トップ :: B 処理操作 運輸 :: B24 研削;研磨

【発明の名称】 ダイヤモンド砥石外周刃及びダイヤモンド砥石内周刃
【発明者】 【氏名】山村 和市
【氏名】島田 忠克
【氏名】平沢 秀夫
【課題】変形が少なく、切断精度が高く、切断加工代が小さくかつ耐久性に優れたダイヤモンド砥石外周刃及びダイヤモンド砥石内周刃を提供する。

【解決手段】ダイヤモンド砥石外周刃において、該ダイヤモンド砥石外周刃はセラミックス等の切断用であって、該外周刃を構成する台板が超硬合金から成り、かつ該台板外周の切り刃部はダイヤモンド系砥粒粉末が体積率で10〜80%含有されているものであるダイヤモンド砥石外周刃。及び、ダイヤモンド砥石内周刃において、該内周刃を構成する台板が超硬合金から成り、かつ該台板内周の切り刃部はダイヤモンド系砥粒粉末が体積率で10〜80%含有されているものであるダイヤモンド砥石内周刃。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ダイヤモンド砥石外周刃において、該ダイヤモンド砥石外周刃はセラミックス切断用であって、該外周刃を構成する台板が超硬合金から成り、かつ該台板外周の切り刃部はダイヤモンド系砥粒粉末が体積率で10〜80%含有されているものであることを特徴とするダイヤモンド砥石外周刃。
【請求項2】 ダイヤモンド砥石外周刃において、該ダイヤモンド砥石外周刃はSi34 、AlN、SiC、ジルコニア、アルミナ、サイアロン、ムライト、スピネル、コージェライト、マグネシア、合成石英、天然石英、半導体シリコン単結晶、化合物半導体、及び酸化物単結晶切断用であって、該外周刃を構成する台板が超硬合金から成り、かつ該台板外周の切り刃部はダイヤモンド系砥粒粉末が体積率で10〜80%含有されているものであることを特徴とするダイヤモンド砥石外周刃。
【請求項3】 前記台板の超硬合金のヤング率が45000〜70000kgf/mm2 であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のダイヤモンド砥石外周刃。
【請求項4】 前記切り刃部のダイヤモンド系砥粒粉末が天然または合成工業用ダイヤモンドの粉末、cBN粉末、またはこれらの混合物から成り、その平均粒径が、10〜500μmであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のダイヤモンド砥石外周刃。
【請求項5】 前記外周刃の台板の外径が800mm以下であり、かつ厚みが0.1〜1.6mmの薄板から成ることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のダイヤモンド砥石外周刃。
【請求項6】 請求項1ないし請求項5に記載のダイヤモンド砥石外周刃を用いて材料を切断することを特徴とする材料を切断する方法。
【請求項7】 ダイヤモンド砥石内周刃において、該内周刃を構成する台板が超硬合金から成り、かつ該台板内周の切り刃部はダイヤモンド系砥粒粉末が体積率で10〜80%含有されているものであることを特徴とするダイヤモンド砥石内周刃。
【請求項8】 前記ダイヤモンド砥石内周刃は、セラミックス、Si34、AlN、SiC、合成石英、天然石英、半導体シリコン単結晶、化合物半導体、及び酸化物単結晶切断用であることを特徴とする請求項7に記載のダイヤモンド砥石内周刃。
【請求項9】 前記台板の超硬合金のヤング率が45000〜70000kgf/mm2 であることを特徴とする請求項7または請求項8に記載のダイヤモンド砥石内周刃。
【請求項10】 前記切り刃部のダイヤモンド系砥粒粉末が天然または合成工業用ダイヤモンドの粉末、cBN粉末、またはこれらの混合物から成り、その平均粒径が、10〜500μmであることを特徴とする請求項7ないし請求項9のいずれか1項に記載のダイヤモンド砥石内周刃。
【請求項11】 前記内周刃の台板の厚みが0.03〜1.00mmの薄板から成ることを特徴とする請求項7ないし請求項10のいずれか1項に記載のダイヤモンド砥石内周刃。
【請求項12】 請求項7ないし請求項11に記載のダイヤモンド砥石内周刃を用いて材料を切断することを特徴とする材料を切断する方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ダイヤモンド砥石外周刃及びダイヤモンド砥石内周刃に関し、特に変形が少なく、切断精度が高く、切断加工代が小さくかつ耐久性に優れたダイヤモンド砥石外周刃及びダイヤモンド砥石内周刃に関するものである。
【0002】
【従来の技術】電子材料には、半導体シリコン単結晶、化合物半導体、酸化物単結晶等の半導体単結晶材料や、セラミックス、Si34 、AlN、SiC、ジルコニア、アルミナ、サイアロン、ムライト、スピネル、コージェライト、マグネシア、合成石英、天然石英等の材料がある。これらの硬質材料は、インゴット状のものから切断分割され最終製品の寸法、形状に仕上げられる。
【0003】これらの各種の硬質材料を切断する方法としては大きく分けると、図1に示したような薄板円板を台板としてその外周部分にダイヤモンド砥粒を固着したダイヤモンド砥石外周刃を用いて硬質材料を切断する方法や、図2に示したような薄板ドーナツ円板の内周部分にダイヤモンド砥粒を接着したダイヤモンド砥石内周刃を用いて硬質材料を切断する方法の2種類がある。
【0004】このように切断砥石を使用してセラミックス等の硬質材料を切断加工する場合、例えばある大きさのブロックやウエーハに切断して多数の製品を切り出す場合や多数の溝加工を行う場合には、切断砥石の刃厚と被切断物の材料歩留りとの関係が非常に重要なコスト要因となる。すなわち、できるだけ薄い刃を用いてかつ精度良く材料の切断を行うことにより、切断加工代を少なくし得られる製品の数を多くして材料歩留りを上げ、生産性を高めることが重要となる。特に単結晶材料のように材料が高価なものを薄いウエーハ状にする場合には切断加工代はできるだけ少ないことが重要である。
【0005】薄い切断刃にするためには、当然砥石台板を薄くする必要がある。図1の外周刃や図2の内周刃を用いて硬質材料の切断を行う場合には、その台板材料として、従来は主に材料コスト及び機械的強度の点から鉄鋼材料が用いられており、特に実用化されているものとしてJIS規格でSK、SKS、SKD、SKT、SKH等と規定される合金あるいはステンレス等が使用されてきた。
【0006】しかし、セラミックス等のような硬質材料をあまり薄い外周刃や内周刃によって切断しようとすると、前述した従来の合金工具鋼やステンレスの台板では機械強度が不足し、切断に際し曲がり、うねり等の変形を生じ寸法精度が失われてしまう。そのため従来は、砥石台板の厚さを、外周刃で厚さ1.0mm以下にすることは難しく、また切断加工時に全周に張力を加えて張り上げるため比較的薄い切断刃とすることができる内周刃であっても、厚さ0.10mm以下にすることは難しかった。
【0007】特に、最近は半導体シリコン単結晶等の半導体単結晶材料において、高精度の切断加工が要求され、これらの材料から成るウエーハは200mmから300mmあるいはそれ以上の大直径のものが製造されるようになっている。そこで直径の大きなインゴットをウエーハ状に加工するために、従来のものより大型の外周刃や内周刃が必要となってきた。ところが、従来の外周刃や内周刃では大型化、大直径化すると、その台板の機械的強度不足のために、切断加工精度を維持しつつ刃厚を薄くすることが難しく、刃厚を厚くせざるを得ないので、高価な半導体単結晶材料等を厚い切断刃によりウエーハ加工することになり、切断加工代が増加することによる損失が問題となっていた。
【0008】また、硬質材料の一つである合成石英は、例えば半導体製造におけるフォトマスクや水晶振動子として使用されるが、例えば水晶振動子を製作する場合、振動子の振動数安定度は結晶方向と密接な関係があり、結晶方向を考慮して切断方向が決定される。このため水晶振動子では切断の曲がりや傾きに対する要求精度が高く、非常に正確な切断加工が必要となる。そのため、刃厚が薄くとも機械的強度が強く、高い工作精度で切断加工ができる切断刃が必要とされていた。
【0009】さらにこれらの被切断物である硬質材料は、従来の砥石台板に用いられている合金工具鋼等よりも硬くて脆い場合が多いため、その切り屑が台板と被切断物の間に挟まって排除されにくく、砥石台板を傷つけ台板の曲がりやうねりを助長させることになり、その結果として切断精度が低下して材料歩留りの低下や切断刃の寿命の短縮をもたらし問題であった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような問題点に鑑みなされたもので、たとえ台板を薄くしても変形が少なく、切断精度が高く、切断加工代が小さくかつ耐久性に優れたダイヤモンド砥石外周刃及びダイヤモンド砥石内周刃を提供することを主目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、本発明の請求項1に記載した発明は、ダイヤモンド砥石外周刃において、該ダイヤモンド砥石外周刃はセラミックス切断用であって、該外周刃を構成する台板が超硬合金から成り、かつ該台板外周の切り刃部はダイヤモンド系砥粒粉末が体積率で10〜80%含有されているものであることを特徴とするダイヤモンド砥石外周刃である。
【0012】このように、ダイヤモンド砥石外周刃において、外周刃を構成する台板が超硬合金から成り、かつ該台板外周の切り刃部にダイヤモンド系砥粒粉末が体積率で10〜80%含有されているダイヤモンド砥石外周刃は、例え薄い外周刃であっても加工精度が良く、長期にわたり安定して効率良くセラミックスの切断が可能なダイヤモンド砥石外周刃となる。
【0013】また、本発明の請求項2に記載した発明は、ダイヤモンド砥石外周刃において、該ダイヤモンド砥石外周刃はSi34 、AlN、SiC、ジルコニア、アルミナ、サイアロン、ムライト、スピネル、コージェライト、マグネシア、合成石英、天然石英、半導体シリコン単結晶、化合物半導体、及び酸化物単結晶切断用であって、該外周刃を構成する台板が超硬合金から成り、かつ該台板外周の切り刃部はダイヤモンド系砥粒粉末が体積率で10〜80%含有されているものであることを特徴とするダイヤモンド砥石外周刃である。
【0014】このように、外周刃を構成する台板が超硬合金から成り、かつ該台板外周の切り刃部にダイヤモンド系砥粒粉末が体積率で10〜80%含有されているダイヤモンド砥石外周刃は、切断される材料が硬質脆性材料であるSi34 、AlN、SiC、ジルコニア、アルミナ、サイアロン、ムライト、スピネル、コージェライト、マグネシア、合成石英、天然石英、半導体シリコン単結晶、化合物半導体、及び酸化物単結晶のいずれであっても、薄い外周刃を用いることができ且つ加工精度が良く、長期にわたり安定して効率良く切断を行うことが可能なダイヤモンド砥石外周刃である。
【0015】この場合、請求項3に記載したように、前記台板の超硬合金のヤング率が45000〜70000kgf/mm2 であることが好ましい。このような範囲のヤング率の台板であれば、台板が柔らかすぎて切断時の抵抗で曲がりやうねりを生じることがないため台板を薄くすることが容易であり、また逆に台板が硬く脆すぎて使用時に破損し易くなるようなこともない。
【0016】また、請求項4に記載したように、前記切り刃部のダイヤモンド系砥粒粉末が天然または合成工業用ダイヤモンドの粉末、cBN粉末、またはこれらの混合物から成り、その平均粒径が、10〜500μmであることが好ましい。このように前記切り刃部のダイヤモンド系砥粒粉末が天然または合成工業用ダイヤモンドの粉末、cBN粉末、またはこれらの混合物から成れば、砥粒粉末として硬度、耐熱性ともに適当であり、その平均粒径が10〜500μmであれば、砥粒粉末の粒度が細かすぎて切断能率が低くなることもなく、粒度が粗すぎて切断面が粗くなることもない。
【0017】そして、請求項5に記載したように、本発明の外周刃の台板は、台板の外径が800mm以下であり、かつ厚みが0.1〜1.6mmの薄板から構成することができる。このように外径の大きい薄板から台板を構成しても、本発明の外周刃は反りが発生して加工精度が悪化することがないため、従来の外周刃に比べて大直径の材料を小さい切断加工代で切断することができる。
【0018】さらに、請求項6に記載したように、本発明の請求項1ないし請求項5に記載のダイヤモンド砥石外周刃を用いて材料を切断することを特徴とする材料を切断する方法は、従来のダイヤモンド砥石外周刃に比べて小さい加工代で切断することができるため、材料歩留りを上げ、生産性を向上させることができる。
【0019】また、本発明の請求項7に記載した発明は、ダイヤモンド砥石内周刃において、該内周刃を構成する台板が超硬合金から成り、かつ該台板内周の切り刃部はダイヤモンド系砥粒粉末が体積率で10〜80%含有されているものであることを特徴とするダイヤモンド砥石内周刃である。
【0020】このように、ダイヤモンド砥石内周刃において、該内周刃を構成する台板が超硬合金から成り、かつ該台板内周の切り刃部にダイヤモンド系砥粒粉末が体積率で10〜80%含有されているダイヤモンド砥石内周刃は、例え薄い内周刃であっても加工精度が良く、長期にわたり安定して効率良く切断を行うことが可能なダイヤモンド砥石内周刃となる。
【0021】この場合、請求項8に記載したように、前記ダイヤモンド砥石内周刃は、セラミックス、Si34 、AlN、SiC、合成石英、天然石英、半導体シリコン単結晶、化合物半導体、及び酸化物単結晶切断用とすることができる。このように、本発明のダイヤモンド砥石内周刃は、上記の硬質脆性材料を切断する場合であつても、薄い内周刃を用いることができ且つ加工精度が良く、長期にわたり安定して効率良く切断を行うことが可能なダイヤモンド砥石内周刃である。
【0022】またこの場合、請求項9に記載したように、前記台板の超硬合金のヤング率が45000〜70000kgf/mm2 であることが好ましい。これは前記の外周刃の場合と同様に、このような範囲のヤング率の台板であれば、台板が柔らかすぎて切断時の抵抗で曲がりやうねりを生じることがないため台板を薄くすることが容易であり、また逆に台板が硬く脆すぎて使用時に破損し易くなるようなこともないからである。
【0023】そして、請求項10に記載してように、前記切り刃部のダイヤモンド系砥粒粉末が天然または合成工業用ダイヤモンドの粉末、cBN粉末、またはこれらの混合物から成り、その平均粒径が、10〜500μmであることが好ましい。前記の外周刃の場合と同様に、このように前記切り刃部のダイヤモンド系砥粒粉末が天然または合成工業用ダイヤモンドの粉末、cBN粉末、またはこれらの混合物から成れば、砥粒粉末として硬度、耐熱性ともに適当であり、その平均粒径が10〜500μmであれば、砥粒粉末の粒度が細かすぎて切断能率が低くなることもなく、粒度が粗すぎて切断面が粗くなることもない。
【0024】またこの場合、請求項11に記載したように、本発明の内周刃の台板の厚みが0.03〜1.00mmの薄板から構成することができる。このように従来の内周刃と比べて極めて薄い板から台板を構成しても、本発明の内周刃は反りが発生して加工精度が悪化することがないため、従来の内周刃に比べてさらに小さい切断加工代で材料を切断することができる。
【0025】さらに、請求項12に記載したように、本発明の請求項7ないし請求項11に記載のダイヤモンド砥石内周刃を用いて材料を切断することを特徴とする材料を切断する方法は、従来のダイヤモンド砥石内周刃に比べて小さい加工代で切断することができるため、材料歩留りを上げ、生産性を向上させることができる。
【0026】以下、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明の発明者らは、先に希土類磁石切断用のダイヤモンド砥石外周刃として、外周刃を構成する台板が超硬合金から成り、かつ台板外周の切り刃部にダイヤモンド系砥粒粉末を含有させることを特徴とするダイヤモンド砥石外周刃を提案した(特開平9−174441号公報参照)。
【0027】このダイヤモンド砥石外周刃は、従来、希土類磁石は外周刃により切断されることが多かったため、従来のダイヤモンド砥石外周刃に改良を加えて、刃厚が薄くても、曲がりうねり等の変形を生じることがなく高精度の切断加工が行なえるダイヤモンド砥石外周刃を得ることを目的として提案されたものであった。
【0028】しかし、その後の研究及び試験の結果、このような構成のダイヤモンド砥粒外周刃は、希土類磁石のみならず種々の硬質脆性材料にも有効であることが判った。例えば、切断される材料が半導体シリコン単結晶等の半導体単結晶材料である場合は、前記のように材料が高価であるとともに大直径化しており、高い加工精度が要求されるため、可能な限り小さい加工代で正確に切断加工を行うことが非常に重要となるが、上記のようなダイヤモンド砥石外周刃を適用すれば、要求される水準を満たすことができることがわかった。
【0029】そして、前述したように、半導体ウエーハの大直径化に伴って、大型で刃厚が薄いダイヤモンド砥石外周刃が必要とされているが、このような構成のダイヤモンド砥石外周刃であれば、切断刃を薄くするために台板の厚さを薄くしても、台板の機械的強度が高いため、外周刃が曲がりうねり等の変形を生じることがなく高精度の切断加工を行なうことができ、高価な半導体単結晶材料の損失を最小限にすることができる。
【0030】さらに、合成石英等をフォトマスクや水晶振動子等に加工する場合であっても、このようなダイヤモンド砥石外周刃であれば、薄い刃厚の切断刃を用いて高精度の切断加工が行なえるため、結晶方向を考慮して決定された所望の切断方向に正確に合成石英を切断することができ、加工精度の高いフォトマスクや振動数安定度の極めて高い水晶振動子を製造することができる。
【0031】また、前述の希土類磁石、半導体シリコン単結晶等の硬質脆性材料は、ダイヤモンド砥石内周刃により切断される場合も多いが、この場合でもダイヤモンド砥石外周刃と同様に、できるだけ少ない加工代で正確に加工を行うことが重要であることには変わりがない。
【0032】そこで、本発明の発明者は、先に提案した希土類磁石切断用ダイヤモンド砥石外周刃の構成に改良を加えてダイヤモンド砥石内周刃とすることを着想した。すなわち、ダイヤモンド砥石内周刃の台板を超硬合金で構成し、台板内周の切り刃部にダイヤモンド系砥粒粉末が体積率で10〜80%含有されているようにするのである。ダイヤモンド砥石内周刃の利点は、切断加工時に全外周に張力を加えて張り上げておいて回転するために比較的に切断刃を薄くできることである。本発明のダイヤモンド砥石内周刃により、種々の硬質脆性材料を極めて少ない切断加工代で高い工作精度を維持しつつ切断加工することが可能となる。
【0033】
【発明の実施の形態】以下具体的に本発明の実施の形態を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明のダイヤモンド砥石外周刃及びダイヤモンド砥石内周刃の特徴は、セラミックス等の硬質脆性材料を切断する際の薄い切断刃として、該切断刃台板材質を超硬合金とし、さらに該台板外周または内周の切り刃にダイヤモンド粉末を体積率で10〜80%含有させることにある。セラミックス等の硬質脆性材料を薄い切断刃で切断する場合、その構造上台板の材質が非常に重要である。従来の合金工具鋼やステンレスに比べ、切断時に力を受けても曲がりやうねりの出ない薄い砥石台板になり得る材料を種々検討した結果、超硬合金が最も適していることを見出した。
【0034】超硬合金は、WC、TiC、MoC、NbC、TaC、Cr32 等のIVa、Va、VIa族に属する金属の炭化物粉末をFe、Co、Ni、Mo、Cu、Pb、Snまたはそれらの合金を用いて焼結結合した合金であり、これらの中でも特にWC−Co系、WC−TiC−Co系、WC−TiC−TaC−Co系の合金が代表的である。これらの超硬合金を用いて切断刃台板を構成すれば、薄い外周刃切断刃、内周刃切断刃のいずれに適用しても、切断時に曲がりやうねりが生じ難くなる。また、被切断物の切り屑により台板が損傷し、材料歩留りが低下したり切断刃の寿命が低下することもない。
【0035】本発明では、上記のようにセラミックス等の硬質脆性材料切断用の超硬合金台板としては、特に組成、成分を限定するものではないが、超硬合金のヤング率が45000〜70000kgf/mm2 の範囲内であることが好ましい。台板のヤング率が45000kgf/mm2 未満の場合、超硬合金といえども切断時の抵抗で曲がりやうねりを生じるおそれがあり、台板を薄くすることが難しくなる。また、70000kgf/mm2 を越えると曲がりやうねりを生じるおそれはないものの、硬く脆くなるために使用時に台板が破損し易くなるおそれがあるからである。
【0036】切り刃部は、外周刃、内周刃のいずれも、図1及び図2に示したように超硬合金台板3の外周部分あるいは内周部分に砥粒層4(ダイヤモンド系砥粒粉末)を結合剤を用いて固着させて切断刃とするが、結合剤については、メタルボンド、レジンボンド、ビトリファイドボンド、電着ボンド等のいずれの方法でもよい。
【0037】ただし、ダイヤモンド系砥粒の砥粒層部中における体積率は10〜80%の範囲であることが好ましい。砥粒層部の中でダイヤモンド系砥粒の体積率が10%未満では、切断に寄与するダイヤモンド砥粒が少なすぎて切れ味が悪くなるおそれがあり、切断速度を遅くせざるを得なくなるために切断効率が低下するおそれがある。また、80%を越えると逆に結合剤が少なすぎてダイヤモンド系砥粒を保持する力が減少し、砥粒が切断に十分に寄与せずに脱粒してしまうおそれがあるからである。
【0038】また、本発明のダイヤモンド砥石外周刃及び内周刃のダイヤモンド系砥粒は天然または合成工業用ダイヤモンド粉末−cBN粉末の混合物であることが好ましい。このcBNはダイヤモンドに次いで硬い物質であり、熱に対してはダイヤモンドより安定であり、さらに鋼鉄に対する反応性が非常に少ないという特徴を有している。このcBN粉末をダイヤモンド粉末の一部または全てと置き換えてもセラミックス等の切断刃としてダイヤモンド砥粒の場合と同じ性能を示すことが確認されている。
【0039】さらに、砥粒の種類以外に、砥粒の粒度についても検討した結果、ダイヤモンド粉末、cBN粉末、それらの混合物の砥粒の平均粒度が10〜500μmの範囲であることが好ましいことを見出した。硬質で脆性の材料を切断するに際し、平均粒度が10μm未満の砥粒を用いると砥粒の突き出しが悪いために目詰まりし易く切断能率が低くなるおそれがある。また、平均粒度が500μmを越えると切断能率は高いものの、被切断物の切断面粗さが粗くなったり、いくら台板を薄くしても砥粒層部の厚みが厚くなり結果として薄い切断刃が得られない等の不具合が生じるおそれがある。
【0040】また本発明のダイヤモンド砥石外周刃及び内周刃は、台板の機械的強度が優れているため、大型、大直径の切断刃であっても、従来のものに比べて非常に薄い切断刃にすることができる。ダイヤモンド砥石外周刃にあっては、台板の外径が800mmのものでも、厚さ0.1〜1.6mmの台板を用いて薄く大直径の外周刃を構成することができる。また、ダイヤモンド砥石内周刃にあっては、厚さ0.03〜1.00mmの台板を用いて超薄型の内周刃を構成することができる。これらのような、大直径薄型切断刃であれば、最近のシリコン単結晶インゴットのような直径200mm以上の被切断物を極めて少ない切断加工代で正確に切断することができる。
【0041】
【実施例】以下、本発明を実施例および比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1、比較例1)ヤング率58000kgf/mm2 の超硬合金(WC−90/Co−10重量%の組成)を125mmφ×40mmφ×0.4mm孔あき薄板円板に加工し、砥石台板とした。次いで、砥石台板の外周部に結合剤にレジンを使用するレジンボンド法によりダイヤモンド砥粒を固着し、外周切断刃を作製した。
【0042】本実施例1のレジンボンド法では、円板砥石形状の金型に該超硬合金の台板をセットし、この外周部分に熱硬化性フェノール樹脂をバインダーとし、平均粒径150μmの人工ダイヤモンドを体積率で25%(砥粒25%、レジン75%)に混合した粉末を充填し、ついでプレスにより砥石形状に成形した後、金型にセットしたまま180℃で2時間加熱硬化させ、冷却後ラップ盤にて刃厚0.5mmに仕上げ加工し、ダイヤモンド砥石外周刃とした。
【0043】また、比較例1として実施例1と同形状のSKD(工具用合金JIS)製砥石台板を用いて、前記同様にダイヤモンド砥粒の固着を行ない、刃厚0.5mmのSKD製ダイヤモンド砥石外周刃を製作した。この刃厚は従来のものとしては、かなり薄いものである。
【0044】実施例1及び比較例1で作製した外周刃を用いて、Si34 を被切断物として切断試験を行なった。図3(a)に切断枚数と寸法の変化及び図3(b)に切断枚数と平行度で示した切断精度の関係について示した。なお、切断試験は次のような条件で行なった。実施例1の外周刃2枚及び比較例1の外周刃2枚を1.5mm間隔で組んで、回転数5000rpm、切断速度12mm/minで被切断物を切断した。被切断物であるSi34 の切断面積は幅40mm×高さ20mmである。切断を始めてから50枚毎に各々2枚の外周刃で切断されたSi34 の中央部1点と隅部4点の計5点の厚みをマイクロメーターで測定し、中央部の値をその切断されたSi34 の寸法とみなし、また5点の最大値と最小値の差を平行度すなわち切断精度とした。なお切断後のSi34 の目標寸法は厚み1.4mmである。
【0045】図3から明らかなように、Si34 の外周切断刃として超硬合金からなる台板を用い外周部にダイヤモンド砥粒を固着させたダイヤモンド砥石外周刃を使うことによって、刃厚が薄くても工作精度が良く、また長期に亙って安定して切断可能であることが確認された。
【0046】(実施例2、比較例2)ヤング率55000kgf/mm2 の超硬合金(WC−85/Co−15重量%の組成)を600mmφ×100mmφ×0.5mm孔あき薄板円板に加工し、砥石台板とした。次いで、砥石台板の外周部に平均粒径50μmの天然ダイヤモンドをセットしNiワット浴を使った電気めっき法によりダイヤモンド砥粒を固着し、電着ボンドの刃厚0.6mmのダイヤモンド砥石外周刃とした。なお、電気めっきの時間でめっき厚みを管理し、砥粒層部中のダイヤモンド砥粒の体積率が40%(砥粒40%、Niめっき60%)になるように調整した。
【0047】また、比較例2として実施例2と同形状のSKH(高速度鋼)製砥石台板を用いて、実施例2と同様にダイヤモンド砥粒の固着を行ない、刃厚0.6mmのSKH製ダイヤモンド砥石外周刃を製作した。この刃厚は、従来の600mmφのものとしては、非常に薄いものである。
【0048】実施例2及び比較例2で作製した外周刃を用いて、直径8インチの半導体シリコン単結晶を被切断物として実施例1と同様な切断試験を行なった。図4(a)に切断枚数と寸法の変化及び図4(b)に切断枚数と平行度で示した切断精度の関係について表した。切断試験条件は、切断刃2枚の間隔を1.8mmで組み(切断後の半導体シリコン単結晶の目標寸法は1.7mm)、回転数4000rpm、切断速度10mm/minで被切断物を切断した。
【0049】図4から明らかなように、半導体シリコン単結晶の外周切断刃として超硬合金からなる台板を用い外周部にダイヤモンド砥粒を固着させたダイヤモンド砥石外周刃を使うことによって、刃厚が薄くても工作精度が良く、また長期に亙って安定して切断可能であることが確認された。
【0050】(実施例3、比較例3)ヤング率50000kgf/mm2 の超硬合金(WC−80/Co−20重量%の組成)を80mmφ×40mmφ×0.3mm孔あき薄板円板に加工し、砥石台板とした。次いで、砥石台板の外周部に結合剤にメタルを使用するメタルボンド法によりダイヤモンド砥粒を固着し、外周切断刃を作製した。製作工程は実施例1と同様であるが、バインダーとして、Cu−70/Sn−30重量%の組成からなる粉末を用い、砥粒として平均粒径100μmの人工ダイヤモンド及びcBNを重量比1:1に混合した粉末を体積率で15%(砥粒15%、メタルバインダー85%)になるように配合した。なお、プレス後の加熱焼成は700℃×2時間行ない、次いで仕上げ加工を施し、刃厚0.4mmのダイヤモンド砥石外周刃とした。
【0051】また、比較例3として実施例3と同形状のSKD(工具用合金JIS)製砥石台板を用いて、前記同様にダイヤモンド砥粒の固着を行ない、刃厚0.4mmのSKD製ダイヤモンド砥石外周刃を製作した。
【0052】実施例3及び比較例3で作製した外周刃を用いて、合成石英を被切断物として実施例1と同様な切断試験を行なった。図5(a)に切断枚数と寸法の変化及び図5(b)に切断枚数と平行度で示した切断精度の関係について表した。切断試験条件は、切断刃2枚の間隔を1.0mmで組み(切断後の合成石英の目標寸法は0.9mm)、回転数5500rpm、切断速度8mm/minで被切断物を切断した。また被切断物である合成石英の切断面積は幅50mm×高さ10mmである。
【0053】図5から明らかなように、合成石英の外周切断刃として超硬合金からなる台板を用い外周部にダイヤモンド砥粒を固着させたダイヤモンド砥石外周刃を使うことによって、刃厚が薄くても工作精度が良く、また長期に亙って安定して切断可能であることが確認された。
【0054】(実施例4、比較例4)ヤング率55000kgf/mm2 の超硬合金(WC−85/Co−15重量%の組成)を850mmφ×290mmφ×0.08mmドーナツ状孔あき薄板円板に加工し、砥石台板とした。次いで、砥石台板の内周部に平均粒径50μmの天然ダイヤモンドをセットしNiワット浴を使った電気めっき法によりダイヤモンド砥粒を固着し、電着ボンドの刃厚0.10mmのダイヤモンド砥石内周刃とした。なお、電気めっきの時間でめっき厚みを管理し、砥粒層部中のダイヤモンド砥粒の体積率が40%(砥粒40%、Niめっき60%)になるように調整した。
【0055】また、比較例4として実施例4と同形状のステンレス製砥石台板を用いて、実施例4と同様にダイヤモンド砥粒の固着を行ない、刃厚0.15mmのステンレス製ダイヤモンド砥石内周刃を製作した。
【0056】実施例4及び比較例4で作製した内周刃を用いて、直径8インチの半導体シリコン単結晶の切断試験を行なった。図6(a)にこの場合の切断枚数と寸法の変化及び図6(b)に切断枚数と平行度で示した切断精度の関係について表した。切断試験条件は、1mm間隔で切断し(切断後の半導体シリコン単結晶の目標寸法は0.85mm)、回転数5500rpm、切断速度15mm/minで被切断物を切断した。
【0057】図6から明らかなように、半導体シリコン単結晶の内周切断刃として超硬合金からなる台板を用い内周部にダイヤモンド砥粒を固着させたダイヤモンド砥石内周刃を使うことによって、刃厚が薄くても工作精度が良く、また長期に亙って安定して切断可能であることが確認された。
【0058】なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0059】例えば、本発明のダイヤモンド砥石内周刃の被切断物としては、前記請求項8に列記されたものに限定されず、硬く脆い性質を有する物質を内周刃切断する場合であれば本発明の内周刃を適用することができ、同様の作用効果を奏することができる。
【0060】
【発明の効果】以上説明したように本発明は、刃厚が薄くても機械的強度に優れ、変形が少なく、切断精度が高く、切断加工代が小さくかつ耐久性に優れたダイヤモンド砥石外周刃及びダイヤモンド砥石内周刃を実現したものであり、切断加工代を極力少なくすることができるので材料歩留りを著しく向上させることができ、産業上その利用価値は極めて高い。
【出願人】 【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
【出願日】 平成10年(1998)5月28日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
【公開番号】 特開平11−333729
【公開日】 平成11年(1999)12月7日
【出願番号】 特願平10−164271