| 【発明の名称】 |
電気車の制御装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】中山 智晴
【氏名】岩堀 道雄
|
| 【要約】 |
【課題】全軸空転時や全軸滑走時にも、ほぼ車両速度に応じた基準速度演算により空転滑走制御を良好に行わせる。加速性能、乗り心地を向上させる。
【解決手段】複数の車輪をそれぞれ駆動するモータ等の各回転速度相当値が入力されて基準速度演算値を出力する基準速度演算手段と、前記基準速度演算値と各回転速度相当値との差から車輪の空転・滑走を検知して各モータ等のトルク指令に乗じるトルク係数を演算する空転滑走制御手段とを有する制御装置に関する。基準速度演算手段7Aは、複数の回転速度相当値の中から1つを逐次選択する回転速度選択手段701と、選択した回転速度相当値を微分して求めた加速度を遅延させる一次遅れフィルタ706と、回転速度選択手段701により選択した回転速度相当値の変化率を前記フィルタ706により遅延させた加速度に応じて制限し、基準速度演算値として出力する変化率制限手段704とを備える。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数の車輪をそれぞれ駆動するトルク発生手段の各回転速度相当値が入力されて基準速度演算値を出力する基準速度演算手段と、前記基準速度演算値とトルク発生手段の各回転速度相当値との差から車輪の空転・滑走を検知して各トルク発生手段のトルク指令に乗じるトルク係数を演算する空転滑走制御手段とを有する電気車の制御装置において、前記基準速度演算手段は、複数の回転速度相当値の中から1つの回転速度相当値を逐次選択する回転速度選択手段と、選択した回転速度相当値を微分して求めた加速度を遅延させる遅延要素と、前記回転速度選択手段により選択した回転速度相当値の変化率を前記遅延要素により遅延させた加速度に応じて制限し、基準速度演算値として出力する変化率制限手段と、を備えたことを特徴とする電気車の制御装置。 【請求項2】 請求項1記載の電気車の制御装置において、トルク発生手段がトルクを出力していない惰行運転中に、基準となる車輪の径に対する各車輪の径の比率を演算し、演算された車輪径の比率に応じて各回転速度相当値を補正する車輪径補正手段を備えたことを特徴とする電気車の制御装置。 【請求項3】 請求項1または2記載の電気車の制御装置において、回転速度選択手段は、力行時には複数の回転速度相当値の中の最小値を、制動時には複数の回転速度相当値の中の最大値を逐次選択することを特徴とする電気車の制御装置。 【請求項4】 請求項1,2または3記載の電気車の制御装置において、基準速度演算手段は、回転速度選択手段により選択した回転速度相当値の変化率を前記遅延要素により遅延させた加速度とトルク発生手段のトルク指令とに応じて制限し、基準速度演算値として出力することを特徴とする電気車の制御装置。 【請求項5】 請求項4記載の電気車の制御装置において、基準速度演算手段は、トルク発生手段のトルク指令を遅延させる遅延要素と、この遅延要素により遅延させたトルク指令で現在のトルク指令を除算する除算手段とを有し、この除算手段の出力と遅延させた加速度とに応じて回転速度相当値の変化率を制限することを特徴とする電気車の制御装置。 【請求項6】 請求項1,2,3または4記載の電気車の制御装置において、複数の車輪のすべてが空転する全軸空転または複数の車輪のすべてが滑走する全軸滑走を検知する検知手段と、この検知手段による全軸空転または全軸滑走の検知時に、遅延させた加速度をホールドするホールド手段とを備えたことを特徴とする電気車の制御装置。 【請求項7】 請求項5記載の電気車の制御装置において、複数の車輪のすべてが空転する全軸空転または複数の車輪のすべてが滑走する全軸滑走を検知する検知手段と、この検知手段による全軸空転または全軸滑走の検知時に、遅延させた加速度及び遅延させたトルク指令をホールドするホールド手段とを備えたことを特徴とする電気車の制御装置。 【請求項8】 請求項1,2,3,4,5,6または7記載の電気車の制御装置において、車両の後退時にトルク発生手段を起動する際に、前記変化率制限手段における変化率制限の下限値として上限値の逆極性の値を設定することを特徴とする電気車の制御装置。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、電気車において、車輪の空転・滑走を検知してモータ等の発生トルクを制御する制御装置に関する。 【0002】 【従来の技術】図10に、電気車1両の制御装置の全体構成例を示す。この例では、トルク発生手段としてモータを用いているが、他のトルク発生手段として空気ブレーキを用いる場合もある。以下、この従来技術の構成及び動作を説明する。まず、架線1からパンタグラフ2を介して直流電圧をインバータ装置3に印加する。インバータ装置3は直流/交流変換を行い、トルク指令T*1,T*2,T*3,T*4に応じたトルクで、4台のモータ41,42,43,44をそれぞれ駆動する。ここでは、インバータ装置3を4台のインバータによって構成し、各モータの発生トルクを個別に制御する場合を例示して説明するが、複数のモータを1台のインバータで駆動する場合もある。 【0003】インバータ装置3に入力されるトルク指令T*1,T*2,T*3,T*4は、トルク指令演算手段10により運転指令から演算される一括のトルク指令T*と、空転滑走制御手段8の出力であるトルク係数KT1,KT2,KT3,KT4とを、乗算器61,62,63,64により乗算した結果である。空転滑走制御手段8から出力されるトルク係数KT1,KT2,KT3,KT4は、基準速度演算手段7により演算される基準速度演算値fr(ref)と、速度検出値fr1,fr2,fr3,fr4とに基づいて演算される。速度検出値fr1,fr2,fr3,fr4は、各モータ41,42,43,44に取り付けられた速度センサ51,52,53,54の出力信号を、速度検出演算手段91,92,93,94により演算して得られる。 【0004】図11に、従来の基準速度演算手段7の構成例を示す。回転速度選択手段701では、各モータ41,42,43,44の回転速度の大きさ(|fr1|,|fr2|,|fr3|,|fr4|)の中から、力行中は最小の値を、制動中は最大の値をそれぞれ選択し、回転速度frとして出力することが通常行なわれる。ここで、場合によっては、力行中は2番目に小さい値を、制動中は2番目に大きい値を選択することもある。変化率制限手段704では、最大の下り勾配時に得られる車両の最大加速度、最大の上り勾配時に得られる車両の最大減速度、更に応荷重の誤差や線路条件の変化などを考慮したマージンを加えた一定値αmax1,−αmax2を用い、これらを各々上限値、下限値として回転速度frの単位時間当たりの変化率を制限し、基準速度演算値fr(ref)として出力する。 【0005】図10における空転滑走制御手段8及び基準速度演算手段7の動作について、第1番目のモータ41により駆動される車輪のみが空転した場合を例にとり、図12を用いて説明する。図12に示すようにある時点で空転が発生すると、空転の発生した車輪に繋がるモータ41の回転速度の大きさ|fr1|は、空転していない車輪の回転速度、すなわちほぼ車両速度に対応した回転速度の大きさよりも大きくなる。上記基準速度演算手段7では、この空転していない車輪に繋がる他のモータの回転速度を基準速度演算値fr(ref)とする。このため、基準速度演算値fr(ref)と、1番目のモータ41の回転速度の大きさ|fr1|との差Δfr1は、空転に伴って大きくなる。 【0006】そこで、この速度差Δfr1に応じて、時刻t1以後、1番目のモータ41のトルク係数KT1を絞り込み、時刻t2以後は一定に保つ。すなわち、1番目のモータ41のトルク指令T*1を絞り込むことにより、空転した車輪(モータ41による駆動車輪)の再粘着を図る。そして、時刻t2以後Δfr1が減少していき、車輪が再粘着したと判断されるならば、時刻t3以後、トルク係数KT1を決められたパターンに従い100%に戻している。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】上述した従来の基準速度演算手段7において、変化率制限手段704の制限値には、下り勾配での車両の最大加速度、上り勾配での最大減速度といった値に、応荷重の誤差や線路条件の変化を考慮して所定のマージンを加えた一定値αmax1,−αmax2が設定されている。例えば、この値(αmax1)は、平坦な場所での車両加速度の2倍程度、力行時の上り勾配では3倍以上にも及ぶ大きな値である。 【0008】このため、駆動されるすべての車輪が空転(全軸空転)あるいは滑走(全軸滑走)する場合、基準速度演算手段7の回転速度frが変化率制限にかかるまでに、時間がかかってしまう。この変化率制限にかかるまでの間、空転・滑走している車輪に繋がるモータの回転速度を基準速度演算値fr(ref)としてしまい、モータ回転速度の大きさと基準速度演算値fr(ref)との差が生じずに空転滑走制御が働かないので、空転・滑走が発展してしまう。また、基準速度演算値fr(ref)がこの変化率制限にかかり、モータ回転速度の大きさと基準速度演算値fr(ref)との間に差が生じ、空転滑走制御が働き始めたとしても、そのときには空転・滑走が発展してしまっている上に、変化率制限の制限値が実際の車両加速度に対応した値よりも非常に大きいことから基準速度演算値fr(ref)が実際の車両速度に対応した値よりも大きな値になってしまっているため、空転した車輪を再粘着できない。更に、たとえ再粘着できたとしても、トルクを大きく絞り込むために、加速性能の悪化、乗り心地の悪化を招くといった問題があった。 【0009】そこで本発明は、全軸空転や全軸滑走時の空転滑走制御の遅れを小さくし、加速性能及び乗り心地の向上を可能にした電気車の制御装置を提供しようとするものである。 【0010】 【課題を解決するための手段】一般に電気車では、空転・滑走が発生している短期間において、勾配が大きく変わるなどして急激に車両加速度が変化することはないので、全軸空転や全軸滑走前の車両加速度は、トルクの変化がない場合、全軸空転または全軸滑走中の車両加速度とほぼ同じと見なすことができる。そこで、常に、時間的に少し前の加速度に、空転・滑走が発生する僅かな期間中の若干の勾配変化と検出誤差とを考慮したマージンを加えた値を、回転速度の変化率を制限する手段の制限値にする。すなわち、この制限値は、応荷重などに関係なく常に実際の車両加速度に対応した値に近い値となる。従って、全軸空転や全軸滑走時において、回転速度がほとんど遅れなくこの変化率制限にかかり、車両速度にほぼ対応した基準速度演算値を得ることができる。これにより、全軸空転または全軸滑走時にも空転滑走制御が正常に働き、乗り心地、車両の加速性能の向上を図ることができる。 【0011】すなわち、請求項1記載の発明では、基準速度演算手段において、変化率制限手段による回転速度の制限値を、選択した回転速度相当値を微分して得た加速度を遅延要素により遅延させた値に、空転・滑走が発生する僅かな期間の勾配の変化や検出誤差などを考慮したマージンを加えた値とする。つまり、この発明では、全軸空転や全軸滑走時にそれらが発生する前の加速度を求めるために、回転速度を微分すると共にその後段に遅延要素を設け、常に時間的に少し前の加速度を演算する。この遅延させた加速度に空転・滑走が発生する僅かな期間中の勾配変化や回転速度検出誤差などを想定したマージンを加えてなる値を制限値として回転速度を制限することにより、全軸空転・全軸滑走時においても、ほぼ車両速度に対応した基準速度演算値を得る。この基準速度演算値を用いることにより、全軸空転・全軸滑走時にも空転・滑走検知の遅れがなく、適切なトルク絞り量で空転または滑走した車輪を再粘着させることができる。 【0012】請求項2の発明では、請求項1の発明において、回転速度を検出する際に、トルクを出力していない惰行中に、基準とする車輪の径に対する各車輪の径の比率を演算し、その演算された車輪径の比率に応じて各回転速度相当値を補正し、この回転速度相当値を用いて請求項1の基準速度演算を行なう。本発明では、各車輪の径の違いによる各回転速度相当値のばらつきを補正するため、惰行中に基準とする車輪の径に対する各車輪の径の比率を演算し、それぞれの回転速度相当値を車輪径の比率に応じて補正する。これにより、各車輪径の違いによる各回転速度のばらつきが小さくなるので、このばらつきを考慮して大きめに設定していた上記変化率制限値のマージンを小さくすることができる。従って、空転・滑走制御が誤って働くことなしに、全軸空転や全軸滑走時の空転滑走制御の遅れを小さくすることなどができる。 【0013】請求項3の発明では、請求項1または請求項2の発明において、複数の回転速度相当値の中から1つを逐次選択する際、力行時には複数の回転速度相当値の中で最小値を、制動時には最大値を逐次選択し、これらの値を用いて基準速度演算を行なう。本発明では、全軸空転や全軸滑走以外の場合において、基準速度演算値を車両速度に対応した値にできるだけ近い値とするために、回転速度選択手段において、力行時には最小の回転速度相当値を、制動時には最大の回転速度相当値を選択する。すなわち、全軸空転や全軸滑走時以外の場合、言い換えれば少なくとも空転していない車輪がある場合には、その車輪の回転速度が本システムで得られる値の中で車両速度に対応した値に最も近いことから、その値を選択し、請求項1または請求項2の基準速度演算を行なう。これにより、少なくとも空転していない車輪がある場合には、車両速度に対応した値に最も近い値を基準速度演算値とすることができる。更に、各車輪の空転・滑走が各々の時刻に発生して全軸空転や全軸滑走に至る場合に、ほぼ確実にこれらの発生前の加速度を用いて請求項1の基準速度演算を行なうことができる。 【0014】請求項4の発明では、請求項1、請求項2または請求項3の発明において、車輪へ伝達するトルクを制御するためのトルク指令と、遅延させた加速度とに応じて回転速度の変化率を制限する。本発明では、加速度がトルクに応じて変化するので、回転速度の変化率制限値を、遅延させた加速度とトルク指令とから演算する。こうして、トルクの変化による加速度の変化が、変化率制限値に反映される。従って、トルクが変化したときに、誤って変化率制限にかかり空転・滑走制御が働くことなしに、または、この誤検知を想定してマージンを大きくとることなしに、基準速度を演算することができる。こうして得られた基準速度演算値を用いることにより、空転・滑走の誤検知なしに、全軸空転や全軸滑走検知の遅れを小さくすることなどができる。 【0015】請求項5の発明では、請求項4において、上記加速度を遅延させる遅延要素と同等の遅延要素を介したトルク指令で現在のトルク指令を除算することによりトルク指令の比を求め、その比を変化率制限手段の上下限値に乗算する。本発明では、常に、現在のトルク指令を、上記加速度を遅延させる遅延要素と同等の遅延要素により遅延させたトルク指令で除算することにより、トルク指令の比を求めている。これは、このトルク指令の比を上記変化率制限値に乗算することにより、トルクの変化に伴う加速度の変化を、基準速度演算の変化率制限値に反映させるためである。すなわち、トルクの変化によって速度が変化すると、変化率制限値を加速度同様に変化させる。従って、トルクが変化したときに、基準速度演算値が誤って変化率制限にかかり誤って空転滑走制御が働くことなしに、または、この誤動作を想定してマージンを大きくとることなしに、基準速度を演算することができる。 【0016】請求項6の発明では、請求項1、請求項2、請求項3、または請求項4の発明において、全軸空転または全軸滑走時に、遅延要素を介して遅延させた加速度をホールドする。また、請求項7の発明では、請求項5の発明において、全軸空転や全軸滑走時に、遅延要素を介して遅延させた加速度と、同等の遅延要素を介したトルク指令とをホールドする。本発明では、全軸空転や全軸滑走時に、それらが発生する前の加速度やトルク指令をホールドすることにより、再粘着に長い時間を要する全軸空転、全軸滑走が発生し、または全軸空転、全軸滑走が連続して発生する場合に、更には、トルク指令が変化して加速度が変わる場合においても、全軸空転や全軸滑走発生前のトルク指令ホールド値からのトルク指令の変化に応じて基準速度演算値を変化させることを可能としている。 【0017】請求項8の発明では、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6または請求項7の発明において、例えば上り坂等で、車両が後退時に起動する場合、回転速度の変化率制限手段の下限値として、上限値の逆極性の値を設定する。坂道などで車両が後退中に起動する場合、車両の速度は減速から加速へと切り替わる。本発明では、この車両後退中に回転速度が負の下限値で制限され、前進中には正の上限値で制限される。従って、後退から前進に切り替わるときに、回転速度が誤って変化率制限にかかり、空転・滑走を誤検知することがなく、また、全軸空転や全軸滑走時において、ほぼ車両速度に対応した基準速度演算値を得ることができる。 【0018】 【発明の実施の形態】以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。まず、請求項1の発明の実施形態を述べる。制御装置の全体構成は図10と同一であるため、説明は省略する。図1は、この実施形態における基準速度演算手段7Aのブロック図であり、回転速度選択手段701は、各モータ41,42,43,44の回転速度検出値の大きさ|fr1|,|fr2|,|fr3|,|fr4|から、空転していない車輪につながるモータの回転速度frを選択する。こうして得られる回転速度frを変化率制限手段704により制限し、基準速度演算値fr(ref)として出力する。全軸空転時には回転速度frが大きくなると共に、全軸滑走時には回転速度frが小さくなり、変化率制限された値が基準速度演算値fr(ref)となる。なお、ここでは回転速度相当値として各モータ41,42,43,44の回転速度検出値を用いているが、各モータ41,42,43,44により駆動される車輪の回転速度検出値を用いることも実質的には同一の着想に基づくものであり、更には、回転速度相当値として回転速度検出値の代わりに回転速度推定値を用いても良い。 【0019】力行時における変化率制限手段704の演算方法を説明する。回転速度選択手段701の出力frを微分器705により微分し、基準加速度αrを得る。全軸空転または全軸滑走発生前の加速度を得るために、この基準加速度αrを、時間遅れを近似的に実現するための遅延要素である一時遅れフィルタ(L.P.F)706に入力し、時間遅れを伴ったデータに変換する。そして、一時遅れフィルタ706の出力値に対し、乗算器708で若干の勾配の変化や検出誤差などを想定したマージンを加える(乗算する)。力行時には、切替スイッチ710により乗算器708の出力をそのまま選択し、変化率制限手段704の上限値とする。一方、切替スイッチ720及び符号反転器721により、負の一定値(−A)(例えば制御装置の最小設定値)を変化率制限手段704の下限値にする。 【0020】制動時においても、演算方法は力行時と同様である。ただし、変化率制限手段704の上限値として、切替スイッチ710により正の一定値A(例えば制御装置の正の最大設定値)を選択し、下限値として、切替スイッチ720及び符号反転器721により乗算器708の出力値を負の値にして選択する。 【0021】このように求められた上下限値で変化率制限することにより、全軸空転または全軸滑走時において、ほぼ車両速度に対応した基準速度演算を行なうことが可能になる。そして、この基準速度演算値を用いて空転滑走制御を行なうことにより、全軸空転や全軸滑走時にも、空転・滑走検知の遅れがほとんどなく、トルク指令を必要以上に絞り込むことなしに空転滑走制御を行なう。 【0022】次に、請求項2の発明の実施形態を、図2の全体構成図を用いて説明する。図10に示した従来技術と異なっているのは、速度検出演算手段91,92,93,94の後段に設けた車輪径補正手段11により車輪径を補正している点であり、その他は図10と同様である。車輪径補正は、モータ41,42,43,44がトルクを出力していない惰行時に、すなわち全車輪が空転していない時に、各車輪の速度検出値の違いに基づいて、基準とする車輪の径に対する各車輪の径の比率を演算し、その車輪径の比率を用いて車輪の回転速度を補正するものである。この車輪径補正後の回転速度検出値を用いて空転滑走制御を行うことにより、車輪径の違いによる回転速度検出のばらつきがほとんどなくなるので、このばらつきを考慮して大きめに設けていたマージンを小さくすることができる。従って、空転・滑走の誤検知なしに、検知の遅れを小さくすることができる。 【0023】請求項3の発明の実施形態を、図3の基準速度演算手段7Bのブロック図を用いて説明する。この基準速度演算手段7Bは、従来技術の図10、請求項2の実施形態である図2の何れかの全体構成においても適用可能である。図3が図1と異なる点は、図1における回転速度選択手段701を、最大値選択手段702A、最小値選択手段702B、切替スイッチ703により構成した点である。 【0024】この実施形態の動作を、以下に説明する。最大値選択手段702A、最小値選択手段702Bにより、常に、回転速度検出値の大きさ(|fr1|,|fr2|,|fr3|,|fr4|)の最大値frmax、最小値frminを選択する。切替スイッチ703は、力行時に最小値frmin、制動時(回生時)に最大値frmaxを選択して回転速度frとする。以降は図1の場合と同様に、変化率制限手段704により回転速度frの変化率を制限し、基準速度演算値fr(ref)とする。 【0025】この場合、全軸空転または全軸滑走時には、変化率制限手段704により、図1の実施形態で説明した上限値または下限値により制限された値を基準速度演算値fr(ref)にする。一方、全軸空転時または全軸滑走時以外には、上記最大値選択手段701、最小値選択手段702、切替スイッチ703により、空転していない車輪に繋がるモータの回転速度検出値を基準速度演算値fr(ref)とし、基本的には変化率制限にかからない。こうして、力行時には最小の回転速度を、制動時には最大の回転速度を選択することにより、全軸空転または全軸滑走時には、請求項1あるいはそれに請求項2を加えた手段により基準速度演算値を得ると共に、全軸空転または全軸滑走時以外には、本システムで得られる速度情報の中で車両速度に対応した値に最も近い値を基準速度演算値fr(ref)とすることができる。 【0026】次に、請求項4,5の発明の実施形態を、図4〜図6を参照しつつ説明する。図4はこれらの実施形態が適用される制御装置の全体構成を示すもので、図2における基準速度演算手段7にトルク指令T*を入力する系を追加して基準速度演算手段7Cまたは7Dが構成されており、その他は図2と同一である。なお、図10に示した従来技術の全体構成(図2における車輪径補正手段11を除いたもの)の基準速度演算手段7にトルク指令T*を入力する系を追加した構成も考えられる。 【0027】請求項4の発明の実施形態を、図5の基準速度演算手段7Cのブロック図を用いて説明する。基準速度演算手段7Cは、図3の基準速度演算手段7Bにトルク補正の系を追加したものである。当然、図1の基準速度演算手段7Aにトルク補正の系を追加した組合わせも考えられる。ここでは、追加したトルク補正の系の動作についてのみ説明する。 【0028】トルク指令T*は絶対値演算手段711に入力され、絶対値|T*|が演算される。この絶対値|T*|はトルク指令補正値演算手段713に入力され、トルク指令による加速度の補正値が演算される。この補正値は乗算器709に入力され、その前段の加算器716によりマージンを設けた後の基準加速度αrに乗算される。なお、この実施形態において、制動時に変化率制限手段704に入力される上限値は切替スイッチ710によって∞が選択される。 【0029】次いで、請求項5の発明の実施形態を、図6の基準速度演算手段7Dのブロック図を用いて説明する。基準速度演算手段7Dは、図5におけるトルク補正の系を変更したものとなる。ここでは、変更したトルク補正の系の動作のみ以下に説明する。トルク指令T*は、絶対値演算手段711に入力されて絶対値|T*|が演算される。この絶対値|T*|は、基準加速度αrの遅延と同等の遅延を目的とした一時遅れフィルタ712を介した値|Tfi1*|で除算器714により除算され、トルク指令の比(|T*|/|Tfi1*|)が求まる。このトルク指令の比は、乗算器709により、マージンを設けた後の基準加速度αrに乗算される。これにより、トルクの変化に伴って加速度が変化したときに、基準速度演算値fr(ref)が誤って変化率制限にかかり空転滑走制御が誤って動作することなしに、または、この誤動作を想定してマージンを大きくとることなしに、基準速度を演算することができる。 【0030】請求項6、請求項7の発明の実施形態を図7、図8を参照しつつ説明する。制御装置の全体構成は図7に示すように、図4の全体構成に、空転滑走制御手段8から出力される全軸空転検知信号を基準速度演算手段7に入力する系を加えたものとなっている。また、図8の基準速度演算手段7Eは、図6に示した基準速度演算手段7Dに、全軸空転検知信号によりデータをホールドするホールド手段707,715を追加した構成となっている。ホールド手段707では、全軸空転(全軸滑走)検知信号により、一時遅れフィルタ706で遅延させた基準加速度αrをゼロ次ホールドする。一方、トルク指令のホールド手段715でも、上記ホールド手段707と同じタイミングにより、一時遅れフィルタ712で遅延させたトルク指令をゼロ次ホールドする。すなわちこの実施形態では、再粘着に長い時間を要する全軸空転、全軸滑走が発生し、または全軸空転、全軸滑走が連続して発生する場合に、更にトルク指令が変化して加速度が変わる場合でも、請求項5で述べたトルク指令の変化率に応じて基準速度演算値fr(ref)を変化させることを可能としている。 【0031】最後に、請求項8の発明の実施形態を図9の基準速度演算手段7Fのブロック図を用いて説明する。制御装置の全体構成は、図7と同様である。基準速度演算手段7Fは、図8に示した基準速度演算手段7Eに切替スイッチ722を追加した構成になっている。この切替スイッチ722は、力行時に、マージンを設けた後の加速度すなわち上限値と同じ値を選択し、符号反転器721を通して上限値の負値が下限値として設定される。従って、後退から前進に切り替わるときに、回転速度が誤って変化率制限にかかり空転・滑走を誤検知することなく、また、全軸空転あるいは全軸滑走値において、ほぼ車両速度に対応した基準速度演算値fr(ref)を得ることができる。 【0032】 【発明の効果】以上述べたように、本発明では、全軸空転時や全軸滑走時にも回転速度がほとんど遅れなく変化率制限にかかり、ほぼ車両速度に対応した基準速度演算が行なわれるため、その基準速度演算値を用いた空転滑走制御が良好に実行される。これにより、全軸空転時や全軸滑走時における加速性能や乗り心地を改善することができる。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000005234 【氏名又は名称】富士電機株式会社
|
| 【出願日】 |
平成10年(1998)1月19日 |
| 【代理人】 |
【弁理士】 【氏名又は名称】森田 雄一
|
| 【公開番号】 |
特開平11−205906 |
| 【公開日】 |
平成11年(1999)7月30日 |
| 【出願番号】 |
特願平10−7453 |
|