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【発明の名称】 リーチフォークリフト
【発明者】 【氏名】林 義人

【要約】 【課題】車両の運転状況に応じて後輪及び前輪の2輪駆動を有効に活用することができるリーチフォークリフトを提供する。

【解決手段】後輪13の回転方向と回転数を制御する第1コントローラ51と、第1コントローラ51における後輪13の回転方向と回転数に関する後輪速度指令信号56と、前輪11,12の回転方向と速度の検出に基づく帰還信号57との偏差信号eの正負と大きさに基づいて、前輪11,12の補助モータ15,16の回転方向と回転数を制御する第2コントローラ53と、を備える構成にした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 車両本体の下部に設けられ、車両を走行させる主モータに連結される後輪と、車両前方に延在して形成された左右一対のレグの各々に設けられ、車両の走行を補助する補助モータに連結される前輪と、前記後輪の回転方向と回転数を制御する第1コントローラと、前記第1コントローラにおける前記後輪の回転方向と回転数に関する後輪速度指令信号と、前記前輪の回転方向と速度の検出に基づく帰還信号との偏差信号の正負と大きさに基づいて、前記補助モータの回転方向と回転数を制御する第2コントローラと、を備えるリーチフォークリフト。
【請求項2】 前記第2コントローラは、前記後輪速度指令信号に応じた車両速度が得られており、前記偏差信号が所定範囲のゼロ近くである場合には、前記補助モータを駆動せず、前記前輪をフリーにする請求項1記載のリーチフォークリフト。
【請求項3】 前記第2コントローラは、■ 前進又は後進の発進時に前記後輪がスリップし、前記後輪速度指令信号に応じた車両速度が得らず、前記偏差信号が正又は負のいずれかの方向に大きくなり、前記前輪を前記後輪と同じ方向に駆動してスリップ脱出を補助し、■ 前進又は後進の停止時に前記後輪がスリップし、前記後輪速度指令信号がゼロであるのに車両が走行し、前記偏差信号が負又は正のいずれかの方向に出力され、前記前輪を車両停止方向に駆動し、■ 坂道上昇時に前記後輪が減速又は逆転しはじめると、前記後輪速度指令信号に応じた車両速度が得らず、前記偏差信号が正の方向に大きくなり、前記前輪を坂道上昇方向に駆動して坂道上昇を補助し、■ 坂道下降時に前記後輪のアクセルを緩めるか又はブレーキをかけると、前記後輪速度指令信号が小さいか又はゼロであるのに車両が早く走行し、前記偏差信号が負の方向に大きくなり、前記前輪を前記後輪と逆方向に駆動する請求項1又は2記載のリーチフォークリフト。
【請求項4】 前記補助モータは、車輪に内蔵され、直接車輪を駆動するホイールインモータである請求項1,2又は3記載のリーチフォーク。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、本来の後輪駆動に加えて前輪を補助的に駆動するリーチフォークリフトに関する。
【0002】
【従来の技術】この種のリーチフォークフト1の外形が図4に示される。図4(a)は側面図、図4(b)は上面図である。図において、車両本体2の前方側には左右一対のレグ3,4が延在して形成され、そのレグ3,4の間に前後方向に移動可能なマスト5が配置されている。そして、マトス5にフォーク6が上下動可能に配設されている。
【0003】左右一対のレグ2,3の先端には、左前輪11と右前輪12とが配設されている。車両本体2の下部左側には後輪13が配設され、車両本体2の下部右側にはキャスタ輪14が配設されている。後輪13は、ハンドル7で操舵可能であるともに、アクセルレバー8の操作量に応じた駆動力を発生させる駆動モータに減速機を介して連結されている。
【0004】このようなリーチフォークリフト1において、リフト5を前に進出させ、フォーク6に荷物を載せた状態にすると、重心が車両本体2からレグ2,3の側に移動し、駆動輪である後輪13に作用する荷重が減少する。このような状態で、摩擦係数の低い路面、例えば冷凍庫内の滑りやすい路面でリーチフォークフト1を走行又は発進させようとしても、後輪13がスリップすることがある。
【0005】そこで、車両本体2の下部の後輪13だけではなく、各々のレグ3,4の先端に設けられた前輪11,12を補助的に駆動することが行われている。しかし、前輪11,12を常時駆動すると、前輪11,12が2輪速度差ステア制御系のように形態になり、かじ取り用の後輪13との間で競合が生じ、小回りの出来るリーチフォークリフト1の操作性が損なわれる。そのため、リーチフォークリフト1の発進時のスリップを後輪の速度と前輪の速度との差により検出し、スリップを検出したときに限り、前輪11,12を補助的に駆動してスリップからの脱出を容易にすることが行われている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、駆動輪である後輪13がスリップしたことを検出したときしか、前輪11,12を駆動しないので、前輪11,12の駆動機構が有効に活用されていないという問題点があった。
【0007】そこで、本発明は、駆動輪である後輪がスリップしたときに前輪を補助的に駆動してスリップからの脱出を容易にするとともに、車両の運転状況に応じて後輪及び前輪の2輪駆動を有効に活用することができるリーチフォークリフトを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決する本発明のうち請求項1記載の発明は、車両本体の下部に設けられ、車両を走行させる主モータに連結される後輪と、車両前方に延在して形成された左右一対のレグの各々に設けられ、車両の走行を補助する補助モータに連結される前輪と、前記後輪の回転方向と回転数を制御する第1コントローラと、前記第1コントローラにおける前記後輪の回転方向と回転数に関する後輪速度指令信号と、前記前輪の回転方向と速度の検出に基づく帰還信号との偏差信号の正負と大きさに基づいて、前記補助モータの回転方向と回転数を制御する第2コントローラと、を備えるリーチフォークリフトである。
【0009】請求項2記載の発明は、請求項1において、前記第2コントローラは、前記後輪速度指令信号に応じた車両速度が得られており、前記偏差信号が所定範囲のゼロ近くである場合には、前記補助モータを駆動せず、前記前輪をフリーにするものである。
【0010】請求項3記載の発明は、請求項1又は2において、前記第2コントローラは、■ 前進又は後進の発進時に前記後輪がスリップし、前記後輪速度指令信号に応じた車両速度が得らず、前記偏差信号が正又は負のいずれかの方向に大きくなり、前記前輪を前記後輪と同じ方向に駆動してスリップ脱出を補助し、■ 前進又は後進の停止時に前記後輪がスリップし、前記後輪速度指令信号がゼロであるのに車両が走行し、前記偏差信号が負又は正のいずれかの方向に出力され、前記前輪を車両停止方向に駆動し、■ 坂道上昇時に前記後輪が減速又は逆転しはじめると、前記後輪速度指令信号に応じた車両速度が得らず、前記偏差信号が正の方向に大きくなり、前記前輪を坂道上昇方向に駆動して坂道上昇を補助し、■ 坂道下降時に前記後輪のアクセルを緩めるか又はブレーキをかけると、前記後輪速度指令信号が小さいか又はゼロであるのに車両が早く走行し、前記偏差信号が負の方向に大きくなり、前記前輪を前記後輪と逆方向に駆動するものである。
【0011】請求項3記載の発明は、請求項1,2又は3において、前記補助モータは、車輪に内蔵され、直接車輪を駆動するホイールインモータである。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明の実施形態を図面を用いて説明する。本発明にかかるリーチフォークリフトの全体構造は図4で説明したものと同様であるので、前述した図4の説明で代用する。
【0013】図4に付加して説明すべき部分は、図2に示される前輪とそのモータの連結形態と、図3に示される後輪の駆動機構である。
【0014】図2において、レグ側の固定軸21に嵌入される内輪22と、内輪22に対して軸受23を介して回転可能な外輪24と、外輪24の外周に焼き付けられたゴム製のホイール25とから前輪11,12が構成されている。この前輪11,12に対する補助モータ15,16は、内輪22側のステータコア26と、外輪24側の鉄心中に永久磁石27を挿入してなるロータコア28とからなる高力密度(ハイデンシティ)モータである。
【0015】補助モータ15,16は前輪11,12に内蔵されたホイールインモータであり、前輪11,12は減速機を介することなく補助モータ15,16で直接駆動(ダイレクトドライブ)される。補助モータ15,16は、永久磁石を常に和動的に作用させる磁気回路により構成され、コンパクトで低速大トルクを発生させることができるので、ダイレクトドライブにすることができる。
【0016】このような前輪11,12と補助モータ15,16のホイールインモータで且つダイレクトドライブの連結形態により、減速機を介する駆動に比較すると回転に伴う機械的ロスが殆どなく、レグへの取付けも自在であって、メンテナンスもフリーとなる。特に補助的に駆動しない場合、通常の従動輪のようにフリーに回転するという利点がある。すなわち、通常は従動輪として使い、必要な場合だけ補助的に駆動するということができる。
【0017】図3において、後輪13は、主モータ17の出力軸に同軸配置されたギアボックス31の横向き出力軸32に嵌入される構成となっている。主モータの反出力軸側にはモータシャフト33が突設されており、このモータシャフト33に嵌入されたブレーキディスク34の外周にブレーキパッド35が配設されている。後述するブレーキ開放スイッチからの指令がオフになると、ブレーキパッド35が閉じてブレーキディスク34を挟むデッドマンブレーキのブレーキ装置となっている。なお、ブレーキ装置には、後輪13に対する機械式ブレーキに限らず、プラッギングブレーキや回生ブレーキの如き電気制動式ブレーキを付加することができる。
【0018】図1は、前述した優れた特性を有する前輪11,12及び補助モータ15,16を含む駆動制御の回路構成図である。
【0019】図において、車両駆動制御の回路は、第1コントローラ51、主モータ駆動回路部52、第2コントローラ53、補助モータ駆動回路部54を主要部分として構成されている。
【0020】主モータ駆動回路部52において、主モータ17は力行用コンタクタ61を介してバッテリ電源55に接続されている。主モータ17は電機子17aと界磁巻線17bから構成される直巻直流モータである。界磁巻線17bには前進用コンタクタ62及び後進用コンタクタ63が接続されている。両コンタクタ62,63の相補的な切り換え動作により、界磁巻線17bに流れる界磁電流の方向が変わると、主モータ17が正逆回転される。
【0021】メイントランジスタ64はそのアノードが界磁巻線17bの前進用コンタクタ62及び後進用コンタクタ63の側に接続され、エミッタが接地側に接続されることで、主モータ17に対して直列に接続されている。そして、そのベース端子には第1コントローラ51からの公知のチョッパ(断続)信号が入力される。なお、65aは転流用ダイオード、65bはアンチブレーキダイオード、65cは回生用ダイオード、85は後輪13の回転数を検出する回転計である。
【0022】第1コントローラ51には、アクセル8から操作量に応じた指令値が入力され、更に前進スイッチ67及び後進スイッチ68も接続されている。アクセル8の指令値が第1コントローラ51に入力されると、力行用コンタクタ61を作動させるためのトランジスタスイッチ69が閉じる。また前進スイッチ67又は後進スイッチ68がオンになると、前進用コンタクタ62を作動させるトランジスタスイッチ70や後進用コンタクタ63を作動させるトランジスタスイッチ71が相補的に切り換わる。また図示されないブレーキペダルを放すと、ブレーキ開放スイッチ72がオフになり、図3のブレーキパッド35が閉じてブレーキが作用するが、そのブレーキ開放スイッチ72のオフ信号は第1コントローラ51に出力される。主モータ17の電機子17aの回転数は回転計73で検出され、第1コントローラ51に出力される。なお、前述した前進スイッチ67及び後進スイッチ68等が前後進指令手段を構成し、前述したブレーキ開放スイッチ72がブレーキ指令手段を構成する。
【0023】補助モータ駆動回路部54において、補助モータ15,16は図2で説明したように高力密度モータであり、第2コントローラ53からの指令値で作動するドライバ75,76で駆動される。
【0024】第2コントローラ53は、第1コントローラ51からの後輪速度指令56を指令信号とし、前輪の回転方向と速度の検出に基づく前輪回転計速度信号を帰還信号57とするとする速度制御系である。
【0025】後輪速度指令56は、アクセル8を倒す方向で決まる前進又は後進の後輪13の回転方向と、アクセル8を倒す程度で決まる回転数で決まる指令であり、前進で回転数が大きくなると、正の方向に大きな指令値を比例的に出力し、後進で回転数が大きくなると、負の方向に大きな指令値を比例的に出力する。
【0026】前輪回転計速度信号の帰還信号57は、前輪11,12の各々に対する回転計73,74と、回転計73,74の出力の和を得る加算器78と、加算器78からの出力を1/2する演算器79とからなる機器の出力で得られ、前輪11,12の実際の走行速度が前進方向で大きいと、正の方向に大きな信号値を比例的に出力し、前輪11,12の実際の走行速度が後進方向で大きくなると、負の方向に大きな信号値を比例的に出力する。
【0027】第2コントローラ53は、後輪速度指令56から帰還信号57を引き算して偏差信号eを得る演算器79と、偏差信号eに対する比較器80及び調整器81とからなる。比較器80は、偏差信号eがゼロを挟む所定範囲内に小さいと、断続器57にオフ信号を出力し、偏差信号が前記所定範囲を越えると、断続器57にオン信号を出力するものである。断続器57がオフになると、補助モータ15,16に対するバッテリ電源55の接続が断たれ、前輪11,12はフリーに回転する。断続器57がオンになると、補助モータ15,16にバッテリ電源55の電力が供給され、前輪11,12は調節器81からの出力に基づき制御されて駆動される。調節器81は、偏差信号eが正の方向に大きいと、前輪11,12を後輪13と同じ方向に比例的な回転数で駆動し、偏差信号eが負の方向に大きいと、前輪11,12を後輪13と逆方向に比例的な回転数で駆動する。
【0028】つぎに、図1の車両駆動制御回路の作動例を、■前進又は後進の発進時、■前進又は後進の停止時、■坂道上昇時、■坂道下降時に分けて説明する。
【0029】まず、■の前進又は後進の急発進時を説明する。例えば、前進スイッチ67をオンにし、アクセル8の操作量に応じた指令値を第1コントローラ51に入力すると、トランジスタスイッチ69により力行コンタクタ61が閉じ、トランジスタスイッチ70,71により先後進コンタクタ62,63が相補的に切り換わって前進用になるとともに、メイントランジスタ64に対するチョッパ信号によりアクセル操作量に応じた電流が主モータに流れ、後輪がアクセル操作量に応じた力行力で前進方向に駆動される。そして、第1コントローラ51は第2コントローラ53に対して、アクセル操作量に応じた前進方向即ちプラスの後輪速度指令56を出力している。
【0030】このとき、前輪11,12はダイレクトドライブであるため通常はフリーな従動輪として機能し、スリップすることなく回転する。しかし、後輪13は駆動輪でありしかも重心が前方に移動した場合にはスリップしやすい。後輪13がスリップすると、車両は発進せず、前輪回転計速度信号に基づく帰還信号57がゼロのままである。すると、演算器79からアクセル操作量に応じた大きさの正の偏差信号eが調節器81に出力され、前輪11,12は偏差信号eの大きさに応じてドライバ75,76及び補助モータ15,16を介して前進方向に駆動され、後輪13のスリップ状態からの脱出を補助する。後輪13のスリップが解消されると、後輪速度指令56に応じて車両が走行するため、前輪回転計速度信号に基づく帰還信号57と一致することになり、偏差信号eはゼロ近傍になって、前輪11,12は元の従動輪に戻る。
【0031】なお、比較器80は、系全体の遅れを考慮したものである。アクセルと車両速度との間には遅れがあり、前輪11,12で検出される車両速度即ち前輪速度信号57が第1コントローラ51の後輪速度指令57に一致しないからといって直ちに前輪11,12をフリーから駆動に変えることは好ましくないからである。また、後進の発進時に後輪にスリップが生じた場合は、後輪速度指令56、帰還信号57及び偏差信号eの正負の関係が逆になり、前進が後進になるだけで同様の作動になる。
【0032】つぎに、■の前進又は後進の急停止時を説明する。例えば、前進時にブレーキペダルを踏み込む急停止操作をすると、ブレーキ開放スイッチ72がオンになり、図3のブレーキパッド35が閉じて後輪13がロックされ、アクセル8の操作量に関係なく、後輪速度指令56がゼロになる。しかし、重心が前輪11,12側に移動していると、後輪13がロックされたままスリップし、慣性で車両が走行することがある。前輪11,12が前進方向に回転するため、前輪回転計速度信号に基づく帰還信号57が負の出力となり、後輪速度指令56がゼロであるため、偏差信号eは負の出力となる。調節器81は負の偏差信号eの大きさに基づき、前輪11,12はドライバ75,76及び補助モータ15,16を介して後進方向に駆動され、車両が慣性で走行するのを阻止して急停止を補助する。
【0033】なお、後進の急停止時に車両が慣性で走行する場合は、後輪速度指令56はゼロのまま、帰還信号57及び偏差信号eの正負の関係が逆になり、前輪11,12が前進方向に駆動され、車両の後進方向への急停止を補助する。
【0034】つぎに、■の坂道上昇時を説明する。坂道の程度が少なく、後輪速度指令56に応じた車両速度が得られていると、後輪速度指令56と前輪回転計速度信号に基づく帰還信号57との偏差信号eがゼロ近傍であって、前輪11,12はフリーな従動輪のままである。
【0035】坂道の上り勾配が急になり、車両への負荷が増大すると、後輪速度指令56に応じた車両速度が得られず、車両は減速しはじめる。車両の運転者はアクセル8を前進方向に操作して車両の速度を保とうとする。すると、後輪速度指令56は更に大きくなるのに、帰還信号57が小さくなって、正の偏差信号eが出力される。この正の偏差信号eが比較器80の所定値より大きくなると、調節器81は正の偏差信号eに基づき、前輪11,12はドライバ75,76及び補助モータ15,16を介して前進方向に駆動され、車両の坂道登攀を補助する。
【0036】坂道の上り勾配が更に急になり、アクセル8を前進方向の最大まで操作しても車両が止まって後戻りしはじるめると、後輪速度指令56は最大のままであるが、帰還信号57の正負が逆転し正の出力となる。すると、偏差信号eは輪速度指令56+帰還信号57となって正の方向に多くなり、大きくなった偏差信号eに基づき、前輪11,12はドライバ75,76及び補助モータ15,16を介して更に強力に前進方向に駆動され、車両の坂道逆行を阻止する。
【0037】つぎに、■の坂道下降時を説明する。坂道の程度が少なく、後輪速度指令56に応じた車両速度が得られていると、後輪速度指令56と前輪回転計速度信号に基づく帰還信号57との偏差信号eがゼロ近傍であって、前輪11,12はフリーな従動輪のままであるのは坂道上昇時と同じである。
【0038】坂道の下り勾配が急になると、後輪速度指令56に応じた車両速度が得られず、車両は加速しはじめる。車両の速度に応じて運転者はアクセル8を中立位置に向かって戻していき、ブレーキをかける。しかし、下り勾配が急であると、アクセル8を中立位置に戻しても車両が加速しはじめ、後輪速度指令56はゼロであるのに、前輪回転計速度信号に基づく帰還信号57が負の値を出力し、偏差信号eは負の値となる。すると、負の偏差信号eに基づき、前輪11,12はドライバ75,76及び補助モータ15,16を介して坂道を上昇する方向に駆動され、車両の坂道下降時の加速を阻止する。もちろん、車両の坂道下降時の加速が、前輪11,12の補助的駆動で止められない場合、運転者はブレーキペダルを操作、後輪13の機械式ブレーキ力も付加される。
【0039】
【発明の効果】本発明にかかる請求項1記載の発明によると、後輪の回転方向と回転数に関する後輪速度指令信号と、前輪の回転方向と速度の検出に基づく帰還信号とによる速度制御系とすることにより、車両の通常走行時は前輪をフリーとして車両の小回りを確保し、スリップ時等のように車両の通常走行時以外は前輪を補助駆動として使用することを自動的に行うことができる。
【0040】請求項2記載の発明によると、通常走行時とそれ以外の区別を明瞭にし、スリップ時のような特別の場合にだけ、前輪を補助駆動として使用することを自動的に行うことができる。
【0041】請求項3記載の発明によると、前後進時の急発進又は急停車時の駆動補助、坂道上昇時又は坂道下降時の駆動補助など、通常走行以外のあらゆる場合に、前輪を補助駆動として使用するができる。
【0042】請求項4記載の発明によると、前輪はダイレクトドライブのホイールインモータで駆動されるため、通常走行時は従動輪として機能するものの、通常走行時以外には補助駆動輪として機能するという使い分けがし易い機構である。
【出願人】 【識別番号】000002059
【氏名又は名称】神鋼電機株式会社
【出願日】 平成9年(1997)10月8日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】梶 良之
【公開番号】 特開平11−122721
【公開日】 平成11年(1999)4月30日
【出願番号】 特願平9−275417