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【発明の名称】 電気自動車及びその動力モータ
【発明者】 【氏名】鶴巻 日出夫

【要約】 【課題】軽量化及び低コスト化が可能な電気自動車及びその動力モータを提供する。

【解決手段】動力モータ20は直流ブラシレスモータにより構成されており、単一のステータ22と、同軸上に並んで配置された2個のロータ23,24とからなる。各ローター23,24の回転軸25,30とは遊星歯車機構26,31及びユニバーサルジョイント29,34を介してそれぞれ左右の駆動輪11に連結されると共に、係合ボール36を備えたクラッチ機構によって互いに連結されている。ステータ22の電機子コイルは一方のローター23の回転位置に応じて通電制御され、両回転軸25,30間に回転数差が生じたときにはクラッチ機構が滑りを生ずる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 電気自動車の車体に取り付けられて左右の駆動輪を駆動するものであって、モータケース内に設けた単一のステータと、このステータに対して互いに独立して回転可能に設けられ右及び左の前記各駆動輪に連結された2個のローターとからなる電気自動車用の動力モータ。
【請求項2】 前記両ローターの回転軸は、所定以上のトルクで連結状態を解いて滑るクラッチ機構を介して連結されていることを特徴とする請求項1記載の動力モータ。
【請求項3】 車体に左右の駆動輪を駆動する動力モータを備えたものであて、前記動力モータは、モータケース内に設けた単一のステータと、このステータに対して互いに独立して回転可能に設けられ右及び左の前記各駆動輪に連結された2個のローターとからなることを特徴とする電気自動車。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、動力モータの構造を改良した電気自動車及びその動力モータに関する。
【0002】
【従来の技術】従来の電気自動車の駆動系としては、単一の動力モータからの回転力を左右両輪の回転数差を吸収するディファレンシャルギヤを介して左右の駆動輪に分配するものと、左右の各駆動輪毎にモータを備えて左右両輪をそれぞれ必要な回転数で駆動するものとの2つのタイプがあった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】前者のものは、比較的大型のディファレンシャルギヤが必須であるから、重量及びコストが嵩むという欠点がある。また、後者のものは、モータ及びそのコントローラが2組必要であるから、やはり重量及びコストが嵩むという欠点がある。
【0004】本発明は、単一のモータを使いながら、ディファレンシャルギヤを不要にできて軽量化及び低コスト化を図ることができる電気自動車及びその動力モータを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明にかかる動力モータは、電気自動車の車体に取り付けられて左右の駆動輪を駆動するものであって、モータケース内に設けた単一のステータと、このステータに対して互いに独立して回転可能に設けられ右及び左の前記各駆動輪に連結された2個のローターとから構成したところに特徴を有する。
【0006】請求項2の発明にかかる動力モータは、上記モータにおいて、両ローターの回転軸を所定以上のトルクで連結状態を解いて滑るクラッチ機構を介して連結させたところに特徴を有する。
【0007】請求項3の発明にかかる電気自動車は、車体に左右の駆動輪を駆動する動力モータを備えたものであて、動力モータを、モータケース内に設けた単一のステータと、このステータに対して互いに独立して回転可能に設けられ右及び左の前記各駆動輪に連結された2個のローターとから構成したところに特徴を有する。
【0008】
【発明の作用・効果】請求項1及び請求項3の発明によれば、ステータが単一であるから、2個の独立のモータを設ける場合に比べて軽量化が可能であり、また、両駆動輪毎に独立のローターが備えられているから、ディファレンシャルギヤが不要であってやはり軽量化に寄与する。
【0009】請求項2の発明によれば、車両が直進しているときには、左右の両駆動輪は同一の回転数で回転するから、両ローターの回転軸間にトルクは作用せず、クラッチ機構は連結状態にあって両ローターは同期して回転する。そして、車両が旋回することによって駆動輪に回転数差が発生した場合には、これらに連なる両ローターの回転軸間にトルクが生じ、それが所定以上になったところで、クラッチ機構が解かれて自由な回転数差で回転できるようになる。従って、殆どの場合には両ローターが同期回転して高効率で回転し、車両の旋回時のみにクラッチ機構が滑って安定的な旋回が可能である。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。10は電気自動車の車体、11は左右の各駆動輪であり、各駆動輪11の駆動軸11Aが軸受12を介してショックアブソーバ13に連結され、これを介して車体10に支持された形となっている。車体10には、左右の各駆動輪11の中央に位置して動力モータ20が固定されている。
【0011】この動力モータ20は例えばDCブラシレスモータにより構成しており、その具体的構造は次のようである。モータケース21内に単一のステータ22が配置されており、これは詳細には図示しないがステータコアに電機子巻線を巻装した周知の構造である。このステータ22の内周側には円柱状をなす回転子収容空間が形成され、ここに2個のロータ23、24が同軸上に並んで配置されている。各ローター23,24は、共に前記回転子収容空間の約半分を占める大きさに設定されており、それぞれ外周部に界磁部23A,24Aを有する(図2参照)。
【0012】一方のローター23の回転軸25は、他方のローター24とは反対側の端部がステータ22の側方に突出して遊星歯車機構26の太陽歯車26Aに直結されている。この遊星歯車機構26は例えばリングギヤ26Cをモータケース21に固定したプラネタリ型であって、遊星歯車26Bに出力軸27が連結され、これがモータケース21に設けられた軸受28を貫通してモータケース21の外側に突出し、ユニバーサルジョイント29を介して一方の駆動軸11Aに連結されている。また、他方のローター24の回転軸30は、前記一方のローター23とは反対側の端部がステータ22の側方に突出してもう一組の遊星歯車機構31の太陽歯車31Aに直結されるとともに、その遊星歯車機構31の遊星歯車31Bに連結した出力軸32はモータケース21に設けられた軸受33を貫通してモータケース21の外側に突出し、やはりユニバーサルジョイント34を介して他方の駆動軸11Aに連結されている。
【0013】一方、上記ローター23の各回転軸25のモータケース21内の端部には、図3に示すように、反対側のローター24側に突出する小径の連結軸部25Aが突設され、相手側ローター24の回転軸30の端部に形成した収容凹部30A内に外周に所定の隙間を残して嵌合され、軸受30Bを介して回転自在となっている。
【0014】そして、上記連結軸部25Aには外周面から中心軸方向に向かってボール収容孔35が形成され、その内部に鋼鉄製の係合ボール36が圧縮コイルスプリング37によって常時突出方向に付勢されて収容されている。そして、相手側の回転軸30の収容凹部30Aの内周壁には上記係合ボール36が係合する係合孔38が形成され、その係合ボール36が係合孔38に係合した状態では両回転軸25,30が互いに一体的に回転するようになっている。また、両回転軸25,30に回転差が生ずるときには、両回転軸25,30間にトルクが発生し、そのトルクが所定以上に達すると、係合ボール36が圧縮コイルスプリング37を圧縮してボール収容孔35内に押し戻され、もって両回転軸25,30間の連結を解いた状態となるのであり、従って、上記係合ボール36及びその関連構造は所定以上のトルクで連結状態を解いて滑るクラッチ機構を構成する。
【0015】なお、図示はしないが、ステータ22側には一方のローター23の回転位置を検出するホール素子等からなる周知の位置検出手段が設けられ、これによって検出されたローター23の位置に応じてステータ22の所要の電機子コイルが通電されてローター23,24にトルクを発生させるようになっており、そのための制御装置39及び電源バッテリー40は車体10の所定の位置に据え付けられている。
【0016】本実施例は以上の構成であり、次にその作用を説明する。電気自動車は動力モータ20を駆動源として走行し、その動力モータ20は、ローター23の回転位置を検出して電機子コイルに順次通電することによって駆動される。電気自動車が直進する場合には、左右の駆動輪11は同一の回転数で駆動すればよいから、動力モータ20の電機子コイルが一方のローター23の位置に基づいて駆動されるとしても問題はなく、両ローター23,24は同期して回転する。このとき、クラッチ機構の係合ボール36は係合孔38に係合していて両ローター23,24の回転軸25,30はクラッチ機構によって連結された状態にあるから、両ローター23,24は確実に同期回転してモータ効率が低下することはない。
【0017】一方、電気自動車のコーナリング時、外側の駆動輪11は内側に比べて高い回転数で回転する。すると、両ローター23,24の回転軸25,30間に回転数差が生ずるから、両軸25,30間にトルクが発生し、このために係合ボール36が圧縮コイルスプリング37の弾発力に抗してボール収容孔35内に押し戻される。すなわち、クラッチ機構は両回転軸25,30間の連結を解いた状態となるから、両回転軸25,26は互いに拘束されることなく自由に回転することになる。従って、単一のステータ22しか備えないとしても、電気自動車のコーナリング時に生ずる左右両輪の回転差の影響を受けることがない。
【0018】以上述べたように、本実施形態の動力モータ20は単一のステータ22と2つのローター23,24によって左右の駆動輪11を効率的に駆動できるから、2台の動力モータとその制御装置とを備えるものに比べて車両の小型軽量化を図ることができる。また、1台の動力モータによってディファレンシャルギヤを介して両輪を駆動するものに比べ、重量が嵩むディファレンシャルギヤが不要になる分、やはり軽量化が可能である。
【0019】しかも、本実施形態では、2つのローター23,24をクラッチ機構を介して連結する構成としたから、同一回転数で回転するときにはクラッチ機構が連結状態となって両ローター23,24が同期回転して、DCブラシレスモータとしての効率を低下させることがない。また、回転数差が発生して所定以上のトルクが発生したときには、両回転軸25,30の連結が解かれて滑りが発生するようにしたから、車両は安定的に旋回することができる。
【0020】なお、本発明では動力モータ20をDCブラシレスモータとして構成したから、上述のクラッチ機構を備えることが好ましいが、これを誘導モータや回転電機子形の直流ブラシ付モータ等によって構成する場合には、両者間で必要な滑りが自然に発生するから、クラッチ機構は設けなくともよい。
【出願人】 【識別番号】000101639
【氏名又は名称】アラコ株式会社
【出願日】 平成10年(1998)4月24日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】後呂 和男 (外1名)
【公開番号】 特開平11−308708
【公開日】 平成11年(1999)11月5日
【出願番号】 特願平10−115785