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【発明の名称】 磁気浮上式鉄道の地上コイル装置とその製造方法
【発明者】 【氏名】大濱 茂也

【氏名】小河 貞男

【氏名】板橋 好文

【氏名】鈴木 正夫

【氏名】藤本 健

【氏名】鳥居 正夫

【氏名】鈴木 勝雄

【要約】 【課題】金属ブッシュに発生する渦電流損失を低減し、また地上コイル装置に発生する大きな電磁力に耐えることができる地上コイル装置およびその製造方法を得る。

【解決手段】導体が巻回されてなる環状のコイル導体21と、コイル導体21を一体に埋め込んで成形され、複数個の取り付けフランジ部22aが形成された樹脂製の外皮22と、穴中心線がコイル導体21の軸線に対して平行に、かつ、両端が外皮22から露出するように、取り付けフランジ部22aに埋設された複数個の金属ブッシュ23とを備え、外皮22は、金属ブッシュ23にコンクリート軌道の側壁10に立設された固定用ボルトを挿通させて側壁に配置され、複数個の金属ブッシュ23のいくつかは、少なくとも一端につば23aが形成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 磁気浮上式鉄道のコンクリート軌道の側壁に固定され、車両に搭載された超電導磁石装置との間での電磁誘導作用により、該車両を推進、浮上または案内させる磁気浮上式鉄道の地上コイル装置において、導体が巻回されてなる環状のコイル導体と、上記コイル導体を包囲するように一体に埋め込んで成形され、複数個の取り付けフランジ部が形成された樹脂製の概略平板状の外皮と、概略円筒状に形成され、その穴中心線が上記コイル導体の軸線に対して平行に、かつ、両端が上記外皮から露出するように、上記取り付けフランジ部のそれぞれに埋設された複数個の金属ブッシュとを備え、上記外皮は、上記金属ブッシュに上記コンクリート軌道の側壁に立設された固定用ボルトを挿通させて該側壁に沿って鉛直方向に配置され、該固定用ボルトの上記金属ブッシュからの延出部に螺着されたナットにより該側壁に締着固定され、上記複数個の金属ブッシュの少なくともいくつかは、少なくとも一端につばが形成されていることを特徴とする磁気浮上式鉄道の地上コイル装置。
【請求項2】 上記外皮には、上記金属ブッシュの穴中心線方向に複数枚の補強用ガラス繊維マットが積層されて埋設されていることを特徴とする請求項1記載の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置。
【請求項3】 上記金属ブッシュの外周には、ひも状に束ねられたガラス繊維が巻回され上記取り付けフランジ部に該金属ブッシュと共に一体に埋設されていることを特徴とする請求項2記載の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置。
【請求項4】 上記金属ブッシュの外周には、帯状の補強用ガラス繊維マットが巻回され上記取り付けフランジ部に該金属ブッシュと共に一体に埋設されていることを特徴とする請求項2記載の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置。
【請求項5】 上記複数個の取り付けフランジ部は、上記外皮の鉛直方向の少なくとも上端部および下端部に設けられ、該下端部の取り付けフランジ部に埋設された金属ブッシュは、側壁側の一端につばが形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置。
【請求項6】 上記複数個の取り付けフランジ部は、上記外皮の鉛直方向の少なくとも上端部および下端部に設けられ、該上端部の取り付けフランジ部に埋設された金属ブッシュは、車両側の一端につばが形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置。
【請求項7】 上記金属ブッシュのつばが両端に設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置。
【請求項8】 上記金属ブッシュのつばの形状が、該金属ブッシュの軸回りの回転を阻止するような形状とされていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置。
【請求項9】 上記回転を阻止するような形状は矩形形状であることを特徴とする請求項8記載の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置。
【請求項10】 上記回転を阻止するような形状は長円形状であることを特徴とする請求項8記載の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置。
【請求項11】 上記金属ブッシュの外周面に凹凸形状が形成されていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置。
【請求項12】 上記凹凸形状は金属ブッシュの穴中心線方向と直交する方向に形成された溝であることを特徴とする請求項11記載の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置。
【請求項13】 上記凹凸形状はローレット加工のあや目模様であることを特徴とする請求項11記載の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置。
【請求項14】 上記金属ブッシュは長手方向に形成されたスリットを有し、該スリットには絶縁物が挟まれていることを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置。
【請求項15】 金属ブッシュの材質は非磁性鋼であることを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置。
【請求項16】 金型内に導体が巻回されてなる環状のコイル導体が配置され、さらに上記金型内に少なくとも一端につばが形成された概略筒形状の金属ブッシュが上記コイル導体の軸線に対して平行に配置され、上記コイル導体を包囲するようにかつ上記金属ブッシュの穴中心線方向に積層するように、上記金型内の残りの空間に補強用ガラス繊維マットが充填される工程と、上記金型内にモールド樹脂が注入されて硬化され上記コイル導体および上記金属ブッシュを包囲するように外皮が形成される工程とを有することを特徴とする磁気浮上式鉄道の地上コイル装置の製造方法。
【請求項17】 上記補強用ガラス繊維マットは、コイル導体を包囲するようにかつ金属ブッシュの穴中心線方向に積層されるように、あらかじめプレスされて整形されていることを特徴とする請求項16記載の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置の製造方法。
【請求項18】 モールド樹脂は、ノルボルネン系単量体とメタセシス触媒が混合され注入されたものであることを特徴とする請求項16または17記載の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、超電導磁気浮上式鉄道においてコンクリ−ト軌道の側壁に取り付けられ、車両に搭載された超電導磁石装置との間で作用する電磁誘導作用により、車両を推進、浮上あるいは案内する地上コイル装置およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】図18は例えば特開平5−56514号公報に示された従来の磁気浮上式鉄道の推進用地上コイル装置の正面図である。図19は従来の地上コイル装置の要部断面図である。図20は従来の地上コイル装置がコンクリート軌道の側壁に取り付けられた状態を示す図18のXX-XX線に沿う矢視断面図である。図18および図19において、1はアルミニウム線材がコイル状に巻回されてなるコイル導体である。2は注型により形成されコイル導体1を被包するモールド樹脂製の外皮であり厚さ2bに形成されている。また、2aは外皮2の縁部が一部延長されて形成された取り付けフランジ部である。3はコイル導体1と共に外皮2で一体に注型されて埋め込まれた金属ブッシュ、4は金属ブッシュ3の外周面に被着された銅被膜、5は外皮2と銅被膜4の接着強度を高める為に銅被膜4に形成された結晶膜である。
【0003】次に、図20において、10はコンクリート軌道の側壁である。コンクリート軌道は、開放側を上に向けた概略断面コ字型を成し、断面コ字型の内側に設けられた側壁10は鉛直方向に形成されている。11は側壁10に埋め込まれ雌ねじが形成されたインサート、12はインサート11に螺合し側壁10に垂直となるように立設された固定用ボルトであるスタッドボルト、13はスタッドボルト12に嵌め込まれた平座金、14はスタッドボルト12に螺合するナットである。尚、図20では本発明の本質と関係が無いため銅被膜4、結晶膜5は省略されている。
【0004】このように構成された従来の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置においては、外皮2に形成された取り付けフランジ部2aには、取り付けフランジ部2aの厚さ2bより若干長い長さ3aの金属ブッシュ3が一体に埋め込まれている。そして、コンクリート軌道の側壁10に埋設されたインサート11にスタッドボルト12が螺合されて立設され、このスタッドボルト12に金属ブッシュ3が挿嵌され、さらに平座金13がはめ込まれて、ナット14で締め付けられて地上コイル装置が固定されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】磁気浮上式鉄道の地上コイル装置においては、車両の走行時に、図示しない車上の磁石装置との間で生じる電磁誘導作用により大きな電磁力を受け、コンクリート軌道側に押し付けられたり、また車両側に引き寄せられたりする力を受ける。従来の地上コイル装置は、上記のように構成されており、このような電磁力を受けるので、外皮2の強度はもちろんのこと、金属ブッシュ3と取り付けフランジ部2aの充分な結合強度が必要であった。
【0006】金属ブッシュ3と取り付けフランジ部2aの充分な結合強度を得るためには、例えば、金属ブッシュ3の外径3bが大きくされ、金属ブッシュ3と取り付けフランジ部2aとの結合面積が大きくされる方法がある。しかし、金属ブッシュ3の外径3bが大きくされると、金属ブッシュ3の体積が増し、車両の磁石装置の磁界により金属ブッシュ3に発生する渦電流が大きくなる。この渦電流による渦電流損失は、車両の走行を抑制するブレーキ力として働き、車両を推進させるエネルギー効率を低下させてしまう問題があった。
【0007】この発明はこのような問題点を解消するためになされたもので、金属ブッシュに発生する渦電流損失を低減して車両に不必要なブレーキ力を与えることなく、また地上コイル装置に発生する大きな電磁力を支持することができる地上コイル装置およびその製造方法を得ることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置においては、磁気浮上式鉄道のコンクリート軌道の側壁に固定され、車両に搭載された超電導磁石装置との間での電磁誘導作用により、車両を推進、浮上または案内させる磁気浮上式鉄道の地上コイル装置において、導体が巻回されてなる環状のコイル導体と、コイル導体を包囲するように一体に埋め込んで成形され、複数個の取り付けフランジ部が形成された樹脂製の概略平板状の外皮と、概略円筒状に形成され、その穴中心線がコイル導体の軸線に対して平行に、かつ、両端が外皮から露出するように、取り付けフランジ部のそれぞれに埋設された複数個の金属ブッシュとを備え、外皮は、金属ブッシュにコンクリート軌道の側壁に立設された固定用ボルトを挿通させて側壁に沿って鉛直方向に配置され、固定用ボルトの金属ブッシュからの延出部に螺着されたナットにより側壁に締着固定され、複数個の金属ブッシュのいくつかは、少なくとも一端につばが形成されている。
【0009】請求項2の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置においては、外皮には、金属ブッシュの穴中心線方向に複数枚の補強用ガラス繊維マットが積層されて埋設されている。
【0010】請求項3の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置においては、金属ブッシュの外周には、ひも状に束ねられたガラス繊維が巻回され取り付けフランジ部に金属ブッシュと共に一体に埋設されている。
【0011】請求項4の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置においては、金属ブッシュの外周には、帯状の補強用ガラス繊維マットが巻回され取り付けフランジ部に金属ブッシュと共に一体に埋設されている。
【0012】請求項5の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置においては、複数個の取り付けフランジ部は、外皮の鉛直方向の少なくとも上端部および下端部に設けられ、下端部の取り付けフランジ部に埋設された金属ブッシュは、側壁側の一端につばが形成されている。
【0013】請求項6の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置においては、複数個の取り付けフランジ部は、外皮の鉛直方向の少なくとも上端部および下端部に設けられ、上端部の取り付けフランジ部に埋設された金属ブッシュは、車両側の一端につばが形成されている。
【0014】請求項7の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置においては、金属ブッシュのつばが両端に設けられている。
【0015】請求項8の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置においては、金属ブッシュのつばの形状が、金属ブッシュの軸回りの回転を阻止するような形状とされている。
【0016】請求項9の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置においては、回転を阻止するような形状は矩形形状である。
【0017】請求項10の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置においては、回転を阻止するような形状は長円形状である。
【0018】請求項11の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置においては、金属ブッシュの外周面に凹凸形状が形成されている。
【0019】請求項12の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置においては、凹凸形状は金属ブッシュの穴中心線方向と直交する方向に形成された溝である。
【0020】請求項13の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置においては、凹凸形状はローレット加工のあや目模様である。
【0021】請求項14の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置においては、金属ブッシュは長手方向に形成されたスリットを有し、スリットには絶縁物が挟まれている。
【0022】請求項15の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置においては、金属ブッシュの材質は非磁性鋼である。
【0023】請求項16の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置の製造方法においては、金型内に導体が巻回されてなる環状のコイル導体が配置され、さらに金型内に少なくとも一端につばが形成された概略筒形状の金属ブッシュがコイル導体の軸線に対して平行に配置され、コイル導体を包囲するようにかつ金属ブッシュの穴中心線方向に積層するように、金型内の残りの空間に補強用ガラス繊維マットが充填される工程と、金型内にモールド樹脂が注入されて硬化されコイル導体および金属ブッシュを包囲するように外皮が形成される工程とを有する。
【0024】請求項17の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置の製造方法においては、補強用ガラス繊維マットは、コイル導体を包囲するようにかつ金属ブッシュの穴中心線方向に積層されるように、あらかじめプレスされて整形されている。
【0025】請求項18の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置の製造方法においては、モールド樹脂は、ノルボルネン系単量体とメタセシス触媒が混合され注入されたものである。
【0026】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.図1は本発明の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置の正面図である。図2は地上コイル装置の取り付けフランジ部付近の断面図である。また図3は金属ブッシュの形状を示す図である。図1乃至図3において、20は磁気浮上式鉄道の地上コイル装置である概略平板状の浮上案内コイル装置である。21は導体であるアルミニウム線材が環状に巻回されてなるコイル導体である。本実施の形態の浮上案内コイル装置20においては、4個のコイル導体21が同一平面上に併設されている。23はコイル導体21に対して所定の位置に、またコイル導体21の中心軸線に対して平行となるように配置され、概略円筒状を成し非磁性鋼で作製された金属ブッシュである。浮上案内コイル装置20がコンクリート軌道の側壁に固定された際に、側壁側となる金属ブッシュ23の一端には、一部肉厚にされて形成されたつば23aが設けられている。
【0027】36は複数枚積層された補強用ガラス繊維マットである。補強用ガラス繊維マット36は、金属ブッシュ23の穴中心線方向に、すなわちコイル導体21の中心軸線方向に積層されている。積層された複数枚の補強用ガラス繊維マット36のうち、最も外側となる2枚の補強用ガラス繊維マット36は、浮上案内コイル装置20のほぼ全面にわたって延設され4個のコイル導体21を両側から覆うように配置されている。その他の補強用ガラス繊維マット36は、所定の位置に収納穴が設けられ、4個のコイル導体21はこの収納穴内に配置されている。またすべての補強用ガラス繊維マット36の所定の位置には、金属ブッシュ23が貫通するための貫通穴が形成され、金属ブッシュ23は、この貫通穴に貫通されて配置されている。
【0028】22は反応射出成形により形成され、コイル導体21、補強用ガラス繊維マット36および金属ブッシュ23を一体に被包するDCPD−RIM(dicyclopentadiene-reaction injection molding)樹脂製の外皮である。22aは外皮22の所定の位置が薄肉にされて形成された取り付けフランジ部である。金属ブッシュ23は、この取り付けフランジ部22aに埋め込まれ、両端を外皮22から露出させている。
【0029】このように構成された浮上案内コイル装置20の作製方法は、まず、連続ガラス繊維がマット状に整形されたものが所定の大きさに切断され、さらに所定の位置に穴が空けられ、これが複数枚積層され、プレスされて整形され補強用ガラス繊維マット36が作製される。次に、この積層された補強用ガラス繊維マット36の収納穴内にコイル導体21が配置され、また貫通穴内に金属ブッシュ23が配置され、さらに収納穴の形成されていない別の補強用ガラス繊維マット36がコイル導体21を覆うように上下に配置され、これらが反応射出成形用の金型内に入れられる。そして、外皮22となるノルボルネン系単量体とメタセシス触媒の反応液が反応されながら金型内に射出される。これらの反応液は、補強用ガラス繊維マット36の繊維の間に浸透しその後硬化する。このようにして浮上案内コイル装置20が作製される。
【0030】このように作製された浮上案内コイル装置20は、従来と同じように、図示しないコンクリート軌道の側壁に立設された固定用ボルトであるスタッドボルトに金属ブッシュ23が貫通され、さらにスタッドボルトに平座金がはめ込まれて、ナットで締め付けられてコンクリート軌道の側壁に鉛直に固定される。
【0031】このように構成された浮上案内コイル装置20においては、金属ブッシュ23には、一部肉厚にされて形成されたつば23aが設けられているので、金属ブッシュ23と取り付けフランジ部22aの結合面積が大きくなり、両者の結合力が増す。また、つば23aはコンクリート軌道側に設けられているので、浮上案内コイル装置20をコンクリート軌道側に押し付ける大きな電磁力に耐えることができる。さらにまた、金属ブッシュ23は、非磁性鋼で作製されているので発生する渦電流が低減され、渦電流損失を減少させることができる。
【0032】さらに、外皮22には補強用ガラス繊維マット36が埋設されているので、外皮22のせん断力が増し、浮上案内コイル装置20をコンクリート軌道側に押し付ける大きな電磁力に耐えることができる。
【0033】外皮22は反応射出成形法により形成することができる。反応射出成形に用いる反応原液としては、金型内で重合反応を起こさせるものであれば特に限定されないが、ウレタン系、ウレア系、ナイロン系、エポキシ系、不飽和ポリエステル系、フェノール系および、ノルボルネン系などが挙げられるが、本発明では、ノルボルネン系が最も好ましい。大型の成形体を成形し易く、耐候性および耐衝撃性などの機械的強度に特に優れているからである。ノルボルネン系の反応射出成形は、ジシクロペンタジエン等を主成分とし、メタセシス主触媒とメタセシス助触媒を各々含む2以上の反応液を混合後、直ちに金型内に注入し、金型内で重合反応をさせて成型品を得る方法である。金型内に射出する際における反応原液の粘性は、たとえば、80°Cにおいて、5cps〜3000cps好ましくは100cps〜1000cps程度に、十分に低い粘性であり、大型の成形体を成形し易い。
【0034】かかる成形においては、酸化防止剤、充填剤、顔料、着色剤、発泡剤、難燃剤、摺動付与剤、エラストマー、ジシクロペンタジエン系熱重合樹脂およびその水添物など種々の添加剤を配合することにより、得られるポリマーの特性を改質することができる。
【0035】酸化防止剤としては、フェノール系、リン系、アミン系など各種のプラスチック・ゴム用酸化防止剤がある。充填剤にはミルドガラス、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、雲母などの無機質充填剤がある。エラストマーとしては、天然ゴム、ポリブタジエン、ボリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、エチレン−プロビレン−ジエンタ−ポリマー(EPDM)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)およびこれらの水素化物などがある。
【0036】添加剤は、通常、予め反応液のいずれか一方または双方に混合しておく。
【0037】反応射出成形に用いる金型は、特に限定されず、必ずしも剛性の高い高価な金属製金型を用いる必要はなく、樹脂製金型、または単なる型枠であっても良い。反応射出成形は、低粘度の反応液を用い、比較的低温低圧で成形できるためである。金型内は不活性ガスでシールし、重合反応に用いる成分類は窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下で貯蔵し、かつ操作することが好ましい。
【0038】金型温度は、金型内での反応原液の反応熱により温度が上昇しすぎないように制御きれ、好ましくは、10〜150℃、より好ましくは、30〜120℃、さらに好ましくは、50〜100℃である。金型の温度制御は、金型内に熱媒体用の通路を設け、熱媒体を流通させることなどにより行うことができる。金型圧力は通常0〜100Kgf/cm2の範囲である。重合時間は、適宜選択すれば良いが、通常、反応液の注入終了後、30秒〜20分である。
【0039】実施の形態2.図4は本発明の地上コイル装置の他の例を示す取り付けフランジ部付近の断面図である。図5は金属ブッシュの回りに巻回されたガラス繊維の様子を示す斜視図である。図4および図5において、39はひも状に束ねられ金属ブッシュ23の回りに巻回されたガラス繊維である。37は複数枚積層された補強用ガラス繊維マットである。補強用ガラス繊維マット37は、ガラス繊維39を収納する分だけ貫通穴が大きく形成されており、その他は実施の形態1の補強用ガラス繊維マット36と同じである。
【0040】ガラス繊維39は、図5に示されるように、あらかじめ金属ブッシュ23の回りに複数回巻回され、その後コイル導体21、補強用ガラス繊維マット37と共に金型内に配置され、外皮22に一体に埋め込まれる。その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0041】このように構成された浮上案内コイル装置においては、あらかじめ金属ブッシュ23の回りに巻回されたガラス繊維39は、金型内に配置された際、積層された補強用ガラス繊維マット37に形成された貫通穴内面の繊維と絡み合う。そして、この状態のまま外皮22により一体に埋め込まれる。そのため、金属ブッシュ23と外皮22の結合力がさらに強められ、また、取り付けフランジ部22a付近のせん断力がさらに強められる。
【0042】実施の形態3.図6は本発明の地上コイル装置の他の例を示す取り付けフランジ部付近の断面図である。図7は金属ブッシュの回りに巻回された帯状のガラス繊維マットの様子を示す斜視図である。図6および図7において、38は金属ブッシュの回りに巻回された帯状のガラス繊維マットであり、あらかじめ金属ブッシュ23の回りに巻回され、金属ブッシュ23と共に外皮22に一体に埋め込まれる。その他の構成は実施の形態2と同様である。
【0043】このように構成された浮上案内コイル装置においては、図7に示されるように、あらかじめ金属ブッシュ23の回りに巻回された帯状のガラス繊維38が、金型内に配置された際、積層された補強用ガラス繊維マット37に形成された貫通穴内面の繊維と絡み合う。そして、この状態で外皮22に一体に埋め込まれる。そのため、金属ブッシュ23と外皮22の結合力がさらに強められ、また、取り付けフランジ部22a付近のせん断力がさらに強められる。
【0044】実施の形態4.図8は本発明の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置の他の例を示す正面図である。図9は地上コイル装置の中段部の取り付けフランジ部付近の断面図である。図8および図9において、24は浮上案内コイル装置40の上段部の取り付けフランジ部22aに埋め込まれたつばを有しない円筒状の金属ブッシュである。25は中段部の取り付けフランジ部22aに埋め込まれたつばを有しない円筒状の金属ブッシュである。そして、下段部の取り付けフランジ部22aには、実施の形態1と同様にコンクリート軌道側につば23aを有する金属ブッシュ23が埋め込まれている。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0045】コンクリート軌道の側壁に鉛直方向に固定された浮上案内コイル装置40には、上段部および中段部に働く電磁力は、下段部に働くものよりも小さい場合がある。このような場合、本実施の形態のように、上段部および中段部に設けられた金属ブッシュ24、25をつばを有しない円筒状の金属ブッシュにすることにより、金属ブッシュ24、25の体積を減らすことができるので渦電流損失を低減することができる。
【0046】実施の形態5.図10は本発明の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置の他の例を示す正面図である。図11は地上コイル装置の上段部の取り付けフランジ部付近の断面図である。図10および図11において、26は浮上案内コイル装置41の上段部の取り付けフランジ部22aに埋め込まれ、車両側の一端が一部肉厚にされてつば26aが形成された金属ブッシュである。その他の構成は、実施の形態4と同様である。
【0047】コンクリート軌道の側壁に鉛直方向に固定された浮上案内コイル装置41には、上段部に働く電磁力は、浮上案内コイル装置41を車両側に引き寄せるように働く場合がある。このような場合、本実施の形態のように、上段部には車両側につば26aが形成された金属ブッシュ26を設けることにより、この電磁力に耐えるようにすることができる。
【0048】実施の形態6.図12は本発明の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置の他の例を示す金属ブッシュの形状を示す図である。本実施の形態においては、金属ブッシュ27のつば27aは、金属ブッシュ27の軸回りの回転を阻止するような形状である角丸の矩形形状とされている。その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0049】このように構成された浮上案内コイル装置においては、金属ブッシュ27のつば27aは角丸の矩形形状とされているので、外皮22に対して金属ブッシュ27が回転しづらくなり、取り付けフランジ部22aと金属ブッシュ27との結合力が増すので、さらに大きな電磁力に耐えることができる。
【0050】実施の形態7.図13は本発明の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置の他の例を示す金属ブッシュの形状を示す図である。本実施の形態においては、金属ブッシュ28のつば28aは、金属ブッシュ28の軸回りの回転を阻止するような形状である長円形状にされている。その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0051】このように構成された浮上案内コイル装置においては、金属ブッシュ28のつば28aは長円形状とされているので、外皮22に対して金属ブッシュ27が回転しづらくなり、取り付けフランジ部22aと金属ブッシュ28との結合力が増すので、さらに大きな電磁力に耐えることができる。
【0052】尚、金属ブッシュ28の軸回りの回転を阻止するような形状は長円形状に限らず例えば、三角形状とされても同様の効果を得ることができる。
【0053】実施の形態8.図14は本発明の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置の他の例を示す金属ブッシュの断面図である。本実施の形態においては、金属ブッシュ29の外周面には、金属ブッシュ29の穴中心線方向と直交する方向に全周にわたって凹凸形状である溝29aが形成されている。その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0054】このように構成された浮上案内コイル装置においては、金属ブッシュ29の外周面に溝29aが形成されているので、ガラス繊維マット36が絡まり易く、また外皮22の掛かりが良くなり結合力が増す。そのため、さらに大きな電磁力に耐えることができる。
【0055】尚、凹凸形状は溝29aに限らず、例えば外周面にローレット加工が施され、あや目模様が形成されたものでも良い。
【0056】実施の形態9.図15は本発明の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置の他の例を示す金属ブッシュの断面図である。本実施の形態においては、金属ブッシュ30は、両端部が一部肉厚にされて、つば30a、30bが形成されている。その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0057】このように構成された浮上案内コイル装置においては、金属ブッシュ30は、両端部に、つば30a、30bが形成されているので、浮上案内コイル装置をコンクリート側壁側に押し付ける力および車両側に引き寄せる力の両方に対応でき、またガラス繊維マット36や外皮22との掛かりが大きくなり結合力が増す。そのため、さらに大きな電磁力に耐えることができる。
【0058】実施の形態10.図16は本発明の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置の他の例を示す金属ブッシュの上面図である。図17は図16のXVII-XVII線に沿う矢視断面図である。本実施の形態においては、金属ブッシュ31には、軸方向に沿って円筒の片側を分断するようにスリット31aが形成されている。そして、スリット31aには絶縁物32が挟まれている。その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0059】このように構成された浮上案内コイル装置においては、金属ブッシュ31には、スリット31aが形成され、スリット31aには、絶縁物32が挟まれているので、金属ブッシュ31に発生する円周方向の渦電流を無くすことができる。そのため、金属ブッシュ31に発生する渦電流をさらに低減することができ、渦電流損失をさらに低減することができる。
【0060】
【発明の効果】請求項1の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置においては、磁気浮上式鉄道のコンクリート軌道の側壁に固定され、車両に搭載された超電導磁石装置との間での電磁誘導作用により、車両を推進、浮上または案内させる磁気浮上式鉄道の地上コイル装置において、導体が巻回されてなる環状のコイル導体と、コイル導体を包囲するように一体に埋め込んで成形され、複数個の取り付けフランジ部が形成された樹脂製の概略平板状の外皮と、概略円筒状に形成され、その穴中心線がコイル導体の軸線に対して平行に、かつ、両端が外皮から露出するように、取り付けフランジ部のそれぞれに埋設された複数個の金属ブッシュとを備え、外皮は、金属ブッシュにコンクリート軌道の側壁に立設された固定用ボルトを挿通させて側壁に沿って鉛直方向に配置され、固定用ボルトの金属ブッシュからの延出部に螺着されたナットにより側壁に締着固定され、複数個の金属ブッシュのいくつかは、少なくとも一端につばが形成されている。そのため、金属ブッシュと取り付けフランジ部の結合面積が大きくされ、両者の結合力が増す。その結果、地上コイル装置を引き寄せる大きな電磁力に耐えることができる。
【0061】請求項2の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置においては、外皮には、金属ブッシュの穴中心線方向に複数枚の補強用ガラス繊維マットが積層されて埋設されている。そのため、外皮のせん断力が増し、地上コイル装置を引き寄せるさらに大きな電磁力に耐えることができる。
【0062】請求項3の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置においては、金属ブッシュの外周には、ひも状に束ねられたガラス繊維が巻回され取り付けフランジ部に金属ブッシュと共に一体に埋設されている。そのため、金属ブッシュと外皮の結合力をさらに強めることができ、また、取り付けフランジ部付近のせん断力をさらに強めることができる。
【0063】請求項4の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置においては、金属ブッシュの外周には、帯状の補強用ガラス繊維マットが巻回され取り付けフランジ部に金属ブッシュと共に一体に埋設されている。そのため、金属ブッシュと外皮の結合力をさらに強めることができ、また、取り付けフランジ部付近のせん断力をさらに強めることができる。
【0064】請求項5の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置においては、複数個の取り付けフランジ部は、外皮の鉛直方向の少なくとも上端部および下端部に設けられ、下端部の取り付けフランジ部に埋設された金属ブッシュは、側壁側の一端につばが形成されている。そのため、地上コイル装置の下端部をコンクリート軌道側に押し付ける大きな電磁力に耐えることができる。
【0065】請求項6の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置においては、複数個の取り付けフランジ部は、外皮の鉛直方向の少なくとも上端部および下端部に設けられ、上端部の取り付けフランジ部に埋設された金属ブッシュは、車両側の一端につばが形成されている。そのため、地上コイル装置の下端部を車両側に引き寄せる大きな電磁力に耐えることができる。
【0066】請求項7の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置においては、金属ブッシュのつばが両端に設けられている。そのため、地上コイル装置をコンクリート側壁側に押し付ける力および車両側に引き寄せる力の両方に対応でき、またモールド樹脂との掛かりが大きくなり結合力が増す。その結果、さらに大きな電磁力に耐えることができる。
【0067】請求項8の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置においては、金属ブッシュのつばの形状が、金属ブッシュの軸回りの回転を阻止するような形状とされている。そのため、外皮に対して、金属ブッシュが回転しづらくなり、取り付けフランジ部と金属ブッシュとの結合力が増すので、さらに大きな電磁力に耐えることができる。
【0068】請求項9の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置においては、回転を阻止するような形状は矩形形状である。そのため、簡単な形状でかつ金属ブッシュの軸回りの回転を阻止するような形状とすることができる。
【0069】請求項10の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置においては、回転を阻止するような形状は長円形状である。そのため、簡単な形状でかつ金属ブッシュの軸回りの回転を阻止するような形状とすることができる。
【0070】請求項11の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置においては、金属ブッシュの外周面に凹凸形状が形成されている。そのため、外皮との掛かりが大きくなり結合力が増す。そのため、さらに大きな電磁力に耐えることができる。
【0071】請求項12の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置においては、凹凸形状は金属ブッシュの穴中心線方向と直交する方向に形成された溝である。そのため、簡単な形状で効率良く結合力を増すことができる。
【0072】請求項13の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置においては、凹凸形状はローレット加工のあや目模様である。そのため、簡単な方法で確実に結合力を増す凹凸形状を形成することができる。
【0073】請求項14の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置においては、金属ブッシュは長手方向に形成されたスリットを有し、スリットには絶縁物が挟まれている。そのため、金属ブッシュに発生する円周方向の渦電流を無くすことができ、渦電流損失を減少することができる。
【0074】請求項15の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置においては、金属ブッシュの材質は非磁性鋼である。そのため、金属ブッシュに発生する渦電流が低減され、渦電流損失を減少させることができる。
【0075】請求項16の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置の製造方法においては、金型内に導体が巻回されてなる環状のコイル導体が配置され、さらに金型内に少なくとも一端につばが形成された概略筒形状の金属ブッシュがコイル導体の軸線に対して平行に配置され、コイル導体を包囲するようにかつ金属ブッシュの穴中心線方向に積層するように、金型内の残りの空間に補強用ガラス繊維マットが充填される工程と、金型内にモールド樹脂が注入されて硬化されコイル導体および金属ブッシュを包囲するように外皮が形成される工程とを有する。そのため、外皮に簡単な方法で確実に補強用ガラス繊維マットを埋め込むことができ、外皮のせん断力を増すことができる。
【0076】請求項17の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置の製造方法においては、補強用ガラス繊維マットは、コイル導体を包囲するようにかつ金属ブッシュの穴中心線方向に積層されるように、あらかじめプレスされて整形されている。そのため、金型内に充填される補強用ガラス繊維マットの密度を高めることができ、さらに外皮のせん断力を増すことができる。
【0077】請求項18の磁気浮上式鉄道の地上コイル装置の製造方法においては、モールド樹脂は、ノルボルネン系単量体とメタセシス触媒が混合され注入されたものである。ノルボルネン系単量体とメタセシス触媒の反応液は、原油が精製される際の副産物として得られるものであり、これをモールド樹脂として用いることにより副産物の有効利用をすることができる。
【出願人】 【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
【出願日】 平成9年(1997)10月1日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道照 (外6名)
【公開番号】 特開平11−113107
【公開日】 平成11年(1999)4月23日
【出願番号】 特願平9−268590