| 【発明の名称】 |
原動機の運転制御装置およびハイブリッド車輌の運転制御装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】山口 勝彦
【氏名】高岡 俊文
【氏名】原田 修
【氏名】長瀬 健一
|
| 【要約】 |
【課題】ハイブリッド車輌におけるエンジンの運転の望ましい手法を決定する。
【解決手段】エンジン150を、シフトポジションセンサ184により検出されたシフトレンジにより異なる判定値により、起動・停止する。特に、パーキングおよび後退レンジでは、エンジン150を起動しやすくし、ドライブレンジでは、走行状態とバッテリ194のSOCとにより、エンジン150の起動・停止の判定値を設定する。また、ドライブレンジでの判定値は、他のレンジでの判定値より高い値に設定することがあるものとする。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 所定の運転範囲で運転される原動機と、該原動機の出力する動力の少なくとも一部を用いて発電する発電機と、駆動軸に出力される動力が要求動力となるよう運転される電動機と、を備えたハイブリッド車輌の該原動機の運転を制御する装置であって、前記原動機に対する要求動力を、所定のパラメータに基づいて求める要求動力演算手段と、該要求動力が所定の判定値以上か否かを判断し、該要求動力が該判定値以上の場合には、前記原動機を運転する原動機運転手段と、前記ハイブリッド車輌の駆動軸に介装され、該駆動軸への動力の伝達経路の状態を切り換えるシフト手段と、該伝達経路の状態に応じて、前記判定値を変更する判定値変更手段とを備えた原動機の運転制御装置。 【請求項2】 前記シフト手段は、前記伝達経路の状態として、パーキング、ドライブ、リバース、ニュートラルのうちの少なくとも2以上の状態の切り換えが可能な手段である請求項1記載の原動機の運転制御装置。 【請求項3】 前記原動機運転手段は、前記原動機の運転開始と運転停止とを、異なる判定値により判定する手段である請求項1記載の原動機の運転制御装置。 【請求項4】 請求項2記載の原動機の運転制御装置であって、前記発電機により発電された電力の少なくとも一部により充電可能なバッテリを備えると共に、前記要求動力演算手段は、前記パラメータとして、該バッテリの状態を用いて前記要求動力を求める手段である原動機の運転制御装置。 【請求項5】 請求項2記載の原動機の運転制御装置であって、前記判定値変更手段は、前記伝達経路の状態がドライブ状態の場合には、前記判定値を、前記車輌の運転状態に応じて、ドライブ以外の状態の前記判定値以上の値に設定することある手段である原動機の運転制御装置。 【請求項6】 所定の運転範囲で運転される原動機の動力を駆動軸に伝達する動力伝達経路に、3軸のうちいずれか2軸へ動力が入出力されたとき、該入出力された動力に基づいて定まる動力を残余の1軸へ入出力する3軸式動力入出力手段を設け、前記3軸のうちの2軸に、前記駆動軸と前記原動機の出力軸とを結合すると共に、前記3軸のうちの残余の1軸に電動機を結合し、前記原動機の動力を前記3軸式動力入出力手段を介して、前記駆動軸に出力するハイブリッド車輌の運転制御装置であって、前記原動機に対する要求動力を、所定のパラメータに基づいて求める要求動力演算手段と、該要求動力が所定の判定値以上か否かを判断し、該要求動力が該判定値以上の場合には、前記原動機を運転する原動機運転手段と、前記ハイブリッド車輌の駆動軸に介装され、該駆動軸への動力の伝達経路の状態を切り換えるシフト手段と、該伝達経路の状態に応じて、前記判定値を変更する判定値変更手段とを備えたハイブリッド車輌の運転制御装置。 【請求項7】 前記シフト手段は、前記伝達経路の状態として、パーキング、ドライブ、リバース、ニュートラルのうちの少なくとも2以上の状態の切り換えが可能な手段である請求項6記載のハイブリッド車輌の運転制御装置。 【請求項8】 請求項6記載のハイブリッド車輌の運転制御装置であって、前記原動機の動力の少なくとも一部により運転されて発電を行なう発電機と、前記発電機により発電された電力の少なくとも一部により充電可能なバッテリとを備えると共に、前記要求動力演算手段は、前記パラメータとして、該バッテリの状態を用いて前記要求動力を求める手段であるハイブリッド車輌の運転制御装置。 【請求項9】 前記要求動力演算手段は、前記パラメータとして、該バッテリへの充電要求および前記駆動軸に出力すべき動力を用いて前記要求動力を求める手段である請求項8記載のハイブリッド車輌の運転制御装置。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、原動機の運転制御装置およびハイブリッド車輌の運転制御装置に関し、詳しくは、効率などを優先した所定の運転範囲で運転される原動機と、この原動機の出力する動力の少なくとも一部を用いて発電する発電機と、駆動軸に出力される動力が要求動力となるよう運転される電動機とを備えたハイブリッド車輌における原動機の運転を制御する技術に関する。 【0002】 【従来の技術】近年、燃料の燃焼により動力を出力するガソリンレシプロエンジンなどの原動機の燃費や排ガス浄化性能の飛躍的な向上と車輌の走行性能の確保との両立を目的として、いわゆるハイブリッド車輌の構成が種々提案されている。ハイブリッド車輌は大きく分けると、原動機により発電機を駆動して発電を行ない、発電した電力でモータを駆動して車輌の推進力を得るシリーズハイブリッド方式と、駆動軸に原動機とモータとをそれぞれ結合し、原動機とモータとにより車輌の推進力を得るパラレルハイブリッド方式と知られている。いずれの方式でも、内燃機関などの原動機が効率よく運転できる範囲と、車輌の駆動軸に要求される動力の範囲とが異なっているとの前提に立ち、原動機は効率やエミッションなどを優先した運転範囲で運転し、駆動軸に要求される動力を電動機により賄おうとするものである。 【0003】例えば、出願人は、原動機と3軸式動力入出力手段としてのプラネタリギヤと2つの電動機とバッテリとを備え、原動機から出力される動力やバッテリに蓄えられた電力をプラネタリギヤと2つの電動機によりエネルギ変換して所望の動力とし、これを駆動軸に出力するものを提案している(特開昭第50−30223号公報)。また、こうした原動機とプラネタリギヤと2つの電動機とバッテリ(二次電池)とを備える動力出力装置において、所望の動力を駆動軸に安定して出力するために、プラネタリギヤのサンギヤやリングギヤ,プラネタリキャリアの3軸の回転数が所望の回転数となるようこれらの回転数に基づいて2つの電動機を駆動制御するものも提案している(特願平8−274112号)。 【0004】これらのハイブリッド車輌では、原動機の出力したエネルギをバッテリに蓄えておき、いつでも動力して出力することができるため、駆動軸に出力する動力と原動機の出力とを必ずしもバランスさせておく必要はない。むしろ、原動機は最も効率の良い定常的な運転状態で運転し、駆動軸に要求されている動力に対して余剰のエネルギが存在すれば、これを電力の形態で蓄え、蓄電池が十分に充電されれば、原動機を停止して、電動機の動力のみで車輌を走行させるよう構成することが、システム全体を高効率なものとする点からは望ましいと考えられる。他の構成のハイブリッド車輌でも、この関係は基本的には同一であり、この場合、原動機は間欠運転されることになる。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、実際にこうしたハイブリッド車輌を製作してみると、原動機を間欠的に運転しあるいは停止するための判断をいかに行なうのが望ましいかという問題が未解決であることが分かった。バッテリが存在する場合には、バッテリの充電状態が所定の範囲となるよう原動機を間欠運転することが考えられる。そこで、本願出願人は、バッテリの性能がその温度に強く依存していることに鑑み、この判断を環境温度により変更するものを提案している(特開平6−225405号)。ハイブリッド車輌におけるかかる原動機の運転制御の判断については、これまでほとんど知られておらず、出願人は、ハイブリッド車輌の運転状態を詳しく分析することにより、更に優れた原動機の運転制御装置およびハイブリッド車輌の運転装置を完成した。 【0006】本発明の目的は、従って、ハイブリッド車輌における原動機の運転の開始、停止を適正に判断することにあり、特に駆動軸への動力の伝達経路の状態と原動機の運転状態との関係を明らかにして、原動機の運転を適正に制御することを目的の一つとする。 【0007】 【課題を解決するための手段およびその作用・効果】本発明の原動機の運転制御装置は、上述の目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。即ち、本発明の原動機の運転制御装置は、所定の運転範囲で運転される原動機と、該原動機の出力する動力の少なくとも一部を用いて発電する発電機と、駆動軸に出力される動力が要求動力となるよう運転される電動機とを備えたハイブリッド車輌の該原動機の運転を制御する装置であって、前記原動機に対する要求動力を、所定のパラメータに基づいて求める要求動力演算手段と、該要求動力が所定の判定値以上か否かを判断し、該要求動力が該判定値以上の場合には、前記原動機を運転する原動機運転手段と、前記ハイブリッド車輌の駆動軸に介装され、該駆動軸への動力の伝達経路の状態を切り換えるシフト手段と、該伝達経路の状態に応じて、前記判定値を変更する判定値変更手段とを備えたことを要旨とする。 【0008】この原動機の運転制御装置によれば、駆動軸への動力の伝達経路の状態がシフト手段より切り換えられると、これに応じて原動機を運転するか否かの判断基準である判定値が変更される。この結果、この原動機の運転制御装置では、動力の伝達経路の状態に合わせて原動機が運転、停止される。 【0009】ここで、シフト手段としては、伝達経路の状態として、パーキング、ドライブ、リバース、ニュートラルのうちの少なくとも2以上の状態の切り換えが可能な手段を考えることができる。車輌としては、車輌が停止しており、動力が伝達されず駆動軸がロックされているパーキング、伝達経路を介して動力が駆動軸に伝達されるドライブ、動力の伝達はないが駆動軸は回転可能なニュートラル、駆動軸が通常走行時とは反対方向に回転するリバース等が必要となる。本願発明は、これらのうちの少なくとも2つの状態に切り換え可能なものであれば、適用することができる。動力の伝達経路の状態の違いにより、原動機を運転すべきか否かの判断基準が変わるからである。 【0010】なお、シフト手段は、ギヤの組み合わせにより上記の各状態を作り出す構成でも可能であるが、例えば原動機から駆動軸までの間に、動力の一部を電気的なエネルギとしてやり取り可能な電動機を設けると共に、駆動軸に電動機を取り付けた構成を取った場合には、これらの電動機の回転方向や、ロック制御などを組み合わせることにより、伝達経路の状態を、パーキング(駆動軸をロック)、ドライブ(駆動軸を原動機または電動機を駆動)、リバース(駆動軸のモータを逆回転)、ニュートラル(電動機をフリーラン)などに切り換えることができる。こうした構成も、ここでいうシフト手段にふくまれる。 【0011】本願発明において原動機運転手段としては、原動機の運転開始と運転停止とを、異なる判定値により判定することも可能である。制御上のチャタリングを防止する目的で、原動機を運転すべきか否かの判定基準に所定のヒステリシスを持たせることは制御上、必要に応じて採用される技術であるが、かかる制御上の要請とは別に、ハイブリッド車輌の運転上の特性から、運転開始と運転停止とを、異なる判定値により判定することが望ましい場合が考えられる。例えば、ハイブリッド車輌にバッテリを搭載し、発電機により発電した余剰の電力をバッテリに蓄える場合には、バッテリの充放電特性から望ましい充電開始(原動機の運転開始)と充電停止(原動機の運転停止)のタイミングを決定し得る場合がある。また、エアコンなどの補機類の運転状態によっても、こうした原動機の運転開始と運転停止の判断基準を異ならせた方が良い場合が考えられるのである。 【0012】本願発明において、発電機により発電された電力の少なくとも一部により充電可能なバッテリを設けた場合には、原動機に対する要求動力を、このバッテリの状態、例えば要求充電量などから求めるものとすることができる。特に、シフト手段により動力の伝達経路が、パーキングまたはリバースの状態では、原動機への要求動力をバッテリを充電するための要求量により定めることができる。車輌の制動時に発電機を用いて電力を回生することが可能な構成を取っていたとしても、パーキングの状態では回生電力は期待できず、バッテリを充電することはできない。したがって、動力の伝達経路の状態がパーキングの場合には、バッテリ自体の状態で原動機の運転開始を判定することが望ましい。同様に、リバースの場合を考えると、リバースの状態ではバッテリを充電することが困難な場合があり得るので、この場合にも、バッテリ自体の状態で原動機の運転開始を判定することが望ましい。 【0013】動力の伝達経路の状態と判定値とは、様々な関係が考えられるが、伝達経路の状態がドライブ状態の場合には、判定値を、ドライブ以外の状態の判定値以上の値に設定することも考えられる。また、常に、ドライブ以外の状態の判定値以上とするのではなく、通常は両者を等しくし、車輌の運転状態に応じて、ドライブ状態の判定値を、ドライブ状態以外の判定値より大きくするものとしてもよい。走行中は、走行に必要な動力に基づいて発電すべき電力も大きくなることが多いので、判定値を大きくしておくことで、逆に要求される電力が低下した場合に、速やかに原動機を停止できるからである。 【0014】上述した原動機の運転制御装置の考え方は、3軸式の動力伝達手段を備えハイブリッド車輌に適用することができる。この場合には、ハイブリッド車輌の運転制御装置として発明は把握される。このハイブリッド車輌の運転制御装置は、所定の運転範囲で運転される原動機の動力を駆動軸に伝達する動力伝達経路に、3軸のうちいずれか2軸へ動力が入出力されたとき、該入出力された動力に基づいて定まる動力を残余の1軸へ入出力する3軸式動力入出力手段を設け、前記3軸のうちの2軸に、前記駆動軸と前記原動機の出力軸とを結合すると共に、前記3軸のうちの残余の1軸に電動機を結合し、前記原動機の動力を前記3軸式動力入出力手段を介して、前記駆動軸に出力するハイブリッド車輌の運転制御装置であって、前記原動機に対する要求動力を、所定のパラメータに基づいて求める要求動力演算手段と、該要求動力が所定の判定値以上か否かを判断し、該要求動力が該判定値以上の場合には、前記原動機を運転する原動機運転手段と、前記ハイブリッド車輌の駆動軸に介装され、該駆動軸への動力の伝達経路の状態を切り換えるシフト手段と、該伝達経路の状態に応じて、前記判定値を変更する判定値変更手段とを備えたことを要旨としている。 【0015】このハイブリッド車輌の運転制御装置によれば、原動機の動力は、3軸式動力入出力手段を介して直接的、あるいは発電機−電動機での機械・電気エネルギの変換を介して、駆動軸に伝達される。ここで、この駆動軸への動力の伝達経路の状態がシフト手段より切り換えられると、これに応じて原動機を運転するか否かの判断基準である判定値が変更される。この結果、このハイブリッド車輌の運転制御装置では、動力の伝達経路の状態に合わせて原動機が運転、停止される。 【0016】ここで、シフト手段としては、伝達経路の状態として、パーキング、ドライブ、リバース、ニュートラルのうちの少なくとも2以上の状態の切り換えが可能な手段を考えることができるのは、前述した原動機の運転制御装置の発明の場合と同様である。また、このハイブリッド車輌が、原動機により運転される発電機と、この発電機により発電された電力の少なくとも一部により充電可能なバッテリとを備える場合、要求動力演算手段は、パラメータとして、バッテリへの充電要求を用いて、要求動力を求めるものとすることができる。あるいは、バッテリへの充電要求と駆動軸に出力すべき動力を用いて、要求動力を求めるものとすることもできる。 【0017】本願発明における原動機は、燃料の燃焼により動力を出力するものであれば、いかなる態様のものでもよく、例えばガソリンや軽油を燃料として、これを吸気系あるいはシリンダ内に供給するレシプロエンジンやロータリエンジン等の内燃機関、スターリングエンジン、天然ガスや水素等のガス燃料やメタノールなどの他の液体燃料を用いたエンジンなどが含まれる。 【0018】 【発明の他の態様】本発明の他の形態として、動力の伝達経路に、原動機の出力軸に結合された第1のロータと、この第1のロータに対して相対的に回転可能であり、駆動軸に結合された第2のロータと、該第1および第2のロータの相対的な回転に応じた電力をやり取りする巻線とを備えたモータを備えた態様を考えることができる。かかる構成を採用した場合にも、原動機の運転の判定を、同様に行なうことができる。 【0019】 【発明の実施の形態】 (1)実施例の構成はじめに、実施例の構成について図1を用いて説明する。図1は実施例としての内燃機関の運転制御装置を搭載したハイブリッド車両の概略構成を示す説明図である。 【0020】このハイブリッド車両の構成は大きくは、駆動力を発生する動力系統と、その制御系統と、駆動源からの駆動力を駆動輪116、118に伝達する動力伝達系統と、運転操作部等とからなっている。また、上記、動力系統はエンジン150を含む系統とモータMG1,MG2を含む系統とからなっており、制御系統は、エンジン150の運転を主に制御するための電子制御ユニット(以下、EFIECUと呼ぶ)170と、モータMG1,MG2の運転を主に制御する制御ユニット190と、EFIECU170および制御ユニット190に必要な信号を検出し入出力する種々のセンサ部とからなっている。なお、EFIECU170および制御ユニット190の内部構成は図示していないが、これらはそれぞれ内部にCPU、ROM、RAM等を有するワンチップ・マイクロコンピュータであり、CPUがROMに記録されたプログラムに従い、以下に示す種々の制御処理を行なうよう構成されている。エンジン150からの動力を受け、更にプラネタリギヤ120により、このエンジン150の動力に対して、モータMG1,MG2の動力あるいは発電により調整された動力を駆動軸112に出力する構成を、以下では、動力出力装置110と呼ぶ。 【0021】エンジン150は、吸入口200から吸入した空気と燃料噴射弁151から噴射されたガソリンとの混合気を燃焼室152に吸入し、この混合気の爆発により押し下げられるピストン154の運動をクランクシャフト156の回転運動に変換する。この爆発は、イグナイタ158からディストリビュータ160を介して導かれた高電圧によって点火プラグ162が形成した電気火花によって混合気が点火され燃焼することで生じる。燃焼により生じた排気は、排気口202を通って大気中に排出される。 【0022】エンジン150の運転は、EFIECU170により制御されている。EFIECU170が行なうエンジン150の制御としては、エンジン150の回転数に応じた点火プラグ162の点火時期制御や、吸入空気量に応じた燃料噴射量制御および後述する吸気弁153の開閉タイミング制御等がある。エンジン150の制御を可能とするために、EFIECU170にはエンジン150の運転状態を示す種々のセンサが接続されている。例えばクランクシャフト156の回転数と回転角度を検出するためにディストリビュータ160に設けられた回転数センサ176及び回転角度センサ178などである。なお、EFIECU170には、この他、例えばイグニッションキーの状態STを検出するスタータスイッチ179なども接続されているが、その他のセンサ,スイッチなどの図示は省略した。 【0023】本実施例におけるエンジン150は、吸気弁153の開閉タイミングを変更する機構、いわゆる連続可変バルブタイミング機構157(以下、VVTという)を用いている。図2を用いてVVT157の概要を説明する。図2はVVT157の機構の概略を示す説明図である。図2に示す通り、通常、吸気弁153は吸気カムシャフト240に取り付けられたカムにより開閉し、排気弁155は排気カムシャフト244に取り付けられたカムにより開閉する機構となっている。吸気弁153および排気弁155がエンジン150の回転数に応じたタイミングで開閉し得る様、吸気カムシャフト240に結合された吸気カムシャフト・タイミング・ギヤ242と排気カムシャフト244に結合された排気カムシャフト・タイミング・ギヤ246はタイミングベルト248によりクランクシャフト156と連結されている。こうした通常の構成に加え、VVT157の場合は、吸気カムシャフト・タイミング・ギヤ242と吸気カムシャフト240とは、油圧で作動するVVTプーリ250を介して結合されており、VVTプーリ250には入力油圧の制御バルブであるOCV254が設けられている。VVTプーリ250の内部はこの油圧により軸方向に移動可能な可動ピストン252の組み合わせで構成されている。なお、VVTプーリ250に入力される油圧はエンジンオイルポンプ256により供給される。 【0024】VVT157の作動原理は次の通りである。EFIECU170はエンジン150の運転状況に応じて設定された吸気弁153の開閉タイミングに応じて、OCV254の開閉を制御する制御信号を出力する。この結果、VVTプーリ250に入力される油圧が変化し、可変ピストン252が軸方向に移動する。可変ピストン252には軸に対し斜め方向に溝が刻んであるため、上記軸方向への移動に伴って可変ピストン252の回転が生じ、可変ピストン252に結合されている吸気カムシャフト240と吸気カムシャフト・タイミング・ギヤ242の取り付け角度を変化させる。こうして、排気弁155と吸気弁153の開閉タイミングを変化させることができる。 【0025】図3にVVT157による吸気弁153の開閉タイミングの変更の様子を示す。図3は、エンジン150のクランクシャフト156の回転角度と吸気弁153および排気弁155が開いているタイミングとの関係を示している。図3に示す通り、排気弁155は、ピストン154が最も下方に来る下死点よりクランクシャフト156がやや手前の回転位置にある時点で開き、ピストン154が最も上方に来る上死点をやや越えた時点で閉じる。このタイミングはVVT157により変更されることはない。一方、吸気弁153は、例えばタイミングAにおいては上死点より手前で開き、下死点をやや越えた時点で閉じる。吸気弁153が開いてから上死点をやや越える時点までは、吸気弁153と排気弁155の双方が開いた状態となっている。VVT157により開閉タイミングを変更すれば、先に説明した通り、排気弁155の開閉タイミングは変更されないが、吸気弁153の開閉タイミングは例えばタイミングBのごとく変化する。このとき、吸気弁153は、タイミングAよりも遅く、上死点をやや越えた時点で開き、その分下死点を大きく越えた時点で閉じるようになる。吸気弁153の開閉タイミングは変更されるものの、開状態となっている期間はタイミングAとタイミングBとで同一である。 【0026】このように変化する吸気弁153の開閉タイミングを図3に示した通り下死点から吸気弁153が閉じるまでの角度、即ち吸気弁閉じ角δを用いて表すものとする。吸気弁閉じ角δを標準の値よりも大きくした場合は吸気弁153が閉じるのが遅くなることを意味し、吸気弁閉じ角δを小さくした場合は吸気弁153が閉じるのが早くなることを意味する。従って、前者の方向、即ち吸気弁閉じ角δを大きくする方向にVVT157を制御することを遅角制御と呼び、その逆を進角制御と呼ぶ。例えば、比較的低回転でエンジン150を運転しているときにVVT157を進角制御した場合には、その分燃焼室152に吸入された混合気を圧縮する行程が長くなるためエンジン150の出力トルクが増大し、逆にVVT157を遅角制御した場合にはエンジン150の燃費が向上することが一般に知られている。また、エンジン150の始動時に遅角制御すれば、燃焼室152に吸入された空気の圧縮行程が短くなるため、エンジン150の停止状態から速やかに回転数を向上させやすい利点もある。 【0027】次に、図1に戻り動力系統を構成する動力出力装置110のモータMG1,MG2の概略構成について説明する。モータMG1は、同期電動発電機として構成され、外周面に複数個の永久磁石を有するロータ132と、回転磁界を形成する三相コイルが巻回されたステータ133とを備える。ステータ133は、無方向性電磁鋼板の薄板を積層して形成されており、ケース119に固定されている。このモータMG1は、ロータ132に備えられた永久磁石による磁界とステータ133に備えられた三相コイルによって形成される磁界との相互作用によりロータ132を回転駆動する電動機として動作し、場合によってはこれらの相互作用によりステータ133に備えられた三相コイルの両端に起電力を生じさせる発電機としても動作する。 【0028】モータMG2も、モータMG1と同様に同期電動発電機として構成され、外周面に複数個の永久磁石を有するロータ142と、回転磁界を形成する三相コイルが巻回されたステータ143とを備える。モータMG2のステータ143も無方向性電磁鋼板の薄板を積層して形成されており、ケース119に固定されている。このモータMG2もモータMG1と同様に、電動機あるいは発電機として動作する。 【0029】これらのモータMG1,MG2は、スイッチングを行なうトランジスタを複数内蔵した第1および第2の駆動回路191,192を介してバッテリ194および制御ユニット190に電気的に接続されている。制御ユニット190からは、第1および第2の駆動回路191,192に設けられたスイッチング素子である6個のトランジスタおよびを駆動する制御信号が出力されている。各駆動回路191,192内の6個のトランジスタは、ソース側とシンク側となるよう2個ずつペアで配置されることによりトランジスタインバータを構成している。制御ユニット190によりソース側とシンク側のトランジスタのオン時間の割合を制御信号により順次制御し、三相コイルの各相に流れる電流を、PWM制御によって擬似的な正弦波にすると、三相コイルにより、回転磁界が形成され、これらのモータMG1,MG2が駆動される。 【0030】モータMG1,MG2の制御を含むハイブリッド車両の運転状態の制御を可能とするために、制御ユニット190には、この他各種のセンサおよびスイッチが電気的に接続されている。制御ユニット190に接続されているセンサおよびスイッチとしては、アクセルペダルポジションセンサ164a、ブレーキペダルポジションセンサ165a、シフトポジションセンサ184、水温センサ174、バッテリ194の残容量検出器199などがある。制御ユニット190は、これらのセンサを通じて運転操作部からの種々の信号やバッテリ194の残容量等を入力し、また、エンジン150を制御するEFIECU170との間で種々の情報を、通信によってやりとりしている。運転操作部からの種々の信号として、具体的には、アクセルペダルポジションセンサ164aからのアクセルペダルポジション(アクセルペダルの踏込量)AP、ブレーキペダルポジションセンサ165aからのブレーキペダルポジション(ブレーキペダルの踏込量)BP、シフトポジションセンサ184からのシフトポジションSPがある。また、バッテリ194の残容量は残容量検出器199で検出される。なお、残容量検出器199は、バッテリ194の電解液の比重またはバッテリ194の全体の重量を測定して残容量を検出するものや、充電・放電の電流値と時間を演算して残容量を検出するものや、バッテリ194の端子間を瞬間的にショートさせて電流を流し内部抵抗を測ることにより残容量を検出するものなどが知られている。 【0031】駆動源からの駆動力を駆動輪116、118に伝達する動力伝達系統の構成は次の通りである。エンジン150の動力を伝達するためのクランクシャフト156はダンパ130を介してプラネタリキャリア軸127に結合され、このプラネタリキャリア軸127と、モータMG1,モータMG2の回転を伝達するサンギヤ軸125、リングギヤ軸126とは、後述するプラネタリギヤ120に機械的に結合されている。ダンパ130は、このエンジン150のクランクシャフト156とプラネタリキャリア軸127とを接続し、クランクシャフト156のねじり振動の振幅を抑制する目的で設けられているものである。 【0032】リングギヤ122には、動力取り出し用の動力取出ギヤ128が、リングギヤ122とモータMG1との間の位置で結合されている。この動力取出ギヤ128は、チェーンベルト129により動力伝達ギヤ111に接続されており、動力取出ギヤ128と動力伝達ギヤ111との間で動力の伝達がなされる。また、この動力伝達ギヤ111はディファレンシャルギヤ114を介して左右の駆動輪116、118に結合され、これらに動力を伝達できるようになっている。 【0033】ここで、プラネタリギヤ120の構成と併せてクランクシャフト156、プラネタリキャリア軸127、モータMG1の回転軸であるサンギヤ軸125、MG2の回転軸であるリングギヤ軸126の結合について説明する。プラネタリギヤ120は、サンギヤ121、リングギヤ122なる同軸の2つのギヤと、サンギヤ121とリングギヤ122との間に配置されサンギヤ121の外周を自転しながら公転する複数のプラネタリピニオンギヤ123の3つから構成される。サンギヤ121はプラネタリキャリア軸127に軸中心を貫通された中空のサンギヤ軸125を介してモータMG1のロータ132に結合され、リングギヤ122はリングギヤ軸126を介してモータMG2のロータ142に結合されている。また、プラネタリピニオンギヤ123は、その回転軸を軸支するプラネタリキャリア124を介してプラネタリキャリア軸127に結合され、プラネタリキャリア軸127はクランクシャフト156に結合されている。機構学上周知のことであるが、プラネタリギヤ120は上述のサンギヤ軸125、リングギヤ軸126およびプラネタリキャリア軸127の3軸のうちいずれか2軸の回転数およびこれらの軸に入出力されるトルクが決定されると、残余の1軸の回転数および該回転軸に入出力されるトルクが決定されるという性質を有している。 【0034】(2)一般的動作次に、本実施例のハイブリッド車両の一般的な動作について簡単に説明する。前述した構成を有するハイブリッド車輌は走行時において、駆動軸112に出力すべき要求動力に相当する動力をエンジン150から出力し、出力された動力を以下の通りトルク変換して駆動軸112に伝達している。トルク変換は、例えば駆動軸112から出力すべき要求回転数および要求トルクに対し、エンジン150のクランクシャフト156が高回転数かつ低トルクで回転している場合には、エンジン150の出力している動力の一部をモータMG1により電力として回収し、その電力によりモータMG2を駆動する。具体的には、まずエンジン150から出力された動力が、プラネタリギヤ120においてサンギヤ軸125に結合されたモータMG1に伝達される動力と、リングギヤ軸126を介して駆動軸112に伝達される動力とに分配される。この動力分配は、リングギヤ軸126の回転数が要求回転数に一致するような条件下で行なわれる。サンギヤ軸125に伝達された動力は、モータMG1により電力として回生される。一方、この電力を用いてリングギヤ軸126に結合されたモータMG2を駆動することにより、リングギヤ軸126にはトルクが付加される。このトルク付加は駆動軸112に要求トルクが出力されるように行なわれる。こうしてモータMG1およびMG2を介して電力の形でやりとりされる動力を調整することによりエンジン150から出力された動力を所望の回転数およびトルクとして駆動軸112から出力することができるのである。 【0035】逆に、駆動軸112から出力すべき要求回転数および要求トルクに対し、エンジン150のクランクシャフト156が低回転数かつ高トルクで回転している場合には、エンジン150の出力している動力の一部をモータMG2により電力を回収し、その電力によりモータMG1を駆動する。 【0036】かかる動作原理に基づき、ハイブリッド車両はモータMG2のみを駆動源として走行することもできるし、エンジン150とモータMG2の双方を駆動源として走行することもできる。具体的には、ハイブリッド車輌は減速時または降坂時等のエンジン動力を必要としないとき、および初期加速時には、エンジン150の運転を停止し、モータMG2のみで走行する。通常走行時には、エンジン150を主駆動源としつつ、モータMG2の動力も用いて走行する。エンジン150とモータMG2の双方を駆動源として走行する場合には、必要なトルクおよびモータMG2で発生し得るトルクに応じて、エンジン150を効率のよい運転ポイントで運転できるため、エンジン150のみを駆動源とする車両に比べて省資源性および排気浄化性に優れている。一方、クランクシャフト156の回転を、プラネタリキャリア軸127およびサンギヤ軸125を介してモータMG1に伝達することができるため、エンジン150の運転によりモータMG1で発電しつつ走行することも可能である。 【0037】なお、本実施例のハイブリッド車両では、上記トルク変換において用いられるプラネタリギヤ120の回転数についての機械的な制限により、図4に示す通り、エンジン150の運転可能な回転数が車速に応じて制限されている。かかる制限が存在する理由は次の通りである。プラネタリギヤ120について、サンギヤ121とリングギヤ122のギヤ比(サンギヤの歯数/リングギヤの歯数)をρとすれば、サンギヤ軸125の回転数Ns、プラネタリキャリア軸127の回転数Nc、リングギヤ軸126の回転数Nrの間には、一般に次式(1)の関係が成立することが知られている。本実施例の場合、リングギヤ軸126の回転数Nrは車速と等価なパラメータであり、プラネタリキャリア軸127の回転数Ncはエンジン150の回転数と等価なパラメータである。 Ns=Nc+(Nc−Nr)/ρ ・・・(1) 【0038】サンギヤ軸125の回転数には機械的な制限値が存在するから、プラネタリキャリア軸127の最大回転数Ncは、この制限値の下でリングギヤ軸126の回転数Nrに応じて変化し、回転数Nrが値0のとき最も小さく、回転数Nrが大きくなるにつれて大きくなる。かかる理由により、車速に応じてエンジン150の回転数制限値が変化するのである。図4に示す通り、車速に応じてエンジン回転数の使用可能領域の上限値は徐々に増加する。一方、ある車速以上では、上記と同様の理由によりエンジン回転数の下限値が現れる。本実施例の車輌では、車速55km/h以上では、この制限からエンジン150の回転数を0とできず、エンジン150のクランクシャフト156を回転することになる。こうしたエンジン150の回転のエネルギは、結局はモータから与えられるから、この状態をモータリングと呼ぶ。 【0039】(3)エンジン150の始動制御処理次に、本実施例におけるエンジン150の運転制御処理について説明する。図5は運転制御ルーチンの流れを示すフローチャートである。このルーチンは制御ユニット190のCPU(以下、単にCPUという)により実行される処理である。エンジン150の始動は、車輌が停止している場合に運転者がスタータスイッチ179をオンにすることで行なわれる他、上述した通り、車両の運転中において走行状態やバッテリ194の充電状態に応じて、運転者の操作と無関係に行なわれる場合もある。 【0040】図5に示したエンジン運転制御処理ルーチンが開始されると、まずエンジン150に対する要求動力spvを算出する処理が行なわれる(ステップS300)。この要求動力spvは、次の式(2)により計算される。 spv=spacc+spchg+spAC …(2) 【0041】ここで、式(2)の右辺各項は、次の通りである。 ・spacc:車輌を走行させる駆動トルクを全てエンジン150の出力により賄う場合のパワー(発電量に換算した値)。アクセルペダル164の踏み込み量APと車速Vとをパラメータとするマップから求める。シフトレバー182のシフトポジションSPがPレンジ,Rレンジの場合には、値0に設定される。Pレンジでは車輌が走行することはあり得ず、Rレンジでは車輌の走行方向とエンジン150の回転方向が異なるため、エンジン150の動力で車輌を走行させないものとしているからである。 ・spchg:バッテリ194の充放電の要求パワー。バッテリ194のSOCから求められる。本実施例における両者の関係を図6に示す。図示するように、SOCが低い場合には、充電の要求が高く、SOCが約60[%]で充放電の要求は0、それ以上では放電要求となる。 ・spAC:図示しないエアコンが駆動される場合の補正量である。エアコンは、電力の消費量が大きいので、他の補機類とは別に、その使用電力を補正するのである。 【0042】こうしてエンジン150に対する要求動力spvを算出した後、つぎにエンジン150が停止しているか否かの判断を行なう(ステップS310)。エンジン150が停止しているとは、エンジン150への燃料噴射が停止され、エンジン150が自立運転されていないことに言う。上述した車速制限その他の理由により、エンジン150自体は動力を出力していない場合でも、モータリングされてクランクシャフト156は回転していることがあり得るが、こうした場合も、エンジン150は停止中と判断される。エンジン150が停止していると判断された場合には、つぎにステップS300で算出された要求動力spvが開始用判定値spsta以上であるか否かの判断を行なう(ステップs320)。この判定値spstaは、エンジン150の自立運転を開始すべきか否かを判断するための判定値であり、後述する停止用判定値spstpと共に、判定値設定処理ルーチン(図7)により設定される。これらの判定値の設定の詳細については、後述する。要求動力spvが判定値sbstaより小さいと判断された場合には、何も行なわず「END」に向けて、本人ルーチンを終了する。かかる場合には、エンジン150に対する要求動力が判定値より小さいことから、エンジン150はそのまま停止状態に維持される。 【0043】ここで、エンジン150を起動制御する処理(ステップS330)とは、単にモータMG1に駆動回路191を介して電流を流し、モータMG1の動力でプラネタリギア120を介してエンジン150のクランクシャフト156をモータリングする処理にとどまらない。本実施例では、少なくとも次の制御を行なっている。 ■車輌が停車中であれば、エンジン150のモータリングを開始しても駆動軸112は回転してはならないから、モータMG1の回転により駆動軸112が回転しないよう、モータMG2をロック状態に制御する、■走行中においても、モータMG1の回転により駆動軸112の回転数が変化したりトルク変動(いわゆるトルクショック)が生じることは望ましくないからの、この場合には、駆動軸112の回転数・トルクを、モータMG1の運転の前後によらず一定にするために、モータMG2の動力の状態を制御する、■クランクシャフト156にプラネタリギヤ120が結合された系に生じることがあるねじり共振の発生を押さえるため、クランクシャフト156の回転数の上昇率(rpm/sec)が一定の範囲に入るようモータMG1の駆動トルクを制御する、■クランクシャフト156の回転数の上昇率を一定の範囲に入るようにしながら、モータMG1における消費電力をできる限り小さくして、バッテリ194への負担を軽減する。 【0044】かかるエンジン起動制御は、制御ユニット180側では、モータMG1,MG2を制御することにより、またEFIECU170側では、VVT157,図示しないスットルバルブ,燃料噴射弁151,イグナイタ158などを制御することにより実現される。EFIECU170側では、VVT157を制御して吸気バルブ153の閉弁タイミングを最遅角側に制御し、かつ図示しないスロットルバルブの開度を大きくして、エンジン150のポンプ仕事をまずもっとも軽い状態とする。その後、モータMG1の回転に伴ってクランクシャフト156の回転数が上昇し所定値以上となると、燃料噴射弁151を駆動して燃料噴射を行なうと共に、イグナイタ158を駆動して高電圧を発生させ、この高電圧により点火プラグ162に電気火花を形成し、シリンダ154内に吸入された混合気への点火を行なう。制御ユニット180とEFIECU170とは、互いに情報を交換しつつ、こうした制御を実行することによりエンジン150をスムースに完爆状態とし、これを起動する。 【0045】エンジン150が起動された後、ステップS310では、エンジン150は停止中でないと判断され、この場合には、次に要求動力spvが停止用判定値spstpより小さいか否かの判断が行なわれる(ステップS340)。停止用判定値spstpは、エンジン150の運転を継続する必要があるかないかを判定するための閾値であり、運転開始を判定する判定値spstaと同様、判定値設定処理ルーチン(図7)により設定される。判定値spstpの設定の手法についても、後でまとめて説明する。なお、ステップS340で用いる判定値spstpとステップS320で用いる判定値spataとは、同一の判定値を用いることも可能であるが、本実施例では、後述するように、所定の偏差を有する異なる値として別々に設定している。両判定値に所定の偏差を持たせることにより、一旦起動されたエンジン150を所定期間継続的に運転することができ、頻繁な起動・停止を生じることがない。 【0046】要求動力spvが判定値spstpを下回っていないと判断された場合には(ステップS340)、エンジン150の運転を継続する処理を行なう(ステップS350)。即ち、要求動力spvが一旦判定値spsta以上となった場合には、要求動力spvが判定値spstpを下回るまでは、エンジン150を継続的に運転し、モータMG2を用いて発電し、あるいは走行中にあっては場合によりそのまま駆動軸112にエンジン150の動力を出力し続けるよう運転するのである。一方、要求動力spvが判定値ststpを下回ったと判断されると(ステップS340)、この場合には、エンジン150を停止する処理を行なう(ステップS360)。エンジン150の停止制御は、上述したエンジンの起動制御とほぼ反対の制御となり、制御ユニット180とEFIECU170の協働により、ねじり共振を生じることなくエンジン150を停止する。 【0047】以上説明したエンジン運転制御処理ルーチンが実行されることにより、エンジン150は、要求動力spvが起動用の判定値spsta以上となったときに起動され、停止用の判定値spstpを下回ったときに停止される。こうしたエンジン150の起動と停止の判定に用いられる判定値spsta,spstpを設定する処理について、次に図7を用いて説明する。 【0048】(4)判定値の設定処理図7に示した判定値設定処理ルーチンは、割り込み処理により所定のインターバルで繰り返し実行されるものであり、このルーチンが起動されると、まず仮判定値tpsta,tpstpに初期値2,1をそれぞれセットする処理が行なわれる(ステップS400)。これらの仮判定値は、それぞれ開始用判定値spsta,停止用判定値spstpに対応しており、この処理ルーチン内で一時的に設定される値である。なお、以下の説明を含めて、これらは、すべてkw単位の値である。 【0049】初期値の設定を行なった後、次にシフトレバー182の設定、即ちシフトレンジを判定する処理を行なう(ステップS405)。シフトレンジは、シフトポジションセンサ184により検出され、このセンサ184の出力を読み取ることにより、ニュートラル(N)レンジ,ドライブ(D)またはブレーキ(B)レンジ,パーキング(P)レンジ,リバース(R)レンジのいずれのレンジにあるかの判定がなされる。なお、ここでブレーキ(B)レンジとは、Dレンジと比べて、車輌減速時の回生ブレーキの利きを強くしたレンジであり、車輌が下り坂を降りて行くような場合に、モータMG1,MG2による回生を積極的に行なって、その回生ブレーキにより、通常の車輌におけるエンジンブレーキのような特性を得るレンジである。このBレンジは、車輌加速側についてはDレンジと同じで特性が得られる。 【0050】ステップS405での判断により、シフトレバー182がNレンジにあると判断された場合には、エンジン150および動力出力装置110の状態に基づく判定値の変更は必要ないと判断し、仮判定値tpsta,tpstpを開始用判定値spsta,停止用判定値spstpに設定し(ステップS410)、そのまま本ルーチンを終了する。 【0051】シフトレンジがPレンジであると判断された場合には(ステップS405)、開始用の仮判定値tpstaに値p1、停止用の仮判定値tpstpに値p2を設定する(ステップS420)。ここで、値p1,p2は、この車輌に合わせて適合された値であり、本実施例ではそれぞれp1=2,p2=1とした。また、シフトレンジがRレンジであると判断された場合には(ステップS405)、開始用の仮判定値tpstaに値r1、停止用の仮判定値tpstpに値r2を設定する(ステップS425)。ここで、値r1,r2は、値p1,p2同様、この車輌に合わせて適合された値であり、本実施例ではそれぞれr1=2,r2=1としている。なお、この例では、PレンジとRレンジの判定値をそれぞれ同一の値に設定しているが、両者は同一の値である必要はなく、それぞれ各レンジでの要求に応じて定めればよい。 【0052】シフトレンジがDまたはBレンジであると判定された場合には(ステップS405)、次に、フラグsxdが値1であるか否かの判断を行なう(ステップS430)。このフラグsxdは、バッテリ194の放電要求を示すフラグであり、初期値は値0に設定されている。このフラグsxdは、図8に実線JLとして示すように、バッテリ194の残容量を示すSOCにより設定され、SOCが75[%]以上で値1に設定され、一旦値1に設定されると55[%]を下回ったとき値0にリセットされる。 【0053】フラグsxdが値1であれば、バッテリ194の充電状態は満充電に近いと判断し、バッテリ194からの電力の持ち出しが行なわれやすい状態、換言すれば車輌が完全な電気自動車として走行し、エンジン150がかかりにくい状態にすべく、仮判定値tpstaを値D1(実施例では15)、仮判定値tpstpを値D2(実施例では10)に設定する処理を行なう(ステップS440)。一方、フラグsxdが値1でなければ、次にフラグsxcが値1であるか否かの判断を行なう(ステップS450)。このフラグsxcは、バッテリ194の充電要求を示すフラグであり、初期値は値0に設定されている。このフラグsxcは、図8に破線BLとして示すように、バッテリ194の残容量を示すSOCにより設定され、SOCが45[%]未満で値1に設定され、一旦値1に設定されると63[%]以上となったとき値0にリセットされる。 【0054】フラグsxcが値1であれば、バッテリ194は一旦放電気味となる使われ方をしたことになるから、バッテリ194を回復させるように、バッテリ194への充電が行なわれやすい状態、換言すればエンジン150がかかりやすい状態にすべく、仮判定値tpstaを値D1よりかなり小さな値D3(実施例では2)、仮判定値tpstpを値D2よりかなり小さな値D4(実施例では1)に設定する処理を行なう(ステップS460)。これらの処理の結果、バッテリ194の充放電状態を示すSOCが75[%]以上ではでは、フラグsxdが値1に設定され、SOCが45[%]未満ではフラグsxcが値1に設定され、これらの条件以外では、両者とも値0にリセットされる。 【0055】両フラグsxd,sxcが共に値0の場合には、次にフラグFesが値1であるか否かの判断を行なう(ステップS470)。このフラグFesは、エンジン150に対して自立運転の要求がある場合に値1に設定されるものである。自立運転は、車輌走行上の要求やバッテリ194の充放電の要求以外の要求に基づいて、エンジン150を単に運転する要求がある場合に行なわれるエンジン150の運転である。こうした自立運転の要求がオンになり条件としては、例えばエンジン150が暖気が完了していない場合で図示しないスロットルバルブの全閉状態での運転が学習されていない状態、停車中にエアコンがオンにされた場合、あるいは低速(15km/h程度)走行時にエンジンが起動された後の所定期間、などが考えられる。 【0056】エンジン150の自立運転の要求がある場合には、エンジン150が始動されやすいように、仮判定値tpsta,tpstpに、通常の判定値以下の値D5,値D6を設定する処理を行なう(ステップS480)。なお、本実施例では、D5=2、D6=1とした。エンジン150に対する自立運転の要求がなければ、D,Bレンジであって、充放電の要求フラグも設定されておらず、自立運転の要求もないことから、仮判定値tpsta,tpstpを、以下の式(3)(4)により設定する処理を行なう(ステップS490)。 tpsta=smpesta−spchg 但し、tpsta≧2 …(3) tpstp=1 …(4) 【0057】ここで、式(3)の右辺第1項の変数smpestaは、車輌の走行に基づいてエンジン150に要求される動力であり、図9に示すように、車速に基づいて定められる値である。制御装置180は、ROM190bにこのマップを予め記憶しており、マップを参照することにより、この変数smpestaを求める。なお、エンジン150に対する要求動力spvは、既述した式(2)に示したように、車輌走行用の駆動トルクに対応する動力spaccと共に増加する関係にあるから、判定値spstaも、単純には車速に応じて増加すると考えられるが、実際に図9に示すように、車速40km/h近傍をピークとして、車速10km/h以下で再び増加する設定となっている。図9に示した実線JJは、次の理由に基づいて設定している。 【0058】■車速が45km/h以下では、バッテリ194の状態によってはエンジン150を停止することができ、バッテリ194を用いた電気自動車としての走行が可能となる。そこで、車速が45km/h以下では、バッテリ194の充電状態に応じてエンジン150が停止・起動を行なうよう、判定値を、車速に比例して求まる関係(図9破線BB)より若干大きな値に設定する。両者の関係は、登り勾配にかかったときや加速しようとアクセルペダル164を踏み込んだ場合には、要求動力spvが素早くこの判定値を越える程度でかつバッテリ194のみによる走行も確保できる程度、車速に比例した関係(破線BB)よりは大きい値となっている。 【0059】■車速45km/h以上では、バッテリ194の残容量が十分にあれば電力のみでの走行も可能ではあるが、元々走行に必要な動力が大きいことから、電力のみで走行できたとしても、僅かな時間に限られる。更に、時速55km/h以上になれば、既述したプラネタリギヤ120の差速制限からエンジン150のモータリンクが必要となり電力消費は更に増加する。この結果、要求動力の大きた領域では、電力のみで走行できたとしてもすぐにエンジン150を起動して発電しなければならず、エンジン150の起動に伴う負荷の急変に対処し、これに伴うドライバビリティの悪化を改善する必要が生じる。従って、車速45km/h以上では、判定値を決めるための変数smpestaをむしろ小さくして、エンジン150が起動しやすく、かつ起動したら停止しにくい設定としているのである。 【0060】■車速が10km/h以下では、車輌はほぼ停止状態にあり、モータMG2による電力の消費は小さい。したがって、バッテリ194の残容量に基づく条件だけで判定を行なうことができる。式(3)の右辺第2項で、このバッテリ194の残容量を示すSOCにより判定値を増減する処理を行なっているので、車速10km/h以下では、右辺第1項に示される車輌の走行状態から設定される値は大きくすることができるのである。なお、この例では、ブレーキの状態は特に判定していないが、ブレーキがオンになっている場合には、駆動軸112が回転しないようにモータMG2を制御する必要がないから、更に電力消費を低減することができ、判定値をより高く設定することができる。 【0061】以上説明した各ステップS400,S405,S440,S460,S480,S490の処理の後は、シフトレンジがNレンジであった場合と同様、仮判定値tpsta,tpstpをそれぞれ開始用判定値spsta,停止用判定値spstpに設定する処理を行ない(ステップS410)、「END」に抜けて本ルーチンを終了する。 【0062】(5)実施例におけるエンジン150の起動・停止以上説明した判定値設定処理ルーチン(図7)により判定値を設定し、この判定値を用いてエンジン運転制御ルーチン(図5)を実行することにより、エンジン150は次のように運転される。 ■シフトレンジがPレンジの場合には、車輌は停止されており、回生ブレーキによる電力の回収、バッテリ194の充電は期待できない。この場合には、開始用および停止用の判定値spsta,spstpは、いずれも小さな値(実施例では、値2および値1)に設定されるから、エンジン150は起動されやすくなる。この結果、車輌の走行が開始され前に、できるだけバッテリ194を充電しておくことができ、エアコンによる要求がない状態で、SOCがおおよそ55[%]から60[%]となるように運転される。 【0063】■シフトレンジがRレンジの場合には、車輌は後退することになり、アクセルペダル164が踏み込まれて後退の速度が上昇すると、図4に示した差速制限からエンジン150を運転できず、バッテリ194を充電できない場合がありえる。従ったが、Rレンジの場合も、判定値spsta,spstpを低く設定し、早めにバッテリ194を充電可能としている。 【0064】■シフトレンジがDまたはBレンジの場合には、判定値の設定処理ルーチン(図7)の説明において既に詳しく説明したように、バッテリ194の充放電状態と走行状態とに基づいて、細かく判定値spsta,spstpを設定し、エンジン150の起動・停止を制御している。これを簡単にまとめると、・バッテリ194のSOCが充放電のいずれかに偏った状態(SOCが75[%]以上または45[%]未満)になると、SOCのみに基づいて判定値spsta,spstpを設定し、バッテリ194のSOCを適正な範囲に設定し、・SOCが適正な範囲にある場合には、車輌の走行状態に基づく要求とバッテリの充放電状態とから判定値を設定し、エンジン150の起動・停止を適正に制御して、燃費の向上とドライバビリティの確保とを図っている。 【0065】この場合、開始用の判定値spstaを設定するのに、式(3)に示したように、走行状態から求められる変数smpestaからバッテリ194のSOCから求められる変数spchgを引いている。このため、SOCが低下して充電要求が増加すると、判定値spstaは低下し、エンジン150は起動しやすくなる。かかる処理を行なわないと、ある速度で運転を継続しているとすると、エンジン150の起動・停止は、SOCの条件によってのみ行なわれるようになり、SOCが45[%]未満で起動し、63[%]で停止するという制御(フラグsxcによる制御)になりやすい。この場合には、SOCは45[%]以上には制御されるが、燃費が最適になるとは限らない。エンジン150に対する要求動力spvがエンジン150が最も効率よく運転可能な範囲を越えてしまう可能性があるからである。これに対して、本実施例のように、SOCが低下するにしたがって早めにエンジン150を起動しやすくすると、走行中にあっては、フラグsxcの値でエンジン150が起動されることが減り、燃費の最も良い範囲でエンジン150を運転しやすくなる。 【0066】以上、本発明の実施例について詳しく説明したが、この本実施例のエンジンの運転制御装置を構成する各部は、本実施例以外の様々な構成が可能である。例えば、本実施例では、モータMG1およびモータMG2にPM形(永久磁石形;Permanent Magnet type)同期電動機を用いたが、回生動作および力行動作の双方が可能なものであれば、その他にも、VR形(可変リラクタンス形;Variable Reluctance type)同期電動機や、バーニアモータや、直流電動機や、誘導電動機や、超電導モータや、ステップモータなどを用いることもできる。 【0067】また、実施例では、第1および第2の駆動回路191,192としてトランジスタインバータを用いたが、その他に、IGBT(絶縁ゲートバイポーラモードトランジスタ;Insulated Gate Bipolar mode Transistor)インバータや、サイリスタインバータや、電圧PWM(パルス幅変調;Pulse Width Modulation)インバータや、方形波インバータ(電圧形インバータ,電流形インバータ)や、共振インバータなどを用いることもできる。 【0068】さらに、バッテリ194としては、Pbバッテリ,NiMHバッテリ,Liバッテリなどを用いることができるが、バッテリ194に代えてキャパシタを用いることもできる。 【0069】また、実施例を適用するハイブリッド車両も種々の構成が可能である。図1ではエンジン150およびモータMG2の駆動力をプラネタリギヤ120を介して駆動輪116、118に伝達するハイブリッド車両の構成を示したが、エンジン150、モータMG1,MG2についてプラネタリギヤ120を介した接続は、このほかにも種々考えることができる。これらの配置においても、エンジン150側からプラネタリギヤ120,モータMG2,モータMG1の順になるよう配置することもできる。更に、プラネタリギヤ120を用いない構成を採ることも可能である。例えば、図10に示すように、モータMG1およびプラネタリギヤ120に代えて、ロータ(インナロータ)234およびステータ(アウタロータ)232の双方が同じ軸中心に相対的に回転可能であり電磁継手として作用し得るクラッチモータMG3を用いて構成を採用することも可能である。クラッチモータMG3のアウタロータ232はエンジン150のクランクシャフト156に機械的に結合され、クラッチモータMG3のインナロータ234およびモータMG2のロータ142は駆動軸112Aに結合されている。モータMG2のステータ143はケース119に固定されている。かかる構成では、モータMG3により原動機を始動し得るため本発明を適用することが可能である。 【0070】本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000003207 【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
|
| 【出願日】 |
平成9年(1997)10月13日 |
| 【代理人】 |
【弁理士】 【氏名又は名称】下出 隆史 (外2名)
|
| 【公開番号】 |
特開平11−122713 |
| 【公開日】 |
平成11年(1999)4月30日 |
| 【出願番号】 |
特願平9−296247 |
|