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【発明の名称】 複数バッテリ型電気自動車用駆動装置
【発明者】 【氏名】北峯 康多

【氏名】兒玉 悟

【要約】 【課題】低圧バッテリの充電不足による走行不能状態が発生しにくく、しかも補機バッテリ側の低圧側電源線に重畳するスイッチングノイズ電圧を従来より格段に低減可能な複数バッテリ型電気自動車用駆動装置を実現すること。

【解決手段】走行モ−タ給電用の高圧バッテリ1と、補機給電用の低圧バッテリ2と、高圧バッテリ1からシ−ルドされた高圧側電源線5を通じて給電されて走行モ−タ4を駆動制御する三相インバータ回路31と、三相インバータ回路31を断続制御するドライバ回路32とが設けられ、特に本構成ではドライバ回路32はシ−ルドされた高圧側電源線を通じて高圧バッテリ1から給電される。このようにすれば、ラジオなどの電子機器を含む補機へ給電する低圧側電源線7に三相インバータ回路31の大きなスイッチングノイズ電圧が流れ込むことを回避することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】走行モ−タ給電用の高圧バッテリと、補機給電用の低圧バッテリと、シ−ルドされた一対の高圧側給電線を通じて走行モ−タ給電用の前記高圧バッテリから給電されて給電線を通じて前記モ−タへ三相交流電圧を印加する三相インバータ回路と、前記三相インバータ回路の各スイッチング素子を断続制御するドライバ回路と、前記ドライバ回路を制御する制御回路と、を有する複数バッテリ型電気自動車用駆動装置において、前記ドライバ回路は、前記高圧バッテリから給電されることを特徴とする複数バッテリ型電気自動車用駆動装置。
【請求項2】請求項1記載の複数バッテリ型電気自動車用駆動装置において、前記低圧バッテリは、電磁シ−ルドされない低圧側給電線を通じてその負荷に給電することを特徴とする複数バッテリ型電気自動車用駆動装置。
【請求項3】請求項1又は2記載の複数バッテリ型電気自動車用駆動装置において、前記高圧バッテリから給電されて前記ドライバ回路に低圧の制御電源電圧を印加するスイッチング式降圧DC−DCコンバータを備えることを特徴とする複数バッテリ型電気自動車用駆動装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電気自動車用駆動装置に関し、特に複数バッテリをもつ電気自動車用駆動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】内燃機関により駆動される発電機から高圧(たとえば300V)の主バッテリや走行モ−タへ給電する従来のハイブリッド電気自動車では、主バッテリ(高圧バッテリともいう)から給電されるエンジン始動用モ−タにより内燃機関が始動され、この始動用のモ−タとして上記発電機などを用いることができる。
【0003】特公昭54ー9763号公報では、走行モ−タ駆動用の三相インバータ回路を制御するマイコンやロジック・インタフェース等を含む制御回路は補機バッテリ(低圧バッテリともいう)から給電されている。このように補機バッテリを設けた電気自動車用駆動装置(以下、複数バッテリ型電気自動車用駆動装置ともいう)によれば、通常、低圧で給電される補機に比較して走行モ−タへ高圧給電できるので、損失低減、機器の小形化などの効果を実現でき、一方、補機へは電圧変動が少ない電源電圧を印加できるという利益が生じる。
【0004】上述した従来の複数バッテリ型電気自動車用駆動装置では、走行モ−タ駆動制御用の三相インバータ回路のスイッチング素子も、補機バッテリから給電されるドライバ回路により断続制御される。このため、補機バッテリとドライバ回路の電源端子との間に、入出力絶縁型DC/DCコンバータを用い、更に、制御回路とドライバ回路のスイッチング素子の制御端子間にフォトカプラを用いることが提案されている。
【0005】図3に、上述した補機バッテリ式電気自動車用駆動装置の従来例を示す。1は主バッテリ、2は補機バッテリ、3は駆動回路装置、4は走行モ−タである。駆動回路装置3は、三相インバータ回路31、フォトカプラ回路32、制御回路33、ドライバ回路電源34、リレ−35からなる。三相インバータ回路31は、IGBT3a〜3f及びそれと逆並列に接続されたダイオ−ド(図示せず)と、IGBT3a〜3fを駆動制御するゲ−ト制御回路(図示せず)とからなり、このゲ−ト制御回路(図示せず)はフォトカプラ回路32とともに、ドライバ回路すなわち三相インバータ回路用の駆動制御回路を構成している。
【0006】フォトカプラ回路32は、ハイサイドスイッチであるIGBT3a〜3cを個別に断続制御するためのフォトカプラ32a〜32cと、ロ−サイドスイッチであるIGBT3d〜3fを個別に断続制御するためのフォトカプラ32d〜32fとを有している。ドライバ回路電源34は、トランス340と整流回路34a〜34cとからなるトランス付きスイッチング式降圧DC−DCコンバータであって、フォトカプラ32a〜32cを通じてIGBT3a〜3cのゲ−トに個別に給電するための整流回路34a〜34cと、フォトカプラ32d〜32fを通じてIGBT3d〜3fのゲ−トに給電するための整流回路34dとを有している。
【0007】36は、制御回路33により一定周期で断続制御されるスイッチングトランジスタであり、このスイッチングによりトランス340の一次コイルに交流電圧が入力される。この種の回路は公知であるので、作動説明は省略する。5は、主バッテリ1から駆動回路装置3へ給電する一対の高圧側電源線であり、6は駆動回路装置3から走行モ−タ4へ給電する3本の駆動ラインであり、7は補機バッテリ2から駆動回路装置3へ給電する一対の低圧側電源線である。高圧側電源線5及び駆動ライン6はラジオノイズ低減のためにシールドケーブルで構成されるのが普通である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述した従来の複数バッテリ型電気自動車用駆動装置では、以下に説明する問題があった。まず第一に、走行モ−タ4が大きなリアクタンスをもつので三相インバータ回路3の各スイッチング素子すなわちIGBT3a〜3fのスイッチングにより、IGBT3a〜3dの制御端子からドライバ回路電源34を通じて補機バッテリ2側の低圧側電源線7へ大きなスイッチングノイズ電圧が重畳してしまう。
【0009】第二に、ドライバ回路電源34からの電力によりフォトカプラ32の信号を電力増幅してIGBT3a〜3fを駆動するためのドライバ回路のスイッチングにより、ドライバ回路電源34を通じて補機バッテリ2側の低圧側電源線7へ大きなスイッチングノイズ電圧が重畳してしまう。第三に、スイッチング式降圧DC−DCコンバータであるドライバ回路電源34はスイッチングトランジスタ36の周期スイッチングを必要とし、更にドライバ回路電源34の出力電圧にはかなりのリップルがどうしても発生してしまう。その結果、このドライバ回路電源34に給電する低圧電源線7の電位が周期的に変動し、三相インバータ回路31のIGBT3a〜3fのスイッチングノイズと同様のノイズが低圧電源線7に重畳してしまう。
【0010】第四に、制御回路33の内部スイッチング、特に、その出力インタ−フェィス回路を構成する大電力駆動トランジスタの断続により、この制御回路33に給電する低圧電源線7の電位が変動し、これにより、上記第一、第二と同様の問題が発生してしまう。これらの結果、低圧側電源線7に重畳したこのスイッチングノイズ電圧が、低圧側電源線7に接続される制御回路や電子機器の誤動作を生じさせたり、低圧側電源線7の電圧変動が補機バッテリ2の寿命を短縮する可能性が生じる。更に、低圧側電源線7がラジオノイズを発生するのを防止するために、低圧側電源線7を電磁シ−ルドする必要性も生じる。
【0011】第五に、長期の運転休止などで補機バッテリが上がった場合に、制御回路33、ドライバ回路電源(スイッチング式降圧DC−DCコンバータ)34及びドライバ回路への給電が停止されるために、大容量の主バッテリ1に走行用電力が残っているにもかかわらず走行が中断するという事態も想定される。本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、主バッテリの他に補機バッテリを備える複数バッテリ型電気自動車用駆動装置において、低圧バッテリの充電不足による走行不能状態が発生しにくく、しかも補機バッテリ側の低圧側電源線に重畳するスイッチングノイズ電圧を従来より格段に低減可能な複数バッテリ型電気自動車用駆動装置を実現することをその解決すべき課題としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の電気自動車用インバ−タ装置の構成によれば、走行モ−タ給電用の高圧バッテリと、補機給電用の低圧バッテリと、高圧バッテリからシ−ルドされた高圧側電源線を通じて給電されてモ−タを駆動制御する三相インバータ回路と、三相インバータ回路を断続制御するドライバ回路とが設けられ、特に本構成ではドライバ回路はシ−ルドされた高圧側電源線を通じて高圧バッテリから給電される。
【0013】このようにすれば、上述した経路でラジオなどの電子機器を含む補機へ給電する低圧側電源線に大きなスイッチングノイズ電圧が流れ込むことを回避することができ、これにより低圧側電源線に接続される制御回路や電子機器の誤動作を防止でき、低圧側電源線の電圧変動が補機バッテリの寿命を短縮するのを防止でき、低圧側電源線の電磁シ−ルドなしに低圧側電源線からのラジオノイズの放射を回避することができるという優れた効果を奏することができる。
【0014】更に、本構成によれば、故障や長期の運転休止などで低圧バッテリが上がった場合でも、モ−タ駆動制御用の三相インバータ回路の駆動に必要な制御回路、ドライバ回路、更には、このドライバ回路給電用のドライバ回路電源などを高圧バッテリからのみ給電することができ、この場合には低圧バッテリがたとえ上がったとしても、支障なく車両を走行させることができる。
【0015】請求項2記載の構成によれば請求項1記載の複数バッテリ型電気自動車用駆動装置において更に、ラジオノイズの増大なしに低圧バッテリは電磁シ−ルドされない低圧側電源線を通じてその負荷に給電できるので、配線費用の格段の節減を実現することができる。請求項3記載の構成によれば請求項1又は2記載の複数バッテリ型電気自動車用駆動装置において更に、高圧バッテリから給電されるスイッチング式降圧DC−DCコンバータを用いててドライバ回路に低圧の制御電源電圧を給電する。ここでいうスイッチング式降圧DC−DCコンバータとは、スイッチング素子を周期的に断続することにより降圧を行うDC−DCコンバータを意味する。
【0016】このようにすれば、このスイッチング式降圧DC−DCコンバータが発生するスイッチングノイズが、上述した三相インバータ回路のスイッチングノイズと同様に、低圧電源線に重畳するのを防止することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】シ−ルドケ−ブルとしては、ケ−ブル自体が電磁波シ−ルド可撓性層を具備していてもよく、または、なんらかの金属外套部材材に収容してもよい。本発明の複数バッテリ型電気自動車用駆動装置は、ハイブリッド電気自動車にも適用できることは当然である。本発明の好適な実施態様を以下の実施例を参照して説明する。
【0018】
【実施例1】本発明の複数バッテリ型電気自動車用駆動装置の一実施例を図1に示すブロック回路を参照して説明する。ただし、理解を容易とするために、図4中の構成要素と主要機能が共通する構成要素には同じ符号を付す。
(構成)図1において、1は主バッテリ、2は補機バッテリ、3は駆動回路装置、4は走行モ−タである。駆動回路装置3は、三相インバータ回路31、フォトカプラ回路32、制御回路33、ドライバ回路電源34、リレ−35、インタ−フェィス回路36からなる。
【0019】三相インバータ回路31は、IGBT3a〜3f及びそれと逆並列に接続されたダイオ−ド(図示せず)と、IGBT3a〜3fを駆動制御するゲ−ト制御回路(図1では図示せず、図2に31aとして図示)とからなり、このゲ−ト制御回路はフォトカプラ回路32とともに本発明でいうドライバ回路すなわち三相インバータ回路用の駆動制御のための回路を構成している。
【0020】フォトカプラ回路32は、ハイサイドスイッチであるIGBT3a〜3cを個別に断続制御するためのフォトカプラ32a〜32cと、ロ−サイドスイッチであるIGBT3d〜3fを個別に断続制御するためのインバ−タ回路32d〜32fとを有している。制御回路33は、各IGBT3a〜3fの駆動タイミングの演算、走行モ−タ4のトルクもしくは回転数制御やシーケンス処理を実施する。
【0021】ドライバ回路電源34は、主バッテリ1の電圧を降圧するスイッチング式降圧DC−DCコンバータであって、スイッチングトランジスタ34a、リアクトル34b、大容量のコンデンサ34cを直列接続し、リアクトル34b及び大容量のコンデンサ34cに対して還流ダイオ−ド34dを並列接続したものである。スイッチングトランジスタ34aは内蔵のマルチバイブレ−タ(図示せず)により一定周期で断続制御されている。
【0022】36は、入出力を電気絶縁したインタ−フェィス回路であって、補機バッテリ2から給電される外部コントロ−ラ8からの出力指令信号を電気絶縁可能に制御回路33に伝送する一対のフォトカプラ36a、36bからなる。5は、主バッテリ1から駆動回路装置3へ給電する一対の高圧側電源線であり、6は駆動回路装置3から走行モ−タ4へ給電する3本の駆動ラインであり、7は補機バッテリ2から駆動回路装置3へ給電する一対の低圧側電源線であり、8は外部コントロ−ラである。高圧側電源線5及び駆動ライン6は、ラジオノイズの低減のためにシールドケーブルで構成されている。
(動作)リレー35が導通すると、ドライバ回路電源34及び三相インバータ回路31に主バッテリ1から給電される。
【0023】ドライバ回路電源34は、そのスイッチングトランジスタ34aの断続によりコンデンサ34cの両端に低電圧の制御用電源電圧を発生する。この制御用電源電圧は制御回路に適した値である12〜15Vに制御されるものとする。このとき、高圧側電源線5には交流電圧が重畳するが、高圧側電源線5は電磁シールドされているために電磁波ノイズは外部に放射されることがない。
【0024】ドライバ回路電源34から制御回路33に電源電圧が給電されると、外部コントロ−ラ8からインタフェース回路36を通じて起動信号が入力されると、制御回路33からは3相上下の計6種類のタイミング信号が出力され、フォトカプラ回路32及び三相インバータ回路31内のゲ−ト制御回路からなるドライバ回路により、三相インバータ回路31の各IGBT3a〜3fが断続制御される。これにより、駆動ライン6に三相交流電圧が印加され、走行モ−タ4が回転する。
【0025】ローサイドスイッチであるIGBT3d〜3fのエミッタは主バッテリ1の低位側の電位となっているので、IGBT3d〜3fを駆動するドライバ回路にはフォトカプラ回路は必要ではない。すなわち、IGBT3d〜3fは、制御回路33から出力される駆動電圧を電力増幅回路32d〜32fで個別に電力増幅して各IGBT3d〜3fのゲ−トに印加するだけでよい。
【0026】上記ドライバ回路のうち、三相インバータ回路31に内蔵されて、ハイサイドスイッチであるIGBT3aを駆動制御するゲ−ト制御回路31aを図2を参照して説明する。ドライバ回路電源34はダイオ−ド37aを通じてコンデンサ37dを充電する。コンデンサ37dの高位端は、エミッタ接地のpnpトランジスタ311と、その負荷抵抗312とを直列接続してなるインバ−タ回路とに給電し、このインバ−タ回路は相補エミッタホロワバッファ回路313及びゲ−ト抵抗314を通じてIGBT3aのゲ−トを駆動制御している。
【0027】この回路の動作を以下に説明する。フォトカプラ32aに信号を送ってトランジスタ311をオンすると、IGBT3aのゲ−ト電位が上昇してIGBT3aが導通する。フォトカプラ32aに送る信号を遮断してトランジスタ311をオフすると、IGBT3aのゲ−ト電位が低下してIGBT3aがオフする。コンデンサ37dの高位端電位はIGBT3aのエミッタ電位の変動に応じてレベルシフトするので、このフォトカプラ32aとゲ−ト制御回路31aとからなるドライバ回路は安定してハイサイドのIGBT3aを駆動制御することができる。IGBT3b、3cを駆動するためのドライバ回路の構成もこれと同じであるので、説明を省略する。
【0028】この実施例の電気自動車用インバ−タ装置によれば、以下の作用効果を奏することができる。ドライバ回路が主バッテリ1から給電されるので、IGBT3a〜3fのスイッチングノイズが低圧電源線7へ流れることがない。ドライバ回路のスイッチングに伴うスイッチングノイズがドライバ回路電源34を通じて低圧電源線7へ流れることがない。
【0029】ドライバ回路電源34が主バッテリ1から給電されるので、そのスイッチングノイズが低圧電源線7に重畳することがない。制御回路33も主バッテリ1から給電されるので、そのスイッチングノイズが低圧電源線7に重畳することがない。ラジオノイズの増大なしに補機バッテリ2は電磁シ−ルドされない低圧側電源線7を通じてその負荷に給電できるので、配線費用の格段の節減を実現することができる。
【0030】故障や長期の運転休止などで補機バッテリ2が上がった場合でも、走行モ−タ駆動制御用の三相インバータ回路31の駆動に必要な制御回路33、ドライバ回路、ドライバ回路電源34などを主バッテリ1からの給電で駆動することができる。
【出願人】 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【出願日】 平成9年(1997)10月24日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏
【公開番号】 特開平11−136801
【公開日】 平成11年(1999)5月21日
【出願番号】 特願平9−292859