| 【発明の名称】 |
動力伝達装置およびこれを用いた四輪駆動車輌 |
| 【発明者】 |
【氏名】永松 茂隆
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| 【要約】 |
【課題】二つの異なる軸の一方に対ロータ電動機を介して原動機を接続し、他方に電動機を設けた動力伝達装置では、原動機を運転している限り、原動機のトルクが出力されてしまい、両軸のトルク比を自由に制御する事が難しかった。
【解決手段】対ロータ電動機であるクラッチモータ30と駆動軸22Aとの間に切換クラッチ機構10を設け、クラッチモータ30のアウタロータ32を固定する固定状態と、駆動軸22Aと結合する出力状態とに切り換えられるようにした。この結果、固定状態では、アウタロータ32と駆動軸22Aの係合を解除することができ、クラッチモータ30を発電にのみ用いることができる。したがって、エンジン50を運転したままアシストモータ40のみで走行することも可能となる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 原動機の動力が伝達される回転軸に結合され、該原動機からの出力を駆動軸に出力可能な動力伝達装置において、相対的に回転可能な2つのロータを備え、一方のロータが前記回転軸に結合された対ロータ型電動機と、前記回転軸に結合されたロータとは異なる他方のロータを、前記駆動軸に結合した状態または固定した状態のいずれか一つの状態に切り換える状態切換手段と、少なくとも、前記状態切換手段により前記ロータを固定状態としたとき、前記原動機から出力される動力により前記対ロータ電動機により発電を行なう制御を行なう発電制御手段とを備えた動力伝達装置。 【請求項2】 請求項1記載の動力伝達装置であって、前記駆動軸として、互いに結合されていない第1,第2の駆動軸を備え、前記状態切換手段は、前記他方のロータを前記第1の駆動軸に結合した状態または固定した状態のいずれか一つの状態に切り換える手段であり、前記第2の駆動軸には、該第2の駆動軸との間で動力のやり取りが可能な第2軸用電動機を設けた動力伝達装置。 【請求項3】 前記状態切換手段と前記第1の駆動軸とは、変速機を介して結合される請求項2記載の動力伝達装置。 【請求項4】 前記対ロータ電動機は、一方のロータに永久磁石を備えた同期電動機である請求項1記載の動力伝達装置。 【請求項5】 回転軸を有する原動機と、前輪および後輪をそれぞれ駆動する第1および第2の駆動軸と、前記原動機と前記第1,第2の駆動軸との間で動力のやり取りを行なう動力伝達装置とを備えた四輪駆動車輌であって、相対的に回転可能な2つのロータを備え、一方のロータが前記回転軸に結合された対ロータ型電動機と、前記回転軸に結合されたロータとは異なる他方のロータを、前記第1の駆動軸に結合した状態または固定した状態のいずれか一つの状態に切り換える状態切換手段と、前記第2の駆動軸に結合され、該第2の駆動軸との間で動力のやり取りを行なう第2軸用電動機と、前記対ロータ電動機および第2軸用電動機とを制御して、前記第1および第2の駆動軸に入出力される動力を制御する動力制御手段とを備えた四輪駆動車輌。 【請求項6】 前記状態切換手段と前記第1の駆動軸とは、変速機介して結合される請求項5記載の四輪駆動車輌。 【請求項7】 請求項5記載の四輪駆動車輌であって、少なくとも、前記状態切換手段により前記ロータを固定状態としたとき、前記原動機から出力される動力により前記対ロータ電動機により発電を行なう制御を行なう発電制御手段を備えた四輪駆動車輌。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、動力伝達装置及びこれを用いた四輪駆動車輌に関し、詳しくは原動機より得られる動力を効率的に伝達または利用する動力伝達装置及びこれを用いた四輪駆動車輌に関するものである。 【0002】 【従来の技術】内燃機関などの原動機の出力トルクを変換して動力を伝達する装置として、近年、流体を利用したトルクコンバータに代えて、遊星歯車機構による動力分配と電動機を組み合わせた構成や相対的に回転可能な2つのロータを有する対ロータ電動機を用いロータ間の滑りを利用して動力を分配する構成などが提案されている。かかる動力伝達装置を用いて、複数の駆動軸に動力を伝達するものとしては、例えば特開平9−175203号公報に示した構成が知られている。かかる動力伝達装置は、動力を流体などに変換することがないので、効率が高いという利点が得られる優れたものである。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、かかる動力伝達装置では、原動機が運転している場合には、電動機から電力を回生しようとすると、駆動軸にこれを回転する力が作用してしまうという問題があった。対ロータ電動機を用いた場合、原動機により一方のロータを回転し、このロータと他方のロータの間の電磁気的な結合の度合いを制御することになるが、両ロータ間に電磁気的な結合が存在すれば、必ず駆動軸側に動力が伝達されてしまう。したがって、例えば駆動軸の回転を止めたまま原動機により対ロータ電動機を運転して発電するといった使い方ができないという問題があった。 【0004】かかる問題は、この動力伝達装置を車輌に適用した場合も同様であり、原動機の回転軸を対ロータ電動機の一方のロータに結合し、他方のロータを前輪または後輪用の駆動軸に結合した場合、原動機が運転されていれば、対ロータ電動機の両ロータ間に電磁気的な結合がある限り、必ず動力がその駆動軸に出力されてしまうという問題があった。したがって、車輌を停止した状態で対ロータ電動機により発電を行なうことはできなかった。また、他方の駆動軸にいわゆるアシストモータを取り付けて四輪駆動を行なう構成を取った場合、原動機が運転されている限り、アシストモータのみでの走行はできないなど、前後輪のトルクバランスを所望の状態にできないことがあった。 【0005】本発明の動力伝達装置及びこれを用いた四輪駆動車輌は、こうした問題を解決し、駆動軸に回転を伝達することなく原動機の運転を可能とし、あるいは二つの駆動軸のトルクバランスの範囲を拡大することなどを目的としてなされ、次の構成を採った。 【0006】 【課題を解決するための手段およびその作用・効果】上記課題の少なくとも一部を解決する本発明の動力伝達装置は、原動機の動力が伝達される回転軸に結合され、該原動機からの出力を駆動軸に出力可能な動力伝達装置において、相対的に回転可能な2つのロータを備え、一方のロータが前記回転軸に結合された対ロータ型電動機と、前記回転軸に結合されたロータとは異なる他方のロータを、前記駆動軸に結合した状態または固定した状態のいずれか一つの状態に切り換える状態切換手段と、少なくとも、前記状態切換手段により前記ロータを固定状態としたとき、前記原動機から出力される動力により前記対ロータ電動機により発電を行なう制御を行なう発電制御手段とを備えたことを要旨としている。 【0007】かかる構成を採用したことにより、この動力伝達装置は、状態切換手段により、前記他方のロータを固定状態とすることができる。したがって、この状態では、他方のロータは、駆動軸との結合が解かれた状態となり、しかも対ロータ電動機の両ロータの電磁的な結合の度合いを変化させても、ロータ間に生じる力は他方のロータにより受け止めることができる。この結果、駆動軸に影響を与えることなく、対ロータ電動機により、発電を行なうことができる。また、逆に原動機が停止した状態では、駆動軸に影響を与えることなく、対ロータ電動機により原動機を回転することができ、原動機が例えば内燃機関の場合には、そのクランキングなどを行なうことも可能となる。 【0008】さらに、この動力伝達装置において、前記駆動軸として、互いに結合されていない第1,第2の駆動軸を備え、前記状態切換手段は、前記他方のロータを前記第1の駆動軸に結合した状態または固定した状態のいずれか一つの状態に切り換える手段であり、前記第2の駆動軸には、該第2の駆動軸との間で動力のやり取りが可能な第2軸用電動機を設けた構成をとることも可能である。 【0009】この動力伝達装置は、駆動軸として第1,第2の駆動軸を備え、第2の駆動軸には、第2軸用電動機を備える。したがって、状態切換手段より、対ロータ電動機の他方のロータを固定状態に切り換えた場合には、第1の駆動軸と対ロータ電動機との固定は解かれ、第1の駆動軸に原動機からの出力が伝達されることはない。この結果、第1の駆動軸と第2の駆動軸間の動力のやりとりの自由度を高めることができる。例えば、原動機により対ロータ電動機で発電を行ない、その電力で第2軸用電動機を駆動するといった使い方が可能となる。また、逆に、第2軸用電動機で発電を行ないながら、その電力で対ロータ電動機を駆動し、原動機を回転するという使い方も可能となる。この場合、原動機が例えば内燃機関の場合には、そのクランキングを行なうことができる。 【0010】なお、こうした動力伝達装置において、状態切換手段と第1の駆動軸とを、変速機を介して結合した構成とすることも好適である。この場合、状態切換手段により、対ロータ電動機の他方のロータを駆動軸に結合した状態とすれば、変速機により、第1の駆動軸に出力するトルクを自由に制御でき、第1の駆動軸と第2の駆動軸との間のトルク配分の自由度を高くすることが可能となる。 【0011】上記動力伝達装置において、対ロータ電動機を、一方のロータに永久磁石を備えた同期電動機とすることも好適である。永久磁石を用いた同期電動機は、無駄な電力使用がなく、効率に優れ、小型化が可能だからである。 【0012】本発明の四輪駆動車輌は、回転軸を有する原動機と、前輪および後輪をそれぞれ駆動する第1および第2の駆動軸と、前記原動機と前記第1,第2の駆動軸との間で動力のやり取りを行なう動力伝達装置とを備えた四輪駆動車輌であって、相対的に回転可能な2つのロータを備え、一方のロータが前記回転軸に結合された対ロータ型電動機と、前記回転軸に結合されたロータとは異なる他方のロータを、前記第1の駆動軸に結合した状態または固定した状態のいずれか一つの状態に切り換える状態切換手段と、前記第2の駆動軸に結合され、該第2の駆動軸との間で動力のやり取りを行なう第2軸用電動機と、前記対ロータ電動機および第2軸用電動機とを制御して、前記第1および第2の駆動軸に入出力される動力を制御する動力制御手段とを備えたことを要旨とする。 【0013】かかる四輪駆動車輌は、前輪および後輪をそれぞれ駆動する第1,第2の駆動軸を備え、これら第1,第2の駆動軸にのうち、第1の駆動軸と対ロータ電動機の他方のロータとの結合の状態を状態切換手段により切り換えることができる。状態切換手段により、他方のロータを固定状態とすると、他方のロータと第1の駆動軸との結合は解かれた状態となり、しかも対ロータ電動機の両ロータの電磁的な結合の度合いを変化させ場合にロータ間に生じる力は他方のロータにより受け止めることができる。この結果、第1の駆動軸に影響を与えることなく、対ロータ電動機により、発電を行なうことができる。また、逆に原動機が停止した状態では、第1の駆動軸に影響を与えることなく、対ロータ電動機により原動機を回転することができ、原動機が例えば内燃機関の場合には、そのクランキングなどを行なうことも可能となる。この結果、四輪駆動車輌における前輪側の駆動力と後輪側の駆動力の配分の自由度を高くすることができる。もとより、状態切換手段と第1の駆動軸とを、変速機を介して結合すれば、両駆動軸間の駆動力の配分の自由度は更に高くすることができる。 【0014】更に、この四輪駆動車輌において、少なくとも、前記状態切換手段により前記ロータを固定状態としたとき、前記原動機から出力される動力により前記対ロータ電動機により発電を行なう制御を行なう発電制御手段を備えるものとすることも可能である。この四輪駆動車輌では、第1の駆動軸に原動機からの動力を伝達することなく対ロータ電動機で発電を行なうことができるので、この発電した電力を、二次電池などに蓄えたり、第2の駆動軸に設けられた第2軸用電動機を力行するのに用いたりすることができる。この結果、例えば対ロータ電動機により発電した電力により第2の駆動軸に動力を出力するといった使い方ができ、状態切換手段の動作により、両駆動軸から動力を出力する四輪駆動車輌としての動作モードと、一つの電動機により原動機の出力をすべて電力に変換し、これをもう一つの電動機(第2軸用電動機)により出力するいわゆるシリーズハイブリッドの動作モードとを、使い分けることも可能となる。前記第1および第2の動力制御手段は、【0015】 【発明の他の態様】本発明の四輪駆動車輌は、「前輪」および「後輪」にそれぞれ結合された第1および第2の駆動軸を有するものとしたが、ここで「前輪」および「後輪」は、相対的なものであって、例えば大型車両のように6輪以上の車輪を有する場合には、車輌後部に設けられた二組の車輪であっても差し支えない。もとより、前後輪独立懸架の二輪車に適用することも可能である。また、状態切換手段は、対ロータ電動機の他方のロータが、固定状態か駆動軸と結合された状態かのいずれかに切り換えるものとしたが、これ以外に他の電動機と結合された状態に切り換えることができる構成としていも差し支えない。この電動機を例えば駆動軸に結合すれば、対ロータ電動機と協働して、駆動軸への出力を自由に制御することが可能となる。かかる構成を四輪駆動車輌に応用すると、第1の駆動軸にもう一つの電動機を備えた構成となるが、この場合、第2軸用電動機とこの電動機とで、インバータなどの電力制御機器を共用することが可能となり、全体構成をコンパクトなものとすることができる。 【0016】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。図1は本発明の第1の実施例としての動力伝達装置20を組み込んだ四輪駆動車輌1の概略構成を示す構成図、図2はこの四輪駆動車輌1についてエンジン50を含む概略構成を示す構成図、図3は図1の構成を電気的に詳しく描いた構成図、である。説明の都合上、まず図2を用いて、車輌全体の構成から説明する。 【0017】図2に示すように、この車輌には、エンジン50としてガソリンにより運転されるガソリンエンジンが備えられている。このエンジン50は、吸気系からスロットルバルブ66を介して吸入した空気と燃料噴射弁51から噴射されたガソリンとの混合気を燃焼室52に吸入し、この混合気の爆発により押し下げられるピストン54の運動をクランクシャフト56の回転運動に変換する。ここで、スロットルバルブ66はモータ66aにより開閉駆動される。点火プラグ62は、イグナイタ58からディストリビュータ60を介して導かれた高電圧によって電気火花を形成し、混合気はその電気火花によって点火されて爆発燃焼する。この爆発燃焼により取り出されるエネルギが、この車輌を駆動する動力源となる。 【0018】このエンジン50の運転は、電子制御ユニット(以下、EFIECUと呼ぶ)70により制御されている。EFIECU70には、エンジン50の運転状態を示す種々のセンサが接続されている。例えば、スロットルバルブ66の開度を検出するスロットルポジションセンサ67や、原動機の50の負荷を検出する吸気管負圧センサ72、エンジン50の水温を検出する水温センサ74、ディストリビュータ60に設けられクランクシャフト56の回転数と回転角度を検出する回転数センサ76及び回転角度センサ78などである。なお、EFIECU70には、この他、例えばイグニッションキーの状態STを検出するスタータスイッチ79なども接続されているが、その他のセンサ,スイッチなどの図示は省略した。 【0019】エンジン50のクランクシャフト56は、クラッチモータ30を介して駆動軸22Aに結合されている。このクラッチモータ30は、切換クラッチ付きのものであるが、その構成は、後で詳しく説明する。駆動軸22Aは、減速ギヤ23を介して前輪駆動用のディファレンシャルギヤ24に結合されており、駆動軸22Aから出力されるトルクは最終的に左右の前輪26,28に伝達される。他方、後輪27,29には、後輪用のディファレンシャルギヤ25を介して、アシストモータ40が結合されている。即ち、この車輌1では、前輪26,28は、エンジン50およびクラッチモータ30により、他方後輪27,29は、アシストモータ40により、各々駆動される四輪駆動車輌として構成されている。 【0020】これらのクラッチモータ30及びアシストモータ40は、制御装置80により制御されている。制御装置80の構成は後で詳述するが、図3に示したように、内部には制御CPUが備えられており、シフトレバー82に設けられたシフトポジションセンサ84やアクセルペダル64に設けられその操作量を検出するアクセルペダルポジションセンサ65、更にはブレーキペダル68の操作量を検出するブレーキペダルポジションセンサ69なども接続されている。また、制御装置80は、上述したEFIECU70と通信により、種々の情報をやり取りしている。これらの情報のやり取りを含む制御については、後述する。 【0021】動力伝達装置20の構成について説明する。図3に示すように、動力伝達装置20は、大きくは、動力を発生するエンジン50、このエンジン50のクランクシャフト56の一端にダンパ31を介して結合されたクラッチモータ30、このクラッチモータ30とは別体に設けられ後輪用の駆動軸22Bに結合されたロータ42を有するアシストモータ40、及びクラッチモータ30とアシストモータ40を駆動・制御する制御装置80から構成されている。 【0022】クラッチモータ30の概略構成について、図1により説明する。クラッチモータ30は、図1に示すように、アウタロータ32に回転磁界を形成する三相コイル36を備え、インナロータ34の外周面に永久磁石を貼付した永久磁石型の同期電動機として構成されている。アウタロータ32において三相コイル36用のスロット及びティースを形成する部分は、無方向性電磁鋼板の薄板を積層することで構成されている。このクラッチモータ30のインナロータ34は、ダンパ31を介してエンジン50のクランクシャフト56に結合されており、アウタロータ32は、切換クラッチ機構10に結合されている。なお、アウタロータ32のこの三相コイル36との電力のやり取りは、本実施例ではスリップリング38を介して行なっている。クラッチモータ30は、このスリップリング38を介して、三相コイル36に電力を供給して力行させる場合と、三相コイル36から電力を取り出して回生させる場合とが存在する。 【0023】切換クラッチ機構10は、アウタロータ32に機械的に固定されたセンタギヤ12,車体に固定された固定ギヤ11,減速ギヤに結合された出力ギヤ13と、これら3つのギヤの係合状態を切り換える摺動子15、この摺動子15を作動桿16を介して図1矢印方向に摺動させるアクチュエータ18とから構成されている。アクチュエータ18は、摺動子15を駆動することにより、センタギヤ12を、固定ギヤ11と係合した状態(以下、固定状態と呼ぶ)もしくは出力ギヤ13と係合した状態(以下、出力状態と呼ぶ)のいずれかの状態に切り換える。 【0024】切換クラッチ機構10により、アウタロータ32の回転が出力ギヤ13を介して出力される状態になると、アウタロータ32の回転は、駆動軸22Aへと出力される。このとき、アウタロータ32のトルクは、減速ギヤ23により、その減速比(実施例では約1:4)により増幅されて前輪26,28に伝達され、前輪26,28を駆動する力となる。なお、クランクシャフト56には、その回転角度θeを検出するレゾルバ39Aが、他方、駆動軸22Aには、その回転角度θfを検出するレゾルバ39Bが設けられている。両レゾルバ39A,39Bが検出したクランクシャフト56の回転角度θeと駆動軸22Aの回転角度θfとに基づいて、制御装置80は、クラッチモータ30のアウタロータ32に対するインナロータ34の相対的な回転角度(電気角)を知ることができる。 【0025】他方、クラッチモータ30とは別体に設けられたアシストモータ40も、クラッチモータ30同様、同期電動機として構成されているが、回転磁界を形成する三相コイル44は、ケース45に固定されたステータ43に巻回されている。このステータ43も、無方向性電磁鋼板の薄板を積層することで形成されている。ロータ42の外周面には、複数個の永久磁石46が設けられている。アシストモータ40では、力行時には、この永久磁石46により磁界と三相コイル44が形成する磁界との相互作用により、ロータ42が回転する。回生時には、このロータ42の回転により三相コイル44から電力が取り出される。このロータ42がせ結合された駆動軸22Bは、減速機23Bを介して、後輪27,29用のディファレンシャルギヤ25に結合されている。駆動軸22Bの回転は、このディファレンシャルギヤ25を介して、後輪27,29に分配される。駆動軸22Bには、その回転角度θrを検出するレゾルバ48が設けられている。また、駆動軸22Bは、ケース45に設けられたベアリング49により軸支されている(図3参照)。 【0026】次に、クラッチモータ30及びアシストモータ40を駆動・制御する制御装置80について説明する。制御装置80は、図3に示すように、クラッチモータ30との間で電力を双方向にやり取り可能な第1の駆動回路91、アシストモータ40との間で電力を双方向にやり取り可能な第2の駆動回路92、両駆動回路91,92を制御する制御CPU90、二次電池であるバッテリ94から構成されている。制御CPU90は、1チップマイクロプロセッサであり、内部に、ワーク用のRAM90a、処理プログラムを記憶したROM90b、入出力ポート(図示せず)及びEFIECU70と通信を行なうシリアル通信ポート(図示せず)を備える。この制御CPU90には、レゾルバ39Aからのエンジン回転角度θe、レゾルバ39Bからの駆動軸22Aの回転角度θf、レゾルバ48からの駆動軸22Bの回転角度θr、アクセルペダルポジションセンサ65からのアクセルペダルポジション(アクセルペダルの踏込量)AP、シフトポジションセンサ84からのシフトポジションSP、ブレーキペダルポジションセンサ69からのブレーキポジションBP、第1の駆動回路91に設けられた2つの電流検出器95,96からのクラッチ電流値Iuc,Ivc、第2の駆動回路に設けられた2つの電流検出器97,98からのアシスト電流値Iua,Iva、バッテリ94の残容量を検出する残容量検出器99からの残容量BRMなどが、入力ポートを介して入力されている。なお、残容量検出器99は、バッテリ94の電解液の比重またはバッテリ94の全体の重量を測定して残容量を検出するものや、充電・放電の電流値と時間を演算して残容量を検出するものや、バッテリの端子間を瞬間的にショートさせて電流を流し内部抵抗を測ることにより残容量を検出するものなどが知られている。 【0027】また、制御CPU90からは、第1の駆動回路91に設けられたスイッチング素子である6個のトランジスタTr1ないしTr6を駆動する制御信号SW1と、第2の駆動回路92に設けられたスイッチング素子としての6個のトランジスタTr11ないしTr16を駆動する制御信号SW2と、切換クラッチ機構10のアクチュエータ18への駆動信号SCCとが出力されている。第1の駆動回路91内の6個のトランジスタTr1ないしTr6は、トランジスタインバータを構成しており、それぞれ、一対の電源ラインP1,P2に対してソース側とシンク側となるよう2個ずつペアで配置され、その接続点に、クラッチモータ30の三相コイル(UVW)36の各々が、スリップリング38を介して接続されている。電源ラインP1,P2は、バッテリ94のプラス側とマイナス側に、それぞれ接続されているから、制御CPU90により対をなすトランジスタTr1ないしTr6のオン時間の割合を制御信号SW1により順次制御し、各コイル36に流れる電流を、PWM制御によって擬似的な正弦波にすると、三相コイル36により、回転磁界が形成される。 【0028】他方、第2の駆動回路92の6個のトランジスタTr11ないしTr16も、トランジスタインバータを構成しており、それぞれ、第1の駆動回路91と同様に配置されていて、対をなすトランジスタの接続点は、アシストモータ40の三相コイル44の各々に接続されている。従って、制御CPU90により対をなすトランジスタTr11ないしTr16のオン時間を制御信号SW2により順次制御し、各コイル44に流れる電流を、PWM制御によって擬似的な正弦波にすると、三相コイル44により、回転磁界が形成される。 【0029】切換クラッチ機構10のアクチュエータ18に出力される駆動信号SCCは、正負のパルス信号であり、正のパルス信号と負のパルス信号により、アクチュエータ18を、短時間駆動し、摺動子15を2つの位置に切り換える。即ち、アクチュエータ18は、正のパルス信号を受けて、3つのギヤの状態を、センタギヤ12と固定ギヤ11とが係合した固定状態に切り換える。また、アクチュエータ18は、負のパルス信号により、センタギヤ12と出力ギヤ13とが係合した出力状態に切り換える。切換クラッチ機構10が固定状態となると、クラッチモータ30のアウタロータ32は、固定され回転することはない。この状態では、駆動軸22Aとクラッチモータ30とは、分離された状態となる。また、切換クラッチ機構10が出力状態となると、クラッチモータ30のアウタロータ32は、駆動軸22Aと係合された状態となり、アウタロータ32回転は、減速機23を介してディファレンシャルギヤ24に出力される。 【0030】制御装置80と制御装置80により制御されるこれらクラッチモータ30およびアシストモータ40とは、別体に配置されているが、四輪に動力を分配・伝達することから、以下、動力伝達装置20と総称する。駆動力の分配・伝達を行なうための構成を模式的に示したのが、図4である。このとき、切換クラッチ機構10は、出力状態に切り換えられているものとする。エンジン50から取り出されたエネルギ(トルクTe×回転数Ne)は、クラッチモータ30を介して駆動軸22Aに伝達されるが、クラッチモータ30に滑り回転を生じさせた場合には、この回転数差(△N=Ne−Nd)×伝達トルクTdに対応したエネルギが、クラッチモータ30の三相コイル36から回生される。ここで、Ndは、駆動軸22Aの回転数、Tdは、駆動軸22Aに伝達されるトルクである。このエネルギは、スリップリング38から第1の駆動回路91を介して回収され、バッテリ94に蓄えられる。他方、アシストモータ40では、このクラッチモータ30を介して駆動軸22Aに出力されたトルクを勘案し、所定のトルクを発生する。このトルクは、バッテリ94に蓄えられたエネルギもしくはクラッチモータ30により回生されたエネルギにより、アシストモータ40を力行することにより得られる。仮に、エネルギ変換に伴うロスがないものとし、クラッチモータ30で回生されたエネルギだけがすべてアシストモータ40により消費されるものとすれば、アシストモータ40により出力されるエネルギPrは、クラッチモータ30により回生されるエネルギ△Pに等しくなり、前後の駆動軸22A,22Bの回転数Ndが等しいとすれば、△P=Nd×Tdとなる。この場合、前輪26,28と後輪27,29とには、それぞれTe,Trのトルクが配分されることになる。なお、バッテリ94との間で電力のやり取りが可能であることを考えれば、前輪26,28と後輪27,29とのトルクの分配比は、所定の範囲で設定することができる。各車輪に分配されるトルクがおよそ等しければ、いわゆるフルタイム4WDとほぼ同様な駆動力の配分となる。 【0031】更に、本実施例の四輪駆動車輌では、切換クラッチ機構10により、次の動作も可能である。切換クラッチ機構10が固定状態に切り換えられると、クラッチモータ30のアウタロータ32と駆動軸22Aとの係合は切り離される。即ち、もし車輌が走行中であれば、前輪26,28は遊動輪となり、車輌は、後輪27,29に出力されるアシストモータ40による駆動力のみで走行することになる。運転者がアクセルペダル64から足を離している場合(減速中や下り坂の場合等)には、アシストモータ40は、後輪27,29の回転により電力を回生することもあり得る。この場合には、アシストモータ40は、回生ブレーキとして作用する。いずれにせよ、切換クラッチ機構10が、固定状態に切り換えられていれば、クラッチモータ30の運転は、駆動軸22Aの回転とは無関係となるから、車輌が走行中であれ、停車中であれ、エンジン50の出力を用いて、クラッチモータ30で発電を行ない、バッテリ94を充電するといった使い方が可能となる。なお、エンジン50が停止している場合、クラッチモータ30を始動用モータとして利用し、エンジン50を起動するという用い方も可能となる。この場合、クラッチモータ30のトルクが駆動軸22Aに伝達されることがなく、エンジン50の起動が、車輌の走行に影響を与えないという利点が得られる。 【0032】次に、制御装置80における制御について説明する。図5は制御CPU90における車輌の駆動制御の処理の概要を示すフローチャートである。図示するように、この処理ルーチンが起動されると、まずアクセルペダルポジションセンサ65からの信号を読み取ることにより、アクセルポジションAPを読み込み(ステップS100)、このアクセルポジションAPに基づいて車輌が必要とするトルクTd*を求める処理を行なう(ステップS110)。次に、前輪26,28側と後輪27,29側に配分するトルク比RTを運転状態に基づいて求める処理を行なう(ステップS120)。トルク比RTを求める運転状態とは、例えば各輪のスリップの状態、車速に対するアクセルペダルの踏み込み量、路面の摩擦係数μなどを勘案して定めることができる。もとより、運転者の指示により一律に定めるものとしても良い。また、クラッチモータ30は、その構造上、駆動軸22A側に出力可能なトルクTcが入力する側のトルク(即ちエンジントルクTe)と等しくなることに鑑み、エンジン50の効率的な運転を優先して、エンジン50のトルクTeを与件とし、RT=Te/(Td*−Te)となるようトルク比RTを定めるものとしても良い。 【0033】前後輪のトルク比を定めたあと、クラッチモータ30を発電専用とすべきかの判断を行なう(ステップS130)。クラッチモータ30を発電専用とすべきか否かの判断は、残容量検出器99により検出されるバッテリ94の残容量BRMに基づいて判断することができるが、この判断は、車輌に対する走行上の要求を併せて行なうことが望ましい。例えば、図6に示すように、残容量検出器99により検出された残容量BRMが、これ以下では充電を行なうことが望ましいとして定められた所定値B1以上か否かの判断(ステップS132)を行なうものとし、BRM>B1であれば、クラッチモータ30を発電専用とする必要はないと判断する。一方、残容量BRMが所定値B1より小さいと判断された場合には、残容量が、これ以上放電を継続することを許さない値として設定された下限ガード値Bmin 以下か否かの判断(ステップS134)を行なう。残容量BRMが所定値B1以下でかつ下限ガード値Bmin 以上の場合、更に車輌の走行に対する要求について判断し、四輪駆動要求があると判断された場合には、四輪駆動による走行を優先するとして、クラッチモータ30を発電専用とするとは判断しない。かかる判断における車輌の走行に対する要求についての判断とは、例えば加速中であるかとか、車輌が停止しているかなど、様々なケースを考えることができる。バッテリ94の残容量の大小だけでなく、車輌に対する走行上の要求を併せて判断しているのは、後述するように、クラッチモータ30を発電専用として用いる場合、車輌のトルクは後輪27,29だけに付与されることになるからである。したがって、低ミュー路などのように車輪がスリップしやすい条件下では、できるだけ四輪走行を継続するよう判断したり、低負荷走行時には早めにクラッチモータ30を発電専用とすると判断したりすることが考えられる。 【0034】かかる判断によりクラッチモータ30を発電専用とはしないと判断された場合には、切換クラッチ機構10を、出力状態に切り換える制御もしくは既に出力状態に切り換えられていればその状態に維持する制御を行なう(ステップS140)。即ち、バッテリ94の残容量が十分にある場合には、特別な制御を行なうことなく、前後輪からトルクを出力するとして、切換クラッチ機構10の状態を出力状態とするのである。 【0035】その後、先に定めたトルク比RTから駆動軸22A,22Bのそれぞれの目標トルクTc*およびTa*を求める処理を行なう(ステップS150,160)。即ち、アクセルポジションAPに基づいて求めた要求トルクTd*を、トルク比RTにより、前後輪に配分するとして、前輪に出力すべきトルクTc*および後輪に出力すべきトルクTa*を、Tc*←Td*×RT、Ta*←Td*×(1−RT)、として、各々求めるのである。その後、こうして求めた各モータの目標トルクTc*,Ta*に基づいて、クラッチモータ制御(ステップS170)、アシストモータ制御(ステップS180)およびでエンジン制御(ステップS190)を行なう。 【0036】クラッチモータ30およびアシストモータ40の制御は、基本的には同じものであり、次にように行なわれる。まず、レゾルバ39A,39Bからの検出信号を用いてクラッチモータ30の電気角を求め、レゾルバ48からの信号を用いてアシストモータ40の電気角を求める。次に、各モータの三相コイルに流れる電流値を、電流検出器95ないし98により読み出し、これを三相−二相変換して、d軸およびq軸電流を求める。このd軸,q軸電流から、目標トルクTc*,Ta*を得るための電流値を求め、今度はこれを二相−三相変換し、各モータの三相コイルに流すべき三相の電流値を求める。三相コイルに流す電流は、実際には、電圧の印加時間(パルス幅)により制御しているので、最終的には、第1,第2駆動回路91,92の各トランジスタTr1ないしTr6,Tr11ないしTr16のスイッチング時間を制御することになる。以上により、クラッチモータ30とアシストモータ40が制御される。 【0037】一方、エンジン制御(ステップS190)は、次の目的で行なわれる。クラッチモータ30では、その構造上、エンジン50のトルクTeがそのまま駆動軸22AのトルクTcとなる。したがって、ステップS190のエンジン制御では、前輪26,28に出力されるトルクが、先に定めたトルク比RTに従う値となり、かつエンジン50が最も効率よく運転される条件で行なわれることになる。 【0038】上述した制御(ステップS140ないしS190)は、バッテリ94の残容量BRMが十分にある場合など、クラッチモータ30を発電専用に制御する必要がないと判断された場合に行なわれる。一方、ステップS130(詳細は図6参照)で、クラッチモータ30を発電専用で制御すべきと判断された場合には、ステップS240以下の処理が行なわれる。即ち、まず切換クラッチ機構10を固定状態に切り換えるかあるいは既に固定状態に切り換えられていればその状態を維持するように制御する(ステップS240)。この結果、クラッチモータ30と駆動軸22Aとの接続は切り離される。そこで、クラッチモータ30を、発電専用の制御により運転し(ステップS270)、これに合わせて、アシストモータ40の制御(ステップS280)と、エンジン50の制御(ステップS290)とを行なう。これらの制御は、次のように行なわれる。 【0039】車輌全体に必要なトルクTd*は、ステップS110で求めているのが、現在の後輪の回転数Ndから、アシストモータ40で出力すべきエネルギPdは、Pd=Td*×Ndとして、求めることができる。一方、バッテリ94の充電に必要な電力エネルギをPE*とすると、エンジン50から出力すべきエネルギ(同時にクラッチモータ30により発電すべきエネルギ)は、Pd+PE*として求めることができる。したがって、クラッチモータ30とエンジン50とは、この条件を満たしかつエンジン50が最も効率良く運転可能な運転ポイントで制御すればよい。他方、アシストモータ40の制御は、必要なトルクTd*を後輪27,29から出力するよう行なう。この結果、エンジン50から取り出されるエネルギは、クラッチモータ30の発電により電力に変換され、その電力でバッテリ94の充電とアシストモータ40の駆動とが行なわれることになる。 【0040】かかる制御によれば、エンジン50から取り出されるエネルギを用いて、前輪26,28と後輪27,29とのトルクを適正に制御して、四輪駆動を実現することができる。しかも、本実施例によれば、車輌走行中に、クラッチモータ30と駆動軸22Aとの結合を解除して、クラッチモータ30をエンジン50により運転することができる。この結果、駆動軸22Aにトルクを付与することなく、発電を行なうことができ、例えばバッテリ94の充電を優先した運転モードなどを簡単に実現することができる。更に、本実施例では、バッテリ94の残容量のみならず車輌に対する四輪駆動の要求も勘案して運転状態を決めているので、四輪駆動が必要な場合には、バッテリ94の状態が許す限り、四輪駆動を継続することができ、他方バッテリ94の状態から充電が必要となった場合には、四輪駆動は解除するが、車輌全体のトルクは確保して、バッテリ94の充電を行なうことができる。 【0041】上記制御は、ハイブリッドによる四輪駆動のモードと、いわゆるシリーズハイブリッドの構成とを切り換えていると見ることができる。即ち、切換クラッチ機構10を出力状態に切り換えて前輪26,28にエンジン50からの動力を出力しつつ、アシストモータ40から後輪27,29にも動力を出力している状態(四輪駆動モード)に対して、切換クラッチ機構10を固定状態に切り換え、エンジン50の動力によりクラッチモータ30で発電を行ない、この電力でアシストモータ40を駆動する状態は、いわゆるシリーズハイブリッドの構成となっている。こうした運転モードの切換を積極的に行なった方が良い場合が存在する。この点について、以下説明する。 【0042】車輌が高速走行している場合、駆動軸22Aの回転数の方がエンジン50のクランクシャフト56の回転数より高くなり、クラッチモータ30を力行制御して、クラッチモータ30により回転を増速しないければならない場合があり得る。この場合でも、クラッチモータ30の構造上、エンジン50のトルクは駆動軸22Aにそのまま出力される。したがって、要求トルクに対して過大なトルクが駆動軸22Aに出力されてしまうことがあり得る。かかる運転条件では、車輌全体の出力を要求トルクに制御するために、アシストモータ40側で電力を回生することになる。即ち、エネルギが前輪から一旦路面に出力され、後輪側で回収されることになり、エネルギの再循環が起きることになる。エネルギの再循環が生じると、車輌全体のエネルギ効率は低下するから、かかる運転モードは避けることが望ましい。そこで、エンジン50のクランクシャフト56の回転速度より駆動軸22Aの回転速度の方が上回った場合には、エネルギ再循環が生じていると判断して、切換クラッチ機構10を固定状態に切り換え、いわゆるシリーズハイブリッドの構成として車輌を走行するという制御を採用することが考えられるのである。かかる制御を実現するためには、図5に示したフローチャートにおいて、ステップS130で、発電専用制御を行なうか否かの判断として、上述した駆動軸22Aとクランクシャフト56の回転数を比較する処理を行なえばよい。 【0043】以上の実施例では、エンジン50は常に運転されているものとして説明したが、エンジン50とモータ30,40を用いたハイブリッド車輌では、車輌の走行中にもエンジン50を停止して、アシストモータ40のみで走行する運転モードを取ることができる。この場合、走行のためのエネルギはバッテリ94から持ち出されることになり、バッテリ94の残容量が低下すれば、充電するためにエンジン50を起動することになる。エンジン50の起動は、切換クラッチ機構10を出力状態とし、クラッチモータ30を回生モードにすることにより、駆動軸22Aの回転によりエンジン50をクランキングして行なうことができる。この場合には、エンジン50が完爆状態となると、エンジン50のクランクシャフト56に加わるトルクは、負の状態(外部からの力で回転されている状態)から、正の状態(エンジン50自身の力で回転する状態)へと急変する。したがって、この変化は、駆動軸22Aに伝わり、トルクショックとして感じられる場合がある。そこで、切換クラッチ機構10を固定状態に切り換え、その後、クラッチモータ30によりエンジン50をクランキングして、エンジン50の起動を行なうことも可能である。この場合には、エンジン50が起動することによるトルク変化が駆動軸22Aに伝わることはなく、トルクショックの問題を回避することができる。 【0044】更に、本実施例の応用例として、車輌が停止した状態でエンジン50を起動する場合を挙げることができる。エンジン50と駆動軸22Aとがクラッチモータ30を介して結合されている四輪駆動車の構成では、エンジン50をクランキングするためにクラッチモータ30を回転するためには、駆動軸22Aをブレーキ等で完全に固定しておく必要があった。これに対して、上記実施例では、停車中の車輌においてエンジン50を起動する場合には、切換クラッチ機構10を固定状態に切り換えればよい。この状態では、エンジン50と駆動軸22Aとは接続されていないから、クラッチモータ30によりエンジン50をクランキングする際、駆動軸22Aへの影響を考慮する必要がない。 【0045】次に、本発明の第2の実施例について説明する。第2実施例の四輪駆動車輌は、図7に示すように、第1実施例とほぼ同様の構成を有するが、前輪26,28に動力を出力する駆動軸22Aに無段変速機300を備える点で相違する。この無段変速機300は、二つの径可変プーリ301,302にベルト305を掛け渡した構成を有するものであり、制御装置80からの信号により、プーリ301,302の径を可変することにより、クラッチモータ30のアウタロータ32の回転数およびトルクを無段階に変更して、駆動軸22Aに出力する。この結果、前輪26,28に出力するトルクの可変範囲を、大幅に広げることができる。したがって、エンジン50の出力トルクがクラッチモータ30の反力トルクとして、そのままアウタロータ32側に出力されてしまうと言う構成を採用しながら、前後輪のトルク比RTを、自由に制御することができる。この場合でも、切換クラッチ機構10を切り換えることにより、第1実施例と同様の作用効果を奏することはもちろんである。 【0046】次に、本発明の第3の実施例について説明する。第3実施例の四輪駆動車輌は、図8に示すように、第1実施例とほぼ同様の構成を備え、切換クラッチ機構310の構成および前輪用にもう一つのモータ350を備える点で、第1実施例と相違する。この実施例では、前輪用の駆動軸22Aは、減速機23Aを介してクラッチモータ30のアウタロータ32と直接かつ常時接続されている。また、切換クラッチ機構310は、このアウタロータ32と結合された出力ギヤ313、クラッチモータ30のインナロータ34の回転軸と結合されたセンタギヤ312、もう一つのモータ350の回転軸とチェーン352により結合された動力ギヤ314、更にこれらのギヤ間の結合状態を切り換える摺動子315、摺動子315を駆動するアクチュエータ318等から構成されている。アクチュエータ318は、制御装置80からの制御信号により、動力ギヤ314をセンタギヤ312と結合した状態(以下、オーバドライバ状態という)と、動力ギヤ314を出力ギヤ313と結合した状態(以下、アンダドライブ状態という)とに切り換える。 【0047】モータ350が追加されたことに伴い、制御装置80内に、もう一つの駆動回路93が設けられている。第1の駆動回路91はクラッチモータ30に、第2の駆動回路92は350に、それぞれ接続されており、第3の駆動回路93がアシストモータ40に接続されている。なお、この実施例では、第3の駆動回路93は、第1,第2の駆動回路91,92と同様の回路構成としたが、後述するように、アシストモータ40の構成によっては、簡略化した回路構成とすることも可能である。 【0048】かかる構成によれば、切換クラッチ機構310を切り換えることにより、モータ350を駆動軸22A側に結合したアンダドライブ状態と、モータ350をエンジン50の出力軸側に結合したオーバドライブ状態とを簡単に実現することができるので、前輪26,28側のトルクを自由に制御することができる。したがって、四輪駆動車輌として、前後輪への駆動力の配分を自由に設定することができる。しかも、切換クラッチ機構310をオーバドライブ状態に切り換えて、クラッチモータ30のコイル36に電流を流さないよう制御すれば、駆動軸22Aは、エンジン50やクラッチモータ30から切り離された状態とすることができる。従って、この状態では、エンジン50の出力をすべてモータ350により電気エネルギとして回生したり、あるいはモータ350によりエンジン50をクランキングしてエンジン50を起動するといった使い方が可能となる。 【0049】なお、かかる構成では、車輌全体で3つのモータが搭載されることになり、各モータについて一つのインバータを用意するすると、全部で3組のインバータ(図3に示した3個1組のトランジスタが計6組)が必要となる。しかし、この実施例では、切換クラッチ機構310を設けているので、エンジン50による発電と、駆動軸22A側からの動力による発電(発電制動時)とを、同じモータ350により行なうことができる。したがって、後輪側に配置されたアシストモータ40による回生を行なわなくとも、エネルギのロスはほとんど生じない。そこで、図9に示すように、後輪側のアシストモータを、ブラシ405を有する直流ブラシモータ400として構成することも可能である。この場合、直流ブラシモータ400と、後輪用駆動軸22Bに結合された減速機23Bとの間には、クラッチ410を設けることが望ましい。このクラッチ410は、制御装置80によりオン・オフを制御するものとして差し支えないが、直流ブラシモータ400側の回転数が高いときのみ、結合状態となるいわゆるワンウェイクラッチとしても差し支えない。ワンウェイクラッチとした場合には、切換制御は不要となる。 【0050】かかる構成によれば、直流ブラシモータ400を採用しているため、これを制御する回路が簡単になり、一方向にのみ動力を付加する構成で良ければ、図10に示したように、駆動回路のトランジスタTr21は1個で済ませることができる。双方向に動力を付加する場合でも、図11に示したように、4個のトランジスタTr31〜Tr34で済ませることができる。従って、サーボモータなどをインバータを用いて駆動する構成(トランジスタは6個必要)と比べて、構成を簡略にすることができる。しかも、駆動力を出力する時以外は、クラッチ410により、駆動軸22Bと結合は切り離されているので、ブラシ405の耐久性という問題も解消することができる。また、交流サーボモータを用いた場合と比べて、サーボモータが必要とする弱め界磁領域でのモータ電流が不要となり、システム全体の効率が向上するという利点も得られる。こうした構成は、特に通常は前輪駆動で走行し、必要に応じて四輪駆動とするスタンバイ4Dといったモードで用いることが考えられる。こうしたモードでは、後輪に駆動力を付与する時間は相対的に短いので、直流ブラシモータ400を用いた構成でも十分対応可能である。 【0051】上述した各実施例においては、エンジン50としてガソリンにより運転されるガソリンエンジンを用いていたが、その他にも、ディーゼルエンジン等のレシプロエンジンの他、タービンエンジンや、ジェットエンジン、ロータリエンジンなど各種内燃或いは外燃機関を用いることができる。 【0052】また、クラッチモータ30及びアシストモータ40としては、PM形(永久磁石形;Permanent Magnet type)同期電動機を用いたが、回生動作及び力行動作を行なわせるのであれば、その他にも、VR形(可変リラクタンス形;VariableReluctance type)同期電動機や、バーニアモータや、直流電動機や、誘導電動機や、超電導モータなどを用いることができる。また、力行動作のみ行なわせるのであれば、直流モータやステップモータなどを用いることもできる。 【0053】クラッチモータ30における、インナロータ34,アウタロータ32と外部の回転軸との関係は、逆にすることも可能である。また、アウタロータ32とインナロータ34の代わりに、互いに対向する円盤状のロータを用いるようにしても良い。 【0054】第1及び第2の駆動回路91,92としては、トランジスタインバータを用いていたが、その他にも、IGBT(絶縁ゲートバイポーラモードトランジスタ;Insulated Gate Bipolar mode Transistor)インバータや、サイリスタインバータや、電圧PWM(パルス幅変調;Pulse Width Modulation)インバータや、方形波インバータ(電圧形インバータ,電流形インバータ)や、共振インバータなどが用いることができる。 【0055】二次電池であるバッテリ94としてはPbバッテリ,NiMHバッテリ,Liバッテリなどを用いることができるが、バッテリ94に代えてキャパシタを用いることもできる。 【0056】以上の各実施例では、動力伝達装置を車輌に搭載する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、2つの出力軸を有するものであれば、船舶,航空機などの交通手段や、その他各種産業機械などに搭載することも可能である。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003207 【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
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| 【出願日】 |
平成10年(1998)5月13日 |
| 【代理人】 |
【弁理士】 【氏名又は名称】下出 隆史 (外2名)
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| 【公開番号】 |
特開平11−332019 |
| 【公開日】 |
平成11年(1999)11月30日 |
| 【出願番号】 |
特願平10−150580 |
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