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【発明の名称】 ハイブリッドシステム車両の制御装置
【発明者】 【氏名】松田 文一

【氏名】浜井 九五

【要約】 【課題】モータジェネレータとエンジンの最適制御を行い、ハイブリッドシステム車両の性能を向上する。

【解決手段】エンジン10に連結されたモータジェネレータ15と、運転状態に基づいてエンジン10とモータジェネレータ15のトルク目標値を設定するトルク配分手段20と、エンジン10のトルク目標値に基づいてエンジン10の出力を制御する一方、モータジェネレータ15のトルク目標値に基づいてモータジェネレータ15を制御するコントローラ20とを備えたハイブリッドシステム車両の制御装置において、モータジェネレータ15の状態とモータジェネレータ15のトルク目標値に応じてそのトルク目標値への指示トルクの変化量を設定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 エンジンに連結されたモータジェネレータと、運転状態に基づいてエンジンとモータジェネレータのトルク目標値を設定するトルク配分手段と、エンジンのトルク目標値に基づいてエンジンの出力を制御する一方、モータジェネレータのトルク目標値に基づいてモータジェネレータを制御するコントローラとを備えたハイブリッドシステム車両の制御装置において、モータジェネレータの状態とモータジェネレータのトルク目標値に応じてそのトルク目標値への指示トルクの変化量を設定することを特徴とするハイブリッドシステム車両の制御装置。
【請求項2】 モータジェネレータの指示トルク値に対するモータジェネレータの実際のトルクの遅れを検出する遅れ検出手段と、この遅れに基づいて前記指示トルクの変化量を変更する指示トルク変化量変更手段とを設けた請求項1に記載のハイブリッドシステム車両の制御装置。
【請求項3】 エンジンの状態に応じて前記指示トルクの変化量を変更する指示トルク変化量変更手段を設けた請求項1に記載のハイブリッドシステム車両の制御装置。
【請求項4】 前記トルク配分手段は、エンジンの暖機中はエンジンのトルク目標値を相対的に大きくし、モータジェネレータのトルク目標値を相対的に小さくする請求項1に記載のハイブリッドシステム車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、エンジンとモータジェネレータを組み合わせたハイブリッドシステム車両の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から排気エミッションを改善するため、エンジンと電動モータ(モータジェネレータ)を組み合わせたハイブリッド車両が知られており、例えば特開平3ー121928号公報が知られている。
【0003】これは、エンジンと電動モータを並列的に配置したパラレル式のハイブリッドシステムで、所定の走行条件ではエンジンの駆動力に電動モータの駆動力を加えて走行を行い、コーストまたは減速時には電動モータを発電機としてエネルギの回生を行ってエンジンの熱効率および排気エミッションを改善しようとするものであり、電動モータを駆動する場合には、エンジンと電動モータの駆動トルクの配分を可変制御して、エンジンの熱効率および排気エミッションが最良の状態となるように制御している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このような従来のハイブリッドシステム車両の制御装置にあっては、電動モータのレスポンスについて、リニアに制御を実施していなかった。即ち、電動モータを目標トルクに制御する場合、指示トルクを急激に大きくすると、図10のように高トルク時にハンチングを起こしたりする。そのため、指示トルクの変化を緩やかにしてトルクを増加するようにしている。
【0005】しかし、この場合、指示トルクの変化量を一定にしていたのでは、必ずしも電動モータの良好なレスポンスは得られず、加速時の加速不足を招く。また、同様に回生時のブレーキ不足および回生電力量の収集不足を招くという問題がある。
【0006】この発明は、電動モータ、エンジンの最適な制御を行って、このような問題点を解決すると共に、ハイブリッドシステム車両の性能を向上することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】第1の発明は、エンジンに連結されたモータジェネレータと、運転状態に基づいてエンジンとモータジェネレータのトルク目標値を設定するトルク配分手段と、エンジンのトルク目標値に基づいてエンジンの出力を制御する一方、モータジェネレータのトルク目標値に基づいてモータジェネレータを制御するコントローラとを備えたハイブリッドシステム車両の制御装置において、モータジェネレータの状態とモータジェネレータのトルク目標値に応じてそのトルク目標値への指示トルクの変化量を設定する。
【0008】第2の発明は、第1の発明において、モータジェネレータの指示トルク値に対するモータジェネレータの実際のトルクの遅れを検出する遅れ検出手段と、この遅れに基づいて指示トルクの変化量を変更する指示トルク変化量変更手段とを設ける。
【0009】第3の発明は、第1の発明において、エンジンの状態に応じて指示トルクの変化量を変更する指示トルク変化量変更手段を設ける。
【0010】第4の発明は、第1の発明において、トルク配分手段は、エンジンの暖機中はエンジンのトルク目標値を相対的に大きくし、モータジェネレータのトルク目標値を相対的に小さくする。
【0011】
【発明の効果】第1の発明によれば、モータジェネレータのトルク目標値への最適な指示トルクを得て、力行時にモータジェネレータの高レスポンスを確保することができ、発進、加速性能を向上できる。また、減速時に良好なブレーキ性能を確保でき、エネルギの回生性能を向上できる。
【0012】第2の発明によれば、モータジェネレータの一層高いレスポンスを確保することができる。
【0013】第3の発明によれば、エンジンの暖機時にエンジンに合ったモータジェネレータのレスポンスを得ることができ、エンジンの正常な状態を保てる。
【0014】第4の発明によれば、暖機性能が向上する。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0016】図1に示すように、エンジン10は自動変速機11を介して駆動軸12、差動装置13および駆動輪14へ駆動力を伝達する。
【0017】エンジン10と並列的に配置されたモータジェネレータ15は、プーリ16およびベルト17を介してエンジン10のプーリ18に連結されており、モータジェネレータ15が発生したトルクは、エンジン10を介して変速機11から駆動軸12へ伝達される一方、車両の減速時ではエンジン10を介して駆動軸12からのエネルギを回生してバッテリ19へ充電を行う。
【0018】モータジェネレータ15は、エンジン10の始動時にはエンジン10のクランキングを行う始動手段として動作する一方、車両の発進または加速時等の所定の運転条件が成立したときには、エンジン10のトルクにモータジェネレータ15のトルクを付加して、発進、加速等を円滑に行うものである。
【0019】ここで、車両の発進または加速時等でのエンジン10とモータジェネレータ15のトルク配分は、コントロールユニット20によって制御される。コントロールユニット20には、車両の運転状態を検出するため、アクセルペダルの開度(踏み込み量)ACSを検出するアクセル開度センサ30と、駆動軸12の回転数等から車速VSPを検出する車速センサ31からの信号が入力される。また、エンジン10の回転数を検出する回転数センサ32、エンジン10のトルクを検出するトルクセンサ33、エンジン10の冷却水温(油温でも良い)を検出する温度センサ34と、モータジェネレータ15の回転数を検出する回転数センサ35、モータジェネレータ15のトルクを検出するトルクセンサ36等からの信号が入力される。
【0020】コントロールユニット20は、検出した車速VSPおよびアクセル開度ACSから運転状態を判定して、発進または加速状態であれば、所定のマップに基づいて、変速機11に出力すべきトルクの目標値である出力トルク目標値T*allをアクセル開度ACSをパラメータとして車速VSPに基づいて求めた後、所定のマップからモータジェネレータ15が発生すべきトルクの目標値であるモータトルク目標値TM*(TTARGET)を求める。同様に、出力トルク目標値T*allから所定のマップより、エンジン10が発生すべきトルクの目標値であるエンジントルク目標値TE*を求める。
【0021】コントロールユニット20のエンジンコントロール部21が、エンジントルク目標値TE*に基づいてエンジン10の燃料噴射制御や点火時期制御等を行って、エンジン10が変速機11に付与する実際のエンジントルクTEをエンジントルク目標値TE*へ一致させるよう制御する。
【0022】また、コントロールユニット20のモータジェネレータコントロール部22が、モータトルク目標値TM*に基づいてインバータ23によってバッテリ19の電力をモータジェネレータ15に供給し、モータジェネレータ15がエンジン10を介して変速機11へ付与する実際のモータトルクTMをモータトルク目標値TM*へ一致させるよう制御する。
【0023】この場合、モータジェネレータコントロール部22は、モータトルク目標値TM*への指示トルクつまりインバータ23からモータジェネレータ15への供給電力をコントロールする指示トルクの変化量t1(時定数)を制御して、モータトルクTMを高レスポンスで目標値TM*へ一致させるよう制御する。
【0024】次に、コントロールユニット20(モータジェネレータコントロール部22)で行われる制御内容を図2のフローチャートを参照しながら説明する。なお、このフローチャートは前記各トルク目標値の演算を行った直後に行われるもので、例えば数msec毎に実行されるものである。
【0025】まず、ステップ1ではモータトルク目標値TM*(TTARGET)を読み込む。
【0026】ステップ2では、モータジェネレータ15の現在の回転数NNOW,トルクTNOWを読み込むと共に、モータトルク目標値TTARGETと現在のトルクTNOWとの差である変位トルクΔTを求め、その変位トルクΔTと回転数NNOWとトルクTNOWに基づき、図3のように設定した指示トルクマップから指示トルクの時定数t1を読み込む。
【0027】指示トルクマップは、回転数NNOW,トルクTNOW、変位トルクΔTの所定範囲毎にグループ(A,B,…X)を形成して、グループ毎に指示トルクの時定数t1(a,b,…x)を設定しており、グループのX側ほど小さな時定数t1に設定している。また、グループ毎に、該当時定数t1にて所定範囲のトルク目標値をインバータ23に指示したときの指示トルク値と実際のトルクの遅れ時間の基準となる最大許容遅れt2と最小遅れt3とを設定している。なお、それぞれの時定数t1は、基本的にハンチングを起こさない範囲で、モータジェネレータ15の最高レスポンスを得る値に設定してある。
【0028】指示トルクマップの該当グループから時定数t1を読み込むと、ステップ3にてその時定数t1にてモータトルク目標値TM*をインバータ23に指示する。この場合の指示トルク曲線は図4のようになる。
【0029】これにより、モータジェネレータ15のトルクが上昇して目標値TTARGETへ達するが、このときステップ4にて、図5のようにモータジェネレータ15の指示トルク値に対する実際のトルクの遅れ時間Δtを計測する。この場合、実際のトルクを数μsecのサンプリング周期でチェックして計測する。
【0030】そして、ステップ5〜7ではΔtを時定数t1を読み込んだ指示トルクマップの該当グループの最大許容遅れt2、最小遅れt3と比較する。
【0031】Δtがt3≦Δt≦t2のときは、時定数t1が適正なため、ステップ8に進み、指示トルクマップのグループの選択を変更しない。
【0032】Δt<t3のときは、時定数t1が小さすぎるため、ステップ9に進み、指示トルクマップの選択すべきグループのランクを小さくする。
【0033】Δt>t2のときは、時定数t1が大きすぎるため、ステップ10に進み、指示トルクマップの選択すべきグループのランクを大きくする。
【0034】これらグループのランクの変更は次のトルク指示時に行う。
【0035】したがって、モータジェネレータ15の良好かつ高レスポンスを得ることができる。
【0036】そして、ステップ11ではエンジン10の回転数NE、トルクTE、冷却水温(または油温)Tempをチェックして、ステップ12〜15ではその回転数NE、トルクTE、冷却水温Tempにより指示トルクマップのグループのランク判断を行う。
【0037】この場合、図6のように回転数NE、トルクTEの所定範囲毎に、冷却水温Tempの最低温度限界Temp(min)、標準温度Temp(Normal)、最大温度限界Temp(max)等を設定したエンジン状態マップを設け、冷却水温TempがTemp>Temp(Normal)のときは、指示トルクマップのグループのランクの変更を行わず(ステップ16,18)、Temp<Temp(min)のときに、指示トルクマップの選択すべきグループのランクを小さくする(ステップ17)。
【0038】このランクの変更は次のトルク指示時に行うが、この際ランクを変更する代わりに、補正値を定めて、次のトルク指示時に該当グループの時定数t1を補正するようにして良い。
【0039】したがって、エンジン10の暖機時にエンジンに合ったモータジェネレータ15のレスポンスを得ることができる。
【0040】このようにしたので、制御にハンチングを起こすことなく、力行時にモータジェネレータ15の高レスポンスを得ることができ、発進、加速性能が向上する。
【0041】この場合、モータジェネレータ15の指示トルク値に対する実際のトルクの遅れに応じて指示トルクの時定数を変更するので、モータジェネレータ15の一層高いレスポンスを得ることができる。
【0042】また、エンジン10の暖機時にエンジンに合ったモータジェネレータ15のレスポンスを得て、負荷変動の少ないエンジン10の正常な状態を保つことができる。
【0043】なお、減速時にはモータジェネレータ15からエネルギを回生してバッテリ19へ充電するが、この場合車速VSP等から減速トルク目標値TTARGETを求めて、モータジェネレータ15の現在の回転数NNOW,トルクTNOWと、減速トルク目標値TTARGETとトルクTNOWとの差である変位トルクΔTに基づき、前記指示トルクマップから指示トルクの時定数t1を読み込んで、その時定数t1にて減速トルク目標値TTARGETをインバータ23へ指示する。即ち、回生時には目標値TTARGETが減少側となるだけのため、変位トルクΔTの符号をとって、力行時と同様に制御する。したがって、図7に示すように減速時に良好なブレーキ性能を得ることができ、エネルギの回生性能が向上する。
【0044】図8は本発明の別の実施の形態を示すもので、エンジン10の冷却水温(油温でも良い)が所定値以下のときは、エンジン10とモータジェネレータ15のトルク配分を変えるようにしたものであるこの場合、冷却水温に基づき、図9に示す通常の状態に対して、エンジンのトルク目標値TE*に冷却水温によって定めた所定値αをプラスして、その分をモータジェネレータのトルク目標値TM*からマイナスする。
【0045】このようにすれば、エンジン10の暖機を促進することができる。なお、もちろん暖機中は、前述したようにモータジェネレータ15の指示トルクの時定数t1を大きくしている。
【出願人】 【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
【出願日】 平成9年(1997)9月22日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜 (外1名)
【公開番号】 特開平11−98612
【公開日】 平成11年(1999)4月9日
【出願番号】 特願平9−257053