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【発明の名称】 油圧−空気圧式工具
【発明者】 【氏名】内藤 恭裕

【要約】 【課題】小型軽量で高速且つ高出力の手持ち用工具を提供する。

【解決手段】手持ち式ワイヤ切断機1の作動油タンク4と差動油圧シリンダ3は油圧管路13,22によって接続されている。シリンダ3の伸長側ポートへ通じる管路13に設けた2個の逆止弁19,20の間に増圧シリンダ部16を接続し、増圧シリンダ部のラム18を空気圧シリンダ部2によって駆動する。早送り用トリガレバー36を操作すると、作動油タンク4の空気室4aに空気圧源から圧力空気が導入されて差動油圧シリンダ3のピストン21が高速で前進し、ピストン21に取り付けたカッター刃27が切断対象物に衝突する。増圧用トリガレバー37を操作すると、空気圧シリンダ部2が起動してラム18を往復駆動し、作動油が増圧されてピストン21が高推力で前進し、カッター刃26,27がボルトやワイヤ等を切断する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 手持ち用油圧−空気圧式工具であって、前後にポートを有するシリンダにフリーピストンを内蔵し、フリーピストンの前面側に作動油を充填し、ピストン背面側に空気圧管路を接続して作動油を吸排するシリンダ形作動油タンクと、ドライバやカッター刃等のツールが装着される差動油圧シリンダと、油圧増圧用の空気圧シリンダとを有し、作動油タンクの作動油ポートからの油圧管路を分岐して差動油圧シリンダの前後のポートのそれぞれに接続し、作動油タンクと差動油圧シリンダの伸長側ポートとを接続する一方の油圧管路に、作動油タンクへの流れを阻止する2個の逆止弁を直列接続し、2個の逆止弁の間の油圧管路に増圧シリンダ部を接続し、増圧シリンダ部のラムを空気圧シリンダによって駆動するように形成するとともに、作動油タンク並びに空気圧シリンダの2系統の空気圧回路にそれぞれトリガバルブ及びトリガレバーを設け、差動油圧シリンダのピストンの早送り駆動と増圧駆動とができるようにした油圧−空気圧式工具。
【請求項2】 上記2系統の空気圧回路のトリガバルブを操作する一つのトリガレバーを設け、早送り用トリガバルブの動作ストロークよりも増圧用トリガバルブの動作ストロークを長く設定し、トリガレバーを一段階引くことにより早送り用トリガバルブが切換わり、トリガレバーをさらに一段階引くことによって増圧用トリガバルブが切換わるように形成した請求項1記載の油圧−空気圧式工具。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、動力工具に関するものであり、特に、油圧と空気圧とを利用する油圧−空気圧式工具に関するものである。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】従来、釘打ち機等の手持ち動力工具は、空気圧を動力源としたものが一般的である。しかし、空気シリンダで直接ドライバを駆動する釘打ち機等よりも高出力を要求される動力工具(例えば手持ち式ワイヤ切断機等)を空気圧駆動方式で実現する場合は、従来の構成では出力不足であり別種の駆動機構が必要になる。高出力が得られる駆動方式としては、空気圧モータと減速ギヤ機構を利用した構成等が考えられるが、この場合はトルクの増大に伴って空気消費量が増大するとともに動作速度が低下することになる。
【0003】また、空気圧を使用して油圧ポンプを往復駆動し、高圧の油圧をシリンダ内に供給して高出力の仕事をさせる工具も出現しているが、この種の工具では油圧ポンプが出力する圧力油で油圧シリンダを駆動しているため、動作速度が遅く作業性が悪い。更に、油圧シリンダに取り付けた刃物等が実際に仕事をする行程以外の無負荷行程においても油圧ポンプを連続して駆動しているので、油圧ポンプを駆動するエアコンプレッサの空気消費量が多いという問題を有している。
【0004】そこで、空気の消費量が少なく、動作速度が高速の高出力工具を提供するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明は上記課題を解決することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】この発明は、上記目的を達成するために提案するものであり、手持ち用油圧−空気圧式工具であって、前後にポートを有するシリンダにフリーピストンを内蔵し、フリーピストンの前面側に作動油を充填し、ピストン背面側に空気圧管路を接続して作動油を吸排するシリンダ形作動油タンクと、ドライバやカッター刃等のツールが装着される差動油圧シリンダと、油圧増圧用の空気圧シリンダとを有し、作動油タンクの作動油ポートからの油圧管路を分岐して差動油圧シリンダの前後のポートのそれぞれに接続し、作動油タンクと差動油圧シリンダの伸長側ポートとを接続する一方の油圧管路に、作動油タンクへの流れを阻止する2個の逆止弁を直列接続し、2個の逆止弁の間の油圧管路に増圧シリンダ部を接続し、増圧シリンダ部のラムを空気圧シリンダによって駆動するように形成するとともに、作動油タンク並びに空気圧シリンダの2系統の空気圧回路にそれぞれトリガバルブ及びトリガレバーを設け、差動油圧シリンダのピストンの早送り駆動と増圧駆動とができるようにした油圧−空気圧式工具を提供するものである。
【0006】また、上記2系統の空気圧回路のトリガバルブを操作する一つのトリガレバーを設け、早送り用トリガバルブの動作ストロークよりも増圧用トリガバルブの動作ストロークを長く設定し、トリガレバーを一段階引くことにより早送り用トリガバルブが切換わり、トリガレバーをさらに一段階引くことによって増圧用トリガバルブが切換わるように形成した油圧−空気圧式工具を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の一形態を図に従って詳述する。図1は油圧−空気圧式工具の一例として、ボルトやワイヤを切断するための手持ち式ワイヤ切断機1を示し、空気圧シリンダ部2の前部に差動油圧シリンダ3を連結し、差動油圧シリンダ3へ作動油を供給するための作動油タンク4は、空気圧シリンダ部2の前部から横へ突出するグリップ部5に内蔵している。
【0008】グリップ部5の端部にはエアホースコネクタ取付け用のネジ穴6が形成され、エアホース(図示せず)を通じてエアコンプレッサから供給される圧縮空気は、グリップ部5内の空気圧主管路7を通じて空気圧シリンダ部2のシリンダチューブ8と、シリンダチューブ8を覆う外筒9との間のエアチャンバ10へ供給される。また、図1においてグリップ部5の背面側下部には、空気圧主管路7から作動油タンク4の底部ポートへ通じる空気圧管路11が形成され、この空気圧管路11の途中にパイロット操作式の早送り用切換弁(図示せず)が設けられている。
【0009】作動油タンク4内にはフリーピストン12が挿入されており、フリーピストン12の下面側空気室4aに圧力空気を供給すると、フリーピストン12が上昇してフリーピストン12の上面側油室4bに充填されている作動油が油圧主管路13へ排出される。
【0010】作動油タンク4と差動油圧シリンダ3を接続する油圧主管路13は、グリップ部5に設けた上下二つのトリガバルブ14,15の背面側を通り、空気圧シリンダ部2の前部に形成した小径の増圧シリンダ部16と交差している。油圧主管路13に連通する増圧シリンダ部16には空気圧ピストン17に連結したラム18が挿入されており、作動油は増圧シリンダ部16を通って流れる。また、油圧主管路13には、作動油タンク4側からみて増圧シリンダ部16の上流と下流とにそれぞれ作動油タンク4への流れを阻止する逆止弁19,20が挿入されている。
【0011】差動油圧シリンダ3の内径は、ヘッド側端部から中間部までの後半部3aが油圧ピストン21に合致する寸法で、中間部から先端部までの前半部3bの径はピストン径よりも大径となっており、油圧主管路13の逆止弁19よりもタンク側上流から分岐した油圧管路22を差動油圧シリンダ3の前半部3bに接続して差動油圧回路を構成している。
【0012】油圧ピストン21には前後に貫通する通路21aが形成され、通路21a中にバネオフセット式常時開放形のポペットバルブ23が挿入されている。また、油圧ピストン21は差動油圧シリンダ3に内蔵した圧縮コイルバネ24によって収縮方向へ付勢されている。
【0013】差動油圧シリンダ3の前端部に設けたノーズ部25には凹形の固定カッター刃26を取付け、油圧ピストン21のロッドの先端に取付けたカッター刃27が前方へ駆動されて固定カッター刃26の凹部を横断し、凹部内に挿入されたボルトやワイヤ等を剪断する。
【0014】図2の油圧−空気圧回路図に示すように、グリップ部5の上側に配置した増圧用トリガバルブ14は、空気圧シリンダ部2の主切換弁28を制御し、下側の早送り用トリガバルブ15は、前述したグリップ部5の下部の早送り用切換弁29を制御するように構成している。
【0015】空気圧シリンダ部2の基本的構成は従来の空気釘打ち機とほぼ同様であり、図3に拡大して示すように、シリンダチューブ8の外周にリング形の複切換弁30が装着され、エアチャンバ10内にリング形の主切換弁28が配置されている。
【0016】エアチャンバ10は主切換弁28によって前後2室に隔てられ、主切換弁28の背面側(図3において右側)のエアチャンバは、パイロット管路31を通じて増圧用トリガバルブ14に接続している。図3において、主切換弁28は起動状態である開放位置にあり、待機状態では同図に示す開放位置から前進して前方のシート32に圧接し、シリンダチューブ8とエアチャンバ10との間の空気通路を遮断する。
【0017】増圧用トリガバルブ14を操作すると、主切換弁28の背面に作用している圧力空気が増圧用トリガバルブ14を通じて大気に排出され、図3に示すように主切換弁28が後退してエアチャンバ10の高圧空気がシリンダチューブ8内に流入し、空気圧ピストン17が前進駆動される。
【0018】そして、図4に示すように、空気圧ピストン17から後方へ延びるピストンロッド33の後端部外周面に装着したOリング34が、シリンダチューブ8に形成した通気口8aの位置に達すると、複切換弁30の背面に作用している圧力空気が大気に排出されて、図5に示すように複切換弁30が後退する。これにより、空気圧ピストン17の背面に作用している圧力空気がシリンダチューブ8の通気口8bと複切換弁30を通じて大気に排出され、空気圧ピストン17は圧縮コイルバネ35の弾発力により後退する。
【0019】そして、図6に示すように、ピストンロッド33が初期位置に戻ると、シリンダチューブ8の通路8aを通じて複切換弁30の背面に圧力空気が導入され、複切換弁30が図3に示す位置へ前進し、再びエアチャンバ10からシリンダチューブ8へ圧力空気が供給されて空気圧ピストン17が前進を開始し、増圧用トリガバルブ14の操作を解除するまで空気圧ピストン17が高速で往復運動する。
【0020】次に、ワイヤ切断機1の全体的な動作を説明する。図1に示す早送り用トリガレバー36を操作すると早送り用トリガバルブ15が開き、図2に示した早送り用切換弁29が開位置に切換わり、作動油タンク4の空気室4aに高圧空気が導入されて油室4bから作動油が排出される。そして、油圧ピストン21の前後の受圧面積の差によって、作動油タンク4からの吐出油と差動油圧シリンダ3のピストンロッド側の油が、逆止弁19,20を通じて油圧ピストン21の背面側に供給され、油圧ピストン21が高速で前進する。
【0021】そして、図1に示す増圧用トリガレバー37を操作すると、増圧用トリガバルブ14が開いて空気圧シリンダ部2の主切換弁28が開位置に切換わり、シリンダチューブ8に高圧空気が供給されてラム18が前進し、増圧シリンダ部16内の作動油を圧縮する。増圧シリンダ部16内の作動油は、増圧シリンダ部16の上流に配置した逆止弁19の作用によって差動油圧シリンダ3へ圧送され、続くラム18の後退行程においては作動油タンク4から逆止弁19を通じて増圧シリンダ部16内に作動油が吸入される。そして、空気圧シリンダ2の駆動推力によって生じる油圧は、ラム18の断面積と油圧ピストン21の受圧面積との比率に従って増圧され、油圧ピストン21を高推力で前進させる。
【0022】また、ラム18の往復行程を通じて、作動油は作動油タンク4のフリーピストン12によって加圧されているので、ラム18が後退する作動油吸入行程において作動油にキャビテーションが発生することもない。
【0023】そして、油圧ピストン21が差動油圧シリンダ3の前半部3bに達すると、前半部3bは油圧ピストン21よりも大径であるから、油圧ピストン21の前後の油室が連通して前後両面の油圧が平衡し、油圧ピストン21が停止する。
【0024】増圧用トリガレバー37の操作を解除すると、空気圧シリンダ部2の主切換弁28が閉位置に切換わって、空気圧ピストン17は初期位置に後退して停止する。早送り用トリガレバー36の操作を解除すると、早送り用切換弁29が閉位置に切換わって作動油タンク4の空気室4aに供給されている圧縮空気が大気に排出され、圧縮コイルバネ26によって油圧ピストン21が収縮方向へ押され、油圧ピストン21のポペットバルブ25が開いて背面側の作動油が前面側へ流れ、油圧ピストン21が初期位置に後退して停止する。
【0025】実際にワイヤ切断機1を使用する際は、ノーズ部の固定カッター刃26の凹部内にワイヤ等を挿入し、早送り用トリガレバー36を操作すれば、差動油圧シリンダ3に装着した可動カッター刃27が高速で前進してワイヤ等に突き当たって停止する。続いて、増圧用トリガレバー37を操作すれば可動カッター刃27が低速高推力で前進してワイヤ等が剪断される。
【0026】図7は請求項2記載の発明の実施形態を示し、早送り用トリガバルブ15と増圧用トリガバルブ14を一つのトリガレバー38で操作するように構成したものである。
【0027】トリガレバー38は二つのトリガバルブ14,15の上方部位に枢着されて先端部は下方に垂下し、トリガレバー38の背面に二つのトリガバルブ14,15のステム14a,15aが位置している。上側の増圧用トリガバルブ14のステム14aは、下側の早送り用トリガバルブ15のステム15aよりも突出長が短く、図7に示す待機状態からトリガレバー38を操作したときに、図8に示すように、先ず早送り用トリガバルブ15が開き、さらにトリガレバー38を引くと、図9に示すように、早送り用トリガバルブ15に遅れて増圧用トリガバルブ14が開くように形成している。したがって、前述したカッター刃の早送り操作と、増圧による剪断操作とが一つのトリガレバー38で操作でき、操作性が極めて良好である。
【0028】また、図示は省略するが、2個のトリガバルブを直列接続した形状の1軸2回路のトリガバルブであって2回路の動作ストロークをそれぞれ相違させたトリガバルブを設け、このトリガバルブと一つのトリガレバーにより、上記の例と同様に早送り用トリガバルブ15と増圧用トリガバルブ14を段階的に操作できるように構成してもよい。
【0029】尚、この発明は上記の実施形態に限定するものではなく、この発明の技術的範囲内において種々の改変が可能であり、この発明がそれらの改変されたものに及ぶことは当然である。
【0030】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の油圧−空気圧式工具は、トリガレバーの操作により作動油タンクへ圧力空気を供給すれば、差動油圧シリンダの増速作用によりピストンが高速で前進し、ピストンロッドに装着したドライバやカッター刃等のツールが加工対象物に達するまでの時間を短縮できるとともに、減速機構を介した空気圧機器や、油圧ポンプを空気圧で駆動する構成の油圧機器よりも圧力空気の消費量が少なく能率的である。また、増圧用空気圧シリンダへ圧力空気を供給すれば、空気圧源の圧力がより高圧の油圧に変換されて従来の空気圧式工具では不可能であった高出力が得られる。
【0031】また、油圧ポンプの吸入回路等のように回路の一部に負圧が発生する油圧回路においては、負圧により発生するキャビテーションが問題になる場合が多いが、本発明の油圧−空気圧式工具は、作動時に作動油が常時空気圧により加圧されているため、キャビテーションが発生することもなく、油圧工具等よりも小型軽量で取り扱いが容易な高出力工具を実現でき、種々の高出力工具の分野に適用することができる。
【0032】また、請求項2記載の発明は、一つのトリガレバーで油圧シリンダのピストンの早送り駆動と増圧駆動とを操作できるので、操作性が極めて良好である。
【出願人】 【識別番号】000006301
【氏名又は名称】マックス株式会社
【出願日】 平成10年(1998)3月4日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】林 孝吉
【公開番号】 特開平11−245177
【公開日】 平成11年(1999)9月14日
【出願番号】 特願平10−51658