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【発明の名称】 工作機械の主軸支持装置
【発明者】 【氏名】渡辺 和信

【要約】 【課題】圧力流体の供給源および制御装置等の補助装置を必要とせず、軸受に加える予圧の大きさを主軸の回転数に適した値にすることができる工作機械の主軸支持装置を提供する。

【解決手段】スペーサ4、5と、複数のピース6とを設け、スペーサ4、5の軸方向の端部に、底面7が内径側から外径側に向って互に接近する方向に傾斜し、幅がピース6に嵌合するピース6と同数の溝8を円周方向等分に形成すると共に、キー9によりスペーサ4、5を主軸1と回転方向に一体にする。また、溝8にピース6を嵌合させたスペーサ4、5の軸方向の長さの和を主軸の低速回転に合わせて予圧を付加した時のアンギュラコンタクトベアリング2の内輪2aの軸方向の間隔に略々対応するように構成する。ピース6に作用する遠心力はスペーサ4、5を皿ばね11に抗して軸方向に移動させる。ピース6に加わる遠心力は主軸1の回転数が増すほど大きくなり、予圧は小さくなる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 1対のベアリングの外輪を軸方向に固定すると共に、内輪に主軸を支持させ、前記内輪を軸方向に互に接近する方向に付勢して前記1対のベアリングに予圧を加えるようにした工作機械の主軸支持装置において、前記主軸に軸方向移動可能にかつ相対回転不能に直列に外嵌する少なくとも2個のスペーサと、これらスペーサの対向する端面の間に介在される複数のピースと、を備え、前記スペーサの互いに対向する軸方向の端部の少なくとも一方に、底面が内径側から外径側に向って接近する方向に傾斜し、周方向幅が前記ピースの幅よりも僅かに広い複数の溝を円周方向等分に形成し、前記溝に前記ピースを嵌合させた前記スペーサの軸方向の長さの和を、前記主軸の低速回転に合わせて予圧を加えた状態における前記1対の内輪の軸方向の間隔に略々等しく又はそれ以下に設定した、ことを特徴とする工作機械の主軸支持装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、工作機械、特にマシニングセンタに用いて好適であり、低速回転から高速回転まで使用できる工作機械の主軸支持装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、材質が鉄系のワークを加工する場合、主軸の回転数を数千回転にして切り込みを深くする、いわゆる中・低速重負荷切削を行うと能率を向上させることができる。そこで、鉄系のワークが主であったマシニングセンタでは、主軸を支持する軸受に比較的大きな予圧を加えることにより軸受の剛性を高め、中・低速重負荷切削が行えるようにしていた。一方近年、アルミニウム製品の増加等により、主軸の回転数を10,000rpm以上にして切り込みを浅くする、いわゆる高速軽負荷切削を行う必要が出てきた。
【0003】軸受の予圧を中・低速重負荷切削用に合わせた状態で(すなわち大きくして)主軸を高速回転させると、軸受が発熱して焼き付きが発生する。一方、予圧を軽負荷切削用に合わせて小さくすると、中・低速重負荷切削を行うことができないから、加工能率が低下する。そこで、従来、特開平5−209614号公報に示すように、主軸を支持する1対のベアリングの内輪を軸方向に固定すると共に、2つの外輪間に流体圧により軸方向に伸縮自在の間座を設け、主軸の回転数に応じて流体圧を調整することにより、予圧が最適な値になるように制御するものが提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記従来の技術では、圧力流体の供給源および制御装置等の補助装置を必要とし、軸受部の構造も複雑になった。
【0005】本発明の目的は、上記従来技術における課題を解決し、圧力流体の供給源および制御装置等の装置を必要とせず、軸受に加える予圧の大きさを主軸の回転数に適した値にすることができる工作機械の主軸支持装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明は、1対のベアリング(2、2)の外輪(2c)を軸方向に固定すると共に、内輪(2a)に主軸(1)を支持させ、前記内輪を軸方向に互に接近する方向に付勢して前記1対のベアリングに予圧を加えるようにした工作機械の主軸支持装置において、前記主軸(1)に軸方向移動可能かつ相対回転不能に直列に外嵌する少なくとも2個のスペーサ(4)(5)と、これらスペーサの対向する端面の間に介在される複数のピース(6)と、を備え、前記スペーサの互いに対向する軸方向の端部の少なくとも一方に、底面(7)が内径側から外径側に向って接近する方向に傾斜し、周方向幅が前記ピース(6)の幅よりも僅かに広い複数の溝(8)を円周方向等分に形成し、前記溝(8)に前記ピース(6)を嵌合させた前記スペーサの軸方向の長さの和(p)を、前記主軸の低速回転に合わせて予圧を加えた状態における前記1対の内輪の軸方向の間隔に略々等しく又はそれ以下に設定したことを特徴とする。
【0007】[作用]以上構成に基づき、例えばナット(12)により設定される皿ばね(11)の付勢力に基づき、1対のベアリング(2)(2)の内輪(2a)(2a)に主軸(1)の低回転に合せた予圧が作用している。鉄系のワーク等を加圧するため主軸(1)を中・低速にて回転する場合、主軸(1)と一体にスペーサ(4)(5)及びその溝(8)に嵌合する複数のピース(6)も回転するが、これら回転が比較的低いため、ピース(6)に作用する遠心力は小さい。この状態では、該遠心力に基づき上記付勢力に抗してスペーサ(4)(5)に作用する軸方向力は小さく、従って主軸の中、低速回転に適合した予圧が作用した状態でベアリング(2)(2)に主軸(1)が支持される。
【0008】一方、アルミニウム系のワーク等を加工するため主軸(1)を高速にて回転する場合、該主軸と一体に回転するピース(6)に大きな遠心力が作用し、該遠心力によるピース(6)の外径方向へ移動しようとする力は、前記溝(8)の底面(7)における傾斜による楔作用により、スペーサ(4)(5)に互に離れる方向の軸方向力として作用し、該軸方向力が前記皿ばね(11)等による付勢力に対抗して作用し、前記1対のベアリング(2)(2)の内輪(2a)(2a)に作用している予圧を減じる。これにより、該主軸(1)の高速回転に見合った予圧状態により、主軸(1)はベアリング(2)(2)に支持される。
【0009】なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、本発明の構成を何等限定するものではない。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0011】図1は本発明の実施の形態に係る工作機械の主軸頭の断面図、図2は図1のA−A視図、図3は要部寸法関係を示す拡大断面図である。図で、1は主軸で、背面組み合わせの1対のアンギュラコンタクトボールベアリング2を介して軸受ハウジング3に回転自在に支持されている。これらアンギュラベアリング2は、主軸1に接する内輪2aと、軸受ハウジング3に嵌合する外輪2cと、内輪2aと外輪2cに内接する玉2bとで構成されている。4、5は軸方向の長さがkのスペーサである。6は鉄製のピースで、外径側が半径rの球面に形成された半径rの円柱である。スペーサ4、5の対向する端部には、図3に示すように、軸方向底面が内径側から外径側に向かって互に接近する方向に角度θで傾斜し、かつ図2に示すように、周方向の幅がピース6の幅(2r)よりも僅かに広いピース6と同数(図では6個)の溝8が円周方向等分に形成されている。9はキーで、スペーサ4、5を主軸1に対して円周方向に一体、軸方向に移動自在に結合している。10はカラー、11は皿ばね、12はナットであり、一方のベアリングの内輪2aにカラー10が当接して、ナット12が主軸2に螺合することにより、皿ばね11が上記内輪2aを軸方向に付勢している。13はベアリングで、主軸1の後端を回転自在に支持している。14はカラー、15は止め輪で、ベアリング13の内輪を軸方向に固定している。ベアリング13は軸受ハウジング3に対して軸方向に移動自在である。16は間座で、前記1対のアンギュラコンタクトボールベアリング2の外輪2cの間に配置されており、長さはLである。17はカバーで、図示しないボルトにより軸受ハウジング3に固定され、軸受ハウジング3に設けられたフランジ3aとの間に外輪2cと間座16を位置決め・固定している。
【0012】上記各構成要素の寸法は以下のように定められている。図3は各構成要素の寸法関係を示す図である。図で、距離pは、主軸1を停止させ、皿ばね11を付勢するナット12の位置を、アンギュラコンタクトボールベアリング2に加える予圧が中・低速重負荷切削に適した値(例えば主軸を5,000rpmで回転させる場合は、60kgf程度)に設定した場合における1対の内輪2c間の距離である。そして、ピース6を主軸1の外周と、2つの溝8の底面7に外接させたときのスペーサ4とスペーサ5との間隔をgとすると、2k+g≦pである。
【0013】次に、本実施の形態の動作を説明する。
【0014】アルミニウム系のワークを加工するために主軸1の回転数を例えば、20,000rpmにしたとする。スペーサ4、5は主軸1と一体になって回転し、溝8内のピース6も主軸1と一体になって回転する。そして、ピース6に加わる遠心力が底面7を押し、スペーサ4、5を皿ばね11に抗する方向に押圧する。この結果、1対のアンギュラコンタクトベアリング2、2に作用している皿ばね11に基づく予圧は減圧されて、内輪2c間の距離は距離pよりも大きくなり、予圧は小さく(10kgf程度。)なる。したがって、アンギュラベアリング2の発熱量は小さく、焼き付きが発生することはない。なお、回転数が下がり、ピース6の遠心力が小さくなると、皿ばね11の付勢力により、ピース6は当初の位置に戻る。
【0015】一方、鉄系のワークを5,000rpmで加工する場合、上述したように、ナット12の位置に基づく皿ばね11の付勢力による1対のアンギュラコンタクトベアリング2、2に対する予圧は低速重負荷切削に適した値であるから、精度の優れる加工をすることができる。なお、ピース6に加わる遠心力がスペーサ4、5を軸方向に付勢するが、遠心力は角速度の2乗に比例するから、5,000rpm程度の場合、予圧の変化は小さい。そして、ピース6が嵌合する溝8を円周方向等分に形成したから、高速回転時のバランスに優れ、振動が発生することはない。
【0016】なお、主軸1を5,000rpmで回転させた時にピース6に加わる遠心力を考慮して距離pを定めるようにすれば、さらに効果的である。また、角度θの大きさ、ピース6の数または質量のいずれかまたは総ての値を適宜選択することにより、遠心力の大きさを任意に設計することができる。そして、遠心力をさらに大きくしたい場合には、スペーサ4、5を分割し、分割した面に溝8を形成してピース6の数を増せば良い。さらに、ピース6は、他の形状(例えば球形)にしても良い。
【0017】また、上記では溝8をスペーサ4、5に設けたが、一方にだけ設けるようにしても良い。
【0018】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によると、主軸回転時にピースに作用する遠心力に基づき、スペーサを予圧方向と逆方向に押圧し、かつピースに加わる遠心力は主軸の回転数が増すほど大きくなるから、回転数の増加に応じて予圧は自動的に小さくなり、主軸を高速で回転させてもベアリングが焼き付くことはなく、したがって圧力流体等を用いない簡単な構成でもって、主軸を低速から高速までの広い範囲の回転数で使用することができる。
【出願人】 【識別番号】000233332
【氏名又は名称】日立ビアメカニクス株式会社
【出願日】 平成10年(1998)2月26日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】近島 一夫
【公開番号】 特開平11−239902
【公開日】 平成11年(1999)9月7日
【出願番号】 特願平10−45945