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【発明の名称】 パイル材
【発明者】 【氏名】松本 信行

【氏名】加藤 正勝

【要約】 【課題】パイル糸の脱落が防止された剛性のあるパイル材を提供する。

【解決手段】樹脂製の繊維で形成した基布4と、基布4に植え付けられたパイル糸6と、パイル糸6の植え付け基部8に対して形成されたパイル糸固定部10と、基布4を形成繊維樹脂と相溶性のある樹脂で形成され、前記パイル植え付け基部側を被覆する押出し成形層12とを備えているパイル材2とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】樹脂製の繊維で形成した基布と、基布に植え付けられたパイル糸と、パイル糸の植え付け基部に対して形成されたパイル糸固定部と、基布を形成する繊維樹脂と相溶性のある樹脂で形成され、前記パイル植え付け基部側を被覆する押出し成形層、とを備えたことを特徴とするパイル材。
【請求項2】請求項1に記載のパイル材において、前記基布がポリプロピレン系繊維からなり、前記押出し成形層がポリプロピレン系樹脂からなり、前記パイル糸が、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、及びポリプロピレン系繊維から選択される1種類または2種類以上の繊維で形成されていることを特徴とするパイル材。
【請求項3】請求項1または2に記載のパイル材において、パイル糸が植え付けされた基布のパイル糸植え付け基部に対して、粘度が5〜1000cpsの接着剤が付与されてパイル糸固定部が形成されていることを特徴とするパイル材。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、パイル糸と基布と被覆層とから形成されるパイル材に関し、詳しくは、パイル材の基布側に剛性があるとともに、パイル糸の脱落が防止されたパイル材に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、パイル糸と基布とから構成されるパイル材は、アルミサッシや、シャッター、網戸等の気密材、さらには、掃除機用のブラシ材として広く使われている。かかるパイル材のうち、(1)アルミサッシやシャッター用のパイル材としては、ポリプロピレン系(PP系)樹脂のパイル糸が、PP系繊維で形成した基布に織り込まれて形成されており、さらに、この基布の裏面(パイル糸が植え付け部が形成され、立毛されていない面)側に、硬質PP系樹脂が層状に押出しコーティングされて形成された層体構造となっている。かかる層体構造においては、パイル糸と基布とコーティング層とは、いずれもPP系樹脂からなって相溶性がよいため、押出しコーティングによりパイル糸が基布に良好に一体化されて、パイル糸の脱落が防止されるとともに、硬質のPP系樹脂により基布側に良好な剛性が付与される。基布側に剛性があると、サッシ等の細長いガイド部への挿入性が良好となり、装着作業性がよいパイル材が提供される。
【0003】また、特に、パイル糸に復元性と耐久性が要求される(2)網戸に用いられるパイル材としては、ナイロン(ポリアミド系樹脂)製のパイル糸が、PP系繊維で形成した基布に織り込まれて形成されており、この基布の裏面側に、硬質PP系樹脂が層状に押出しコーティングされて形成されている。かかるパイル材では、パイル糸に良好な特性が付与されているとともに、基布とコーティング層とが良好に一体化されて、硬質のPP系樹脂により基布側に良好な剛性が付与される。さらに、(3)掃除機の吸い取り口に取り付けるブラシに用いるパイル材は、ナイロン製のパイル糸が、PP系繊維で形成した基布に織り込まれ、基布の裏面側にパイル糸抜け防止として、アクリル系、酢酸ビニル系、エチレン−酢酸ビニル系、ウレタン系等のエマルジョンがコーティングされて層を形成している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、(1)のパイル材においては、パイル糸の脱落が十分に防止され、装着作業性が良好であるものの、パイル糸の材質がPP系樹脂であるために、パイル糸の耐久性や復元性が不十分である場合もあった。また、(2)のパイル材においては、パイル糸の特性及び装着作業性は良好であってもパイル糸を構成するナイロンとPP系樹脂との相溶性が小さいため、パイル糸の脱落を回避できない。さらに、(3)のパイル材においては、パイル糸の特性は良好であって、脱落も防止されているが、コーティング層が軟質樹脂であるために基布側に剛性がなく装着作業性が悪かった。そこで、本発明では、これら従来のパイル材における問題を一挙に解決するべく、所望の特性のパイル糸を備えるとともに、その脱落が防止され、パイル材の基布側に剛性を備えたパイル材を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記した課題を達成するために、パイル糸の基布への植え付け基部を固定化する手段を別個に設けるとともに、基布との相溶性を備えた押出し成形層で基布の裏面をコーティングすることにより上記した目的を達成できることを見いだし、本発明を完成した。すなわち、請求項1に記載の発明は、樹脂製の繊維で形成した基布と、基布に植え付けられたパイル糸と、パイル糸の植え付け基部に対して形成されたパイル糸固定部と、基布を形成する繊維樹脂と相溶性のある樹脂で形成され、前記パイル植え付け基部側を被覆する押出し成形層、とを備えたことを特徴とするパイル材である。
【0006】本明細書においてパイル糸の植え付け基部とは、パイル糸を基布を構成する糸に掛け止めして形成したパイル糸のループ部分をいう。植え付け基部は、基布のパイル糸が立毛される側とは反対面に形成されている。この発明によると、パイル糸の植え付け基部は、パイル糸固定部により、基布からの抜け止めが図られている。また、パイル糸はかかる固定部により基布に固定されるので、別途押し出し成形層によって固定される必要がないため、押し出し成形層の材料との相溶性に関わらず脱落が防止されている。さらに、基布のパイル糸植え付け基部側が基布と相溶性のある樹脂で形成された押出し成形層により被覆されているので、基布と押出し成形層との一体性が得られ、押出し成形層によりパイル材の基布側に剛性が付与される。なお、本明細書において、相溶性とは、材料と材料とが接触する面においてなじみあう性質をいうものとする。
【0007】請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のパイル材において、前記基布がポリプロピレン系繊維からなり、前記押出し成形層がポリプロピレン系樹脂からなり、前記パイル糸が、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、及びポリプロピレン系繊維から選択される1種類または2種類以上の繊維で形成されていることを特徴とするパイル材である。この発明によると、ブラシ材として良好な特性のパイル糸を備えて脱落も防止され、基布側の剛性が優れたパイル材が得られる。
【0008】請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のパイル材において、パイル糸が植え付けされた基布のパイル糸植え付け基部に対して、粘度が5〜1000cpsの接着剤が付与されてパイル糸固定部が形成されていることを特徴とするパイル材である。この発明によると、パイル糸の植え付け基部に前記粘度範囲の接着剤が付与されると、速やかにパイル糸の植え付け基部に接着剤がゆきわたり、少量の接着剤で、しかも速やかにパイル糸の植え付け基部が固定される。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につき、本発明のパイル材の製造工程の一例を図1ないし図4に示して詳細に説明する。なお、図1ないし図4は、特に、細長いテープ状のパイル材2を効率よく製造するための一例であり、一つの基布4に対してパイル糸6を植えつけた列を複数本形成したパイル地3を形成し、パイル糸固定部10及び押出し成形層12を備えたパイル材2を形成し、その後、各パイル列ごとに切断し、テープ状のパイル材を得る工程を示している。
【0010】本発明のパイル材2は、例えば、図1(c)に示すように、基布4と、基布4に植え付けられたパイル糸6とで形成されたパイル地3と、パイル糸固定部10と、基布4の裏面をコーティングする押出し成形層12とから構成されている。本発明のパイル材2で用いるパイル地3の基布4は、その材質を特に限定することなく用いることができる。ただし、押出し成形層12を形成する樹脂との関係で、押し出し成形層12に使用する樹脂と相溶性のある樹脂製の繊維で形成する必要がある。例えば、押出し成形層の材質として、PP系樹脂を選択した場合には、基布4を形成する繊維として、PP系樹脂と相溶性のある樹脂製の繊維を選択する。この場合、PP系樹脂と相溶性のある樹脂製繊維としては、オレフィン系繊維をを挙げることができる。好ましくは、PP系繊維である。
【0011】パイル糸6は、その材質を特に限定することなく用いることができる。パイル糸6としては、耐摩耗性、復元性等が良好なポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、アクリル系繊維等を用いることが好ましい。パイル糸6の材質は、1種類でもよいし、2種類以上を併せて使用してもよい。特に、ポリアミド系繊維で形成されるパイル糸6は、復元性と耐久性に優れているので、アルミサッシや網戸やシャッターの気密材、あるいは掃除機の吸い取り口のブラシ材としてのパイル材のパイル糸として好適である。また、パイル糸6の太さも特に限定することなく用いることができる。パイル糸6は、束になった状態で、基布4に対して従来公知の方法により植え付けされる。基本的には、基布4を構成する糸(地糸)4a(よこ糸)にパイル糸6の束を引っ掛けるようにして植え付けされる。したがって、パイル糸6の植え付け基部8は、基布4の裏面(パイル糸が立毛されてない面)側にループ状に形成される。
【0012】このようにして基布4とパイル糸8からパイル地3が形成されている。パイル地3における、パイル糸6の植え付け状態は、通常は、基布4の表面に均一な密度となっている。ただし、得ようとするパイル材2の形態によってパイル糸6の植え付け状態を変えることができる。また、効率的なパイル材の製造のために、図2に示すように、得ようとするパイル材2が細長いテープ状であれば、図2に示すように、一つのパイル地3において、最終工程での裁断により複数本のテープ状のパイル材2を取得できるように、基布4の表面にライン状にパイル糸6を植え付けすることができる。
【0013】このように形成したパイル地3の、パイル糸6が立毛されない側においては、パイル糸植え付け基部8が表面に形成されている。このパイル糸植え付け基部8に対して、パイル糸固定部10を形成するには、このパイル糸植え付け基部8に接着剤を付与して、パイル糸植え付け基部8を束状に接着固化するか、あるいはこの固化と同時にパイル糸6を基布4に接着固定する(図1(b)参照)。パイル糸固定部10によれば、押し出し成形層12との相溶性によらずに、パイル糸6を基布4に固定することができる。効果的にパイル糸植え付け基部8を固化して抜け止めするには、パイル糸6と相溶性のある接着剤を用いることが好ましい。さらに、好ましくは、パイル糸6との相溶性に加えて、基布4との相溶性及び/又は押出し成形層12との相溶性を備えていることである。接着剤が基布4との相溶性を備えている場合、パイル糸固定部10により、パイル糸植え付け基部8は、基布4に良好に一体化され、接着剤が押出し成形層12との相溶性を備えている場合、パイル糸固定部10によりパイル糸植え付け基部8は押出し成形層12に良好に一体化される。接着剤が基布4及び押し出し成形相12との相溶性を備えていると、パイル糸固定部10により、パイル糸植え付け基部8は、基布4と押し出し成形相12の双方に良好に一体化される。例えば、パイル糸6がポリアミド系繊維であり、基布4がPP系繊維であり、押出し成形層12がPP系樹脂である場合、接着剤は、好ましくは、ポリアミド系繊維と相溶性を有し、さらに好ましくは、ポリアミド樹脂繊維に対する相溶性とPP系樹脂に対する相溶性とを備えていることが好ましい。この場合、パイル糸固定部10は、パイル糸6、基布4及び押出し成形層12のいずれとも良好に一体化される。
【0014】このようなパイル糸固定部10を形成するための接着剤としては、アクリル系、ウレタン系、合成ゴム系、反応型合成樹脂系、塩素化ポリエチレン系、塩素化PP系、接着性ポリオレフィン系等を用いることができる。
【0015】パイル糸植え付け基部8に接着剤を付与するには、通常の接着剤の付与方法を各種用いることができる。例えば、固定したパイル地3上で接着剤を吐出するノズルNを移動させて、必要な箇所に接着剤を付与したり、あるいは、図3に示すように、連続的に移動するパイル地3上でノズルNを固定して、ライン状のパイル糸植え付け基部8に沿ってライン状に接着剤を付与したりすることができる。また、本発明においては、植え付け基部8に選択的に接着剤を付与してもよいし、また、植え付け基部8を含むより広い部分に対して接着剤を付与してもよい、さらには、基布4の植え付け基部8がある側の面の全体に接着剤を付与してもよい。また、接着剤を速やかにパイル糸6に浸透させるには、接着剤の粘度が5cps以上100cps以下であることが好ましい。この範囲の粘度であると、パイル糸植え付け基部8に接着剤を付与後、パイル糸6に速やかに浸透する。また、接着剤が速やかに固化するので、この後、時間を置かずに、押出し成形層12を重ねることができる。
【0016】次に、図1(c)に示すように、基布4のパイル糸植え付け基部8のある側を被覆する押出し成形層12を形成する。押出し成形層12の樹脂としては、基布4と相溶性のある樹脂を選択する。これにより、押出し成形樹脂は、良好に基布4に一体化される。また、押出し成形層12の剛性が良好にパイル材2に付与される。さらに、押出し成形層12は、接着剤と相溶性を備えていることが好ましい。かかる相溶性を備えていることにより、パイル糸固定部10を、押出し成形層12に良好に一体化できる。押出し成形層12を形成する場合、図4に示すように、押出し口Pの直下をパイル地の植え付け基部側を、押出し成形機の押出し口Pから押し出される樹脂層の押出し速度に対応した速度で押出し方向に沿って移動させる。その後、押出し成形層12が重ねられたパイル地3を、ローラー等で押圧し一体化させる。
【0017】このように押出し成形層12を形成したパイル材2は、パイル糸固定部10によりパイル糸6の抜け止めが防止され、しかも基布4との一体性の良好な押出し成形層12により、パイル材2の基布側に剛性が付与されている。このように形成したパイル材は、基布側に剛性があるために、装着作業性が良好である。また、パイル糸6は、押し出し成形相12によらずに、パイル糸固定部10で固定されているので、押し出し成形層12を構成する材料との相溶性にかかわらず、所望の材質が選択される。したがって、アルミサッシや網戸の気密材、掃除機のブラシ材として好ましいものを提供することができる。
【0018】
【発明の効果】請求項1ないし3に記載の発明によれば、所望の特性のパイル糸の脱落が防止されているとともに、基布側に剛性のあるパイル材となっている。
【出願人】 【識別番号】596024426
【氏名又は名称】槌屋ティスコ株式会社
【出願日】 平成9年(1997)6月12日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 英彦 (外4名)
【公開番号】 特開平11−958
【公開日】 平成11年(1999)1月6日
【出願番号】 特願平9−155192