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【発明の名称】 電気車制御装置
【発明者】 【氏名】浅野 裕美子

【氏名】小尾 秀夫

【要約】 【課題】気象条件、路線条件による、機械的粘着低下時においても、過度な空転・滑走の発生を抑制し、駆動トルクの低下を抑えることができる電気車制御装置を得る。

【解決手段】各電動機M1・・・Mnのトルクを検出するトルク検出器81・・・8nを備え、空転・滑走検知信号S1・・・Snとトルク検出信号T01・・・T0nとから空転または滑走時のトルク実績値に相当するトルク抑制値Tfを求め、トルク制御系7aは、トルク指令パターンを、トルク抑制値Tfを上限とする範囲で修正したパターンにより、電動機の駆動トルクを制御する空転・滑走抑制制御を行う。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 電動機の駆動トルクを制御するトルク制御系、および上記電動機で駆動される車輪の空転または滑走を検知する空転・滑走検知手段を備え、上記トルク制御系は、上記空転・滑走検知信号が出力されていないときは運転指令からのトルク指令パターンにより、上記空転・滑走検知信号が出力されているときは再粘着させるための再粘着制御パターンにより、上記電動機の駆動トルクを制御するようにした電気車制御装置において、上記電動機のトルク(またはトルク相当量で、ここではこれら概念を含めてトルクと称する)を検出するトルク検出手段を備え、上記空転・滑走検知信号と上記トルク検出値とから空転または滑走時のトルク実績値に相当するトルク抑制値を求め、上記トルク制御系は、上記トルク指令パターンを、上記トルク抑制値を基に修正したパターンにより、上記電動機の駆動トルクを制御する空転・滑走抑制制御を行うようにしたことを特徴とする電気車制御装置。
【請求項2】 トルク制御系は、トルク指令パターンを、トルク抑制値を上限とする範囲で修正したパターンにより、電動機の駆動トルクを制御する空転・滑走抑制制御を行うようにしたことを特徴とする請求項1記載の電気車制御装置。
【請求項3】 零から最大値までの立上げ特性が、修正前のトルク指令パターンと修正後のパターンとで同一の時定数となるようにしたことを特徴とする請求項2記載の電気車制御装置。
【請求項4】 修正後のパターンは、修正前のトルク指令パターンと同一の勾配で零から立上り、最大値がトルク抑制値で規制されたものとしたことを特徴とする請求項2記載の電気車制御装置。
【請求項5】 修正後のパターンは、修正前のトルク指令パターンの勾配より大きい勾配で零から立上り、最大値がトルク抑制値で規制されたものとしたことを特徴とする請求項2記載の電気車制御装置。
【請求項6】 トルク抑制値を記憶する手段を備え、新たに空転または滑走が発生する毎に、上記記憶したトルク抑制値を新たな値に書き換えるようにしたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の電気車制御装置。
【請求項7】 電気車の電源投入後からのトルク実績値の累積データを基に通算代表値を演算する手段を備え、上記トルク実績値の通算代表値をトルク抑制値としたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の電気車制御装置。
【請求項8】 トルク抑制値と予め設定したトルク抑制限界値とを比較する手段を備え、上記トルク抑制値が上記トルク抑制限界値未満の時のみ空転・滑走抑制制御を行うようにしたことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の電気車制御装置。
【請求項9】 所定の時間当たりの空転または滑走の発生回数をカウントする手段を備え、上記カウント値が所定の値を超えた時のみ空転・滑走抑制制御を行うようにしたことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の電気車制御装置。
【請求項10】 空転・滑走検知信号の立ち上がりのタイミングにおけるトルク検出値をトルク抑制値としたことを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の電気車制御装置。
【請求項11】 空転・滑走検知信号の立ち下がりのタイミングにおけるトルク検出値をトルク抑制値としたことを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の電気車制御装置。
【請求項12】 空転・滑走検知信号の、立ち上がりのタイミングにおけるトルク検出値と立ち下がりのタイミングにおけるトルク検出値との中間値をトルク抑制値としたことを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の電気車制御装置。
【請求項13】 空転・滑走検知信号の立ち下がりのタイミングにおけるトルク検出値をトルク抑制値として記憶する手段を備え、再粘着制御パターンにおける目標値を上記記憶されたトルク抑制値としたことを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の電気車制御装置。
【請求項14】 空転・滑走検知信号の立ち上がりのタイミングにおけるトルク検出値をトルク抑制値として記憶する手段を備え、再粘着後の復帰パターンにおける目標値を上記記憶されたトルク抑制値としたことを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の電気車制御装置。
【請求項15】 単一のトルク制御系により複数(n)の電動機を制御する場合、空転・滑走検知手段およびトルク検出手段を上記複数の電動機毎に設けて上記電動機毎にトルク実績値を求め、いずれかの電動機で得られたトルク実績値のn倍を上記電動機n台分のトルク抑制値としたことを特徴とする請求項1ないし14のいずれかに記載の電気車制御装置。
【請求項16】 単一のトルク制御系により複数(n)の電動機を制御する場合、空転・滑走検知手段は上記複数の電動機毎に設け、トルク検出手段は上記トルク制御系として一括して設け、いずれかの電動機の空転または滑走時に上記トルク検出手段から得られたトルク実績値を上記電動機n台分のトルク抑制値としたことを特徴とする請求項1ないし14のいずれかに記載の電気車制御装置。
【請求項17】 単一のトルク制御系により複数(n)の電動機を制御する場合、空転・滑走検知手段は上記複数の電動機毎に設け、トルク検出手段は上記トルク制御系として一括して設け、いずれかの電動機の空転または滑走時にトルク指令値TqPと上記トルク検出手段からのトルク実績値TqOとを求め、TqP−(TqP−TqO)×n=TqFを上記電動機n台分のトルク抑制値としたことを特徴とする請求項1ないし14のいずれかに記載の電気車制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電気車の空転・滑走の抑制制御を行う、電気車制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、VVVF、即ち、可変電圧可変周波数インバータにより、駆動軸に接続された誘導電動機を回転、トルク制御する電気車の制御装置が実用化されている。その概要については、既知であるので、ここでは省略する。
【0003】図13は、例えば特公平5−59642号公報に示された従来の電気車制御装置における、空転・滑走制御方法を示すブロック図であり、図において、M1・・・Mnは、同一の可変電圧可変周波数(VVVF)インバータ装置1にて制御される誘導電動機(以下、モータという)、FM1・・・FMnは、各モータM1・・・Mnの電動機回転周波数(以下、モータ周波数という)である。
【0004】2は、電動機回転周波数検知回路であり、各モータM1・・・Mnのモータ周波数FM1・・・FMnから、制御用周波数FMを演算し、VVVFインバータ装置1の周波数を制御するとともに、基準レベル発生回路3に与えている。
【0005】基準レベル発生回路3は、上述の制御用周波数FMより、基準レベル信号Kを算出し、空転または滑走検知のための基準レベルとして、比較器41・・・4nに出力している。
【0006】51・・・5nは、それぞれモータM1・・・Mnの空転・滑走検知回路である。例えば、モータM1の空転・滑走検知回路51は、モータM1の回転周波数FM1の時間変化率T1を微分器51aによって検出して、比較器41へ入力し、基準レベル発生回路3から入力された、基準レベル信号Kと比較する。この比較器41による比較の結果、微分器51aによって検出されたモータM1の回転周波数FM1の時間変化率T1が基準レベル信号Kを超えたことにより、当該モータM1の駆動する、駆動軸の空転または滑走を検知する。
【0007】なお、モータM1以外の他の各モータM2・・・Mnの空転・滑走検知回路52・・・5nについても、上述のモータM1の空転・滑走検知回路と同一構成であって、それぞれ微分器51a・・・5na、及び比較器41・・・4nを備え、同様に動作する。
【0008】6は、再粘着制御系であり、空転・滑走検知回路51・・・5nは、空転・滑走検知時には、再粘着制御系6に対して、空転・滑走検知信号S1・・・Sn出力する。
【0009】再粘着制御系6は、空転・滑走検知信号S1・・・Snの入力に従い、再粘着制御を実施するためのトルク制限信号Tslskを、トルク制御系7に出力する。
【0010】トルク制御系7は、図示しない、運転台等からのトルク指令、もしくは、加速度指令に従い、モータM1・・・Mnが所定のトルクを発生するよう、トルク制御を実施しており、再粘着制御系6からの出力信号Tslskがあった場合には、その信号に従って、現在の指令されたトルク値に対して、制限を実施し、空転・滑走現象を収束させ、再粘着させるよう、トルク制御を実施する。
【0011】次に、動作について説明する。空転または滑走が発生した場合、空転または滑走を生じている駆動軸のモータのモータ周波数FMmの微分値を、微分器5maによって検出すると、0より十分大(空転の場合)、他の駆動軸のモータのモータ周波数の微分値よりも十分大(空転の場合)であるか、または、0よりも十分小(滑走の場合)、他の駆動軸のモータのモータ周波数の微分値よりも十分小(滑走の場合)となる。
【0012】この従来例における、空転・滑走検知回路5mにおいては、空転または滑走検知のための基準レベル信号Kは、制御対象の全モータM1・・・Mnのモータ周波数FM1・・・FMnから算出したFMを用いて、算出されている。一方、車両条件、路線条件、運転条件、あるいは、気象条件等により、電気車の加減速度が変化した場合には、全てのモータM1・・・Mnが共通して加減速されるので、それらから算出される基準レベル信号Kも変動している。
【0013】よって、この基準レベルKと、微分器5maの出力を、比較器4mにおいて比較することにより、空転または滑走を検知している。
【0014】空転または滑走を検知した場合には、当該駆動軸の粘着状態を回復させるため、空転または滑走軸の駆動トルクを低減させる必要がある。さらに、粘着状態が回復した後には、車両として、必要な駆動力を確保するため、低下させた空転または滑走軸の駆動トルクを元に戻す必要がある。これらは、再粘着制御系6からの出力信号Tslskに従い、トルク制御系7で実施される。
【0015】再粘着制御系6は、空転・滑走検知回路51・・・5nの出力信号S1・・・Snに従い、空転または滑走を検知している駆動軸が発生するべきトルクに相当する数値を算出し、そのトルクを低減するべく、トルク制御系7にトルク制限信号Tslskを出力する。トルク制限信号Tslskは、トルクの急激な変化に対する、乗心地の悪化を防ぎつつ、かつ空転または滑走状態を急速に収束できるような、緩和パターンをもって出力される。
【0016】さらに、再粘着制御系6は、空転・滑走検知回路51・・・5nの出力信号S1・・・Snの消失をもって、粘着状態が回復されたと判断し、空転または滑走を検知していた駆動軸が発生するべきトルクを回復するべく、トルク制御系7にトルク制限信号Tslskを出力する。トルク制限信号Tslskは、トルクの急激な変化に対する、乗心地の悪化を防ぐような緩和パターンをもって出力される。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】従来の電気車制御装置においては、以上のように構成されているので、特に気象条件、路線条件により、機械的粘着の低下が顕著な場合においては、空転・滑走現象が続いて発生し、再粘着制御による、駆動トルクの抑制が頻発してしまう、という問題点があった。
【0018】この発明は、上記のような問題点を解消するためになされたものであり、気象条件、路線条件による、機械的粘着低下時においても、過度な空転・滑走の発生を抑制し、駆動トルクの低下をおさえるとともに、再粘着制御による、乗心地への影響を排除し、電気車の運行に対する影響をおさえることが可能となる、電気車制御装置を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】この発明に係る電気車制御装置は、電動機の駆動トルクを制御するトルク制御系、および上記電動機で駆動される車輪の空転または滑走を検知する空転・滑走検知手段を備え、上記トルク制御系は、上記空転・滑走検知信号が出力されていないときは運転指令からのトルク指令パターンにより、上記空転・滑走検知信号が出力されているときは再粘着させるための再粘着制御パターンにより、上記電動機の駆動トルクを制御するようにした電気車制御装置において、上記電動機のトルク(またはトルク相当量で、ここではこれら概念を含めてトルクと称する)を検出するトルク検出手段を備え、上記空転・滑走検知信号と上記トルク検出値とから空転または滑走時のトルク実績値に相当するトルク抑制値を求め、上記トルク制御系は、上記トルク指令パターンを、上記トルク抑制値を基に修正したパターンにより、上記電動機の駆動トルクを制御する空転・滑走抑制制御を行うようにしたものである。
【0020】また、この発明に係る電気車制御装置は、そのトルク制御系は、トルク指令パターンを、トルク抑制値を上限とする範囲で修正したパターンにより、電動機の駆動トルクを制御する空転・滑走抑制制御を行うようにしたものである。
【0021】また、この発明に係る電気車制御装置は、その零から最大値までの立上げ特性が、修正前のトルク指令パターンと修正後のパターンとで同一の時定数となるようにしたものである。
【0022】また、この発明に係る電気車制御装置は、その修正後のパターンは、修正前のトルク指令パターンと同一の勾配で零から立上り、最大値がトルク抑制値で規制されたものとしたものである。
【0023】また、この発明に係る電気車制御装置は、その修正後のパターンは、修正前のトルク指令パターンの勾配より大きい勾配で零から立上り、最大値がトルク抑制値で規制されたものとしたものである。
【0024】また、この発明に係る電気車制御装置は、そのトルク抑制値を記憶する手段を備え、新たに空転または滑走が発生する毎に、上記記憶したトルク抑制値を新たな値に書き換えるようにしたものである。
【0025】また、この発明に係る電気車制御装置は、その電気車の電源投入後からのトルク実績値の累積データを基に通算代表値を演算する手段を備え、上記トルク実績値の通算代表値をトルク抑制値としたものである。
【0026】また、この発明に係る電気車制御装置は、そのトルク抑制値と予め設定したトルク抑制限界値とを比較する手段を備え、上記トルク抑制値が上記トルク抑制限界値未満の時のみ空転・滑走抑制制御を行うようにしたものである。
【0027】また、この発明に係る電気車制御装置は、その所定の時間当たりの空転または滑走の発生回数をカウントする手段を備え、上記カウント値が所定の値を超えた時のみ空転・滑走抑制制御を行うようにしたものである。
【0028】また、この発明に係る電気車制御装置は、その空転・滑走検知信号の立ち上がりのタイミングにおけるトルク検出値をトルク抑制値としたものである。
【0029】また、この発明に係る電気車制御装置は、その空転・滑走検知信号の立ち下がりのタイミングにおけるトルク検出値をトルク抑制値としたものである。
【0030】また、この発明に係る電気車制御装置は、その空転・滑走検知信号の、立ち上がりのタイミングにおけるトルク検出値と立ち下がりのタイミングにおけるトルク検出値との中間値をトルク抑制値としたものである。
【0031】また、この発明に係る電気車制御装置は、その空転・滑走検知信号の立ち下がりのタイミングにおけるトルク検出値をトルク抑制値として記憶する手段を備え、再粘着制御パターンにおける目標値を上記記憶されたトルク抑制値としたものである。
【0032】また、この発明に係る電気車制御装置は、その空転・滑走検知信号の立ち上がりのタイミングにおけるトルク検出値をトルク抑制値として記憶する手段を備え、再粘着後の復帰パターンにおける目標値を上記記憶されたトルク抑制値としたものである。
【0033】また、この発明に係る電気車制御装置は、単一のトルク制御系により複数(n)の電動機を制御する場合、空転・滑走検知手段およびトルク検出手段を上記複数の電動機毎に設けて上記電動機毎にトルク実績値を求め、いずれかの電動機で得られたトルク実績値のn倍を上記電動機n台分のトルク抑制値としたものである。
【0034】また、この発明に係る電気車制御装置は、単一のトルク制御系により複数(n)の電動機を制御する場合、空転・滑走検知手段は上記複数の電動機毎に設け、トルク検出手段は上記トルク制御系として一括して設け、いずれかの電動機の空転または滑走時に上記トルク検出手段から得られたトルク実績値を上記電動機n台分のトルク抑制値としたものである。
【0035】また、この発明に係る電気車制御装置は、単一のトルク制御系により複数(n)の電動機を制御する場合、空転・滑走検知手段は上記複数の電動機毎に設け、トルク検出手段は上記トルク制御系として一括して設け、いずれかの電動機の空転または滑走時にトルク指令値TqPと上記トルク検出手段からのトルク実績値TqOとを求め、TqP−(TqP−TqO)×n=TqFを上記電動機n台分のトルク抑制値としたものである。
【0036】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.図1はこの発明の実施の形態1における電気車制御装置を示すブロック図である。ここでも、従来と同様、1台のトルク制御系でn台の誘導電動機を回転駆動する。図において、M1・・・Mnは、同一の可変電圧可変周波数(VVVF)インバータ装置1にて制御される誘導電動機(以下、モータという)、FM1・・・FMnは、各モータM1・・・Mnの電動機回転周波数(以下、モータ周波数という)である。51・・・5nは、それぞれモータM1・・・Mnの空転・滑走検知回路である。81・・・8nは電動機M1・・・Mnの発生トルクを検出しトルク検出信号T01・・・T0nを出力するトルク検出手段としてのトルク検出器、6aは空転・滑走検知回路51・・・5nからの空転・滑走検知信号S1・・・Snとトルク検出器81・・・8nからのトルク検出信号T01・・・T0nとに基づき、再粘着制御パターンであるトルク制限信号Tslskおよび本願発明の主題である空転・滑走抑制制御のためのトルク抑制値Tfを作成する再粘着制御系である。
【0037】7aはトルク制御系で、図示しない運転台等からのトルク指令パターンにより、また、空転・滑走が発生して再粘着制御系6aからトルク制限信号Tslskが出力されたときは再粘着のためその信号により、更に、再粘着制御系6aからトルク抑制値Tfが出力されたときはトルク指令パターンをそのトルク抑制値Tfを基に修正したパターンにより、VVVFインバータ装置1を制御し各電動機M1・・・Mnの駆動トルクを制御する。
【0038】以下、動作について説明する。先ず、空転・滑走の現象について説明する。空転・滑走は、車輪踏面における、運動摩擦(粘着)力を、その駆動軸の駆動力が上回ったときに発生する。この車輪とレールとの粘着は、車輪とレールの材質、表面状態に大きく左右され、通常、下式の粘着係数μという指標で表現される。
μ=(空転・滑走を起し出す駆動力)/(駆動軸の軸重)
これは、式から明らかなように、駆動軸の軸重に影響されずに、粘着状態を、車輪とレールの条件のみで、表現したものである。
【0039】この粘着係数μは、雨天等の湿潤状態において低下することはよく知られているが、それに付加して、路線条件、特に、曲線やポイントの多少や、それに従い布設される塗油器による油の影響、また、車輪の踏面形状などによっても(低下方向に)大きな影響を受ける。これらのパラメータは、例えば、同一路線を走る、同一車両の、同一天候の下では、ほぼ同程度となるため、天候等の条件を判別することにより、データ蓄積可能となる。図示しない、運転台等からのトルク指令パターンに基づくトルク(駆動力)は、レール面が正常な乾燥状態においては、上記機械的条件から決定される粘着係数μ0に相当するトルク(駆動力)を大きく下回った値であり、問題とはならない。即ち、空転や滑走は発生しない。
【0040】しかしながら、雨天等、上記した阻害要因により、トルク指令パターンに基づくトルク(駆動力)が機械的粘着係数μ0に相当するトルク(駆動力)を上回る場合が発生する。逆にいえば、それだけ、機械的粘着係数が低下してしまっているということである。この場合には、必ず、空転、または滑走現象が発生することになり、空転・滑走検知回路51・・・5nは、空転・滑走検知信号S1・・・Snを出力し、再粘着制御系6aは、空転・滑走検知信号S1・・・Snの出力により、トルク制限信号Tslskをトルク制御系7aへ出力し、トルク制御系7aは、空転・滑走状態から、再粘着させるため、空転・滑走発生軸の駆動トルクを機械的粘着係数μ0に相当する値より下回った数値に制限し、再粘着制御を実施する。
【0041】ここで、再粘着制御系6aは、空転・滑走検知回路51・・・5nからの、空転・滑走検知信号S1・・・Snとともに、トルク検出器81・・・8nからの出力信号T01・・・T0nを入力し、機械的粘着係数μ0に相当するトルク値(トルク実績値)を算出し、トルク抑制値Tfとして、トルク制御系7aに出力する。
【0042】図2は、再粘着制御系6aにおける、トルク抑制値Tfの算出の方法を示したタイミングチャートである。ここでは空転・滑走検知信号Sの立上りのタイミングにおけるトルク検出値(機械的粘着係数μ0に相当する駆動力となる)=トルク実績値Tqをトルク抑制値Tfとして採用している。なお、駆動軸の軸重は、列車の重さが変わらない限り一定となるため定数となる。即ち、図2では、電動機M1とMnとを例に挙げ、空転・滑走検知信号S1、Snおよびトルク検出信号T01、T0nを示しており、電動機M1が空転を発生したタイミング(時刻t1)におけるトルク検出器81からのトルク検出信号の値T01a=トルク実績値Tqsaを記憶してトルク抑制値Tfとする。
【0043】図2の例では、電動機M1は時刻t2で空転解消(再粘着)しているが、時刻t3で、今度は電動機Mnで空転を発生している。従って、トルク抑制値Tfは、それまでに記憶されていた値Tqsaに替わって、時刻t3のタイミングにおけるトルク検出器8nからのトルク検出信号の値T0nb=トルク実績値Tqsbに書き換えられる。このように、空転・滑走検知信号の立上りのタイミングにおけるトルク検出信号であるトルク実績値Tqsをトルク抑制値Tfとし、空転または滑走を検知する毎にその値を更新する。なお、この継続更新の処理は、車両が同一路線を走行しているときに有効とし、路線が変わったとき、または列車の重さが変わったときは、一旦、リセットするものとする。
【0044】トルク制御系7aは、再粘着後、再粘着制御系6aからトルク抑制値Tfが出力されていると、本来のトルク指令パターンに替わり、同パターンをトルク抑制値Tfに基づいて修正したパターンによるトルク制御動作を行う。このパターンの修正要領および粘着係数の利用率の面からの従来方式との比較について図3により説明する。
【0045】図3は、空転、再粘着を繰り返す中で、結果として利用し得た粘着係数の時間変化を、従来の場合と比較して模式的に示したものである。図において、P1は、図示しない運転台等からのトルク指令パターンにより制御した場合の利用粘着特性、太線で示すP2は本発明の空転・滑走抑制制御を採用した場合の利用粘着特性を示す。特性P1の立上り部分を点線で延長して示す特性P0は、元のトルク指令パターンに相当する。即ち、本発明の空転・滑走抑制制御は、上記特性P0を、トルク抑制値Tfを上限値とし、かつ、制御パターンにおける零から最大値までの立上げ特性が、修正前のトルク指令パターンP0と修正後のパターンとで同一の時定数となるように、修正したパターンによりトルク制御を行う。このように、時定数を一致させることにより、当初想定したいわゆるソフトスタートが実現し、所望の乗心地が損なわれることがない。
【0046】図3において、従来の利用粘着特性P1は、当初、トルク指令パターンP0に沿って立ち上がるが、トルク抑制値Tfに相当する機械的粘着限界係数に達すると(時刻t1)空転を発生するので、トルクを減じた再粘着制御となる。再粘着(時刻t2)後は、再び元の指令パターンP0を繰り返すことになるので、時刻t3で再び空転を発生し、トルクを減じる。以上の動作を繰り返すため、図からも判るように、従来の利用粘着特性P1は平均してかなり低い値となる。これに対し、本発明による利用粘着特性P2は、元のトルク指令パターンP0をトルク抑制値Tfを上限値としたものに修正したパターンに基づき制御するものであるので、図に示すように、空転発生の回数が減少し、従って、再粘着モードの時間帯が減少し、利用粘着の平均値が向上する。
【0047】図4は、図3と同様、利用粘着特性P3を示すものであるが、トルク制御パターンの修正要領が図3の場合と異なる。即ち、トルク抑制値Tfを上限値とする点は同一であるが、零からの立ち上がりの勾配を、元のトルク指令パターンP0のそれと同一としている。これによって、発車直後の加速特性を修正前パターンの場合と同一とすることができる。この場合も、従来の場合と比較し、空転発生の回数が減少し、利用粘着の平均値が向上するという効果が得られる。
【0048】図5は、トルク制御パターンの修正要領の更に変形例を示す。即ち、ここでは、トルク抑制値Tfを上限値とする一方、零からの立上りの勾配を、元のトルク指令パターンP0のそれより大きくしている。本発明の空転・滑走抑制制御は、トルク指令パターンを、実際に発生した空転または滑走時のトルク実績値に相当するトルク抑制値Tfを上限とするパターンに下降修正するものであるので、元のパターンからすると、トルクの低下が避けられない。図5に示す修正要領は、零からの立上りの勾配を元のパターンのそれより大きく設定することにより、上記した修正によるトルクの低下を幾分緩和し、走行性能への影響を軽減する効果がある。
【0049】実施の形態2.図6はこの発明の実施の形態2の要部を説明するもので、トルク抑制値Tfの作成要領を示すものである。即ち、この形態例では、空転・滑走検知信号Sの立下りのタイミングにおけるトルク検出値(T01a、T0nb)であるトルク実績値Tqea、Tqebをトルク抑制値Tfとしている。記憶したトルク実績値Tqeを空転・滑走検知信号Sの立下りのタイミング(時刻t2、t4)で書き換え更新していく点は、実施の形態1の図2の場合と同様である。
【0050】上記で求められたトルク実績値Tqeは、再粘着状態が得られたときの粘性係数に相当するものであるので、この値を採用したトルク抑制値Tfを上限とする修正パターンに基づき、空転・滑走抑制制御を行うことにより、空転・滑走の再発の可能性が極めて低くなる。
【0051】実施の形態3.図7はこの発明の実施の形態3の要部を説明するブロック図で、トルク抑制値Tfとするトルク実績値Tqの演算要領を示すものである。図において、9aは図2で説明した、空転・滑走検知信号Sの立上りのタイミングにおけるトルク実績値Tqsを演算更新するTqs演算器、9bは図6で説明した、空転・滑走検知信号Sの立下りのタイミングにおけるトルク実績値Tqeを演算更新するTqe演算器である。そして、10は両トルク実績値TqsとTqeとの平均値TqAを演算する平均値演算器である。このように、空転発生時のトルク実績値Tqsと再粘着時のトルク実績値Tqeとの平均値TqAをトルク抑制値Tfとし、この値を上限とする修正パターンに基づき空転・滑走抑制制御を行うことにより、トルクの低下量が比較的少なく、しかも空転・滑走の頻度を抑えた運転特性が得られる。
【0052】なお、図7では、算出平均値、即ち(Tqs+Tqe)/2=TqAとしたが、例えば、空転・滑走現象を、路線状態や気象条件等のパラーメータを含めて統計的に把握し、この結果に基づきTqsとTqeとの中間の適当な内分した値を求め、その中間値をトルク抑制値Tfに採用することにより、修正後のトルク修正と空転・滑走頻度との両者に優れた運転特性を追求するようにしてもよい。
【0053】実施の形態4.図8はこの発明の実施の形態4の要部を説明するブロック図で、トルク抑制値Tfとするトルク実績値Tqの演算要領を示すものである。図において、11は、空転・滑走検知信号Sの立上りのタイミングにおけるトルク実績値Tqs(i)を発生毎に入力し、車両の電源投入後からの通算平均値TqsMを演算する平均値演算器である。
【0054】これらは、通常、RAM等の揮発性メモリを使って下式により演算される。
累積値=1回前までの累積値+今回のトルク実績値Tqs平均値=累積値/(空転または滑走の検知回数)
【0055】トルク抑制値Tfとして以上の累積平均値を採用して空転・滑走抑制制御を行うことにより、特異な検出値(Tqs)が出力されても、これに直接影響される可能性がほとんどなくなり、安定した運転特性が得られる。
【0056】なお、図8では、トルク実績値Tqsを対象としたが、図6や図7で説明したトルク実績値Tqe、TqAを対象としてもよい。また、累積値の単純平均値ではなく、累積データの中央値などを通算代表値として抽出し、これをトルク抑制値Tfとして採用するようにしてもよい。
【0057】実施の形態5.図9はこの発明の実施の形態5の要部を説明するブロック図で、トルク抑制値Tfとするトルク実績値Tqの出力要領を示すものである。図において、9は図2で説明した、空転・滑走検知信号Sの立上りのタイミングにおけるトルク実績値Tqsを演算更新するTqs演算器、12は所定の時間当たりの空転または滑走の発生回数をカウントするカウンタで、所定の時間、例えば、1日毎にカウンタ値をリセットする。13はカウンタ12からの出力Stimeと予め定められたカウント値Stset(例えば、4〜5回)とを比較し、Stime>Stsetとなったとき、スイッチ14を導通させる比較器である。
【0058】レールの一カ所にだけ油が付着している等の、極く局部的、かつ一時的で再現性のない条件により、空転または滑走が発生した場合、その結果によってその後のトルク制御を抑制すると、不要な抑制となる可能性がある。図9の構成を採用した場合、一定の回数以上の空転または滑走が検知されて初めてトルク抑制値Tfが出力され、このトルク抑制値Tfを上限とするトルクパターンによる空転・滑走抑制制御が行われるので、上述したようなレアーケースの空転・滑走検知に基づく不要な抑制制御が実行される可能性が軽減されるという効果がある。
【0059】なお、図9ではトルク実績値Tqsを対象としたが、図6や図7で説明したトルク実績値Tqe、TqAを対象としてもよい。
【0060】実施の形態6.図10はこの発明の実施の形態6の要部を説明するブロック図で、トルク抑制値Tfとするトルク実績値Tqの出力要領を示すものである。図において、9は空転・滑走検知信号Sの立上りのタイミングにおけるトルク実績値Tqsを演算更新するTqs演算器、15はTqs演算器9からのトルク実績値Tqsと予め定められたTqsset(例えば、トルク指令最高値の50〜40%)とを比較し、Tqs<Tqssetのときスイッチ14を導通させる比較器である。
【0061】図10の構成を採用した場合、空転・滑走検知時、機械的粘着限界μ0が極端に低下しているときのみトルク抑制値Tfが出力され、このトルク抑制値Tfを上限とするトルクパターンによる空転・滑走抑制制御が行われるので、この抑制制御の実行を最少限に留め、不要な抑制制御が実行される可能性が軽減されるという効果がある。
【0062】なお、図10ではトルク実績値Tqsを対象としたが、図6や図7で説明したトルク実績値Tqe、TqAを対象としてもよい。
【0063】実施の形態7.図11はこの発明の実施の形態7の要部を説明するもので、先の形態例で求めたトルク抑制値Tfを再粘着制御パターンに活用するものである。即ち、図11において、時刻t1で空転が発生して再粘着制御が開始されるが、その再粘着制御パターンにおける目標値を、それ迄にTqe演算器に記憶されている、空転・滑走検知信号Sの立下りのタイミングにおけるトルク実績値Tqeであるトルク抑制値Tfとしている。
【0064】以上の構成を採用することにより、再粘着制御パターンとして予め設定された数値よりも、より現状の機械的粘着限界μ0に近い値となるため、トルクの制限不足で空転・滑走を抑制できなかったり、逆に、トルクの制限過大で駆動力全体を大幅に低下させるなどの不具合が未然に防止され、最適な再粘着制御が実現される。
【0065】実施の形態8.図12はこの発明の実施の形態8の要部を説明するもので、先の形態例で求めたトルク抑制値Tfを再粘着後の復帰パターンに活用するものである。即ち、図12において、時刻t2で再粘着した後の復帰パターンにおける目標値を、それ迄にTqs演算器に記憶されている、空転・滑走検知信号Sの立上りのタイミングにおけるトルク実績値Tqsであるトルク抑制値Tfとしている。
【0066】以上の構成を採用することにより、復帰パターンとして予め設定された数値よりも、より現状の機械的粘着限界μ0に近い値となるため、トルクの復帰過大で空転・滑走現象を再発させたり、逆にトルクの復帰不足で駆動力全体を低下させるなどの不具合が未然に防止され、最適な再粘着制御が実現される。
【0067】実施の形態9.なお、以上の各形態例では、トルク検出器8を設け、各電動機Mの発生トルクを検出し、この検出値からトルク抑制値Tfを設定するようにしたが、必ずしも、トルク値そのものである必要はなく、トルク値と一対一に対応する、例えば、電動機Mの電流値や、演算により求めた粘着係数μをトルク相当量として、前述したトルク検出値と同等に扱う構成としても、この発明は同等の効果を奏する。
【0068】また、以上では詳細な説明は省略したが、例えば図1に示すように、1台のトルク制御系7aで複数(n)台の電動機M1〜Mnを制御する場合、トルク検出器8によりいずれかの電動機Mで得られたトルク実績値Tqのn倍を電動機n台分のトルク抑制値Tfとする。これにより、直接、空転・滑走を生じていない車輪を駆動する電動機Mも、トルク抑制値Tfを上限とするトルクパターンで制御されるので、空転・滑走抑制効果は確実に達成される。
【0069】同じく、複数(n)台の電動機M1〜Mnを制御する場合であっても、トルク検出器8をトルク制御系7aとして一括して設けて、トルク検出器8の必要台数を節減することも考えられる。この場合、一の方法として、いずれかの電動機Mの空転または滑走検知時における、上記一括設置のトルク検出器8からのトルク実績値Tqをそのままトルク抑制値Tfとしてもよい。空転・滑走現象はほとんどの場合、1軸から発生するため、トルク実績値Tqをそのままトルク抑制値Tfとすると、複数台の電動機の全体で考えると、最も抑制量が少なくなる。しかしながら、この方法では、空転を実際に発生した電動機Mから見ると、当該電動機自体のトルク実績値Tqより大きいトルクで制御され得ることになり、ケースによっては、この当該電動機での空転再発の可能性が残る。
【0070】トルク検出器8を一括して設ける場合の他の方法として、いずれかの電動機Mの空転または滑走時にトルク指令値TqPとトルク検出器8からのトルク実績値TqOとを求め、TqP−(TqP−TqO)×n=TqFを電動機n台分のトルク抑制値Tfとする方法がある。この場合、各電動機Mの動作特性がほぼ均等で、しかも、空転・滑走現象による電動機M相互間の影響がほとんどないものとすると、トルク検出器8を各電動機M毎に設けた場合とほぼ同様のトルク抑制制御が実現し、空転・滑走抑制効果が十分達成される。
【0071】更に、上記各形態例では、トルク指令パターンを、トルク抑制値Tfを上限値として修正したパターンで抑制制御を行うようにしたが、必ずしも、トルク抑制値Tf自体を上限値にせず、例えば、トルク抑制値Tfのα(αは1.0前後の値)倍の値を上限値とするなど、トルク抑制値Tfを基に修正パターンを作成する条件下で、種々の修正方式を採用してもよい。
【0072】また、上記各形態例では、電動機の駆動源として、VVVFインバータ装置を使用した場合について説明したが、コンバータや整流装置と組み合わせた、いわゆるコンバーターインバータ装置等を使用しても、この発明は同等の効果を奏することは明らかである。
【0073】
【発明の効果】以上のように、この発明に係る電気車制御装置は、電動機の駆動トルクを制御するトルク制御系、および上記電動機で駆動される車輪の空転または滑走を検知する空転・滑走検知手段を備え、上記トルク制御系は、上記空転・滑走検知信号が出力されていないときは運転指令からのトルク指令パターンにより、上記空転・滑走検知信号が出力されているときは再粘着させるための再粘着制御パターンにより、上記電動機の駆動トルクを制御するようにした電気車制御装置において、上記電動機のトルク(またはトルク相当量で、ここではこれら概念を含めてトルクと称する)を検出するトルク検出手段を備え、上記空転・滑走検知信号と上記トルク検出値とから空転または滑走時のトルク実績値に相当するトルク抑制値を求め、上記トルク制御系は、上記トルク指令パターンを、上記トルク抑制値を基に修正したパターンにより、上記電動機の駆動トルクを制御する空転・滑走抑制制御を行うようにしたので、空転・滑走の再発が抑制され、駆動トルクの低下が軽減する。
【0074】また、この発明に係る電気車制御装置のトルク制御系は、トルク指令パターンを、トルク抑制値を上限とする範囲で修正したパターンにより、電動機の駆動トルクを制御する空転・滑走抑制制御を行うようにしたので、空転・滑走の再発が確実に抑制される。
【0075】また、この発明に係る電気車制御装置は、零から最大値までの立上げ特性が、修正前のトルク指令パターンと修正後のパターンとで同一の時定数となるようにしたので、所望のソフトスタートが実現し、乗心地が損なわれることがない。
【0076】また、この発明に係る電気車制御装置は、修正後のパターンは、修正前のトルク指令パターンと同一の勾配で零から立上り、最大値がトルク抑制値で規制されたものとしたので、所望の加速性能が得られる。
【0077】また、この発明に係る電気車制御装置は、修正後のパターンは、修正前のトルク指令パターンの勾配より大きい勾配で零から立上り、最大値がトルク抑制値で規制されたものとしたので、トルク指令値を低下させることによる、走行性能への影響が軽減される。
【0078】また、この発明に係る電気車制御装置は、トルク抑制値を記憶する手段を備え、新たに空転または滑走が発生する毎に、上記記憶したトルク抑制値を新たな値に書き換えるようにしたので、最新データに基づく空転・滑走抑制制御が実現する。
【0079】また、この発明に係る電気車制御装置は、電気車の電源投入後からのトルク実績値の累積データを基に通算代表値を演算する手段を備え、上記トルク実績値の通算代表値をトルク抑制値としたので、特異なトルク検出値が出力されても、これに直接影響される可能性がほとんどなくなり、安定した運転特性が得られる。
【0080】また、この発明に係る電気車制御装置は、トルク抑制値と予め設定したトルク抑制限界値とを比較する手段を備え、上記トルク抑制値が上記トルク抑制限界値未満の時のみ空転・滑走抑制制御を行うようにしたので、抑制制御の実行を最少限に留め、不要な抑制制御が実行される可能性が軽減される。
【0081】また、この発明に係る電気車制御装置は、所定の時間当たりの空転または滑走の発生回数をカウントする手段を備え、上記カウント値が所定の値を超えた時のみ空転・滑走抑制制御を行うようにしたので、特異な条件下の空転・滑走検知に基づく不要な抑制制御が実行される可能性が軽減される。
【0082】また、この発明に係る電気車制御装置は、空転・滑走検知信号の立ち上がりのタイミングにおけるトルク検出値をトルク抑制値としたので、空転・滑走の再発が効果的に抑制される。
【0083】また、この発明に係る電気車制御装置は、空転・滑走検知信号の立ち下がりのタイミングにおけるトルク検出値をトルク抑制値としたので、空転・滑走の再発が確実に抑制される。
【0084】また、この発明に係る電気車制御装置は、空転・滑走検知信号の、立ち上がりのタイミングにおけるトルク検出値と立ち下がりのタイミングにおけるトルク検出値との中間値をトルク抑制値としたので、トルクの低下量が比較的少なく、しかも、空転・滑走の頻度を抑えた運転特性が得られる。
【0085】また、この発明に係る電気車制御装置は、空転・滑走検知信号の立ち下がりのタイミングにおけるトルク検出値をトルク抑制値として記憶する手段を備え、再粘着制御パターンにおける目標値を上記記憶されたトルク抑制値としたので、トルクの制限不足で空転・滑走を抑制できなかったり、逆に、トルクの制限過大で駆動力全体を大幅に低下させるなどの不具合が未然に防止され、最適な再粘着制御が実現される。
【0086】また、この発明に係る電気車制御装置は、空転・滑走検知信号の立ち上がりのタイミングにおけるトルク検出値をトルク抑制値として記憶する手段を備え、再粘着後の復帰パターンにおける目標値を上記記憶されたトルク抑制値としたので、トルクの復帰過大で空転・滑走現象を再発させたり、逆にトルクの復帰不足で駆動力全体を低下させるなどの不具合が未然に防止され、最適な再粘着制御が実現される。
【0087】また、この発明に係る電気車制御装置は、単一のトルク制御系により複数(n)の電動機を制御する場合、空転・滑走検知手段およびトルク検出手段を上記複数の電動機毎に設けて上記電動機毎にトルク実績値を求め、いずれかの電動機で得られたトルク実績値のn倍を上記電動機n台分のトルク抑制値としたので、空転・滑走抑制効果は確実に達成される。
【0088】また、この発明に係る電気車制御装置は、単一のトルク制御系により複数(n)の電動機を制御する場合、空転・滑走検知手段は上記複数の電動機毎に設け、トルク検出手段は上記トルク制御系として一括して設け、いずれかの電動機の空転または滑走時に上記トルク検出手段から得られたトルク実績値を上記電動機n台分のトルク抑制値としたので、単一トルク制御系当りの抑制量を最小とすることができるうえ、トルク検出手段の必要数を節減することができる。
【0089】また、この発明に係る電気車制御装置は、単一のトルク制御系により複数(n)の電動機を制御する場合、空転・滑走検知手段は上記複数の電動機毎に設け、トルク検出手段は上記トルク制御系として一括して設け、いずれかの電動機の空転または滑走時にトルク指令値TqPと上記トルク検出手段からのトルク実績値TqOとを求め、TqP−(TqP−TqO)×n=TqFを上記電動機n台分のトルク抑制値としたので、トルク検出手段の必要数を節減することができ、しかも、十分な空転・滑走抑制効果が得られる。
【出願人】 【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
【出願日】 平成9年(1997)8月8日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 金雄 (外2名)
【公開番号】 特開平11−69506
【公開日】 平成11年(1999)3月9日
【出願番号】 特願平9−214976