当たりクラッチモータ130に供給される電力は、アウタロータ134とインナロータ132の滑り量|Nd*−Ne*|とトルク|Tdf*|との積に等しい。また、前輪アシストモータ140は回生状態で運転される。前輪アシストモータ140で回生される電力は、目標トルク「Tdf*−Te*」と回転数Ne*との積に等しい。後輪アシストモータ160は逆転方向に力行される。後輪アシストモータ160に供給される電力は、トルク|T2*|と回転数|Nd*|との積に等しい。エンジン150から要求動力Pd*に等しい動力が出力されている場合、100%の効率で動力が伝達されるものとすれば、前輪アシストモータ140で回生される電力と、クラッチモータ130および後輪アシストモータ160に供給される電力とは等しくなる。この結果、図15の処理で設定された目標トルクおよび回転数でクラッチモータ130、前輪アシストモータ140、後輪アシストモータ160の運転を行えば、エンジン150から出力された動力状態を後進するための回転数およびトルクからなる動力状態に変換して前車軸116および後車軸118から出力することができる。 【0115】以上で説明した本実施例のハイブリッド車両によれば、EV走行、通常走行の各運転モードにおいて、前車軸116および後車軸118から、それぞれ要求動力を出力しつつ4輪駆動で後進することができる。この際、前輪アシストモータ140を前車軸116側又はクランクシャフト156側のいずれかに結合させることにより、前車軸116から十分な後進トルクを出力することができる。従って、本実施例のハイブリッド車両では、4輪駆動可能な車両としての特性を活かしつつ、後進することができる。 【0116】また、本実施例のハイブリッド車両では、前輪116R、116Lまたは後輪118R,118Lのいずれかがスリップした場合に、前後輪のトルク配分を適切に変更することができる。この結果、常に要求されたトルクを路面に伝達することができるようになる。従って、本実施例のハイブリッド車両によれば、例えば路面の摩擦係数が低い場合等において、4輪駆動の特性を活かしつつ、安定して走行することが可能となる。また、スリップが生じないようにトルク配分を変更することは、車両から出力された動力を路面に伝達する際の損失を抑制することができることを意味する。従って、本実施例のハイブリッド車両によれば、4輪駆動時の運転効率を向上することができる。 【0117】(7)第2実施例の構成:次に、本発明の第2実施例としてのハイブリッド車両について説明する。図16は、第2実施例としてのハイブリッド車両の概略構成を示す説明図である。第2実施例のハイブリッド車両では、前輪動力系統においてクラッチモータ130に代えて、プラネタリギヤ200と電動発電機210が用いられている。その他の構成は、第1実施例のハイブリッド車両(図1参照)と同じである。 【0118】プラネタリギヤ200は、中心で回転するサンギヤ201、サンギヤ201の外周を自転しながら公転するプラネタリピニオンギヤを備えるプラネタリキャリア203と、更にその外周で回転するリングギヤ202とから構成されている。サンギヤ201、プラネタリキャリア203,およびリングギヤ202はそれぞれ別々の回転軸を有している。サンギヤ201の回転軸であるサンギヤ軸204は中空になっており、電動発電機210のロータ212に結合されている。プラネタリキャリア203の回転軸であるプラネタリキャリア軸206はエンジン150のクランクシャフト156と結合されている。リングギヤ202の回転軸であるリングギヤ軸205はディファレンシャルギヤ114を介して前車軸116に結合されている。 【0119】プラネタリギヤ200は、サンギヤ軸204,プラネタリキャリア軸206およびリングギヤ軸205の3軸の回転数およびトルクに以下の関係が成立することが機構学上よく知られている。即ち、上記3つの回転軸のうち2つの回転軸の動力状態が決定されると、以下の関係式に基づいて残余の一つの回転軸の動力状態が決定される。 Ns=(1+ρ)/ρ×Nc−Nr/ρ; Nc=ρ/(1+ρ)×Ns+Nr/(1+ρ); Nr=(1+ρ)Nc−ρNs; Ts=Tc×ρ/(1+ρ)=ρTr; Tr=Tc/(1+ρ); ρ=サンギヤ121の歯数/リングギヤ122の歯数 ・・・(1); 【0120】ここで、Nsはサンギヤ軸204の回転数;Tsはサンギヤ軸204のトルク;Ncはプラネタリキャリア軸206の回転数;Tcはプラネタリキャリア軸206のトルク;Nrはリングギヤ軸205の回転数;Trはリングギヤ軸205のトルク;である。なお、トルクは各回転軸の回転と同方向のトルクを正とする。従って、各回転軸が逆転方向に回転している場合には、逆転方向に作用するトルクが正のトルクとなる。 【0121】電動発電機210は、前輪アシストモータ140および後輪アシストモータ160と同様の構成をしている。つまり、電動発電機210はステータ214にコイルが巻回され、ロータ212に永久磁石が貼付された三相同期モータとして構成されている。ステータ214はケースに固定されている。ステータ214に巻回されたコイルに三相交流を流すと回転磁界が生じ、ロータ212に貼付された永久磁石との相互作用によってロータ212が回転する。電動発電機210は、ロータ212が外力によって回転されると、その動力を電力として回生する発電機としての機能も奏する。なお、電動発電機210のステータ214に巻回されたコイルは、インバータ191と電気的に接続されている。制御ユニット190がインバータ191のトラジスタをオン・オフすることにより電動発電機210の運転を制御することができる。 【0122】第1実施例におけるクラッチモータ130は、インナロータ132とアウタロータ134の間の相対的な滑りによって、インナロータ132に入力された動力の一部を電力として回生しつつ、残余の動力をアウタロータ134に伝達する機能を奏することができた。また、クラッチモータ130を力行することにより、インナロータ132から入力された動力を増大してアウタロータ134に伝達することもできた。このように第1実施例では、クラッチモータ130は一方の軸から入力された動力を電力のやりとりを通じて増減し、他方の軸に伝達する動力調整装置としての機能を奏するものであった。 【0123】第2実施例では、プラネタリギヤ200と電動発電機210の組み合わせにより、第1実施例におけるクラッチモータ130と同じ機能を奏することができる。クラッチモータ130のインナロータ軸133に相当するのがプラネタリキャリア軸206であり、アウタロータ軸135に相当するのがリングギヤ軸205である。第2実施例では、これらの組み合わせにより動力調整装置としての機能を奏する。 【0124】エンジン150からプラネタリキャリア軸206に動力が入力されると、上式(1)に従い、リングギヤ202およひサンギヤ201が回転する。リングギヤ202およびサンギヤ201のいずれか一方の回転を止めることも可能である。リングギヤ202が回転することにより、エンジン150から出力された動力の一部を前車軸116に機械的な形で伝達することができる。また、サンギヤ201が回転することにより、エンジン150から出力された動力の一部を電動発電機210により電力として回生することができる。一方、電動発電機210を力行すれば、電動発電機210から出力されたトルクは、サンギヤ201、プラネタリキャリア203およびリングギヤ202を介して前車軸116に機械的に伝達することができる。従って、電動発電機210を力行することにより、エンジン150から出力されたトルクを増大して前車軸116に出力することも可能である。このように、第2実施例では、プラネタリギヤ200と電動発電機210の組み合わせにより、クラッチモータ130と同様の機能を奏することができるのである。 【0125】第2実施例においても、第1クラッチ111および第2クラッチ112の結合状態に応じて、前輪動力系統は種々の構成を採ることができる。以下、前輪動力系統においてエンジン150から出力された動力が前車軸116に伝達される流れに沿って、エンジン150に近い側を上流側、前車軸116に近い側を下流側と呼ぶものとする。 【0126】第1クラッチ111を解放して、第2クラッチ112を結合した場合の構成を図17に示す。この構成は、前輪アシストモータ140がプラネタリギヤ200よりも下流側に位置している。この結合状態をアンダードライブ結合と呼ぶ。第1実施例における図2に相当する構成である。 【0127】第1クラッチ111を結合して、第2クラッチ112を解放した場合の構成を図18に示す。この構成は、前輪アシストモータ140がプラネタリギヤ200よりも上流側に位置している。この結合状態をオーバードライブ結合と呼ぶ。第1実施例における図3に相当する構成である。 【0128】第1クラッチ111,第2クラッチ112の双方を解放した場合の構成を図19に示す。この構成では、前輪アシストモータ140は動力の伝達に何らの影響も与えない。第1実施例における図4に相当する構成である。 【0129】第1クラッチ111,第2クラッチ112の双方を結合した場合の構成を図20(a)に示す。この構成では、前輪アシストモータ140によりエンジン150のクランクシャフト156とリングギヤ軸205とが直結された状態となる。このときは、プラネタリギヤ200に備えられた3つのギヤは全て同じ回転数で一体的に回転する。この結果、電動発電機210は機能しなくなる。従って、両クラッチ111,112を結合した場合の構成は図20(b)に示す構成と同義となる。これは、第1実施例における図5に相当する構成である。 【0130】第1実施例と同様、本実施例のハイブリッド車両は前進時には上述した4つの構成から動力の伝達効率の高い構成を選択しつつ走行することができるから、高い効率で車両を運転することができる。後進時にはこれらの4つの結合状態の内、アンダードライブ結合(図17)とオーバードライブ結合(図18)が用いられる。 【0131】(8)第2実施例における運転制御処理:第2実施例における運転制御処理について説明する。第2実施例のハイブリッド車両も第1実施例のハイブリッド車両と同様の運転モードにより走行することができる。制御ユニット190内のCPU(以下、単に「CPU」という)は第1実施例の場合と同様、種々の制御処理ルーチンを周期的に実行することによりハイブリッド車両の制御を行う。 【0132】運転モードは、まずシフトポジションにより判定される。シフトポジションセンサ167により、シフトポジションが後進位置にあると検出された場合には、CPUは後進モードと判定する。そして、以下に示す後進時の運転制御処理を実行する。後進時の運転制御処理としては、エンジン150を運転せずに後進する「EV走行モード」と、エンジン150を運転しつつ後進する「通常後進モード」とがある。両者は、ハイブリッド車両が後進する際の車速、トルクおよび後進の継続時間等によって使い分けることができる。本実施例では、バッテリ194の残容量が予め定めた所定の値以上である場合には「EV走行モード」による後進を行い、その他の場合には「通常後進モード」による後進を行うものとしている。以下、それぞれの場合に分けて制御内容を説明する。 【0133】最初にEV走行モードについて説明する。EV走行モードにおける制御処理の内容は、第1実施例における処理内容(図6参照)と同一である。但し、モータ目標トルク、回転数設定処理(図6のステップS240)の処理内容が第1実施例とは相違する。 【0134】第2実施例におけるモータ目標トルク、回転数設定処理について、アンダードライブ結合時の処理内容を図21のフローチャートに示した。この処理では、CPUは前輪アシストモータ140、電動発電機、および後輪アシストモータ160の目標回転数およびトルクをそれぞれ次の通り設定する。 【0135】アンダードライブ結合では、前輪アシストモータ140により前車軸116から要求トルクTdf*および回転数Nd*からなる動力を出力する必要がある。従って、前輪アシストモータ140の目標回転数N1*としては、回転数Nd*が設定される。また、目標トルクT1*としては、前車軸116の要求トルクTdf*が設定される(ステップS600)。目標回転数N1*および目標トルクT1*はともに負の値である。 【0136】EV走行時にはエンジン150は運転を停止している。エンジン150のクランクシャフト156にトルクが伝達されないようにするときは、上式(1)から明らかな通り、電動発電機210のトルクも値0となる。従って、CPUは電動発電機210の目標トルクTg*として値0を代入する(ステップS602)。トルクが値0であれば、目標回転数は制御上何の意味もない値となるから、CPUは電動発電機210の目標回転数Ng*をデフォルト値に設定する。この結果、電動発電機210は上式(1)において、リングギヤ軸205の回転数Nrに前車軸116の回転数Nd*を代入し、プラネタリキャリア軸206の回転数Ngに値0を代入して求められる回転数「−Nd*/ρ」で回転する。後輪アシストモータ160の目標回転数N2*および目標トルクT2*の設定は第1実施例の場合(図9のステップS246)と同じである。つまり、目標回転数N2*として後車軸118の回転数Nd*が設定され、目標トルクT2*として後車軸118の要求トルクTdr*が設定される(ステップS604)。これらの値も共に負の値である。 【0137】第2実施例におけるモータ目標トルク、回転数設定処理について、オーバードライブ結合時の処理内容を図22のフローチャートに示した。この処理では、CPUは前輪アシストモータ140、電動発電機、および後輪アシストモータ160の目標回転数およびトルクをそれぞれ次の通り設定する。 【0138】オーバードライブ結合の場合には、電動発電機210を力行することによって要求動力を前車軸116から出力することができる。従って、モータ目標トルク、回転数の設定処理では、CPUは電動発電機210の目標回転数Ng*に「−Nd*/ρ」を設定する(ステップS610)。この回転数は、上式(1)のリングギヤ軸205の回転数Nrに要求動力として設定された回転数Nd*を代入し、プラネタリキャリア軸206の回転数Ngに値0を代入して算出される回転数である。目標回転数Nd*は負の値であるから、電動発電機210の目標回転数Ng*は正の値となる。目標トルクTg*として「ρ×|Tdf*|」を設定する(ステップS610)。このトルクは、上式(1)において、リングギヤ軸205のトルクTrに前車軸116の要求トルク|Tdf*|を代入して設定される値である。要求トルクTdf*の絶対値を代入するのは、前車軸116に要求されているトルクTdf*は、車両にとっては逆転方向のトルク(負のトルク)であるが、前車軸116の回転方向と同方向のトルクだからである。 【0139】電動発電機210からトルクを出力するとき、上式(1)の関係が成立するためには、プラネタリキャリア軸206にトルクを出力する必要がある。このために、CPUは前輪アシストモータ140の目標回転数N1*として値0を設定し、目標トルクT1*として「(1+ρ)Tdf*」を設定する(ステップS612)。このトルクは、上式(1)によりプラネタリキャリア軸206のトルクとして算出される値である。後輪アシストモータ160については、目標回転数として駆動軸の回転数Nd*を設定し、目標トルクT2*として後車軸118の要求トルクTdr*を設定する(ステップS614)。 【0140】次に通常走行モードについて説明する。通常走行モードにおける制御処理の内容は、第1実施例における処理内容(図11参照)と同一である。但し、モータ目標トルク、回転数設定処理(図11のステップS450)の処理内容が第1実施例とは相違する。 【0141】第2実施例におけるモータ目標トルク、回転数設定処理について、アンダードライブ結合時の処理内容を図23のフローチャートに示した。この処理では、CPUは前輪アシストモータ140、電動発電機、および後輪アシストモータ160の目標回転数およびトルクをそれぞれ次の通り設定する。 【0142】CPUは、電動発電機210の目標回転数Ng*として「(1+ρ)/ρNe*−Nd*/ρ」を設定する(ステップS640)。この回転数は、上式(1)において、リングギヤ軸205の回転数Nrに前車軸116の回転数Nd*を代入し、プラネタリキャリア軸206の回転数Ngにエンジン150の回転数Ne*を代入して得られる回転数であり、正の値となる。また、CPUは電動発電機210の目標トルクTg*として「−ρ/(1+ρ)Te*」を設定する(ステップS640)。上式(1)において、プラネタリキャリア軸206のトルクTrにエンジン150の目標トルクTe*を代入すれば、エンジン150からサンギヤ軸204に出力されるトルクが求められる。上記トルクはこのトルクを相殺するトルクとして設定される値である。このとき、電動発電機210は目標回転数Ng*と目標トルクTg*の積に相当する動力を電力として回生する。 【0143】アンダードライブ結合では、前輪アシストモータ140が前車軸116に結合された状態である。従って、前輪アシストモータ140の目標回転数N1*としてNd*を設定する。目標回転数N1*は負の値である。また、目標トルクT1*には、前車軸116から要求トルクTdf*が出力可能な値が設定される。前車軸116にはエンジン150から出力されるトルクの一部が上式(1)に基づいて出力される。従って、前輪アシストモータ140の目標トルクT1*としては、このトルクを考慮した上で要求トルクTdf*を出力することができるように「Tdf*+Te*/(1+ρ)」が設定される(ステップS642)。目標トルクT1*は負の値となる。従って、前輪アシストモータ140は逆転方向に力行される。 【0144】後輪アシストモータ160の目標回転数N2*には要求動力として設定された回転数Nd*が設定され、目標トルクT2*には後車軸118の要求トルクTdr*が設定される(ステップS644)。これらの値は共に負の値である。従って、後輪アシストモータ160は逆転方向に力行される。前輪アシストモータ140および後輪アシストモータ160を力行するための電力は、電動発電機210により回生された電力が用いられる。 【0145】第2実施例におけるモータ目標トルク、回転数設定処理について、オーバードライブ結合時の処理内容を図24のフローチャートに示した。この処理では、CPUは前輪アシストモータ140、電動発電機、および後輪アシストモータ160の目標回転数およびトルクをそれぞれ次の通り設定する。 【0146】CPUは電動発電機210の目標回転数Ng*として「(1+ρ)/ρNe*−Nd*/ρ」を設定する。この回転数は、上式(1)において、リングギヤ軸205の回転数Nrに前車軸116の回転数Nd*を代入し、プラネタリキャリア軸206の回転数Ngにエンジン150の回転数Ne*を代入して得られる値であり、正の値である。また、CPUは電動発電機210の目標トルクTg*として「ρ|Tdf*|」を設定する(ステップS650)。このトルクは、上式(1)において、リングギヤ軸205のトルクとして前車軸116の要求トルク|Tdf*|を代入して得られる値である。 【0147】オーバードライブ結合では、前輪アシストモータ140はエンジン150のクランクシャフト156に直結されている。従って、CPUは前輪アシストモータ140の目標回転数N1*としてエンジン150の回転数Ne*を設定する(ステップS652)。目標回転数N1*は正の値である。また、目標トルクT1*は、エンジン150に負荷Te*を与えるように設定される。上式(1)において、リングギヤ軸205のトルクとして前車軸116の要求トルク|Tdf*|を代入すると、プラネタリキャリア軸206のトルクTcが「(1+ρ)|Tdf*|」と算出される。エンジン150の目標トルクTe*はこうして求められるTgに一致しているとは限らない。従って、CPUは前輪アシストモータ140の目標トルクT1*として、両者の差分に相当する「(1+ρ)|Tdf*|−Te*」を設定する(ステップS652)。前輪アシストモータ140の目標トルクT1*は負の値となる。従って、前輪アシストモータ140では、目標トルク|T1*|と目標回転数|N1*|との積に相当する動力が電力として回生される。こうして回生された電力は、電動発電機210および後輪アシストモータ160の力行に用いられる。 【0148】後輪アシストモータ160の目標回転数N2*には要求動力として設定された回転数Nd*が設定され、目標トルクT2*には後車軸118の要求トルクTdr*が設定される(ステップS654)。これらは共に負の値である。 【0149】以上で説明した本実施例のハイブリッド車両によれば、第1実施例のハイブリッド車両と同様、EV走行、通常走行の各運転モードにおいて、前車軸116および後車軸118から、それぞれ要求動力を出力しつつ4輪駆動で後進することができる。この際、前輪アシストモータ140を前車軸116側又はクランクシャフト156側のいずれかに結合させることにより、前車軸116から十分な後進トルクを出力することができる。従って、本実施例のハイブリッド車両では、4輪駆動可能な車両としての特性を活かしつつ、後進することができる。 【0150】また、本実施例のハイブリッド車両では、第1実施例のハイブリッド車両と同様、前輪116R、116Lまたは後輪118R,118Lのいずれかがスリップした場合に、前後輪のトルク配分を適切に変更することができる。従って、本実施例のハイブリッド車両によれば、例えば路面の摩擦係数が低い場合等において、4輪駆動の特性を活かしつつ、安定して走行することが可能となる。また、本実施例のハイブリッド車両によれば、4輪駆動時の運転効率を向上することができる。 【0151】なお、以上で説明した双方の実施例では、前輪動力系統および後輪動力系統において減速ギヤを設けてはいない。これに対し、減速ギヤを設けるものとしてもよい。この場合には、第1実施例においてはクラッチモータ130のアウタロータ軸135、第2実施例においてはプラネタリギヤ200のリングギヤ軸205の回転数およびトルクをそれぞれ前車軸116の回転数およびトルクと同視して上述の各制御を実行すればよい。 【0152】以上ではハイブリッド車両の実施例について説明した。上述したハイブリッド車両は前車軸116,後車軸118の2つの駆動軸から動力を出力して走行する車両である。従って、本実施例のハイブリッド車両において、前輪116R、116Lおよび後輪118R、118Lを除く部分は、2つの駆動軸から動力を出力する動力出力装置を構成する。上記実施例をこのような動力出力装置として捉え、2つの駆動軸から出力される動力を利用する種々の装置に適用するものとしてもよい。 【0153】以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。例えば、本実施例のハイブリッド車両では、原動機としてガソリンエンジン150を用いたが、ディーゼルエンジンその他の動力源となる装置を用いることができる。また、本実施例では、モータとして全て三相同期モータを適用したが、誘導モータその他の交流モータおよび直流モータを用いるものとしてもよい。また、本実施例では、種々の制御処理をCPUがソフトウェアを実行することにより実現しているが、かかる制御処理をハード的に実現することもできる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003207 【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
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| 【出願日】 |
平成10年(1998)5月18日 |
| 【代理人】 |
【弁理士】 【氏名又は名称】下出 隆史 (外2名)
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| 【公開番号】 |
特開平11−332020 |
| 【公開日】 |
平成11年(1999)11月30日 |
| 【出願番号】 |
特願平10−153571 |
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