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【発明の名称】 熱発生器用ロータの製造方法及び熱発生器用ロータ
【発明者】 【氏名】鈴木 茂
【氏名】伴 孝志
【氏名】廣瀬 達也
【氏名】星野 辰幸
【課題】熱発生器用ロータの製造方法及び熱発生器用ロータにおいて、剪断部材を駆動軸に対して圧入固定するという製造手法を採ることで生じていた不都合を回避して、ロータ設計の自由度を向上させる。

【解決手段】ロータを製造するには、まず、相対的に熱膨張係数の小さな材料で構成された駆動軸(第1回転体部)13を製造する。そして、かかる駆動軸13を、相対的に熱膨張係数の大きな材料で構成された剪断部材(第2回転体部)14の中心に鋳ぐるむ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 シャフト部を含む第1回転体部と、主剪断部としての第2回転体部とからなる熱発生器用ロータの製造方法であって、i)相対的に熱膨張係数の小さな材料で第1回転体部を形成する第1工程と、ii)前記第1工程で形成された第1回転体部の周囲に、相対的に熱膨張係数の大きな材料で第2回転体部を鋳造により形成する第2工程とを備えてなる熱発生器用ロータの製造方法。
【請求項2】 前記第1回転体部は駆動軸であり、該駆動軸は、主剪断部としての第2回転体部の中心に鋳ぐるまれていることを特徴とする請求項1に記載の熱発生器用ロータの製造方法。
【請求項3】 前記第1回転体部は前後一対で準備され、前記第2回転体部は、その前後一対の第1回転体部の間に、ロストワックス法によって鋳造されることを特徴とする請求項1に記載の熱発生器用ロータの製造方法。
【請求項4】 前記相対的に熱膨張係数の小さな材料は鉄又は鉄系金属であり、前記相対的に熱膨張係数の大きな材料はアルミニウム又はアルミニウム合金であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱発生器用ロータの製造方法。
【請求項5】 ハウジング内に区画された発熱室に収容された粘性流体をロータで剪断して熱を発生させ、その熱を発熱室近傍を流れる循環流体に熱交換する熱発生器に用いられるロータであって、相対的に熱膨張係数の小さな材料で形成された、シャフト部を含む第1回転体部と、相対的に熱膨張係数の大きな材料を用いて、前記第1回転体部の周囲に鋳造によって形成された主剪断部としての第2回転体部とを備えてなる熱発生器用ロータ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、シャフト部を含む第1回転体部と、主剪断部としての第2回転体部とからなる熱発生器用ロータの製造方法及びその熱発生器用ロータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】例えば、車載用の補助熱源として車輌エンジンの駆動力を利用する熱発生器が種々提案されている。例えば、ハウジング内に区画された発熱室及びウォータジャケット(放熱室)、並びに、エンジンに作動連結された駆動軸に圧入固定された剪断部材を備え、この剪断部材により発熱室内に収容された粘性流体(例えば、高粘性シリコーンオイル)を剪断して流体摩擦に基づく熱を発生させ、その熱でウォータジャケットを流れる循環流体(例えば、エンジン冷却水)を加熱する熱発生器がある。
【0003】この種の熱発生器に用いられる剪断部材の素材としては、多くの場合、成形加工や切削加工の簡易性及び重量の低減等を考慮して、アルミニウム又はアルミニウム合金が採用されている。このアルミニウム又はアルミニウム合金を構成材料とする剪断部材は、鉄又は鉄系金属を構成材料とする駆動軸に圧入固定されている。ただし、剪断部材の構成材料の熱膨張係数が駆動軸の構成材料の熱膨張係数よりも大きいので、該熱発生器が運転されると発熱室で生じる熱のために、剪断部材の方が駆動軸よりも膨張傾向を示す。この点を配慮して、剪断部材は駆動軸に対し予め締めしろをもって圧入固定されるとともに、駆動軸を直接取り囲む位置に肉厚なボス部を剪断部材に付与して、発熱時においても駆動軸に対する剪断部材の締め付け圧力(把持力)が維持されるようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】駆動軸に対して剪断部材を圧入固定するにあたっては、次のような問題が生じ得る。
【0005】第一に、発熱時における駆動軸の熱膨張に比して剪断部材の熱膨張が大きい点を考慮して、剪断部材には、締めしろを予め設定する必要がある。このとき、締めしろが小さ過ぎると、発熱時に駆動軸に対する剪断部材の締め付け圧力が弱まるため、剪断部材と駆動軸との一体回動が困難になる。また、剪断部材が円筒形状の場合には、剪断部材外周面と発熱室内壁面との間のクリアランスの設定に狂いが生じる。尚、締めしろの問題とは別途に、相対的に熱膨張係数の大きい構成材料からなる剪断部材の場合、熱発生器運転時には該係数に従って熱膨張することからも剪断部材外周面と発熱室内壁面との間のクリアランスは変化する。しかし、かかる変化は予め考慮されており、例えば発熱室内壁を剪断部材と同様の材料から構成する等して該クリアランスの変化が最小限に止められている。
【0006】一方、締めしろが大き過ぎると、アルミニウム又はアルミニウム合金の引っ張り強度を超えて圧入時に剪断部材のボス部にひびが入ったり、ひいては割れたりする。この問題は、剪断部材と駆動軸との圧入長が長くなるほど顕著となる。このように、圧入締めしろの設定には細心の注意が必要となり、剪断部材製造時の寸法管理が難しい。
【0007】第二に、駆動軸の軸線方向における剪断部材と駆動軸との圧入長が長くなればなるほど駆動軸に対して剪断部材を圧入固定する方法は不向きとなる。剪断部材は圧入時に相当の抵抗を受けることとなるが、前記圧入長が長くなるほど、その抵抗は大きくならざるを得ないからである。従って、円滑な圧入作業の実現を図るため、圧入時には、ボス部に潤滑油が付けられるが、前記圧入長が長くなれば圧入作業中に油膜切れを起こす可能性は高い。
【0008】第三に、圧入固定後の剪断部材と駆動軸との接触長が長くなると、駆動軸の軸線方向において駆動軸に対する剪断部材の締め付け圧力にばらつきが生じやすい。かかるばらつきが発生すると、締め付け圧力がより強い接触部位でトルク伝達を主に担うこととなるため、その部位から機械的疲弊が起きる可能性が高い。
【0009】本発明の目的は、剪断部材を駆動軸に対して圧入固定するという製造手法を採ることで生じていた不都合を回避して、ロータ設計の自由度を高めることができる熱発生器用ロータの製造方法及び熱発生器用ロータを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、シャフト部を含む第1回転体部と、主剪断部としての第2回転体部とからなる熱発生器用ロータの製造方法であって、i)相対的に熱膨張係数の小さな材料で第1回転体部を形成する第1工程と、ii)前記第1工程で形成された第1回転体部の周囲に、相対的に熱膨張係数の大きな材料で第2回転体部を鋳造により形成する第2工程とを備えてなることをその要旨とする。
【0011】この熱発生器用ロータの製造方法によれば、第2回転体部は、第1回転体部の周囲に鋳造により形成されている。このため、第2回転体部を第1回転体部に対して圧入固定する場合に生じる不都合が避けられる。従って、ロータ設計の自由度が高められる。
【0012】請求項2の発明は、請求項1に記載の熱発生器用ロータの製造方法において、前記第1回転体部は駆動軸であり、該駆動軸は、主剪断部としての第2回転体部の中心に鋳ぐるまれていることをその要旨とする。
【0013】請求項3の発明は、請求項2に記載の熱発生器用ロータの製造方法において、前記第1回転体部は前後一対で準備され、前記第2回転体部は、その前後一対の第1回転体部の間に、ロストワックス法によって鋳造されることをその要旨とする。
【0014】請求項4の発明は、請求項1〜3に記載の熱発生器用ロータの製造方法において、前記相対的に熱膨張係数の小さな材料は鉄又は鉄系金属であり、前記相対的に熱膨張係数の大きな材料はアルミニウム又はアルミニウム合金であることをその要旨とする。
【0015】請求項5の発明は、ハウジング内に区画された発熱室に収容された粘性流体をロータで剪断して熱を発生させ、その熱を発熱室近傍を流れる循環流体に熱交換する熱発生器に用いられるロータであって、相対的に熱膨張係数の小さな材料で形成された、シャフト部を含む第1回転体部と、相対的に熱膨張係数の大きな材料を用いて、前記第1回転体部の周囲に鋳造によって形成された主剪断部としての第2回転体部とを備えてなることを要旨とする。
【0016】この熱発生器用ロータによれば、第2回転体部の構成材料の熱膨張係数が第1回転体部の構成材料の熱膨張係数よりも大きい。そのため、第2回転体部が第1回転体部の周囲に鋳造によって形成されるときには、第2回転体部に、凝固温度から常温まで温度が下がることによって第1回転体部に対する相当の締め付け圧力が発生する。かかる締め付け圧力をもって第1回転体部と第2回転体部とが一体化されているため、熱発生器の発熱時であっても両者の一体化が維持される。
【0017】
【発明の実施の形態】(実施形態1)以下、本発明を車輌の暖房装置に組み込まれる熱発生器に具体化した実施形態1を図1〜図3を参照しつつ説明する。
【0018】図1に示すように、車輌用熱発生器は、中央ハウジング1と、その内側に配されるステータ2と、前側ハウジング3及び後側ハウジング4とを備えている。ステータ2は断面円環状をなす筒体であり、中央ハウジング1はその円筒状のステータ2を内部に収容すべく形成されている。図1に示すように、中央ハウジング1及びステータ2には、その前後両側の開口を封止すべく前側ハウジング3及び後側ハウジング4が、環状のシール材5,6を介して接合されている。そして、中央ハウジング1、ステータ2並びに前側及び後側ハウジング3,4は、複数本の通しボルト(図示しない)によって相互に締め付け固定されており、全体でハウジングを構成している。
【0019】前側及び後側ハウジング3,4が接合されたステータ2の内側には、発熱室7が区画形成される。また、ステータ2の外側周面と中央ハウジング1の内側周面との間には、ウォータジャケット(放熱室)8が区画形成される。本実施形態では、ウォータジャケット8は発熱室7を包囲するように配置されている。
【0020】図1に示すように、中央ハウジング1の外周部には、入水ポート9及び出水ポート10が設けられている。本実施形態では、入水ポート9が中央ハウジング1の最下部に、出水ポート10が中央ハウジング1の最上部にそれぞれ配設されている。車輌用暖房装置は、エンジン31、当該熱発生器および暖房回路32(図示しないヒータコアを含む)によって構成され、これらの間を循環流体(例えばエンジン冷却水)が循環する。そして、入水ポート9はエンジン31からの循環流体をウォータジャケット8に取り入れ、出水ポート10はウォータジャケット8内を一巡した循環流体を暖房回路32に送り出す。
【0021】前側及び後側ハウジング3,4には、軸受け11,12を介して第1回転体部としての駆動軸13が回動可能に支承されている。軸受け11,12はそれぞれシール付きの軸受装置である。前側のシール付き軸受け11は、前側ハウジング3の内周面と駆動軸13の外周面との間に介在され、発熱室7の前方を封止している。又、後側のシール付き軸受け12は、後側ハウジング4の内周面と駆動軸13の外周面との間に介在され、発熱室7の後方を封止している。これにより、発熱室7がハウジング内に区画された液密な内部空間とされている。
【0022】図1に示すように、発熱室7内において駆動軸13上には第2回転体部としての剪断部材14が設けられている。この剪断部材14は、内筒部15と、外筒部16と、連結部17とから構成されている。内筒部15は、駆動軸13を直接取り巻くように設けられている。外筒部16は駆動軸13の回動軸線Xから等距離の位置において前記内筒部15を取り囲むように形成されている。連結部17は、内筒部15及び外筒部16の各中央部を互いに連結している。尚、剪断部材14は主剪断部を構成し、駆動軸13はシャフト部を構成する。そして、駆動軸13と剪断部材14とにより、ロータが構成される。
【0023】ロータは、駆動軸13を剪断部材14の中心に鋳ぐるむこと(鋳造)で形成されている。そのため、剪断部材14と駆動軸13とは互いに強固に固定され、剪断部材14は駆動軸13と共に一体回転する。尚、剪断部材14が駆動軸13を鋳ぐるむ手順については後述する。
【0024】図1及び図2に示すように、駆動軸13は、内筒部15と接する部位において一体形成された複数の突起18を有している。かかる突起18は、駆動軸13の半径方向に向けて突出形成され、駆動軸13の周方向において複数(本実施例では6つ)設けられている。
【0025】発熱室7の内部形状は前記外筒部16の外形状にほぼ対応している。それ故、外筒部16の外側周面に対向する発熱室7の内周壁もまた、回動軸線Xから等距離の位置においてそれを取り囲むように形成されている。こうして、外筒部16の外側周面と発熱室7の内周壁との間には、クリアランスCの隙間領域が形成されている。クリアランスCは、数十μm(マイクロメートル)〜数百μmの範囲にある。
【0026】液密な内部空間としての発熱室7内には、粘性流体としてのシリコーンオイルが所要量満たされている。このシリコーンオイルの充填量は、発熱室7の計算内容積から部材占拠容積(発熱室7内において駆動軸13及び剪断部材14の占める体積)を差し引いて得られる自由空間体積の60%〜90%程度となるように決められている。オイル充填量を自由空間体積の6〜9割程度にとどめたのは、発熱によって温度上昇した場合における粘性流体の膨張を考慮したものである。
【0027】図1に示すように、駆動軸13の前端部にはネジ孔19が形成されている。このネジ孔19は、駆動軸13の当該先端部にボルト(図示せず)によってプーリ20(仮想線で示す)を固着するためのものである。このプーリ20は、Vベルト等の動力伝達ベルト21(仮想線で示す)を介して外部駆動源としてのエンジン31と作動連結されている。従って、プーリ20を介してエンジン31の駆動力により駆動軸13及び剪断部材14が回転される。すると、主として前記隙間領域に滞留するシリコーンオイルが剪断部材14の剪断作用を受けて発熱する。この熱はステータ2を介してウォータジャケット8を流れる循環流体に伝達され、該循環流体が再加熱される。そして、出水ポート10から暖房回路32に送り出された循環流体は車室内の暖房等に供される。
【0028】次に、ロータの製造方法について説明する。尚、本実施形態において、駆動軸13の構成材料としては、相対的に熱膨張係数の小さい鉄又は鉄系金属が用いられる。また、剪断部材14の構成材料としては、相対的に熱膨張係数の大きいアルミニウム又はアルミニウム合金が用いられる。従って、駆動軸13の構成材料と剪断部材14の構成材料とを比較した場合、剪断部材14の方が熱膨張係数の大きい材料で構成されていることとなる。
【0029】ロータを製造するには、第一工程として、駆動軸13を製造する。このとき、駆動軸13は、粗加工された状態にある。第二工程として、前記駆動軸13が剪断部材14の鋳造用の型枠の所定位置、即ち、剪断部材14の中心にセットされる。この型枠は剪断部材14の形状に対応するものである。
【0030】第三工程として、前記型枠内に溶融したアルミニウム又はアルミニウム合金を流し込む。このとき、該アルミニウム又はアルミニウム合金の温度は、850℃程度に達している。
【0031】第四工程として、冷却後、型枠を外す。冷却時には、剪断部材14の構成材料と駆動軸13の構成材料との熱膨張係数の格差によって、駆動軸13の構成材料よりも剪断部材14の構成材料が縮むため、剪断部材14には駆動軸13に対する締め付け圧力が生じる。そのため、剪断部材14は駆動軸13に強固に固定され、両者は一体化される。
【0032】第五工程として、一体化された駆動軸13及び剪断部材14の外側周面を研磨する等、熱発生器に装着可能な状態に仕上げられる。次に、駆動軸13に対する剪断部材14の締め付け圧力(第三及び第四工程参照)について説明する。
【0033】図3は、相対的に熱膨張係数の小さな材料として鉄又は鉄系金属、例えば、中炭素鋼(S45C)と、相対的に熱膨張係数の大きな材料としてアルミニウム又はアルミニウム合金、例えば、アルミニウムダイカスト用合金(ADC12)との各熱膨張係数に応じた伸び量を概念的に示している。ちなみに、中炭素鋼(S45C)の熱膨張係数は10.7×10−6[K−1]であり、アルミニウムダイカスト用合金(ADC12)の熱膨張係数は21.0×10−6[K−1]である(日本機械学会編『機械工学便覧』B4材料学工業材料を参照)。
【0034】仮に、中炭素鋼とアルミニウムダイカスト用合金とを、それぞれ常温から850℃まで加熱したとする。両者とも常温では伸び縮みなし(ゼロ)として、常温での始点S1が同じとすると、温度850℃に達したときには、中炭素鋼の伸び量はP1(終点S2)となり、アルミニウムダイカスト用合金の伸び量はP2となる。この両者の伸び量の格差(P2−P1)が、熱膨張係数の異なる2つの部材を高温加熱したときに、隙間K1となって現れる。
【0035】これに対し、中炭素鋼製の駆動軸13をアルミニウムダイカスト用合金で鋳ぐるむ前記第三工程では、中炭素鋼もアルミニウムダイカスト用合金も同じ850℃の状態にあり、このときに、同じ伸び量にあるものとみることができる。即ち、この850℃の状態から常温への冷却を、S2を共通の始点とする冷却工程と考える。すると、温度が下がるにつれて、中炭素鋼の伸び量は、S1とS2とを結ぶ特性線上をS2からS1に向かって変化する。この伸び量変化は、加熱時と全く逆の過程をたどる。他方、温度が下がるにつれて、アルミニウムダイカスト用合金の伸び量は、S2を始点として、加熱時の特性線と平行な線に沿って変化する。その結果、温度が常温に達すると、中炭素鋼の伸び量はゼロ(終点S1)に戻り、アルミニウムダイカスト用合金の伸び量はP3(マイナス値)に減少する。但し、P2≒(P1−P3)の関係が成り立つ。
【0036】このように、中炭素鋼もアルミニウムダイカスト用合金も冷却によって収縮することになるが、両者の縮み量の格差(0−P3)が、熱膨張係数の異なる2つの部材を高温から低温に冷却固化したときに生み出される実質的な締めしろK2となるのである。そして、冷却完了時にはこのK2に相当する分だけの締め付け圧力が剪断部材14から駆動軸13に対して加えられることになる。
【0037】実施形態1の効果を以下に列挙する。
○ 剪断部材14はアルミニウム又はアルミニウム合金からなり、アルミニウム又はアルミニウム合金の熱膨張係数は、駆動軸13を構成する鉄又は鉄系金属の膨張係数よりも大きい。このため、ロータを鋳造により製造するときには、剪断部材14の中心に駆動軸13が鋳ぐるまれる結果、剪断部材14は相当の締め付け圧力をもって駆動軸13を締め付けることとなる。従って、熱発生器の運転時であっても、剪断部材14は駆動軸13に固定されたまま維持され、所望の発熱能力を確保することができる。
【0038】○ 駆動軸13は、剪断部材14の中心に鋳ぐるまれている。このため、駆動軸13に剪断部材14が圧入される場合に比べて、駆動軸13と剪断部材14との結合長をより長く設定することができる。従って、トルク伝達が可能となる駆動軸13と剪断部材14との結合部位が拡がると共に、負荷トルクを均等に分散して担うことができるため、内筒部15の肉厚を薄くすることができる。
【0039】○ 駆動軸13には、複数の突起18が一体形成されている。かかる駆動軸13が、剪断部材14の中心に鋳ぐるまれる結果、各突起18は、内筒部15中心に固定されることとなる。このため、熱発生器の発熱時であっても、駆動軸13と剪断部材14とがずれるおそれはなく、発熱室7内周壁と外筒部16の外周壁との間の微少なクリアランスの設定に狂いが生じるおそれはない。従って、所望の発熱能力を確保することができると共に、駆動軸13と剪断部材14との結合関係をより確実なものとすることができる。
【0040】(変更例)尚、上記実施形態1を次のように変更して具体化することも可能である。
○ 駆動軸13に形成される突起18を、例えばスプライン加工を施す等に変更してもよい。このように構成しても上記実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0041】○ 上記実施形態1では駆動軸13に複数の突起18を一体形成したが、これらの突起18を省略してもよい。また、上記実施形態1ではかかる突起18を6つ駆動軸13に付与したが、この突起18の数を適宜に変更してもよい。このように構成しても上記実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0042】○ 上記実施形態1におけるロータの製造方法で、第三工程のアルミ成形途中に加圧を行ってもよい。このように構成しても上記実施形態1と同様の効果を得ることができる。
(実施形態2)図4及び図5は、本発明の実施形態2に従う熱発生器用ロータを示す。この熱発生器用ロータが装着される熱発生器は、前記実施形態1と基本構成を同じくする一方、第1及び第2回転体部の構成が相違する。従って、この相違点を中心に説明する。
【0043】図4に示すように、前側ハウジング3には、シール付き軸受け11を介して第1回転体部としての前側駆動軸41が回動可能に支承されている。かかる前側駆動軸41の後端部は発熱室7内に突出すると共に、前側駆動軸41の半径方向に延びる前側円盤部42と、この前側円盤部42の周縁部であって後方に延びる前側結合部43とを有している。前側円盤部42には複数の前側連通孔44が形成されている。前側連通孔44は、前側駆動軸41と平行に延び、且つ前側円盤部42を貫通している。また、前側結合部43には、その外側周面に凹状の前側切り欠45が周方向に所定間隔をおいて複数設けられている。
【0044】一方、後側ハウジング4には、シール付き軸受け12を介して第1回転体部としての後側駆動軸46が回動可能に支承されている。かかる後側駆動軸46の前端部は発熱室7内に突出すると共に、後側駆動軸46の半径方向に延びる後側円盤部47と、この後側円盤部47の周縁部であって前方に延びる後側結合部48とを有している。後側円盤部47には複数の後側連通孔49が形成されている。後側連通孔49は、後側駆動軸46と平行に延び、且つ後側円盤部47を貫通している。また、後側結合部48には、その外側周面に凹状の後側切り欠50が周方向に所定間隔をおいて複数設けられている。
【0045】尚、前側駆動軸41と後側駆動軸46とは、同一回動軸線X上に並ぶように配置されている。図4に示すように、中央剪断部51は、筒状に形成され、前記両結合部43,48間に保持されている。この中央剪断部51は、その外側周面が前側及び後側結合部43,48の外側周面と面一になるように形成されている。前側結合部43、後側結合部48及び中央剪断部51によって形成されるロータの外側周面は、発熱室7の内部形状にほぼ対応しており、発熱室7の内周壁との間には、クリアランスC1の隙間領域が形成されている。クリアランスC1は、数十μm(マイクロメートル)〜数百μmの範囲にある。尚、中央剪断部51は主剪断部を構成し、前側及び後側駆動軸41,46はシャフト部を構成する。そして、中央剪断部51と前側及び後側駆動軸41,46とにより、ロータが構成される。
【0046】前側円盤部42の前端面及び後側円盤部47の後端面と、それらに対向する発熱室7の内壁との間には、それぞれクリアランスC2の隙間領域が形成されている。この熱発生器はC1≪C2となるように設計されている。このため、クリアランスC1の隙間領域が主たる剪断発熱領域となり、クリアランスC2の隙間領域では、ほとんど剪断発熱は生じない。従って、中央剪断部51が主剪断部を構成することとなる。
【0047】液密な内部空間としての発熱室7内には、粘性流体としてのシリコーンオイルが所要量満たされている。尚、発熱室7内において、両クリアランスC1,C2以外の領域、即ち、前側円盤部42の後端面、後側円盤部47の前端面及び中央剪断部51の内周壁によって囲まれる領域(ロータの内部空間)は、貯留領域Vとして提供されている。
【0048】この中央剪断部51は鋳造により前側駆動軸41と後側駆動軸46との間に形成されている。そのため、中央剪断部51と前側及び後側駆動軸41,46とは互いに固定され、中央剪断部51は、前側及び後側駆動軸41,46と共に一体回転する。
【0049】次に、ロータの製造方法について説明する。尚、本実施形態では、製造工程中にロストワックス法が採用される。また、本実施形態においても、前側及び後側駆動軸41,46の構成材料に鉄又は鉄系金属が用いられ、中央剪断部51の構成材料にアルミニウム又はアルミニウム合金が用いられる。
【0050】ロータを製造するには、第一工程として、前側及び後側駆動軸41,46を製造する。このとき、両駆動軸41,46は、粗加工された状態にある。第二工程として、前記両駆動軸41,46が中央剪断部51の鋳造用の型枠の所定位置にセットされる。このとき、前側及び後側結合部43,48の内側領域にはろう模型からなる中子が装填される。
【0051】第三工程として、前記型枠内に溶融したアルミニウム又はアルミニウム合金を流し込む。このとき、該アルミニウム又はアルミニウム合金の温度は、850℃程度に達している。流し込まれたアルミニウム又はアルミニウム合金は、中子に触れることによって、その内周面が冷却され硬化する一方、中子は外周面から溶融する。
【0052】第四工程として、冷却後、型枠を外す。冷却時には、中央剪断部51の構成材料と前側及び後側駆動軸41,46の構成材料との熱膨張係数の格差によって、両駆動軸41,46の構成材料よりも中央剪断部51の構成材料が縮むため、中央剪断部51には両駆動軸41,46に対する締め付け圧力が生じる。そのため、中央剪断部51と両駆動軸41,46とは一体化される。
【0053】第五工程として、一体化された中央剪断部51及び両駆動軸41,46の外側周面を研磨する等、熱発生器に装着可能な状態に仕上げられる。実施形態2の効果を以下に列挙する。
【0054】○ 実施形態1と同様、中央剪断部51は相当の締め付け圧力をもって前側及び後側駆動軸41,46を締め付けることとなる。従って、熱発生器の運転時であっても、中央剪断部51と両駆動軸41,46とは、強固に固定されたまま維持され、所望の発熱能力を確保することができる。
【0055】○ 前側及び後側駆動軸41,46には、それぞれ外側周面に凹状の切り欠45,50が形成されている。かかる両駆動軸41,46が、中央剪断部51に鋳ぐるまれる結果、各切り欠45,50は、中央剪断部51の前後端部にくい込まれることとなる。このため、熱発生器の発熱時であっても、両駆動軸41,46と中央剪断部51との結合関係が害されるおそれはない。従って、設定されたクリアランスC1,C2を一定に維持することができ、所望の発熱能力を確保することができる。
【0056】○ 両駆動軸41,46及び中央剪断部51が回転されると、貯留領域Vから前側又は後側連通孔44,49を介したクリアランスC1領域へのオイルの供給と、クリアランスC1領域から前側又は後側連通孔44,49を介した貯留領域Vへのオイルの回収とが断続的に行われることになる。こうしたオイル循環が構築されるため、特定のシリコーンオイルのみがクリアランスC1領域で剪断作用に供されて劣化するという事態を回避することができる。尚、各連通孔44,49は、両駆動軸41,46及び中央剪断部51の回転方向によってクリアランスC1領域へのオイル供給通路又は回収通路に決められる。
【0057】○ 両駆動軸41,46及び中央剪断部51によって囲まれる領域は、シリコーンオイルの貯留領域Vとして提供されている。従って、剪断作用に供されるシリコーンオイルの絶対量を多く確保することができるため、オイル劣化を極力遅らせ、熱発生器としての発熱性能を好適に持続させることができる。
【0058】(変更例)尚、上記実施形態2を次のように変更して具体化することも可能である。即ち、上記実施形態2では、前側及び後側結合部43,48に複数の前側及び後側切り欠45,50が形成されたが、これらの両切り欠45,50を省略してもよい。
【0059】(用語の定義) 本明細書で言う「粘性流体」とは、円筒状又は円盤状のロータの剪断作用を受けて流体摩擦に基づく熱を発生するあらゆる媒体を意味するものであり、高粘度の液体や半流動体に限定されず、ましてやシリコーンオイルに限定されるものではない。
【0060】
【発明の効果】以上詳述したように、各請求項に記載の車輌用熱発生器によれば、剪断部材を駆動軸に対して圧入固定するという製造手法を採ることで生じていた不都合を回避して、ロータ設計の自由度を高めることができるという効果を奏する。
【出願人】 【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機製作所
【出願日】 平成10年(1998)6月8日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
【公開番号】 特開平11−348544
【公開日】 平成11年(1999)12月21日
【出願番号】 特願平10−159278