トップ :: B 処理操作 運輸 :: B60 車両一般




【発明の名称】 動力出力装置およびその制御方法
【発明者】 【氏名】永松 茂隆

【要約】 【課題】原動機から出力される動力を効率よく駆動軸に出力する装置を提供する。

【解決手段】エンジンの出力軸と駆動軸と第1のモータの回転軸をプラネタリギヤにより結合する。さらに、第2のモータを用意し、その回転軸をエンジンの出力軸に結合可能とする第1のクラッチと、駆動軸に結合可能とする第2のクラッチを備える。これらの各要素の運転を制御する制御装置は、駆動軸の回転数がエンジンの出力軸の回転数よりも大きいときは第1クラッチをオン/第2クラッチをオフとし、逆の場合には第1クラッチをオフ/第2クラッチをオンとする。こうすることにより、エンジンから出力された動力を第1および第2のモータ間で循環させることなく駆動軸から出力可能となり、装置の運転効率を向上することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 駆動軸に動力を出力する動力出力装置であって、出力軸を有する原動機と、前記出力軸に結合された第1の軸と、前記駆動軸に結合された第2の軸と、該第1の軸および第2の軸とは異なる第3の軸を有し、これらのうち2つの軸に入出力される動力が決定されると残余の一つの軸に入出力される動力が決定される動力伝達手段と、前記第3の軸に結合された第1の電動機と、前記出力軸および前記駆動軸とは異なる回転軸を有し、該回転軸を介して動力のやり取りをする第2の電動機と、前記回転軸と前記出力軸との機械的な接続と該接続の解除とを行なう第1の接続手段と、前記回転軸と前記駆動軸との機械的な接続と該接続の解除とを行なう第2の接続手段とを備える動力出力装置。
【請求項2】 前記第1の接続手段および前記第2の接続手段は、共にクラッチにより構成されてなる請求項1記載の動力出力装置。
【請求項3】 前記駆動軸と前記出力軸とを同軸上に配置してなる請求項1または2記載の動力出力装置。
【請求項4】 前記第2の電動機の回転軸を前記駆動軸および前記出力軸と同軸上に配置してなる請求項3記載の動力出力装置。
【請求項5】 前記原動機から前記第2の電動機,前記第1の電動機の順に配置してなる請求項4記載の動力出力装置。
【請求項6】 前記第2の電動機と前記第1の電動機との間に前記第1の接続手段および前記第2の接続手段を配置してなる請求項5記載の動力出力装置。
【請求項7】 前記第2の電動機の回転軸を前記駆動軸および前記出力軸とは異なる軸上に配置してなる請求項3記載の動力出力装置。
【請求項8】 前記出力軸と前記駆動軸とを異なる軸上に配置してなる請求項1または2記載の動力出力装置。
【請求項9】 前記第2の電動機の回転軸を前記出力軸と同軸上に配置してなる請求項8記載の動力出力装置。
【請求項10】 前記第2の電動機の回転軸を前記駆動軸と同軸上に配置してなる請求項8記載の動力出力装置。
【請求項11】 前記第1の接続手段は、前記第2の電動機の回転軸の回転数を変速して前記出力軸に伝達する変速手段を備える請求項1記載の動力出力装置。
【請求項12】 前記第2の接続手段は、前記第2の電動機の回転軸の回転数を変速して前記駆動軸に伝達する変速機を備える請求項1または11記載の動力出力装置。
【請求項13】 前記原動機,前記第1の電動機,前記第2の電動機および前記駆動軸の運転状態または所定の指示に基づいて前記第1の接続手段および前記第2の接続手段を制御する接続制御手段を備える請求項1ないし12いずれか記載の動力出力装置。
【請求項14】 請求項13記載の動力出力装置であって、前記接続制御手段は、前記運転状態として前記出力軸の回転速度が前記駆動軸の回転速度より大きい状態にあるとき、前記第2の電動機の回転軸と前記出力軸との接続が解除されるよう前記第1の接続手段を制御すると共に該回転軸と前記駆動軸とが接続されるよう前記第2の接続手段を制御し、前記運転状態として前記出力軸の回転速度が前記駆動軸の回転速度より小さい状態にあるとき、前記第2の電動機の回転軸と前記出力軸とが接続されるよう前記第1の接続手段を制御すると共に該回転軸と前記駆動軸との接続が解除されるよう前記第2の接続手段を制御する手段である動力出力装置。
【請求項15】 前記接続制御手段は、前記第2の電動機の回転軸と前記駆動軸とが接続されると共に該回転軸と前記出力軸とが接続されるよう前記第1の接続手段および前記第2の接続手段を制御する手段である請求項13記載の動力出力装置。
【請求項16】 前記運転状態は、前記駆動軸の回転数を前記原動機の出力軸の回転数としたとき、該原動機を効率よく運転できる所定範囲内の状態である請求項15記載の動力出力装置。
【請求項17】 前記接続制御手段は、前記第2の電動機の回転軸と前記駆動軸との接続が解除されると共に該回転軸と前記出力軸との接続が解除されるよう前記第1の接続手段および前記第2の接続手段を制御する手段である請求項13記載の動力出力装置。
【請求項18】 前記運転状態は、駆動軸に出力すべきトルクを前記第2の電動機によるトルクの増減を伴わずに出力可能な状態に、前記原動機から出力されるトルクを設定したとき、該原動機を効率よく運転できる所定範囲内の状態である請求項17記載の動力出力装置。
【請求項19】 前記運転状態は、前記第2の電動機の異常を検出した状態である請求項17記載の動力出力装置。
【請求項20】 前記接続制御手段により、前記第2の電動機の回転軸が前記出力軸または前記駆動軸のいずれか一方に接続されているとき、前記原動機から出力される動力をトルク変換して前記駆動軸に出力するよう前記第1の電動機および前記第2の電動機を駆動制御する駆動制御手段を備える請求項13記載の動力出力装置。
【請求項21】 請求項13ないし20いずれか記載の動力出力装置であって、前記第1の電動機による動力のやり取りの際に消費または回生される電力の充放電と、前記第2の電動機による動力のやり取りの際に消費または回生される電力の充放電とが可能な蓄電手段と、操作者の指示に基づいて前記駆動軸に出力すべき目標動力を設定する目標動力設定手段と、前記目標動力設定手段により設定された目標動力が、前記原動機から出力される動力と前記蓄電手段によって充放電される電力とからなるエネルギにより前記駆動軸に出力されるよう前記原動機,前記第1の電動機および前記第2の電動機を駆動制御する駆動制御手段とを備える動力出力装置。
【請求項22】 請求項21記載の動力出力装置であって、前記蓄電手段の状態を検出する蓄電状態検出手段を備え、前記駆動制御手段は、前記蓄電状態検出手段により検出された前記蓄電手段の状態が所定範囲内の状態となるよう前記原動機,前記第1の電動機および前記第2の電動機を駆動制御する手段である動力出力装置。
【請求項23】 請求項21記載の動力出力装置であって、前記接続制御手段は、操作者の所定の指示があったとき又は前記目標動力設定手段により設定された目標動力が所定範囲の動力であるとき、前記第2の電動機の回転軸と前記出力軸との接続が解除されるよう前記第1の接続手段を制御すると共に、該回転軸と前記駆動軸とが接続されるよう前記第2の接続手段を制御する手段であり、前記駆動制御手段は、前記蓄電手段から放電される電力を用いて前記第2の電動機を駆動制御する手段である動力出力装置。
【請求項24】 請求項21記載の動力出力装置であって、前記接続制御手段は、操作者の所定の指示があったとき又は前記目標動力設定手段により設定された目標動力が所定範囲の動力であるとき、前記第2の電動機の回転軸と前記出力軸とが接続されるよう前記第1の接続手段を制御すると共に、該回転軸と前記駆動軸との接続が解除されるよう前記第2の接続手段を制御する手段であり、前記駆動制御手段は、前記蓄電手段から放電される電力を用いて、前記第1の電動機から駆動軸に動力を出力するよう該第1の電動機を制御すると共に、該動力の出力に伴って前記原動機の出力軸に作用するトルクを打ち消すよう前記第2の電動機を制御する手段である動力出力装置。
【請求項25】 請求項21記載の動力出力装置であって、前記接続制御手段は、操作者の所定の指示があったとき又は前記目標動力設定手段により設定された目標動力が所定範囲の動力であるとき、前記第2の電動機の回転軸と前記出力軸とが接続されるよう前記第1の接続手段を制御すると共に、該回転軸と前記駆動軸とが接続されるよう前記第2の接続手段を制御する手段であり、前記駆動制御手段は、前記原動機への燃料供給および点火の制御を停止すると共に、前記蓄電手段から放電される電力を用いて前記原動機をモータリングしながら前記駆動軸に動力を出力するよう前記第2の電動機を制御する手段である動力出力装置。
【請求項26】 所定の始動指示がなされたとき、前記原動機のモータリングに伴って該原動機への燃料供給および点火を制御する原動機始動制御手段を備える請求項25記載の動力出力装置。
【請求項27】 前記駆動制御手段は、前記原動機始動制御手段による前記原動機の始動に伴って該原動機から出力される動力を打ち消すよう前記第2の電動機を制御する手段である請求項26記載の動力出力装置。
【請求項28】 前記目標動力設定手段は、前記駆動軸を前記原動機の出力軸の回転方向とは逆向きに回転させる動力を目標動力として設定する手段である請求項21ないし26いずれか記載の動力出力装置。
【請求項29】 請求項13記載の動力出力装置であって、所定の逆転指示がなされたとき、前記接続制御手段を介して前記第2に電動機の回転軸と前記出力軸との接続が解除され該回転軸と前記駆動軸とが接続されるよう前記第1および前記第2の接続手段を制御すると共に、前記第2の電動機から前記駆動軸に前記原動機の出力軸の回転方向とは逆向きに回転する動力を出力するよう該第2の電動機を制御する逆転制御手段を備える動力出力装置。
【請求項30】 請求項13記載の動力出力装置であって、所定の逆転指示がなされたとき、前記接続制御手段を介して前記第2の電動機の回転軸と前記出力軸とが接続され該回転軸と前記駆動軸との接続が解除されるよう前記第1および前記第2の接続手段を制御すると共に、前記第1の電動機から前記駆動軸に前記原動機の出力軸の回転方向とは逆向きに回転する動力を出力するよう該第1の電動機を制御し、該駆動軸に出力される動力の反力として前記出力軸に作用するトルクを打ち消すよう前記第2の電動機を制御する逆転制御手段を備える動力出力装置。
【請求項31】 請求項13記載の動力出力装置であって、所定の始動指示がなされたとき、前記接続制御手段を介して前記第2の電動機の回転軸と前記出力軸とが接続され該回転軸と前記駆動軸との接続が解除されるよう前記第1および第2の接続手段を制御すると共に、前記原動機をモータリングするよう前記第2の電動機を制御し、該原動機のモータリングに伴って該原動機への燃料供給および点火を制御する原動機始動制御手段を備える動力出力装置。
【請求項32】 請求項13記載の動力出力装置であって、所定の始動指示がなされたとき、前記接続制御手段を介して前記第2の電動機の回転軸と前記出力軸との接続が解除され該回転軸と前記駆動軸とが接続されるよう前記第1および第2の接続手段を制御すると共に、該回転軸が回転しないよう該第2の電動機を制御し、前記原動機をモータリングするよう前記第1の電動機を制御し、更に、該原動機のモータリングに伴って該原動機への燃料供給および点火を制御する原動機始動制御手段を備える動力出力装置。
【請求項33】 請求項13記載の動力出力装置であって、前記第2の電動機の回転軸と前記出力軸との接続が解除され該回転軸と前記駆動軸とが接続された状態で前記第2の電動機から前記駆動軸に動力を出力している際に所定の始動指示がなされたとき、前記原動機をモータリングするよう前記第1の電動機を制御すると共に、該原動機のモータリングに伴って該原動機への燃料供給および点火を制御する原動機始動制御手段を備える動力出力装置。
【請求項34】 前記原動機始動手段は、前記原動機のモータリングに要するトルクの反力として前記第1の電動機から前記駆動軸に出力されるトルクを打ち消すよう前記第2の電動機を制御する手段である請求項33記載の動力出力装置。
【請求項35】 請求項13記載の動力出力装置であって、前記第2の電動機の回転軸と前記出力軸とが接続され該回転軸と前記駆動軸との接続が解除された状態で前記第2の電動機により前記出力軸を固定すると共に前記第1の電動機から前記駆動軸に動力を出力している際に所定の始動指示がなされたとき、前記原動機をモータリングするよう前記第2の電動機を制御し、該原動機のモータリングに伴って該原動機への燃料供給および点火を制御する原動機始動制御手段を備える動力出力装置。
【請求項36】 前記原動機始動手段は、前記原動機のモータリングに要するトルクの反力として前記駆動軸に出力されるトルクを打ち消すよう前記第1の電動機を制御する手段である請求項35記載の動力出力装置。
【請求項37】 出力軸を有する原動機と、前記出力軸に結合された第1の軸と、前記駆動軸に結合された第2の軸と、該第1の軸および第2の軸とは異なる第3の軸を有し、これらのうち2つの軸に入出力される動力が決定されると残余の一つの軸に入出力される動力が決定される動力伝達手段と、前記第3の軸に結合された第1の電動機と、前記出力軸および前記駆動軸とは異なる回転軸を有し、該回転軸を介して動力のやり取りをする第2の電動機と、前記回転軸と前記出力軸との機械的な接続と該接続の解除とを行なう第1の接続手段と、前記回転軸と前記駆動軸との機械的な接続と該接続の解除とを行なう第2の接続手段とを備え、前記駆動軸に動力を出力する動力出力装置の制御方法であって、前記出力軸の回転速度が前記駆動軸の回転速度より大きいとき、前記第2の電動機の回転軸と前記出力軸との接続が解除されるよう前記第1の接続手段を制御すると共に該回転軸と前記駆動軸とが接続されるよう前記第2の接続手段を制御し、前記出力軸の回転速度が前記駆動軸の回転速度より小さいとき、前記回転軸と前記出力軸とが接続されるよう前記第1の接続手段を制御すると共に該回転軸と前記駆動軸との接続が解除されるよう前記第2の接続手段を制御する動力出力装置の制御方法。
【請求項38】 出力軸を有する原動機と、前記出力軸に結合された第1の軸と、前記駆動軸に結合された第2の軸と、該第1の軸および第2の軸とは異なる第3の軸を有し、これらのうち2つの軸に入出力される動力が決定されると残余の一つの軸に入出力される動力が決定される動力伝達手段と、前記第3の軸に結合された第1の電動機と、前記出力軸および前記駆動軸とは異なる回転軸を有し、該回転軸を介して動力のやり取りをする第2の電動機と、前記回転軸と前記出力軸との機械的な接続と該接続の解除とを行なう第1の接続手段と、前記回転軸と前記駆動軸との機械的な接続と該接続の解除とを行なう第2の接続手段とを備え、前記駆動軸に動力を出力する動力出力装置の制御方法であって、前記駆動軸の回転数を前記原動機の出力軸の回転数とすると該原動機が効率よく運転できる所定範囲内の状態となるとき、前記第2の電動機の回転軸と前記駆動軸とが接続されると共に該回転軸と前記出力軸とが接続されるよう前記第1の接続手段および前記第2の接続手段を制御する動力出力装置の制御方法。
【請求項39】 請求項37または38記載の動力出力装置の制御方法であって、前記動力出力装置は、前記第1の電動機による動力のやり取りの際に消費または回生される電力の充放電と、前記第2の電動機による動力のやり取りの際に消費または回生される電力の充放電とが可能な蓄電手段を備え、前記動力出力装置の制御方法は、さらに、操作者の指示に基づいて前記駆動軸に出力すべき目標動力を設定する目標動力設定ステップと、該設定された目標動力が、前記原動機から出力される動力と前記蓄電手段によって充放電される電力とからなるエネルギにより前記駆動軸に出力されるよう前記原動機,前記第1の電動機および前記第2の電動機を駆動制御する駆動制御ステップとを備える動力出力装置に制御方法。
【請求項40】 前記駆動制御ステップは、前記蓄電手段の状態を検出し、該蓄電手段の状態が所定範囲内の状態となるよう前記原動機,前記第1の電動機および前記第2の電動機を駆動制御するステップである請求項39記載の動力出力装置の制御方法。
【請求項41】 出力軸を有する原動機と、前記出力軸に結合された第1の軸と、前記駆動軸に結合された第2の軸と、該第1の軸および第2の軸とは異なる第3の軸を有し、これらのうち2つの軸に入出力される動力が決定されると残余の一つの軸に入出力される動力が決定される動力伝達手段と、前記第3の軸に結合された第1の電動機と、前記出力軸および前記駆動軸とは異なる回転軸を有し、該回転軸を介して動力のやり取りをする第2の電動機と、前記回転軸と前記出力軸との機械的な接続と該接続の解除とを行なう第1の接続手段と、前記回転軸と前記駆動軸との機械的な接続と該接続の解除とを行なう第2の接続手段とを備え、前記駆動軸に動力を出力する動力出力装置の制御方法であって、前記第1の接続手段による接続か前記第2の接続手段による接続かのいずれか一方を行なうよう該第1の接続手段および該第2の接続手段を制御し、前記原動機から出力される動力をトルク変換して前記駆動軸に出力するよう前記第1の電動機および前記第2の電動機を駆動制御する動力出力装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、動力出力装置およびその制御方法に関し、詳しくは、原動機から出力される動力を効率的に駆動軸に出力する動力出力装置およびその制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の動力出力装置としては、車両に搭載される装置であって、原動機の出力軸と電動機のロータに結合された駆動軸とを電磁継手により電磁的に結合して原動機の動力を駆動軸に出力するものが提案されている(例えば、特開昭53−133814号公報等)。この動力出力装置では、電動機により車両の走行を開始し、電動機の回転数が所定の回転数になったら、電磁継手へ励磁電流を与えて原動機をクランキングすると共に原動機への燃料供給や火花点火を行なって原動機を始動する。原動機が始動した後は、原動機からの動力を電磁継手の電磁的な結合により駆動軸に出力して車両を走行させる。電動機は、電磁継手により駆動軸に出力される動力では駆動軸に必要な動力が不足する場合に駆動され、この不足分を補う。電磁継手は、駆動軸に動力を出力している際、その電磁的な結合の滑りに応じた電力を回生する。この回生された電力は、走行の開始の際に用いられる電力としてバッテリに蓄えられたり、駆動軸の動力の不足分を補う電動機の動力として用いられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような従来の動力出力装置は、駆動軸の回転数が大きくなると、装置全体の効率が低下する場合を生じるという問題があった。上述の動力出力装置では、駆動軸の回転数が大きくなったときでも電磁継手により駆動軸に動力を出力しようとすると、原動機の回転数を駆動軸の回転数以上にしなければならない。原動機の効率のよい運転ポイントの領域は、その回転数と負荷トルクとにより範囲が定まっているのが通常であるから、その範囲を超える回転数で駆動軸が回転しているときには、原動機は効率のよい運転ポイントの範囲外で運転しなければならず、この結果、装置全体の効率が低下することとなる。
【0004】本出願人は、こうした問題に対する解決策の1つとして、特開平9−308012号において、電磁継手に代えて発電機および該発電機の回転軸、原動機の出力軸、電動機を有する駆動軸に結合されるプラネタリギヤを用いた装置を提案している。これは、原動機から出力される動力をプラネタリギヤで2つに分配し、一部を発電機により電力に変換した上で、この電力を用いて駆動軸に備えられた電動機を力行して要求された動力を駆動軸から出力するものである。駆動軸の回転数が大きくなったときには、逆に発電機をモータとして力行運転し、プラネタリギヤの特性を活かして駆動軸の回転数を増速し、駆動軸の回転数より小さな回転数で原動機を運転可能とする。このとき発電機を力行するために必要な電力は電動機を発電機として機能させることにより賄われる。
【0005】しかし、この提案の装置では、駆動軸の回転数が原動機の回転数より大きくなったとき、従来の装置ほどではないにしても運転効率が低くなってしまうという課題があった。上述した通り、駆動軸の回転数が原動機の回転数より大きくなったときには、駆同軸に結合された電動機により回生された電力を用いて発電機を力行する。発電機から駆同軸に出力された動力の一部は再び電動機により電力として回生される。つまり、一部の動力は発電機と電動機の間で循環する。一般に機械的な動力と電力との変換には、装置の変換効率によるロスが生じる。従って、上述した循環する動力の存在は、装置の運転効率を低下させることになるのである。
【0006】本発明の動力出力装置およびその制御方法は、こうした問題点を解決し、原動機から出力される動力をより効率よく駆動軸に出力する装置およびこうした装置の制御方法を提案することを目的の一つとする。また、本発明の動力出力装置およびその制御方法は、駆動軸の回転数が原動機の回転数より大きくなったときでも駆動軸に効率よく動力を出力する装置およびその装置の制御方法を提案することを目的の一つとする。
【0007】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】本発明の動力出力装置は、上述の目的の少なくとも一部を達成するために次の手段を講じた。
【0008】本発明の動力出力装置は、駆動軸に動力を出力する動力出力装置であって、出力軸を有する原動機と、前記出力軸に結合された第1の軸と、前記駆動軸に結合された第2の軸と、該第1の軸および第2の軸とは異なる第3の軸を有し、これらのうち2つの軸に入出力される動力が決定されると残余の一つの軸に入出力される動力が決定される動力伝達手段と、前記第3の軸に結合された第1の電動機と、前記出力軸および前記駆動軸とは異なる回転軸を有し、該回転軸を介して動力のやり取りをする第2の電動機と、前記回転軸と前記出力軸との機械的な接続と該接続の解除とを行なう第1の接続手段と、前記回転軸と前記駆動軸との機械的な接続と該接続の解除とを行なう第2の接続手段とを備えることを要旨とする。
【0009】本発明の動力出力装置は、第2の電動機の回転軸を原動機の出力軸に接続したり解除したりすることができ、また駆動軸に接続したり解除したりすることができる。この結果、上述した動力の循環が生じることを回避することが可能となり、装置全体の効率を向上させることができる。本発明の動力出力装置は、第2の電動機を原動機の出力軸に結合した場合において、第1の電動機で回生した電力を第2の電動機に供給する運転モードと、第2の電動機で回生した電力を第1の電動機に供給する運転モードとを採ることができる。また、第2の電動機を駆同軸に結合した場合においても同様に2つの運転モードを採ることができる。このように本発明の動力出力装置は、合計4つの運転モードを採ることができる。従って、これらの運転モードの中から動力の循環が生じない運転モードを選択することにより動力の循環を回避して装置全体の効率を向上させることが可能となるのである。
【0010】こうした本発明の動力出力装置において、前記第1の接続手段および前記第2の接続手段は、共にクラッチにより構成されてなるものとすることもできる。こうすれば、簡易な構成で各接続手段を実現することができる。
【0011】また、本発明の動力出力装置において、前記駆動軸と前記出力軸とを同軸上に配置してなるものすることもでき、この場合、さらに、前記第2の電動機の回転軸を前記駆動軸および前記出力軸と同軸上に配置してなるものとすることもできる。こうすれば、動力出力装置を直線上に形成されたスペースに設置するのに有利な配置とすることができる。
【0012】また、駆動軸と出力軸と第2の電動機の回転軸とを同軸上に配置してなる動力出力装置において、前記原動機から前記第2の電動機,前記第1の電動機の順に配置してなるものとすることもでき、この場合、さらに、前記第2の電動機と前記第1の電動機との間に前記第1の接続手段および前記第2の接続手段を配置してなるものとすることもできる。
【0013】第2の電動機を駆動軸に接続した状態において、原動機の運転を停止し、第2の電動機による動力のみを用いて駆動するために、一般に第2の電動機は第1の電動機より大きなトルク出力が可能なものが必要となる。電動機のトルク出力は、ロータの軸方向の長さに比例し直径の2乗に比例するから、第2の電動機の大きさは第1の電動機より大きくなる。一方、原動機に内燃機関を用いた場合には、同じエネルギを出力するのに必要な大きさは、原動機の方が電動機より大きくなる。したがって、原動機と第1の電動機と第2の電動機とを大きさの順に並べると、原動機,第2の電動機,第1の電動機の順になる。このような大きさの順に並べることにより、動力出力装置をまとまりのあるものとすることができ、車両や船等に搭載する際の取り扱いや設置スペースを有利にすることができる。
【0014】また、第1の接続手段や第2の接続手段は、前述のようにクラッチ等により構成可能なので、第1の電動機や第2の電動機に比してその大きさが小さい。したがって、第1の接続手段と第2の接続手段とをこれらの大きな機器の間に形成されるデッドスペースに配置することも可能となり、装置全体をよりコンパクトなものとすることもできる。
【0015】なお、原動機,第2の電動機,第1の電動機の順に配置してなる動力出力装置において、第1の接続手段と第2の接続手段は種々の配置が可能である。第1の接続手段と第2の接続手段とをまとめて配置する手法として、上述の第2の電動機と第1の電動機との間に配置してもよいし、原動機と第2の電動機との間に配置してもよい。第1の接続手段と第2の接続手段とを別々に配置する手法として、第1の接続手段を原動機と第2の電動機との間に配置すると共に第2の電動機と第1の電動機との間に配置するものとしてもよい。
【0016】また、駆動軸と出力軸と回転軸とを同軸上に配置してなる動力出力装置において、前記原動機から前記第1の電動機,前記第2の電動機の順に配置してなるものとすることもできる。この場合の第1の接続手段と第2の接続手段の配置の手法としても、前述したように、種々のものが挙げられる。このように、原動機と第1の電動機と第2の電動機の配置や第1の接続手段と第2の接続手段の配置は、動力出力装置の規模や設置するスペースなどにより定めることができ、種々の配置とすることができる。
【0017】また、本発明の動力出力装置において、前記第2の電動機の回転軸を前記駆動軸および前記出力軸とは異なる軸上に配置してなるものとすることもできる。こうすれば、各軸をすべて同軸上とするものに比して、装置の軸方向の長さを小さくすることができる。
【0018】さらに、本発明の動力出力装置において、前記出力軸と前記駆動軸とを異なる軸上に配置してなるものとすることもできる。この場合、さらに、前記第2の電動機の回転軸を前記出力軸と同軸上に配置してなるものとしたり、前記第2の電動機の回転軸を前記駆動軸と同軸上に配置してなるものとすることもできる。これらの動力出力装置も、各軸をすべて同軸上とするものに比して、装置の軸方向の長さを小さくすることができる。
【0019】また、本発明の動力出力装置において、前記第1の接続手段は前記第2の電動機の回転軸の回転数を変速して前記出力軸に伝達する変速手段を備えるものとすることもでき、前記第2の接続手段は前記第2の電動機の回転軸の回転数を変速して前記駆動軸に伝達する変速機を備えるものとすることもできる。こうすれば、回転軸の回転数を調整することができる。この結果、第2の電動機をより効率のよいポイントで運転することができ、装置の効率を向上させることができる。
【0020】これらの変形例を含め、本発明の動力出力装置は、前記原動機,前記第1の電動機,前記第2の電動機および前記駆動軸の運転状態または所定の指示に基づいて前記第1の接続手段および前記第2の接続手段を制御する接続制御手段を備えるものとすることもできる。こうすれば、第1の接続手段および第2の接続手段による接続並びにその解除を原動機,第1の電動機,第2の電動機および駆動軸の状態または所定の指示に基づいて行なうことができる。
【0021】こうした接続制御手段を備える本発明の動力出力装置において、前記接続制御手段は、前記運転状態として前記出力軸の回転速度が前記駆動軸の回転速度より大きい状態にあるとき、前記第2の電動機の回転軸と前記出力軸との接続が解除されるよう前記第1の接続手段を制御すると共に該回転軸と前記駆動軸とが接続されるよう前記第2の接続手段を制御し、前記運転状態として前記出力軸の回転速度が前記駆動軸の回転速度より小さい状態にあるとき、前記第2の電動機の回転軸と前記出力軸とが接続されるよう前記第1の接続手段を制御すると共に該回転軸と前記駆動軸との接続が解除されるよう前記第2の接続手段を制御する手段であるものとすることもできる。
【0022】動力の循環は、第2の電動機を駆動軸に接続した場合において、駆動軸の回転速度が原動機の出力軸の回転速度よりも大きいときに生じやすい。上記発明では、駆動軸の回転速度と出力軸の回転速度に応じて第2の電動機の接続状態を制御することができるため、動力の循環を低減し、装置全体の効率を向上させることができる。
【0023】また、接続制御手段を備える本発明の動力出力装置において、前記接続制御手段は、前記回転軸と前記駆動軸とが接続されると共に該回転軸と前記出力軸とが接続されるよう前記第1の接続手段および前記第2の接続手段を制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、原動機の出力軸と駆動軸とを一体的に回転させることができ、原動機から出力される動力をそのままの回転数で直接駆動軸に出力することができる。
【0024】こうした態様の動力出力装置において、前記運転状態は、前記駆動軸の回転数を前記原動機の出力軸の回転数としたとき、該原動機を効率よく運転できる所定範囲内の状態であるものとすることもできる。こうすれば、効率よく運転される原動機から出力された動力をそのままの回転数で直接駆動軸に出力することができる。
【0025】さらに、接続制御手段を備える本発明の動力出力装置において、前記接続制御手段は、前記第2の電動機の回転軸と前記駆動軸との接続が解除されると共に該回転軸と前記出力軸との接続が解除されるよう前記第1の接続手段および前記第2の接続手段を制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、駆動軸に動力を出力する系の外側に第2の電動機を置くことができる。
【0026】こうした態様の動力出力装置において、前記運転状態は、駆動軸に出力すべきトルクを前記第2の電動機によるトルクの増減を伴わずに出力可能な状態に、前記原動機から出力されるトルクを設定したとき、該原動機を効率よく運転できる所定範囲内の状態であるものとすることもできる。こうすれば、効率よく運転される原動機から出力された動力を直接駆動軸に出力することができる。また、前記運転状態は、前記第2の電動機の異常を検出した状態であるものとすることもできる。こうすれば、第2の電動機の異常を検出したときに第2の電動機の回転を停止することができる。
【0027】あるいは、接続制御手段を備える本発明の動力出力装置において、前記接続制御手段により、前記回転軸が前記出力軸または前記駆動軸のいずれか一方に接続されているとき、前記原動機から出力される動力をトルク変換して前記駆動軸に出力するよう前記第1の電動機および前記第2の電動機を駆動制御する駆動制御手段を備えるものとすることもできる。こうすれば、原動機から出力された動力を所望の動力にトルク変換して駆動軸に出力することができる。この結果、同じエネルギを出力する運転ポイントであれば原動機をより効率のよい運転ポイントで運転することができ、装置全体のエネルギ効率を向上させることができる。
【0028】また、接続制御手段を備える本発明の動力出力装置において、前記第1の電動機による動力のやり取りの際に消費または回生される電力の充放電と、前記第2の電動機による動力のやり取りの際に消費または回生される電力の充放電とが可能な蓄電手段と、操作者の指示に基づいて前記駆動軸に出力すべき目標動力を設定する目標動力設定手段と、前記目標動力設定手段により設定された目標動力が、前記原動機から出力される動力と前記蓄電手段によって充放電される電力とからなるエネルギにより前記駆動軸に出力されるよう前記原動機,前記第1の電動機および前記第2の電動機を駆動制御する駆動制御手段とを備えるものとすることもできる。
【0029】この態様の動力出力装置は、蓄電手段が、必要に応じて、第1の電動機による動力のやり取りの際に消費または回生される電力の充放電と、第2の電動機による動力のやり取りの際に消費または回生される電力の充放電とを行ない、駆動制御手段が、目標動力設定手段により、操作者の指示に基づいて駆動軸に出力すべき動力として設定された目標動力が、原動機から出力される動力と蓄電手段によって充放電される電力とからなるエネルギにより駆動軸に出力されるよう原動機,第1の電動機および第2の電動機を駆動制御する。こうした態様の動力出力装置とすれば、原動機から出力される動力と蓄電手段によって充放電される電力とからなるエネルギを所望の動力にトルク変換して駆動軸に出力することができるから、原動機から出力可能な最大の動力より大きな目標動力が設定されても、この目標動力を駆動軸に出力することができる。このため、原動機として設定可能な最大の目標動力より小さな動力しか出力することができないものでも用いることができる。この結果、装置全体を小型化することができる。
【0030】こうした蓄電手段と駆動制御手段とを備える本発明の動力出力装置において、前記蓄電手段の状態を検出する蓄電状態検出手段を備え、前記駆動制御手段は、前記蓄電状態検出手段により検出された前記蓄電手段の状態が所定範囲内の状態となるよう前記原動機,前記第1の電動機および前記第2の電動機を駆動制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、常に蓄電手段を所定範囲内の状態にすることができる。
【0031】また、蓄電手段と駆動制御手段とを備える本発明の動力出力装置において、前記接続制御手段は、操作者の所定の指示があったとき又は前記目標動力設定手段により設定された目標動力が所定範囲の動力であるとき、前記第2の電動機の回転軸と前記出力軸との接続が解除されるよう前記第1の接続手段を制御すると共に、該回転軸と前記駆動軸とが接続されるよう前記第2の接続手段を制御する手段であり、前記駆動制御手段は、前記蓄電手段から放電される電力を用いて前記第2の電動機を駆動制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、第2の電動機から出力される動力のみで駆動軸を回転駆動することができる。
【0032】あるいは、蓄電手段と駆動制御手段とを備える本発明の動力出力装置において、前記接続制御手段は、操作者の所定の指示があったとき又は前記目標動力設定手段により設定された目標動力が所定範囲の動力であるとき、前記第2の電動機の回転軸と前記出力軸とが接続されるよう前記第1の接続手段を制御すると共に、該回転軸と前記駆動軸との接続が解除されるよう前記第2の接続手段を制御する手段であり、前記駆動制御手段は、前記蓄電手段から放電される電力を用いて、前記第1の電動機から駆動軸に動力を出力するよう該第1の電動機を制御すると共に、該動力の出力に伴って前記原動機の出力軸に作用するトルクを打ち消すよう前記第2の電動機を制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、第1の電動機から出力される動力で駆動軸を回転駆動することができる。
【0033】さらに、蓄電手段と駆動制御手段とを備える本発明の動力出力装置において、前記接続制御手段は、操作者の所定の指示があったとき又は前記目標動力設定手段により設定された目標動力が所定範囲の動力であるとき、前記第2の電動機の回転軸と前記出力軸とが接続されるよう前記第1の接続手段を制御すると共に、該回転軸と前記駆動軸とが接続されるよう前記第2の接続手段を制御する手段であり、前記駆動制御手段は、前記原動機への燃料供給および点火の制御を停止すると共に、前記蓄電手段から放電される電力を用いて前記原動機をモータリングしながら前記駆動軸に動力を出力するよう前記第2の電動機を制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、原動機を強制的に回転させながら第2の電動機により駆動軸に動力を出力することができる。
【0034】この原動機をモータリングする態様の本発明の動力出力装置において、所定の始動指示がなされたとき、前記原動機のモータリングに伴って該原動機への燃料供給および点火を制御する原動機始動制御手段を備えるものとすることもできる。こうすれば、原動機を始動することができ、原動機と第2の電動機とから駆動軸に動力を出力する態様に容易に移行することができる。
【0035】そして、この態様の動力出力装置において、前記駆動制御手段は、前記原動機始動制御手段による前記原動機の始動に伴って該原動機から出力される動力を打ち消すよう前記第2の電動機を制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、原動機の始動の際に生じる駆動軸へ出力するトルクの変動を小さくしたり、なくしたりすることができる。
【0036】また、蓄電手段と駆動制御手段とを備える本発明の動力出力装置において、前記目標動力設定手段は、前記駆動軸を前記原動機の出力軸の回転方向とは逆向きに回転させる動力を目標動力として設定する手段であるものとすることもできる。こうすれば、駆動軸を原動機の出力軸の回転方向とは逆向に回転させることができる。
【0037】また、接続制御手段を備える本発明の動力出力装置において、所定の逆転指示がなされたとき、前記接続制御手段を介して前記第2の電動機の回転軸と前記出力軸との接続が解除され前記回転軸と前記駆動軸とが接続されるよう前記第1および前記第2の接続手段を制御すると共に、前記第2の電動機から前記駆動軸に前記原動機の出力軸の回転方向とは逆向きに回転する動力を出力するよう該第2の電動機を制御する逆転制御手段を備えるものとすることもできる。こうすれば、第2の電動機により駆動軸を原動機の出力軸の回転方向とは逆向きに回転させることができる。
【0038】接続制御手段を備える本発明の動力出力装置において、所定の逆転指示がなされたとき、前記接続制御手段を介して前記第2の電動機の回転軸と前記出力軸とが接続され該回転軸と前記駆動軸との接続が解除されるよう前記第1および前記第2の接続手段を制御すると共に、前記第1の電動機から前記駆動軸に前記原動機の出力軸の回転方向とは逆向きに回転する動力を出力するよう該第2の電動機を制御し、該駆動軸に出力される動力の反力として前記出力軸に作用するトルクを打ち消すよう前記第2の電動機を制御する逆転制御手段を備えるものとすることもできる。こうすれば、第1の電動機により駆動軸を原動機の出力軸の回転方向とは逆向きに回転させることができる。
【0039】接続制御手段を備える本発明の動力出力装置において、所定の始動指示がなされたとき、前記接続制御手段を介して前記第2の電動機の回転軸と前記出力軸とが接続され該回転軸と前記駆動軸との接続が解除されるよう前記第1および第2の接続手段を制御すると共に、前記原動機をモータリングするよう前記第2の電動機を制御し、該原動機のモータリングに伴って該原動機への燃料供給および点火を制御する原動機始動制御手段を備えるものとすることもできる。こうすれば、原動機を始動するための電動機を別個に設けることなく、第2の電動機により原動機を始動することができる。
【0040】接続制御手段を備える本発明の動力出力装置において、所定の始動指示がなされたとき、前記接続制御手段を介して前記第2の電動機の回転軸と前記出力軸との接続が解除され該回転軸と前記駆動軸とが接続されるよう前記第1および第2の接続手段を制御すると共に、前記回転軸が回転しないよう該第2の電動機を制御し、前記原動機をモータリングするよう前記第1の電動機を制御し、更に、該原動機のモータリングに伴って該原動機への燃料供給および点火を制御する原動機始動制御手段を備えるものとすることもできる。こうすれば、原動機を始動するための電動機を別個に設けることなく、第1の電動機および第2の電動機により原動機を始動することができる。
【0041】接続制御手段を備える本発明の動力出力装置において、前記第2の電動機の回転軸と前記出力軸との接続が解除され該回転軸と前記駆動軸とが接続された状態で前記第2の電動機から前記駆動軸に動力を出力している際に所定の始動指示がなされたとき、前記原動機をモータリングするよう前記第1の電動機を制御すると共に、該原動機のモータリングに伴って該原動機への燃料供給および点火を制御する原動機始動制御手段を備えるものとすることもできる。こうすれば、第2の電動機により駆動軸を駆動している最中でも原動機を始動することができる。もとより、原動機を始動するための電動機を別個に設ける必要がない。
【0042】この態様の動力出力装置において、前記原動機始動手段は、前記原動機のモータリングに要するトルクの反力として前記第1の電動機から前記駆動軸に出力されるトルクを打ち消すよう前記第2の電動機を制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、駆動軸に生じるトルク変動をより小さくすることができる。
【0043】接続制御手段を備える本発明の動力出力装置において、前記第2の電動機の回転軸と前記出力軸とが接続され前記回転軸と前記駆動軸との接続が解除された状態で前記第2の電動機により前記出力軸を固定すると共に前記第1の電動機から前記駆動軸に動力を出力している際に所定の始動指示がなされたとき、前記原動機をモータリングするよう前記第2の電動機を制御し、該原動機のモータリングに伴って該原動機への燃料供給および点火を制御する原動機始動制御手段を備えるものとすることもできる。こうすれば、第1の電動機により駆動軸を駆動している最中でも原動機を始動することができる。もとより、原動機を始動するための電動機を別個に設ける必要がない。
【0044】この態様の動力出力装置において、前記原動機始動手段は、前記原動機のモータリングに要するトルクの反力として前記駆動軸に出力されるトルクを打ち消すよう前記第1の電動機を制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、駆動軸に生じるトルク変動をより小さくすることができる。
【0045】本発明の第1の動力出力装置の制御方法は、出力軸を有する原動機と、前記出力軸に結合された第1の軸と、前記駆動軸に結合された第2の軸と、該第1の軸および第2の軸とは異なる第3の軸を有し、これらのうち2つの軸に入出力される動力が決定されると残余の一つの軸に入出力される動力が決定される動力伝達手段と、前記第3の軸に結合された第1の電動機と、前記出力軸および前記駆動軸とは異なる回転軸を有し、該回転軸を介して動力のやり取りをする第2の電動機と、前記回転軸と前記出力軸との機械的な接続と該接続の解除とを行なう第1の接続手段と、前記回転軸と前記駆動軸との機械的な接続と該接続の解除とを行なう第2の接続手段とを備え、前記駆動軸に動力を出力する動力出力装置の制御方法であって、前記出力軸の回転速度が前記駆動軸の回転速度より大きいとき、前記第2の電動機の回転軸と前記出力軸との接続が解除されるよう前記第1の接続手段を制御すると共に該回転軸と前記駆動軸とが接続されるよう前記第2の接続手段を制御し、前記出力軸の回転速度が前記駆動軸の回転速度より小さいとき、前記回転軸と前記出力軸とが接続されるよう前記第1の接続手段を制御すると共に該回転軸と前記駆動軸との接続が解除されるよう前記第2の接続手段を制御することを要旨とする。
【0046】本発明の第2の動力出力装置の制御方法は、出力軸を有する原動機と、前記出力軸に結合された第1の軸と、前記駆動軸に結合された第2の軸と、該第1の軸および第2の軸とは異なる第3の軸を有し、これらのうち2つの軸に入出力される動力が決定されると残余の一つの軸に入出力される動力が決定される動力伝達手段と、前記第3の軸に結合された第1の電動機と、前記出力軸および前記駆動軸とは異なる回転軸を有し、該回転軸を介して動力のやり取りをする第2の電動機と、前記回転軸と前記出力軸との機械的な接続と該接続の解除とを行なう第1の接続手段と、前記回転軸と前記駆動軸との機械的な接続と該接続の解除とを行なう第2の接続手段とを備え、前記駆動軸に動力を出力する動力出力装置の制御方法であって、前記駆動軸の回転数を前記原動機の出力軸の回転数とすると該原動機が効率よく運転できる所定範囲内の状態となるとき、前記第2の電動機の回転軸と前記駆動軸とが接続されると共に該回転軸と前記出力軸とが接続されるよう前記第1の接続手段および前記第2の接続手段を制御することを要旨とする。
【0047】こうした第1または第2の動力出力装置の制御方法において、前記動力出力装置は、前記第1の電動機による動力のやり取りの際に消費または回生される電力の充放電と、前記第2の電動機による動力のやり取りの際に消費または回生される電力の充放電とが可能な蓄電手段を備え、前記動力出力装置の制御方法は、さらに、操作者の指示に基づいて前記駆動軸に出力すべき目標動力を設定する目標動力設定ステップと、該設定された目標動力が、前記原動機から出力される動力と前記蓄電手段によって充放電される電力とからなるエネルギにより前記駆動軸に出力されるよう前記原動機,前記第1の電動機および前記第2の電動機を駆動制御する駆動制御ステップとを備えるものとすることもできる。
【0048】この態様の制御方法によれば、原動機から出力される動力と蓄電手段によって充放電される電力とからなるエネルギを所望の動力にトルク変換して駆動軸に出力することができるから、原動機から出力可能な最大の動力より大きな目標動力が設定されても、この目標動力を駆動軸に出力することができる。このため、原動機として設定可能な最大の目標動力より小さな動力しか出力することができないものでも用いることができる。こうした制御方法において、さらに、前記駆動制御ステップは、前記蓄電手段の状態を検出し、該蓄電手段の状態が所定範囲内の状態となるよう前記原動機,前記第1の電動機および前記第2の電動機を駆動制御するステップであるものとすることもできる。こうすれば、常に蓄電手段を所定範囲内の状態にすることができる。
【0049】本発明の第3の動力出力装置の制御方法は、出力軸を有する原動機と、前記出力軸に結合された第1の軸と、前記駆動軸に結合された第2の軸と、該第1の軸および第2の軸とは異なる第3の軸を有し、これらのうち2つの軸に入出力される動力が決定されると残余の一つの軸に入出力される動力が決定される動力伝達手段と、前記第3の軸に結合された第1の電動機と、前記出力軸および前記駆動軸とは異なる回転軸を有し、該回転軸を介して動力のやり取りをする第2の電動機と、前記回転軸と前記出力軸との機械的な接続と該接続の解除とを行なう第1の接続手段と、前記回転軸と前記駆動軸との機械的な接続と該接続の解除とを行なう第2の接続手段とを備え、前記駆動軸に動力を出力する動力出力装置の制御方法であって、前記第1の接続手段による接続か前記第2の接続手段による接続かのいずれか一方を行なうよう該第1の接続手段および該第2の接続手段を制御し、前記原動機から出力される動力をトルク変換して前記駆動軸に出力するよう前記第1の電動機および前記第2の電動機を駆動制御することを要旨とする。
【0050】
【発明の実施の形態】A.構成以下、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。図1は本発明の第1の実施例としての動力出力装置20の概略構成を示す構成図である。図示するように、この車両には、動力源であるエンジン50としてガソリンにより運転されるガソリンエンジンが備えられている。このエンジン50は、吸気系から吸入した空気と燃料噴射弁51から噴射されたガソリンとの混合気を燃焼室52に吸入し、この混合気の爆発により押し下げられるピストン54の運動をクランクシャフト56の回転運動に変換する。点火プラグ62は、イグナイタ58からディストリビュータ60を介して導かれた高電圧によって電気火花を形成し、混合気はその電気火花によって点火されて爆発燃焼する。
【0051】このエンジン50の運転は、電子制御ユニット(以下、EFIECUと呼ぶ)70により制御されている。EFIECU70には、エンジン50の運転状態を示す種々のセンサが接続されている。例えば、スロットルバルブの開度(ポジション)を検出するスロットルバルブポジションセンサ、エンジン50の負荷を検出する吸気管負圧センサ、エンジン50の水温を検出する水温センサ、ディストリビュータ60に設けられクランクシャフト56の回転数と回転角度を検出する回転数センサ76および回転角度センサ78などである。なお、EFIECU70には、この他、例えばイグニッションキーの状態STを検出するスタータスイッチ79なども接続されているが、その他のセンサ,スイッチなどの図示は省略した。
【0052】エンジン50のクランクシャフト56には、後述するモータMG1,MG2およびプラネタリギヤ220等を介して駆動軸22が結合されている。駆動軸22は、ディファレンシャルギヤ24に結合されており、動力出力装置20からのトルクは最終的に左右の駆動輪26,28に伝達される。このモータMG1,MG2は、制御装置80により制御されている。制御装置80の構成は後で詳述するが、内部には制御CPUが備えられており、シフトレバー82に設けられたシフトポジションセンサ84やアクセルペダル64に設けられたアクセルペダルポジションセンサ64a,ブレーキペダル65に設けられたブレーキペダルポジションセンサ65aなども接続されている。また、制御装置80は、上述したEFIECU70と通信により、種々の情報をやり取りしている。これらの情報のやり取りを含む制御については、後述する。
【0053】動力出力装置20は、エンジン50と、モータMG1と、両者および駆動軸22に結合されたプラネタリギヤ200と、第1クラッチ45と第2クラッチ46とによりクランクシャフト56または駆動軸22に機械的にロータ41が接続されるモータMG2と、これらの運転を制御する制御装置80とから構成されている。
【0054】プラネタリギヤ200は、中心で回転するサンギヤ221、サンギヤ221と同心円状に配置されサンギヤ221の周囲で回転するリングギヤ222、サンギヤ221とリングギヤ222との間で自転しながら公転するプラネタリピニオニギヤ223を備えるプラネタリキャリア223とから構成される。サンギヤ221に結合されたサンギヤ軸225はモータMG1のロータ31と結合されている。リングギヤ軸227は動力抽出ギヤ228および動力伝達ベルト229を介して駆動軸22に結合されるとともに、第2クラッチ46によりモータMG2のロータと結合可能となっている。プラネタリキャリア軸226はクランクシャフト45に結合されるとともに第1クラッチ45によりモータMG2のロータと結合可能となっている。
【0055】モータMG1は、図1に示すように、ロータ31の外周面に8個の永久磁石を備え、ステータ33に形成された12個のスロットに三相のコイルを巻回する同期電動機として構成されている。ステータ33およびロータ31の本体はそれぞれ無方向性電磁鋼板の薄板を積層することで構成されている。ロータ31に貼付された永久磁石はN極、S極が交互に外周面に現れるように配置されている。ステータ33のコイルに三相交流を流すと回転磁界を生じる。この回転磁界とロータ31に貼付された永久磁石が形成する次回との相互作用によりモータMG1は回転する。また、モータMG1はロータ31の回転によりステータ33のコイルに生じる起電力を利用して発電を行う発電機としても機能する。
【0056】モータMG2もモータMG1と同様の構成を有するステータ43とロータ42とから構成されている。モータMG2もまた、ステータ43のコイルによって生じる回転磁界とロータ41に貼付された永久磁石が形成する磁界との相互作用によって回転する他、発電機としても機能する。モータMG2のロータ41の回転軸は、プラネタリギヤ200とモータMG1との間に配置された第1クラッチ45によりクランクシャフト56に機械的に接続されたりその接続が解除されるようになっている。また、第2クラッチ46によりプラネタリギヤ200のリングギヤ軸227に機械的に接続されたりその接続が解除されるようになっている。なお、第1クラッチ45および第2クラッチ46は、図示しない油圧回路により動作するようになっている。
【0057】なお、図1では図示しないが、駆動軸22,ロータ回転軸38およびクランクシャフト56には、その回転角度θd,θr,θeを検出するレゾルバが設けられている。クランクシャフト56の回転角度θeを検出するレゾルバは、ディストリビュータ60に設けられた回転角度センサ78と兼用することも可能である。
【0058】モータMG1,MG2の配置は後述するようにエンジン50側からモータMG2,モータMG1とする配置も可能であるが、実施例の動力出力装置20のようにモータMG1をエンジン50とモータMG2の中間に配置したのは、後述するようにモータMG2のみで車両を駆動する必要からモータMG1に比してモータMG2が大きくなるため、大きなモータMG2をより大きなエンジン50に隣接させることにより動力出力装置20をまとまりのあるものとするためである。また、第1クラッチ45と第2クラッチ46の配置も後述するように種々の配置が可能であるが、実施例の動力出力装置20のようにモータMG1とモータMG2との間に配置したのは、これら両クラッチ45,46は比較的小さいため、モータMG1とモータMG2との間に生じる隙間に入れて動力出力装置20をよりコンパクトなものとするためである。
【0059】次に、制御装置80について説明する。制御装置80は、モータMG1を駆動する第1の駆動回路91と、モータMG2を駆動する第2の駆動回路92と、両駆動回路91,92を制御すると共に第1クラッチ45および第2クラッチ46を駆動制御する制御CPU90と、二次電池であるバッテリ94とから構成されている。制御CPU90は、1チップマイクロプロセッサであり、図示しないが内部に、ワーク用のRAM、処理プログラムを記憶したROM、入出力ポートおよびEFIECU70と通信を行なうシリアル通信ポートを備える。この制御CPU90には、駆動軸22の回転角度θd、モータMG2のロータ41の回転角度θr、エンジン50の回転角度θeがそれぞれのレゾルバから入力されている。また、アクセルペダルポジションセンサ64aからのアクセルペダルポジション(アクセルペダルの踏込量)AP、ブレーキペダルポジションセンサ65aからのブレーキペダルポジション(ブレーキペダル65の踏込量)BP、シフトポジションセンサ84からのシフトポジションSP、第1クラッチ45および第2クラッチ46からの両クラッチのオン・オフ信号、第1の駆動回路91に流れる電流の値Iuc,Ivc、第2の駆動回路に流れる電流の値Iua,Iva、およびバッテリ94の残容量を検出する残容量検出器99からの残容量BRMなどが入力ポートを介して入力されている。なお、残容量検出器99は、バッテリ94の電解液の比重またはバッテリ94の全体の重量を測定して残容量を検出するものや、充電・放電の電流値と時間を演算して残容量を検出するものや、バッテリの端子間を瞬間的にショートさせて電流を流し内部抵抗を測ることにより残容量を検出するものなどが知られている。
【0060】また、制御CPU90からは、第1の駆動回路91に設けられたスイッチング素子である6個のトランジスタを駆動する制御信号、第2の駆動回路92に設けられたスイッチング素子としての6個を駆動する制御信号、第1クラッチ45および第2クラッチ46を駆動する駆動信号などが出力されている。第1の駆動回路91内の6個のトランジスタはトランジスタインバータを構成しており、それぞれ一対の電源ラインに対してソース側とシンク側となるよう2個ずつペアで配置されるとともに、その接続点にモータMG1の三相コイル(UVW)の各々が接続されている。電源ラインは、バッテリ94のプラス側とマイナス側にそれぞれ接続されている。制御CPU90により対をなすトランジスタのオン時間の割合を順次制御し、各コイルに流れる電流をPWM制御によって擬似的な正弦波にすると、三相コイルにより回転磁界が形成される。第2の駆動回路92の6個のトランジスタも、トランジスタインバータを構成しており、同様にして回転磁界を形成することができる。
【0061】B.動作原理以上構成を説明した実施例の動力出力装置20の動作について説明する。なお、以下の説明では装置における動力の伝達効率は100%であるものと仮定して説明する。最初にプラネタリギヤ200の基本的な動作について説明する。機構学上周知のことであるが、プラネタリギヤ200はサンギヤ軸225,リングギヤ軸227,プラネタリキャリア軸226の3つの回転軸のうち2つの回転軸の動力が決定されると残余の1つの回転軸の動力が決定される性質を有している。それぞれの回転軸の回転数およびトルクの関係は次式(1)で示される。
【0062】
Nr=(1+ρ)Nc−ρNs;
Nc=(Nr+ρNs)/(1+ρ);
Ns=(Nc−Nr)/ρ+Nc;
Ts=ρ/(1+ρ)×Tc;
Tr=1/(1+ρ)×Tc …(1)
【0063】ここで、Ns,Tsはサンギヤ軸225の回転数およびトルクであり、Nr,Trはリングギヤ軸227の回転数およびトルクであり、Nc,Tcはプラネタリキャリア軸226の回転数およびトルクである。また、ρは次式で表される通り、サンギヤ221とリングギヤ222のギヤ比である。ρ=サンギヤ221の歯数/リングギヤ222の歯数【0064】第1クラッチ45をオフとし第2クラッチ46をオンとした場合(以下、アンダードライブ結合と呼ぶ)と、逆に第1クラッチ45をオンとし第2クラッチ46をオフとした場合(以下、オーバードライブ結合と呼ぶ)を考える。前者は、図2の模式図に示すように、モータMG2をリングギヤ222、つまりは駆動軸22に取り付けた構成に相当する。後者は、図3の模式図に示すように、モータMG2をクランクシャフト56に取り付けた構成に相当する。
【0065】まず、前者(第1クラッチ45をオフとし第2クラッチ46をオンとした場合)の動作について説明する。この場合の動作原理、特にトルク変換の原理は以下の通りである。図4にトルク変換の様子を示す。エンジン50が図4中のP0に相当するポイント、即ち回転数Ne、トルクTeで運転され、駆動軸22からは図4中のP1に相当するポイント、即ち回転数Nd1、トルクTd1なる動力が出力されているものとする。Nd1<NeかつTd1>Teとする。また、動力の大きさは両者で等しいものとする。つまり、Nd1×Td1=Ne×Teとする。
【0066】駆動軸22に結合されたリングギヤ軸227が回転数Nd1で回転している場合において、エンジン50から上述した動力が出力されているとき、上式(1)で求められる回転数NsおよびトルクTsでサンギヤ軸225は回転する。また、同じく上式(1)で求められるトルクTrがリングギヤ軸227から出力されることになる。当然、トルクTrはエンジン50から出力されるトルクTeよりも小さい。
【0067】サンギヤ軸225の回転によりモータMG1のロータ31が回転しているから、制御装置80の制御CPU90が制御信号を出力して駆動回路91のトランジスタをスイッチングすると、モータMG1は発電機として機能する。モータMG1ではNs×Tsに相当する電力が回生される。一方、電力を供給してモータMG2を力行すればリングギヤ軸227にトルクを付加することができる。モータMG2に供給される電力量を制御すれば、エンジン50からリングギヤ軸227に出力されるトルクTrと駆動軸22から出力すべきトルクTd1との差分に相当するトルクをモータMG2で付加することができる。この際、モータMG2に供給されるべき電力は、上式(1)およびNd1×Td1=Ne×Teなる関係に基づいて容易に算出することができる。その値は、モータMG1で回生される電力Ns×Tsに等しくなる。
【0068】つまり、モータMG1で回生された電力をモータMG2に供給することにより、エンジン50から出力された動力を、その大きさを変えずに回転数およびトルクを変換して駆動軸22から出力することができる。
【0069】次に、エンジン50を上述の運転ポイントP0で運転し、駆動軸22から図4中のポイントP2に相当する動力、即ち回転数Neより大きな回転数Nd2、おおびトルクTeよりも小さなトルクTd2からなる動力が出力されている場合を考える。このとき、リングギヤ軸227をエンジン50よりも高い回転数で回転させるためには、モータMG1に電力を供給しモータMG1を力行して増速することになる。一方、運転ポイントP2ではエンジン50から出力されるトルクTeよりも低いトルクを出力すれば十分である。モータMG1を力行してリングギヤ軸227の回転を増速した結果、リングギヤ軸227からは要求トルクTd2よりも高いトルクが出力される。従って、モータMG2で発電を行い余剰のトルクを電力として回生する。この電力はモータMG1の力行に用いられる。駆動軸22からポイントP1に相当する動力を出力する場合と同様、上式(1)等を考慮すれば、モータMG2で回生される電力とモータMG1に供給される電力とは等しい。モータMG1の力行により出力された動力の一部は再びモータMG2で回生されるから、このときは動力の循環が生じることになる。
【0070】以上の動作をまとめると、アンダードライブ結合では、動力出力装置20は、第1の運転モードとしてモータMG1を回生運転し、モータMG2を力行運転することによりエンジン50から出力される動力を、回転数が低くトルクの高い状態に変換して駆動軸22から出力することができる。また、第2の運転モードとしてモータMG1を力行運転し、モータMG2を回生運転することによりエンジン50から出力される動力を、回転数が高くトルクの低い状態に変換して駆動軸22から出力することができる。第1の運転モードでは動力の循環は生じず、第2の運転モードでは動力の循環が生じる。
【0071】一方、オーバードライブ結合(図3の模式図)における動作原理(トルク変換の原理)は以下の通りである。いま、エンジン50が回転数Ne,トルクTeの運転ポイントP0で運転されており、駆動軸22がポイントP1に相当する状態で回転しているとする。クランクシャフト56に取り付けられたモータMG2からクランクシャフト56にトルクを出力すれば、プラネタリキャリア軸226のトルクはエンジン50からの出力トルクTeよりも大きなトルクとなる。この付加トルクの大きさを制御すれば、上式(1)に基づいてリングギヤ軸227から出力されるトルクの大きさが要求トルクTd1となるように制御することができる。一方、このときプラネタリキャリア軸226から入力される動力の一部はプラネタリギヤ200で分配されてサンギヤ軸225に伝達されるから、この動力をモータMG1により電力として回生することができる。この電力はモータMG2の力行に用いられる。アンダードライブ結合の場合と同様、両者の電力は等しくなる。モータMG2の力行により出力された動力の一部はモータMG1で電力として回生されるため、このとき動力の循環が生じていることになる。
【0072】次に、エンジン50を運転ポイントP0で運転し、駆動軸22からポイントP2に相当する動力を出力する場合を考える。このとき、要求動力はエンジン50から出力される動力Teに比べて小さい。従って、モータMG2を回生運転し、プラネタリキャリア軸226に負荷を与えることによりリングギヤ軸227から要求動力Td2を出力することができる。一方、リングギヤ軸227の回転数を増すためにモータMG1は力行する必要がある。モータMG1の力行にはモータMG2で回生された電力が用いられる。アンダードライブ結合の場合と同様、両者の電力は等しくなる。
【0073】以上の動作をまとめると、オーバードライブ結合では、第1の運転モードとして動力出力装置20は、モータMG1を回生運転し、モータMG2を力行運転することによりエンジン50から出力される動力を、回転数が高くトルクの低い状態に変換して駆動軸22から出力することができる。また、第2の運転モードとしてモータMG1を力行運転し、モータMG2を回生運転することによりエンジン50から出力される動力を、回転数が低くトルクの高い状態に変換して駆動軸22から出力することができる。第1の運転モードでは動力の循環が生じ、第2の運転モードでは動力の循環が生じない。
【0074】なお、動力出力装置20は、以上で説明したエンジン50から出力される動力のすべてをトルク変換して駆動軸22に出力する動作の他に、エンジン50から出力される動力(トルクTeと回転数Neとの積)と、モータMG1、MG2により回生または消費される電気エネルギとを調節することにより、余剰の電力をバッテリ94を充電したり、不足する電力をバッテリ94から供給する動作など種々の動作をすることもできる。
【0075】C.運転制御(1)運転モードの設定次に、こうして構成された動力出力装置20の運転制御について図5に例示する運転制御ルーチンに基づき説明する。運転制御ルーチンは、車両の走行を開始する指示がなされてから所定時間毎(例えば、8msec毎)に繰り返し実行される。運転制御ルーチンが実行されると、制御装置80の制御CPU90は、まず駆動軸22の回転数Ndを入力する処理を行なう(ステップS100)。駆動軸22の回転数Ndは、レゾルバから読み込んだ駆動軸22の回転角度θdから求めることができる。次に、アクセルペダルポジションセンサ64aにより検出されるアクセルペダルポジションAPを読み込む(ステップS102)。アクセルペダル64は運転者が出力トルクが足りないと感じたときに踏み込まれるから、アクセルペダルポジションAPは運転者の欲している出力トルク(すなわち、駆動軸22に出力すべきトルク)に対応するものとなる。
【0076】続いて、読み込まれたアクセルペダルポジションAPと駆動軸22の回転数Ndとに基づいて駆動軸22に出力すべきトルクの目標値であるトルク指令値Td*を導出する処理を行なう(ステップS104)。実施例では、トルク指令値Td*と駆動軸22の回転数NdとアクセルペダルポジションAPとの関係を示すマップを予め制御CPU90内のROMに記憶しておき、アクセルペダルポジションAPが読み込まれると、マップと読み込まれたアクセルペダルポジションAPと駆動軸22の回転数Ndとにより対応するトルク指令値Td*の値を導出するものとした。このマップの一例を図6に示す。
【0077】次に、導き出されたトルク指令値Td*と読み込まれた駆動軸22の回転数Ndとから駆動軸22に出力すべきエネルギPdを計算(Pd=Td*×Nd)により求める(ステップS106)。続いて、残容量検出器99により検出されるバッテリ94の残容量BRMを読み込む処理を行なって、運転モードの判定処理を行なう(ステップS110)。この運転モードの判定処理は、図7に例示する運転モード判定処理ルーチンにより処理される。運転モード判定処理ルーチンでは、運転制御ルーチンのステップS100ないしS108で読み込んだデータや計算したデータなどを用いて、そのときの動力出力装置20のより適切な運転モードを判定する。ここで、一旦図5の運転制御ルーチンの説明を中断し、先に図7の運転モード判定処理ルーチンに基づき運転モードの判定処理について説明する。
【0078】運転モード判定処理ルーチンが実行されると、制御装置80の制御CPU90は、バッテリ94の残容量BRMが閾値BLと閾値BHとにより表わされる範囲内にあるかを判定し(ステップS130)、この範囲内にないときには、バッテリ94の充放電が必要であると判断して、動力出力装置20の運転モードとして充放電モードを設定する(ステップS132)。ここで、閾値BLと閾値BHは、バッテリ94の残容量BRMの下限値と上限値を示すものであり、実施例では、閾値BLは、後述のモータ駆動モードによるモータMG2のみによる駆動やパワーアシストモードによるバッテリ94からの放電電力による動力の付加などを所定時間継続して行なうのに必要な電力量以上の値として設定される。また、閾値BHは、バッテリ94の満充電時の残容量BRMから通常走行状態にある車両を停止する際にモータMG1やモータMG2により回生される電力量を減じた値以下に設定されている。
【0079】ステップS130でバッテリ94の残容量BRMが閾値BLと閾値BHとにより表わされる範囲内にあるときには、駆動軸22に出力すべきエネルギPdがエンジン50から出力可能な最大エネルギPemaxを越えているか否かを判定する(ステップS134)。エネルギPdが最大エネルギPemaxを越えているときには、エンジン50から出力される最大エネルギPemaxでは不足するエネルギをバッテリ94に蓄えられたエネルギで賄う必要があると判断し、動力出力装置20の運転モードとしてパワーアシストモードを設定する(ステップS136)。
【0080】一方、駆動軸22に出力すべきエネルギPdがエンジン50から出力可能な最大エネルギPemax以下のときには、トルク指令値Td*と回転数Ndとが所定の範囲内にあるかを判定し(ステップS138)、所定の範囲内のときには、動力出力装置20の運転モードとして第1クラッチ45および第2クラッチ46を共にオンとした状態の直接出力モードを設定する(ステップS140)。ここで、所定の範囲とは、両クラッチ45,46をオンにした状態でエンジン50を効率よく運転できる範囲である。具体的には、エンジン50の運転ポイントのうち直接出力モードとして制御するのに適正な範囲をマップとして予めROMに記憶しておき、トルク指令値Td*と回転数Ndで表わされる運転ポイントがこの適正な範囲にあるかを判定することになる。エンジン50の直接出力モードとして制御する際の適正範囲の一例を図8に示す。図中、領域PEはエンジン50の運転が可能な領域であり、領域PAは直接出力モードとして制御する際の適正範囲である。なお、この適正範囲PAは、エンジン50の効率やエミッション等により定められるものであり、予め実験などにより設定できる。
【0081】ステップS138でトルク指令値Td*と駆動軸22の回転数Ndとが所定の範囲内にないときには、駆動軸22に出力すべきエネルギPdが所定エネルギPMLより小さく、かつ、駆動軸22の回転数Ndが所定回転数NMLより小さいか否かを判定し(ステップS142)、共に小さいときには、動力出力装置20の運転モードとしてモータMG2のみによる駆動のモータ駆動モードを設定する(ステップS144)。所定エネルギPMLや所定回転数NMLは、エンジン50が低回転数で低トルクでは効率が低下することに基づきその範囲を設定するものであり、エンジン50の運転領域として所定の効率未満の領域となるエネルギPdおよび回転数Ndとして設定される。なお、具体的な値は、エンジン50の特性などにより定められる。ステップS142で、エネルギPdが所定エネルギPML以上であったり回転数Ndが所定回転数NML以上のときには、通常の運転を行なうものと判断し、動力出力装置20の運転モードとして通常運転モードを設定する(ステップS146)。
【0082】図5の運転制御ルーチンのステップS110に戻って、運転モード判定処理ルーチンの結果に基づき、運転モードとして通常運転モードが設定されたときには通常運転トルク制御処理(ステップS112)を、充放電モードが設定されたときには充放電トルク制御処理(ステップS114)を、パワーアシストモードが設定されたときにはパワーアシストトルク制御処理(ステップS116)を、直接出力モードが設定されたときには直接出力トルク制御処理(ステップS118)を、モータ駆動モードが設定されたときにはモータ駆動トルク制御処理(ステップS120)をそれぞれ実行する。なお、実施例では、図示の都合上、これらの各トルク制御処理を運転制御ルーチンのステップとして記載したが、各トルク制御処理は、運転モード判定処理ルーチンにより運転モードが設定されると、設定された運転モードのトルク制御ルーチンが運転制御ルーチンとは別個独立に運転制御ルーチンとは異なるタイミングで所定時間毎(例えば4msec毎)に繰り返し実行される。以下、各トルク制御処理について説明する。
【0083】(2)通常運転トルク制御処理通常運転トルク制御処理(図5のステップS112)は、図9および図10に例示する通常運転トルク制御ルーチンによりなされる。本ルーチンが実行されると、制御装置80の制御CPU90は、まず駆動軸22の回転数Ndとエンジン50の回転数Neとを読み込む処理を実行する(ステップS150,S152)。エンジン50の回転数Neはクランクシャフト56に設けられたレゾルバにより検出されるクランクシャフト56の回転角度θeから求めることもできるし、ディストリビュータ60に設けられた回転数センサ76によっても直接検出することもできる。回転数センサ76を用いる場合には、回転数センサ76に接続されたEFIECU70から通信により回転数Neの情報を受け取ることになる。そして、こうして読み込んだ駆動軸22の回転数Ndとエンジン50の回転数Neとから、両軸の回転数差Ncを計算(Nc=Ne−Nd)により求める(ステップS154)。
【0084】続いて図5の運転制御ルーチンのステップS106で計算したエネルギPdを前回このルーチンが起動されたときに用いられたエネルギPd(前回のエネルギPdという)と比較する(ステップS156)。ここで、前回とは、図5の運転制御ルーチンで連続してステップS112の通常運転トルク制御処理が実行されたときの直前に実行されたときのことをいう。エネルギPdと前回のエネルギPdとが異なるときには、図10に示すステップS170ないしS188の処理によりエンジン50の目標トルクTe*,目標回転数Ne*およびモータMG1のトルク指令値Tc*を設定し、エネルギPdが前回のエネルギPdとが同じときには、図10に示すステップS158およびS160の処理によりモータMG1のトルク指令値Tc*を設定する。まず、エネルギPdと前回のエネルギPdとが異なるときの処理について説明し、その後、同じときの処理について説明する。
【0085】エネルギPdと前回のエネルギPdとが異なるときには、まず、駆動軸22に出力すべきエネルギPdに基づいてエンジン50の目標トルクTe*と目標回転数Ne*とを設定する処理を行なう(ステップS170)。ここで、駆動軸22に出力すべきエネルギPdのすべてをエンジン50によって供給するものとすると、エンジン50から出力されるエネルギはエンジン50のトルクTeと回転数Neとの積に等しいため、出力エネルギPdとエンジン50の目標トルクTe*および目標回転数Ne*との関係はPd=Te*×Ne*となる。しかし、かかる関係を満足するエンジン50の目標トルクTe*と目標回転数Ne*との組合せは無数に存在する。そこで、実施例では、各エネルギPdに対してエンジン50ができる限り効率の高い状態で運転され、かつエネルギPdの変化に対してエンジン50の運転状態が滑らかに変化する目標トルクTe*と目標回転数Ne*との組み合わせを実験等により求め、これを予めROMにマップとして記憶しておき、エネルギPdに対応する目標トルクTe*と目標回転数Ne*との組み合わせをこのマップから導出するものとした。このマップについて、更に説明する。
【0086】図11は、エンジン50の運転ポイントとエンジン50の効率との関係を示すグラフである。図中曲線Bはエンジン50の運転可能な領域の境界を示す。エンジン50の運転可能な領域には、その特性に応じて効率が同一の運転ポイントを示す曲線α1ないしα6のような等効率線を描くことができる。また、エンジン50の運転可能な領域には、トルクTeと回転数Neとの積で表わされるエネルギが一定の曲線、例えば曲線C1−C1ないしC3−C3を描くことができる。こうして描いたエネルギPeが一定の曲線C1−C1ないしC3−C3に沿って各運転ポイントの効率をエンジン50の回転数Neを横軸として表わすと図12のグラフのようになる。
【0087】図示するように、エンジン50から出力されるエネルギPeが同じでも、どの運転ポイントで運転するかによってエンジン50の効率は大きく異なる。例えばエネルギが一定の曲線C1−C1上では、エンジン50を運転ポイントA1(トルクTe1,回転数Ne1)で運転することにより、その効率を最も高くすることができる。このような効率が最も高い運転ポイントは、出力されるエネルギPeが一定の曲線C2−C2およびC3−C3ではそれぞれ運転ポイントA2およびA3が相当するように、エネルギPeが一定の各曲線上に存在する。図11中の曲線Aは、これらに基づきエンジン50から出力される各エネルギPeに対してエンジン50の効率ができる限り高くなる運転ポイントを連続する線で結んだものである。実施例では、この曲線A上の各運転ポイント(トルクTe,回転数Ne)とエネルギPeとの関係をマップとしたものを用いてエンジン50の目標トルクTe*および目標回転数Ne*を設定した。
【0088】ここで、曲線Aを連続する曲線で結ぶのは、エネルギPeの変化に対して不連続な曲線によりエンジン50の運転ポイントを定めると、エネルギPeが不連続な運転ポイントを跨いで変化するときにエンジン50の運転状態が急変することになり、その変化の程度によっては、目標の運転状態にスムーズに移行できずノッキングを生じたり停止してしまう場合があるからである。したがって、このように曲線Aを連続する曲線で結ぶと、曲線A上の各運転ポイントがエネルギPeが一定の曲線上で最も効率が高い運転ポイントとならない場合もある。
【0089】エンジン50の目標トルクTe*と目標回転数Ne*とを設定すると、制御CPU90は、設定した目標回転数Ne*と駆動軸22の回転数Ndとを比較する(ステップS172)。そして、目標回転数Ne*が駆動軸22の回転数Ndより大きいときには、第1クラッチ45がオフで第2クラッチ46がオン(図2の模式図の構成)となるよう第1クラッチ45および第2クラッチ46を操作して(ステップS174ないしS177)、モータMG1のトルク指令値Tc*にエンジン50の目標トルクTe*に基づいて上式(1)で算出されたトルクを設定する(ステップS178)。第1クラッチ45および第2クラッチ46の操作は、まず、両クラッチ45,46の状態を検出し、設定しようとしている状態になっているか否かを調べ(ステップS174)、設定しようとしている状態になっていないときには、両クラッチ45,46を共にオフとし(ステップS176)、その後第2クラッチ46をオンとする(ステップS177)。このように両クラッチ45,46を一旦共にオフとするのは、クラッチ接続時のモータMG2等の制御の容易のためである。なお、モータMG1のトルク指令値Tc*は、エンジン50を目標トルクTe*と目標回転数Ne*とで表わされる運転ポイントで安定して運転するために必要な負荷トルクに設定されていることになる。
【0090】ステップS170でエンジン50の目標回転数Ne*が駆動軸22の回転数Ndより小さいときには、第1クラッチ45がオンで第2クラッチ46がオフ(図3の模式図の構成)となるよう第1クラッチ45および第2クラッチ46を操作して(ステップS184ないしS187)、モータMG1のトルク指令値Tc*に駆動軸22に出力すべきトルク指令値Td*に代入した上で、上式(1)に基づいて設定されるトルクを設定する(ステップS188)。第1クラッチ45および第2クラッチ46の操作は、目標回転数Ne*が回転数Ndより大きいときと同様に、まず、両クラッチ45,46の状態を検出し、設定しようとしている状態になっているか否かを調べ(ステップS184)、設定しようとしている状態になっていないときには、両クラッチ45,46を共にオフとし(ステップS186)、その後第1クラッチ45をオンとする(ステップS187)。
【0091】ここで、エンジン50の目標回転数Ne*が駆動軸22の回転数Ndより大きいときには、実施例の動力出力装置20がアンダードライブ結合(図2参照)となるよう両クラッチ45,46を操作し、目標回転数Ne*が回転数Ndより小さいときにはオーバードライブ結合(図3参照)となるよう両クラッチ45,46を操作する理由は次の通りである。既に説明した通り、アンダードライブ結合では、エンジン50から出力される動力をより回転数の低い動力に変換して出力する第1の運転モードにおいて動力の循環が生じない。逆にオーバードライブ結合では、エンジン50から出力される動力をより回転数の高い動力に変換して出力する第2の運転モードにおいて動力の循環が生じない。従って、駆動軸22の回転数Ndがエンジン50の目標回転数Ne*よりも低いアンダードライブの場合には、アンダードライブ結合が実現されるようにクラッチ45,46を操作し、逆の場合にはオーバードライブ結合が実現されるように操作すれば動力出力装置20の運転効率を高くすることができる。上述したクラッチの操作はかかる理由に基づくものである。
【0092】一方、ステップS156でエネルギPdが前回のエネルギPdと同じときには、エンジン50の目標回転数Ne*から回転数Neを減じて回転数偏差△Neを算出する(ステップS158)。そして、算出した回転数偏差△Neを用いて次式(2)によりTc*を算出し、算出した値をモータMG1のトルク指令値Tc*として設定する(ステップS160)。ここで、式(2)中の右辺第2項は回転数Neの目標回転数Ne*からの偏差を打ち消す比例項であり、右辺第3項は定常偏差をなくすための積分項である。したがって、モータMG1のトルク指令値Tc*は、定常状態(回転数Neの目標回転数Ne*からの回転偏差△Neが値0のとき)では、前回のトルク指令値Tc*が設定されることになる。なお、式(2)中のKc1およびKc2は、比例定数である。このようにモータMG1のトルク指令値Tc*を設定することにより、エンジン50を目標トルクTe*および目標回転数Ne*の運転ポイントで安定させることができる。
【0093】
【数1】

【0094】次に、モータMG1のトルク指令値Tc*に応じて駆動軸22から出力されるトルクを上式(1)に基づいて算出する。そして、駆動軸から要求トルクが出力されるようにモータMG2のトルク指令値Ta*を設定する(ステップS164)。
【0095】こうしてエンジン50の目標トルクTe*,目標回転数Ne*,モータMG1およびモータMG2のトルク指令値Tc*,Ta*を設定すると、設定した各設定値でモータMG1,モータMG2およびエンジン50が動作するように、モータMG1,モータMG2およびエンジン50の制御を行なう(ステップS166ないしS169)。実施例では、図示の都合上、モータMG1,モータMG2およびエンジン50の各制御を本ルーチンの別々のステップとして記載したが、実際には、これらの制御は本ルーチンとは別個独立にかつ総合的に行なわれる。例えば、制御CPU90が割り込み処理を利用して、モータMG1とモータMG2の制御を本ルーチンとは異なるタイミングで平行して実行すると共に、通信によりEFIECU70に指示を送信して、EFIECU70によりエンジン50の制御も平行して行なわせるのである。
【0096】モータMG1の制御(図9のステップS162)は、図13に例示するクラッチモータ制御ルーチンによりなされる。本ルーチンが実行されると、制御装置80の制御CPU90は、まず、ロータ31の回転軸の回転角度θdをレゾルバから入力する処理を行ない(ステップS190)、モータMG1の電気角θcを両軸の回転角度θdから求める処理を行なう(ステップS194)。実施例では、モータMG1として4極対の同期電動機を用いているから、θc=4θdを演算することになる。
【0097】次に、電流検出器95,96により、モータMG1の三相コイルのU相とV相に流れている電流Iuc,Ivcを検出する処理を行なう(ステップS196)。電流はU,V,Wの三相に流れているが、その総和はゼロなので、二つの相に流れる電流を測定すれば足りる。こうして得られた三相の電流を用いて座標変換(3相/2相変換)を行なう(ステップS198)。座標変換は、永久磁石型の同期電動機のd軸,q軸の電流値に変換することであり、次式(3)を演算することにより行なわれる。ここで座標変換を行なうのは、永久磁石型の同期電動機においては、d軸及びq軸の電流が、トルクを制御する上で本質的な量だからである。もとより、三相のまま制御することも可能である。
【0098】
【数2】

【0099】次に、2軸の電流値に変換した後、モータMG1におけるトルク指令値Tc*から求められる各軸の電流指令値Idc*,Iqc*と実際各軸に流れた電流Idc,Iqcと偏差を求め、各軸の電圧指令値Vdc,Vqcを求める処理を行なう(ステップS200)。即ち、まず以下の式(4)の演算を行ない、次に次式(5)の演算を行なうのである。ここで、Kp1,2及びKi1,2は、各々係数である。これらの係数は、適用するモータの特性に適合するよう調整される。なお、電圧指令値Vdc,Vqcは、電流指令値I*との偏差△Iに比例する部分(式(5)右辺第1項)と偏差△Iのi回分の過去の累積分(右辺第2項)とから求められる。
【0100】
【数3】

【0101】
【数4】

【0102】その後、こうして求めた電圧指令値をステップS198で行なった変換の逆変換に相当する座標変換(2相/3相変換)を行ない(ステップS202)、実際に三相コイルに印加する電圧Vuc,Vvc,Vwcを求める処理を行なう。各電圧は、次式(6)により求める。
【0103】
【数5】

【0104】実際の電圧制御は、第1の駆動回路91のトランジスタのオンオフ時間によりなされるから、式(6)によって求めた各電圧指令値となるよう各トランジスタのオン時間をPWM制御する(ステップS204)。モータMG2の制御(図9のステップS168)も同様の処理である。
【0105】次に、エンジン50の制御(図9のステップS169)について説明する。エンジン50は、図10のステップS170において設定された目標トルクTe*および目標回転数Ne*の運転ポイントで定常運転状態となるようトルクTeおよび回転数Neが制御される。具体的には、エンジン50が目標トルクTe*および目標回転数Ne*の運転ポイントで運転されるよう、制御CPU90から通信により目標トルクTe*と目標回転数Ne*とを受信したEFIECU70によってスロットルバルブの開度制御,燃料噴射弁51からの燃料噴射制御および点火プラグ62による点火制御を行なうと共に、制御装置80の制御CPU90によりエンジン50の負荷トルクとしてのモータMG1のトルクTcを制御するのである。エンジン50は、その負荷トルクにより出力トルクTeと回転数Neとが変化するから、EFIECU70による制御だけでは目標トルクTe*および目標回転数Ne*の運転ポイントで運転することはできず、負荷トルクを与えるモータMG1のトルクTcの制御も必要となるからである。なお、モータMG1のトルクTcの制御は、前述したモータMG1の制御で説明した。
【0106】以上説明した通常運転トルク制御処理によれば、エンジン50の回転数Neが駆動軸22の回転数Ndより大きいときには、アンダードライブ結合(図2の模式図の構成)とすることにより動力の循環を低減して、動力出力装置20全体としてエネルギ効率を高くすることができる。また、エンジン50の回転数Neが駆動軸22の回転数Ndより小さいときには、オーバードライブ結合(図3の模式図の構成)とすることにより、やはり動力の循環を低減して、動力出力装置20全体としてエネルギ効率を高くすることができる。したがって、図2や図3の模式図の構成に固定した場合に比して、エネルギ効率を高くすることができる。
【0107】また、通常運転トルク制御処理によれば、エンジン50の目標トルクTe*と目標回転数Ne*とを、エンジン50から出力されるエネルギPeが同じであればエンジン50ができる限り高い効率となるよう設定されるから、動力出力装置20全体としてのエネルギ効率をより高くすることができる。また、モータMG1やモータMG2の効率Ksc,Ksaを値1と考えれば、エンジン50から出力される目標トルクTe*と目標回転数Ne*とにより表わされる動力をモータMG1およびモータMG2によりトルク指令値Td*と回転数Ndとにより表わされる動力にトルク変換して駆動軸22に出力することができる。しかも、駆動軸22に出力すべきトルク(トルク指令値Td*)は、運転者によるアクセルペダル64の踏込量に応じたものであり、エンジン50の目標トルクTe*と目標回転数Ne*はこのトルク指令値Td*に基づいて定められるから、運転者の所望の動力を駆動軸22に出力することができる。
【0108】(3)充放電トルク制御処理次に、充放電トルク制御処理(図5のステップS114)について図14および図15の充放電トルク制御ルーチンに基づき説明する。前述したように、本ルーチンは図7のステップS130およびS132でバッテリ94の残容量BRMが閾値BLと閾値BHとにより表わされる範囲外にあり、バッテリ94の充放電が必要であると判断されたときに充放電モードが設定されて実行されるものである。
【0109】本ルーチンが実行されると、制御CPU90は、まず、バッテリ94の残容量BRMを閾値BLおよび閾値BHと比較する(ステップS220)。閾値BLおよび閾値BHについては図7のステップS130で説明した。バッテリ94の残容量BRMが閾値BL未満のときには、バッテリ94の充電が必要であると判断し、バッテリ94を充電するのに必要なエネルギ(充電エネルギPbi)を考慮したエネルギPdを設定する処理(ステップS222ないしS228)を行ない、バッテリ94の残容量BRMが閾値BHより大きいときには、バッテリ94の放電が必要であると判断し、バッテリ94から放電されるエネルギ(充電エネルギPbo)を考慮したエネルギPdを設定する処理(ステップS232ないしS238)を行なう。
【0110】バッテリ94を充電するのに必要な充電エネルギPbiを考慮したエネルギPdを設定する処理(ステップS222ないし228)では、制御装置80の制御CPU90は、まず、バッテリ94の残容量BRMに基づいて充電エネルギPbiを設定する処理を行なう(ステップS222)。このように、バッテリ94の残容量BRMに基づいて充電エネルギPbiを設定するのは、バッテリ94の充電可能な電力(エネルギ)は残容量BRMによって変化し、適正な充電電圧や充電電流も残容量BRMによって変わるからである。図16にバッテリ94の残容量BRMと充電可能な電力との関係の一例を示す。なお、実施例では、バッテリ94の各残容量BRMに対して実験等により最適な充電エネルギPbiを求め、それを予めROMにマップとして記憶しておき、バッテリ94の残容量BRMに対応する充電エネルギPbiを導出するものとした。続いて、駆動軸22に出力すべきエネルギPdに導出した充電エネルギPbiを加えてエネルギPdを再設定する(ステップS224)。そして、再設定されたエネルギPdがエンジン50から出力可能な最大エネルギPemaxを越えているか否かを調べ(ステップS226)、越えている場合には、エネルギPdを最大エネルギPemaxに制限する処理として、エネルギPdに最大エネルギPemaxを設定する(ステップS228)。
【0111】バッテリ94を放電するのに必要なエネルギ(充電エネルギPbo)を考慮したエネルギPdを設定する処理(ステップS232ないしS238)では、制御装置80の制御CPU90は、まず、バッテリ94の残容量BRMに基づいて放電エネルギPboを設定する処理を行なう(ステップS232)。このように、バッテリ94の残容量BRMに基づいて放電エネルギPboを設定するのは、バッテリ94の放電可能な電力(エネルギ)が残容量BRMによって異なる場合があるからである。実施例では、用いたバッテリ94の各残容量BRMに対して実験等により最適な放電エネルギPboを求め、それを予めROMにマップ(図示せず)として記憶しておき、バッテリ94の残容量BRMに対応する放電エネルギPboを導出するものとした。続いて、駆動軸22に出力すべきエネルギPdから導出した放電エネルギPboを減じてエネルギPdを再設定する(ステップS234)。そして、再設定されたエネルギPdがエンジン50から出力可能な最小エネルギPemin未満でないかを調べ(ステップS236)、最小エネルギPemin未満の場合には、エネルギPdを最小エネルギPeminに制限する処理としてエネルギPdに最小エネルギPeminを設定する(ステップS218)。
【0112】このように充電エネルギPbiまたは放電エネルギPboを考慮して駆動軸22に出力すべきエネルギPdを再設定すると、この再設定されたエネルギPdに基づいてエンジン50の目標トルクTe*と目標回転数Ne*を設定する(ステップS240)。この目標トルクTe*と目標回転数Ne*の設定処理は、図10のステップS170の処理と同一である。
【0113】次に、駆動軸22の回転数Ndを読み込む処理を行ない(ステップS242)、設定したエンジン50の目標回転数Ne*と読み込んだ駆動軸22の回転数Ndとを比較する(ステップS244)。そして、エンジン50の目標回転数Ne*が駆動軸22の回転数Ndより大きいときには、第1クラッチ45がオフで第2クラッチ46がオン(図2の模式図の構成)となるよう第1クラッチ45および第2クラッチ46を操作する(ステップS250ないしS254)。実施例の動力出力装置20を図2の模式図の構成となるように第1クラッチ45および第2クラッチ46を操作する処理(ステップS250ないしS254の処理)は、両クラッチ45,46が設定しようとしている状態にないときに両クラッチ45,46を一旦共にオフとする理由を含めて図9および図10の通常運転トルク制御ルーチンにおけるステップS174ないしS177の処理と同一である。
【0114】一方、エンジン50の目標回転数Ne*が駆動軸22の回転数Ndより小さいときには、第1クラッチ45がオンで第2クラッチ46がオフ(図3の模式図の構成)となるよう第1クラッチ45および第2クラッチ46を操作する(ステップS260ないしS264)。なお、実施例の動力出力装置20を図3の模式図の構成となるように第1クラッチ45および第2クラッチ46を操作する処理(ステップS250ないしS254の処理)は、両クラッチ45,46が設定しようとしている状態にないときに両クラッチ45,46を一旦共にオフとする理由を含めて図9および図10の通常運転トルク制御ルーチンにおけるステップS184ないしS187の処理と同一である。
【0115】クラッチの接続を行った後、エンジン50の目標トルクTe*が実現されるようにモータMG1のトルク指令値Tc*を設定し(ステップS266)、駆動軸22に出力すべきトルク指令値Td*が達成されるようにモータMG2のトルク指令値Ta*を設定する(ステップS268)。これらの値は上式(1)に基づいて算出される。
【0116】このようにエンジン50の目標回転数Ne*と駆動軸22の回転数Ndに応じて両クラッチ45,46を操作すると共にモータMG1のトルク指令値Tc*とモータMG2のトルク指令値Ta*とを設定すると、これらの設定した設定値を用いてモータMG1,モータMG2およびエンジン50の各制御を行なう(ステップS270ないしS274)。これらの各制御は、図9および図10の通常運転トルク制御ルーチンにおけるステップS166ないしS169の各制御と同一であるから、ここでの説明は省略する。なお、こうしたモータMG1,モータMG2およびエンジン50の各制御は他のトルク制御処理の各ルーチンにおいても行なわれるが、特に記載しない限り、図9および図10の通常運転トルク制御ルーチンにおけるステップS166ないしS169の各制御と同一であるから、その説明は省略する。
【0117】次に、こうした充放電トルク制御処理によりバッテリ94が充電される様子およびバッテリ94から放電される様子について説明する。ステップS220でバッテリ94の残容量BRMが閾値BLより小さいときには、エネルギPdに充電エネルギPbiを加えてエネルギPdが再設定され、この再設定されたエネルギPdに基づいてエンジン50の目標トルクTe*,目標回転数Ne*が設定される。一方、モータMG1のトルク指令値Tc*とモータMG2のトルク指令値Ta*は、エンジン50の目標回転数Ne*と駆動軸22の回転数Ndとに拘わらず駆動軸22にトルク指令値Td*が出力されるように設定される。このため、エンジン50から出力されるエネルギPeは駆動軸22に出力されるエネルギPdより大きくなる。この結果、エンジン50の目標回転数Ne*が駆動軸22の回転数Ndより小さい図2の模式図の構成のときには、モータMG1により回生される電力がモータMG2により消費される電力より大きくなり、エンジン50の目標回転数Ne*が駆動軸22の回転数Ndより大きな図3の模式図の構成のときには、モータMG2により回生される電力がモータMG1により消費される電力より大きくなって、いずれの模式図の構成のときでも余剰電力が生じることになる。実施例では、この余剰電力によりバッテリ94が充電される。
【0118】一方、ステップS220でバッテリ94の残容量BRMが閾値BLより大きなときには、エネルギPdから放電エネルギPboを減じてエネルギPdが再設定され、この再設定されたエネルギPdに基づいてエンジン50の目標トルクTe*,目標回転数Ne*が設定される。一方、モータMG1のトルク指令値Tc*とモータMG2のトルク指令値Ta*は、エンジン50の目標回転数Ne*と駆動軸22の回転数Ndとに拘わらず駆動軸22にトルク指令値Td*が出力されるように設定される。このため、エンジン50から出力されるエネルギPeは駆動軸22に出力されるエネルギPdより小さくなる。この結果、エンジン50の目標回転数Ne*が駆動軸22の回転数Ndより小さい図2の模式図の構成のときには、モータMG1により回生される電力がモータMG2により消費される電力より小さくなり、エンジン50の目標回転数Ne*が駆動軸22の回転数Ndより大きな図3の模式図の構成のときには、モータMG2により回生される電力がモータMG1により消費される電力より小さくなって、いずれの模式図の構成のときでも電力が不足することになる。実施例では、この不足する電力をバッテリ94からの放電で賄うのである。
【0119】以上説明した充放電トルク制御処理によれば、バッテリ94の残容量BRMを所望の範囲にすることができる。この結果、バッテリ94の過放電や過充電を回避することができる。しかも、エンジン50から出力されるエネルギPeとバッテリ94により充放電される電力とをエネルギ変換して所望の動力として駆動軸22に出力することができる。もとより、エンジン50の回転数Neと駆動軸22の回転数Ndとに基づいて第1クラッチ45および第2クラッチ46を操作して図2の模式図の構成や図3の模式図の構成とすることにより、モータMG1とモータMG2とによるエネルギ損失を小さくし、装置全体としてエネルギ効率を高くすることができる。また、エンジン50の運転ポイントは、設定されたエネルギPdを出力する運転ポイントであれば如何なる運転ポイントとしてもよいから、エンジン50をより効率の良い運転ポイントで運転することができる。この結果、装置全体のエネルギ効率をより高くすることができる。
【0120】なお、実施例の動力出力装置20では、バッテリ94の残容量BRMに基づいて充電エネルギPbiや放電エネルギPboを設定したが、充電エネルギPbiや放電エネルギPboを予め定めた所定値としてもよい。
【0121】(4)パワーアシストトルク制御処理次に、パワーアシストトルク制御処理(図5のステップS116)について図17のパワーアシストトルク制御ルーチンに基づき説明する。本ルーチンは、図7のステップS134およびS136で駆動軸22に出力すべきエネルギPdがエンジン50から出力可能な最大エネルギPemaxを越えている場合に実行される。
【0122】本ルーチンが実行されると、制御装置80の制御CPU90は、まず、エンジン50から出力可能な最大エネルギPemaxに基づいてエンジン50の目標トルクTe*と目標回転数Ne*とを設定する処理を行なう(ステップS280)。このようにエンジン50から出力されるエネルギPeを最大エネルギPemaxとするのは、図7の運転モード判定処理ルーチンのステップS134で駆動軸22に出力すべきエネルギPdが最大エネルギPemaxより大きな値となっているから、駆動軸22に出力すべきエネルギPdのうちのできる限り多くのエネルギをエンジン50から出力されるエネルギで賄うためである。
【0123】続いて、駆動軸22に出力すべきエネルギPdからエンジン50から出力可能な最大エネルギPemaxを減じて、エンジン50から出力されるエネルギPeでは不足するエネルギをアシストパワーPasとして算出する(ステップS282)。続いて、バッテリ94の残容量BRMに基づいてバッテリ94から放電可能なエネルギの最大値である最大放電エネルギPbmaxを導出し(ステップS284)、算出したアシストパワーPasが導出した最大放電エネルギPbmaxより大きいか否かを判定する(ステップS286)。ここで、最大放電エネルギPbmaxをバッテリ94の残容量BRMに基づいて設定するのは、バッテリ94の放電可能な電力(エネルギ)が残容量BRMによって異なる場合があるからである。実施例では、用いたバッテリ94の各残容量BRMに対して実験等により最大放電エネルギPbmaxを求め、それを予めROMにマップ(図示せず)として記憶しておき、バッテリ94の残容量BRMに対応する最大放電エネルギPbmaxを導出するものとした。アシストパワーPasが最大放電エネルギPbmaxより大きいときには、アシストパワーPasに最大放電エネルギPbmaxを設定して(ステップS288)、アシストパワーPasが最大放電エネルギPbmaxより大きくならないようにする。
【0124】次に、駆動軸22の回転数Ndを読み込む処理を行ない(ステップS290)エンジン50の目標回転数Ne*と駆動軸22の回転数Ndとを比較する(ステップS292)。そして、エンジン50の目標回転数Ne*が駆動軸22の回転数Ndより大きいときには、第1クラッチ45がオフで第2クラッチ46がオン(図2の模式図の構成)となるよう第1クラッチ45および第2クラッチ46を操作する(ステップS294ないしS298)。この処理は既に説明した図9および図10の通常運転トルク制御ルーチンにおける第1クラッチ45および第2クラッチ46を操作する処理(ステップS174ないしS177の処理およびステップS184ないしS187の処理)と同一である。
【0125】エンジン50の目標回転数Ne*が駆動軸22の回転数Ndより小さいときには、第1クラッチ45がオンで第2クラッチ46がオフ(図3の模式図の構成)となるよう第1クラッチ45および第2クラッチ46を操作する(ステップS304ないしS308)。図9および図10の通常運転トルク制御ルーチンにおける第1クラッチ45および第2クラッチ46を操作する処理(ステップS174ないしS177の処理およびステップS184ないしS187の処理)と同一である。
【0126】クラッチの接続を行った後、エンジン50の目標トルクTe*が実現されるようにモータMG1のトルク指令値Tc*を設定し(ステップS266)、駆動軸22に出力すべきトルク指令値Td*が達成されるようにモータMG2のトルク指令値Ta*を設定する(ステップS268)。これらの値は上式(1)に基づいて算出される。
【0127】こうしてエンジン50の目標回転数Ne*と駆動軸22の回転数Ndに応じて両クラッチ45,46を操作すると共にモータMG1のトルク指令値Tc*とモータMG2のトルク指令値Ta*とを設定すると、これらの設定した設定値を用いてモータMG1,モータMG2およびエンジン50の各制御を行なう(ステップS314ないしS318)。
【0128】以上説明したパワーアシストトルク制御処理によれば、エンジン50の最大エネルギPemax以上のエネルギを駆動軸22に出力することができる。この結果、駆動軸22に出力すべきエネルギPdより小さなエネルギを最大エネルギとする定格能力の低いエンジンでも動力出力装置20に採用することができ、装置全体の小型化および省エネルギ化を図ることができる。もとより、エンジン50の回転数Neと駆動軸22の回転数Ndとに基づいて第1クラッチ45および第2クラッチ46を操作して図2の模式図の構成や図3の模式図の構成とすることにより、モータMG1とモータMG2とによるエネルギ損失を小さくし、装置全体としてエネルギ効率を高くすることができる。また、エンジン50の運転ポイントは、設定されたエネルギPdを出力する運転ポイントであれば如何なる運転ポイントとしてもよいから、エンジン50をより効率の良い運転ポイントで運転することができる。この結果、装置全体のエネルギ効率をより高くすることができる。
【0129】(5)直接出力トルク制御処理次に、直接出力トルク制御処理(図5のステップS118)について図19の直接出力トルク制御ルーチンに基づき説明する。本ルーチンは、エンジン50を効率よく運転できる範囲(図8の領域PA)で運転したときにモータMG2によるトルクの増減なしに出力可能な範囲に、図7のステップS138におけるトルク指令値Td*と駆動軸22の回転数Ndがあるときに実行される。本ルーチンが実行されると、制御装置80の制御CPU90は、まず、駆動軸22の回転数Ndを読み込む処理を行なう(ステップS320)。次にエンジン50の目標トルクTe*および目標回転数Ne*をそれぞれ設定する(ステップS322)。目標回転数Ne*としては駆動軸22の回転数Ndを設定する。また、目標トルクTe*としては、駆動軸22のトルク指令値Td*を設定する。
【0130】続いて、第1クラッチ45および第2クラッチ46が共にオンとなっているかを調べ(ステップS324)、両クラッチ45,46が共にオンとなっていないときには、両クラッチ45,46を共にオンとする(ステップS326)。このように第1クラッチ45および第2クラッチ46を操作することにより、動力出力装置20は、クランクシャフト56と駆動軸22とを直接結合した構成となる。この結果、プラネタリギヤ200は動力の分配機能を奏しなくなる。
【0131】次に、モータMG1のトルク指令値Tc*とモータMG2のトルク指令値Ta*とに共に値0を設定し(ステップS328およびS330)、モータMG1,モータMG2およびエンジン50の各制御を行なう(ステップS332ないしS336)。ここで、トルク指令値Ta*に値0が設定されたときのモータMG1およびMG2の制御としては、図13のモータ制御ルーチンにより行なうことができるが、実施例では、モータMG1およびMG2の各相の電流をすべて値0とすればよいから、駆動回路91,92の全てのトランジスタをオフとしている。
【0132】以上説明した直接出力トルク制御処理によれば、第1クラッチ45と第2クラッチ46とを共にオンとすることにより、エンジン50から出力される動力をトルク変換することなく直接駆動軸22に出力することができる。したがって、モータMG1およびモータMG2によるエネルギ損失を零とすることができる。しかも、この直接出力トルク制御処理は駆動軸22に出力すべきトルク(トルク指令値Td*)と駆動軸22の回転数Ndがエンジン50を効率よく運転できる範囲内にあるときに行なわれるから、駆動軸22に動力をより効率よく出力することができる。
【0133】なお、実施例の動力出力装置20では、モータMG1のトルク指令値Tc*とモータMG2のトルク指令値Ta*とに共に値0を設定し、モータMG1もモータMG2もない構成と同様の動作としたが、バッテリ94から放電される電気エネルギを用いてモータMG2から駆動軸22に動力を出力したり、モータMG2により駆動軸22から電力を回生してバッテリ94を充電するものとしてもよい。こうすれば、直接出力トルク制御処理を駆動軸22に出力すべきトルク(トルク指令値Td*)と駆動軸22の回転数Ndとがエンジン50を効率よく運転できる範囲(図8の領域PA)にあるときに限られずに、駆動軸22の回転数Ndがエンジン50を効率よく運転できる範囲にあれば実行することができる。以下、こうした直接出力トルク制御処理について図20の直接出力トルク制御ルーチンに基づき簡単に説明する。
【0134】図20の直接出力トルク制御ルーチンが実行されると、制御装置80の制御CPU90は、まず、駆動軸22の回転数Ndを読み込み(ステップS340)、読み込んだ駆動軸22の回転数Ndをエンジン50の目標回転数Ne*に設定する(ステップS342)、そして、第1クラッチ45および第2クラッチ46が共にオンであるかを調べ(ステップS344)、両クラッチ45,46が共にオンでないときには、両クラッチ45,46を共にオンとする(ステップS346)。次に、駆動軸22の回転数Ndにおけるエンジン50を効率よく運転できる範囲(図8の領域PA)内の最小トルクT1および最大トルクT2を読み込む処理を行なって(ステップS348)、トルク指令値Td*を読み込んだ最小トルクT1および最大トルクT2と比較する(ステップS350)。なお、実施例では、最小トルクT1および最大トルクT2の読み込みは、駆動軸22の各回転数Ndに対するエンジン50を効率よく運転できる範囲の最小トルクT1と最大トルクT2とを実験等により求めて予めROMに記憶しておき、駆動軸22の回転数Ndが読み込まれると、この回転数Ndとマップとから最小トルクT1および最大トルクT2を導出するものとした。
【0135】トルク指令値Td*が最小トルクT1以上で最大トルクT2以下であれば、エンジン50の目標トルクTe*にトルク指令値Td*を設定し(ステップS354)、トルク指令値Td*が最小トルクT1未満のときには目標トルクTe*に最小トルクT1を設定し(ステップS352)、トルク指令値Td*が最大トルクT2より大きいときには目標トルクTe*に最大トルクT2を設定する(ステップS356)。このように設定することにより、エンジン50の目標トルクTe*と目標回転数Ne*の運転ポイントは前述したエンジン50を効率よく運転できる範囲(図8の領域PA)内となる。
【0136】続いて、モータMG1のトルク指令値Tc*に値0を設定すると共に(ステップS358)、トルク指令値Td*からエンジン50の目標トルクTe*を減じたものをモータMG2のトルク指令値Ta*に設定する(ステップS360)。こうしてエンジン50の目標トルクTe*,目標回転数Ne*,モータMG1のトルク指令値Tc*およびモータMG2のトルク指令値Ta*を設定すると、これらの設定値を用いてモータMG1,モータMG2およびエンジン50の各制御(ステップS362ないしS366)を行なう。
【0137】図21は、こうした図20の直接出力トルク制御ルーチンを実行した際の駆動軸22に動力が出力される様子を例示する説明図である。いま、駆動軸22が回転数Nd1で回転しておりアクセルペダル64の踏込量に応じて定まるトルク指令値Td*が値Td1であるとき、すなわち駆動軸22を運転ポイントPd1で運転したいときを考える。回転数Nd1はエンジン50を効率よく運転できる範囲PA内にあるが、トルク指令値Td*はこの範囲PAの上限を大きく上回る状態である。このとき、エンジン50の目標トルクTe*には回転数Nd1における範囲PAの上限値のトルク(値Te1)が最大トルクT2として設定され(ステップS356)、エンジン50の目標回転数Ne*には回転数Nd1がそのまま設定されるから(ステップS342)、エンジン50は、トルクTe1と回転数Nd1とにより表わされる運転ポイントPe1で運転されることになる。モータMG2のトルク指令値Ta*は、トルク指令値Td*(値Td1)からエンジン50の目標トルクTe*(値Te1)を減じたトルク(値Ta1)として求められるから(ステップS360)、駆動軸22に与えられるエネルギは、第1クラッチ45と第2クラッチ46とが共にオンとされることによりエンジン50から直接駆動軸22に出力されるエネルギ(Te1×Nd1)にモータMG2から直接駆動軸22に出力されるエネルギ(Ta1×Nd1)を加えたエネルギ(Td1×Nd1)となる。なお、モータMG2から駆動軸22に出力されるエネルギは、バッテリ94からの放電される電力により賄われる。
【0138】次に、駆動軸22が回転数Nd2で回転しており出力トルク指令値Td*が値Td2であるとき、すなわち駆動軸22を図21中の運転ポイントPd2で運転したいときを考える。回転数Nd2はエンジン50を効率よく運転できる範囲PA内にあるが、トルク指令値Td*はこの範囲PAの下限を下回る状態である。このとき、エンジン50の目標トルクTe*には回転数Nd2における範囲PAの下限値のトルク(値Te2)が最小トルクT1として設定され(ステップS352)。エンジン50の目標回転数Ne*には回転数Nd2がそのまま設定されるから(ステップS342)、エンジン50は、トルクTe2と回転数Nd2とで表わされる運転ポイントPe2で運転することになる。モータMG2のトルク指令値Ta*は、トルク指令値Td*からエンジン50の目標トルクTe*を減じたトルク(負の値Ta2)として求められるから(ステップS360)、駆動軸22に与えられるエネルギは、第1クラッチ45と第2クラッチ46とが共にオンとされることによりエンジン50から直接駆動軸22に出力されるエネルギ(Te2×Nd2)からモータMG2により回生される電力に相当するエネルギ(Ta2×Nd2)を減じたエネルギ(Td2×Nd2)となる。なお、モータMG2により回生される電力は、バッテリ94の充電に用いられる。
【0139】以上説明したように、実施例の動力出力装置20で図20に示す変形例の直接出力トルク制御ルーチンを実行すれば、駆動軸22に出力すべきトルク(トルク指令値Td*)がエンジン50を効率よく運転できる範囲(図8の領域PA)内になくても駆動軸22の回転数Ndがこの範囲内にあれば直接出力トルク制御処理を行なうことができる。しかも、バッテリ94の充放電によりエンジン50の目標トルクTe*とトルク指令値Td*との偏差のトルクでモータMG2を駆動するから、駆動軸22には、所望のトルクを作用させることができる。
【0140】(6)モータ駆動トルク制御処理次に、モータ駆動トルク制御処理(図5のステップS120)について図22のモータ駆動トルク制御ルーチンに基づき説明する。本ルーチンは、図7のステップS142およびS144で駆動軸22に出力すべきエネルギPdが所定エネルギPMLより小さく、かつ、駆動軸22の回転数Ndが所定回転数NMLより小さいと判断されたときに実行される。
【0141】本ルーチンが実行されると、制御装置80の制御CPU90は、まず、エンジン50の運転の停止命令が出力されているか否かを調べ(ステップS370)、エンジン50の運転の停止命令が出力されているときにはエンジン50の運転を停止する信号をEFIECU70に送信し(ステップS372)、エンジン50の運転の停止命令が出力されていないときにはエンジン50をアイドル運転状態とする信号をEFIECU70に送信する(ステップS374)。ここで、エンジン50の運転の停止命令は、エンジン50の運転状態やエンジン50の排気管に設けられた図示しない触媒装置等の状態等に応じてEFIECU70から出力される場合や、運転者が図示しないエンジン50の停止を指示するスイッチをオンとすることに出力される場合などがある。なお、図示の都合上、図22では、エンジン50の制御をステップS390として表わしたが、前述したように、エンジン50の制御はこうしたトルク制御ルーチンとは別個独立に行なわれるため、制御装置80の制御CPU90がEFIECU70に対してエンジン50の運転を停止する信号やエンジン50をアイドル運転状態とする信号を送信すると、EFIECU70は、直ちにエンジン50を停止あるいはアイドル運転状態となるようエンジン50の制御を開始する。エンジン50の制御は、エンジン50の運転の停止命令が出力されているときには燃料噴射弁51からの燃料噴射を停止すると共に点火プラグ62への電圧の印加を停止する制御となり、エンジン50をアイドル運転状態とするときには、スロットルバルブを全閉とした上でエンジン50がアイドル回転数で運転されるようスロットルバルブを迂回する図示しないアイドル制御用の連通管に設けられた図示しないアイドルスピードコントロールバルブの開度の制御と燃料噴射量の制御とになる。
【0142】次に、第1クラッチ45がオフで第2クラッチ46がオン(図2の模式図の構成)となっているかを調べ(ステップS376)、両クラッチ45,46が設定しようとする状態にないときには、両クラッチ45,46を一旦共にオフとして(ステップS378)、その後第2クラッチ46をオンとする(ステップS380)。そして、モータMG2のトルク指令値Ta*に駆動軸22に出力すべきトルクであるトルク指令値Td*を設定し(ステップS382)、モータMG1のトルク指令値Tc*にその反力トルクに相当する値を設定して(ステップS384)、モータMG1,モータMG2およびエンジン50の各制御を行なう(ステップS386ないしS390)。
【0143】以上説明したモータ駆動トルク制御処理によれば、第1クラッチ45をオフとし第2クラッチ46をオンとして動力出力装置20を図2の模式図の構成とし、さらにモータMG1でモータMG2の反力トルクを支持することにより、モータMG2から出力される動力のみで車両を駆動することができる。しかも、こうしたモータ駆動トルク制御処理は、駆動軸22に出力すべきエネルギPdがエンジン50の効率の低い運転ポイントとなるときに行ない、エンジン50の運転を停止するかエンジン50をアイドル運転状態とするから、エンジン50を効率の低い運転ポイントで運転することによるエネルギ効率の低下を回避することができる。
【0144】実施例のモータ駆動トルク制御処理では、第1クラッチ45をオフとし第2クラッチ46をオンとして動力出力装置20を図2の模式図の構成とし、モータMG2から駆動軸22に動力を出力するものとしたが、第1クラッチ45をオンとし第2クラッチ46をオフとして動力出力装置20を図3の模式図の構成とし、モータMG1とモータMG2とにより駆動軸22に動力を出力するものとしてもよい。こうしたモータ駆動トルク制御処理は、例えば、図23に例示する変形例のモータ駆動トルク制御ルーチンによりなされる。以下、この変形例のモータ駆動トルク制御処理について簡単に説明する。
【0145】この変形例のルーチンでは、エンジン50の運転を停止する信号かエンジン50をアイドル運転状態とする信号をEFIECU70に送信した後に(ステップS400ないしS404)、第1クラッチ45がオンで第2クラッチ46がオフ(図3の模式図の構成)となっているかを調べ(ステップS406)、両クラッチ45,46が設定しようとする状態にないときには、両クラッチ45,46を一旦共にオフとして(ステップS408)、その後第1クラッチ45をオンとする(ステップS410)。そして、モータMG1のトルク指令値Tc*(ステップS412)、およびモータMG2のトルク指令値Ta*を設定する。両者の値は、駆動軸22から所望のトルクが出力されるように上式(1)に基づいて設定される。こうして設定されたトルク指令値に応じてモータMG1,モータMG2およびエンジン50の各制御を行なう(ステップS416ないしS419)。このようにトルク指令値Tc*,Ta*を設定することにより、モータMG1から駆動軸22にトルク指令値Td*に相当するトルクを出力することができる。なお、エンジン50が運転停止の状態のときには、モータMG2をロックアップするものとしてもよい。また、エンジン50をアイドル運転状態とするときには、モータMG2のトルク指令値Ta*をクランクシャフト56の回転数Neがアイドル回転数となるようフィードバック制御するものとしてもよい。
【0146】また、実施例のモータ駆動トルク制御処理では、第1クラッチ45をオフとし第2クラッチ46をオンとして動力出力装置20を図2の模式図の構成とし、モータMG2から駆動軸22に動力を出力するものとしたが、両クラッチ45,46を共にオンとして、モータMG2により駆動軸22を駆動するものとしてもよい。こうしたモータ駆動トルク制御処理は、例えば、図24に例示する変形例のモータ駆動トルク制御ルーチンによりなされる。以下、この変形例のモータ駆動トルク制御処理について簡単に説明する。
【0147】この変形例のルーチンが実行されると、制御装置80の制御CPU90は、まず、エンジン50の運転を停止する信号をEFIECU70に送信する(ステップS420)。このエンジン50の運転を停止する信号を受信したEFIECU70は、エンジン50への燃料噴射や点火を停止してエンジン50の運転を停止する。続いて、第1クラッチ45と第2クラッチ46とが共にオンとなっているかを調べ(ステップS421)、両クラッチ45,46が共にオンの状態にないときには、両クラッチ45,46を共にオフとする(ステップS422)。そして、モータMG1のトルク指令値Tc*に値0を設定する(ステップS423)。次に、エンジン50のクランクシャフト56の回転数Neを読み込み(ステップS424)、読み込んだ回転数Neに基づいてエンジン50のフリクショントルクTefを導出する(ステップS425)。ここで、フリクショントルクTefは、運転の停止しているエンジン50を回転数Neで回転させるのに必要なトルクであり、実施例では、実験などによりエンジン50の回転数NeとフリクショントルクTefとの関係を予め求めてマップとしてROMに記憶しておき、回転数Neが読み込まれると、このマップを用いて読み込んだ回転数Neに対応するフリクショントルクTefを導出するものとした。そして、導出したフリクショントルクTefと駆動軸22に出力すべきトルク(トルク指令値)Td*と加えた値をモータMG2のトルク指令値Ta*として設定し(ステップS426)、設定した値でモータMG1とモータMG2とが動作するようモータMG1とモータMG2の制御を行なう(ステップS427およびS428)。
【0148】このように変形例のモータ駆動トルク制御処理とすれば、モータMG2のトルク指令値Ta*にフリクショントルクTefとトルク指令値Td*と加えた値を設定することにより、両クラッチ45,46を共にオンとした状態でエンジン50をモータリングしながら駆動軸22にアクセルペダル64踏込量に応じたトルク(値Td*)を出力することができる。なお、この変形例では、エンジン50のフリクショントルクTefの導出をエンジン50の回転数Neに基づいて行なったが、両クラッチ45,46が共にオンとされてクランクシャフト56と駆動軸22とが機械的に結合しているから、駆動軸22の回転数Ndに基づいて導出するものとしてもよいことは勿論である。
【0149】以上説明した運転制御によれば、運転者の所望する動力を駆動軸22に出力することができる。しかも、運転者の所望する動力(エネルギPd)やバッテリ94の残容量BRM,駆動軸22の回転数Ndに応じてより効率のよい運転モードを選択するから、装置全体のエネルギ効率をより高くすることができる。さらに、各運転モードでエンジン50の目標回転数Ne*と駆動軸22の回転数Ndとに応じて第1クラッチ45および第2クラッチ46を操作することにより、エンジン50から出力された動力をトルク変換する際のモータMG1とモータMG2のエネルギ損失を小さくすることができる。この結果、装置全体のエネルギ効率をより高くすることができる。
【0150】実施例の運転制御では、運転者の所望する動力(エネルギPd)やバッテリ94の残容量BRM,駆動軸22の回転数Ndに応じて通常運転トルク制御処理や充放電トルク制御処理,パワーアシストトルク制御処理,直接出力トルク制御処理,モータ駆動トルク制御処理を選択して実行するものとしたが、これらの処理のうちの一部の処理を行なわないものとしても差し支えない。
【0151】また、実施例の運転制御では、駆動軸22に出力すべきトルクであるトルク指令値Td*と駆動軸22の回転数Ndとがエンジン50を効率よく運転できる範囲(図8の領域PA)にあるときに直接出力トルク制御処理を行なったが、エンジン50の目標回転数Ne*と駆動軸22の回転数Ndとが所定の範囲内にあるとき又はエンジン50の回転数Neと駆動軸22の回転数Ndの偏差である回転数差Ncが所定範囲内にあるときに直接出力トルク制御処理を行なうものとしてもよい。通常、モータは定格値近くの運転状態のときにもっとも効率が高くなり、その運転状態から著しく離れた運転状態のときには効率も低くなる。モータMG1の回転数は、エンジン50の回転数Neと駆動軸22の回転数Ndとの偏差である回転数差Ncであり、定常状態におけるエンジン50の目標回転数Ne*と駆動軸22の回転数Ndとの偏差となるから、この偏差が小さいときにはモータMG1は小さな回転数で運転されることになり、その効率も低くなる。したがって、上述のように、モータMG1の回転数が小さなときに直接出力トルク制御処理を行なえば、第1クラッチ45と第2クラッチ46とを共にオンとしてクランクシャフト56と駆動軸22とを機械的に接続することにより、モータMG1の効率の低下による装置全体のエネルギ効率の低下を防止することができる。なお、エンジン50の目標回転数Ne*と駆動軸22の回転数Ndの偏差が小さいときには、エンジン50の目標トルクTe*と駆動軸22に出力すべきトルク(トルク指令値Td*)との偏差も小さくなるから、通常は、エンジン50を効率よく運転できる範囲(図8の領域PA)にあるときに該当する。
【0152】実施例の運転制御では、駆動軸22に出力すべきトルク(トルク指令値Td*)と駆動軸22の回転数Ndとがエンジン50を効率よく運転できる範囲(図8の領域PA)内にあるときや、トルク指令値Td*がエンジン50を効率よく運転できる範囲内になくても駆動軸22の回転数Ndがこの範囲内にあるときに直接出力トルク制御処理(図19または図20)を行なった。かかる場合に限らず、例えば、モータMG1に何らかの異常が生じたときに、第1クラッチ45および第2クラッチ46を共にオンとして、エンジン50とモータMG2とから駆動軸22に動力を出力するものとしてもよい。この場合、車両を発進させるときや、車速が小さく駆動軸22の回転数Ndがエンジン50の運転可能な最小回転数以下の回転数となるときには、エンジン50をモータリングした状態でモータMG2により駆動軸22に動力を出力して車両を駆動すればよい。そして、駆動軸22の回転数Ndがエンジン50の運転可能な最小回転数以上になったときにエンジン50を始動して、エンジン50から出力される動力とモータMG2から出力される動力とを駆動軸22に出力して車両を駆動するものとすればよい。こうすれば、モータMG1に異常が生じたときでも駆動軸22に動力を出力して車両を駆動することができる。
【0153】実施例の運転制御では、駆動軸22に出力すべきエネルギPdが所定エネルギPMLより小さく、かつ、駆動軸22の回転数Ndが所定回転数NMLより小さいと判断されたときモータ駆動トルク制御処理を行なうものとしたが、こうした駆動軸22へ出力すべきエネルギPdや駆動軸22の回転数Ndに拘わらずモータ駆動トルク制御処理を実行するものとしてもよい。例えば、図示しないモータ駆動モード設定スイッチを運転者がオンとしたときにモータ駆動トルク制御処理を実行するものとしてもよい。
【0154】D.エンジンの始動制御次に、実施例の動力出力装置20におけるエンジン50の始動制御処理について説明する。実施例の動力出力装置20では、車両が停止状態にあるときにエンジン50を始動する場合のほか、エンジン50を停止した状態で前述のモータ駆動トルク制御処理により車両の走行を開始し、その後他のトルク制御に切り換える際にエンジン50を始動する場合、すなわち車両が走行状態にあるときにエンジン50を始動する場合がある。まず、車両が停止状態にあるときのエンジン50の始動処理を図25のエンジン始動処理ルーチンに基づいて説明し、その後、車両が走行状態にあるときのエンジン50の始動処理を説明する。
【0155】図25のエンジン始動処理ルーチンは、例えば、運転者によりスタータスイッチ79をオンされたときに実行される。本ルーチンが実行されると、制御装置80の制御CPU90は、まず、第1クラッチ45をオンとすると共に(ステップS430)、第2クラッチ46をオフとして(ステップS432)、動力出力装置20を図3の模式図の構成とする。続いて、モータMG2のトルク指令値Ta*にスタータトルクTSTを設定し(ステップS434)、モータMG2の制御を行なう(ステップS436)。このとき、プラネタリギヤ200を介して動力が駆動軸22に出力されないように、モータMG1のトルク指令値Tc*を設定し(ステップS435)、モータMG1の制御を行なう(ステップS436)。このように両クラッチ45,46を操作してモータMG2を制御することにより、エンジン50のクランクシャフト56はモータリングされる。ここで、スタータトルクTSTは、エンジン50のフリクショントルクに打ち勝ってエンジン50を所定回転数NST以上の回転数で回転させることができるトルクとして設定されるものである。
【0156】次に、エンジン50の回転数Neを読み込み(ステップS437)、読み込んだ回転数Neを所定回転数NSTと比較する(ステップS438)。ここで、所定回転数NSTは、エンジン50を安定して連続運転できる最低の回転数以上の回転数として設定されるものである。エンジン50の回転数Neが所定回転数NSTより小さいときには、ステップS436に戻ってステップS436ないしS440の処理を繰り返し、エンジン50の回転数Neが所定回転数NST以上となるのを待つ。エンジン50の回転数Neが所定回転数NST以上になると、EFIECU70による燃料噴射制御や点火制御を開始する信号をEFIECU70に送信して(ステップS439)、本ルーチンを終了する。なお、燃料噴射制御や点火制御を開始する信号を受信したEFIECU70は、エンジン50がアイドル回転数で運転されるよう燃料噴射弁51からの燃料噴射制御や点火プラグ62における点火制御を開始すると共に、前述した図示しないアイドルスピードコントロールバルブの開度の制御を行なう。
【0157】以上説明したエンジン始動処理によれば、車両が停止している状態でエンジン50を始動することができる。しかも第1クラッチ45をオンとし第2クラッチ46をオフとしてクランクシャフト56にモータMG2のロータ41が接続された状態とし、モータMG2によりエンジン50を回転させるから、エンジン50の始動用のモータを別に設ける必要がない。この結果、装置全体をコンパクトにすることができる。
【0158】実施例のエンジン始動処理では、第1クラッチ45をオンとし第2クラッチ46をオフとしてモータMG2によりエンジン50をモータリングしたが、第1クラッチ45をオフとし第2クラッチ46をオンとした状態でモータMG1によりエンジン50をモータリングするものとしてもよい。この場合、図26に例示するエンジン始動処理ルーチンを実行すればよい。以下、この処理について簡単に説明する。
【0159】図26のエンジン始動処理ルーチンが実行されると、制御装置80の制御CPU90は、まず、第1クラッチ45をオフとし第2クラッチ46をオンとして動力出力装置20を図2の模式図の構成とする(ステップS440およびS441)。そして、モータMG1のトルク指令値Tc*にスタータトルクTSTを設定すると共に(ステップS442)、モータMG2の三相コイル44の各相に流す電流Ia(Iua,Iva,Iwa)に所定電流IST(IuST,IvST,IwST)を設定し(ステップS443)、モータMG1およびモータMG2の制御を行なう(ステップS445およびS446)。ここで、所定電流ISTは、スタータトルクTSTをクランクシャフト56に作用させても駆動軸22が回転しないトルクをモータMG2に発生させる電流値として設定されるものである。このようにモータMG1およびモータMG2を制御することにより、駆動軸22はモータMG2によりその回転が制限されて固定され、エンジン50のクランクシャフト56は、スタータトルクTSTを出力するモータMG1によりモータリングされる。そして、図25のエンジン始動処理ルーチンと同様に、エンジン50の回転数Neが所定回転数NST以上となるのを待って(ステップS447およびS448)、EFIECU70による燃料噴射制御や点火制御を開始する信号をEFIECU70に送信する(ステップS449)。
【0160】このように第1クラッチ45をオフとし第2クラッチ46をオンとした図2の模式図の構成でも車両が停止している状態でモータMG1およびモータMG2によりエンジン50を始動することができる。したがって、この場合としてもエンジン50の始動用のモータを別に設ける必要がなく、装置全体をコンパクトにすることができる。
【0161】次に、車両が走行状態にあるときのエンジン50の始動処理について説明する。車両が走行状態にあるときのエンジン50の始動処理は、図27に例示するモータ駆動時エンジン始動処理ルーチンにより行なわれる。このルーチンは、エンジン50を停止した状態でモータ駆動トルク制御処理がなされているときに、運転者がエンジン50を始動する図示しないスイッチをオンとしたときや、バッテリ94の残容量BRMが閾値BLより小さくなったときなどのように図7の運転モード判定処理ルーチンでモータ駆動モードとは異なる運転モードが設定されたときに実行される。なお、モータ駆動トルク制御処理は、図22に例示するモータ駆動トルク制御ルーチンによる処理、すなわち、第1クラッチ45をオフとし第2クラッチ46をオンとして動力出力装置20を図2の模式図の構成とし、この状態でモータMG2から駆動軸22にトルク指令値Td*を出力する処理により行なわれている。
【0162】本ルーチンが実行されると、制御装置80の制御CPU90は、まず、モータMG1のトルク指令値Tc*にスタータトルクTSTを設定すると共に(ステップS450)、モータMG2のトルク指令値Ta*にトルク指令値Td*にスタータトルクTSTを加えた値を設定する(ステップS452)。そして、モータMG1およびモータMG2の各制御を行なう(ステップS454およびS456)。本ルーチンは、前述したように動力出力装置20を図2の模式図の構成としたときに行なわれる。この構成でモータMG1からクランクシャフト56にスタータトルクTSTを出力すると、エンジン50はこのトルクによりモータリングされる。このとき、プラネタリギヤ200の作用により、スタータトルクTSTに応じたトルクが反力として駆動軸22に出力される。このため、図22のモータ駆動トルク制御ルーチンのステップS384と同様にモータMG2のトルク指令値Ta*にトルク指令値Td*を設定するものとすれば、モータMG1から駆動軸22に出力される反トルクの分だけ運転者が欲するトルク(トルク指令値Td*)より小さなトルクが駆動軸22に出力されることになり、エンジン50の始動に伴ってトルクショックが生じることになる。実施例では、ステップS452に示すように、モータMG2のトルク指令値Ta*にトルク指令値Td*にスタータトルクTSTを加えた値を設定することにより、こうしたトルクショックを打ち消している。
【0163】このようにエンジン50のモータMG1によるモータリングが行なわれると、図25のエンジン始動処理ルーチンのステップS437およびS438の処理と同様に、エンジン50の回転数Neが所定回転数NST以上となるのを待って(ステップS458およびS460)、EFIECU70による燃料噴射制御や点火制御を開始する信号をEFIECU70に送信する(ステップS462)。
【0164】以上説明した実施例のモータ駆動時エンジン始動処理ルーチンによれば、車両がモータMG2から出力される動力のみによって走行している最中にエンジン50を始動することができる。このエンジン50の始動はモータMG1によりなされるから、エンジン50の始動用にモータを別に設ける必要がない。しかも、エンジン50のモータリングの際にモータMG1から駆動軸22に出力されるトルクを打ち消すようモータMG2から駆動軸22に出力するトルクを制御するから、エンジン50を始動する際に生じるトルクショックを小さくしたり、或いはなくすことができる。
【0165】実施例のモータ駆動時エンジン始動処理ルーチンは、第1クラッチ45をオフとし第2クラッチ46をオンとして動力出力装置20を図2の模式図の構成とした状態でモータMG2から駆動軸22に所望のトルク(トルク指令値Td*)を出力する図22のモータ駆動トルク制御ルーチンが行なわれているときにエンジン50を始動する処理であるが、第1クラッチ45をオンとし第2クラッチ46をオフとして動力出力装置20を図3の模式図の構成とした状態でモータMG2によりクランクシャフト56を固定すると共にモータMG1から駆動軸22にトルク指令値Td*を出力する図23のモータ駆動トルク制御ルーチンが行なわれているときも、図27に例示するモータ駆動時エンジン始動処理ルーチンと同様の制御ルーチンによりエンジン50の始動がなされる。
【0166】このルーチンによれば、モータMG1からモータMG2により反力を得て出力される動力により走行している最中にエンジン50を始動することができる。このエンジン50の始動はモータMG2によりなされるから、エンジン50の始動用にモータを別に設ける必要がない。しかも、エンジン50のモータリングの際でもモータMG1から駆動軸22に出力されるトルクに変動はないから、エンジン50を始動する際でもトルクショックはない。
【0167】実施例のモータ駆動時エンジン始動処理ルーチンは、第1クラッチ45をオフとし第2クラッチ46をオンとして動力出力装置20を図2の模式図の構成とした状態でモータMG2から駆動軸22に所望のトルク(トルク指令値Td*)を出力する図22のモータ駆動トルク制御ルーチンが行なわれているときにエンジン50を始動する処理であるが、第1クラッチ45と第2クラッチ46とを共にオンとした状態でモータMG2によりエンジン50をモータリングしながら駆動軸22に所望のトルク(トルク指令値Td*)を出力する図24のモータ駆動トルク制御ルーチンが行なわれているときには、図28に例示するモータ駆動時エンジン始動処理ルーチンによりエンジン50の始動がなされる。
【0168】この図28に例示するモータ駆動時エンジン始動処理ルーチンが実行されると、制御装置80の制御CPU90は、まず、図24のモータ駆動トルク制御ルーチンのステップS424ないしS427と同一の処理、すなわちエンジン50の回転数Neの読み込んで(ステップS490)、読み込んだ回転数Neに基づいてエンジン50のフリクショントルクTefを導出し(ステップS491)、導出したフリクショントルクTefにトルク指令値Td*を加えてモータMG2のトルク指令値Ta*を設定して(ステップS492)、モータMG2の制御を行なう(ステップS493)。
【0169】次に、読み込んだ回転数Neを所定回転数NSTと比較し(ステップS438)、回転数Neが所定回転数NSTより小さいときには、エンジン50を安定して運転することができる回転数にないと判断し、ステップS490に戻って回転数Neが所定回転数NST以上となるまでステップS490ないしS494の処理を繰り返す。このように図24のモータ駆動トルク制御ルーチンのステップS424ないしS427と同一の処理を繰り返すのは、この始動処理ルーチンがモータMG2によって駆動しているときに実行されるからである。すなわち、クランクシャフト56と駆動軸22とが第1クラッチ45と第2クラッチ46とにより結合されているため、エンジン50の回転数Neを駆動軸22の回転数Ndに優先して制御することができないからである。
【0170】エンジン50の回転数Neが所定回転数NST以上のときには、エンジン50を無負荷で回転数Neで運転するときの燃料噴射量を算出し(ステップS495)、算出した燃料噴射量を燃料噴射弁51から噴射する燃料噴射制御と点火制御とを実施するようEFIECU70に向けて信号を送信する(ステップS496)。ここで、無負荷で回転数Neのときの燃料噴射量は、実施例では、無負荷状態のエンジン50の回転数Neとそのときの燃料噴射量とを実験などにより予め求めてマップとしてROMに記憶しておき、回転数Neが与えられると、このマップから回転数Neに対応する燃料噴射量を導出することにより求めた。そして、モータMG2のトルク指令値Ta*にトルク指令値Td*を設定し(ステップS497)、モータMG2の制御を行なって(ステップS498)、本ルーチンを終了する。このようにモータMG2のトルク指令値Ta*の設定の計算からエンジン50のフリクショントルクTefを除くのは、エンジン50は無負荷で回転数Neで運転されるからである。
【0171】以上説明した変形例のモータ駆動時エンジン始動処理ルーチンによれば、モータMG2によりエンジン50を回転しながら駆動軸22に動力を出力している最中にエンジン50を始動することができる。しかも、エンジン50を無負荷で回転数Neで運転されるよう燃料噴射量を調整すると共にモータMG2のトルク指令値Ta*にトルク指令値Td*を設定するから、エンジン50を始動する際のトルクショックを小さくすることができる。なお、変形例のモータ駆動時エンジン始動処理ルーチンでは、エンジン50を無負荷で回転数Neで運転するものとしたが、負荷トルクTeで回転数Neで運転するものとしてもよい。この場合、エンジン50の始動の際のトルクショックを小さくするためには、モータMG2のトルク指令値Ta*にトルク指令値Td*から負荷トルクTeを減じたものを設定すればよい。また、変形例のモータ駆動時エンジン始動処理ルーチンでは、エンジン50の回転数Neを駆動軸22の回転数Ndに優先して制御することができないために、ステップS494でエンジン50の回転数Neが所定回転数NSTより小さいときにはステップS490ないしS494の処理を繰り返すものとしたが、動力出力装置20を駆動軸22の回転数Ndを比較てき自由に変更できるもの、例えば船舶や航空機に搭載したときなどには、エンジン50の回転数Neを駆動軸22の回転数Ndに優先して制御するものとしてもよい。
【0172】E.後進制御次に実施例の動力出力装置20によって車両を後進させる際の制御について説明する。車両の後進制御は、図29に例示する後進時トルク制御ルーチンによりなされる。本ルーチンは、運転者によりシフトレバー82がリバースの位置にセットされたのをシフトポジションセンサ84により検出されたときに所定時間毎(例えば、8msec毎)に繰り返し実行される。
【0173】本ルーチンが実行されると、制御装置80の制御CPU90は、まず、第1クラッチ45がオフで第2クラッチ46がオンの状態(図2の模式図の構成の状態)にあるかを調べ(ステップS500)、この状態にないときには、両クラッチ45,46を一旦共にオフとした後に(ステップS502)、第2クラッチ46をオンとする(ステップS504)。両クラッチ45,46が設定すべき状態にないときに両クラッチ45,46を一旦共にオフとする理由については説明した。次に、駆動軸22の回転数Ndを読み込むと共に(ステップS506)、アクセルペダルポジションセンサ64aにより検出されるアクセルペダルポジションAPを読み込み(ステップS508)、読み込んだ駆動軸22の回転数NdとアクセルペダルポジションAPとに基づいて駆動軸22に出力すべきトルク(トルク指令値Td*)を導出する。こうしたトルク指令値Td*の導出の手法は図5の運転制御ルーチンのステップS104の処理で説明した手法と同様であるが、シフトレバー82がリバースに設定されていることから、ここではトルク指令値Td*として負の値が導出される。
【0174】トルク指令値Td*を導出すると、バッテリ94の残容量BRMを読み込み(ステップS512)、読み込んだバッテリ94の残容量BRMを閾値BLと比較する(ステップS514)。バッテリ94の残容量BRMが閾値BL以上のときには、バッテリ94の残容量BRMはモータMG2を駆動するのに十分な状態にあると判断し、エンジン50が運転されているか否かを調べ(ステップS516)、エンジン50が運転されているときには、エンジン50をアイドル運転状態とする信号をEFIECU70に送信する