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【発明の名称】 車 輌
【発明者】 【氏名】奥田 謙造

【氏名】水谷 良治

【氏名】伊賀 清

【氏名】勝田 隆之

【要約】 【課題】内燃機関により駆動される第1駆動車輪と電動機により駆動される第2駆動車輪とを備えた車輌において、駆動エネルギ効率の高い車輌を提供すること。

【解決手段】アクセル操作のアクセル開度が所定値以下であり、且つ、車速が増加しているときに第2駆動車輪により電動機に回生制動をかける。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 内燃機関により駆動される第1駆動車輪と電動機により駆動される第2駆動車輪とを備え、アクセル操作量を前記第1駆動車輪および第2駆動車輪の駆動制御指令の一つとする車輌において、前記アクセル操作のアクセル開度が所定値以下であり、且つ、車速が増加しているときに前記第2駆動車輪により前記電動機に回生制動をかけることを特徴とする車輌。
【請求項2】 内燃機関により駆動される第1駆動車輪と電動機により駆動される第2駆動車輪とを備え、ブレーキ操作により前記第1駆動車輪および第2駆動車輪の制動を行う車輌において、前記ブレーキ操作が行われたときに前記第2駆動車輪により前記電動機に回生制動をかけることを特徴とする車輌。
【請求項3】 前記第2駆動車輪は車体の左右に配置され、前記電動機は前記左右の第2駆動車輪に対して別々に設けられており、前記回生制動時に前記左右の第2駆動車輪による回生電力を検出し、左右の回生電力のうち回生電力の値が高い方の回生制動力を他方の回生電力の値とほぼ等しくなるように抑制することを特徴とする請求項1または2に記載の車輌。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は内燃機関により駆動される第1駆動車輪と電動機により駆動される第2駆動車輪とを備えた車輌に関するものである。
【0002】
【従来の技術】内燃機関により駆動される第1駆動車輪と電動機により駆動される第2駆動車輪とを備えた車輌というのは、現在のところあまり知られていない。一方、電動機(モータ)のみで車輪を駆動するいわゆる電気自動車はよく知られており、その制御装置として、たとえば、特開平5−17648号公報に開示されたものがある。
【0003】この従来技術の電気自動車では複数の車輪駆動用モータが設けられており、制御装置は、アクセル操作量やブレーキ操作量に基づいてモータの速度指令値を設定すると共に、速度指令値と各輪のモータ速度との差からトルク指令値を決定し制御するようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、内燃機関を車輪駆動力として用いる車輌では、下り坂走行中にいわゆるエンジンブレーキを掛けることができる。したがって、内燃機関により駆動される第1駆動車輪と電動機により駆動される第2駆動車輪とを備えた車輌においても、同様に第1駆動車輪によるエンジンブレーキを掛けることができ、そのときの電動機の制御をどのように行うかが問題となる。これに対して、上述した従来技術の制御装置が搭載されている車輌は、車輪を駆動するための内燃機関を備えていないので、エンジンブレーキという概念がそもそもないため、かかる技術については何ら開示されていない。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の車輌は、内燃機関により駆動される第1駆動車輪と電動機により駆動される第2駆動車輪とを備え、アクセル操作量を第1駆動車輪および第2駆動車輪の駆動制御指令の一つとする車輌において、アクセル操作のアクセル開度が所定値以下であり、且つ、車速が増加しているときに第2駆動車輪により電動機に回生制動をかけることを特徴とするものである。
【0006】アクセル操作のアクセル開度が所定値以下であり、且つ、車速が増加しているときというのは、下り坂を走行中の場合であり、いわゆるエンジンブレーキを効かせるときである。このときに、第2駆動車輪により電動機に回生制動を掛けるので、制動エネルギを電源側に回収することができる。
【0007】また、本発明の車輌は、内燃機関により駆動される第1駆動車輪と電動機により駆動される第2駆動車輪とを備え、ブレーキ操作により第1駆動車輪および第2駆動車輪の制動を行う車輌において、ブレーキ操作が行われたときに第2駆動車輪により前記電動機に回生制動をかけることを特徴とするものである。
【0008】ブレーキ操作時に電動機に回生制動が掛かると、制動力がさらに増すと共に、制動エネルギを電源側に回収することができる。
【0009】本発明の車輌は、第2駆動車輪が車体の左右に配置され、電動機が左右の第2駆動車輪に対して別々に設けられている場合には、回生制動時に左右の第2駆動車輪による回生電力を検出し、左右の回生電力のうち回生電力の値が高い方の回生制動力を他方の側の回生電力の値とほぼ等しくなるように抑制することが望ましい。これにより、回生制動時の第2駆動車輪の左右の制動力がほぼ等しくなる。
【0010】
【発明の実施の形態】図1は本発明の一実施形態である車輌の構成を示すシステム図である。この車輌は、内燃機関であるガソリンエンジンで前輪を駆動し、電動機であるホイールモータで後輪を駆動する2種駆動方式の車輌である。ここに言うホイールモータというのは、車輪を電気モータで駆動する際の駆動効率を上げるために提案されたものであり、モータの全部または一部が車輪のホイール内に収納されているため、モータロータの回転駆動力が直接的に車輪に伝達され、駆動力伝達経路でのエネルギロスが少ないという利点を有する。そして、この実施形態の車輌ではホイールモータが選択的に搭載可能となっている。以下に、この車輌の構成を詳細に説明する。
【0011】前輪の左右輪3、4は、主たる動力源であるガソリンエンジン11で回転駆動するようになっており、後輪の左右輪7、9は、それぞれ着脱可能なホイールモータ15、17により回転駆動するようになっている。これにより、この車輌は4輪駆動で走行することができる。なお、ホイールモータ15、17はユーザーにおいて取り外すことが可能であり、後輪7、9を通常の従動輪とすることにより、ガソリンエンジンのみによる2輪駆動で走行することも可能である。
【0012】エンジン11は通常のガソリンエンジン車に搭載されたものと同様に、スロットルバルブ13の開度調整等により出力制御されるものであり、スロットルバルブ13の開度は、アクセルペダル操作に応じた電子制御燃料噴射装置(EFI)の電子制御ユニット(ECU)27からの指令により制御される。
【0013】ホイールモータ15および17の駆動力は補助的に用いられるものであり、たとえば、登り坂走行の際の補助動力として用いられたり、旋回時の姿勢制御に用いられたりする。このようなホイールモータ15および16は、サスペンションアームに取り付けられた車輪支持体に、車輪7、9と共に取り付けられており、ホイールモータ15および16のそれぞれの回転軸と車輪7、9のそれぞれのアクスルハブとが同軸で一体に回転する。ホイールモータ15および17は、前後輪の駆動調整を含めた車輪全体の駆動制御を行うための電子制御ユニット(ECU)31からの電力供給により駆動し、制御される。この車輌制御ECU31は、車輌制御部33、モータ制御部35、37およびインバータ39、41を備える。モータ制御部35とインバータ39はそれぞれ左側のホイールモータ15に制御された電力を供給するものであり、モータ制御部37とインバータ41はそれぞれ右側のホイールモータ17に制御された電力を供給するものである。なお、ホイールモータ15および17は永久磁石型同期モータであり、インバータ39、41を介して電力供給しているので、回生制動が可能である。
【0014】車輌制御部33は、ブレーキの動作を制御するアンチロックブレーキシステム(ABS)の電子制御ユニット(ECU)29およびEFIのECU27とそれぞれコネクタ73および71を介してコネクタ結合している。また、車輌制御部33は、各種センサ類とコネクタ67を介してコネクタ結合している。
【0015】各種センサ類としては、操舵輪である前輪の舵角を検出する舵角センサ53、アクセルペダルの踏み込み量すなわちアクセル開度量を検出するアクセルセンサ55、ブレーキペダルが踏まれているか否かを検出するブレーキセンサ57、エンジン駆動系のトランスミッションのギヤシフトポジションを検出するシフトポジションスイッチ59、車輌の旋回角速度を検出するヨーレートセンサ61、車輌の左右方向の加速度を検出する横加速度センサ63、車輌の前後方向の加速度を検出する前後加速度センサ65、パーキングブレーキのオンオフ状態を検出するPKBセンサ77、前後左右の4つの車輪の速度をそれぞれ独立に検出する車輪速度センサ19、21、23、24等がある。
【0016】インバータ部39、41はコネクタ69および79によりDC/DCコンバータ43とコネクタ結合しており、DC/DCコンバータ43はコネクタ81を介して12ボルト(V)の電圧を持つバッテリー45にコネクタ結合している。また、インバータ部39、41はコネクタ69および給電線83および85を介してホイールモータ15および17にコネクタ結合している。
【0017】車輌制御部33は、車輌制御部33はこれらセンサ類の出力に基づいて、車輌全体の駆動制御を行う。したがって、当然のことながら、ホイールモータ15および17の駆動制御も行う。すなわち、予め設定されたアルゴリズムに従って車輪速度センサ23、25やアクセルセンサ55をはじめとする各種センサからの出力に基づいてインバータ39、41の出力を調整してホイールモータ15および17の駆動を制御する。
【0018】また、車輌制御部33は、車輪駆動装置すなわちホイールモータ15、17およびエンジン11を制御する機能の他に、ホイールモータによる正常な車輪駆動が可能か否かの自己診断を行う機能も備えている。ホイールモータ15および17が必要に応じて選択的に取り付けられる着脱可能なものであることから、少なくとも走行前にホイールモータによる車輪駆動が可能か否かを確認し、車輌が4輪駆動可能か否かを車輌制御部33自身が知る必要があるからである。
【0019】ホイールモータ15および17をどのように駆動制御するかは、その車輌に対する設計思想に基づいて車輌制御部33のアルゴリズムを決めればよい。たとえば、上り坂走行の際に主たる駆動力である前輪駆動力をアシストするために用いる場合には、アクセルセンサ55、シフトポジションスイッチ59、車輪速度センサ19、21、23、25等の出力から坂道走行であることを検出したときにそのときの車輪速度に応じた速度で回転させるような制御を行えばよい。
【0020】また、エンジントラブルが発生した際の代替動力として用いることも可能であり、さらに、旋回走行時の姿勢制御のために利用することも可能である。
【0021】特に、本実施形態では、下り坂等においてエンジンブレーキを効かせて走行する場合にはホイールモータ15、17に回生制動を掛けるように制御される。
【0022】図2は車輌制御部33によるホイールモータ15、17の回生制動制御を示すフローチャートである。
【0023】回生制動の開始判断は、ステップ101からステップ104の4つの判断処理から構成されている。
【0024】はじめに、ホイールモータ制御システムが動作中または動作可能状態(システムスタンバイ状態)にあり、パーキングブレーキ(PKB)77が解除されており、アクセルセンサ55が出力するアクセル開度が設定値以下であることを全て満たしているか否かを判断する(ステップ101)。アクセル開度に関する設定値としては、アクセルがほとんど開放されているときのアクセル開度、すなわち全閉に近い開度が選択され設定される。この条件のうちのいずれか一つでも満足されないときは、この判断は否定され、回生制動処理は行われない。すべての条件が満たされたときには、ステップ102〜104の判断処理の結果により回生制動が実行される。
【0025】ステップ102〜104の判断結果はそのフローから判るように、論理和処理がなされ、いずれか一つの判断ボックスにおいて肯定されれば、回生モード105に移行する。
【0026】ステップ101で肯定された後、後述するステップ102および103において否定されると、ステップ104に至る。ステップ104では、車輪速度センサ19、21、23、25の出力に基づいて推定された車体速度が前回の車体速度よりも大きいか否か、すなわち、車体速度が増加しているか否かを判断する。車輌制御部33は、ABS制御をはじめとする種々の制御を行うために、車輪速度センサ出力に基づいて所定周期で車体速度を推定的に算出している。このステップ104における「前回の車体速度」というのは、このように周期的に算出される車体速度についての一時点前に算出された車体速度のことである。
【0027】ここで、肯定されるということは、ステップ101の判断結果を併せて考えると、アクセルをほぼ開放した状態で車体速度が増加していることになり、下り坂をエンジンブレーキを効かせて走行していることを意味する。車輌制御部33はこのような状態に至ったときには、ステップ105に移行して回生モードとし、ホイールモータ15、17に回生制動を掛ける。
【0028】ステップ101で肯定された後のステップ105の回生モードへの移行は、自動変速機を搭載した車輌においてその自動変速機のシフト状態が所定の状態にある場合(ステップ102)や、ブレーキ操作が行われている場合(ステップ103)には、車体速度が増加しているか否かにかかわらず行われる。
【0029】すなわち、運転者が車輌に制動を掛けたいと判断していることを自動変速機のシフト状態情報やブレーキ操作情報から得て、車体速度の変化とは関係なく回生制動を掛けることができる。なお、自動変速機のシフト情報はシフトポジションスイッチ59から得ることができ、ブレーキ操作情報はブレーキセンサ57から得ることができる。
【0030】ステップ105に移行して回生モードとなると、急激な制動力増加による車輌挙動の不安定化やタイヤロックを防止するため、タイムスケジュールに従った回生制動が行われる(ステップ106)。図2のステップ106の枠内にタイムスケジュールの一例としてのグラフを表示した。このグラフは横軸に回生モード開始からの経過時間を採り、縦軸に回生電力を採っている。このグラフから判るように、回生制動開始直後は回生電力量を小さくして回生制動力を抑え、時間経過と共に回生電力を大きくして行く。これにより、車輌挙動の不安定化やタイヤロックを防止できる。
【0031】回生制動実施中は、車体速度が設定値以下か否か(ステップ107)、開始条件すなわちステップ101〜104までの条件が不成立となったか否か(ステップ108)を常時監視し、肯定する場合にはこの回生制動処理を終了させる。なお、ステップ107の設定値として通常は徐行速度が選択される。
【0032】また、回生制動実施中は、左右のホイールモータ15および17の回生電力をそれぞれ監視し(ステップ109)、その差が所定値を越えた場合は左右輪に制動力の差が生じて車輌偏向する可能性があるため、回生電力が高い方ホイールモータの回生制動力を抑制し、その回生電力の値を低い方の回生電力の値とほぼ等しくなるようにする。実際には、目標回生電力を実際の回生電力の低い方の実績電力で飽和させた後(ステップ110)、ステップ106に戻り回生制動を継続する。この回生電力の低減処理は、左右の回生電力総和が零となる場合を限界値とし、回転方向に対し駆動となるトルク目標までは実施しない。すなわち、最悪でも片輪回生片輪駆動までとする。これにより、左右のホイールモータ15、17に個体差があっても、最悪バッテリー電力を消費しないシステムとすることができる。
【0033】なお、本実施形態では、電動機としてモータとホイールとが一体に構成されたホイールモータを用いているがこれに限定されるものではない。たとえば、通常のモータを車体側に搭載し、動力伝達手段を介してモータ駆動力を車輪に伝えるモータ駆動システムを採用した場合にも、本発明を適用することができる。
【0034】また、本実施形態では、左右前輪をエンジン駆動とし、左右後輪をモータ駆動としているが、逆に、左右前輪をモータ駆動、左右後輪をエンジン駆動としてもよい。
【0035】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の車輌によれば、内燃機関により駆動される第1駆動車輪と電動機により駆動される第2駆動車輪とを備え、アクセル操作量を第1駆動車輪および第2駆動車輪の駆動制御指令の一つとする車輌において、アクセル操作のアクセル開度が所定値以下であり、且つ、車速が増加しているときに第2駆動車輪により電動機に回生制動をかけるので、下り坂走行中のように、第1駆動車輪を介していわゆるエンジンブレーキを効かせるような場合には、第2駆動車輪により電動機に回生制動を掛けるので、車輌全体の制動力が増すと共に制動エネルギを電源側に回収することができる。すなわち、エネルギ効率を高くすることができる。
【0036】また、通常の制動操作時にも第2駆動車輪により電動機に回生制動を掛けるので、同様に、制動力の増強とエネルギ効率の強化を図ることができる。
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【出願日】 平成9年(1997)6月19日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹 (外1名)
【公開番号】 特開平11−18208
【公開日】 平成11年(1999)1月22日
【出願番号】 特願平9−162898